説明

バイオトイレ

【課題】微生物を活性化させることにより、従来に比べて短時間で排泄物を分解処理できる、コンパクトなバイオトイレを提供する。
【解決手段】バイオトイレ10は、蓋28を有する箱状のケーシング11内に、排泄物を受けるボウル部33と、上面が開口部とされ、ボウル部33の直下に配置された処理槽12と、処理槽12内に収容された微生物用担体を攪拌する攪拌手段と、処理槽12内にバイオ水Vを噴射するバイオ水噴射手段と、ファン23及びヒータ32と、これら装置を制御する制御部22とが収納されている。バイオ水噴射手段は、微生物を活性化させるバイオ水Vを貯留するタンク24と、便座29の底面に設置され、処理槽12内にバイオ水Vを噴射する一対の噴射ノズル26と、タンク24内のバイオ水Vを噴射ノズル26に送給するポンプ25と、これら装置をつなぐ配管30、31とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物を微生物によって分解処理する処理槽を備えたバイオトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
水洗式やくみ取り式のトイレは災害時における仮設トイレや介護用のトイレとして利用できない。このため、排泄物を微生物によって分解処理するバイオトイレが提案されている。例えば、特許文献1では、開口部から投入された糞尿やトイレットペーパー等の有機廃棄物を微生物分解処理する分解処理装置を備えるトイレが提案されている。この分解処理装置では、複数の外側攪拌ブレードとその内方に位置する内側攪拌ブレードからなる攪拌部を有する回転軸が、開口部を有する処理槽内に水平に架設され、駆動部により回転駆動可能とされている。有機廃棄物は、おが屑と共に回転軸線に沿う方向へ搬送されながら攪拌される。
【0003】
また、特許文献2では、風力及び/又は太陽光を利用する自然エネルギ収集手段と、この自然エネルギ収集手段により発電された電気エネルギを蓄電する蓄電器とを有する自然エネルギ供給手段と、自然エネルギ供給手段から供給された電気エネルギを利用して分解処理用おが屑及び有機廃棄物内の微生物の活性化を促して有機廃棄物を処理するトイレと、上記自然エネルギ供給手段とトイレの電気制御部を収容する制御ボックスを具備する屋外トイレが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−120460号公報
【特許文献2】特開2004−204635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のバイオトイレの場合、排泄物を分解処理する微生物の活性化が十分でなく、排泄物の分解処理に長時間(例えば2〜3時間程度)要している。排泄物の分解処理に要する時間を短縮するためには、微生物を収容する処理槽を大きくして微生物の量を増やさなければならず、広い設置スペースを必要とするだけでなく、コストも掛かるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、微生物を活性化させることにより、従来に比べて短時間で排泄物を分解処理できる、コンパクトなバイオトイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、上面が開口部とされ、前記開口部から投入された排泄物を分解処理する微生物及び該微生物を保持する微生物用担体が収容される処理槽と、前記処理槽内に架設された回転軸上に配設され、前記微生物用担体を攪拌する攪拌羽根とを有するバイオトイレにおいて、前記微生物を活性化させるバイオ水を貯留するタンクと、前記処理槽内に前記バイオ水を噴射する噴射ノズルと、前記タンク内の前記バイオ水を前記噴射ノズルに送給するポンプとを備えることを特徴としている。
【0008】
バイオ水は、放線菌や桿菌などの微生物や酵素を精製水に混合して生成した水溶液である。排泄物を分解処理する微生物及び該微生物を保持する微生物用担体が収容されている処理槽内にバイオ水を噴射することにより、噴射、攪拌時の消臭効果に加えて、処理槽内の微生物が活性化し、発酵が促進される。その結果、従来に比べて短時間で排泄物を分解処理することができ、バイオトイレをコンパクト化することができる。
【0009】
また、本発明に係るバイオトイレでは、前記微生物用担体を攪拌する際に、前記バイオ水が前記噴射ノズルから前記処理槽内に噴射されるようにすることが好ましい。
処理槽内にバイオ水を噴射するタイミングを微生物用担体の攪拌時とすることで、処理槽内に収容されている微生物用担体にバイオ水を満遍なく供給することができる。
【0010】
また、本発明に係るバイオトイレでは、前記微生物用担体の攪拌が休止を挟んで複数サイクル繰り返され、各攪拌サイクルの初期に、前記噴射ノズルから前記バイオ水が前記処理槽内に噴射されるようにしてもよい。
このようにすることで、電気の消費量とバイオ水を節約することができるだけでなく、休止時間を設けることにより微生物による発酵が促進される。
【0011】
