説明

バイオマス加水分解

リグノセルロースの単糖への化学的加水分解のための高収率の方法。本発明のプロセスは、セルロース、キシラン及びガラクタン、マンナン、又はアラビナンなどの関連するバイオマス多糖にさらに適用することができる。本方法は、バイオマス多糖基質の加水分解のために用いられる。このプロセスは、セルロースが可溶性であるイオン液体中で、酸触媒の存在下において、加水分解を開始するために十分高い温度で行われる。加水分解の開始後、沈殿を回避してHMFなどの望まない糖脱水生成物をさらに回避するように調節された速度で水が反応混合物に添加される。加水分解生成物は、エタノール、ブタノール及び別の燃料のための発酵プロセスを含む発酵のための供給原料として有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、その出願が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2009年7月1日出願の米国特許仮出願第61/222,397の利益を主張する。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発の記載]
[0002]本発明は、以下の機関:DOE DE−FC02−07ER64494により付与された米国政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
[発明の背景]
[0003]豊富な植物バイオマスは、燃料及び化学物質の持続可能な供給源となる可能性がある。この潜在能力を引き出すには、難分解性リグノセルロースの、糖などの有用な中間体への経済的な変換を必要とする。本発明者らは、リグノセルロースの単糖への化学的加水分解のための高収率プロセスを報告する。酸触媒を含有する塩化物イオン液体に水を徐々に添加することにより、セルロースからのグルコースのおよそ90%の収率及び未処理のコーンストーバーからの糖の70〜80%の収率が得られる。イオン排除クロマトグラフィーは、イオン液体の回収を可能にし、エタノール生成微生物の活発な増殖を支援する糖供給原料を供給する。したがって、単純な化学的プロセスは、原料バイオマスを、大規模化が実現可能なバイオリファイナリーのための唯一の炭素供給源とすることができる。
【0004】
[0004]リグノセルロースバイオマスの主な成分として、糖ポリマーセルロース及びヘミセルロースは、地球上で最も豊富な有機化合物の1つであり、エネルギー及び化学物質のための再生可能な供給源となる潜在能力を有する。推定される世界の年間バイオマス生産は、1×1011トンであり、2×1021Jを隔離している[1、2]。比較のために、年間の石油生産は2×1020Jにのぼり、一方、通常の原油の技術的に回収可能な資源量は、2×1022Jである[1]。したがって、わずか10年間のうちに、地球の植物は、セルロース、ヘミセルロース、及びリグニンの形態で、通常の原油として貯蔵されているエネルギーのすべてを再生することができる。化学者にとっての課題は、これらのポリマーにアクセスし、これらを燃料及び化学的基本構成単位に変換することである。
【0005】
[0005]糖は、リグノセルロースバイオマスの生物学的及び化学的変換における天然の中間体である[3〜8]が、糖へのアクセスは、植物細胞壁の難分解性によって妨げられている[3〜9]。リグノセルロース中のグルコースの大部分は、高結晶性セルロースポリマー中に閉じ込められている。グルコース、キシロース及び別の糖の分岐ポリマーであるヘミセルロース、並びに複雑な芳香族ポリマーであるリグニンは、セルロースを覆って、植物を強化及び保護している。この不均一の供給原料から糖を得るには、物理的及び化学的破壊の両方を必要とする。糖化の酵素的方法は、最も一般的であり、物理的及び化学的前処理プロセス10に続いてセルラーゼによる加水分解を使用して、糖を生産する。所与の供給原料のための前処理及び酵素の適切な組み合わせは、ヘミセルロース及びセルロース成分の両方からの糖の高い収率を可能にする11。それにもかかわらず、前処理及び酵素の両方のコスト(セルロースからのエタノール生産のコストの3分の1程度と推定される、[12])及び加水分解の低い速度は、酵素的加水分解にとって潜在的な欠点である。
【0006】
[0006]バイオマス加水分解のための専用の化学的技術もまた開発されている。早くも1819年には、Braconnotは、濃HSO中に溶解させ、水で希釈し、加熱したリネンが、発酵可能な糖に変わることを実証した[13、14]。この例のように、濃酸は、バイオマス加水分解において二重の役割を果たすことができる。鎖内及び鎖間の水素結合のネットワークを妨害することによって、強酸は、セルロースを脱結晶化し、セルロースに試薬がアクセスできるようにし[15]、グリコシド結合の加水分解を触媒することによって、強酸は、セルロース及びヘミセルロースを糖に切断する(図1)[3]。Bergiusは、1935〜1948年にドイツにおいて稼働した工業用プロセスの開発においてHClのこうした属性を利用した[16、17]。米国では、典型的にはセルロース及びヘミセルロースを糖に80〜90%変換する、HSOを使用したいくつかの関連するプロセスが開発されている[18〜22]。最近の例では、Cuzens及びFaroneは、濃HSO水溶液を使用して、アルケノール(Arkenol)プロセスによって農業残渣を加水分解し[23]、これは、BlueFire Ethanol(アーバイン、カリフォルニア、米国)によって商品化されている途中である。この方法では、バイオマスは、77%HSOによって脱結晶化され、約40wt%の水分含量まで希釈され、100℃で加水分解される。この第1段階は、ヘミセルロースのほとんどすべて及びセルロースの一部を加水分解する。次いで、固体残渣を第2段階加水分解に供して、残っているグルコースを放出する。濃酸加水分解法は、高糖収率をもたらし、単純な触媒を使用し、ほんの短い反応時間しか必要としない。これらの利点にもかかわらず、濃酸を取り扱う危険及びそれらを再循環させることの複雑さが、この技術の採用を制限してきた。
【0007】
[0007]より危険が少なくより扱いやすいセルロース溶媒は、リグノセルロース加水分解を容易にするであろう。周囲温度に近い又はそれより低い融点を有する塩であるイオン液体は、不織繊維生産[24]及び化学的誘導体化[25、26]のためのセルロース溶媒として見込みがある。濃酸のように、塩化物イオン、酢酸イオン、及び別の弱塩基性のアニオンで構成されるイオン液体は、セルロースの水素結合ネットワークを妨害し、その溶解を可能にする[25〜27]。これらの性質を認識して、Zhao及び共同研究者らは、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド([BMIM]Cl)中でのセルロースの加水分解を試みた[28]。11wt%のH2SO4、及びセルロースのグルコースモノマー単位に対して1.75当量(反応混合物の約1wt%)の水を使用して、Zhaoらは、100℃で9時間後、43%モル収率のグルコースを得た。Zhaoらは、3,5−ジニトロサリチル酸(DNS)アッセイに基づいて77%収率の全還元糖(TRS)もまた報告したが、グルコース(予期されるセルロース加水分解生成物である)以外のどの糖がTRSに含まれるのかについては論じなかった。Zhao及び共同研究者らはまた、同様の条件下での、コーンストーバー及び稲わらなどのバイオマス材料の反応で66〜81%のTRS収率を得ていることも報告しているが、グルコース収率は報告していない[28]。おそらく、リグノセルロースからのグルコース収率は、精製されたセルロースを用いて得られるもの以下であった可能性が高い。
【0008】
[0008]別の研究者からのいくつかの報告が、Zhao及び共同研究者らの後に続いた。Schuth及び共同研究者らは、固体酸触媒を使用して[BMIM]Cl中でセルロースを解重合し、グルコースではなく主に水に不溶性のオリゴマーを得た[30]。最近、Jones及び共同研究者らは、[BMIM]Cl中で、低水分条件下でマツ材を加水分解し、典型的には20%未満の単糖のモル収率を得た[31]。Seddon及び共同研究者らは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド([EMIM]Cl)におけるセロビオースの反応性を研究し、次いで、それらの最適化された条件を純粋なセルロース及びススキ属(Miscanthus)の草類に適用し、それぞれ50%及び30%のグルコース収率を得た[32、33]。Zhao及び共同研究者らにより報告された、イオン液体において得られたこれらの低いグルコース収率は、濃酸及び別のセルロース溶媒においてセルロースから到達可能なほぼ定量的なグルコースの収率と対照をなす[34]。
【0009】
[0009]Zhaoら[53]及び米国特許出願公開第2008/0033187号(2008年2月7日公開)は、大きな収率でフランを生産するための、イオン液体における炭水化物の変換のための方法を報告している。この方法は、炭水化物を可溶性の限界までイオン液体と混合するステップと、炭水化物を触媒の存在下で、大きな収率でのフランへの変換のために十分なある反応温度で及びある反応時間の間、加熱するステップとを含む。
【0010】
[0010]2008年6月17日出願の米国特許仮出願第61/073,285号は、極性の非プロトン性溶媒中での、ハロゲン化物塩又はそれらの混合物の存在下における、及び任意選択により酸触媒、金属ハロゲン化物触媒又はイオン液体(40wt%まで)の存在下における、炭水化物又は炭水化物供給原料をフランに変換するための方法に関する。炭水化物供給原料は、リグノセルロースバイオマスとすることができる。
【0011】
[0011]米国特許出願公開第2009/0062524号(2009年3月25日公開)は、イオン液体中にセルロースを溶解させること、及び「酸によって、適切であれば水の添加によってそれを処理すること」による、セルロースの完全な又は部分的な分解のためのプロセスに関する。添加される酸及び水の量が調節されることにより、セルロースの「完全な」又は「部分的な」分解を達成する。この出願は、「使用されるセルロースに付着している水が、所望する程度の分解に到達するために不十分であれば、水の添加が必要な場合がある」と記述している。水は、酸と一緒に、セルロースのイオン液体溶液に添加され、又はイオン液体酸及び水が前もって混合され、セルロースがこの混合物中に溶解される。添加される水の量はさらに記載されている:
「通常のセルロースの水分含量は、使用されるセルロースの全質量(セルロース+付着している水)に基づいて5〜10質量%の範囲である。セルロースの無水グルコース単位に基づいて過剰の水及び酸を使用することによって、グルコースまでの完全な分解がまた可能である。部分的分解に達するために、準化学量論的な量の水及び酸が添加されるか、又はその時点で反応が停止される。
水に関する、セルロースのグルコースへの完全な分解のためのプロセスの化学量論比が、さらに論じられている「(i)f...平均してx無水グルコース単位から構成されるセルロースは、完全にグルコースに分解され、その時、x当量の水が必要とされる。ここで、化学量論量の水(n無水グルコース単位/n=1)(原文ママ、nを意図していたと考えられる)又はxに基づいて過剰の、好ましくは3モル%より過剰を使用することが優先される。」この出願において示されている特定の例は、セルロースは完全に分解されたが、グルコース収率及び副生成物の存在又は非存在は報告されなかったと記述している。
【0012】
[0012]国際公開第2009030950号パンフレット及び国際公開第2009030849号パンフレット(ともに2009年3月12日公開)は、セルロースがイオン液体と混合され、結果として生じる溶媒和物又は溶液が水の存在下において酸で処理される、水溶性セルロース加水分解生成物の調製のためのプロセスに関する。酸は、25℃で2未満の水中でのpKaを有すると報告されている。この出願は、次のように記述している。
「加水分解反応は、セルロース中の各モノマー単位につき、1モル当量の水の存在を必要とする。セルロース自体は、特定の量の水を含有し、その正確な量は供給源及びセルロースの物理的形態に応じて決まり、通常調製されるセルロースは、少なくとも10〜15質量%の水を含有する。しかしながら、反応混合物中の過度に大量の水は、イオン液体におけるセルロースの可溶性の低下、及び/又はセルロースの水溶性加水分解生成物への変換の低下のいずれかをもたらし得る。好ましくは、反応系の全水分含量は、水対セルロースの質量比が1:1〜1:20、好ましくは1:5〜1:15、特に、約1:10となるようにする。
【0013】
[0013]2008年10月22日公開の中国特許出願第1128981号は、イオン液体においてセルロースを加水分解するためのプロセスに関する。この方法において、イオン液体は、溶媒として使用されると述べられており、その等しい質量が1モル以上である水は、反応物として使用されると述べられており、その触媒量が化学量論量である無機酸は、触媒として使用されると述べられている。反応は、2分間〜9時間の常圧及び70〜100℃の間の温度を用いると報告されている。還元糖の報告された最大収率は73%、対応するグルコースの収率は53%であった。
【0014】
[0014]国際公開第2009047023号パンフレット(2009年4月16日公開)は、水和溶融塩におけるセルロースの変換のためのプロセスに関する。溶融塩は、200℃より低い融点を有するものとして記載されており、より詳細には、無機塩の水和物及びZnClの水和物を指す。この方法は、セルロースに加えてリグニン及びヘミセルロースを含有する材料に適用できると述べられている。
【0015】
[0015]米国特許出願公開第20090020112号(2009年1月22日公開)は、リグノセルロース材料の熱分解のための方法であって、リグノセルロース材料をイオン液体と合わせるステップと、混合物を、約150℃〜約300℃の温度に加熱するステップなどの熱分解条件に供するステップとを含み、加熱するステップが無酸素であってもよい、例えば、5−ヒドロキシメチルフルフラール、フルフラール2−メチルフルフラール、レブロン酸、レブリン酸又はレボグルコセノンとすることができる生成物を生産するための、方法に関する。
【0016】
[0016]国際公開第2008112291号パンフレット及び米国特許出願公開第20080227162号(ともに2008年9月18日公開)は、木材、わら及び別の天然のリグノセルロース材料を、マイクロ波照射及び/又は圧力下でイオン液体中に溶解させるための方法に関する。
【0017】
[0017]リグノセルロースの加水分解による望ましい生成物の収率を向上させるための試みにおいて多大な努力が費やされてきたが、単糖の高い収率をもたらす方法が当技術分野において依然として大いに必要とされている。本発明は、微生物増殖及び生体触媒によるエタノール生産にとって上質の供給原料である容易に回収される糖を生成する、セルロース及びリグノセルロースバイオマスの加水分解のための高収率プロセスを提供する。
【0018】
[発明の概要]
[0018]本発明は、リグノセルロースの単糖への化学的加水分解のための高収率の方法を提供する。このプロセスはまた、セルロース及びキシラン及びガラクタン、マンナン、又はアラビナンなどの関連するバイオマス多糖にも適用することができる。より一般的には、本方法は、バイオマス多糖基質の加水分解のために用いられる。このプロセスは、セルロースが可溶性であるイオン液体中で行われる。酸触媒を、特定のイオン液体において多糖及びリグノセルロース又はそれらの混合物に添加し、混合物を、加水分解を開始するために十分高い温度まで加熱する。この反応は、典型的には、周囲圧力及び約70〜140℃及び好ましくは85〜115℃の範囲の温度で実施される。特定の一態様において、反応は、100〜110℃で行われる。
