説明

バイオセンサー表面上での抗原のリアルタイム結合解析

本発明は、バイオセンサーを用いてファージと抗原間または抗原と抗体間の相互作用を検出する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
優先権
本出願は、2005年11月30日に出願された米国出願11/290,036に基づく優先権を主張し、米国出願11/290,036は、2001年10月23日に出願されたPCT/US01/45455の継続出願である2004年1月16日に出願された米国出願10/399,940に基づく優先権を主張する。PCT/US01/45455は、2001年7月3日に出願された米国出願60/303,028; 2001年4月12日に出願された米国出願60/283,314; 2000年10月30日に出願された米国出願60/244,312の利益を主張する2001年8月15日に出願された米国出願09/930,352(現在、米国特許7,094,595号)の一部継続出願である。また、本発明は、2003年1月16日に出願されたPCT/US03/01298に基づく優先権を主張し、PCT/US03/01298は、2001年8月15日に出願された米国出願09/930,352(現在、米国特許7,094,595号)の一部継続出願である2002年1月28日に出願された米国出願10/059,060の継続出願である。また、本出願は、2003年1月16日に出願されたPCT/US03/01298に基づく優先権を主張し、PCT/US03/01298は、2001年8月15日に出願された米国出願09/930,352(現在、米国特許7,094,595号)の一部継続出願である2002年1月28日に出願された米国出願10/058,626の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、バイオセンサー、および抗体、抗体フラグメント、またはファージに特異的に結合する抗原を検出する工程を含む方法の分野に関する。
【0003】
発明の背景
ファージと哺乳類細胞間の結合を検出できることは、治療抗体および診断抗体の発見のために不可欠な要素である。潜在的な治療抗体および診断抗体を同定するための通常のパイプラインは、次の工程を含む:(1)可溶性タンパク質または細胞関連タンパク質(可溶型または細胞で発現される)についてのファージディスプレイおよびファージパニング実験; (2)可溶性タンパク質について行われるファージELISA(細胞標的−ペプチドまたは細胞関連タンパク質のタンパク質模倣体のため); (3)ファージゲノム中のディスプレイ遺伝子は、分子生物学の技術によって可溶性抗体フラグメント発現プラスミドにサブクローニングされる; (4)抗体フラグメントはその後発現され、精製される; (5)一度精製されると抗体フラグメントは、ELISA、FACS、Guava、またはFMATにおいて細胞の機能的な結合を試験することができる; (6)リード抗体フラグメントは、結合動態について解析される; そして(7)その後、最上の抗体リードは、大規模生成、動態解析、およびin vivo有効性モデルのため、全長抗体発現ベクターにクローニングされる。
【0004】
細胞に関連するタンパク質標的へのファージの機能的な結合を解析するための通常のアッセイは、全哺乳類細胞または細菌細胞酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、フローサイトメトリー(蛍光標示式細胞分取器、FACS)、Guavaマイクロサイトメトリー製品(Guava Technologies、Hayward、CA)、および蛍光マイクロアッセイ技術(FMAT)を含む。細胞は複雑で、ファージは非特異的に結合しやすいため、ELISAでは、ファージのバックグラウンドの結合が高い。ELISAにおけるバックグラウンドの結合は、結合シグナルの増幅により増強される。細胞のELISAは、工程間で多くの洗浄が必要であることにより扱いにくく、細胞が非接着性である場合には、各洗浄間で遠心が必要であるために、煩わしい。たいてい、接着性細胞は、手動またはプレートウォッシャー上での洗浄中にELISAプレートに細胞を接着させておくため、固定されなければならない。固定は、細胞上のタンパク質の天然のエピトープを変化させる可能性がある。各ファージクローンはシグナル用に十分なファージを得るために精製される必要があるので、FACおよびGuavaにおけるファージの結合も扱いにくい。
【0005】
現在、たいていの研究者は、細胞への機能的な結合を調べるため、ファージ上のディスプレイをフラグメントおよび/または全長IgGにクローニングすることに多くの時間と労力を費やしている。潜在的な治療抗体を同定することに時間を費やせば費やすほど、有効な治療抗体を診療所に導入するのに時間がかかる。したがって、ファージディスプレイの分野において、哺乳類細胞への抗体の機能的結合を同定する速いルートが求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要約
本発明の一の実施態様は、結合パートナーのファージへの結合を検出する方法を提供する。該方法は、バイオセンサー上に、粗製ファージの標本、濃縮されていないファージの標本、同種でないファージの標本、またはそれらの組み合わせを固定化する工程、およびバイオセンサーを結合パートナーに接触させる工程を含む。バイオセンサー上に固定化されたファージへの結合パートナーの結合が検出される。結合パートナーは、小分子、糖、ポリマー、ペプチド、可溶性タンパク質、細胞受容体、細胞受容体の抗原模倣物、細胞、哺乳類細胞、または哺乳類細胞表面タンパク質とすることができる。ファージの標本および抗原は、検出可能なラベルを必ずしも含まない。ファージの標本は、ファージディスプレイライブラリとしてもよい。ファージの標本は受動的にバイオセンサーに固定化することができる、またはファージコートタンパク質に特異的な抗体によりバイオセンサーに固定化することができる。抗体または抗体フラグメントは、バイオセンサーに結合されたタンパク質への結合により、バイオセンサーに固定化することができる。抗体または抗体フラグメントがタグを含む場合、抗体または抗体フラグメントは、タグに特異的な抗体により、バイオセンサーに固定化することができる。バイオセンサーは、比色分析共鳴反射バイオセンサー(colorimetric resonant reflectance biosensor)またはエバネッセント光に基づくバイオセンサーとすることができる。
【0007】
本発明のその他の実施態様は、抗体の集合における抗体のエピトープクラスを検出する方法を提供する。該方法は、ディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメントをバイオセンサーに固定化する工程、および、結合パートナーがディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメントに結合するのに適した条件下で、バイオセンサーを、バイオセンサーに固定化されたディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメントに特異的に結合する結合パートナーに接触させる工程を含む。抗体の集合はバイオセンサーと接触する。抗体の集合が結合パートナーに結合することにより生成される検出可能なシグナルが、抗体の集合中には、固定化されたディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメントとは異なるエピトープクラスが存在することを示す。抗体の集合、結合パートナー、および固定化されたディスプレイファージ、固定化された抗体、または固定化された抗体フラグメントは、検出可能なラベルを必ずしも含まない。抗体の集合は、ファージクローン、抗体フラグメント、全長抗体、全長抗体をディスプレイするファージ、抗体フラグメントをディスプレイするファージ、ハイブリドーマ由来の抗体、およびファージディスプレイスクリーニング由来の抗体を含むことができる。ディスプレイファージは、精製されたファージの標本、粗製ファージの標本、濃縮されていないファージの標本、または同種でないファージの標本とすることができる。結合パートナーは、小分子、糖、ポリマー、ペプチド、可溶性タンパク質、細胞受容体、細胞受容体の抗原模倣物、哺乳類細胞、または哺乳類細胞表面タンパク質とすることができる。哺乳類細胞表面タンパク質は、膜結合タンパク質、一回膜貫通型タンパク質、複数回膜貫通型タンパク質、またはタンパク質チャネルとすることができる。バイオセンサーは、比色分析共鳴反射バイオセンサーまたはエバネッセント光に基づくバイオセンサーとすることができる。
【0008】
したがって、本発明は、例えば、低濃度の結合パートナーを分離し、タンパク質の親和性をランク付けし、複合体混合物を含む試料とともに作用して、解離速度(off-rate)ランキング解析を実行する方法を提供する。
【0009】
図1A−Cは、抗体および抗体フラグメント、F(ab)とscFvを描く。図1Aは、全長IgG抗体およびIgGのドメインを示す。図1Bは、F(ab)を示す。図1Cは、scFvを示す。
【0010】
