説明

バイオアベイラビリティが増加したフェンレチニドの医薬組成物、およびその使用方法

【課題】フェンレチニドなどのレチニドの非経口送達のための医薬組成物の提供。
【解決手段】フェンレチニドなどのレチニドと、前記レチニドの分散または可溶化を可能にする溶媒とを含む非経口送達用の医薬組成物。前記溶媒は、エタノールなどのアルコールと、CREMOPHOR(登録商標)ELなどのアルコキシル化ヒマシ油との組み合わせを含むか、あるいは、水相に分散したリポイドと、安定化量の非イオン界面活性剤と、任意に溶媒と、任意に等張性物質とを含むエマルジョン中のフェンレチニドなどのレチニドを含む。さらに、癌などの過増殖性疾患の治療方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、仮出願第60/251,463号(2000年12月5日出願、引用することにより本明細書の一部をなすものとする)の利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、フェンレチニドなどのレチニドの非経口送達のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
フェンレチニド[HPR、オールトランス−N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド;CAS登録番号65646−68−6]は、構造:
【化1】

を有する合成レチノイン酸誘導体である。フェンレチニドの水溶液に対する溶解性はわずかである。Gibbs(ギブス)の米国特許第4,665,098号には、乳癌および膀胱癌の治療に有用なフェンレチニドの経口医薬組成物が記載されている。しかし、この経口フェンレチニド組成物のバイオアベイラビリティは制限されており、血漿中で高い薬物濃度を得るためにフェンレチニドを静脈内投与できるのであれば、より大きな抗癌作用が得られる可能性がある。したがって、十分な溶解性と血漿および組織に対するバイオアベイラビリティとの両方を併せ持つ非経口(特に静脈内)投与用のフェンレチニドの新規医薬組成物が現在必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
[本発明の要約]
本発明は、N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド(4−HPR)またはその類似体(すなわちレチニド)の医薬組成物を含み、これらは有効成分(レチニド)のバイオアベイラビリティが増加しうる。これらの組成物によって、有意により多くの量の有効物質を患者に投与することが可能となり、現在使用可能な経口製剤(ギブス)で同量の薬物を投与した場合と比較すると血漿および組織における薬物量が多くなり、一種類の薬物および他の抗癌剤との組み合わせで、より大きな抗癌作用を得ることができる。
【0005】
本発明の第一の態様によると、アルコキシル化ヒマシ油中のレチニドの医薬組成物が提供される(好ましくは、CREMOPHOR(登録商標)ELなどのポリオキシエトキシル化ヒマシ油)。好ましくは、この組成物は、エタノールなどのアルコールも含む。この組成物は、凍結乾燥したレチニド(好ましくは4−HPR)、または凍結乾燥していない4−HPRから調製することができる。
【0006】
本発明の第二の態様は、非経口送達のための医薬エマルジョン組成物である。この組成物は、(a)親水性相(残分となる量で含まれる)と、(b)該親水性相中に粒子として分散する、疎水性相としての薬理学的に許容されるリポイド(すなわち油)(通常は、前記組成物中に2〜40%(体積/体積)の量で含まれる)と、(c)フェンレチニドなどのレチニド(通常は、前記組成物中に0.01〜2%(重量/体積)の量で含まれる)と、(d)任意に溶媒(通常は、前記組成物中に0〜10%(体積/体積)の量で含まれる)と、(e)前記エマルジョンの安定化に十分な量の0.01〜10%(重量/体積)の非イオン界面活性剤(通常は、前記組成物中に約0.01〜10%(重量/体積))と、(f)任意に等張性物質(通常は、前記組成物中に0〜10%(重量/体積)の量で含まれる)との組み合わせを含む。
【0007】
このような組成物を非経口投与することによる過増殖性疾患に罹患した被験者の治療方法も開示する。
【0008】
本発明の上記およびその他の目的および態様は、図面および明細書でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本明細書で開示されるようにクレモホール/エタノール(50/50)中で安定化させたフェンレチニドを腹腔内に投与した場合に、マウスで増殖させたヒト腫瘍異種移植片の増殖遅延に有効であることを示している。免疫無防備状態(無胸腺)ヌードマウス(10匹)に、マウス腫瘍異種移植片を形成させるために、第3回目の継代の5000万個のSMS−LHNヒト神経芽細胞腫腫瘍細胞を皮下注入した。皮下注入した腫瘍異種移植片は、フェンレチニド注入開始時に<175mmの大きさであった。ヌードマウス(5匹)に、実施例1のように調剤したフェンレチニドを腹腔内に注入した。使用前に0.3mlのNSで希釈した0.1mlのフェンレチニド(15mg/ml)のクレモホール/エタノール(50/50)溶液(体積0.4ml中1.5mgのフェンレチニド)のマウスへの注入を、0日に開始して5日間は1日2回、そして14日ごとに4つの経路で行った。対照群のマウス(5匹)に、フェンレチニドを含有しない同体積のクレモホール/エタノールを同じ計画にしたがって注入した。定期的に腫瘍異種移植片を測定し、0.5×高さ×幅×長さ、として腫瘍体積を計算した。腫瘍異種移植片が>3500mmとなった日か、あるいは腫瘍が壊死した場合にマウスを屠殺した。平均体積を±1標準偏差としてグラフ化する。マイクロソフト(著作権)エクセル(Excel)97ソフトウェアを使用し、不等分散を仮定した対応のない片側ステューデントt検定によって、平均の差の統計的有意性を評価した。P値は両側である。平均腫瘍体積(処理群対対照群)が>2000mmとなるまでT/C値を計算した。T/C>200%は、許容される基準に対して治療が非常に有効であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[好ましい実施態様の詳細な説明]