【0019】
[0019]高い収率を達成するために、濃酸触媒はこのプロセスにおいて必要とされない。添加される酸触媒の量は、存在している多糖又はリグノセルロースに対して約5〜40質量%の間、及び好ましくは10〜25質量%の間である。加水分解反応の開始後、水を反応混合物に徐々に添加して少なくとも20質量%の全水分含量を達成する。水は、セルロース(又は別の多糖)が沈殿せず、加水分解が実質的に抑制されないような速度で添加する。特定の一態様において、全水分含量を、20質量%〜35質量%の間まで徐々に増加させる。別の特定の態様において、全水分含量を、30質量%〜45質量%の間まで徐々に増加させる。
【0020】
[0020]セルロース又は別の多糖の場合、加水分解を継続して、ヒドロキシメチルフラン(HMF)などの望まない単糖脱水副生成物の生産を最小限に抑えながら、グルコースの最大収率を達成する。特定の態様において、セルロース加水分解によるグルコース収率は50%以上である。特定の態様において、セルロース加水分解によるグルコース収率は75%以上である。特定の態様において、セルロース加水分解によるグルコース収率は85%以上である。特定の態様において、加水分解反応を、1〜10時間、より好ましくは1〜5時間、及びより詳細には2〜3時間行う。特定の一態様において、反応を、100〜110℃の範囲の温度で、1〜4時間及びより詳細には2〜3時間行う。記載されるように、水の添加は、セルロース加水分解の望まない副産物、特に、単糖脱水により生じると少なくとも一部考えられているヒドロキシメチルフラン(HMF)の形成を減少させる。特定の態様において、加水分解におけるHMF収率は10%以下である。特定の態様において、加水分解におけるHMF収率は5%以下である。加水分解の単糖生成物は、イオン液体から分離し、任意の所望の適用のための単糖供給源として用いることができる。特定の一態様において、加水分解生成物は、イオン液体から分離し、微生物の増殖及びエタノールなどの発酵生成物の生産のための単糖供給源として用いることができる。一実施形態において、イオン液体は、特に、適切なイオン交換カラムの通過によって、加水分解生成物から分離することができ、イオン液体は、再使用のために任意選択により再循環させることができる。
【0021】
[0021]リグノセルロースの場合、加水分解は、上述した通り徐々に水を添加することを含む、1つ又は複数の加水分解段階で、特に、1つの加水分解段階又は2つの加水分解段階で実施することができる。第1の加水分解段階において、加水分解を継続して、やはりHMFなどの望まない副産物を最小限に抑えながら、グルコースの最大収率を達成する。キシロースなどの別の単糖もまた、リグノセルロース中に存在し得るキシランなどのセルロース以外の多糖の加水分解によって第1の段階において生産することができる。グルコース以外の単糖の収率、例えば、キシロース収率は、第1段階において、50%より高くなり得る。特定の態様において、第1段階におけるグルコース収率は、典型的には、10〜30%の範囲とすることができる。第1段階の加水分解生成物は、過剰の水で希釈して、残っている固体を沈殿させることができる。第1段階の加水分解生成物は、イオン液体から分離し、任意の所望の適用における単糖供給源として用いることができる。
【0022】
[0022]第1段階の沈殿した固体、例えば、残っているリグノセルロースは、上述した通り同様に徐々に水を添加することを含む加水分解の第2段階に供することができる。第2段階を行い、望まない副生成物を最小限に抑えながらグルコースの最大収率を達成する。第1段階及び第2段階の加水分解の合わせたグルコース収率は、35%を超える。特定の態様において、第1段階及び第2段階の加水分解の合わせたグルコース収率は、40%を超える。別の実施形態では、第1段階及び第2段階の加水分解の合わせたグルコース収率は、50%を超える。特定の態様において、第1段階及び第2段階の加水分解の合わせたグルコース収率は、60%を超える。特定の態様において、第1段階及び第2段階の加水分解の合わせたグルコース収率は、70%又はそれ以上である。キシロースなどのさらなる単糖もまた、第2の段階において生産されてもよい。特定の態様において、第1段階の加水分解反応は、1〜4時間、より詳細には1〜3時間行う。特定の態様において、第2段階の加水分解反応は、1〜5時間、より詳細には3〜4時間行う。第1段階及び第2段階は、同じ又は異なる温度で、70〜140℃及びより詳細には85〜115℃の範囲内で行ってもよい。特定の態様において、第1段階及び第2段階の反応は、同じ温度で行う。特定の一態様において、第1段階及び第2段階の反応は、100〜110℃の範囲のおよそ同じ温度で行う。特定の一態様において、第1段階の反応は、100〜110℃の範囲の温度で1〜4時間及びより詳細には1〜3時間行う。特定の一態様において、第2段階の反応は、100〜110℃の範囲の温度で1〜5時間及びより詳細には3〜4時間行う。
【0023】
[0023]特定の態様において、出発セルロースよりも低いDPのセルロースを生産するために、セルロース又は別のバイオマス多糖の、部分的な加水分解ではなく実質的に完全な加水分解が所望される。しかしながら、反応が実施されて単糖を含有する加水分解生成物を生産する場合、反応を継続して、所望の単糖又は単糖の混合物の最大の収率又は合わせた収率を達成することが好ましい。
【0024】
[0024]本発明のプロセスは、高い単糖収率、特に、高いグルコース収率を達成するために、セルラーゼなどの酵素を必要としない。本プロセスは、高い単糖収率、特に、高いグルコース収率を達成するために、濃酸の使用を必要としない。リグノセルロース材料は、セルロース又は別のバイオマス多糖をリグニンから解離させるために、化学的又は酵素的前処理を必要としない。リグノセルロース材料は、加水分解の前に機械的なプレプロセシング、細断、磨砕及び/又は粉砕に供することが好ましい。特定の態様において、リグノセルロース材料は、100メッシュふるいを通過するように粉砕される。特定の態様において、リグノセルロース材料は、40メッシュふるいを通過するように粉砕される。しかしながら、本発明のプロセスは、任意のセルロース含有材料、特に、化学的又は酵素的前処理の適用によって、セルロースがリグニンから少なくとも部分的に分離されているリグノセルロースに適用することもできる。そのようなセルロース含有材料は、セルロース以外のバイオマス多糖、例えば、キシランを含有し得る。リグノセルロースバイオマスは、限定はしないが、蒸気、液体熱水、希酸、アンモニア繊維膨潤(AFEX)、石灰、及び/又はアンモニア水との接触を含む前処理に任意選択により供することができる。
【0025】
[0025]本明細書中の特定の態様において、加水分解は、特定のイオン液体において、本明細書に記載されている通り、金属塩又は金属触媒の非存在下で実施する。
【0026】
[0026]特定の一態様において、リグノセルロース材料を、加水分解の前に、本発明の方法によって、酸触媒を含むイオン液体中で希酸処理に供する。リグノセルロース材料を、適切な温度、圧力及び時間で、希酸と接触させて、典型的には、リグノセルロース材料中のヘミセルロースからの糖の放出を達成することができる。水中のリグノセルロース材料のスラリーを形成することができ、これに適切な量の希酸を添加する。希酸の前処理ステップは、典型的には、140〜225℃の温度で、又はより詳細には、185℃〜210℃の範囲の温度で、最大10分、好ましくは1〜5分の間の比較的短時間、実施する。希酸の前処理は、周囲圧力で実施することができるが、好ましくは、周囲(約1atm)〜20atm、好ましくは5〜15atmの範囲の周囲圧力より高い圧力で実施する。特定の一態様において、希酸の前処理のために、20〜40質量%のバイオマスを含有する水中のバイオマススラリーを調製する。酸を、0.5〜3質量%の量で、及びより詳細には、0.75%〜1.25%の量でスラリーに添加する。有用な酸は、無機酸、特に、硫酸、硝酸、塩酸又はリン酸を含む。前処理の後、固体を、いくらかの遊離した糖を含有する水性液体から分離し、固体を本明細書に記載されている通りイオン液体における加水分解に供する。前処理した固体を乾燥に供して、さらなる加水分解の前に残留水を除去してもよい。本明細書において以下に記載されている通り、処理される固体中に残っている水はすべて、イオン液体における反応に添加するための水の量を決定するときに考慮される。特定の好ましい一実施形態において、本プロセスは、本明細書に記載されている希酸ステップ及び第1の加水分解段階の2段階で実施され、所望の高い単糖収率を達成する。前処理ステップは、バッチ反応器、連続反応器において、又は希酸が固体バイオマス中を流れるフロースルー反応器において実施することができる。上記のように、イオン液体における第1段階の加水分解を、典型的には、周囲圧力及び約70〜140℃及び好ましくは85〜115℃の範囲の温度で実施する。特定の一態様において、反応を、100〜110℃で行う。加水分解の開始後、上記されている通り、水を反応に徐々に添加する。
【0027】
[0027]本発明におけるプロセスにおいて、酸に触媒されるセルロースの加水分解が開始された後に水を添加して、グルコース収率を増強し、副生成物生成、例えば、HMFの生成を最小限に抑える。水添加のタイミング及び量は、セルロース沈殿を回避し、グルコース収率(又は別の単糖と合わせたグルコースの収率)を増加させ、望まない脱水副生成物、例えば、HMF形成を最小限に抑えるように調節される。初期反応混合物は、イオン液体中にある、セルロース又はリグノセルロース中にある、又はそうでなければ反応容器に入る、付随的な低レベルの全水分を含有してもよいことが容易に理解されるであろう。セルロース又はリグノセルロース自体は、供給源及びセルロースの物理的形態に応じて水を含有する可能性がある。セルロースは、例えば、10〜15質量%の水を含有し得る。前処理、例えば、希酸の前処理に供されたリグノセルロース材料は、水を含有する場合がある。典型的には、そのような付随的な水は、すべての反応成分の多くて約5質量%のレベルで存在する。付随的な水レベルがすべての反応成分の約5質量%未満である場合、すべての反応成分に対して約5質量%のレベルまで、水を初期反応混合物に任意選択により添加してもよい。この最初に添加される水の一部は、酸添加を容易にするために添加されてもよい。セルロース中の、又は初期反応混合物に添加される、任意の既知の量の水は、反応を開始した後に水を添加する場合、全水分含量の決定の際に考慮される。初期水分含量は、何らかの実質的なセルロース沈殿を回避するために十分に低いことが好ましい。セルロース沈殿は、例えば、イオン液体中の白濁によって視覚的に検出することができる。加水分解される材料の水分含量が約5質量%を超えていれば、リグノセルロース材料又はセルロースを、加水分解の前に少なくとも部分的な乾燥に任意選択により供して、水レベルを約5質量%以下に減少させる。加水分解される材料中の水レベルは、当技術分野において知られている任意の方法によって決定することができる。イオン液体に材料を添加し、少なくとも部分的に溶解させる場合、加水分解される材料中の水レベルは、沈殿を回避するために十分に低いものであるべきである。
【0028】
[0028]セルロースの加水分解が開始された後の反応混合物への水添加は、種々の方法で調節又は制御することができる。水は、選択されたアリコートで段階的に、反応開始後の選択された時間に添加してもよい。例えば、15質量%の水を、初めに5質量%の水を含有していた反応に、反応開始の10分後に添加して、開始の10分後までに20質量%の標的レベルを達成してもよい。代替として、より少ないアリコートの水を、定期的な間隔で10分間にわたって添加して、反応開始の10分後までに20質量%の標的レベルを達成してもよい。特定の一態様において、水添加を、選択された速度で選択された間隔にわたって継続的に行って、標的時間で全水分含量の所望の標的レベルを得てもよい。水添加は、反応混合物中の水の全質量%(加水分解される材料を含むすべての反応成分中に存在し得る水を含む)に関して測定される。
【0029】
[0029]実施形態において、水を反応混合物に添加して、反応開始後3〜10分以内に5〜20質量%の全水分含量を達成する。実施形態において、水を反応混合物に添加して、反応開始後3〜10分以内に5〜20質量%の全水分含量を達成し、さらなる水を添加して、反応開始後10〜30分で20〜35質量%の全水分含量を達成する。実施形態において、水を反応混合物に添加して、反応開始後3〜10分以内に5〜20質量%の全水分含量を達成し、さらなる水を添加して、反応開始後10〜30分以内に20〜35質量%の全水分含量を達成し、さらなる水を添加して、反応開始後30〜60分以内に35〜45質量%の水分含量を達成する。
【0030】
[0030]特定の実施形態において、水を反応に添加して、反応開始後10分までに反応混合物に関して20質量%の全水分含量を達成する。特定の態様において、水を反応に添加して、反応開始の10分後までに20質量%の全水分含量を達成し、さらなる水を添加して、反応開始の60分後までに40〜45質量%の全水分含量を達成する。特定の態様において、水を反応に添加して、反応開始の10分後までに20質量%の全水分含量を達成し、さらなる水を添加して、反応開始の30分後までに30〜35質量%の全水分含量を達成する。特定の態様において、水を反応に添加して、反応開始の10分後までに20質量%の全水分含量を達成し、さらなる水を添加して、反応開始の20分後までに25質量%の全水分含量を達成する。特定の態様において、水を反応に添加して、反応開始の10分後までに20質量%の全水分含量を達成し、さらなる水を添加して、反応開始の30分後までに30〜35質量%の全水分含量を達成し、なおさらなる水を添加して、反応開始の60分後までに40〜45質量%の全水分含量を達成する。
【0031】
[0031]一実施形態において、酸触媒は、有機又は無機(無機物)酸、特に、25℃で水において1以下のpKaを有する酸である。特定の一態様において、酸触媒は、HClである。特定の一態様において、酸触媒は、HSOである。別の実施形態において、酸触媒はHBrである。別の実施形態において、酸は硝酸である。さらに別の実施形態において、酸触媒は、トリフルオロ酢酸である。酸触媒は、そのような酸の混合物であってもよい。酸は、水溶液の形態で用いられてもよい。
【0032】
[0032]一実施形態において、反応混合物は、イオン液体、酸触媒、水(初期の+加水分解の開始後に添加された)及びセルロース又はリグノセルロースから本質的になる。一実施形態において、反応混合物は、イオン液体、酸触媒、水(初期の+加水分解の開始後に添加された)、セルロース又はリグノセルロース及び25質量%以下の共溶媒を含む。一実施形態において、反応混合物は、イオン液体、酸触媒、水(初期の+加水分解の開始後に添加された)、セルロース又はリグノセルロース及び10質量%以下の共溶媒を含む。
【0033】
[0033]イオン液体塩化物塩は、セルロースを溶解させ、グルコース収率の増強を促進すると考えられる。セルロースをイオン液体中に導入し、激しく撹拌又は混合して溶解を助ける。任意選択により、セルロースを、イオン液体中で少なくとも1時間、酸の添加及び反応開始の前に撹拌する。セルロースを、反応開始の前に最大3時間、最大6時間、又は最大9時間、イオン液体と混合すれば、増強されたグルコース収率を得ることができる。イオン液体をリグノセルロースと予備混合するこのステップは、イオン液体の融点又は軟化点に応じて、周囲温度で又は140Cまでの周囲温度より高い温度で実施することができる。イオン液体は、液体であるか、又は少なくとも軟化している(混合することができるように)べきである。より詳細には、予備混合するステップは、反応温度で、特に、70〜140℃の間の温度で実施することができる。
