説明

バイオマス油から高炭素含量生成物を生成するための方法

バイオマスから高炭素含量生成物を製造するための方法において、バイオマス油が、分解反応容器に添加される。バイオマス油は、バイオマス油を分解するのに十分な時間をかけて、ほぼ真空の条件から約20,700kPaまでの範囲の圧力で、約100℃〜約800℃の範囲の温度に加熱される。分解されたバイオマス油からタールが分離される。タールは、少なくとも約50重量%の炭素を含有する高炭素含量生成物になるまでタールを減少させるのに十分な時間をかけて、ほぼ真空の条件から約20,700kPaまでの範囲の圧力で、約200℃〜約1500℃の範囲の温度に加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマス油から高炭素含量生成物を生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスおよび植物油を燃料および化学物質に転化するための分解プロセスの商業化を制限している1つの欠点は、「タール」または「コークス」として一般的に知られている高分子量のポリマー有機化合物の生成である。これらの材料は、分解プロセスの全体の転化効率を低下させ、好ましくない副生成物を生成し、触媒の汚損(fouling)および他の失活プロセスを招く。
【0003】
高純度の炭素から作製される、カーボンナノチューブおよび他の炭素系生成物の発明を経て、高純度の炭素がより一層重要な商品となっている。高純度の炭素は、現在、黒鉛化石油コークス、か焼石油コークス、か焼無煙炭、コールタールピッチ、木材、およびいくつかのバイオマス(主にリグニン、ヘミセルロース、および/またはセルロース系有機材料)から最も一般的に製造される。これらの既存のプロセスのうち、バイオマスの炭化のみが、再生可能資源からの高純度の炭素の製造を可能にする。
【0004】
地球温暖化への最近の懸念により、原油および石炭などの化石原料由来炭素を原料として用いるプロセスは、減少されるべきである。新規な再生可能資源の代替物の発見および商業化は、地球温暖化の一因とならずに高純度の炭素を作製する可能性を提供する。さらに、化石原料由来炭素に匹敵するかまたはそれより優れた特性を有し、コスト競争力の高い方法で製造可能であり、かつ必要な処理エネルギーが低くて済む代替物を発見するのが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
バイオマスから高炭素含量生成物を製造するための方法において、バイオマス油が、分解反応容器に添加される。バイオマス油は、バイオマス油を分解するのに十分な時間をかけて、ほぼ真空の条件から約20,700kPaまでの範囲の圧力で、約100℃〜約800℃の範囲の温度に加熱される。分解されたバイオマス油からタールが分離され、少なくとも約50重量%の炭素を含有する高炭素含量生成物になるまでタールを減少させるのに十分な時間をかけて、ほぼ真空の条件から約20,700kPaまでの範囲の圧力で、約200℃〜約1500℃の範囲の温度に加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】バイオマス油から高炭素含量生成物を製造するための方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明にしたがって製造される高炭素含量生成物の全有機体炭素含量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、分離技術とともに分解および炭化反応を用いて、再生不能資源および他の再生可能資源から生成される市販の製品の代わりとなり得るバイオマス由来の高炭素含量生成物を開発するものである。
【0008】
本発明は、バイオマス油からの高炭素含量生成物の製造および精製を提供する。高炭素含量生成物は、炭素元素または炭素の誘導体から主に構成される生成物を含む。高炭素含量生成物は、通常、炭素元素分析によって測定される際に、50重量%以上の炭素を含有する化合物を含む。バイオマスは、石炭または石油などの物質において地質学的プロセスによって転化された物質を除き、何らかの生物の物質に由来する、任意の非化石系有機材料を含む。バイオマス油は、バイオマス源に由来する任意の油を含む。バイオマス油は、植物油、生物学的に生成された脂質、および動物性脂肪を含むがこれらに限定されない。植物油は、植物源に由来する脂質を含む。植物源は、植物界または緑藻植物門(緑藻類)の一員である任意の生体を含む。植物油の例は、穀物油、油糧種子油、および野菜からの油を含む。高炭素含量生成物を製造するのに特に好適なバイオマス油は、トリアシルグリセリド、長鎖脂肪酸、長鎖脂質、および同様の化学化合物を含む。