[1.レチニド]
本発明を実施するために使用されるレチニドは、一般にセラミド形成性のレチノイドまたはレチノイン酸誘導体である。このような化合物としてはガンダー(Gander)に付与された米国特許第4,190,594号に記載の化合物が挙げられる(本明細書に引用されるすべての特許の開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする)。セラミド形成性レチノイドとしては、オールトランスレチノイン酸(ATRA)およびレチノイン酸誘導体が挙げられる。例えば、
(A)式:
【化2】

(式中、Xは、
【化3】

2−シクロヘキシルエチル、10−カルボメトキシデシル、4−ヒドロキシブチル、コレステリル、m−ビニルベンジルとp−ビニルベンジルとの混合物、および4−ブロモベンジルからなる群から選択される)を有するオールトランスレチノイン酸のエステル、
(B)式:
【化4】

(式中、Yは、コレステリルオキシ、フェニル、4−ブロモフェニル、4−メトキシフェニル、4−ニトロフェニル、4−ヒドロキシフェニル、4−メチルフェニル、4−シアノフェニル、4−エトキシフェニル、4−アセトキシフェニル、2−ナフチル、4−ビフェニル、2,5−ジメトキシフェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,4−ジメチルフェニル、3,4−ジアセトキシフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニル、および2,4,6−トリメチルフェニルからなる群より選択される)を有するオールトランスレチノイン酸のエステル、ならびに
(C)式:
【化5】

(式中、Zは、n−プロピルアミノ、tert−ブチルアミノ、1,1,3,3−テトラメチルブチルアミノ、1−モルホリノ、4−ヒドロキシフェニルアミノ、4−カルボメトキシ−2−ヒドロキシフェニルアミノ、β−(3,4−ジメトキシフェニル)−エチルアミノ、2−ベンゾチアゾリルアミノ、1−イミダゾリル、1−(2−ニコチノイルヒドラゾリル)、1−ベンゾトリアゾリル、1−(1,2,4−トリアゾリル)、
【化6】

からなる群より選択される)を有するオールトランスレチノイン酸のアミドが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0011】
特に好ましいものは、フェンレチニドとも呼ばれるオールトランス−N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミドである。これはCAS登録番号65646−68−6であり、構造:
【化7】

を有する。上述の化合物は、既知の技術によって調製可能である。例えば、ガンダーらに付与された米国特許第4,190,594号、ギブスに付与された米国特許第4,665,098号を参照されたい。
【0012】
本発明の実施に使用可能な別のレチノイン酸誘導体としては、N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド−O−グルクロニドのC−グルコシド類似体が挙げられる。このような化合物およびそれらの調製については既知であり、カーリー(Curley)らに付与された米国特許第5,663,377号および第5,599,953号(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されている。このような化合物は一般式:
【化8】

で表すことができ、式中、RはCOOH、CH2OH、またはHであり、nは0または1である。
【0013】
このような化合物の具体例としては、4−(レチンアミド)フェニル−C−グルクロニド、4−(レチンアミド)フェニル−C−グルコシド、4−(レチンアミド)フェニル−C−キシロシド、4−(レチンアミド)ベンジル−C−グルクロニド、4−(レチンアミド)ベンジル−C−グルコシド、4−(レチンアミド)ベンジル−C−キシロシド、1−(β−D−グルコピラノシル)レチンアミド、および1−(D−グルコピラノシルウロノシル)レチンアミドが挙げられる。
【0014】
[2.アルコキシル化ヒマシ油および組成物]
アルコキシル化ヒマシ油は既知であり、例えば、アガルカル(Agharkar)らに付与された米国特許第5,827,522号および米国特許第5,504,102号に記載されている。本出願人らは特に、本明細書に引用されるすべての米国特許を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。ポリエトキシル化ヒマシ油が好ましい。
【0015】
ポリエトキシル化ヒマシ油は、例えばナジ(Nagy)に付与された米国特許第4,960,799号およびニコラエフ(Nikolayev)らに付与された米国特許第5,925,776号に記載されている。
【0016】
本発明の実施のために特に好ましいポリエトキシル化ヒマシ油は、鹸化価が63〜72であり、ヒドロキシル価が65〜78であり、酸価が<2である市販のポリオキシル35ヒマシ油であり、例えばBASF Corp.(3000コンチネンタル・ドライブ(Continental Drive)−ノース(North),マウント・オリーブ(Mount Olive),ニュージャージー(New Jersey),07828−1234 USA)製のCREMOPHOR(登録商標)EL(CTFA/INC:PEG−35ヒマシ油)(CAS番号61791−12−6)が挙げられる。