【0034】
[0034]イオン液体塩化物塩は、リグノセルロースを脱結晶化し、セルロースを少なくとも部分的に溶解させる。イオン液体は、グルコース収率の増強を促進すると考えられている。リグノセルロースを、イオン液体中に導入し、激しく撹拌又は混合して、脱結晶化又は溶解を援助する。任意選択により、リグノセルロースを、イオン液体中で少なくとも1時間、酸の添加及び反応開始の前に撹拌する。リグノセルロースを、反応開始の前に最大3時間、最大6時間、又は最大9時間、イオン液体と混合すれば、増強されたグルコース収率を得ることができる。イオン液体をリグノセルロースと予備混合するこのステップは、イオン液体の融点又は軟化点に応じて、周囲温度で又は140℃までの周囲温度より高い温度で実施することができる。イオン液体は、液体であるか、又は少なくとも軟化している(混合することができるように)べきである。より詳細には、予備混合するステップは、反応温度で、特に、70〜140℃の間の温度で実施することができる。
【0035】
[0035]一実施形態において、イオン液体は、アニオンが塩化物イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、トリブロモ酢酸イオン又はチオシアン酸イオンであり、セルロースが少なくとも部分的に可溶性である、有機塩である。イオン液体は、反応温度及び圧力で液体である。特定の一態様において、イオン液体は、反応温度で、周囲圧力で液体である。一実施形態において、イオン液体塩化物塩は、イミダゾリウム塩である。一実施形態において、イオン液体塩化物塩は、C1〜C6アルキルイミダゾリウム塩である。特定の態様において、イオン液体は、[EMIM]又は[BMIM]又は1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオンの塩である。別の実施形態において、イオン液体は、ピリジニウム塩である。別の実施形態において、イオン液体塩は、C1〜C6アルキルピリジニウム塩である。特定の態様において、イオン液体は、特に、アルキル基がC1〜C6アルキル基である、1−アルキルピリジニウム塩である。特定の態様において、イオン液体塩は、1−エチルピリジニウムカチオン塩又は1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン塩である。イオン液体のさらなる有機カチオンは、そのようなカチオンの説明に関してそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2009/0062524号、国際公開第2009030950号パンフレット、国際公開第2009030849号パンフレット、米国特許出願公開第20090020112号、国際公開第2008112291号パンフレット、米国特許出願公開第20080227162号及び国際公開第2009024607号パンフレットにおいて記載されている。
【0036】
[0036]特定の一態様において、イオン液体は、セルロースが少なくとも部分的に可溶性である有機塩化物塩である。イオン液体は、反応温度で、周囲圧力で液体である。一実施形態において、イオン液体塩化物塩は、イミダゾリウムクロリドである。一実施形態において、イオン液体塩化物塩は、C1〜C6アルキルイミダゾリウムクロリドである。特定の態様において、イオン液体塩化物塩は、[EMIM]Cl又は[BMIM]Cl又は1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリドである。別の実施形態において、イオン液体塩化物塩は、ピリジニウムクロリドである。別の実施形態において、イオン液体塩は、C1〜C6アルキルピリジニウムクロリドである。特定の態様において、イオン液体塩は、特に、アルキル基がC1〜C6アルキル基である、1−アルキルピリジニウム塩である。特定の態様において、イオン液体塩は、1−エチルピリジニウムクロリド又は1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリドである。イオン液体のさらなる有機カチオンは、そのようなカチオンの説明に関してそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2009/0062524号、国際公開第2009030950号パンフレット、国際公開第2009030849号パンフレット、米国特許出願公開第20090020112号、国際公開第2008112291号パンフレット、米国特許出願公開第20080227162号及び国際公開第2009024607号パンフレットにおいて記載されている。
【0037】
[0037]一実施形態において、イオン液体は、アニオンが1未満のpKaを有する酸の共役塩基である有機塩であり、例えば、塩化物イオンは、−1のpKaを有するHClの共役塩基であり、トリフルオロ酢酸イオンは、0.3のpKaを有するトリフルオロ酢酸の共役塩基である。この実施形態においてより詳細には、イオン液体のカチオンは、イミダゾリウムである。一実施形態において、カチオンはC1〜C6アルキルイミダゾリウムである。特定の態様において、カチオンは、[EMIM]+又は[BMIM]+又は1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムである。別の実施形態において、カチオンはピリジニウムである。別の実施形態において、カチオンはC1〜C6アルキルピリジニウムである。特定の態様において、カチオンは、特に、アルキル基がC1〜C6アルキル基である、1−アルキルピリジニウム塩である。特定の態様において、カチオンは、特に、アルキル基がC1〜C6アルキル基である、1−アルキルピリジニウムイオンである。特定の態様において、カチオンは、1−エチルピリジニウム又は1−ブチル−4−メチルピリジニウムである。C1〜C6アルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状アルキル基を含む。特定のアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、及びn−ブチル基である。
【0038】
[0038]セルロース又は別のバイオマス多糖への適用において、一実施形態では、初期反応混合物中のバイオマス多糖の濃度は、1〜25質量%、及びより詳細には、5〜10質量%、5〜25質量%、10〜25質量%、15〜25質量%、又は20〜25質量%の範囲である。
【0039】
[0039]リグノセルロースへの適用において、一実施形態では、初期反応混合物中のリグノセルロースの濃度は、1〜25質量%、及びより詳細には、5〜10質量%、5〜25質量%、10〜25質量%、15〜25質量%、又は20〜25質量%の範囲である。
【0040】
[0040]本発明の方法は、任意のリグノセルロース材料、特に、木材又は木質材料、紙くず、植物、農作物及び農業残渣(例えば、コーンストーバー、小麦わら、大麦わら、大豆茎、サトウキビバガス)、非木本植物の葉及び茎、及び草類(スイッチグラス、ススキ属)を含むがこれらに限定されないバイオマスから得られるものに適用することができる。一実施形態において、本方法は、乾燥質量で20〜50質量%のセルロースを含有するリグノセルロース材料に適用することができる。
【0041】
[0041]一実施形態において、イオン液体において形成された加水分解生成物(複数可)は、強カチオン交換樹脂を使用してイオン液体から分離することができる。一実施形態において、強カチオン交換樹脂は、樹脂が、ジビニルベンゼンで架橋され、硫酸で処理されて、強酸樹脂をもたらす、架橋ポリスチレンカチオン交換樹脂である。樹脂は、ビニルベンジルクロリドをジビニルベンゼンで重合させること、及び亜硫酸ナトリウムで処理して強酸樹脂をもたらすことによって形成することができる。有用な樹脂は、限定はしないが、PCR833(Purolite Inc.)、Dowex(ダウエックス)(登録商標)50WX4及びダウエックス Monosphere99(Dow Chemical)、Amberlite1310CR(Rohm&Haas)、及びDiaion UBK555(Mitsubishi Chemical)を含む。イオン液体を回収するために、樹脂は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンなどのイオン液体のカチオンを用いて、分離におけるその使用の前に交換されなければならない。一実施形態において、イオン液体中の加水分解生成物は樹脂上に吸着され、水で溶出される。一実施形態において、樹脂は40〜70℃まで加熱される。特定の一実施形態において、樹脂は65℃まで加熱される。
【0042】
[0042]特定の一態様において、本発明は、本明細書に記載されている通り、セルロースを少なくとも一部可溶化するイオン液体中で行われる少なくとも2つの加水分解段階を含む、単糖(単糖の混合物を含む)を生産するためのリグノセルロースの加水分解のための方法を提供する。この特定の実施形態において、残留固体を、第1の加水分解段階から除去して第2の加水分解段階に送り込む。第1段階の加水分解生成物(複数可)を、使用したイオン液体のカチオンで交換される強カチオン交換樹脂中への通過を用によりイオン液体から分離する。分離したイオン液体は、第2段階の加水分解での再使用のために戻す。2段階より多い加水分解を実施する場合、前の段階の加水分解生成物(複数可)を、イオン液体から分離し、次いでこれを後の段階での再使用のために戻す。各段階の分離された加水分解生成物は、任意選択により合わせて、単糖供給源として用いる。さらに特定の実施形態において、イオン液体は、イオン液体のアニオンが、塩化物イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、トリブロモ酢酸イオン又はチオシアン酸イオンであるものである。
【0043】
[0043]特定の一態様において、本発明は、本明細書において記載されている通り、セルロースを少なくとも一部可溶化するイオン液体中で行われる1つの加水分解ステップを含む、単糖(単糖の混合物を含む)を生産するためのリグノセルロースの加水分解のための方法を提供する。この方法はまた、加水分解の前に、リグノセルロースバイオマスの少なくとも1つの前処理ステップを含む。前処理は、蒸気、液体熱水、希酸、アンモニア繊維膨潤(AFEX)、石灰、及び/又はアンモニア水のうちの1つ又は複数との接触を含むがこれらに限定されないものとすることができる。前処理は、1つ又は複数のステップで実施することができるが、プロセシングコストを減少させるために、前処理ステップは最小限に抑えることが好ましい。特定の一態様において、1つの前処理ステップのみを適用して、コストを最小限に抑える。特定の一態様において、前処理ステップは、約140〜225℃、より詳細には185〜210℃、及び好ましくは190〜200℃の間での、最大10分間、より好ましくは、最大5分間、及びより詳細には、1〜10分間又は好ましくは1〜5分間の、水中での希酸によるバイオマスの処理である。そのような前処理の1つのステップ又は複数のステップは、バイオマスのヘミセルロースを加水分解してしまって、本明細書に記載されている通りイオン液体における加水分解に持ち込まれるセルロース固体に、グルコース(又は別の単糖)を放出させることが好ましい。前処理によって放出されたすべての単糖を、イオン液体中での加水分解によって生成された単糖と合わせる。単糖は、イオン液体から分離し、イオン液体は、さらなる材料の加水分解のために再循環する。
【0044】
[0044]本発明は、本明細書に記載されている加水分解の開始後の本明細書に記載されている水の添加とともに、本明細書に記載されているイオン液体中での加水分解のステップを含む、酸で前処理されたバイオマスの加水分解のためのプロセスをさらに提供する。
【0045】
[0045]特定の一態様において、本発明の方法の加水分解生成物は、1つ又は複数の微生物の増殖のための、特に、1つ又は複数の細菌又は酵母の増殖のための、単糖供給原料として用いられる。特定の態様において、微生物は、そのような加水分解生成物を発酵してエタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、様々な有機酸又はそれらの混合物を生成する、エタノール生成微生物又は溶媒生成微生物である。本発明はまた、低レベルの、HMFなどの望まない糖脱水副生成物を含有する発酵供給原料も提供した。本発明の発酵供給原料中のそのような脱水生成物のレベルは、20質量%未満であり、好ましくは、10質量%以下、5質量%以下又は3質量%以下である。
【0046】
[図面の簡単な説明]
[0046]図1は、セルロース及びキシランの加水分解反応を示す化学的スキームである。セルロース及びヘミセルロースの、モノマー糖への化学的加水分解は、オリゴマーを通して進み、フラン及び別の分解生成物を形成する副反応を伴う。
【0047】
[0047]図2は、イオン液体バイオマス加水分解を使用したバイオ燃料生産のための統合されたプロセスに関するフローチャート概略図である。特定の一態様において、分離は、イオン交換方法を用いて実施することができる。プロセスは、任意選択による機械的及び/又は化学的前処理ステップ、任意選択であるが好ましくは、イオン液体中での脱結晶化、水添加を調節するイオン液体中での加水分解;並びに分離及び任意選択であるが好ましくは、イオン液体の再循環を含む。生成糖は、任意選択により発酵に送られて、エタノールなどの望ましい生成物を生産する。
【0048】
[0048]図3は、[EMIM]Clにおける酸に触媒されるグルコース分解を示すグラフである。酸性の[EMIM]Clにおいて、グルコース(菱形)は100℃で急速に消失し、HMF(四角)及び別の分解生成物を形成する。水分含量の増加は、グルコース減少を遅らせる。反応条件:グルコース、10wt%;HSO、グルコースに対して4wt%。
【0049】
[0049]図4は、[EMIM]Clにおけるセルロース加水分解中のグルコース、HMF、及びセロビオース生産を示すグラフである。グルコース濃度は、セロビオースなどのセルロースオリゴマーが加水分解するため、4時間にわたって増加する。セルロースは、標準的な最適化された反応条件下で反応させた。
【0050】
[0050]図5は、コーンストーバーの加水分解物の糖によるエタノール生成微生物の好気的増殖を示す図である。細菌である大腸菌(Escherichia coli)(A)及び酵母ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)(B)は、それらの唯一の炭素供給源としてのコーンストーバーの加水分解物の糖によって急速に増殖する。加水分解物において、大腸菌(E.coli)の平均倍加時間は2.77時間であり、純粋な糖において倍加時間は2.95時間であった。
【0051】
[発明の詳細な説明]
[0051]本発明は、多糖加水分解、並びに結果として生じる糖を分離及び発酵させる手段のための高効率システムの証明に少なくとも一部基づいている。本発明の方法は、バイオマス多糖、すなわち、セルロース、キシラン、マンナン、ガラクタン、及びアラビナンなどのバイオマス中に見出される多糖に一般に適用することができる。本方法はまた、リグノセルロースバイオマスにも適用することができる。本方法はまた、前処理されたリグノセルロースバイオマス、特に希酸で前処理されたそのようなバイオマスにも適用することができる。
【0052】
