説明

バイオマスメタンガス生産システム

【課題】 日本は、京都議定書によって化石燃料を思い切り使用できなくなった。化石燃料代替エネルギーがどうしても必要である。世界には石油はふんだんに眠っている。アメリカにもカナダにもフィンランドにもアルゼンチンにもルーマニアにもカンボジアにも極東シベリアにも勿論西シベリアにも。しかし、十分出ても使えないのである。太陽熱とか風力とかバイオマスなどに今のところでは転換して行かなくては成らない。
【解決手段】 バイオマスでいいことを考えた。生ごみや屎尿、藁、草、柴、樹木などからメタンガスを採るのである。硬い物は小切って堆肥を作る場合のように堆積して適当に腐敗・発酵させて軟らかくしてディスポーザーして汲み取って収集して、発生槽で腐敗・発酵させてメタンガスを採るのである。ディスポーザーで処理することとその為に堆積して軟らかくすることを発明した所がポイントである。

【発明の詳細な説明】
私は、毎日生ごみの処理には困っている。生ごみを細かく砕いて下水道に流す機械である「ディスポーザー」が恋しくなる。ところが、現在は、下水処理上ディスポーザーは使用できない。ディスポーザー処理液だけ汲み取りにする以外にない。これを浄化処理していては費用が叶わない。私は、これからメタンを採取すれば宜しいと思い付いた。有機物は腐敗・発酵すると悉くメタンガスを出す。バイオマス・メタンガスである。広い意味のリサイクル燃料である。
こう考えて、戸外に出て自然を見た。野も山もバイオマスに溢れている。これからメタンを採らない法はない。草や木の葉などは直接ディスポーザーすれば宜しいし、枝や幹など大きく硬い物は、チップにしたり、押し潰して小切ったりして、堆肥を作る場合のように堆積して半腐熟・半発酵させて軟らかくして、ディスポーザーすると宜しいことに気付いた。
勿論、人畜の屎尿や廏舎の踏肥(家畜が糞尿や敷き藁を踏みつけて腐熟させた廏肥)なども収集する。この場合、踏肥はそのままディスポーザーする。屎尿はディスポーザーしなくても済もう。
また、業務上の生ごみも養豚業と競合するが、ディスポーザーして貰って収集する。また、畑作上の生ごみなどもディスポーザー付収集車で収集するようにする。また、稲藁も堆積して半腐熟・半発酵させて、これもディスポーザー付収集車で収集する。
収集したディスポーザー液はガス発生槽でメタンガスを発生させる。発生したガスは都市ガスとしても宜しいし、発電に使用しても宜しい。
では、このガスを生むバイオマス(エネルギー源として利用される生物体)は(ごみ・糞尿などの生活上・業務上の)廃棄物だけでどのくらいあろうか。廃棄物は集計しようが無いので、廃棄物を出したり廃棄物となったりする前の物を集計して、その30%を廃棄物とすることにしてみる。
米 946万トン
小麦 620
大麦 243
とうもろこし 1648
こうりゃん 169
その他の雑穀 624
甘薯 107
馬鈴薯 379
澱粉 301
大豆 531
その他の豆類 46
緑黄色野菜 387
その他の野菜 1205
果実 877
肉類 564
鶏卵 264
牛乳及び乳製品 1217
魚介類 1111
海藻類 211(乾燥重量)
粗糖 163
味噌 54
醤油 99
てんさい 380
さとうきび 150
牧草 303
青刈りトウモロコシ 487
ソルゴー 150
稲藁 191024
この食料や飼料の年間の消費量の三割が生ごみや屎尿となるのであった。それを澱粉性と繊維性と蛋白質性とに分けて、メタンガスの採取を考えてみる。
先ず、澱粉から理論的にどのくらいのメタンが採れるか見てみる。澱粉の分子式は[C10である。これからメタンCHが発生する反応式は、[C10+[HO]→[3CH+[3COとなる。C10の分子量は162であり、3CHの分子量は48である。従って、澱粉の162kgからメタン48kgが採れることになる。29.63%にあたる。
また、繊維、セルロースは、[C(OH)+[HO]=[3CH+[3COから、澱粉と同じく、162kgからメタン48kgが採れることになる。
そして、蛋白質はと言うと、蛋白質を構成している元素組成は、質量で見ると、どの蛋白質もほぼ一定で、炭素50〜55%、水素6〜7%、酸素25〜30%、窒素12〜19%、硫黄0〜2.5%および微量の灰分から成っている。これを元素の数に直すと、例えば炭素は、50〜55÷12=4.2〜4.6個となる。同様にして、原子量1の水素は6〜7個、16の酸素は1.8〜1.9個、14の窒素は0.9〜1.4個、32の硫黄は0〜0.1個となる。従って、蛋白質の分子式は[C42〜466〜718〜199〜140〜1となる。これから、代表的な蛋白質の分子式を引き出すと、[C44621810となる。従って、メタンガスは次のように発生する。[C44621810+[28HO]=[22CH+[22CO+[10NH+[SO。つまり、質量1050kgの蛋白質から352kgのメタンが採れることになる。33.52%に当る。