図2は、GA3 BIND(登録商標)バイオセンサー上での細菌ウイルスの滴定を示す。
【0011】
図3A−Bは、ペリプラズム抽出物からの、TIO BIND(登録商標)バイオセンサー上でのF(ab)の捕獲を示す。図3Aは、sF(ab)特異的な捕獲表面の作成およびsF(ab)の捕獲を示す。図3Bは、図3Aにおいて記録されたsFabの捕獲のグラフ表示を示す。
【0012】
図4A−Dは、ペリプラズム抽出物からの、TIO BIND(登録商標)バイオセンサー上でのscFvの捕獲を示す。図4Aは、scFv特異的捕獲表面の作成および6xHisおよびc−mycタグを含むscFvの捕獲を示す。図4Bは、PBSおよびペリプラズム抽出物中に添加(spiked)された精製scFvの捕獲を示す。図4Cは、図4Bにおいて記録されたscFvの捕獲のグラフ表示を示す。図4Dは、図4Bにおいて記録されたscFvの捕獲のグラフ表示を示す。
【0013】
図5A−Cは、SA1 BIND(登録商標)バイオセンサー上でのペリプラズム抽出物からのscFvの捕獲を示す。図5Aは、6xHisタグを発現しているタンパク質に特異的な捕獲表面の作成を示す。図5Bは、PBSおよびペリプラズム抽出物中に添加(spiked)されたscFvの捕獲を示す。図5Cは、PBSおよびペリプラズム抽出物中に添加(spiked)された精製scFvの捕獲のグラフ表示を示す。
【0014】
図6A−Cは、GA1 BIND(登録商標)バイオセンサー上でのペリプラズム抽出物からのscFvの捕獲を示す。図6Aは、c−mycタグを含んでいるタンパク質に特異的な捕獲表面の作成を示す。図6Bは、PBSおよびペリプラズム抽出物中に添加(spiked)された、精製scFvの捕獲を示す。図6Cは、PBSおよびペリプラズム抽出物からのscFv捕獲のグラフ表示を示す。
【0015】
図7A−Eは、抗Fc TIO BIND(登録商標)バイオセンサーを用いた、ハイブリドーマ上清からのIgGの捕獲を示す。図7Aは、特異的マウスIgG捕獲表面の作成を示す。図7Bは、特異的マウスIgG捕獲表面の作成を示す。図7Cは、ハイブリドーマ培養液からのIgGの捕獲を示す。図7Dは、抗原、親細胞株、および抗原発現細胞株のバイオセンサー表面上に捕獲されたIgGへの結合のグラフ表示を示す。図7Eは、バイオセンサー表面上に捕獲されたIgG量で正規化した、抗原、親細胞株、および抗原発現細胞株のバイオセンサー表面上に捕獲されたIgGへの結合を示す表である。
【0016】
図8A−Eは、抗Fc TIO BIND(登録商標)バイオセンサーを用いた、血清からのIgGの捕獲を示す。図8Aは、特異的マウスIgG結合表面の作成を示す。図8Bは、血清からのIgGの捕獲を示す。図8Cは、血清からのIgGの捕獲を示す。図8Dは、図8Bにおいて記録されたsFabの捕獲のグラフ表示を示す。図8Eは、図8Cにおいて記録されたsFabの捕獲のグラフ表示を示す。
【0017】
図9A−Cは、GA1 BIND(登録商標)バイオセンサーを用いた、血清中での薬物−抗薬物アッセイを示す。図9Aは、IgG、抗薬物を捕獲するための表面の作成を示す。図9Bは、20μg/ml薬物表面上でのPBS、11%血清、および30%血清からの抗薬物の捕獲を示す。図9Cは、0μg/ml薬物表面上でのPBS、11%血清、および30%血清からの抗薬物の捕獲を示す。
【0018】
図10A−Cは、抗Fc TIO BIND(登録商標)バイオセンサーを用いた、血清からのIgGの捕獲を示す。図10Aは、抗薬物の捕獲のための薬物表面の作成を示す。図10Bは、50μg/ml薬物表面上でのPBS、11%血清、および30%血清からの抗薬物の捕獲を示す。図10Cは、0μg/ml薬物表面上でのPBS、11%血清、および30%血清からの抗薬物の捕獲を示す。
【0019】
図11A−Dは、抗Fc TIO BIND(登録商標)バイオセンサー上での抗体の結合および抗体のサンドウィッチペアの同定の、エンドポイント解析を示す。図11Aは、マウスIgG特異的表面の作成を示す。図11Bは、レイヤー1(抗体)の捕獲を示す。図11Cは、レイヤー2(抗体による抗原)の捕獲を示す。図11Dは、レイヤー3(抗体−抗原複合体による抗体)の捕獲を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な説明
バイオセンサー
ある実施態様において、本発明の方法は、とりわけ、蛍光や放射活性ラベル等のような検出可能なラベルを必要とせずに、タンパク質、DNA、小分子、ウイルス、細胞、およびバクテリア等のような無機物または有機物を検出するために使用することができるバイオセンサーの使用を含む。本発明の方法において、多数の適したバイオセンサーを用いることができ、限定するものではないが、該バイオセンサーは、フォトニック結晶バイオセンサー(例えば比色分析共鳴反射バイオセンサー、銀ナノ粒子アレイバイオセンサー)、干渉計バイオセンサー(例えばRIfS、二面偏波式干渉計、ハルトマン干渉計)、MEMSバイオセンサー(例えばカンチレバー、共鳴性の膜)、音響のバイオセンサー(例えば水晶振動子)、マイクロ波バイオセンサー(例えば誘電分光法)、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー(例えばクライシュマン(kreitchman)SPRバイオセンサー、イメージングSPRバイオセンサー、格子結合イメージングSPRバイオセンサー)、導波路バイオセンサー(例えば入力格子結合器バイオセンサー、チャープ導波路格子バイオセンサー)、エバネッセント光に基づくバイオセンサー、および、例えば、米国特許4,815,843号; 米国特許5,071,248号; および米国特許5,738,825号に記載されているような、光導波路を組み込んだ任意のバイオセンサーを含み、それらの開示は参照により全体として組み込まれる。
【0021】
本発明の方法は、とりわけ、薬学研究(例えば、初期スクリーニング、ハイスループットスクリーニング、二次スクリーニング、品質管理、細胞毒性、臨床試験の評価)、生命科学研究(例えば、プロテオミクス、タンパク質相互作用の解析、DNA−タンパク質相互作用の解析、酵素−基質相互作用の解析、細胞−タンパク質相互作用の解析)、診断テスト(例えば、タンパク質の存在、細胞の同定)、および環境検出(細菌および胞子の検出と同定)の分野において有用である。
【0022】
先の特許出願および先の特許公報は、どのようにして比色分析共鳴反射バイオセンサー表面は、高解像度のイメージング装置との組み合わせで、ナノリットルの試料材料を用いて、たくさんの生化学アッセイを並行して単一の表面上で実行するためのプラットフォームとして使用できるかを記載する。例えば、米国特許公報2002/0168295; 2002/0127565; 2004/0132172; 2004/0151626; 2003/0027328; 2003/0027327; 2003/017581; 2003/0068657; 2003/0059855; 2003/0113766; 2003/0092075; 2003/0026891; 2003/0032039; 2003/0017580; 2003/0077660; 2004/00132214参照。
【0023】
比色分析共鳴反射バイオセンサーは、サブ波長構造面を含む。サブ波長構造面は、薄膜コーティングの効果を再現できる回折光学素子の一種である。例えば、Peng & Morris、“Resonant scattering from two−demensional gratings”、J. Opt. Soc. Am. A、Vol. 13、No. 5、p.993、May 1996; Magnusson, & Wang、“New principle for optical filters”、Appl. Phys. Lett.、61、No. 9、p.1022、August、1992; Peng & Morris、“Experimental demonstration of resonant anomalies in diffraction from two−dimentional gratings”、Optics Letters、Vol. 21、No. 8、p. 549、April、1996参照。本発明のフォトニック結晶バイオセンサーの回折格子は、反射および透過の0次以外の回折次数が許容されないように、入射光の波長に比べて小さい格子周期を有する。フォトニック結晶バイオセンサーは、回折格子を含むことができ、高誘電率の誘導体からなるまたは高誘電率の誘導体でコートされ、基板レイヤーと回折格子溝(grating grooves)を埋めるカバーレイヤーの間に挟まれる。場合によっては、カバーレイヤーは使用されない。回折格子構造は、選択的に、狭い波長帯域の光と共役する。回折格子の深さおよび周期は、共鳴格子効果の波長未満である。
【0024】
比色分析共鳴反射バイオセンサー構造の反射色または透過色は、分子の添加により修正することができる。添加された分子は、バイオセンサー構造を通して入射放射線の光路長を増大させ、それによって最大反射または最大透過が起こる波長を修正する。
【0025】