[0052]多糖、例えば、セルロースの、可溶性及び水との反応性のバランスをとることによって、糖は、リグノセルロースバイオマスから、イオン液体において以前に達成されたものより数倍高い収率で生産され、酵素的加水分解の収率に近づく。さらに、こうした加水分解生成物は、微生物によってエタノール又は別の望ましい生成物に容易に変換される。本発明は、発酵可能な糖を生成するためのバイオマス加水分解のための改良された方法を提供する。本発明はまた、バイオ燃料生産のためのバイオマスの化学的加水分解のための統合されたプロセスも提供する(図2)。まず、コーンストーバーなどのリグノセルロースバイオマスを、機械的に及び/又は化学的に、例えば、希酸処理によって、任意選択により前処理し、次いでバイオマスを、任意選択であるが好ましくは、イオン液体と混合することによって脱結晶化する。次いでバイオマスを、本明細書に記載されている通り水の添加が調節される、イオン液体における酸に触媒される加水分解に供する。残留リグニン及びセルロース固体を、第2の加水分解段階に任意選択により供し、一方、液体加水分解物を、例えば、イオン排除クロマトグラフィーを使用してイオン液体から分離する。イオン液体中での加水分解のさらなる段階を、所望であれば実施することができる。イオン排除ステップにおいて回収されたイオン液体を、任意選択により、水から取り出し、再循環させ、一方、加水分解された糖を、燃料及び/又は別のバイオ製品に任意選択により発酵させる。
【0053】
[0053]本明細書における加水分解方法により生産された加水分解糖は、発酵に加えて様々な用途に用いることができる。リグノセルロースバイオマス材料は、プロセシングをさらに向上させ得る前処理ステップに任意選択により供することができる。
【0054】
[0054]本発明はしたがって、本発明の改良されたバイオマス加水分解ステップを含む、エタノール若しくはブタノールなどの燃料又は別のバイオ製品を製造する方法を提供する。単糖を含有する供給原料からエタノール、ブタノール及び別の有用な生成物を製造するための発酵プロセスは、当技術分野において知られている。例えば、Mosierら[56]は、エタノールへのバイオマス変換並びにそのようなプロセスのためのリグノセルロース材料の前処理及び加水分解に関する最近の総説を示している。この参考文献は、そのような発酵プロセスの記載に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
[0055]バイオマス加水分解のための現存する酵素的及び化学的手法と比較して、本発明のイオン液体系は、多くの魅力的な特徴を有する。濃酸プロセスのように、本発明のイオン液体系は、酵素ではなく安価な化学的触媒を使用し、独立した前処理ステップを回避する。協力して作用することにより、イオン液体系、例えば、[EMIM]Cl及びHClは、わずか105℃で数時間のうちに高い糖収率を生産するが、酵素的加水分解は数日かかる可能性があり[12]、多くの前処理方法は160〜200℃の温度を必要とする[10]。また、イオン液体によるリグノセルロース可溶化は、酵素的加水分解において問題となる可能性がある高濃度でのプロセスを可能にする。一方、このイオン液体プロセスは、危険な濃酸の使用を回避することによって、典型的な酸加水分解方法に改良を加える。触媒量の希酸を使用することにより、大量の濃酸を再循環させる複雑性及び危険性が取り除かれる。その代わりに使用されるイオン液体は、取り扱いがはるかに容易であると考えられる。これらの相違にもかかわらず、イオン液体プロセスは、濃酸加水分解を使用した工業用プロセスと同様である[16、23]。したがって、イオン液体プロセスは、容易に大規模化するために、証明されている工学技術及び設備を活用することができる。
【0056】
[0056]本明細書において使用される「イオン液体」という用語は、本明細書における開示と矛盾しない、その最も広い、当技術分野において認識されている意味を有することを意図する。イオン液体は、ほぼ周囲の室温で又はそれ以下で融解する塩である。本発明における方法において使用するために、イオン液体は、反応温度で液体である。「塩化物イオン含有イオン液体」という用語は、塩のアニオンが塩化物イオンであるイオン液体を指す。「特定のアニオン含有イオン液体」という類似の用語は、塩のアニオンが特定されたアニオンであるアニオン液体を指す。同様に、イオン液体の群は、例えば、ピリジニウム含有イオン液体など、イオン液体のカチオンのクラス又は群を命名することによって記載することができる。本発明において有用なイオン液体は、セルロースが少なくとも一部可溶性である、すなわち、いくらか測定可能な程度まで可溶性であるものである。好ましくは、イオン液体は、接触されるセルロースの約5〜25質量%まで又はそれ以上が可溶性であるイオン液体である。より好ましくは、イオン液体は、セルロースの約25質量%まで又はそれ以上が可溶性であるイオン液体である。リグノセルロース材料は、イオン液体中に可溶性である必要はない。そのような材料は、イオン液体との接触及び混合によって、脱結晶化、膨潤、部分的に可溶化又は構造的に破壊されてもよい。多数のイオン液体が、セルロースを溶解させることが当技術分野において示されている。多数のイオン液体が市販されており、又は当技術分野において知られている方法によって調製することができる。本方法は、本明細書において、加水分解反応を実行するためのイオン液体への酸触媒の添加を指定する。しかしながら、購入又は調製されたイオン液体は、若干量の酸を含有する。好ましい実施形態において、反応の一貫性のために、酸残留物又は混入を含有しないイオン液体が好ましい。購入又は調製されたイオン液体が酸を含有している場合、加水分解反応を実行するために酸は必要とされないか、又は低いレベルの酸が必要とされる。
【0057】
[0057]本発明の方法に必要とはされないが、イオン液体と組み合わせて、適した共溶媒を用いることができる。例えば、共溶媒をイオン液体に添加して、反応混合物の粘性を低下させること又は反応成分の混合を増強すること又は反応混合物の流れを増強することができる。適した共溶媒は、中でも、ジアルキルアセトアミド、特に、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチルアセトアミド(DEA)又はアセトニトリルを含む、極性の非プロトン性溶媒を含む。別の実施形態では、共溶媒は、ジメチルホルムアミドを含むジアルキルホルムアミド;アルキル−又はN−アルキル−置換ピロリジノンを含む、又はより詳細には、メチルピロリドン、又は1−エチル−2−ピロリジノンを含むピロリドン;スルホラン;ジアルキルスルホキシド、特に、ジメチルスルホキシド;ジオキサン;N−メチルカプロラクタムを含むアルキル又はN−アルキル置換ラクタム、;N,N−ジメチルプロピオンアミドを含むジアルキルプロピオンアミド;n−ブタノールを含む、6〜12個の炭素原子を有するアルコール;1−ピロリジンカルボキシアルデヒド;又は混和できるそれらの混合物である。好ましい共溶媒は、DMA、N−メチルピロリドン及びアセトニトリルを含む。ピリジンは、本発明の好ましい共溶媒ではない。好ましい共溶媒は、無水物である。特定の態様において、共溶媒は、反応混合物の25質量%未満のレベルで存在する。別の実施形態において、共溶媒は、反応混合物の10質量%未満のレベルで存在する。別の実施形態において、共溶媒は、反応混合物の5質量%未満のレベルで存在する。特定の態様において、共溶媒は、反応混合物の1〜25質量%に相当する。特定の態様において、共溶媒は、反応混合物の1〜10質量%に相当する。特定の態様において、共溶媒は、反応混合物の1〜5質量%に相当する。
【0058】
[0058]特定の態様において、イオン液体のカチオンは、特に、少なくとも1つのプラスに荷電した窒素原子を含有する、有機カチオンである。特定の態様において、イオン液体は、アルキルイミダゾリウムイオン液体、より詳細には、アルキルイミダゾリウムクロリドイオン液体である。さらなる特定の実施形態において、イオン液体は、1,3−ジアルキル−イミダゾリウムクロリド又は1,2,3−トリアルキルイミダゾリウムクロリドである。特定の態様において、アルキル置換基は、1〜6個の炭素原子及びより詳細には1〜3個の炭素原子を有する。さらに特定の実施形態において、イオン液体は、[EMIM]Cl(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド)、[BMIM]Cl(1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロリド)、又は1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、又はそれらの混合物である。特定の態様において、イオン液体は、アルキルピリジニウムイオン液体、より詳細には、アルキルピリジニウムクロリドイオン液体である。さらなる特定の実施形態において、イオン液体は、1−アルキルピリジニウムイオン液体、又は1,4−ジアルキルピリジニウムクロリドである。さらに特定の実施形態において、イオン液体は、1−エチルピリジニウムクロリド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、又はそれらの混合物である。本発明、特に、塩化物イオンがイオン液体の塩のアニオンであるものにおいて有用なさらなるイオン液体は、米国特許出願公開第2008/0033187号において示されている。イオン液体のさらなる有機カチオンは、そのようなカチオンの記載に関して、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2009/0062524号、国際公開第2009030950号パンフレット、国際公開第2009030849号パンフレット、米国特許出願公開第20090020112号、国際公開第2008112291号パンフレット、米国特許出願公開第20080227162号及び国際公開第2009024607号パンフレットにおいて記載されている。
【0059】
[0059]さらなる、本発明において有用なイオン液体の有機カチオンは、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム及び一般に、6個以下の炭素を有するアルキル鎖を有する1,3−ジアルキルイミダゾリウムカチオン;置換されていてもよい1−R’−3−アルキルイミダゾリウム(式中、Rは、アリル基、又はアリール基で置換されたアルキル基、特にフェニル基などの、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基である)、例えば、1−ベンジル−3−アルキルイミダゾリウム又は置換されていてもよい1−ベンジル−3−アルキルイミダゾリウムなど;アルキル基が、同じ又は異なっていてもよく、1〜6個又は1〜3個の炭素原子を有する、1,3−ジアルキルピロリジニウム、例えば、1−ブチル−3−メチルピロリジニウムなど;及び、1〜6個又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたものなどのN−置換ピリジニウムカチオン、例えば、3−メチル−N−ブチルピリジニウムなどを含む。
【0060】
[0060]以下のカチオンは、予期される低いセルロース可溶性のために、本発明の方法において使用するのに好ましくない:1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム(及びより高級なアルキル鎖);1−オクチル−3−メチルピロリジニウム(及びより高級なアルキル鎖)N−オクチルピリジニウム(及び高級アルキル鎖)。
【0061】
[0061]「バイオマス多糖基質」という用語は、本明細書において、バイオマス多糖、リグノセルロース又はバイオマス多糖を含有するリグノセルロースバイオマスを指すために総称的に使用される。「バイオマス多糖」は、バイオマスから得られる任意の多糖を指し、特に、中でも、セルロース、マンナン、キシラン、ガラクタン、及びアラビナンを含む。所与のリグノセルロース又はリグノセルロースバイオマスは、複数のバイオマス多糖を含有してもよい。所与のバイオマス多糖の加水分解は、単糖の混合物をもたらし得る。
【0062】
[0062]「リグノセルロース」又は「リグノセルロース材料又はバイオマス」という用語は、本明細書において、リグニン及びセルロースを含有する任意の供給源由来の材料を指すために使用される。リグノセルロース及びリグノセルロース材料はヘミセルロース、キシラン、アラビナン、又はマンナンなどの別のバイオマス多糖を含有していてもよい。典型的には、そのような材料中のセルロース及び別のバイオマスポリマーは、リグニンと強固に結合している。リグノセルロース又はリグノセルロース材料は、物理的方法(磨砕、細断又はすり潰し)によって、又は、セルロース若しくは別のバイオマス多糖の加水分解への利用可能性を増加させ得る、当技術分野において知られている化学的若しくは生物学的(例えば、酵素的)方法によって、前処理されてもよい。しかしながら、そのような化学的又は生物学的前処理は、本発明を実施するために必要とされない。リグノセルロース材料は、中でも、木材残渣、紙くず、農業残渣及びエネルギー農作物(例えば、スイッチグラス又はススキ属などの木本的な草類)を含む。リグノセルロース及びリグノセルロース材料は、水を含有してもよい。本発明のための好ましいバイオマス多糖基質は、20質量%未満の水を含有し、より好ましくは、15質量%以下の水を含有する。そのような材料の水分含量は、当技術分野において知られている方法によって低くすることができる。
【0063】
[0063]「セルロース」という用語は、本明細書において、任意の供給源由来のセルロースを含むために広く使用され、α−セルロース、β−セルロース及びγ−セルロース及びそれらの混合物を含む。セルロースは、数万から数百、例えば、10,000〜12,000から300までの範囲に及び得るその重合度(DP、無水グルコース単位の平均数)によって特徴付けることができる。本明細書で使用されるセルロースはまた、非誘導体化セルロース又は、エチル−若しくはメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、若しくはそれらの混合物などのセルロース誘導体を指す。特定の態様において、本発明の方法は、水に不溶性であるセルロース又はセルロース誘導体に特に有用である。特定の態様において、本発明の方法は、天然の供給源から化学修飾を行わずに得られたセルロースに特に有用である。本発明のために好ましいセルロースは、20質量%未満の水を含有し、より好ましくは、15質量%以下の水を含有する。セルロースの水分含量は、当技術分野において知られている方法によって低くすることができる。
【0064】
[0064]「加水分解生成物」という用語は、本明細書において、本発明の方法において生成される、少なくとも主に単糖を含有する生成物を指すために使用される。加水分解生成物は、典型的には、1つ又は複数の単糖の水溶液として生成される。加水分解生成物はまた、二糖(セロビオースなど)及び比較的低いレベルの糖オリゴマー(例えば、3糖〜6糖)好ましくは10質量%未満)を含有してもよい。好ましくは、加水分解生成物が微生物に対して毒性でなく、したがって、単糖供給原料として有用であるように、加水分解生成物はごく小量の単糖脱水生成物、例えば、フルフラールなどのフラン又はHMFを含有する。好ましくは、加水分解生成物が微生物に対して毒性でなく、したがって、単糖供給原料として有用であるように、加水分解生成物はごく低いレベルの、レブリン酸などの潜在的に毒性の加水分解副生成物を含有する。特定の態様において、加水分解生成物(水が除去された)は、75質量%以上の1つ又は複数の単糖を含有する。特定の態様において、加水分解生成物(水が除去された)は、90質量%以上の1つ又は複数の単糖を含有する。特定の態様において、加水分解生成物(水が除去された)は、95質量%以上の1つ又は複数の単糖を含有する。特定の態様において、加水分解生成物は、10質量%未満のフルフラール、HMF、又はレブリン酸を含有する。特定の態様において、加水分解生成物は、5質量%未満のフルフラール、HMF、又はレブリン酸を含有する。特定の態様において、加水分解生成物は、2.5質量%未満のフルフラール、HMF、又はレブリン酸を含有する。特定の態様において、加水分解生成物は、10質量%未満のフルフラール、HMF、及びレブリン酸の総計を有する。特定の態様において、加水分解生成物は、5質量%未満のフルフラール、HMF、及びレブリン酸の総計を含有する。特定の態様において、加水分解生成物は、2.5質量%未満のフルフラール、HMF、及びレブリン酸の総計を含有する。