【0009】
本発明は、バイオマスおよび植物油原料から有益かつ必要な炭素元素および炭素の誘導体を製造する手段を提供する。分解反応、炭化反応、および分離技術の使用に基づく化学変化は、化石燃料および他の資源から生成される同等の炭素生成物の代わりを直接果たし得る商業用の品質の高炭素含量生成物を製造するように設計される。分解反応は、1つ以上の分子中の1つ以上の炭素−炭素結合を開裂させることによって、有機化学物質または化学物質の混合物の化学組成を変化させる任意のプロセスを含む。炭化反応は、熱分解または分解蒸留によって、有機物を炭素元素または炭素含有残基に転化するプロセスを含む。
【0010】
分解を用いて植物油およびバイオマス油から燃料および短鎖カルボン酸を製造するプロセスは、参照により援用される米国特許出願第11/824,664号明細書および同第12/319,028号明細書に既に記載されている。本発明は、バイオマスおよび植物油の分解の際の触媒の汚損および他の失活プロセスに関連した問題を解決するのに加えて、高炭素含量生成物を製造するためのこれらのプロセスをさらに改良する。分解の際、分解プロセスの際に形成されるタールを分離して回収し、これらのタールから高炭素生成物を製造することが可能である。
【0011】
図1は、高炭素含量生成物を生成する方法10の簡略化されたフローチャートである。バイオマス油12が、分解反応容器14に添加される。バイオマス油12は、穀物油、脂質または動物性脂肪原料、トリアシルグリセリド、長鎖脂肪酸、長鎖脂質、同様の化学化合物または上記のいずれかの組合せである。バイオマス油12は、現在利用可能なプロセスまたは将来開発され得るプロセスによって製造可能である。バイオマス油12の例は、植物油または中鎖(C10〜C14)および長鎖(C16を超える)脂肪酸に見られる化学化合物の群を代表するトリアシルグリセリドを含み、天然に合成され又は見出される藻類、動物性脂肪、または変性された材料などのバイオマスである。植物油中のトリアシルグリセリドは、グリセロール基を介して連結された3つの中鎖(C10〜C14)および/または長鎖(C16を超える)脂肪(天然に合成されるカルボン)酸からなる。植物油は、亜麻油、大豆油、紅花油、ヒマワリ油、ゴマ油、キャノーラ油、菜種油、ジャトロファ油、月見草油、ケシ油、カメリナ油、ハマナ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、綿実油、トウモロコシ油、大豆油、および堅果油を含むがこれらに限定されない。穀物油に含まれる通常の脂肪酸は、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の両方を含む。飽和脂肪酸は、いかなる二重結合または他の官能基も含有しない。不飽和脂肪酸は、炭素−炭素二重結合を有する2個以上の炭素原子を含有する。飽和酸は、ステアリン酸(C18;18:0)、パルミチン酸(C16;16:0)、ミリスチン酸(C14;14:0)、およびラウリン酸(C12;12:0)を含む。不飽和酸は、リノレン酸(シス,シス,シス C18;18:3)、リノール酸(シス,シス C18;18:2)、オレイン酸(シス C18;18:1)、ヘキサデカン酸(シス,シス C16;16:2)、パルミトレイン酸(シス C16;16:1)、およびミリストレイン酸(シス C14;14:1)を含む。
【0012】
バイオマス油12は、予め加熱されるかまたは分解反応容器14に直接供給され得る。バイオマス油12は、分解反応容器14内で分解される。バイオマス油12が分解条件下で分解反応容器14中に留まる時間、温度、および圧力を様々に変えることによって、所望の程度の分解(転化)を制御することができる。圧力が二次的な役割を果たしつつ、温度および時間(滞留時間)は、より重要なプロセス変数である。好適な分解温度は、約100℃〜約800℃の範囲であり、特に好適な分解温度は、約300℃〜約700℃の範囲である。好適な滞留時間は、最大で約500分間であり、特に好適な滞留時間は、約180分間以下である。好適な分解圧力は、ほぼ真空の条件から約20,700kPa(3000psia)までの範囲である。
【0013】
