説明

バイオディーゼル燃料製造装置

【課題】生成したバイオディーゼル燃料とグリセリンとの分離状況を容易に確認することができ、また、エステル交換反応に使用しなかったメタノール溶媒を容易に回収することができるバイオディーゼル燃料製造装置を得る。
【解決手段】反応槽、反応槽中の液体を攪拌するための攪拌装置、メタノール還流装置、を備えるバイオディーゼル燃料の製造装置であって、反応槽の側面の少なくとも1か所に、反応槽内部を覗くための覗き窓を有し、前記覗き窓は、(a)反応槽を縦に貫く貫通孔、(b)前記貫通孔を塞ぎ、外側を反応槽外部に向け、内側を反応槽内部に向けて設置されたテンパーガラス、(c)前記テンパーガラス内側に接する反応液保持部、(d)反応槽内部と前記反応液保持部とを結ぶ少なくとも1つの反応液流通孔、を有することを特徴とする製造装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステル)の製造装置に関する。さらに詳しくは、バイオディーゼル燃料の製造において、バイオディーゼルとグリセリンとを分離する際に、これらの境界を明確に視認でき、効率よくバイオディーゼル燃料を製造することができる装置に関する。さらに、バイオディーゼル燃料の製造において使用するメタノール溶媒を、バッチ内に還流するか回収するかの切り替えバルブを設けることにより、劣化したメタノール溶媒を効率的に除去できる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物油は脂肪酸トリグリセリドからなり、このグリセリンをメタノールでエステル交換した脂肪酸メチルエステルがディーゼル燃料となりうることは以前から知られている。最近の原油価格の高騰、および環境問題からこの脂肪酸エステルが石油を原料としないバイオディーゼル燃料として脚光を浴びている。
【0003】
欧州では、菜種を原料としたバイオディーゼル燃料への取り組みが進んでおり、既に200万klを超えるバイオディーゼル燃料が生産されている。米国においては、大豆を原料としたバイオディーゼル燃料が生産されている。わが国では、食用油、とりわけ廃食用油を原料としたバイオディーゼル燃料の製品化が進められてきた。
【0004】
植物油とメタノールから脂肪酸メチルエステルを製造するには、特開平7−197047や特開平10−245586で開示されているようにカセイソーダやカセイカリを触媒として用いることが広く行われている。
【0005】
しかし、植物油とメタノールから脂肪酸メチルエステルを製造する場合、副生成物であるグリセリンを分離する必要があるが、コマーシャルプラントスケールでこの反応を行った場合、生成した脂肪酸メチルエステルとグリセリンの分離状況を明確に判別できないという問題があった。すなわち、反応槽側面に内部を観察するための覗き窓を設けてあっても、反応槽内部が暗く、生成した脂肪酸メチルエステルとグリセリンの分離状況を明確に判別できない。このため、反応の終点を明確に確認することができず、また、生成物を的確に回収することができないとうい問題があった。
【0006】
さらに、反応に使用するメタノール溶媒は、通常反応中に気化して反応層上部に上昇し、上部に設けた冷却装置により液化され、反応層に還流される。
【0007】
しかし、通常反応に用いるメタノールは、エステル交換反応を行うものより過剰に投入され、使用されなかったメタノールが生成したバイオディーゼル中に混在することとなり、メタノールの有効利用が図られないという問題があった。
【特許文献1】特開平7−197047号公報
【特許文献2】特開平10−245586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、生成したバイオディーゼル燃料とグリセリンとの分離状況を容易に確認することができる装置を開発することにある。また、本発明は、エステル交換反応に使用されなかったメタノール溶媒を容易に回収することができる装置を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、バイオディーゼル燃料の製造装置において、特定の覗き窓を設けること、および、メタノールの回収手段を設けることで上記課題を解決することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、反応槽、反応槽中の液体を攪拌するための攪拌装置、メタノール還流装置、を備えるバイオディーゼル燃料の製造装置であって、反応槽の側面の少なくとも1か所に、反応槽内部を覗くための覗き窓を有し、前記覗き窓は、(a)反応槽を縦に貫く貫通孔、(b)前記貫通孔を塞ぎ、外側を反応槽外部に向け、内側を反応槽内部に向けて設置されたテンパーガラス、(c)前記テンパーガラス内側に接する反応液保持部、(d)反応槽内部と前記反応液保持部とを結ぶ少なくとも1つの反応液流通孔、を有することを特徴とする製造装置である。
【0011】