【0017】
溶媒中に使用されるアルコールは、任意の好適なアルコールであってよいが、好ましくはエタノールである。一般に、溶媒は、30、40、または45体積%から最高55、60、または70体積%のアルコキシル化ヒマシ油と、30、40、または45体積%から最高55、60、または70体積%のアルコールとを含む。あるいは溶媒は、約3.8〜3.9%(体積/体積)で使用される無水エタノールであってもよい。現在好ましい実施態様の1つでは、溶媒は、50体積%のアルコキシル化ヒマシ油と、50体積%のアルコールとを含む。レチニドは任意の好適な量で溶媒中に分散または可溶化されるが、好ましくは、溶媒1ml当たり少なくとも0.1mg、1mg、2mg、または5mgのレチニドから溶媒1ml当たり最高15mg、20mg、30mg、または40mgのレチニド、またはそれを超える量で分散または可溶化される。
【0018】
上記組成物は非水性であってもよく水性であってもよい。少量の水を含有してもよく、食塩溶液またはデキストロース溶液などの薬学的に許容可能な担体の形態の組成物に加えたりこれと混合したりする場合もあり、これらの複合組成物(combined composition)が患者に投与される。例えば、溶媒に可溶化させた10mg/mlのレチニドを含む本発明の組成物は、1mg/mlのレチニド溶液として患者に投与するために、生理食塩溶液または5%のデキストロース溶液と混合することができる。
【0019】
[3.エマルジョン組成物]
前述したように、本発明のさらに別の態様は、非経口送達のための医薬エマルジョン組成物である。一般に、このような組成物は、(a)親水性相(残分となる量で含まれる)と、(b)前記親水性相中に粒子として分散する疎水性相としての2〜40%(体積/体積)の薬理学的に許容されるリポイドと、(c)0.01または0.1〜0.5、2、または5%(重量/体積)のレチニドと、(d)0〜10%(体積/体積)の溶媒と、(e)前記エマルジョンを安定化させるための0.01〜10%(重量/体積)の非イオン界面活性剤と、(f)0、0.01、または0.1〜3、6、または10%(重量/体積)の等張性物質との組み合わせを含む。
【0020】
この組成物は、好ましくはpHが約5〜10であり、組成物中の粒子は好ましくは粒径が約5nmまたは50nm〜約400nmまたは1000nmである。
【0021】
任意の好適な薬学的に許容可能なリポイド(または油)を本発明の実施のために使用することができる。例えば、ダイズ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、ルリヂサ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アマニ油、ゴマ油、パーム核油、綿実油、ココヤシ油蒸留物からの中鎖トリグリセリド、クロフサスグリ油、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらには限定されない。一般に、リポイドは約10〜30%(体積/体積)の量で混入されることが好ましく、好ましくはダイズ油である。
【0022】
一般に、溶媒は存在しないか、あるいは少なくとも0.01%(体積/体積)の量で存在する。油への溶解性を増加させる目的で、油に加える前にレチニドを溶解させるために溶媒が使用される。次に、レチニド含有油は水相と均質化される。その時点で、溶媒の大部分は油のミセル(またはその他の分散相粒子)から離れて水相に入り、油のミセル中にレチニドが残留する(水は油よりもはるかに極性が高く、エタノールは極性であるため)と考えられる。任意の好適な溶媒を使用することができ、例えば、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびエチルアセトアミド(DMA)を使用することができるが、これらには限定されない。好ましい実施態様では、溶媒はエタノールであり、約0.01〜5.0%(体積/体積)で混入される。レチニドを油に添加した後で、溶媒を揮発させて溶媒を除去することができる。
【0023】
好適な非イオン界面活性剤としては、卵リン脂質類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(トゥイーン(Tween))、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンのブロックコポリマー類(ポロキサマーとしても知られており、プルロニック(Pluronic)としても知られている)、およびそれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらには限定されない。好ましい実施態様では、非イオン界面活性剤は約2%(重量/体積)の卵リン脂質である。
【0024】
任意の好適な等張性物質を使用することができる。等張性物質が使用される場合、等張性物質は通常約0.8〜8%(重量/体積)の量で使用される。これらの物質は、浸透圧を調節することによって、エマルジョンを対象患者の血液と等張にする。等張性物質の例としては、グリセリン、ならびにキシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどの糖アルコールが挙げられる。等張性物質のその他の例としては、アラニンなどの非極性アミノ酸、ヒスチジンなどの塩基性アミノ酸、および/またはグリシンなどの電荷をもたない極性アミノ酸が挙げられる。約1%(重量/体積)のグリセリンが現在のところ好ましい。
【0025】