【0065】
[0065]本明細書における方法において、加水分解反応の「開始」後に水を加水分解反応混合物に添加して、単糖収率を向上させ、望まない副生成物形成を減少させる。反応は、典型的には、十分な量の酸触媒を、多糖又はリグノセルロース及びイオン液体と合わせたときに開始し、混合物を、加水分解が起こるために十分な、典型的には周囲温度より高い温度まで加熱する。典型的には、約70C以上の温度が、加水分解が起こるために必要とされる。典型的には、多糖又はリグノセルロース材料に対して約5質量%の酸触媒が、加水分解が起こるために必要とされる。加水分解の開始は、様々な方法で誘発することができる。例えば、加水分解の開始は、反応温度に保たれたイオン液体中の多糖又はリグノセルロースの混合物への酸の添加によって誘発することができる。代替として、加水分解の開始は、イオン液体中の多糖又はリグノセルロースの混合物及び酸の温度を反応温度まで上昇させることによって誘発することができる。代替として、加水分解の開始は、多糖又はリグノセルロースをイオン液体及び酸の混合物に反応温度で添加することによって誘発することができる。代替として、誘発は、反応温度での酸の多糖又はリグノセルロース材料との相互作用を必要とするため、開始は反応成分の十分な混合によって誘発されてもよい。代替として、そのような誘発の組み合わせを使用することができる。好ましい一実施形態において、反応は、酸の添加又はイオン液体中の多糖又はリグノセルロースの混合物の温度の上昇によって誘発される。反応中、いずれの添加において添加される水の量も、加水分解を阻害する又はクエンチさせることを意図していない。しかしながら、加水分解反応を停止する又はクエンチさせることが所望される場合、例えば、グルコースの所望の収率が達成される場合、反応をクエンチさせ得る1つの方法は、大過剰の水の添加によるものである。
【0066】
[0066]特定の態様において、用いられるイオン液体のバッチの酸性度は、酸触媒の添加を必要としないセルロース加水分解のために十分であり得る。イオン液体の酸性度は、バッチによって、及び供給源(例えば、所与の市販のイオン液体の製造業者又はイオン液体化合物を調製するために用いられる合成方法)に応じて、変化し得ると考えられる。酸の量は、イオン液体を製造するため又は精製するために用いられる方法に応じて変化し得る。したがって、酸が十分に混入したイオン液体は、酸触媒の添加を必要としないこともあり、又は、本明細書において記載されているものより低いレベルの酸触媒の添加を必要とすることもある。当業者は、本発明の方法においてそれらを使用する前にイオン液体の酸性度の評価に適用することができる、酸性度を評価するためのよく知られている方法が存在することを認識するであろう。適用することができる1つの方法は、標準的な酸塩基滴定である。
【0067】
[0067]酸触媒の量及び反応が開始される温度は、加水分解される基質、酸の種類及び、上記のような、用いられるイオン液体の供給源を含む反応条件の別の詳細に応じて決定することが当業者には理解されるだろう。添加する水の量は、多糖の沈殿を回避し、特に、糖の脱水による、副生成物形成を最小限に抑えるように調節される。触媒の添加及び温度上昇の順序は特に束縛されないが、典型的には、イオン液体中の混合物を反応温度まで加熱し、次いで、酸を添加する。典型的には、反応成分を混合して反応を開始すること、及び、特に反応混合物が粘性である場合、反応混合物が十分に混合されない又はかき混ぜられなければ、反応が阻害される場合があることが理解されるであろう。典型的には、イオン液体中の混合物を激しく混合し、酸添加の前に反応温度まで加熱し、激しい混合を酸触媒の添加まで継続する。反応混合物の混合は、典型的には、追加の水を添加するため連続的に行う。
【0068】
[0068]加水分解反応又は反応段階は、周囲温度より高い温度で行う。反応は、典型的には、周囲圧力で及び約70〜140℃、好ましくは85〜115℃の範囲の温度で、及びより詳細には100〜110℃で行う。反応は、熱による加熱、マイクロ波加熱、赤外線加熱又は超音波加熱を含む任意の既知の方法によって加熱することができる。増加させた圧力又は周囲以下の圧力下で反応を実行することが有益であることが分かる場合があり、周囲と異なる圧力が使用されるならば、当業者は、反応温度を、そのような選択された圧力に適合させることができることを認識する。反応は、空気(周囲の雰囲気)中で行うことができる。窒素下又は不活性ガス下などのより不活性の雰囲気中で反応を実行することが有益であることが分かる場合がある。しかしながら、酸素の排除は、本発明の方法の必要条件ではない。
【0069】
[0069]本方法に必要とはされないが、バイオマス多糖基質、例えば、リグノセルロース材料(バイオマス)は、本明細書に記載されているイオン液体中での加水分解の前に、様々な前処理ステップに供することができる。所望の粒径への細断及び/又は磨砕を含む機械的な前処理は、当技術分野において知られているように適用することができる。さらなる前処理プロセスは、中でも、蒸気、熱水、希酸、AFEX、ARPへの曝露及び石灰への曝露を含む。そのような前処理の目的は、リグニンからセルロース及びヘミセルロースを放出させることである。Mosierら[56]は、そのような前処理ステップに関し、この記載に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる最近の総説を示している。
【0070】
[0070]本発明の化学的加水分解方法は、統合されたバイオマス変換プロセスに順応性を与える。イオン液体溶媒はバイオマス多糖を化学的反応に容易に利用できるようにするため、このプロセスは広範囲のバイオマス供給原料と適合性である可能性が高い。下流に向かって、イオン液体加水分解によって生産される糖は、ほとんど無限の範囲の燃料及び化学物質の生産に順応性のある供給原料である。加水分解物の糖を容易に使用する大腸菌は、遺伝子工学により作製されており、燃料エタノールだけでなく1−ブタノール、2−ブタノール、分岐アルコール、脂肪酸、イソプレノイド、さらには水素もまた産生する[47〜49]。さらに、糖の水性流はまた、触媒プロセスによって燃料又は化学中間体に変換することもできる[50〜51]。生成物阻害を阻止するために、発酵と連結すること(同時に起こる糖化と発酵)を必要とすることが多い酵素的加水分解反応とは対照的に、この化学的プロセスは、任意の下流の変換と組にすることができる。最後に、イオン液体バイオマス加水分解から回収されるリグニンは、価値のある共生成物であり得る。Jones及び共同研究者らは、イオン液体中のバイオマス加水分解によるリグニン残渣が比較的修飾されていないことに注目し、それが、高価値のリグニン生成物のための優れた供給原料である可能性があることを示唆した[31、52]。結果として、単純な化学試薬を使用してバイオマス難分解性を克服し、有益な糖を遊離させる本発明者らのプロセスは、用途が広いバイオリファイナリーを補強する潜在能力を有する。
【0071】
[0071]前述を考慮して、本発明は、様々な燃料及び化学物質を生産するための方法であって、バイオマス多糖基質を加水分解して、単糖、特にグルコースを含有する供給原料を生産し、続いて燃料又は化学物質を生産するステップを含む方法を提供する。加水分解は、本明細書において記載されている通り、さらには、バイオマス多糖基質をイオン液体と、本明細書において記載されている通り、接触させて、この多糖をイオン液体中で少なくとも一部可溶化するステップであって、イオン液体のアニオンが、塩化物イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、トリブロモ酢酸イオン又はチオシアン酸イオンである、ステップと、混合物を反応温度まで加熱し、前記多糖の加水分解を開始するために十分な量で酸触媒を添加するステップと、全水分含量が少なくとも20質量%となるように、加水分解反応の開始後に反応混合物に水を添加するステップとを含む。加水分解は、本明細書に記載されている通り水を添加して、多糖の沈殿及び加水分解の阻害を回避し、糖(例えば、単糖)生成物の脱水を最小限に抑えるステップを含む。特定の態様において、本発明は、加水分解物の糖を使用して、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、分岐アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、イソプレノイド、及びさらには水素を生産するための方法を提供する[47〜49]。
【0072】
[0072]本発明は、本明細書において記載されている加水分解プロセスによって、バイオマス由来の改良された発酵供給原料を提供する。一般に生産される供給原料は、低レベルの望まないHMFなどの糖脱水生成物を含有し、これは、発酵、特に、細菌の発酵のために使用されるそのような供給原料において一般に望ましくない。本発明の改良された供給原料は、20質量%以下のそのような脱水生成物、特に、HMFを含有する。本発明における改良された供給原料は、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、2質量%以下又は1質量%以下のそのようなHMFなどの脱水生成物を含有する。
【0073】
[0073]本発明は、本発明の加水分解プロセスによって発酵又は生物変換のための供給原料が製造される、改良された発酵及び生物変換プロセスを提供する。さらに、本発明の加水分解により生産される糖の水性流はまた、触媒プロセスによって燃料又は化学中間体に変換することができる[50、51]。したがって、本発明は、本発明の加水分解反応によって生産される供給原料を使用して燃料又は化学物質を製造するための改良された触媒プロセスを提供する。生成物阻害を阻止するために、発酵と連結すること(同時に起こる糖化と発酵)を必要とすることが多い酵素的加水分解反応とは対照的に、本発明の化学的加水分解プロセスは、任意の下流の変換と組にすることができる。そのうえ、本発明のイオン液体バイオマス加水分解から回収されるリグニンは、価値のある共生成物であり得る。Jones及び共同研究者らによって記載されたように、イオン液体中のバイオマス加水分解によるリグニン残渣は比較的修飾されておらず、それが、高価値のリグニン生成物のための優れた供給原料である可能性があることを示している[31、52]。結果として、本発明はまた、そのようなプロセスのためのリグニン供給原料を生成するための本発明の加水分解プロセスを用いる、リグニンをそのようなリグニン生成物に変換する方法を提供する。
【0074】
[0074]化学種の群が本明細書において開示されている場合、その群のメンバーの任意の構造異性体、鏡像異性体、及びジアステレオ異性体を含む、その群及びすべての下位群のすべての個々のメンバーが別々に開示されることが理解される。マーカッシュグループ又は別のグループ分けが本明細書において使用される場合、その群のすべての個々のメンバー並びにその群の可能なすべての組み合わせ及び下位の組み合わせが、その開示に個々に含まれることが意図される。
【0075】
[0075]当業者は、同じ化合物を異なる名称で呼ぶことができることが知られているため、化合物の特定の名称は、例示的であることが意図される。
【0076】
[0076]本明細書において記載又は例示されている成分のすべての処方又は組み合わせは、別途明記されていない限り、本発明を実施するために使用することができる。
【0077】
[0077]例えば、温度範囲、圧力範囲、時間範囲、所与の変数に関する値の範囲、又は組成若しくは濃度の範囲など、範囲が明細書において与えられるときは常に、与えられた範囲に含まれるすべての中間の範囲及び部分範囲、並びにすべての個々の値がその開示に含まれることが意図される。別途記載のない限り、本明細書において記載されているすべての範囲は、列挙されている範囲の上限値及び下限値を含める。本明細書中の記載に含まれる、範囲又は部分範囲における任意の部分範囲又は個々の値を、本明細書中の特許請求の範囲から除外することができることが理解されるであろう。
【0078】
[0078]本明細書において言及されているすべての特許及び出版物は、本発明が属する技術分野の当業者の技術水準を示す。本明細書において引用されている参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれて、それらの公開又は出願日現在の技術水準を示し、従来技術に含まれる特定の実施形態を除外するために、必要であれば、この情報を本明細書において用いることができることが意図される。例えば、組成物が特許請求される場合、出願人の発明より前に当技術分野において知られている及び利用可能である化合物は、本明細書において引用されている参考文献において権限を付与する開示が提供されている化合物を含めて、本明細書中の組成物クレームに含まれると意図されていないことが理解されるべきである。
【0079】
[0079]本明細書において使用される場合、「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「ことを特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的、又はオープンエンドであり、追加の、要求されていない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書において使用される場合、「からなる(consisting of)」は、請求項の構成要素において明記されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書において使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の基本的な新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップを除外しない。広い用語である含む(comprising)は、より狭い本質的にそれからなる及びさらに狭いからなるを包含することを意図する。したがって、「1つ又は複数の請求項の構成要素を含む(comprising)」(例えば、「A及びBを含む(comprising))という句の本明細書における任意の記述において、この句は、より狭い、例えば、「A及びBから本質的になる」及び「A及びBからなる」を包含することが意図される。したがって、より広い語である「含む(comprising)」は、本明細書におけるそれぞれの使用において、「から本質的になる」又は「からなる」のいずれかについて明確に支持することが意図される。本明細書において例示的に記載されている本発明は、本明細書において明確に開示されていない任意の1つの要素又は複数の要素、1つの限定又は複数の限定の非存在下において、適当に実施することができる。
【0080】