また、本発明は、前記反応液流通孔を反応槽の縦方向に複数有することを特徴とする上記の製造装置である。
【0012】
また、本発明は、前記複数有する反応液流通孔において、下部に有する少なくとも1つの反応液貫通孔の直径が、上部に有する反応液貫通孔の直径より大きいことを特徴とする上記の製造装置である。
【0013】
また、本発明は、前記メタノール還流装置において、液化したメタノールを、前記反応槽に還流するか、または、メタノール回収槽に投入するかを切り替える、切り換えバルブをさらに有することを特徴とする、上記の反応装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、生成したバイオディーゼル燃料とグリセリンとの分離状況を容易に確認することができ、また、エステル交換反応に使用されなかったメタノール溶媒を、容易に回収することができるバイオディーゼル燃料製造装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を説明する。図1は、本発明のバイオディーゼル燃料製造装置の外観を模式的に示した図である。図1において、本発明のバイオディーゼル燃料製造装置1は、反応槽10、反応槽10上部に配置された攪拌装置20、反応槽10上部に配置されたメタノール還流装置30、反応槽10の側面に配置された覗き窓40から構成される。
【0016】
図2に覗き窓の拡大図を示す。図2において、覗き窓40は、反応槽10に縦方向に空けられた貫通孔60、反応液流通孔70a〜70fから構成される。
【0017】
図3に、図2におけるB−B’切断面を示す。図3において、貫通孔60は、テンパーガラス80の外側で塞がれ、テンパーガラス80の内側は、1部を隔壁100に接し、隔壁100に設けられた反応液保持部90から構成される。
【0018】
図4に、図2におけるC−C’切断面を示す。図4において、隔壁100に反応液流通孔70dが設けられている。
【0019】
図5に、図2におけるA−A’切断面を示す。図2および図5において、反応液流通孔70a〜70fは、下方に行くにしたがいその直径が大きくなっている。
【0020】
図6〜図8に、本発明におけるメタノール還流装置30の詳細な図を示す。図6は、本装置におけるメタノール還流装置30の正面図である。図7は、本装置におけるメタノール還流装置30の上面図である。図8は、本装置におけるメタノール還流装置30の側面図である。本発明におけるメタノール還流装置30は、全体を覆う匡体32、匡体32の下方側面に設置され、メタノール回収槽110および反応槽10に接続する切り替えレバー31、匡体32の内部に設置されたラジエター33、匡体32の上部に設置された排出口34、匡体32の上部に設置された気化したメタノールの回収管35、ラジエター33に設置された冷却水導入口36、同じくラジエター33に設置された冷却水排出口37、ラジエター33の下方に設置された液化したメタノールの受け皿38から構成される。
【0021】
次に、本発明のバイオディーゼル燃料の製造装置の作用について説明する。まず、反応槽10に、原料となる植物油とメタノールを投入し、必要に応じエステル交換触媒を投入し、攪拌装置20により反応槽10内を攪拌する。エステル交換触媒としては、グリセリンとメタノールのエステル交換を促進するものであれば特に制限はないが、たとえば、アルカリ金属リン酸塩等をあげることができる。そして、図示しない温度調節装置により攪拌槽10内の温度をエステル交換反応が進行しやすい温度に調節する。反応温度としては、特に制限はないが、通常は40〜90℃に保たれる。また、メタノール還流装置30のラジエター33の冷却水導入口36から冷却水を流し、冷却水排出口37から冷却水を取り出す。この際の冷却水の温度は、特に制限はなく、メタノールが液化する温度に設定すればよい。そして、エステル交換反応の際に、反応に使用されなかったメタノールが気化して、メタノール還流装置30に上昇してくる。ここで、気化したメタノール120が、ラジエター33に接することにより、メタノールが液化され、液化されたメタノール130は、メタノールの受け皿38に貯まる。そして、切り替えバルブ31を操作することにより、メタノールの受け皿38に貯まったメタノールを反応槽10に還流させるか、または、メタノール回収槽110に回収する。これにより、反応に使用しなかったメタノールを効率的に回収することができる。なお、ラジエター33によっても液化しなかったメタノールは、別途メタノール回収管35から回収され、メタノール回収槽110に導入される。また、メタノール還流装置30の上部には、上昇気流を発生させるための排出口34が備えてある。
【0022】