前述の特定の実施態様では、レチニドは組成物中に約0.1〜0.5%(重量/体積)含まれ、溶媒は0.0または0.01〜5.0%(体積/体積)の無水エタノールであり、前記リポイドの量は約10〜30%(体積/体積)であり、卵リン脂質の量は約1〜5%(重量/体積)、等張性物質は約1%(重量/体積)のグリセリンであり、pHは5〜10である。
【0026】
前述の種々の成分は、既知の技術で混合してエマルジョンを調製することができ、既知の技術によって後の投与のために滅菌容器またはバイアルに入れることができる。これらについては後に詳細に説明する。
【0027】
[4.治療および投与]
本発明の組成物は、腫瘍、癌、および新生物性疾患などの過増殖性疾患、ならびに前癌および非新生物性または良性の過増殖性疾患を治療するために投与することができる。
【0028】
本明細書に記載の組成物および方法によって治療が行われる被験者は、一般に、ヒト被験者、および獣医学のためのイヌ、ネコ、ウマなどの動物被験者の両方を含む哺乳動物被験者である。
【0029】
本発明によって治療可能な腫瘍、癌、および新生物組織の例としては、悪性疾患、例えば乳癌、骨肉腫、血管肉腫、線維肉腫および他の肉腫、白血病、リンパ腫、洞腫瘍、卵巣、尿管、膀胱、前立腺、およびその他の性尿器の癌、大腸、食道、および胃の癌、ならびにその他の消化管の癌、肺癌、骨髄腫、膵臓癌、肝癌、腎癌、内分泌腺癌、皮膚癌、ならびに神経膠腫や神経芽細胞腫などの悪性または良性の脳および末梢神経(CNS)系の腫瘍などが挙げられるが、これらには限定されない。
【0030】
前癌および非新生物性または良性の過増殖性疾患の例としては、脊髄形成異常症、正常位置の子宮頚癌、ガードナー症候群などの家族性腸ポリポーシス、口腔白板、組織球増殖症、ケロイド、血管腫、過増殖性動脈狭窄、炎症性関節炎、過角化症、および関節炎を含む丘疹鱗屑性発疹が挙げられる。いぼなどのウイルス性過増殖性疾患、EBV性疾患(すなわち感染性単核球症)、および瘢痕形成なども含まれるが、これらには限定されない。本明細書に開示される治療方法は、本明細書で規定される過増殖性疾患に罹患したことが分かったかその疑いがあるか、あるいは発病の危険性のある任意の被験者に使用することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「過増殖性疾患の治療」は、過増殖性細胞または腫瘍の本体または集団の殺滅、または増殖肥大の阻害あるいは遅延、癌性増殖の阻害あるいは遅延、過増殖性細胞数の減少、または他の解剖学的部位への拡散の防止、ならびに過増殖性細胞の過増殖の程度および数の軽減のための方法を意味する。本明細書で使用される場合、「治療」は、必ずしも過増殖の治癒または完全な消滅を意味するものではない。本明細書で使用される場合、治療有効量は、過増殖性細胞の殺滅増殖速度の低下、過増殖性細胞体の大きさの減少、および/または過増殖性細胞数の減少に有効な量である。
【0032】
任意の一種類の有効物質の治療的有効投与量、本発明の範囲内でのその使用は、化合物や患者によって幾分変動し、患者の症状や送達経路などの要因に依存する。このような投与量は、特に本発明の開示を参照しながら、当業者には既知の日常的な薬理学的手順に従って決定することができる。フェンレチニドの場合、約1μM〜10μMまたは50μMまたはそれを超える血漿中濃度が達成される投与量が使用される。
【0033】
本明細書に記載の組成物は、静脈内、動脈内、鞘内、筋肉内、皮下、および腹腔内の注射または輸液などの任意の好適な技術によって非経口投与が可能である。
【0034】
本明細書に記載の組成物は、B.マウレル(Maurer)らPCT出願WO00/00207号(2000年1月6日)、B.マウレル(Maurer)ら米国特許出願第09/471,944号(1999年12月23日出願)(これらの記載内容全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする)などに記載される併用療法に使用することができる。
【実施例1】
【0035】
以下の非限定的な実施例によって、本発明をより詳細に説明する。
【0036】
[実施例1]
[希釈剤12中の製剤]
希釈剤12は、無水アルコール(エタノール)とクレモホールELポリエトキシル化ヒマシ油(USP)の50:50(体積/体積)混合物である。薬物は、希釈剤12中に10mg/mlの濃度で容易に溶解可能である。50/50エタノール/クレモホールEL(希釈剤12)を使用して最高で15mg/mlの溶液を調製することができる。エタノールのクレモホールELに対する比率をより高くすることによって(例えば、55%エタノール:45%クレモホールEL)、よりフェンレチニド濃度の高い溶液を調製することもできる。
【0037】
50:50(体積/体積)のエタノール/クレモホールEL(希釈剤12)の薬物溶液は、必要な体積のアルコールに撹拌しながらフェンレチニドを溶解し、適切な量のクレモホールELを加えることによって調製される。得られる溶液は、有意な効力の低下または不純物の形成が起こらずに最長3か月間は冷凍保存または室温保存で安定である。40℃などの高温でも薬物の効力の低下は最小限であり、3か月後で約3%の低下である。
【0038】
上記製剤は、適宜0.9%の塩化ナトリウム溶液(正常食塩溶液、USP)または5%デキストロース溶液(USP)で希釈して1mg/ml溶液にすることができ、4日間は溶液の抗力が低下せず安定である。
【0039】
フェンレチニド製剤をt−ブタノール/水溶液から凍結乾燥することもできる。t−ブタノールの濃度は5%〜95%で変動させることができる。得られる無水粉末は、希釈剤12を使用して再構成して、輸液に通常使用される正常食塩溶液や5%のデキストロースなどでさらに希釈することができる。凍結乾燥した粉末は室温で安定である。