[0080]明確に例示されているもの以外の、出発材料、試薬、合成方法、精製方法、分析方法、アッセイ方法、基質、及び固体を、過度の実験にたよらずに本発明の実施において用いることができることを、当業者は理解するであろう。任意のそのような材料及び方法のすべての当技術分野において既知の機能的等価物が、本発明に含まれることが意図される。用いられた用語及び表現は、限定のためではなく説明のための用語として使用され、そのような用語及び表現の使用において、示された及び記載された特徴又はその部分の任意の等価物を除外する意図はないが、様々な変更形態が、特許請求されている本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明を、例、好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって詳細に開示してきたが、本明細書において開示されている概念の変更形態及び変形形態が当業者により行われてもよいこと、及びそのような変更形態及び変形形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。
【0081】
[0081]本明細書において引用されているすべての参考文献は、本明細書によりそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。引用されている参考文献中の開示と本明細書の開示が矛盾する場合には、本明細書が優先する。本明細書において示されている一部の参考文献は、出発材料の供給源、合成の方法、精製の方法、分析の方法、並びに本発明のさらなる使用に関する詳細を提供するために参照により組み込まれる。
【0082】
[実施例]
[0082]より効率的な加水分解プロセスを求めて、イオン液体における酸性条件下でのセルロース及び糖の根本的な反応性が研究された。本発明者らは、セルロースを、Li及びZhao[28]と同様の条件下で、[EMIM]Cl中でHSO及びHClと反応させることから始めた。興味深いことに、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の生産、並びに中程度の収率のグルコースが観察された(表1)。セルロースを、105℃で12時間のその溶解後、[EMIM]Cl中で105℃で反応させた。表1において、HCl充填は、セルロース質量に対してである;収率は、HPLC分析に基づいたモル収率であり、セルロース中に含有されているグルコースモノマーに対してである;nodは、測定せずを意味する。行1(aのラベル)において使用された酸はHSOであった。
【0083】
[0083]糖脱水生成物であるHMFのアルデヒド官能性は、DNSアッセイを妨害するが、このアッセイはZhao及び共同研究者ら[35]によって使用され、それらのTRS収率を、実際の糖収率よりはるかに高くしたようである。グルコースを消費したHMFの生産は、セルロースが直接HMFに変えられていたこと、又は加水分解によるグルコースが脱水されてHMFを形成していたことのいずれかを示唆した。
【0084】
[0084]
【表1】

【0085】
[0085]これらの代替物を調査するために、グルコースを、様々な水分含量の[EMIM]Cl中で反応させた(図3、表2)。提示されている結果において、HSOが添加されなかった「a」のラベルの第1のセットの記入事項を除いて、グルコースを、100℃の[EMIM]Cl中で10wt%の初期濃度、及びグルコースに対して4wt%のHSO充填で反応させた。表2に列挙されている水分含量は、反応混合物の全質量に対してである;グルコース回収率は、HPLC分析に基づいており、初期グルコース濃度に対して正規化されている;HMFモル収率は、HPLC分析に基づいている。
【0086】
[0086]
【表2】

【0087】
[0087]酸及び水の両方の非存在下において、グルコースは変化しないで回収された。一方、HSOは、水がほとんど又は全く添加されないイオン液体において、グルコースのHMF及び別の生成物への急速な崩壊を引き起こした。水分含量を33wt%まで増加させることにより、グルコース消失の速度は減少したため、およそ90%のグルコースが1時間後に残存した。これらの結果は、セルロース加水分解により生産されたグルコースが、[EMIM]Clにおいて非水性条件下で急速に分解するが、より高濃度の水はグルコース減少を阻止することを示唆した。
【0088】
[0088]これらの結果に基づいて、[EMIM]Cl加水分解混合物中の水濃度を増加させることにより、セルロースからのグルコース収率を増強するべきである。しかしながら、水は、セルロースをイオン液体から沈殿させる[27]。例えば、[EMIM]Cl中の5wt%セルロース溶液は、溶液を希釈して10wt%水を達成した場合、扱いにくいゲルを形成して、水−イオン液体溶液中へのセルロースの均質な加水分解を不可能にした。本開示は、加水分解中に水を徐々に添加することによって、セルロース可溶性とグルコース安定性のバランスをとることが可能であることを実証する。セルロース可溶性は、反応が進行するにつれて増加し、セルロースの不利益な沈殿がなく加水分解反応が進行した後、より高い水分含量を添加することができると考えられる。以下の実験では、HClを加水分解酸触媒として使用して、酸のアニオン(Cl)をイオン液体のアニオンと合わせた。5wt%セルロースを含有する[EMIM]Clを、105℃でHCl及び少量の水でまず処理して、セルロースの加水分解が始まるようにした。この初期の反応期間中、セルロースの一部は、より短い、より可溶性のセグメントに加水分解されると考えられる(表1)。選択された時間の遅延後、追加の水を反応混合物に添加して、グルコース生成物を安定化させた。添加される水の量及び添加のタイミングを変化させて、グルコース収率に対する影響を評価した。
【0089】
[0089]表3は、水添加の変動の関数としてさらなる収率の結果を示す。
【表3−1】



【表3−2】



【表3−3】



【0090】
[0090]表3中の太字のデータは、比較を容易にするための本明細書中の別の表の写しであることに留意されたい。
【0091】
[0091]水添加のタイミングは、グルコース収率に顕著に影響を及ぼすことが見出された。例えば、反応混合物を5分後に水33%まで希釈した場合、セルロースは沈殿し、低いグルコース収率をもたらした。希釈を10分後まで遅らせることにより、セルロース沈殿が阻止され、60分以内に水分含量を43%まで徐々に増加させることにより、加水分解を2〜4時間実施した場合にほぼ90%のグルコース収率をもたらした。調節された水添加によって得られた高いグルコース収率は、イオン液体において報告された以前の最大収率のほぼ2倍高く、酵素的加水分解によって達成されたグルコース収率に近づく。
【0092】
[0092]そのうえ、セルロースを加水分解の前にイオン液体と混合する時間の長さを変化させることにより、収率及び副生成物形成に影響を及ぼすことが見出された。表4は、この影響を示す。表4において、セルロースを、[EMIM]Cl中で105℃で、5wt%の初期濃度で反応させた;HCl充填は、セルロース質量に対してである;収率は、HPLC分析に基づいたモル収率であり、セルロース中に含有されているグルコースモノマーに対してである。
【0093】
[0093]混合時間を増加させることは、一般に、セルロースの溶媒和の向上をもたらすと考えられる。しかしながら、混合時間を増加させることはまた、反応混合物の退色によって示される副生成物形成の増加をもたらした可能性が高い[36、37]。したがって、使用された反応条件では、約6時間の予備混合時間が最大収率をもたらすことが見出された。反応条件、例えば、反応温度、セルロース濃度又は酸濃度の変更は、最大収率を得るために必要とされる予備混合時間におそらく影響を及ぼすであろう。この最適化された予備混合手順を用いて、より濃縮されたセルロース溶液(10wt%)を、高い収率で加水分解することができるであろう。
【表4】

【0094】
[0094]調節された水添加の前に、これらの反応混合物において小さなセルロース繊維が観察された。この観察結果は、水添加の前の不完全なセルロース分解を示唆し、このことは低いグルコース収率を一部説明し得る。セルロースは、加水分解反応の最初の約30〜60分以内にグルコースと可溶性オリゴマーとの混合物に主として変換され、これらのオリゴマーがその後グルコースに加水分解されると考えられる。加水分解中のグルコース及びセロビオース(グルコースダイマー)濃度をモニタリングすることにより、セロビオース濃度は、1時間で最高点に達し、グルコース濃度が増加するにつれて減少したことが明らかとなった(図4)。
【0095】
[0095]代替のイオン液体が、[EMIM]Clを用いて最適化された反応条件を使用して加水分解のための溶媒として研究された(表5)。表5において、セルロースを、105℃で6時間混合した後に、イオン液体中で3時間、105℃で反応させた;HCl充填は、セルロース質量に対して20wt%であった;反応の水分含量は、最初は5wt%であり、以下の通り増加させた:20%(10分)、25%(20分)、33%(30分)、43%(60分)。収率は、HPLC分析に基づいたモル収率であり、セルロース中に含有されているグルコースモノマーに対してである。セルロースを溶解しなかったイオン液体は、低いグルコース収率をもたらした。[EMIM]NO及び[EMIM]BFはセルロースを膨潤させることができず、グルコース生産はこれらの溶媒では検出されなかった。[EMIM]の対応する臭化物及びトリフラート塩は、セルロースを膨潤させたが、わずか4〜5%のグルコース収率しかもたらさなかった。一方、イオン液体1,3−ジメチルイミダゾリウムジメチルリン酸塩及び[EMIM]OAcは、セルロースにとって優れた溶媒である[37]。しかしながら、20%までの時間調節した水の添加において、ジメチルリン酸塩イオン液体中のセルロースは、粘性のゲルを形成し、反応混合物の解析はグルコースを示さなかった。セルロースは、反応条件下で[EMIM]OAc中に溶解したままであったが、グルコースはこの溶媒中では生産されなかった。酸加水分解触媒(HCl)はジメチルリン酸塩又は酢酸塩によって緩衝化されて、それぞれpKa値が1.29及び4.76の共役酸を形成するために、加水分解がこれらの2つのイオン液体において阻止されたと考えられる[38、39]。緩衝化された酸は、弱すぎるため、使用された反応条件下でセルロース加水分解を達成することができないと考えられる[33]。他のイオン液体とは対照的に、[BMIM]Cl、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、及び1−エチルピリジニウムクロリドなどの塩化物含有イオン液体はともに、セルロースを溶解し、66〜73%の範囲の最適ではないグルコース収率で加水分解を支援した。これらの結果は、セルロース加水分解のためのイオン液体媒体は、セルロース可溶性及び加水分解活性の両方のバランスをとらなければならないことを示す。塩化物塩であるイオン液体は、その弱い塩基性度とともに、セルロースとの強い相互作用によってこの目的を達成すると考えられる。
【0096】
[0096]
【表5】

【0097】
[0097]複雑で不均一なリグノセルロースバイオマスは、セルロースよりもより重大な加水分解に関する課題を提示する。扱いにくい結晶性セルロースに加えて、コーンストーバーなどのリグノセルロースバイオマスは、多くのバイオマス加水分解プロセスにとって主要な障害物である不均一の成分である、保護的ヘミセルロース及びリグニンを含む[3、9]。それにもかかわらず、塩化物イオン液体は、リグノセルロースバイオマスのための優れた溶媒である。
【0098】
[0098]本明細書において記載されているセルロースに適用された調節された水添加方法及び反応条件の、キシラン、ヘミセルロースの加水分解への適用により、キシロースを77%の収率で生産した。次いで、セルロース加水分解のためのプロセスを、2段階でのコーンストーバーの加水分解に拡大した(表6)。第1の段階において、[EMIM]Clと混合された未処理のコーンストーバーを、10wt%HCl、105℃で、純粋なセルロースで使用された同じ調節された水希釈プロセスを用いて加水分解した。第1段階プロセスは、ストーバーのキシラン及びセルロース含有量に基づいて71%収率のキシロース及び42%収率のグルコースを生産した。第1段階の反応混合物の70%水への希釈は、加水分解されていない多糖及びリグニンの沈殿を引き起こした。次いでこれらの残渣を、[EMIM]Cl中に溶解させ、同一な第2段階加水分解に供し、これは、さらなるキシロース及びグルコースを放出し、リグニンを含有する固体が後に残った。総合すると、これらの2つのステップは、単純な化学試薬のみを使用して、79%のキシロース収率及び70%のグルコース収率をもたらした。本明細書に記載されている2段階プロセスは、木材及び草類などの別のバイオマス供給源の加水分解を行いやすい。さらなる収率向上を達成するために、所望であれば、さらなる反応段階を用いることができる。表3(上記)は、コーンストーバー加水分解のさらなる変形形態に関する収率の結果を示す。
【0099】
[0099]
【表6】

【0100】
[00100]実用的なバイオマス加水分解プロセスは、糖及び試薬回収のための効率のよい手段を必要とする。本発明者らは、イオン排除クロマトグラフィーが、コーンストーバー加水分解反応混合物からの糖及びイオン液体の分離を可能にすることを見出した。この技術では、電解質及び非電解質の溶質を含有する混合物を、荷電した樹脂中にそれを通過させることによって分離する[40]。イオン液体などの荷電した種は、樹脂から排除され、一方、糖などの非電解質は保持される。コーンストーバー加水分解物を、[EMIM]交換されたダウエックス(登録商標)50樹脂のカラムに通過させることにより、95%を超えるイオン液体回収率、88%のキシロース回収率、及び94%のグルコース回収率で、糖からのイオン液体溶媒の実験室スケールの分離が可能となった。これらの収率は最適化されておらず、小規模のデモンストレーション分離によって制限されている可能性があり、大規模化によって向上する可能性がある。注目すべきは、非常に高効率のイオン液体再循環が可能であり、イオン液体は、バイオマス残渣中に化学的に組み込まれない。
【0101】
[00101]高価なイオン液体を再循環させる能力は、加水分解プロセスの経済的な実現性にとって重要である。生物変換を支援するために、バイオマス加水分解糖は、微生物増殖及び発酵を阻害する夾雑物を含まないものでなければならない。本発明者らは、記載されているプロセスによってコーンストーバーから得られる糖は、細菌及び酵母、特に、エタノール生成又はより一般的には溶媒生成細菌及び酵母のための優れた供給原料であることを見出した。
【0102】
[00102]野生型大腸菌は、様々な糖をエタノールと有機酸の混合物に発酵するが、遺伝子工学的に作製されたKO11株は、選択的にエタノールを生産する[41]。唯一の炭素供給源としての役割を果たし、コーンストーバー由来のグルコース−キシロース−アラビノース混合物は、対照グルコース−キシロース混合物に匹敵する速度での大腸菌KO11の好気的増殖を可能にした(図5、グラフA)。さらに、酸素欠乏条件下で大腸菌KO11は、ストーバー加水分解糖から79±4%収率のエタノールを、及び純粋なキシロース及びグルコースから76±3%収率を生産し、本発明者らの加水分解プロセスによる糖は、エタノールに容易に変換することができることを実証した。
【0103】
[00103]遺伝子工学的に作製された細菌は、バイオ燃料生産のために有望であるが、現在では酵母発酵が優勢である[42、43]。キシロースを発酵する生来の能力を有するピキア・スティピティスは、リグノセルロース由来の糖の生物変換のための酵母の候補である[44〜46]。コーンストーバー加水分解糖は、この酵母の増殖のための優れた炭素供給源であり(図5、グラフB)、P.スティピティス(P.stipitis)は、加水分解物をエタノールに効率的に変換する。キシロース及びグルコースを発酵して、この酵母は、70±2%収率のエタノールを加水分解物から及び72±1%収率を純粋な糖から生産した。