白色光を用いて照らされる場合、比色共鳴反射バイオセンサーは、単一の波長または狭い波長帯域のみを反射する。分子がバイオセンサーの表面に結合された場合、反射される波長(色)は、回折格子と共役された光の光路の変化によりシフトする。バイオセンサー表面に特異的な結合物質などのような分子を固定化することにより、相補的な結合パートナー分子を、どんな種類の検出可能なラベル、例えば蛍光プローブまたは粒子ラベルを使用しないで検出することができる。検出技術は、液体に浸されたまたは乾燥したどちらのバイオセンサー表面を用いても行うことができる。
【0026】
比色分析共鳴反射バイオセンサーが、平行な白色光を用いて照らされる場合、狭い波長帯域のみを反射するか、さもなくば単一の波長帯域が反射される。狭い波長帯域は、波長の“ピーク”として記載される。分子がバイオセンサー表面に沈着される、または除去される時、“ピーク波長値”(PWV)は変化する。読み出し機器は、バイオセンサー表面上の離れた位置を平行な白色光で照らして、平行な反射光を集める。集められた光は、PWVを判定するため、波長のスペクトルと合わせられる。
【0027】
エバネッセント光に基づくバイオセンサーは、基板によりサポートされた導波路フィルムを含むことができ; 導波路フィルム(および任意に基板の一部として)の間に回折格子がある。例えば、米国特許4,815,843号参照。例えば低誘電率ナノポーラス材料などの低誘電率の誘電体は、回折格子、または低誘電率のナノポーラス材料と基板の組み合わせのために使用することができる。導波路は、導波路フィルムおよび基板を含む。導波路フィルムは、例えば、酸化スズ、五酸化タンタル、硫化亜鉛、二酸化チタン、窒化ケイ素、若しくはそれらの組み合わせ、またはポリスチロール若しくはポリカーボネートのようなポリマーとすることができる。回折格子は、導波路フィルムと基板の接触面に、または導波路フィルムの容積中に存在する。回折格子は、低誘電率のナノポーラス材料などのような低誘電率の材料を含む。導波路フィルムの屈折率は、隣接メディア(すなわち、基板とテスト試料)よりも高い。基板は、例えばプラスチック、ガラス、またはエポキシ樹脂とすることができる。特異的な結合物質は、導波路フィルムの表面および表面に添加されたテスト試料上に固定化することができる。レーザー光は、全内部反射により導波路フィルム中で伝播する。結合している分子により引き起こされる導波路フィルムの屈折率の変化を、放射された共役していない光の角度の変化を観察することにより、検出することができる。
【0028】
本発明のバイオセンサーは、内部表面、例えば液体含有容器の底表面を含むことができる。液体含有容器は、例えばマイクロタイタープレートウェル、テストチューブ、ペトリ皿、またはマイクロ流体チャネルとすることができる。本発明のある実施態様は、任意の型のマイクロタイタープレートに組み込まれたバイオセンサーである。例えば、各反応“スポット”が異なるテスト試料に曝露されるように、反応容器の壁を共鳴反射表面上に集めることによって、バイオセンサーは、マイクロタイタープレートの底表面に組み込まれることができる。したがって、それぞれ個別のマイクロタイタープレートウェルは、別個の反応容器として振舞うことができる。したがって、別個の化学反応を、反応液を混合することなく隣接したウェル中で起こすことができ、化学的に異なるテスト溶液を個別のウェルにアプライすることができる。
【0029】
薬剤のハイスループットスクリーニングの研究所、分子生物学研究の研究所、および診断アッセイ研究所にとって最も一般的なアッセイ形式は、マイクロタイタープレートである。プレートは、標準サイズのプラスチックカートリッジであり、格子状に並べられた96、384、または1536個の個別の反応容器を含むことができる。これらのプレートの標準的な機械配置により、液体の分注、ロボットのプレートの取り扱い、および検出システムは、一般的なフォーマットを用いて稼動するように設計される。本発明のバイオセンサーは、標準的なマイクロタイタープレートの底表面に組み込まれることも可能である。バイオセンサー表面を大面積で組み立てることができるため、および読み取りシステムがバイオセンサー表面に物理的に接触しないため、任意の数の個別のバイオセンサーエリアを定義することが可能であり、任意の数の個別のバイオセンサーエリアは、照明光学の焦点解像度、およびバイオセンサー表面を通過して照明/検出プローブをスキャンするx−yステージにより限定されるのみである。
【0030】
ファージの標本
ファージは細菌ウイルスであり、種特異的である。この特定の考察のため、二つの大腸菌ファージ、M13およびラムダについて考察する。他の細菌ウイルスおよび/または哺乳類のウイルスの場合、同様の前提を適用する。ファージの集団、特に、ファージディスプレイライブラリ等のような、同種でない、粗製の、および/または濃縮されていないファージの集団は、本発明の方法において使用することができる。ファージの同種でない標本は、一以上の種類のファージを含む標本、例えば各ファージが異なる結合分子を提示するファージディスプレイライブラリを含む。粗製ファージの標本は、ファージに感染した細菌が成長している培養液中に一以上の種類のファージを含む標本である。M13の場合、ファージは膜を通して融合し、細胞は溶解されない。ラムダの場合、細胞は溶解され、培養液は細胞成分を含む。この場合、細菌細胞と膜成分の入った粗製ファージの標本は、遠心により精製される。粗製ファージの標本は、培養液成分および分泌された細胞の分解産物の存在下、一以上の種類のファージを低濃度で含む。
【0031】
濃縮されていないファージの標本とは、ファージが沈殿していないファージの標本である。ファージが沈殿すると、培養液は除去され、ファージはPBSなどのような規定のバッファー中に再懸濁される。M13ファージの精製工程中、ファージは通常、PEG溶液を用いて一回または二回沈殿され、PBSグリセロール中に保存される。その工程中、ファージは、もとの培養液の体積よりも小さい体積のバッファー中に再懸濁される。通常の1−2リットルの培養液は、終体積2−5mlのPBSに再懸濁されて、ファージの精製、濃縮されたストックを提供する。
【0032】
ファージの固定化
ファージの標本は、バイオセンサーに固定化される。ファージの標本は、バイオセンサー表面に受動的に固定化することができる。ファージの表面はブロックされてもよく、抗原(例えば小分子、糖、ポリマー、ペプチド、可溶性タンパク質、細胞受容体の抗原模倣物、または哺乳類細胞)は、固定化されたファージへの結合でスクリーニングすることができる。抗原のファージへの特異的な結合は、通常、光学的、電気的、または視覚的な手段を介してそのような結合事象により生成されるシグナルの変化によって測定される。ファージへの抗原の結合は、ファージの濃度、抗原の解離速度、およびファージの細胞に機能的に結合する能力により、ランク付けすることができる。
【0033】
ファージの標本は、特異的な抗体の固定化を用いて、バイオセンサー表面に固定化することができる。ファージコートタンパク質に対する抗体は、バイオセンサー表面に固定化される。抗体は、バイオセンサー表面、またはプロテインAもしくはプロテインAと抗Fc表面に受動的に固定化することができる。表面はブロッカーによりブロックされてよい。ファージの表面への特異的な結合は、通常、光学的、電気的、または視覚的な手段を介してそのような結合事象により生成されるシグナルの変化によって測定される。ファージ(ウイルス)上のディスプレイは、ペプチド、小さなタンパク質、および/または抗体フラグメント、もしくは存在しないものとすることができる。類似したリガンドの結合は、続いて、通常、光学的、電気的、または視覚的な手段を介してそのような結合事象により生成されるシグナルの変化によって測定される。リガンドは、例えば、小分子、糖、ポリマー、ペプチド、可溶性タンパク質、細胞受容体の抗原模倣物、または細胞表面タンパク質とすることができる。細胞表面に発現されるタンパク質は、例えば、膜結合タンパク質、一回または複数回膜貫通タンパク質、またはタンパク質チャネルとすることができる。
【0034】
ファージの標本は、バイオセンサー表面に結合した抗原によって、バイオセンサー表面に固定化することができる。抗原(小分子、糖、ポリマー、ペプチド、可溶性タンパク質、または細胞受容体の抗原模倣物など)は、選別された所望の結合のエピトープを邪魔しない抗体などのような受動的または特異的な表面において、バイオセンサー表面上に固定化される。抗原表面はブロックされうる。ファージの標本の抗原への特異的結合は、通常、光学的、電気的、または視覚的な手段を介してそのような結合事象により生成されるシグナルの変化によって測定される。ファージ上のディスプレイは、例えばペプチド、小さなタンパク質、および/または抗体フラグメントとすることができる。抗原に結合しているファージは、抗原の濃度およびファージの解離速度により、ランク付けすることができる。
【0035】