また、本発明に係るバイオトイレでは、前記微生物用担体の攪拌と前記バイオ水の噴射をトイレ蓋の開閉動作と連動させるようにしてもよく、このようにすることで、排泄物の発生と排泄物の分解処理とが関連付けされ、効率的に排泄物を分解処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るバイオトイレでは、排泄物を分解処理する微生物及び該微生物を保持する微生物用担体が収容されている処理槽内にバイオ水を噴射することにより、処理槽内の微生物が活性化し、従来に比べて短時間(1時間以内)で排泄物を分解処理することができる。その結果、バイオトイレをコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバイオトイレの側断面図である。
【図2】同バイオトイレの正断面図である。
【図3】同バイオトイレのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】同バイオトイレの制御フローを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明では、便宜上、便座に腰掛けた際に、足が位置する側を「前」側、背中側を「後」側と呼ぶことにする。
【0015】
図1及び図2に、本発明に係るバイオトイレ10の一実施の形態を示す。本発明の一実施の形態に係るバイオトイレ10は、蓋(トイレ蓋)28を有する箱状のケーシング11内に、排泄物(糞尿)を受けるボウル部33と、上面が開口部とされ、ボウル部33の直下に配置された処理槽12と、処理槽12内に収容された微生物用担体を攪拌する攪拌手段と、処理槽12内にバイオ水Vを噴射するバイオ水噴射手段と、ファン23及びヒータ32と、これら装置を制御する制御部22とが収納されている。ケーシング11は、幅:約400mm、長さ:約580mm、蓋28(閉じた状態)を含む高さ:約480mmとされ、合成樹脂で形成されている。
【0016】
ボウル部33はABS樹脂やポリプロピレンなどの合成樹脂からなり、円形の開口部が下面に、前記円形開口部と連通し前方に長い楕円形開口部が上面に形成されている。また、ボウル部33の上面には、後端部がボウル部33の上面に軸支され、鉛直面内で回動する便座29が取り付けられている。
一方、処理槽12はステンレス製とされ、半円筒状の底部を有する前後に長い箱形形状とされている(図2参照)。処理槽12には、排泄物及びトイレットペーパーを分解処理する微生物(図示省略)及び該微生物を保持する微生物用担体(図示省略)が収容される。微生物としては、バイオトイレ等において従来より使用されている好気性の菌を使用することができ、例えば、シュードモナスやアシネトバクター、エンテロバクターなどのグラム陰性桿菌などを使用することができる。また、微生物用担体としては、おが屑や木片を炭化させた炭化チップなどが好適である。
【0017】
攪拌手段は、処理槽12の前端面と後端面を水平に貫通する回転軸13と、回転軸13に沿って配設され、微生物用担体を攪拌する複数の攪拌羽根14と、回転軸13を駆動する駆動機構とから構成されている。各攪拌羽根14は、2〜4枚羽根からなり、回転軸13から放射状に延びている。駆動機構は、処理槽12の前がわ側方に設置されたモータ15と、モータ15のシャフトに装着された一方向クラッチ16と、回転軸13の前端部に装着されたメインスプロケット17と、メインスプロケット17の上方に設置されたサブスプロケット18と、これら歯車を連結するチェーン19とから構成されている(図2参照)。図示しない電源に接続されたモータ15が駆動すると、チェーン19を介してメインスプロケット17及びサブスプロケット18が回転し、回転軸13が攪拌羽根14と共に回転して微生物用担体を攪拌する。
【0018】
なお、図1に示すように、サブスプロケット18の前側には、ハンドル21を着脱自在に取り付けるための接続部20が設けられている。電力が使用できない場合には、接続部20に取り付けたハンドル21を回すことにより、回転軸13を回転させることができる。その際、一方向クラッチ16の特性を利用してモータ15と非連結となる方向にハンドル21を回すことにより、負荷が軽減され容易に回転軸13を回転させることができる。
【0019】
処理槽12内にバイオ水Vを噴射するバイオ水噴射手段は、微生物を活性化させるバイオ水Vを貯留するタンク24と、便座29の底面に設置され、処理槽12内にバイオ水Vを噴射する一対の噴射ノズル26と、タンク24内のバイオ水Vを噴射ノズル26に送給するポンプ25と、これら装置をつなぐ配管30、31とから構成されている。
【0020】
バイオ水Vは、放線菌や桿菌などの微生物と、消臭や微生物の活性化に寄与すると推測される酵素とを精製水に混合して生成した水溶液である。桿菌としては、例えば、バチルスなどのグラム陽性桿菌やシュードモナスなどのグラム陰性桿菌を混合して用いることができる。
【0021】
ヒータ32は、処理槽12内を微生物の活動に適した温度とすることを目的とし、処理槽12の対向する側面部にそれぞれ設置されている。
ファン23は、排気による消臭を目的とし、ケーシング11の後面部に設置されている。