そして、脂肪はと言うと、先ず分子式はC・C00R・COOR・COORであり、これが加水分解されて、グリセリンC(OH)と脂肪酸R・R・R・(COOH)とに分かれる。しかし、グリセリンも脂肪酸も酸化されて炭酸ガスと水になるが、メタンには成らないようである。私も油の腐ったのを見たことが無い。
そこで、上に見た食料や飼料の廃棄物から水分を除いた物を見てみると、下のようになる。
生廃棄物 水分 乾燥廃棄物
米 284万トン 15.5% 240万トン
小麦 186 12.5 163
大麦 73 12.5 64
とうもろこし 495 14.5 424
こうりゃん 51 14.5 44
その他の雑穀 187 14.5 160
甘薯 32 66 11
馬鈴薯 114 80 23
澱粉 91 17 76
大豆 160 12.5 140
その他の豆類 14 12.5 13
緑黄色野菜 116 93 8
その他の野菜 362 90 36
果実 263 87 34
肉類 169 63 63
鶏卵 79 76 19
牛乳及び乳製品 365 87.5 46
魚介類 334 68 107
海藻類 64 12 57
味噌 16 45 9
醤油 30 68 10
てんさい 114 92 9
さとうきび 45 91 4
牧草 91 93 7
青刈りトウモロコシ 146 91 13
ソルゴー 45 92 4
澱粉性・繊維性 1396
蛋白質性 388
稲藁 171921 92 13753
澱粉と繊維のメタンへの転換率は、29.6%であったから、澱粉性と繊維性の生廃棄物からの100%乾燥廃棄物1396万トンから採れるメタンの量は、1396万トン×0.296=413万トンと言うことになる。
また、蛋白質性の生廃棄物からの100%乾燥廃棄物は、メタンへの転換率が33.5%であったから、388万トン×0.335=130万トン採れる。
澱粉性と繊維性と蛋白質性とから発生するメタンガスは合わせて543万トンに達する。これを発熱量ジュールに直すと、543万トン=5.43×10^12gであり、メタンの発熱量は13265cal/g=55520.6575j/gであるから、5.43×10^12g×55520.6575j/g=301474×10^12jとなる。
我国の天然ガスの消費量は、14年度で3113000兆ジュールである。この9.7%にあたる。従って、生ごみと屎尿からだけでは、メタンガスは取り立てて騒ぐ程には採取できない。まことに残念である。
しかし、稲藁からとなると、話は違ってくる。現在、藁は殆ど飼料とされていない。その90%はメタン用に使用できよう。どのくらい採れるかと言うと、牧草が80万1000haで3030万5000t採れるので、この3倍は採れようから、稲の作付面積168万3000haでは19億1024万t採れることになる。メタン用には17億1922万tが回る。水分を92%と見ると、13754万tが100%乾燥の稲藁となる。この29.6%がメタンとなるのであったから、4069万トン採れることになる。これは熱量に直すと、2259167兆jとなる。天然ガス消費量の72.6%に当る。生ごみと屎尿と稲藁などで、天然ガス消費量の82.3%のメタンガスを生産できると言うことになる。ほぼ、原子力発電に匹敵する。正確には、82.3%に当る。
ところで、用材に一本切るとその半分は廃棄物であろう。昭和60年には、3294万mの用材を生産した。これと同量の廃物が出るとすると、密度を68と見た場合、2240万tとなる。これから採れるメタンの量は、663万tであり、天然ガス消費量の11.8%に当る。林産廃棄物だけでは満足の行く量のメタンガスは採れない。しかし、生活上と業務上の廃棄物と稲藁とにあわせると、天然ガス消費量の94.1%に達する。また、原子力発電を10.3%上回る。しかし、これで、一次エネルギー供給量の13.2%二しか過ぎず、ここは、間伐材や雑木などに頼る必要が出る。
我国の森林資源は、総面積2512万ha、蓄積量40億4000万mである。年に1億m伐採すると、そのバイオマスは2億mになる。この100%乾燥バイオマスは、1億3600万tである。メタンガスにして、4026万tである。熱量にして2235262兆ジュールであり、天然ガス消費量3113000兆ジュールの71.8%に当る。稲藁に匹敵している。もっと採れると宜しいのであるが、まあ、こんなところであろう。