【0104】
[00104]市販の化学物質は、試薬等級以上であり、さらに精製せずに使用された。反応は、温度を制御した油浴中で加熱したガラス容器中で、磁気撹拌しながら実施した。「減圧下で濃縮された」という用語は、Speed Vac濃縮器システムを使用した水及び別の揮発性物質の除去を指す。導電率は、Extech Instruments ExStik II導電率計を用いて測定した。NMRスペクトルは、マディソン国立磁気共鳴施設(National Magnetic Resonance Facility at Madison(NMRFAM)で、Bruker DMX−400 Avance分光計(1H、400MHz;13C、100.6MHz)によって取得した。
【0105】
[00105]1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(99.5%、[EMIM]Cl)は、Solvent−Innovation(ケルン、ドイツ)製であった。1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(97%、[EMIM]BF4)、5−ヒドロキシメチルフルフラール、樺材キシラン(X0502、98%キシロース残渣、約95%乾燥固体)及びダウエックス(登録商標)50WX4(200〜400メッシュ、H+型)は、Aldrich(ミルウォーキー、WI)製であった。1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフラート(98.5%、[EMIM]OTf)、1−ブチル−3−メチルピリジニウムクロリド(97%、[BMPy]Cl)、及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド(97%、[EMIM]Br)は、Fluka(ヘール、ベルギー)製であった。1−エチルピリジニウムクロリド(98%、[EtPy]Cl)、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド(98%、[MMEIM]Cl)、及びフルフラールは、Acros(ブックス、スイス)製であった。セルロース(中型コットンリンター、C6288、約95%乾燥固体)は、Sigma(セントルイス、MO)製であった。粉砕され篩にかけたコーンストーバー(約95%乾燥固体)は、B.E.Dale及び共同研究者ら(ミシガン州大学)[Chundawat,S.P.S.、Venkatesh,B.、及びDale,B.E.、AFEX前処理及び酵素消化性に対する、粉砕されたコーンストーバーの粒径に基づく分離の影響(Effect of particle size based separation of milled corn stover on AFEX pretreatment and enzymatic digestibility)。Biotechnol.Bioeng.96(2)、219〜231(2006)を参照されたい]から入手し、使用の前に40メッシュの篩を通過させた。
【0106】
[00106]分析方法。すべての反応生成物を、HPLCによって分析し、市販されている標準から作成した検量線を用いて定量した。典型的な反応に続いて、生成物混合物を既知の質量の脱イオン水で希釈し、遠心分離又は濾過に供して不溶性の生成物を除去し、分析した。生成物の濃度をHPLCピーク積分から計算し、モル収率を計算するために使用した。HPLCは、屈折率及びフォトダイオードアレイ検出器、並びにBio−Rad Aminex HPX−87Hカラム(300×7.8mM;5mM HSO、0.6ml/分、65℃)を備えたAgilent1200システムを用いて実施した。
【0107】
[00107]セルロースの加水分解のための例示的手順。セルロース(18.7mg、104μmolグルコース単位)及び[EMIM]Cl(380mg)を、105℃で6時間混合して粘性の溶液を形成した。この溶液に、HCl水溶液(1.66M、23.2μl;3.8mg濃HClに等しい)を添加し、反応混合物を105℃で激しく撹拌した。この時間の間、溶液の粘性は劇的に減少した。10分後、撹拌しながら脱イオン水(80μl)を、その後、20分(40μl)、30分(60μl)、及び60分(100μl)でさらなるアリコートの水を添加した。3時間の全反応時間の後、溶液を水(701μl)で希釈した。不溶性物質を遠心分離によって除去し、溶液を、HPLCによって分析した(12.4mg/gグルコース、88%収率;0.34mg/gHMF、3%収率)。別の場合には、反応混合物のアリコートを、HPLC分析のために定期的に取り出した。
【0108】
[00108]105℃より高い融点を有するイオン液体(例えば、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、1−エチルピリジニウムクロリド、及び1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド)を利用する反応は、わずかに異なる取扱いを必要とした。これらの場合では、イオン液体及びセルロースを、セルロースの溶解が達成されるまで、熱線銃を使用して一緒に加熱した。次いで、混合物を、加水分解反応の前に105℃で6時間加熱した。1−エチルピリジニウムクロリド溶液はこの温度で液体のままであったが、もう一方のセルロース溶液は凝固した。HClの添加の前に、これらの固体は熱線銃で融解させ、HCl水溶液の添加後は液体のままであった。
【0109】
[00109][EMIM]Clにおけるグルコースの典型的な反応。グルコース(47.2mg、262μmol)を、[EMIM]Cl(460mg)及び脱イオン水(50μl)中に溶解させた。濃HSO(5.5μl)を添加し、得られた溶液を100℃で撹拌した。反応混合物のアリコートを、HPLC分析のために定期的に取り出した。
【0110】
[00110]例示的なキシランの加水分解。キシラン(9.4mg、66μmolキシロース単位)及び[EMIM]Cl(188mg)を、105℃で数時間混合して粘性の溶液を形成させた。この溶液に、HCl水溶液(1.66M、11μl)を添加し、反応混合物を105℃で激しく撹拌した。10分後、撹拌しながら脱イオン水(40μl)を、その後、20分(20μl)、30分(30μl)、60分(50μl)、及び90分(50μl)でさらなるアリコートを添加した。3時間の全反応時間の後、溶液を水(100μl)で希釈した。不溶性物質を遠心分離によって除去し、溶液を、HPLCによって分析した(15.3mg/gキシロース、77%収率)。
【0111】
[00111]コーンストーバーの加水分解のための典型的な手順。コーンストーバー(26.7mg、54μmolグルコース単位、44μmolキシロース単位)及び[EMIM]Cl(502mg)を、105℃で6時間混合した。この混合物に、HCl水溶液(1.66M、29μl、5mg濃HClに等しい)を添加し、反応混合物を105℃で激しく撹拌した。10分後、撹拌しながら脱イオン水(100μl)を、その後、20分(50μl)、30分(75μl)、及び60分(125μl)でさらなるアリコートを添加した。2.5時間の全反応時間の後、溶液を水(750μl)で希釈した。不溶性物質を遠心分離によって除去し、水(200μl)で2回すすぎ、乾燥した。液体生成物(2.046g)を、HPLCによって分析した(2.0mg/gグルコース、42%収率;2.3mg/gキシロース、71%収率)。
【0112】
[00112]次いで、第1の加水分解由来の褐色の固体を、[EMIM]Cl(306mg)とともに105℃で4.5時間加熱した。この混合物に、HCl水溶液(1.66M、14.5μl、2.5mg濃HClに等しい)を添加し、反応混合物を105℃で激しく撹拌した。10分後、撹拌しながら脱イオン水(50μl)を、その後、20分でさらなる25μlの水、30分で67.5μlの水、及び60分で70μlの水を添加した。3時間の全反応時間後に、溶液を水(300μl)で希釈し、遠心分離にかけて不溶性物質を沈降させた。液体生成物(770mg)を、HPLCによって分析した(3.56mg/gグルコース、28%収率;0.7mg/gキシロース、8%収率)。2ステッププロセスでは、グルコースの全体の収率は70%であり、キシロースの全体の収率は79%であった。
【0113】
[00113]別の場合には、反応混合物のアリコートを、HPLC分析のために定期的に取り出した。
【0114】
[00114]加水分解物からの糖及び[EMIM]Clの回収のための典型的な手順。脱イオン水とのスラリー中のダウエックス(登録商標)50WX4(75g、0.128当量)を、65℃で維持されたジャケット付きカラム(120cm×1cm、Knots #420870−1200)中に置き、0.10mの樹脂床を得た。樹脂を、水中の[EMIM]Cl(64g、0.44mol)をカラムに通過させることによって[EMIM]+と交換した。交換手順の終了時に、カラム流出液は中性であり、H+の[EMIM]+との完全な交換を表していた。次いで、脱気した脱イオン水を、カラムに通過させてすべての溶質を溶出させた。
【0115】
[00115]加水分解液体(2.741g、8.5mgグルコース、17.7mgキシロース、〜60%水)を、標準的な条件下で[EMIM]Cl(1046mg)を使用して、コーンストーバー(102.3mg)の加水分解反応から得た。反応の固体残渣は、第2の加水分解反応のためにとっておいた。第1の加水分解液体の一部(2.591g)を樹脂カラムの上部に充填し、脱気した脱イオン水で3cm/分の速度で溶出した。画分を回収し、HPLCによって分析した(7.5mgグルコース、94%;14.3mgキシロース、86%)。[EMIM]Clを含有する画分を減圧下で濃縮し、DOと混合し、プールし、DO/[EMIM]Cl溶液(3.673g)を生じさせた。この溶液のアリコート(342.8mg)をN,N−ジメチルアセトアミド(71.5mg、0.821mol)と合わせ、得られた溶液を、1H NMR分光法によって分析した。スペクトルの積分によって、0.708:1モル比の[EMIM]Cl:DMAが明らかとなり、913mg(92%)の[EMIM]Clの回収を示した。
【0116】
[00116]固体残渣の反応による加水分解液体(1.684g)を用いて、[EMIM]Cl(471mg)を使用して、上記のプロセスを繰り返した。この液体の一部(1.534g)のクロマトグラフィーの後、イオン液体含有画分を減圧下で濃縮し、D2Oと混合し、プールし、D2O/[EMIM]Cl溶液(3.261g)を生じさせた。この溶液のアリコート(528.4mg)を、N,N−ジメチルアセトアミド(79.6mg、0.914mmol)と合わせ、得られた溶液を、1H NMR分光法によって分析した。スペクトルの分析により、0.532:1モル比の[EMIM]Cl:DMAが明らかとなり、440mg(103%)の[EMIM]Clの回収を示した。2ステッププロセスによる合わせた[EMIM]Clの回収率は、96%であった。
【0117】
[00117][EMIM]Clを含まない分離プロセスの糖含有画分をプールし、凍結乾燥して褐色の残渣とした。この残渣を脱イオン水(5mL)中に溶解させ、微生物増殖及び発酵試験のために使用した、図5を参照されたい。
【0118】
[00118]細菌増殖試験。大腸菌KO11は、W.D.Marner及び共同研究者らから寄贈された。すべての場合において、大腸菌は、クロラムフェニコール(40mg/l)を含有する培地において37℃で増殖させた。単一コロニーを、キシロース(0.4wt%)を含有するルリア−ベルターニ(Luria−Bertani)培地[54](4ml)中に接種した。250rpmでかき混ぜている培養管における18時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離により回収し、炭素供給源を全く含まないM9最小培地[54](2ml)中に再懸濁した。ポリスチレン96ウェルプレートにおいて、20ウェルに、キシロース(2.62g/l)及びグルコース(1.38g/l)を含有するM9最小培地(150μl)を満たした。10ウェルには、コーンストーバー加水分解糖(2.62g/lキシロース、1.38g/lグルコース、及び0.91g/lアラビノース)を追加したM9最小培地(150μl)を満たした。残りのウェルは、脱イオン水(200μl)を満たした。各ウェルに、上記の細胞懸濁液(5μl)を接種し、プレートに低蒸発構造の蓋をかぶせ、BioTek ELx808 Absorbance Microplate Readerにおいて高速でかき混ぜながらインキュベートした。各ウェルのOD595nmを5分毎に25時間測定した。各ウェルについての倍加時間を、OD595nm値の改変ゴンベルツ(Gompertz)関数[55]への適合によって計算した。
【0119】
[00119]細菌発酵試験。低酸素環境を維持するために、大腸菌による発酵は、鋼製カニューレを貫通させたゴム栓を取り付けたガラス試験管(13×100mm)中で実施した。カニューレの他端は、第2のガラス試験管において水中に浸した。第2の試験管に、ガス抜きのために針で穴をあけたゴム栓を取り付けた。
【0120】
[00120]単一コロニーを、キシロース(0.26wt%)及びグルコース(0.14wt%)を含有するLB培地(4ml)中に接種した。250rpmでかき混ぜている培養試験管中での11時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離により回収し、新鮮なLB培地(4ml)中に再懸濁した。この細胞懸濁液のアリコート(10μl)を、キシロース(2.62g/l)とグルコース(1.38g/l)、又はコーンストーバー加水分解糖(2.62g/lキシロース、1.38g/lグルコース、及び0.91g/アラビノース)のいずれかを追加したLB培地(1.5ml)を含有する、嫌気的増殖のために備え付けた試験管に添加した。各培地は、3連で試験した。N(g)によるパージに続いて、発酵を、250rpmでかき混ぜながら実施した。12時間後、培養物を、HPLCによって糖及びエタノールについて分析した。糖は、すべての培養において完全に消費された。エタノール力価を、理論上の収率0.51gエタノール/g糖と比較した(純粋な糖については2.04g/l又はコーンストーバー加水分解物については2.25g/l)。
【0121】
[00121]酵母増殖試験。ピキア・スティピティスCBS6054は、T.W.Jeffries及び共同研究者らから寄贈された。ピキア属のすべての培養物は30℃で増殖させた。単一コロニーを使用して、キシロース(1.2wt%)及びグルコース(0.8wt%)を含有するYP培地(6ml;10g/l酵母エキス及び20g/lペプトン)に接種した。225rpmでかき混ぜている培養試験管中での11時間のインキュベーション後、培養の1mlアリコート中の細胞を遠心分離によって回収した。細胞を、アミノ酸不含酵母ニトロゲンベース(6.7g/l;Difco)を含有する合成最小培地(0.5ml)中に再懸濁した。
【0122】
[00122]ポリスチレン96ウェルプレートにおいて、10ウェルに、キシロース(1.82g/l)、グルコース(2.18g/l)、及びアラビノース(0.33g/l)を含有する合成最小培地(150μl)を満たした。5つのウェルに、コーンストーバー加水分解糖(1.82g/lキシロース、2.18g/lグルコース、及び0.33g/lアラビノース)を追加した合成最小培地(150μl)を満たした。残りのウェルに、脱イオン水(150μl)を満たした。各ウェルに、上記の細胞懸濁液(10μl)を接種し、プレートに低蒸発構造の蓋をかぶせ、BioTek ELx808 Absorbance Microplate Readerにおいて高速でかき混ぜながらインキュベートした。各ウェルのOD595nmを、5分毎に19時間測定した。