分解プロセスの生成物は、分解条件、バイオマス油12の元の組成、分解反応容器14中に存在する気体環境、および分解反応容器14の構造に左右される。分解プロセスの際に化学成分(例えば、中間留分、短鎖脂肪酸など)の最適な混合物を製造するために、分解条件(温度、滞留時間、圧力)が、バイオマス油12の詳細な化学分析に基づいて変更される。分解反応容器14の内部の気体環境は、バイオマス油12の組成および分解条件に応じて変わり得る。不活性ガス、窒素、水蒸気、水素、気相有機化学物質の混合物およびそれらの組合せが、分解前または分解中に分解反応容器14に導入され得る。分解反応容器14は、様々な反応器構造を有し得る。これらの構造は、バッチ式、連続流下式、流下充填床、および流動床を含む。
【0014】
分解プロセスでは、炭素−炭素結合を分断するのにエネルギーが用いられる。分解は、熱分解または接触分解であり得る。熱分解では、物質に熱エネルギーが加えられて、炭素−炭素結合が開裂される。接触分解では、結合の開裂を促すのに触媒が用いられる。例えば、熱分解では、炭素−炭素結合から分割された各炭素原子が単一の電子となり、ラジカルとなる。ラジカルの反応により、様々な生成物が生じ得る。触媒を用いて(接触分解)または用いずに(熱分解)、低い圧力または高い圧力のいずれかで、適度な高温で、大きな有機分子を分断して、より小さくかつより有用な分子にすることができる。中鎖(C10〜C14)および長鎖(C16を超える)脂肪(天然に合成されるカルボン)酸は、熱分解または接触分解のいずれかを用いた分解プロセスに適合する。接触分解に好適な触媒は、アルミナ、シリカ−アルミナ、硫酸化金属酸化物、ゼオライト、パラジウム、ニオブ、モリブデン、白金、チタン、アルミニウム、コバルト、金およびそれらの組合せを含むがこれらの限定されない。
【0015】
分解反応容器14からの分解生産物は、生成される材料に応じて様々な処理工程にかけられ得る。分解反応器中で生成される材料は、軽質留分16、中間留分18、未反応原料(再利用可能物)20、およびタール22という4つの一般的なクラスのうちの1つに分類され得る。これらの材料の各々は、分解反応容器14内で、または後の分離の際に分離され得る。分離プロセスは、冷却もしくは加熱、液固分離、気液分離、気固分離、化学反応、または他の化学的/物理的特性の操作を含み得る。
【0016】
軽質留分16は、中間留分が液相にある温度および圧力で気相に留まる化合物である。軽質留分16は、分解の際に分解反応容器14中で生成される低分子量の有機化学物質および炭化水素に加えて、水素、窒素、または水蒸気などの、分解反応を操作するために反応器に添加されるいかなる未反応の気相材料も含む。低分子量の有機化学物質および炭化水素は、メタン、メタノール、エタン、エタノール、n−ペンタン、i−ペンタン、ペンテン、ペンタノール、n−ブタン、i−ブタン、ブタノール、ブタン、メチルエステル、エチルエステルなどを含む。軽質留分16は、気液相分離、蒸留、凝縮、または他の分離プロセスによって、分解反応容器14から出る他の材料から分離される。
【0017】
中間留分18は、ガソリン、灯油、またはディーゼルタイプの燃料に含めるのに好適な特性を有し、あるいはガソリン、灯油、またはディーゼルタイプの燃料に含めるのに好適なパラフィンおよび/またはオレフィンと同様の揮発度を有する化学物質を含有する。中間留分18は、芳香族化合物の混合物、シクロパラフィン化合物、短鎖カルボン酸化合物、直鎖状パラフィン化合物、オレフィン、および分解反応容器14中で生成される他の少量の成分を含む。中間留分18の成分は、輸送燃料および/または有機系化学物質に望ましい特性を有する。輸送燃料は、灯油、ジェット燃料、ガソリンブレンド基材、および複数のグレードのディーゼル燃料を含む。有機系化学物質は、ベンゼンおよびトルエンなどの芳香族化合物、ならびに酢酸およびプロピオン酸などの短鎖脂肪酸、ならびにそれらの誘導体を含む。短鎖脂肪酸は、米国特許出願第12/319,028号明細書にしたがって、中間留分18から取り出すことができる。
【0018】
一実施形態において、中間留分18は、C4〜C16のアルカン、アルケン、芳香族化合物、シクロパラフィン、もしくはアルコール、C2〜C16の脂肪酸、またはC2〜C16の脂肪酸メチルエステルのうちの少なくとも1つを有する分解されたバイオマスの留分を収集することによって製造される。収集された留分は組み合わされて、−10℃未満の曇り点を有する燃料組成物が製造される。C2〜C16の短鎖カルボン酸の混合物も収集される。