【0040】
[実施例2]
[フェンレチニドのエマルジョン製剤]
フェンレチニドの水中油型エマルジョン製剤を、リン脂質を使用して調製した。製剤化の手順は以下の通りである。
【0041】
薬物をアルコールに溶解しエマルジョンの油相に加える。別のビーカー中でバッチ品質の卵リン脂質を水−グリセリン溶液に分散させて水相を調製する。水酸化ナトリウムを使用して水相のpHを5〜7に調整する。撹拌しながらこの水相を油相に加える。得られたエマルジョンを均質化して、最終的なフェンレチニド濃度が1mg/ml(0.1%)または2mg/ml(0.2%)で、最終的なエタノールがそれぞれ3.9%または3.8%であり、最終的な卵リン脂質濃度が2%であり、最終的なグリセリン濃度が1%であり、pHが7.2〜7.4であり、粒径が50〜400nmの範囲である油/水エマルジョンが得られる。
【0042】
これらのエマルジョンの安定性をモニターすると、エマルジョン冷凍温度で1か月間、効力および粒径が変化せず安定であることが分かった。室温などの高温での粒径および効力の変化は最小限である。
【0043】
[実施例3]
[フェンレチニドの分析]
この分析は、フォルメリ(Formelli)ら(J Clin Oncol,11:2036−2042,1993)の方法を改良したものである。4−HPR濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定する。すべての手順は、間接黄色光の下で実施される。MeOH:ACN(1:1)中でストック標準物質を調製し、−70℃で保管する。品質保証標準物質は正常ヘパリン添加血漿中で調製し、−70℃で保管する。標準物質およびQA、ならびに動物試料は、シラン処理したコハク製マイクロチューブ中で調製し、できる限り冷暗所に維持する。血漿および組織試料は、経口使用されるフェンレチニド(ギブスの製剤)または腹腔内投与される乳化フェンレチニドの場合、MeOH:CANで抽出される。乳化フェンレチニドを腹腔内投与して治療した動物から採取した血漿試料は、MeOH:クロロホルム:水で抽出して、エマルジョンを破壊し、フェンレチニドを放出させた。検量線試料は、内部標準のN−(4−エトキシフェニル)レチンアミド(4−EPR)を含有する500μlの正常ヘパリン添加血漿に適切な量のストック標準物質を加えることによって調製される。100μlの氷冷飽和リン酸カリウムと900μlの氷冷アセトニトリルを加えることによってタンパク質が沈殿する。遠心分離後、上澄みをコハク色の自動注入バイアルに入れ、分析するまで室温で暗所に保管する。50μlの上澄みを、フェノメネックス・ルナ(Phenomenex Luna)C18(2)カラムとブラウンリー(Brownlee)RP−18プレカラムを取り付けた島津製の液体クロマトグラフシステムに注入する。移動相はアセトニトリル:水:氷酢酸(80:18:2、v/v/v)からなり、1ml/分の流速で圧送される。検出は波長340nmで行われ、これによって対象となるレチノイドに関して良好な感度が得られる。品質保証試料および患者血漿試料も同じ方法で分析する。正常血漿中のレチノールの内因性濃度は分析が複雑であるため、レチノールの検量線を5%のウシ血清アルブミン(BSA)中で調製し、血漿試料の分析を行う。
【0044】
[実施例4〜10]
[薬力学および細胞毒性の研究]
実施例4〜10は、それぞれ表1〜3、図1、および表4〜6に示される。これらの実施例は、上記の実施例3に記載の一般手順に従って実施した。実施例4〜7は、実施例1に記載のようにクレモホール中で安定化したフェンレチニドの投与を、ギブスの方法によるフェンレチニドの投与と比較しており、実施例8〜10は、実施例2に記載されるようなフェンレチニド含有エマルジョンの投与を、ギブスの製剤によるフェンレチニドの投与と比較している。
【0045】
表1は、本明細書で開示されるようにクレモホール/エタノール(50/50)で安定化したフェンレチニドを2日間または4日間マウスに腹腔内投与した場合、5日間フェンレチニドを同じ投与量で経口投与した場合(ギブスの製剤)よりも血漿中濃度が高くなったことを示している。マウスには、1.5mgのフェンレチニドを2日間または4日間1日2回で腹腔内投与(無胸腺/ヌードマウス)するか、あるいは1.5mgのフェンレチニドを5日間にわたって1日2回で経口投与した(Balb/Cマウス)。最終投与から4時間後にマウスを屠殺し、分析を行った。薬物の血漿中濃度は前述のように分析した。フェンレチニドを投与する前に、免疫無防備状態(無胸腺)のヌードマウスに、500万個のC6ラット神経膠腫腫瘍細胞、5000万個のKCNRヒト神経芽細胞腫腫瘍細胞、または5000万個のSK−N−MCヒト未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)細胞を皮下注入し、マウス腫瘍異種移植片を形成させた。皮下注入した腫瘍異種移植片は、フェンレチニド注入開始時の大きさが約200〜400mmであった。クレモホール/エタノール(50/50)中のフェンレチニドを注入したヌードマウス(それぞれ5または6匹)は、4回注入(2日間)または8回注入(4日間)の後に屠殺した。腹腔内注入の場合は、0.1mlのクレモホール/エタノール(50/50)中のフェンレチニド(15mg/ml)を0.3mlのNSで希釈してから使用した(体積0.4ml中フェンレチニド1.5mg)。マウスに経口投与する場合、現在入手可能な経口フェンレチニド含有カプセル(ギブスの方法で調剤)を投与し、前述のようにフェンレチニド濃度を分析した。次に、0.1gのピーナッツバター中の1.5mgのフェンレチニドを1日2回、5日間マウスに与えた後、屠殺した。これらのマウスの組織および/または腫瘍異種移植片中の薬物濃度を以下の表2および表3(実施例5および6)に示す。フェンレチニドの齧歯類における半減期は約12〜16時間であると報告されている(ケロッフ(Kelloff),G.J.,ら、(1994)「臨床開発計画(Clinical Development Plan):N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド」、J Cell Biochem Suppl 20:176−96)。平均値は、±1標準偏差として記載される。マイクロソフト(Microsoft(著作権))エクセル(Excel)97ソフトウェアを使用し、不等分散を仮定した対応のない片側のステューデントt検定によって、平均の差の統計的有意性を評価した。すべてのP値は片側である。