【0123】
[00123]酵母発酵試験。発酵実験のために、P.スティピティスを、適切な炭素供給源を含有するYP培地(10g/l酵母エキス及び20g/lペプトン)中で30℃で増殖させた。単一コロニーを、1.2wt%キシロース及び0.8wt%グルコースを含有する培地(6ml)中に接種した。225rpmでかき混ぜている培養試験管中での11時間のインキュベーション後、酵母懸濁液を、キシロース(3.24g/l)、グルコース(3.88g/l)、及びアラビノース(0.58g/l)、又はコーンストーバー加水分解糖(3.24g/lキシロース、3.88g/lグルコース、及び0.58g/lアラビノース)のいずれかを追加したYP培地(1.5ml)を含有するガラス試験管に添加した。糖培地は3連で、加水分解物培地は2連で試験した。試験管に、針を貫通させたゴム栓を取り付け、150rpmでかき混ぜた。52時間後、培養物を、HPLCによって糖及びエタノールについて分析した。糖は、すべての培養において完全に消費された。エタノール力価を、理論上の収率0.51gエタノール/グルコース及びキシロースのgと比較した(純粋な糖については3.63g/l又はコーンストーバー加水分解物については3.63g/l)。
【0124】
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【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】[0046]セルロース及びキシランの加水分解反応を示す化学的スキームの図である。セルロース及びヘミセルロースの、モノマー糖への化学的加水分解は、オリゴマーを通して進み、フラン及び別の分解生成物を形成する副反応を伴う。
【図2】[0047]イオン液体バイオマス加水分解を使用したバイオ燃料生産のための統合されたプロセスに関するフローチャート概略図である。特定の一態様において、分離は、イオン交換方法を用いて実施することができる。プロセスは、任意選択による機械的及び/又は化学的前処理ステップ、任意選択であるが好ましくは、イオン液体中での脱結晶化、水添加を調節するイオン液体中での加水分解;並びに分離及び任意選択であるが好ましくは、イオン液体の再循環を含む。生成糖は、任意選択により発酵に送られて、エタノールなどの望ましい生成物を生産する。
【図3】[0048][EMIM]Clにおける酸に触媒されるグルコース分解を示すグラフである。酸性の[EMIM]Clにおいて、グルコース(菱形)は100℃で急速に消失し、HMF(四角)及び別の分解生成物を形成する。水分含量の増加は、グルコース減少を遅らせる。反応条件:グルコース、10wt%;HSO、グルコースに対して4wt%。
【図4】[0049][EMIM]Clにおけるセルロース加水分解中のグルコース、HMF、及びセロビオース生産を示すグラフである。グルコース濃度は、セロビオースなどのセルロースオリゴマーが加水分解するため、4時間にわたって増加する。セルロースは、標準的な最適化された反応条件下で反応させた。
【図5】[0050]コーンストーバーの加水分解物の糖によるエタノール生成微生物の好気的増殖を示す図である。細菌である大腸菌(Escherichia coli)(A)及び酵母ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)(B)は、それらの唯一の炭素供給源としてのコーンストーバーの加水分解物の糖によって急速に増殖する。加水分解物において、大腸菌(E.coli)の平均倍加時間は2.77時間であり、純粋な糖において倍加時間は2.95時間であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス多糖基質を加水分解するための方法であって、
[a]バイオマス多糖基質をイオン液体と接触させて、前記多糖をイオン液体中で少なくとも一部可溶化するステップであって、イオン液体のアニオンが、塩化物イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、トリブロモ酢酸イオン又はチオシアン酸イオンである、ステップと、
[b]ステップ[a]の混合物を反応温度まで加熱し、前記多糖の加水分解を開始するために十分な量で酸触媒を添加するステップと、
[c]全水分含量が少なくとも20質量%となるように、加水分解反応の開始後に反応混合物に水を添加するステップであって、水を、多糖が沈殿せず、加水分解が実質的に抑制されないような速度で添加する、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
加水分解を、単糖収率が50%以上になるまで継続する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
添加する酸触媒の量が、反応におけるバイオマス多糖基質の量に対して約5質量%〜40質量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
添加する酸触媒の量が、反応における多糖又はリグノセルロースの量に対して約10質量%〜25質量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
反応温度が約70〜140℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
イオン液体が、カチオンがイミダゾリウム又はピリジニウムであるイオン液体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
イオン液体が、イオン性イミダゾリウムクロリド、又はピリジニウムクロリドである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
イオン液体が、[EMIM]Cl、[BMIM]Cl、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド又は1−アルキルピリジニウムクロリドである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
イオン液体が、塩化物イオン含有イオン液体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
イオン液体が、トリフルオロ酢酸イオン含有イオン液体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
バイオマス多糖が、セルロース、キシラン、アラビナン、又はマンナンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
バイオマス多糖基質がリグノセルロースであり、添加する酸の量をリグノセルロースの量に対して測定する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
バイオマス多糖がリグノセルロースであり、リグノセルロースがコーンストーバーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
添加する水の全量が、反応混合物の少なくとも35質量%であるが、反応混合物の50質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
添加する水の全量が40〜45質量%の間である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
加水分解を1〜5時間行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
加水分解を2つ以上の段階で行い、前の段階の後に残ったバイオマス多糖基質を加水分解生成物及びイオン液体から分離し、後の段階でのさらなる加水分解のために戻し、前の段階の加水分解生成物をイオン液体から分離し、分離したイオン液体を後の段階で再使用するために戻す、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
2段階プロセスである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
加水分解生成物を、イオン液体のカチオンと交換される強カチオン交換樹脂を用いてイオン液体から分離する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ステップ[a]の前に、希酸により前処理するステップをさらに含む、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ[a]の前に、希酸により前処理するステップをさらに含み、希酸による前処理ステップを、140〜225℃の範囲の温度で10分未満の間、実施する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ[a]の前に、希酸により前処理するステップをさらに含み、希酸による前処理ステップを、190〜210℃の範囲の温度で5分以下の間、周囲圧力より高い圧力で実施する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
選択された量の水を、反応開始後、選択された時点で段階的に添加する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
水を、選択された長さの時間にわたって継続的に添加して水の所望の全量を達成する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
加水分解の開始の3〜10分後に全反応混合物に対して20質量%の全水分レベルを達成するように水を添加する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
加水分解の開始後10分までに全反応混合物に対して20質量%の全水分レベルを達成するように水を添加する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
加水分解の開始後60分までに全反応混合物に対して40〜45質量%の全水分レベルを達成するように水を添加する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
加水分解の開始後10〜30分までに全反応混合物に対して20〜35質量%の全水分レベルを達成するように水を添加する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
加水分解の開始後30〜60分以内に全反応混合物に対して35〜45質量%の全水分レベルを達成するように水を添加する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
水を以下のように添加する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法:
まず、加水分解の開始後少なくとも10分までに全反応混合物に対して20質量%の全水分含量を達成し、
次に、加水分解の開始後少なくとも30分までに全反応混合物に対して25質量%の全水分含量を達成する。
【請求項29】
水を以下のように添加する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法:
まず、加水分解の開始後少なくとも10分までに全反応混合物に対して20質量%の全水分含量を達成し、
次に、加水分解の開始後少なくとも60分までに全反応混合物に対して40〜45質量%の全水分含量を達成する。
【請求項30】
水を以下のように添加する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法:
まず、加水分解の開始後少なくとも10分までに全反応混合物に対して20質量%の全水分含量を達成し、
次に、加水分解の開始後少なくとも30分までに全反応混合物に対して25質量%の全水分含量を達成し、
その次に、加水分解の開始後少なくとも60分までに全反応混合物に対して40〜45質量%の全水分含量を達成する。
【請求項31】
酸触媒が、1以下のpKaを有する酸である、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
加水分解生成物中のHMF収率が、10%以下である、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
バイオマス多糖基質を、加水分解を開始する前に最大9時間イオン液体と接触させる、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
バイオマス多糖基質を、加水分解を開始する前に最大9時間イオン液体と接触させ、バイオマス多糖基質とイオン液体との混合物が、周囲温度から140℃までの間の温度である、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
初期反応混合物中のバイオマス多糖の濃度が、1〜25質量%の範囲である、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
初期反応混合物中のリグノセルロースの濃度が、1〜25質量%の範囲である、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
共溶媒を、反応混合物の1〜25質量%の範囲の量でイオン液体に添加する、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載のとおり加水分解生成物を調製するステップと、前記加水分解生成物をイオン液体から分離するステップとを含む、単糖供給原料を製造するための方法。
【請求項39】
請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載のとおり加水分解生成物を調製するステップと、前記加水分解生成物をイオン液体から分離するステップとを含み、ステップ[a]の前に、希酸により前処理するステップをさらに含む、単糖供給原料を製造するための方法。
【請求項40】
発酵によりエタノールを生成する方法であって、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法により得られる加水分解生成物を、エタノール生成微生物による発酵のための単糖供給原料として用いるステップを含む、方法。
【請求項41】
発酵によりエタノールを生成する方法であって、請求項1〜5又は17〜19のいずれか一項に記載の方法により得られる加水分解生成物を、エタノール生成微生物による発酵のための単糖供給原料として用いるステップを含み、ステップ[a]の前に希酸により前処理するステップをさらに含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−531892(P2012−531892A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517726(P2012−517726)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/039812
【国際公開番号】WO2011/002660
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(390023641)ウイスコンシン アラムナイ リサーチ ファウンデーシヨン (61)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】