【0022】
ケーシング11の上面に設置された蓋28は、その後端部がケーシング11の上面後端部に軸支され、鉛直面内で回動する。蓋28を開閉することにより、開閉スイッチ27が作動し、蓋28の開閉が検知される。本実施の形態では、開閉スイッチ27の一方の端子27aが蓋28の後端部に、開閉スイッチ27の他方の端子27bがケーシング11の上面後端部にそれぞれ貼着されており、蓋28を開閉した際に、端子27aと端子27bが接触又は非接触となることで蓋28の開閉が検知される。
【0023】
制御部22は集積回路からなり、後述するように、開閉スイッチ27が発する信号に基づいて、モータ15、ポンプ25、ヒータ32、及びファン23の制御を行う機能を有し、ケーシング11の一方の側面部に設置されている。
【0024】
次に、上記構成を有するバイオトイレ10において実行される制御プロセスについて、図3及び図4を用いて説明する。
(1)ケーシング11の蓋28を開けると、開閉スイッチ27から制御部22へ開信号が発信される。制御部22は、開信号を受信すると、ファン23を始動させる。
【0025】
(2)蓋28を閉めると、開閉スイッチ27から制御部22へ閉信号が発信される。制御部22は、閉信号を受信してから数秒経過後にファン23を停止させる。
(3)次いで、制御部22はヒータ32をONとし、処理槽12を加熱する。これにより、処理槽12内は微生物の活動に適した温度状態に維持される。なお、微生物の活動温度は、発明者等の実験によれば、−5℃〜70℃であった。
【0026】
(4)それと同時に、制御部22の指示信号によって、モータ15が間欠的に作動し、回転軸13と共に回転する攪拌羽根14によって微生物用担体が攪拌される。本実施の形態では、5分間の攪拌状態とそれに続く10分間の休止状態からなる攪拌サイクルが3回繰り返される(トータル時間:45分間)。また、制御部22の指示信号によって、各攪拌サイクルの初期にポンプ25が作動し、タンク24内に貯えられているバイオ水Vが配管30、31を経由して噴射ノズル26から処理槽12内へ数秒間程度噴射される。
(5)全ての攪拌サイクルが終了すると、制御部22はヒータ32をOFFにする。これら一連のプロセスにより、処理槽12内の排泄物は炭酸ガスと水に分解される。
【0027】
なお、上記一連の動作の途中で蓋28を開けた場合は、それまでの動作がクリアされ、再び(1)以降の動作が実行されることになる。
【0028】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、攪拌羽根の長さを同一としたが、様々な長さを有する攪拌羽根を配設してもよい。また、上記実施の形態では、攪拌サイクルを3回としたが、2回以下あるいは4回以上としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10:バイオトイレ、11:ケーシング、12:処理槽、13:回転軸、14:攪拌羽根、15:モータ、16:一方向クラッチ、17:メインスプロケット、18:サブスプロケット、19:チェーン、20:接続部、21:ハンドル、22:制御部、23:ファン、24:タンク、25:ポンプ、26:噴射ノズル、27:開閉スイッチ、27a、27b:端子、28:蓋、29:便座、30、31:配管、32:ヒータ、33:ボウル部、V:バイオ水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口部とされ、前記開口部から投入された排泄物を分解処理する微生物及び該微生物を保持する微生物用担体が収容される処理槽と、前記処理槽内に架設された回転軸上に配設され、前記微生物用担体を攪拌する攪拌羽根とを有するバイオトイレにおいて、
前記微生物を活性化させるバイオ水を貯留するタンクと、前記処理槽内に前記バイオ水を噴射する噴射ノズルと、前記タンク内の前記バイオ水を前記噴射ノズルに送給するポンプとを備えることを特徴とするバイオトイレ。
【請求項2】
請求項1記載のバイオトイレにおいて、前記微生物用担体を攪拌する際に、前記バイオ水が前記噴射ノズルから前記処理槽内に噴射されることを特徴とするバイオトイレ。
【請求項3】
請求項2記載のバイオトイレにおいて、前記微生物用担体の攪拌が休止を挟んで複数サイクル繰り返され、各攪拌サイクルの初期に、前記噴射ノズルから前記バイオ水が前記処理槽内に噴射されることを特徴とするバイオトイレ。
【請求項4】
請求項2及び3のいずれか1項に記載のバイオトイレにおいて、前記微生物用担体の攪拌と前記バイオ水の噴射がトイレ蓋の開閉動作と連動していることを特徴とするバイオトイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−386(P2011−386A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147813(P2009−147813)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(597121315)
【Fターム(参考)】