【0046】
表2は、本明細書で開示されるようにクレモホール/エタノール(50/50)で安定化したフェンレチニドを2日間または4日間マウスに腹腔内投与した場合、5日間マウスにフェンレチニドを同じ投与量で経口投与した場合(ギブスの製剤)よりも組織中濃度が高くなったことを示している。マウスには、1.5mgのフェンレチニドを2日間または4日間にわたり1日2回で腹腔内投与(無胸腺/ヌードマウス)するか、あるいは1.5mgのフェンレチニドを5日間にわたり1日2回で経口投与した(Balb/Cマウス)。最終投与から4時間後にマウスを屠殺し、分析を行った。薬物の組織中濃度は前述のように分析した。フェンレチニドを投与する前に、免疫無防備状態(無胸腺)のヌードマウスに、500万個のC6ラット神経膠腫腫瘍細胞、5000万個のKCNRヒト神経芽細胞腫腫瘍細胞、または5000万個のSK−N−MCヒト未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)細胞を皮下注入し、マウス腫瘍異種移植片を形成させた。皮下注入した腫瘍異種移植片は、フェンレチニド注入開始時の大きさが約200〜400mmであった。薬物送達の詳細は上記の表1(実施例4)に示している。組織および腫瘍異種移植片データは、上記の表1(実施例4)に記載の血漿データを得たマウスと同じマウスから得ている。フェンレチニドの齧歯類における半減期は約12〜16時間であると報告されている(ケロッフ(Kelloff),G.J.,ら、(1994)「臨床開発計画:N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド」、J Cell Biochem Suppl 20:176−96)。平均値は、±1標準偏差として記載される。マイクロソフト(著作権)エクセル97ソフトウェアを使用し、不等分散を仮定した対応のない片側ステューデントt検定によって、平均の差の統計的有意性を評価した。すべてのP値は片側である。
【0047】
表3は、本明細書で開示されるようにクレモホール/エタノール(50/50)で安定化したフェンレチニドを2または4日間マウスに腹腔内投与した場合に得られた腫瘍異種移植片中の濃度を示している。マウスには、1.5mgのフェンレチニドを2日間または4日間、1日2回、腹腔内注入(無胸腺/ヌードマウス)した。最終投与から4時間後にマウスを屠殺し、分析を行った。薬物の組織中濃度は前述のように分析した。フェンレチニドを投与する前に、免疫無防備状態ヌードマウスに、500万個のC6ラット神経膠腫腫瘍細胞、5000万個のKCNRヒト神経芽細胞腫腫瘍細胞、または5000万個のSK−N−MCヒト未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)細胞を皮下注入し、マウス腫瘍異種移植片を形成させた。皮下注入した腫瘍異種移植片は、フェンレチニド注入開始時の大きさが約200〜400mmであった。薬物送達の詳細は上記の表1(実施例4)に示している。組織および腫瘍異種移植片データは、上記の表1(実施例4)に記載の血漿データを得たマウスと同じマウスから得ている。フェンレチニドの齧歯類における半減期は約12〜16時間であると報告されている(ケロッフ(Kelloff),G.J.,ら、(1994)「臨床開発計画:N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド」、J Cell Biochem Suppl 20:176−96)。平均値は、±1標準偏差として記載される。
【0048】
本明細書で開示されるようにクレモホール/エタノール(50/50)で安定化したフェンレチニドは、図1に示されるように腹腔内投与した場合に、マウス体内で増殖するヒト腫瘍異種移植片の増殖の遅延に効果的である。免疫無防備状態(無胸腺)ヌードマウス(10匹)に、マウス腫瘍異種移植片を形成させるために、第3回目の継代の5000万個のSMS−LHNヒト神経芽細胞腫腫瘍細胞を皮下注入した。皮下注入した腫瘍異種移植片は、フェンレチニド注入開始時に<175mmの大きさであった。ヌードマウス(5匹)に、実施例1のように調剤したフェンレチニドを腹腔内に注入した。使用前に0.3mlのNSで希釈した0.1mlのフェンレチニド(15mg/ml)のクレモホール/エタノール(50/50)溶液(体積0.4ml中1.5mgのフェンレチニド)のマウスへの注入を、0日に開始して5日間は1日2回、そして14日ごとに4つの経路で行った。対照群のマウス(5匹)に、フェンレチニドを含有しない同体積のクレモホール/エタノールを同じ投与計画にしたがって注入した。定期的に腫瘍異種移植片を測定し、0.5×高さ×幅×長さ、として腫瘍体積を計算した。腫瘍異種移植片が>3500mmとなった日、あるいは腫瘍が壊死した場合にマウスを屠殺した。平均体積を±1標準偏差としてグラフ化する。マイクロソフト(著作権)エクセル97ソフトウェアを使用し、不等分散を仮定した対応のない片側ステューデントt検定によって、平均の差の統計的有意性を評価した。P値は両側である。平均腫瘍体積(処理群対対照群)>2000mmとなるまでT/C値を計算した。T/C>200%は、許容される基準に対して治療が非常に有効であることを示す。