【0019】
未反応原料20は、中間留分18の成分として適していない化学組成を有し、さらなる分解にさらされ得る化合物を含む。これらの化合物は、元の原料(バイオマス油12)、バイオマス油12における脂肪酸鎖と同一もしくは同様の長さを有する脂肪酸、または部分的に分解されたパラフィン、オレフィン、もしくはカルボン酸のように中間留分の成分としては炭素主鎖における炭素原子が多すぎるものと化学的に同一である。未反応原料20は、分解反応器に入るが、C16より短い炭素鎖を有する化学化合物に転化されない化学物質を含み得る。これらの材料は、最終生成物に好ましくないいくつかの化学的および物理的特性を有する。未反応原料20は、蒸留または他の分離技術によって、中間留分18およびタール22から分離される。未反応原料20は、分解反応容器14に戻されるか、異なる分解条件用の第2の分解反応容器に移されるか、またはいくつかの他の目的に用いられ得る。
【0020】
タール22は、分解反応の際に生成される長鎖化学化合物を含む。タール22は、中間留分18において望まれるより高い分子量および/または低い揮発度および/または低い発熱量を有する、分解反応の際に生成される化学物質を含む。タール22の成分の一部は、未反応原料20とともに中間留分18から分離され、未反応原料20とともに処理される。タール22は、溶媒抽出、蒸留、反応蒸留、蒸発、膜分離、化学反応およびそれらの組合せによって、中間留分18から分離され得る。他のタール22成分(通常、より高い分子量を有するもの)は、分解の後、固体となる。
【0021】
未反応原料20とともに再処理されないタール22は、炭化反応容器24に移すことができ、炭化反応容器24において、高炭素含量生成物が製造される炭化条件にさらされる。タール22が炭化条件下に留まる時間、温度、および圧力を様々に変えることによって、所望の程度の炭化を制御することができる。好適な炭化温度は、約200℃〜約1500℃の範囲であり、特に好適な炭化温度は、約400℃〜約800℃の範囲である。好適な滞留時間は、最大で約500分間である。好適な炭化圧力は、ほぼ真空の条件から約20,700kPa(3000psia)までの範囲である。タール22は、高炭素含量生成物の製造が最大となる炭化条件下で加熱される。
【0022】
炭化の際、熱分解反応が起こり、炭化反応容器24により、タール22から、合成ガス26、灰28および高炭素含量生成物30が製造される。合成ガス26は、様々な量の一酸化炭素、水素、二酸化炭素およびメタンを含有する気体混合物である。合成ガス26は可燃性であり、燃料源として、または他の化学物質を製造するための中間体として用いられることが多い。灰28は、タール22およびバイオマス油12の固体の不燃性残余物である。合成ガス26および灰28は、炭化反応容器24内で、または後の分離の際に、高炭素含量生成物30から分離され得る。炭化条件において、合成ガス26は気体であり、灰28は固体であり、高炭素含量生成物30は一般に液体である。
【0023】
高炭素含量生成物30は、炭素元素および炭素含有残基を含む。好適な高炭素含量生成物30は、少なくとも約50重量%の炭素を含有する。より好ましくは、高炭素含量生成物30は、少なくとも約70重量%の炭素を含有する。最も好ましくは、高炭素含量生成物30は、少なくとも約90重量%の炭素を含有する。炭化反応容器24内の炭化条件およびバイオマス油12の選択によって、高炭素含量生成物30の炭素レベルが決定される。
【0024】
不活性ガス、窒素、水蒸気、水素、気相有機化学物質の混合物およびそれらの組合せが、炭化前または炭化中に炭化反応容器24に導入され得る。高炭素含量生成物30の特性を向上させるために、追加の化学物質も炭化反応容器24に添加することができる。例えば、塩素または塩素化化合物が、炭化反応容器24に導入されて、塩素化炭素基が形成され得る。塩素化炭素は、様々な水銀捕捉用途に用いることができる。タール22および/または高炭素含量生成物30の炭素主鎖から官能基を除去するのを促すために、塩酸またはリン酸も炭化反応容器24に添加することができる。
【0025】
高炭素含量生成物30は、特定の所望の炭素生成物を得るために、さらに処理され得る。例えば、高炭素含量生成物30を物理的に処理して粒状の炭素生成物にすることができる。炭素元素をさらなる化学反応に供して、他の炭素系生成物を製造することができる。高炭素含量生成物30は、高純度の粒状炭素、活性炭、およびカーボンブラックを含むがこれらに限定されない。
