説明

バキュームハンド

【課題】電子部品を直接吸着して保持し、しかも形状や寸法の異なるICチップのハンドリングに適応することができるバキュームハンドを提供する。
【解決手段】ロボットアームに支持されて移動するハンド本体10と、ハンド本体10に着脱可能に接続する延長手段20と、延長手段20下部の挿入空間21e内に収容され下端から突出した状態から引っ込んだ状態になる吸着筒体30と、ハンド本体10と延長手段20とを接続する接続手段40と、を有する。ハンド本体10は、空気吸引通路1aとなる貫通孔が設けられた垂下状の筒体13を有する。延長手段20は、挿入空間21e下端に一段大きい収容空間21cを有し、ハンド本体10の筒体13下端にアダプタ41aを介して装着したアタッチメント41bに着脱可能に接続される。吸着筒体30は、空気吸引通路1aと連通するように取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ等の電子部品を正確にハンドリングするためのバキュームハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップ等の電子部品を正確にハンドリングするため、特許文献1では、デバイスハンドラを構成するバキュームハンドが提案されている。このバキュームハンドは、シャトルポケットのデバイス載置部に載置したICチップに、下端に電子部品収容部及び支持枠部を有するデバイスガイド、即ちバキュームハンド本体を被せ、1つ又は複数の真空吸着穴を真空にしてICチップの上面全体を吸い上げて電子部品収容部に収容し支持枠部で位置決めするようにしている。
【0003】
また、特許文献2では、複数のデバイスチャックを備えて保持ユニットを構成し、この保持ユニットを搬送アームに取り付けた搬送装置が提案されている。この搬送装置では、保持ユニットを搬送アームにワンタッチ取付冶具で着脱可能に取り付けるので、保持ユニットの交換が簡単になる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−218184号公報
【特許文献2】特開2002−156410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のバキュームハンドでは、次のような課題がある。すなわち、ICチップの上面全体を吸ってシャトルポケットのデバイス載置部から浮き上げて電子部品収容部に収容するまでの過程で、ICチップが傾いてしまう場合を回避できず、かつICチップの傾きを修正できないので、次工程でのICチップの位置決めができない場合がある。また、ICチップの上面全体を吸い上げる際に周囲から外気を吸引するのでそれだけ大きな負圧吸引を要するから、負圧吸引をエアシリンダで行う場合には、シリンダの吸引容積を大きくする必要がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載の搬送装置のように、ワンタッチ操作で着脱可能なワンタッチ取付冶具を用いて保持ユニットを着脱可能に搬送アームに取り付ける場合には、複数のICチップを同時に搬送することはできるものの、一種類のICチップをハンドリングする機能しかなく、形状や寸法の異なるICチップのハンドリング、即ち少量多品種の搬送には適応できない。さらに、特許文献2に記載の搬送装置では、保持ユニットの交換容易性のためにワンタッチ取付冶具としてパンチ錠を用いている。よって、搬送アームに対する各デバイスチャックの位置決め精度が不十分である。そのため位置決め精度を考慮してデバイスチャックを設計する必要があり、デバイスチャックを含めた保持ユニットの構造が複雑になる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、電子部品を直接吸着して保持し、しかも形状や寸法の異なるICチップのハンドリングに適応することができるバキュームハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るバキュームハンドは、上端側のブラケットに筒体が垂下して取り付けられかつ筒体に空気吸引通路の一部が設けられて構成されたハンド本体と、ハンド本体内の空気吸引通路に連通するように下部に挿入空間が設けられ且つ挿入空間の下端周りに挿入空間より大きい収容空間が設けられて構成された延長手段と、延長手段の挿入空間に収容され下端を延長手段の下端より突出した位置で電子部品に密着して没入可能に取り付けられる吸着筒体と、ハンド本体の筒体に対し延長手段を着脱可能に接続する接続手段と、を備える。