次に、本装置の覗き窓の作用について説明する。図3において反応液保持部90の反応液は、反応液流通孔70a〜70fを通じて反応槽10の反応液と連通している。このため、反応槽10内の反応液の状況を、反応液保持部90を通して、観察することが可能となる。すなわち、反応槽10内部の色71は、暗いためその様子を観察できないが、隔壁100で塞がれた反応液保持部90では、反応液の厚みが小さいため、反応液の色72を容易に観察することができる。これにより、反応槽10の下方に分離したグリセリンと、生成したバイオディーゼルとの境界を明瞭に確認することができ、エステル交換反応の終点の確認、および、バイオディーゼルの回収を容易に行うことができるようになる。また、反応液流通孔70の数としては、反応槽10の様子を確認することができるものであれば特に制限はないが、たとえば3〜20個を設けることが一般的である。また、反応液流通孔70の孔の大きさは、反応槽10の様子を確認することができるものであれば特に制限はなく、また、反応槽10の大きさに応じて適宜決定されるが、通常は、5〜50mmとするのが一般的である。また、反応液流通孔70の孔の大きさは、それぞれ異なっても良く、特に、下方に行くにしたがい、直径を大きくすることで、グリセリンとバイオディーゼルとの境界をはっきりと確認することができるようになる。
【実施例】
【0023】
図9に、本発明により分離したバイオディーゼル150とグリセリン140との様子を模式的に示す。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明により、生成したバイオディーゼル燃料とグリセリンとの分離状況を容易に確認することができ、また、エステル交換反応に使用されなかったメタノール溶媒を容易に回収することができるバイオディーゼル燃料製造装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明のバイオディーゼル燃料製造装置の外観を模式的に示した図である。
【図2】図2は、本装置の覗き窓の拡大図である。
【図3】図3は、図2におけるB−B’切断面である。
【図4】図4は、図2におけるC−C’切断面である。
【図5】図5は、図2におけるA−A’切断面である。
【図6】図6は、本装置におけるメタノール還流装置30の正面図である。
【図7】図7は、本装置におけるメタノール還流装置30の上面図である。
【図8】図8は、本装置におけるメタノール還流装置30の側面図である。
【図9】図9は、本発明により分離したバイオディーゼル150とグリセリン140との様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0026】
1 バイオディーゼル燃料製造装置
10 反応槽
20 攪拌装置
30 メタノール還流装置
31 切り替えレバー
32 匡体
33 ラジエター
34 排出口
35 回収管
36 冷却水導入口
37 冷却水排出口
38 液化したメタノールの受け皿
40 覗き窓
60 貫通孔
70a〜70f 反応液流通孔
71 反応槽内部の色
72 反応液の色
80 テンパーガラス
90 反応液保持部
100 隔壁
110 メタノール回収槽
120 気化したメタノール
130 液化したメタノール
140 分離したグリセリン
150 生成したバイオディーゼル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽、反応槽中の液体を攪拌するための攪拌装置、メタノール還流装置、を備えるバイオディーゼル燃料の製造装置であって、
反応槽の側面の少なくとも1か所に、反応槽内部を覗くための覗き窓を有し、前記覗き窓は、(a)反応槽を縦に貫く貫通孔、(b)前記貫通孔を塞ぎ、外側を反応槽外部に向け、内側を反応槽内部に向けて設置されたテンパーガラス、(c)前記テンパーガラス内側に接する反応液保持部、(d)反応槽内部と前記反応液保持部とを結ぶ少なくとも1つの反応液流通孔、
を有することを特徴とする製造装置。
【請求項2】
前記反応液流通孔を反応槽の縦方向に複数有することを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記複数有する反応液流通孔において、下部に有する少なくとも1つの反応液貫通孔の直径が、上部に有する反応液貫通孔の直径より大きいことを特徴とする請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記メタノール還流装置において、液化したメタノールを、前記反応槽に還流するか、または、メタノール回収槽に投入するかを切り替える、切り換えバルブをさらに有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−209209(P2010−209209A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56646(P2009−56646)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(509069962)バイオマス・ジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】