【実施例】
【0026】
大豆油を、180分間未満にわたって、ほぼ真空の条件と20,700kPa(3000psia)との間の圧力で、分解反応容器中で300℃〜500℃に加熱して、元の大豆油の化学組成を変更する分解反応を引き起こした。様々な材料を分離するために、分解反応容器から出る液体および固体を下流の処理にかけた。未反応原料および部分的に反応された材料が、中間留分から分離し、タールを分解反応器に再循環させるか、またはさらなる分解反応器に移した。
【0027】
タールを、分解反応容器の底部から直接収集し、室温に冷やした。5分間または10分間のいずれかにわたって、101kPa(14.7psia)の圧力で、480℃〜600℃の範囲の温度で、真空オーブン(炭化反応容器)にタールを入れた。炭化の際に生成される合成ガスを、真空オーブンから連続的に除去した。これらの炭化条件下ではわずかな量の灰が生成された。得られた固体材料の炭素含量を分析した。
【0028】
図2は、試験される様々な条件での全有機体炭素含量(TOC)およびタールから高炭素含量生成物への重量減少を示す。図2に示されるグラフにおいて、棒の各グループが、特定の炭化時間および温度での条件についてのTOCおよび重量減少を表す。TOCを左側の棒で表し、重量減少を右側の棒で表す。図示されるように、炭化反応を480℃で10分間行ったとき、当初のタール材料の24.8%が除去され、94.6%の全有機体炭素を含有する高炭素含量生成物が残った。
【0029】
本発明を、例示的実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変形を行ってもよく、均等物を本発明の要素の代わりに用いてもよいことが、当業者によって理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱せずに、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために多くの変更をなし得る。したがって、本発明は開示される特定の実施形態に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を含むことになることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスから高炭素含量生成物を製造するための方法であって、
バイオマス油を分解反応容器に添加する工程と、
前記分解反応容器中で、前記バイオマス油を分解するのに十分な時間をかけて、ほぼ真空の条件から約20,700kPa(3000psia)までの範囲の圧力で、約100℃〜約800℃の範囲の温度に前記バイオマス油を加熱する工程と、
分解されたバイオマス油からタールを分離する工程と、
少なくとも約50重量%の炭素を含有する高炭素含量生成物になるまで前記タールを減少させるのに十分な時間をかけて、ほぼ真空の条件から約20,700kPa(3000psia)までの範囲の圧力で、約200℃〜約1500℃の範囲の温度に前記タールを加熱する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記高炭素含量生成物が、少なくとも約70重量%の炭素を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高炭素含量生成物が、少なくとも約90重量%の炭素を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
分解されたバイオマス油からタールを分離する前記工程が、溶媒抽出、蒸留、反応蒸留、蒸発、膜分離、化学反応およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオマス油が、植物油、微生物脂質、動物性脂肪、トリアシルグリセリド、長鎖脂肪酸、長鎖脂質およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオマス油が、大豆油、キャノーラ油、パーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、亜麻仁油、ジャトロファ油、綿実油、紅花油、ハマナ油、月見草油、ゴマ油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、カメリナ油、ホホバ油、およびそれらの組合せからなる群から選択される植物油である