【0049】
表4は、本明細書に記載のフェンレチニド含有エマルジョンを腹腔内投与した場合、より多い投与量でフェンレチニドを経口投与した場合(ギブスの製剤)よりも血漿中濃度が高くなったことを示している。マウス(無胸腺/ヌードマウス)に実施例2のフェンレチニド含有エマルジョン(2mg/ml)を腹腔内注入(i.p.)するか(1.0mgのフェンレチニド、i.p.、1日2回、2日間または4日間)、あるいはマウス(Balb/Cマウス)にギブスの経口フェンレチニド製剤を与えた(1.5mg、経口、1日2回、5日間)。最終投与から4時間後にマウスを屠殺し、分析を行った。フェンレチニドの血漿中濃度は前述のように分析した。乳化フェンレチニドを注入したマウスは4回の注入(2日間)または8回の注入(4日間)の後に屠殺した。経口投与したマウスの場合、ギブスの方法で調剤したフェンレチニド含有カプセルの内容物を投与し、前述のようにフェンレチニド濃度を分析した。次に、0.1gのピーナッツバター中の1.5mgのフェンレチニドを1日2回で5日間マウスに与えた後、屠殺した。実施例2の乳化フェンレチニドおよびギブスの経口製剤の投与によって得られたフェンレチニドの血漿中濃度を表4で比較している。これらのマウスの組織中濃度は下記の表5(実施例9)に示される。フェンレチニドの齧歯類における半減期は約12〜16時間であると報告されている(ケロッフ(Kelloff),G.J.,ら、(1994)「臨床開発計画:N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド」、J Cell Biochem Suppl 20:176−96)。マイクロソフト(著作権)エクセル97ソフトウェアを使用し、不等分散を仮定した対応のない片側ステューデントt検定によって、平均の差の統計的有意性を評価した。P値は片側である。
【0050】
表5は、本明細書に記載のフェンレチニド含有エマルジョンを腹腔内投与した場合、より多い投与量でフェンレチニドを経口投与した場合(ギブスの製剤)よりも組織中濃度が高くなったことを示している。マウス(無胸腺/ヌードマウス)に実施例2のフェンレチニド含有エマルジョン(2mg/ml)を腹腔内注入するか(1.0mgのフェンレチニド、i.p.、1日2回、2または4日間)、あるいはマウス(Balb/Cマウス)にギブスの経口フェンレチニド製剤を与えた(1.5mg、経口、1日2回、5日間)。最終投与から4時間後にマウスを屠殺し、分析を行った。フェンレチニドの組織中濃度は前述のように分析した。乳化フェンレチニドを注入したマウスは4回の注入(2日間)または8回の注入(4日間)の後に屠殺した。経口投与したマウスの場合、ギブスの方法で調剤したフェンレチニド含有カプセルの内容物を投与し、前述のようにフェンレチニド濃度を分析した。次に、0.1gのピーナッツバター中の1.5mgのフェンレチニドを1日2回で5日間マウスに与えた後、屠殺した。実施例2の乳化フェンレチニドおよびギブスの経口製剤の投与によって得られたフェンレチニドの組織中濃度を表5で比較している。フェンレチニドの齧歯類における半減期は約12〜16時間であると報告されている(ケロッフ(Kelloff),G.J.,ら、(1994)「臨床開発計画:N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド」、J Cell Biochem Suppl 20:176−96)。マイクロソフト(著作権)エクセル97ソフトウェアを使用し、不等分散を仮定した非対片側のステューデントのt検定によって、平均の差の統計的有意性を評価した。P値は片側である。
【0051】
表6は、本明細書に記載のフェンレチニド含有エマルジョンを腹腔内投与した場合のマウス癌異種移植片中の薬物濃度を示している。フェンレチニド投与の5日前に、免疫無防備状態(無胸腺)ヌードマウスに、500万個のC6ラット神経膠腫腫瘍細胞を皮下注入した。皮下注入した腫瘍異種移植片は、フェンレチニド注入開始時の大きさが約300〜400mmであった。マウス(無胸腺/ヌードマウス)に実施例2のフェンレチニド含有エマルジョン(2mg/ml)を腹腔内注入した(1.0mgフェンレチニド、i.p.、1日2回、2または4日間)。最終投与から4時間後にマウスを屠殺し、分析を行った。薬物の腫瘍異種移植片中の濃度を前述のように分析し、それらを表6に示す。腫瘍異種移植片データは、上記のc4および表5(実施例8および実施例9)に記載の血漿および組織データを得たマウスと同じマウスから得ている。フェンレチニドの齧歯類における半減期は約12〜16時間であると報告されている(ケロッフ(Kelloff),G.J.,ら、(1994)「臨床開発計画:N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド」、J Cell Biochem Suppl 20:176−96)。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
以上は本発明の説明であって、本発明を限定するために構成されたものではない。本発明は、請求項、および請求項の均等物によって規定される。
【0059】
[1] 非経口送達用の医薬エマルジョン組成物であって、
(a)親水性相と、
(b)2〜40%(体積/体積)の、該親水性相に粒子として分散されている疎水性相としての薬理学的に許容可能なリポイドと、
(c)0.01〜2%(重量/体積)のレチニドと、
(d)0〜10%(体積/体積)の溶媒と、
(e)0.01〜10%(重量/体積)の、該エマルジョンの安定化のための非イオン性界面活性剤と、