抗体フラグメント(およびタンパク質)は、N末端またはC末端ドメインに結合されたビオチンまたはタンパク質性のタグ(マルチヒスチジン、c−myc、またはFLAG、MBP、GSTなど)を通して、バイオセンサーの表面に特異的に捕獲されうる。特異的表面は、タグに対する抗体に基づくバイオセンサー上に作ることができる。また、抗体フラグメントは、定常部(CH1)を通して特異的に捕獲されうる。特異的表面は、抗ラムダ、抗カッパ、抗ラムダと抗カッパの混合物、および/または抗F(ab’)抗体を用いて、この領域に対する抗体に基づくバイオセンサー上に作ることができる。表面はブロックされてもよい。抗体に特異的な抗体フラグメントの結合は、通常、光学的、電気的、または視覚的な手段を介してそのような結合事象により生成されるシグナルの変化によって測定される。抗体フラグメントの固定化は、精製されたまたは粗製の(全細胞抽出物、ペリプラズムの抽出物、または使用済みの培養液)試料由来とすることができる。同族のリガンドの結合は、その後続いて、通常、光学的、電気的、または視覚的な手段を介してそのような結合事象により生成されるシグナルの変化によって測定することができる。リガンドは、例えば、小分子、糖、ポリマー、ペプチド、可溶性タンパク質、細胞受容体の抗原模倣物、または細胞表面タンパク質とすることができる。細胞表面に発現されるタンパク質は、例えば、膜結合タンパク質、一回または複数回膜貫通タンパク質、またはタンパク質チャネルとすることができる。
【0036】
検出可能なラベルを含むことは特異的な結合物質または結合パートナーには必要ではないが、検出可能なラベルは、バイオセンサー表面上の特異的な結合物質または結合パートナーを検出するために使用することができる。本発明の特異的な結合物質または結合パートナーに検出可能なラベルがない場合には、それらはさらに、アッセイの感受性の強化、特異的な結合パートナーのバイオセンサー表面への固定、特異的な結合物質のそれらの結合パートナーへの結合またはハイブリダイゼーションの強化、および他の目的のために、他の種類のラベルおよびマーカーを含むことができる。
【0037】
リンスの工程により洗浄されないように、およびテスト試料中での分子への結合がバイオセンサー表面により妨げられないように、分子はバイオセンサー上に固定化することができる。いくつかの異なるタイプの表面化学ストラテジーは、例えば、さまざまなタイプのマイクロアレイおよびバイオセンサーにおいて使用するガラスへの分子の共有結合のために実施された。これらの同様の方法は、本発明のバイオセンサーに、容易に適用することができる。
【0038】
一以上のタイプの分子は、物理的な吸着により(つまり化学的なリンカーを使用しないで)、または化学的な結合により(つまり化学的なリンカーを使用して)、バイオセンサー表面に結合することができる。化学的な結合は、バイオセンサー表面上で分子のより強い結合を作り出し、表面結合分子の規定された配向性とコンフォメーションを提供することができる。
【0039】
他のタイプの化学的な結合は、例えば、アミン活性化、アルデヒド活性化、およびニッケル活性化を含む。これらの表面は、いくつかの異なるタイプの化学リンカーをバイオセンサー表面に結合させるために使用することができる。アミン表面は、いくつかのタイプのリンカー分子を結合させるために使用することができるが、アルデヒド表面は、追加のリンカーなしで、直接タンパク質に結合させるために使用することができる。ニッケル表面は、組み込まれたヒスチジン(“his”)タグを有する分子に結合させるために使用することができる。“hisタグのついた”分子をニッケル−活性化表面を用いて検出することは、当該技術分野においてよく知られている(Whitesides, Anal. Chem. 68, 490,(1996))。
【0040】
特異的な結合物質をプラスチック、エポキシ、または高屈折率の材料に固定化することは、ガラスへの固定化のために記載された通りに、原則的に実施することができる。しかし、特異的な結合物質を固定化する材料にダメージを与えるであろう酸洗浄工程は、省略してもよい。
【0041】
抗原
一以上の特異的な結合物質は、例えば、物理的な吸着によって、または化学的な結合によって、バイオセンサー上に固定化されうる。特異的な結合物質は、例えば、核酸、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、小さな有機分子、細胞、ウイルス、ファージ、バクテリア、ポリマー、ペプチド溶液、一本鎖または二本鎖DNA溶液、RNA溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリー由来の化合物を含む溶液、または生物学的試料;または無機分子としてもよい。生物学的試料は、例えば、血液、血漿、血清、消化管分泌物、組織または腫瘍の破砕物、滑液、糞便、唾液、痰、のう胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、または前立腺液としてもよい。好ましくは、抗体、抗体フラグメント、抗原、またはファージが、バイオセンサー上に固定化される。かかる特異的な結合物質は、前述した通り、直接固定化されてもよく、または特異的な表面を介して間接的に固定化されてもよい。例えば、タンパク性のタグ(例えば、ヒスチジン、c−myc、またはFLAG、MBP、GST等)を含む抗体またはタンパク質は、タグに結合する抗体を介してバイオセンサーに固定化されてもよい。結合パートナーは、特異的な結合物質に特異的に結合する物質である。結合パートナーは、特異的な結合物質のための上記記載のように、任意のタイプの試料または分子としうる。
【0042】
方法
本発明の方法は、例えば、ハイブリドーマのスクリーニング、マウス由来のヒト抗体、およびファージディスプレイ技術による治療用抗体および診断用抗体の開発;mRNA T7ファージディスプレイライブラリのスクリーニング;ならびに細菌のウイルスおよび哺乳類のウイルスの滴定のための哺乳類細胞および細菌細胞フリーシステムにおいて使用することができる。この文書において、結合分子、特に抗体フラグメントおよび/または全長抗体、例えば図1について議論される。
【0043】
ウイルスおよびファージの適用
本発明の方法は、ウイルスを滴定するために使用することができる。通常、ウイルスの滴定には、哺乳類のウイルスおよび細菌のウイルスのために、それぞれ生きた哺乳類細胞および細菌細胞が必要である。死または成長の遅い細胞のサークルを計測する。本発明の方法を用いて、哺乳類のウイルスまたは細菌のウイルスのコートタンパク質に対する抗体がバイオセンサーに結合され、無傷のウイルスの希釈物は抗体とコートタンパク質の相互作用を介して検出される。さらに、M13ファージは、GA3高密度グルタルアルデヒドバイオセンサーを用いた、ファージの直接的な固定化により滴定することができる。例えば図2参照。GA3バイオセンサーは、PBSを用いて30分間水和され、その後、精製されたM13の20%グリセロール溶液は、1.0e14から1.3e11プラーク/mlまで1:2の連続希釈を用いて調製され、20%グリセロールおよびPBS中のセンサーに加えられた。ファージ溶液は、センサーとともに2時間インキュベートされた。結合していないファージは洗浄され、エンドポイントの読み取り値は、ファージタンパク質コート上のフリーアミンを介して固定化されたファージの量が記録された。
【0044】
本発明の方法は、哺乳類のウイルスに関する生物学(受容体結合、細胞への侵入、中和抗体のスクリーニング等)の研究においても使用されうる。例えば、ウイルスがバイオセンサー上に固定化され、抗体またはタンパク質は、哺乳類細胞へのウイルスの融合を増加または減少させる能力でスクリーニングされる。
【0045】
本発明の方法は、毒物、ウイルス、および他のバイオテロ物質の検出にも使用することができる。例えば、毒物、ウイルスおよび他のバイオテロ物質、またはファージディスプレイライブラリを用いてそれらから得た抗原などのような標的に対して、パニングすることができる。これらのライブラリは、ペプチド、抗体フラグメント、タンパク質骨格、またはタンパク質ドメインをディスプレイすることができる。パニング工程の間で、ファージは標的に結合する能力が高まる。ファージのスクリーニング工程の間で、リード候補が同定される。ここで、本発明の方法を使用して、ファージをバイオセンサーに固定化することによって、毒物、ウイルス、または他のバイオテロ物質を検出することができる。これは、ペプチド合成や、ファージ上にディスプレイされるタンパク質または抗体フラグメントの分子クローニングからなる面倒な仕事に取って代わる。
【0046】
本発明の方法は、多数の陽性結合する潜在的な結合ディスプレイファージをスクリーニング(ファージパニングまたは選別実験後)するために使用することができる。特異的な結合表面を作成できることによって、ファージは、例えばバクテリア抽出物、および使用済み培地などのような規定された溶液や規定されていない溶液から特異的に取り出され、バイオセンサー上に固定化することが可能である。
【0047】