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオマス油が、前記分解反応容器中で、約300℃〜約700℃の範囲の温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオマス油が、前記分解反応容器中で、最大で約500分間加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオマス油が、前記分解反応容器中で、不活性ガス、窒素、水蒸気、水素、気相有機化学物質の混合物およびそれらの組合せからなる群から選択される気体とともに加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アルミナ、シリカ−アルミナ、硫酸化金属酸化物、ゼオライト、パラジウム、ニオブ、モリブデン、白金、チタン、アルミニウム、コバルト、金およびそれらの組合せからなる群から選択される触媒が、前記分解反応容器に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記タールが、約400℃〜約800℃の範囲の温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記タールが、最大で約500分間加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記タールが、不活性ガス、窒素、水蒸気、水素、気相有機化学物質の混合物およびそれらの組合せからなる群から選択される気体とともに加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記高炭素含量生成物を処理して、活性炭またはカーボンブラックにする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも約50%の炭素を含有する、請求項1に記載の方法によって製造される高炭素含量生成物。
【請求項16】
少なくとも約70%の炭素を含有する、請求項15に記載の高炭素含量生成物。
【請求項17】
少なくとも約90%の炭素を含有する、請求項16に記載の高炭素含量生成物。
【請求項18】
バイオマスから、低い曇り点を有する、高炭素含量生成物、短鎖カルボン酸および燃料組成物を製造するための方法であって、
反応容器中で、バイオマス油を分解するのに十分な時間をかけて、ほぼ真空の条件から約20,700kPa(3000psia)までの範囲の圧力で、約100℃〜約800℃の範囲の温度に前記バイオマス油を加熱する工程と、
C4〜C16のアルカン、アルケン、芳香族化合物、シクロパラフィン、もしくはアルコール;C2〜C16の脂肪酸;またはC2〜C16の脂肪酸メチルエステルのうちの少なくとも1つを含む分解されたバイオマス油の留分を収集し、分解されたバイオマス油の収集された留分を組み合わせて、−10℃未満の曇り点を有する燃料組成物を製造する工程と、
C2〜C16のカルボン酸を含有する前記分解されたバイオマス油から混合物を収集する工程と、
前記分解されたバイオマス油からタールを分離し、少なくとも約50重量%の炭素を含有する高炭素含量生成物になるまで前記タールを減少させるのに十分な時間をかけて、ほぼ真空の条件から約20,700kPa(3000psia)までの範囲の圧力で、約200℃〜約1500℃の範囲の温度に前記タールを加熱する工程と
を含む方法。
【請求項19】
前記バイオマス油が、植物油、微生物脂質、動物性脂肪、トリアシルグリセリド、長鎖脂肪酸、長鎖脂質およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記高炭素含量生成物が、少なくとも約70重量%の炭素を含有する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−526892(P2012−526892A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510799(P2012−510799)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/001437
【国際公開番号】WO2010/132123
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509002224)ユニヴァーシティー オブ ノースダコタ (3)
【Fターム(参考)】