以上述べたバイオマス・メタンガスを整理して見ると、
メタンガス 発熱量
生ごみと屎尿 566万トン 301474兆ジュール
稲藁 4069 2259107
用材屑 663 368111
小計 5275 2928692
間伐材・雑木 4026 2235262
計 9301 5163954
一次エネルギー供給量 22285000
石炭 4340000
原油 9253000
天然ガス 3113000
水力発電 741000
原子力発電 2656000
これから判るように、バイオマス・メタンガスは化石燃料に代替できない。残念なことである。しかし、一次エネルギーの23.2%くらいは代替できる。石油の55.8%くらいは代替できる。京都議定書は十分にクリアするだけは代替できる。捨てた物ではない。
今日、ガソリン代替燃料として喧伝されているバイオマス・エタノールよりは遙に成算がある。
稲藁からエタノールを採る研究には、政府は助成をしているらしい。今、稲藁のセルロースからどれだけのエタノールが採れるかと言うと、[C(OH)+[HO]→[2COH]+[2COから、質量162のセルロースから質量46のエタノールが2モル採れる。そして、エタノールの発熱量は7090cal/gであるから、46g×2×7090cal/g=652280calとなる。他方、メタンは、16g×3×13265=636720calである。メタンが98%と僅かに劣る。一単位のセルロースから採れるカロリーには殆ど差は無い。要は、どちらが採取し易いかである。
稲藁からエタノールを採るには、稲藁を奇麗なセルロースに即ち奇麗なパルプにしなくてはならない。ここに、膨大な費用が掛かる。私のメタンを採る方法では、堆肥を作る場合のように堆積して半腐熟にしてディスポーザーすれば宜しいだけである。装置が簡単で工程費用が掛からない。格段に安くつく。政府はエタノールを採る研究に助成するのなら、本発明のメタンガスを採る方法にも助成をしてほしい。
そこで、藁を見る為に、主要国の穀類の生産量を見てみると、
中国 40200万トン
アメリカ合衆国 29875
インド 21359
ロシア 8473
フランス 6916
インドネシア 6088
ブラジル 5044
ドイツ 4339
バングラデシュ 3981
ウクライナ 3797
ベトナム 3638
カナダ 3544
アルゼンチン 3202
トルコ 3194
日本 1218
米のみ
タイ 2595
ミャンマー 2190
フィリピン 1327
世界には、我発明を待望している国は多いことが判る。特に、アジアの国々に対して本発明を早急に開発して輸出したい。ちなみに、中国の藁から採れるメタンガスの量はどのくらいになるか、簡単に推計してみよう。穀物は、日本の40200万t/1218万t=33倍採れる。日本の稲藁のメタンガス生産量4069万t(2259107兆j)の33倍の13億4277万t(74550531兆j)も採れる。これは、中国にとってどのくらいのインパクトと成るかと言うと、原油消費量21383万t(8278616兆j)の実に9倍に達する。また、発電量1兆3473億kwh(4849532兆j)の驚くかな15.4倍にもなる。
序でに、インドネシアを見てみよう。穀物は、日本の6088万t/1218万t=5倍採れる。日本の稲藁メタンガスの5倍の20345万トン(11295535兆j)も採れることになる。電力消費量は995億1100万kwh(3581928兆j)である。実にこの3.2倍にもなる。今や、農業国はエネルギー資源国なのである。
ところで、世界には、未だ薪炭を使用している国は多い。表にして見ると次のようになる。
薪炭材
インド 30057万m
中国 19108
ブラジル 13447
エチオピア 9020
インドネシア 8256
アメリカ合衆国 7309
コンゴ 6729
ナイジェリア 6007
ロシア 4880
メキシコ 3791
ミャンマー 3540
ウガンダ 3514
バングラデシュ 2776
ベトナム 2655
パキスタン 2501
タンザニア 2113
ガーナ 2068
タイ 2025
ケニア 2000
セルロースを炭として使用する場合の発熱量は、[C(OH)→[6C]+[5HO]から、162gのセルロースから72gの木炭が採れるので、72g×7000cal/g=504000calとなる。メタンを採る場合の636720calの79%である。ガスの方が遙に便利であるし、熱効率も良くなるので、薪炭からの生活改善が本発明によって進むことになろう。バイオマス・メタンガス発生装置は輸出産業としても有望である。バイオマス・メタンガスの都市ガスは樹木の発育の速いアジア諸国ではエネルギー産業の花形として広く普及して行くであろう。