ファージディスプレイ技術を使用して、治療用または診断用抗体を同定する場合、本発明の方法を使用して、スクリーニングのファージレベルの早い段階で抗体の親和性をランク付けすることもできる。例えば、抗原フラグメントを提示しているファージは、バイオセンサーに直接、またはコートタンパク質に対する抗体を介して固定化することができる。ウェルあたりの固定化されたファージの量のシグナルが記録される。ファージ上に提示された抗体のための抗原が添加され、シグナルが記録される。ランクは、抗原への信号/ウェルを、ファージへの信号/ウェルで割ることにより、決定することができる。この計算によって、抗原シグナルが、各アッセイ(ウェル)において、ファージのユニットに対して正規化される。ファージ上の抗体フラグメントは、抗体フラグメントの遺伝子をクローン化する分子生物学の技術を使用せずに、その一価の親和性でランク付けすることもありうる。この技術は、遺伝子のクローニング、抗体フラグメントの発現、抗体フラグメントの精製、その後の抗体との結合のランク付けをする必要がなく、抗体フラグメントのランク付けをすることができる。
【0048】
本発明の方法は、ファージ上の対応する抗原のディスプレイの解離速度を判定するために使用することができる。例えば、ファージがバイオセンサー上に固定化され、洗浄されて、抗原が結合される。各洗浄工程の後、バイオセンサーが読まれる。抗原がバイオセンサー上のファージから遊離されている場合、シグナルは減少する。バイオセンサーは、複数回の洗浄中ずっと監視され、解離速度は時間の経過に伴うがシグナルの減少として計算される。
【0049】
この技術を用いて、細胞成分がバイオセンサーに結合し、続いて、細胞成分に対応するDNA配列を含むタンパク質パートナーまたはファージを添加することにより、結合パートナーを同定することができる。例えば、結合パートナーを含む細胞ライセート等のようなテスト試料は、本発明のバイオセンサーに適用することができ、続いて結合していない物質を除去するために洗浄される。バイオセンサーに結合している結合パートナーは、続いてバイオセンサーから溶出されて、例えば質量分析により同定される。ファージDNAディスプレイライブラリは、本発明のバイオセンサーに適用することができ、その後、結合していない物質を除去するために洗浄される。バイオセンサーに結合した個々のファージ粒子は、単離することができ、これらのファージ粒子内の挿入物は、配列を決定して、結合パートナーの正体を決定することができる。抗体は、バイオセンサー上にアレイの形で固定化することができ、抗体はその後、タンパク質などのような結合パートナーを含む、関心のあるテスト試料と接触させられる。バイオセンサー上に固定化された抗体に特異的に結合するタンパク質だけが、バイオセンサーに結合したままとなる。かかるやり方は、基本的に、酵素結合免疫吸着測定法の大規模版である。しかし、酵素または蛍光ラベルの使用は要求されない。
【0050】
本発明の方法は、標準的なファージディスプレイおよびファージパニングの手順にいくつかの利点を提供する。例えば、(1)細胞または他の結合パートナーにバイオセンサー上で固定化されたファージ上のディスプレイがラベルなしで直接結合することは、タンパク質のラベルおよび二次シグナルの増幅による影響を受けない点; (2)未精製試料からの特異的なファージの引き落とし(すなわちファージのバイオセンサーへの固定化)と、細胞または他の結合パートナーの結合は、過度の洗浄なしで、哺乳類細胞の機能的な結合を早く検出する点; および(3)ハイスループット、従って、最も効率的で速いファージスクリーニング方法を提供する点、を含む。
【0051】
さらに、ファージディスプレイを用いて、抗体の哺乳類細胞への機能的な結合を判定するためのファージディスプレイを用いた標準的な手順には、細胞への機能的な結合を調査するため、ファージ上のディスプレイをフラグメントおよび/または全長IgGにクローニングすることに、かなりの時間と労力が必要である。本発明の方法は、ファージを精製する必要をなくすことでプロセスを単純化しており、前述の通りハイスループットスクリーニングに適している。したがって、本発明の方法は、前述の通り、研究者がファージパニング実験からそのまま哺乳類細胞上のディスプレイの機能的な活性(機能的な抗原)の試験に進むことができるという利益をもたらす。特に、本発明の方法がハイスループットであるため、伝統的な発見のパイプラインにおけるような、後の結合実験よりも、むしろ最初の結合実験で、細胞結合を調査することができる。細胞への結合が治療用抗体を同定するために重要なアッセイであるので、本発明の方法により研究者は重大な情報を早く得ることができ、それによって治療用の発見が加速される。多くの場合、本発明の方法によって、発見の研究者は、治療用抗体を同定するのに尽力する最大3ヶ月から6ヶ月まで節約するということもありうる。
【0052】
前記の適用のため、および特にプロテオミクスの適用のため、本発明のバイオセンサー上のテスト試料由来の結合パートナー等の物質を選択的に結合でき、その後、さらなる解析のためバイオセンサーの異なる位置から結合した物質を選択的に除去できることは、有利である。本発明のバイオセンサーは、光の反射波長のシフトを測定することによって、バイオセンサーアレイの異なる位置に結合した試料由来の結合パートナーを検出し、定量することもできる。さらに、一の異なるバイオセンサーの位置における波長のシフトは、他の異なるバイオセンサーの位置における陽性対照および陰性対照と比較することができ、その結果、バイオセンサーアレイの異なる位置に結合する結合パートナーの量を判定することができる。
【0053】
IgGおよび抗体フラグメントの適用
本発明の方法は、抗体および抗体フラグメントを、例えばペリプラズム抽出物、ハイブリドーマ上清、血漿または血清などのような、複合の培地から獲得するために使用することができる。例えば図3から図10参照。以下の特異的表面は、以下の例中のウサギ抗マウスFc、ウサギ抗ヒトFc、ウサギ抗ヒトF(ab’)2、またはウサギ抗マウスF(ab')2を置換することによって、全長IgGまたはF(ab)を捕獲するために修飾することができる。以下の手順は、図3Aに記載されたPBSおよびペリプラズムの培養物中に添加(spiked)されたsF(ab)を捕獲するためのものである。sFabに特異的な捕獲表面は、SRU BIND(登録商標) TIOバイオセンサー上に作成された。図3(A)。水和させたTIO BIND(登録商標)バイオセンサーは、PBS中20μg/mlプロテインAを用いて30分間コートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したプロテインAの量が記録された。バイオセンサーはその後、1%ミルクを用いて30分間ブロックされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したミルクの量が記録された。続いて20μg/mlの特異的な捕獲試薬であるウサギ抗マウスF(ab’)2特異的IgGが30分間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は沈着したウサギ抗マウスF(ab’)2特異的IgGの量が記録された。プロテインAが残っている場所は、50μg/mlウサギIgGを用いて30分間ブロックされた。この時点で、マウスsF(ab)に特異的な捕獲表面が作成された。この例において、精製されたポリクローナルマウスsF(ab)、0.33、1.0および3.0μg/mlが、PBS中におよびsF(ab)を発現していない大腸菌ペリプラズム調製物中に添加(spiked)された。図3(A)および図4(B)。
【0054】
図4は、ペリプラズム抽出物からの、TIO BIND(登録商標)バイオセンサー上でのscFvの捕獲を示す。水和されたTIO BIND(登録商標)バイオセンサーは、PBS中20μg/mlプロテインAを用いて30分間コートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したプロテインAの量が記録された。バイオセンサーはその後、1%ミルクを用いて30分間ブロックされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したミルクの量が記録された。続いて20μg/mlの特異的な捕獲試薬であるウサギ抗マウスFcが30分間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は沈着したウサギ抗マウスFc特異的IgGの量が記録された。二つの捕獲抗体表面が作成され、(1)25μg/ml抗ヒスチジンおよび25μg/ml抗c−myc、ならびに(2)50μg/ml抗c−mycが30分間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着した捕獲抗体の量が記録された。この時点で、scFv捕獲表面が作成された。図4(A)。精製したscFv(5μg/ml)が、PBSおよびscFvをコードするプラスミドを含まない大腸菌ペリプラズム抽出物中に添加(spiked)された。scFvは1時間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したscFvの量が記録された。scFvの量は、図4(B)に表にまとめられ、図4(C)および図4(D)にグラフで示される。
【0055】