(f)0〜10%(重量/体積)の等張性物質と
の組み合わせを含み、pHが約5〜10である組成物。
[2] 前記レチニドがフェンレチニドである[1]に記載の組成物。
[3] 前記フェンレチニドが約0.1〜0.5%(重量/体積)で存在する[2]に記載の組成物。
[4] 前記溶媒が、少なくとも0.01%(体積/体積)の量で存在し、該溶媒が、エタノール、ジメチルスルホキサミド(DMSO)、およびエチルアセトアミド(DMA)からなる群より選択される[1]に記載の組成物。
[5] 前記溶媒が約0.01〜5.0%(体積/体積)のエタノールである[4]に記載の組成物。
[6] 前記リポイドが、ダイズ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、ルリヂサ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アマニ油、ゴマ油、パーム核油、綿実油、ココヤシ油蒸留物から得られる中鎖トリグリセリド類、クロフサスグリ油、およびこれらの混合物からなる群より選択される[1]に記載の組成物。
[7] 前記リポイドが10〜30%(体積/体積)のダイズ油である[6]に記載の組成物。
[8] 前記非イオン性界面活性剤が、卵リン脂質類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、またはポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとのブロックコポリマー類からなる群より選択される[1]に記載の組成物。
[9] 前記非イオン性界面活性剤が約2%(重量/体積)の卵リン脂質である[8]に記載の組成物。
[10] 前記等張性物質が約1〜3%(重量/体積)の量で存在する[1]の組成物。
[11] 前記等張性物質が約1%(重量/体積)のグリセリンである[10]に記載の組成物。
[12] レチニドの量が約0.1〜0.5%(重量/体積)であり、前記溶媒が0.0〜5.0%(体積/体積)の無水エタノールであり、前記リポイドの量が約10〜30%(体積/体積)であり、卵リン脂質類の量が約1〜5%(重量/体積)であり、前記等張性物質が約1%(重量/体積)のグリセリンであり、前記pHが5.0〜10.0である[1]に記載の組成物。
[13] 前記粒子の粒径が5〜1000nmである[1]に記載の組成物。
[14] 前記粒子の粒径が50〜400nmである[13]に記載の組成物。
[15] 過増殖性疾患の治療に有効な量の[1]に記載の組成物を被験者に非経口投与するステップを含む、治療を必要とする被験者における過増殖性疾患の治療方法。
[16] 前記投与するステップの前に、薬学的に許容可能な水性担体で前記組成物を希釈するステップをさらに含む[15]に記載の方法。
[17] 前記投与するステップが、静脈内投与ステップである[15]に記載の方法。
[18] 前記被験者がヒト被験者である[15]に記載の方法。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチニドと、該レチニドを分散または可溶化することができる溶媒とを含む非経口送達用の医薬組成物であって、
該溶媒はアルコキシル化ヒマシ油とアルコールとを含み、
該溶媒1mlあたりに少なくとも1mgの量のレチニドが存在するように、該レチニドが該組成物中に分散または可溶化されている医薬組成物。
【請求項2】
前記レチニドがフェンレチニドである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルコキシル化ヒマシ油がポリエトキシル化ヒマシ油である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルコールがエタノールである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルコキシル化ヒマシ油が30〜70体積%の範囲の量で前記溶媒中に含まれ、前記アルコールが30〜70体積%の範囲の量で前記溶媒中に含まれる請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
水をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
過増殖性疾患の治療に有効な量の請求項1に記載の組成物を被験者に非経口投与するステップを含む、治療を必要とする被験者における過増殖性疾患の治療方法。
【請求項8】
前記投与するステップの前に、薬学的に許容可能な水性担体で前記組成物を希釈するステップをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記投与するステップが、静脈内投与ステップである請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記被験者がヒト被験者である請求項7に記載の方法。


【図1】
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【公開番号】特開2009−292834(P2009−292834A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184500(P2009−184500)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【分割の表示】特願2002−559023(P2002−559023)の分割
【原出願日】平成13年12月5日(2001.12.5)
【出願人】(501303334)チルドレンズ・ホスピタル・ロス・アンジエルス (2)
【Fターム(参考)】