石油はあるのである。世界地図を開いてほしい。そして、中東地域ではなく、アメリカとかシベリアとかの砂漠でない油田地帯は湿地帯にあることに気づいて貰いたい。テキサスでも湿地か湿地の近くに油田はある。そう言う湿地は世界の各地に探し求めることができる。アメリカの北大西洋海岸、カナダのハドソン湾の東岸、アルゼンチンの中央、フィンランドの全土、広大無辺の西シベリア、ポーランドの中央から西部、極東シベリアのアムール河畔、カンボジアの中央などに未開な油田地帯が存在している。あまり大きくない規模のものは方々にある。200年や300年、人類は石油に困ることは無いように思える。
しかし、厄介なのが、石油を燃やすと大量にでる炭酸ガスの地球温暖化作用である。この作用の為に、先進国は今以上に石油を燃やせない。大量に見つかったので、石油は安くはなるが、景気よくは使用できない。国を挙げて自動車の大きいのに乗ろうと思えば、発電や都市ガスに太陽熱や風力や本発明のようなバイオマスを代替させなくてはならない。本発明バイオマスメタンガスは幸いにも相当な規模と成るので、本格的に実用化されれば、電力用の化石燃料に相当な規模で代替できるので、再び多くの人が中型車以上に乗ることが出来るようになろう。世界の自動車産業は、燃費の良い小型車へ小型車へとデフレしてきたが、この桎梏から解放されることになろう。
自動車は石油で、発電はバイオマスや太陽熱や風力などの新エネルギーでと住み分ける時代もそんなに遠いことではあるまい。メタンガス発電用の効率の良いガスタービンの発明をやりかけたこともあった。その開発が待たれている。航空機用は長い耐久力があるのだから、材質的には余り不自由は無いらしいので、機能的に理に叶ったものを開発したいものである。
本発明の実用化は緊急を要する。京都議定書の拘束を各先進国とも近々受けることになっているからである。国内用のみならず輸出用にも精を出すことが我身の幸福に繋がる。新エネルギー発生機器の開発に今直ぐ着手しなくてはならない。莫大な規模の産業に必ず化ける。鉄鋼業界の地力強化が待望される。もう付加価値の低い鋼材の輸出などにうつつを抜かしているときではない。大いなる付加価値を付けた輸出ができることになった。
是非、政府の助成を得て立派な物を開発したい。そして、化石燃料の出す排ガス公害を大いに緩和したい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭生活上の生ごみをディスポーザー(台所で出る生ごみを細かく砕いて流す機械)付流し台でディスポーザーしてタンクに溜めて汲み取り車で汲み取るようにする。この場合、ディスポーザーにスイッチを入れると、排水管のタンクへの弁が開いて下水への弁が閉じるようし、スイッチを切ると、排水管のタンクへの弁が閉じて下水への弁が開くようにする。勿論、弁は一体化していても宜しいし別々であっても宜しい。
【請求項2】
トイレは簡易水洗にして屎尿を汲み取り車で汲み取るようにする。
【請求項3】
業務上の生ごみもディスポーザー付汲み取り車でディスポーザーして汲み取るようにする。
【請求項4】
乾燥していなくて軟らかい鶏糞や廏肥はディスポーザー付汲み取り車でディスポーザーして汲み取るようにする。
【請求項5】
鶏糞や廏肥が乾燥して硬い場合には堆積して適当に腐敗・発酵させて軟らかくしてディスポーザー付汲み取り車でディスポーザーして汲み取るようにする。
【請求項6】
生草や生柴はディスポーザー付汲み取り車でディスポーザーして汲み取るようにする。
【請求項7】
生乾きの或いは乾いた藁や草や柴は堆肥を作る場合のように堆積して適当に腐敗・発酵させて軟らかくしてディスポーザー付汲み取り車でディスポーザーして汲み取るようにする。
【請求項8】
樹木の幹や枝や葉はチップにするか或いは圧し潰して小切って堆肥を作る場合のように堆積して適当に腐敗・発酵させて軟らかくしてディスポーザー付汲み取り車でディスポーザーして汲み取るようにする。
【請求項9】
「請求項1」から「請求項8」までの汲み取り車で汲み取った屎尿やディスポーザー液はメタンガス発生槽で腐敗・発酵させてメタンガスを採るようにする。
【請求項10】
「請求項1」から「請求項9」までの各方法を統合したバイオマスメタンガス生産システム。

【公開番号】特開2008−200666(P2008−200666A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73592(P2007−73592)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(594052526)
【Fターム(参考)】