図5は、ペリプラズム抽出物からの、SA1 BIND(登録商標)バイオセンサー上でのscFvの捕獲を示す。水和されたSA1 BIND(登録商標)バイオセンサー、ストレプトアビジンは、50μg/mlビオチン抗ヒスチジンを用いて1時間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したビオチン抗ヒスチジンの量が記録された。図5(A)。8μg/mlのscFvが、PBSおよびscFvをコードするプラスミドを含まない大腸菌ペリプラズム抽出物中に添加(spiked)された。scFvは1時間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したscFvの量が記録された。scFvの量は、図5(B)に表にまとめられ、図5(C)にグラフで示される。
【0056】
図6は、ペリプラズム抽出物からの、GA1 BIND(登録商標)バイオセンサー上でのscFvの捕獲を示す。水和されたGA1 BIND(登録商標)バイオセンサー、グルタルアルデヒドは、50μg/ml抗c−mycを用いて1時間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着した抗mycの量が記録された。図6(A)。残っているグルタルアルデヒド反応基をブロックするため、200μg/mlのニュートラアビジンがBIND(登録商標)バイオセンサーとともに1時間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したニュートラアビジンの量が記録された。5μg/mlのscFvが、PBSおよびscFvをコードするプラスミドを含まない大腸菌ペリプラズム抽出物中に添加(spiked)された。scFvは1時間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したscFvの量が記録された。scFvの量は、図6(B)に表にまとめられ、図6(C)にグラフで示される。
【0057】
図7において、ハイブリドーマ技術を介して作成されたマウスIgGは、ハイブリドーマ上清から得られ、可溶性抗原および細胞上に発現された抗原を結合する能力がテストされる。マウスIgGに特異的な捕獲表面は、SRU BIND(登録商標) TIOバイオセンサー上に作成された。図7(A)および図7(B)。水和されたTIO BIND(登録商標)バイオセンサーは、PBS中20μg/mlプロテインAで30分間コートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したプロテインAの量が記録された。バイオセンサーはその後、1%ミルクを用いて30分間ブロックされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したミルクの量が記録された。続いて20μg/mlの特異的な捕獲試薬であるウサギ抗マウスFc特異的IgGが30分間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は沈着したウサギ抗マウスFc特異的IgGの量が記録された。プロテインAが残っている場所は、50μg/mlウサギIgGを用いて30分間ブロックされた。この時点で、マウスIgGに特異的な捕獲表面が作成された。プレート15を使用して、抗原を発現するトランスフェクトされた細胞株と親細胞株の結合がテストされた。プレート16を使用して、抗原の結合がテストされた。図7(C)は、プレート15およびプレート16上のハイブリドーマ上清からマウスIgGを捕獲するために測定された、nmのシフトを示す。図7(D)は、BIND(登録商標)バイオセンサー上に捕獲されたIgGへの抗原および細胞の結合を示す。図7(E)は、抗原および細胞の結合に関するnmのシフト、ならびにIgGのシグナルで除した抗原シグナルの比、およびIgGのシグナルで除した細胞結合シグナルの比を示す。抗体22、25、26、28、30、31、34、36、および37は、0.13の比を有する抗原へ最も高い親和性を有する37を含めて、抗原結合剤(IgGの結合で除した抗原結合)として分類することができる。抗体22、25、および26は、同様の親和性を有し、0.10の比を有する第二のクラスの結合剤を構成する。残りの抗体(28、30、31、34、および36)は、0.04よりも小さい比を有する非常に低い親和性を有する。IgGは、抗体30の場合、0.11のIgGで除した親細胞株と0.16のIgGで除した抗原提示細胞の比を用いて、一般的な細胞結合剤としても分類することができる。第二の細胞結合クラスは、それぞれ0.49および0.30のIgGにより除された抗原提示細胞と、それぞれ0.00および0.01のIgGにより除された親細胞株の比を用いて、抗体25および26におけるように、細胞上に発現される抗原に特異的である。ほかの抗体は、IgGで除した親細胞株と、IgGで除した抗原提示細胞の0.04よりも小さい比を有する、細胞結合剤ではない。
【0058】
図8は、血清からの、抗FcTIO BIND(登録商標)バイオセンサーを用いた抗体の捕獲を示す。マウスIgGに特異的な捕獲表面が、SRU BIND(登録商標) TIOバイオセンサー上に作成された。図8(A)。水和されたTIO BIND(登録商標)バイオセンサーは、PBS中20μg/mlプロテインAで30分間コートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したプロテインAの量が記録される。バイオセンサーはその後、1%ミルクを用いて30分間ブロックされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、沈着したミルクの量が記録された。続いて20μg/mlの特異的な捕獲試薬であるウサギ抗マウスFcが30分間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は沈着したウサギ抗マウスFcの量が記録された。プロテインAが残っている場所は、50μg/mlウサギIgGを用いて30分間ブロックされた。この時点で、マウスIgGに特異的な捕獲表面が作成された。図8(B)および(C)は、PBSならびに、5%、10%、20%、40%、および100%血清中に添加(spiked)されたマウスIgG(0.1−6.4μg/mlの連続希釈液)の捕獲を示す。図8(D)および図8(E)は、図8(B)および図8(C)における表データをグラフに示したものである。
【0059】
図9は、GA1Bindバイオセンサーを用いた、血清における薬物−抗薬物アッセイを示す。IgGは、治療用抗体薬の模倣体であり、抗薬物は、PBS中に添加(spiked)されたF(ab’)2およびGA1 BIND(登録商標)バイオセンサーを用いて臨床分離株由来のヒト血清において見られる模倣体IgGに対するマウス血清である。水和されたGA1 BIND(登録商標)バイオセンサーは、20μg/mlIgGで1時間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、表面に沈着したIgGの量が記録された。GA1 BIND(登録商標)バイオセンサーの表面に残っている遊離のアルデヒドは、100μg/mlの免疫されていないウサギのIgGを用いてインキュベートすることによって、拘束された。IgG(薬物):rIgG表面は、ピアス社のスタートブロックにより1時間ブロックもされた。図9(A)は、薬物表面特異的な産物のnmシフトを示す。0−7.1μg/mlの抗薬物の滴定曲線は、抗薬物をPBSまたは11%および30%マウス血清中に連続的な1:3希釈をすることにより、バイオセンサー上でインキュベートされた。抗薬物の20μg/mlの薬物表面への結合(図9(B))、および0μg/mlの薬物表面への結合(図9(C))を、グラフで示す。同量の抗薬物は、PBSに比べて11%血清において捕獲される。30%血清中では抗薬物はあまり捕獲されないが、抗薬物は検出可能である。
【0060】
図10は、血清中でTIO BIND(登録商標)バイオセンサーを用いた薬物−抗薬物アッセイの開発を示す。IgGは治療用抗体薬の模倣体であり、抗薬物はPBS中に添加(spiked)されたF(ab’)2および臨床分離株由来のヒト血清において見られる模倣体IgGに対するマウス血清である。図10(A)は、マウスIgGの捕獲のための特異的表面を作成している間に測定されたシフトを示す。水和されたTIO BIND(登録商標)バイオセンサーは、20μg/mlのプロテインAでコートされる。1%ミルクは、TIO上のプロテインAにより充てんされないままの結合部位をブロックするために使用される。ミルクによるブロッキング工程の後、表面は、20μg/mlウサギ抗ヒトFcを用いてインキュベートされる。50μg/mlのウサギIgGは、ウサギ抗マウスFcにより充てんされていないプロテインA結合部位をブロックするために使用される。実験のこの段階の間、各試薬は表面と30分間インキュベートされ、表面は洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、表面に沈着した各試薬の量が記録された。50μg/mlの薬物(IgG)は、特異表面とともに1時間インキュベートされ、洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、表面に沈着した各薬物の量が記録された。0−7.1μg/mlの抗薬物の滴定曲線は、抗薬物をPBSまたは11%および30%マウス血清中に連続的な1:3希釈をすることにより、バイオセンサー上でインキュベートされた。50μg/mlおよび0μg/mlの薬物表面への抗薬物の結合は、それぞれ図10(B)および11(C)に示される。抗薬物は、11%および30%血清中ではあまり捕獲されないが、抗薬物は検出可能である。
【0061】
抗体選別中のエピトープクラスの判定
抗体選別(抗体または抗体フラグメント)またはファージ選別中のエピトープクラスは、本発明の方法を用いて判定することができる。例において、分類される結合分子は、抗体またはディスプレイファージまたは両方の組み合わせとすることができる。一次結合分子は、受動的または特異的にバイオセンサーに固定化される。好ましくは、バイオセンサーは、マイクロタイタープレートの底表面を含む。表面は、ブロッカーによりブロックすることができる。抗原(糖、ポリマー、ペプチド、可溶性タンパク質、または細胞性受容体の抗原模倣体等)は、ディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメント表面によって特異的に捕獲される。分類される個々のファージクローン、抗体、抗体フラグメントは、ウェルに添加される。ウェル中で固定化されたディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメントが、分類されるファージ、抗体、または抗体フラグメントと同じエピトープクラス中で結合する場合、結合部位が、固定化されたファージ、抗体、または抗体フラグメントにより充てんされるため、測定可能なシグナルはないだろう。ウェル中で固定化されたディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメントが、分類されるファージ、抗体、または抗体フラグメントと異なるエピトープ結合部位を認識する場合、測定可能なシグナルが記録されるだろう。
【0062】
図11は、比色共鳴反射バイオセンサーを用いてエピトープのマッピングを行うための、標的ペプチドに結合しているモノクローナル抗体のエンドポイント解析を示す。図11(A)は、マウスIgGに特異的な表面を作成している間に測定されたシフトを示す。水和されたTIO BIND(登録商標)バイオセンサーは、20μg/mlのプロテインAでコートされる。プロテインAは、特異的にマウスIgGを捕獲する、ウサギ抗マウスFcに特異的な捕獲表面としてふるまう。1%ミルクは、TIO上のプロテインAにより充てんされないままの結合部位をブロックするために使用される。ミルクによるブロッキング工程の後、表面は、20μg/mlウサギ抗マウスFc−を用いてインキュベートされる。50μg/mlのウサギIgGは、ウサギ抗マウスFcにより充てんされていないプロテインA結合部位をブロックするために使用される。実験のこの段階の間、各試薬は表面と30分間インキュベートされ、表面は洗浄されて、エンドポイントの読み取り値は、表面に沈着した各試薬の量が記録された。図11(B)において、プロテインA:ミルク:ウサギ抗マウスFc:ウサギIgG表面による4つのマウスIgGの捕獲が記録される。10μg/mlのIgGは、特異的表面とともに30分間インキュベートされた。マウスIgGの二次レイヤーが抗原を通して結合し、ウサギ抗マウスFcでは結合しないことを確認するため、ピアス社からの免疫されていないマウスのIgGを50μg/mlで添加し、占有されていないウサギ抗マウスFc結合部位が充てんする、図11(A)。図11(C)は、抗原が捕獲されたマウスIgGに添加される時、測定されたシフトを記録する。Ab−4は抗原に結合せず、4つのIgGは抗原結合剤(Ab−1、Ab−2およびAb−3)および抗原非結合剤(Ab−4)として分類することができる。抗原結合抗体は、抗原シフトをBIND(登録商標)バイオセンサーにより測定された抗体シフトで除することによってランク付けすることもできる。Ab−2は抗原に高い親和性を有し、0.56の比を有する。Ab−3は、抗原にAb−1よりもわずかに高い親和性を有し、抗原結合/抗体シフトの比はそれぞれ0.38および0.35を有する。図11(D)は、レイヤー1において、レイヤー3のように、同じマウスIgGの添加により作成された格子を示す。同じウェル中の2つのIgGが抗原の同じ領域に結合する場合、シグナルは検出されない。これは、同じ抗体を同じウェルに2回添加することにより、例証される。自己競合は、対角線上に見られるように、シグナルなしという結果となる:Ab−1対Ab−1は0.016nmという結果となる;Ab−2対Ab−2は0.063nmという結果となる;Ab−3対Ab−3は0.050nmという結果となる。Ab−1およびAb−3は、同じ結合クラスであり、Ab−1対Ab−3は0.033nmシフトという結果となり、Ab−3対Ab−1の逆方向は0.024nmシフトという結果となるため、サンドウィッチペアとして使うことはできない。ウェル中の2つのIgGがどちらも抗原を同時に結合することができる場合、それらは異なる結合クラスに属し、サンドウィッチペアとして使用することができる。Ab−2は、第二の結合クラスであり、Ab−1およびAb−3用のサンドウィッチパートナーとして使用することができる:Ab−1対Ab−2は0.138である;Ab−2対Ab−1は0.150である;Ab−3対Ab−2は0.203である;およびAb−2対Ab−3は0.212である。この技術は、固定化された第一および/または第2の抗体がファージ上に提示された抗体または可溶性の抗体(精製したまたは未精製の試料)である場合、機能する。組み合わせは、ファージ:ファージ、ファージ:抗体フラグメント、抗体フラグメント:ファージ、抗体フラグメント:抗体フラグメント、全長抗体:ファージ、ファージ:全長抗体、全長抗体:全長抗体、抗体フラグメント:全長抗体および抗体:抗体フラグメントを含む。これはハイブリドーマおよびファージディスプレイ選別、ならびに例えばマウス等の他の宿主において作られるヒト抗体にも適用することができる。
【0063】
ここで引用された全ての特許、特許出願、および他の科学的または技術的文書は、参照により完全に組み込まれる。ここに好ましい実施態様の現在の代表として記載された方法および組成物は例であり、本発明の範囲の制限として意図するものではない。変更および他の使用は当業者に明らかであり、本発明の精神の中に包含される。ここに図解で記載された本発明は、任意の要素、ここに特に開示されていない制限なしで実施することができる。したがって、例えば、どの場合にも、“含んでいる”、“本質的になる”、および、“からなる”の任意の語は、他の2つの語のどちらでも置換することができ、同時に通常の意味を維持する。採用されている語および表現は、記述の語として使用され、限定の語ではなく、かかる語および表現の使用において、示され記述された特徴またはそれらの一部の相等物を排除する意図もないが、請求された本発明の範囲内で多様な変更が可能である。したがって、本発明は、実施例および任意の特徴により具体的に開示されているが、ここに開示された概念の変更および変形は、明細書および添付の特許請求の範囲により定義されるように、本発明の範囲内であると考えられると理解されるべきである。
【0064】
さらに、本発明の特徴または形態はマーカッシュグループまたは他の代わりのグループの観点で記載される場合、本発明は、個々のメンバーまたはマーカッシュグループもしくは他のグループのサブグループのメンバーの観点で、それによっても記載されることを当業者は認識する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1A】全長IgG抗体およびIgGのドメインを示す。Vは可変部を表し、Cは定常部を表し、Hは重鎖を表し、Lは軽鎖を表し、S-Sはジスルフィド結合を表す。
【図1B】F(ab)を示す。
【図1C】scFvを示す。VLおよびVH間の線は、組換えリンカーであり、IgGにおいて天然には見られない。
【図2】GA3 BIND(登録商標)バイオセンサー上での細菌ウイルスの滴定を示す。
【図3A】PBSおよび大腸菌ペリプラズム抽出物中に添加(spiked)されたF(ab)の捕獲の比較。sF(ab)特異的捕獲表面の作成およびsF(ab)の捕獲を示す。
【図3B】図3Aにおいて記録されたsFabの捕獲のグラフ表示を示す。
【図4A】ペリプラズム抽出物からの、TIO BIND(登録商標)バイオセンサー上でのscFvの捕獲を示す。scFv特異的捕獲表面の作成および6xHisおよびc−mycタグを含むscFvの捕獲を示す。
【図4B】PBSおよびペリプラズム抽出物中に添加(spiked)された精製scFvの捕獲を示す。
【図4C】PBSおよびペリプラズム抽出物中に添加(spiked)された精製scFvの、抗ヒスチジンと抗c−mycの混合捕獲抗体による捕獲を示す。
【図4D】PBSおよびペリプラズム抽出物中に添加(spiked)された精製scFvの、抗c−myc捕獲表面による捕獲を示す。
【図5A】ペリプラズム抽出物からの、SA1 BIND(登録商標)バイオセンサー上でのscFvの捕獲を示す。表面の作成およびscFvの特異的な捕獲を示す。
【図5B】PBSおよびペリプラズム培養物中に添加(spiked)されたscFvの捕獲を示す。
【図5C】PBSおよびペリプラズム抽出物から、ストレプトアビジン:ビオチン抗ヒスチジンにより特異的に捕獲された、8μg/mlのscFvを示す。
【図6A】ペリプラズム抽出物からの、GA1 BIND(登録商標)バイオセンサー上でのscFvの捕獲を示す。scFv捕獲表面の作成を示す。
【図6B】PBSおよびペリプラズム抽出物中に添加(spiked)された精製scFvの捕獲を示す。
【図6C】PBSおよびペリプラズム抽出物から、抗c−mycによる5μg/mlのscFvの捕獲を示す。
【図7A】抗FcTIO BIND(登録商標)バイオセンサーを用いた、ハイブリドーマ上清からのIgGの捕獲を示す。特異的IgG捕獲表面の作成を示す。
【図7B】特異的IgG捕獲表面の作成を示す。
【図7C】ハイブリドーマ培養液からのIgGの捕獲を示す。
【図7D】抗原、抗原+細胞、および細胞のバイオセンサー表面上に捕獲されたIgGへの結合を示すグラフ表示である。
【図7E】バイオセンサー表面上に捕獲されたIgG量で正規化した、抗原、抗原+細胞、および細胞のバイオセンサー表面上に捕獲されたIgGへの結合を示す表である。
【図8A】抗Fc TIO BIND(登録商標)バイオセンサーを用いた、血清からのIgGの捕獲(N=2)を示す。特異的IgG結合表面の作成を示す。
【図8B】血清からのIgGの捕獲を示す。
【図8C】血清からのIgGの捕獲を示す。
【図8D】図8Bにおいて記録されたsFabの捕獲のグラフ表示を示す。
【図8E】図8Cにおいて記録されたsFabの捕獲のグラフ表示を示す。
【図9A】GA1 BIND(登録商標)バイオセンサーを用いた、血清での薬物:抗薬物アッセイを示す。IgGの捕獲に特異的な表面の作成を示す。
【図9B】20μg/ml薬物表面上でのPBS、11%血清、および30%血清からの抗薬物の捕獲を示す。
【図9C】0μg/ml薬物表面上でのPBS、11%血清、および30%血清からの抗薬物の捕獲を示す。
【図10A】抗Fc TIO BIND(登録商標)バイオセンサーを用いた、血清からのIgG捕獲を示す。抗薬物の捕獲のための薬物表面の作成を示す。
【図10B】50μg/ml薬物表面上でのPBS、11%血清、および30%血清からの抗薬物の捕獲を示す。
【図10C】0μg/ml薬物表面上でのPBS、11%血清、および30%血清からの抗薬物の捕獲を示す。
【図11A】抗Fc TIO BIND(登録商標)バイオセンサー上での、抗体結合のエンドポイント解析および抗体のサンドウィッチペアの同定を示す。マウスIgG特異的表面の作成を示す。
【図11B】レイヤー1(抗体)の捕獲を示す。
【図11C】レイヤー2(抗体による抗原)の捕獲を示す。
【図11D】レイヤー3(抗体−抗原複合体による抗体)の捕獲を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合パートナーのファージへの結合を検出する方法であって、
(a)バイオセンサー上に、粗製ファージの標本、濃縮されていないファージの標本、同種でないファージの標本、濃縮されたファージの標本、またはそれらの組み合わせを固定化する工程;
(b)バイオセンサーを結合パートナーに接触させる工程;
(c)バイオセンサー上に固定化されたファージへの結合パートナーの結合を検出する工程
を含む該方法。
【請求項2】
結合パートナーが、小分子、糖、ポリマー、ペプチド、可溶性タンパク質、細胞受容体、細胞受容体の抗原模倣物、細胞、哺乳類細胞、または哺乳類細胞表面タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ファージの標本および抗原が検出可能なラベルを含まない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ファージの標本がファージディスプレイライブラリである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ファージの標本が受動的にバイオセンサーに固定化される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ファージの標本が、ファージコートタンパク質に特異的な抗体またはファージコートタンパク質に特異的な抗体フラグメントによりバイオセンサーに固定化される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
抗体または抗体フラグメントが、バイオセンサーに結合しているタンパク質への結合によりバイオセンサーに固定化される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抗体または抗体フラグメントがタグを含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
抗体または抗体フラグメントが、タグに特異的な抗体によりバイオセンサーに固定化される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
バイオセンサーが比色分析共鳴反射バイオセンサーまたはエバネッセント光に基づくバイオセンサーである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ファージの標本が、バイオセンサー表面上の一以上の点、ウェル、またはウェル中の一以上の点において固定化される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
抗体の集合における抗体のエピトープクラスを判定する方法であって、
(a)ディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメントをバイオセンサーに固定化する工程;
(b)結合パートナーがディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメントに結合するのに適した条件下で、バイオセンサーを、バイオセンサーに固定化されたディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメントに特異的に結合する結合パートナーに接触させる工程;
(c)抗体の集合をバイオセンサーと接触させる工程;
を含み、抗体の集合が結合パートナーに結合することにより生成される検出可能なシグナルが、抗体の集合中には、固定化されたディスプレイファージ、抗体、または抗体フラグメント中とは異なるエピトープクラスが存在することを示す該方法。
【請求項13】
抗体の集合がファージクローンを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
抗体の集合が、抗体フラグメント、全長抗体、全長抗体をディスプレイするファージ、抗体フラグメントをディスプレイするファージを含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
抗体の集合がハイブリドーマ由来の抗体を含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
抗体の集合がファージディスプレイスクリーニング由来の抗体を含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
ディスプレイファージが、粗製ファージの標本、濃縮されていないファージの標本、濃縮されたファージの標本、または同種でないファージの標本である、請求項12記載の方法。
【請求項18】
結合パートナーが、小分子、糖、ポリマー、ペプチド、可溶性タンパク質、細胞受容体、細胞受容体の抗原模倣物、哺乳類細胞、または哺乳類細胞表面タンパク質である、請求項12記載の方法。
【請求項19】
哺乳類細胞表面タンパク質が、膜結合タンパク質、一回膜貫通型タンパク質、複数回膜貫通型タンパク質、またはタンパク質チャネルである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
バイオセンサーが、比色分析共鳴反射バイオセンサーまたはエバネッセント光に基づくバイオセンサーである、請求項12記載の方法。
【請求項21】
抗体の集合、結合パートナー、および固定化されたディスプレイファージ、固定化された抗体、または固定化された抗体フラグメントが検出可能なラベルを含まない、請求項12記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【公表番号】特表2009−517695(P2009−517695A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543421(P2008−543421)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/045684
【国際公開番号】WO2007/064702
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(503159210)エス アール ユー バイオシステムズ,インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】