上記接続手段は、ハンド本体の筒体下端に装着されたアタッチメントと、ハンド本体から張り出した位置で回動可能に取り付けられる一対のレバーと、を有し、一対のレバーにおける各係止部が延長手段の上側鍔部を下側から係止し、アタッチメントと延長手段の取付口とが付勢部材で密着状態となる。特に、一対のレバーの回動軸と一対のレバーへの付勢部材の取付位置とが、一対のレバーにおける各係止部を挟んで対峙しているとよい。
一方、延長手段が挿入空間及び収容空間を構成する延長筒体を有し、係合ガイドが挿入空間内で空気吸引通路の軸上に取り付けられ、吸着筒体が係合ガイドに係止されて吊り下げられている。特に、吸着筒体は逆さカップ状を呈し、係合ガイドに係止するよう上面部に孔を有する。
【0009】
上記構成によれば、ハンド本体における空気吸引通路を負圧発生装置に接続し、ハンド本体をロボットアームに支持した後に、バキュームハンドを電子部品のパッケージの上方に運行し、吸着筒体の下端を電子部品のパッケージ上面に密着させる。この時点で、負圧発生装置の負圧を作用させる。すると、吸着筒体が電子部品のパッケージ上面に吸着しさらに吸着筒体が挿入空間に没入して上昇する。これで、収容空間に電子部品を収容し、収容空間を構成する支持枠が電子部品を保持する。本発明では、接続手段がハンド本体の筒体に対し吸着筒体と共に延長手段を着脱可能に接続する。よって、電子部品の形状及び寸法に応じて吸着筒体及び延長手段を設計して準備しておき、吸着対象製品となる電子部品に応じて吸着筒体と共に延長手段を交換することで、各種電子部品のハンドリングに対応することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シャトルポケットのデバイス載置部に載置されたICチップ等の電子部品を非接触で負圧吸引して浮き上げて電子部品収容部で吸着して保持するのではなく、電子部品上面を直接吸着して持ち上げて、電子部品収容部となる収容空間に収容して保持する。よって、電子部品が傾斜せずに収容空間に収容することができる。また、吸着筒体と共に延長手段を交換可能に接続手段が接続するので、形状や寸法の異なるICチップのハンドリングにも適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1実施の形態に係るバキュームハンド1の正面からみた部分断面図である。図2は、図1に示すバキュームハンド1の側面図である。図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。図4は図1に示すバキュームハンド1を電子部品Wに密着させる状態を示す部分断面図であり、図5は、図1に示すバキュームハンド1を電子部品Wに密着させてバキュームした状態を示す部分断面図である。図6は図2において接続手段40による接続を解除した様子を示すバキュームハンド1の側面図である。
【0012】
バキュームハンド1は、図示しないロボットアームに支持されて移動するハンド本体10と、このハンド本体10に着脱可能に接続される延長手段20と、この延長手段20の下部内に収容され下端から突出した状態から引っ込んだ状態になる吸着筒体30と、ハンド本体10と延長手段20とを接続する接続手段40と、を有する。
【0013】
<ハンド本体10>
ハンド本体10は、上端側でブラケット11に水平ブラケット12を介して筒体13が垂下して取り付けられ、かつ、筒体13に空気吸引通路1aの一部が設けられて構成されている。即ち、ハンド本体10は、図示しないロボットアームに支持されるブラケット11と、このブラケット11の下端に取り付けられた水平ブラケット12と、この水平ブラケット12に支持されて垂下する筒体13とを有する。この筒体13には軸方向に貫通孔が形成され、この貫通孔が空気吸引通路1aの一部となる。
【0014】
具体的には、水平ブラケット12は、ボルト14によりブラケット11に支持されている。筒体13は、上寄りに鍔部13bを有し、鍔部13bより上側の上部筒部13aを水平ブラケット12に開けた開口部に下方から嵌合され、ボルト15により水平ブラケット12に支持されている。筒体13内に設けた貫通孔の上端部と下端部にはそれぞれ管用ねじ16,17が形成されている。
【0015】
<延長手段20>
延長手段20は、ハンド本体10内の空気吸引通路に連通するように下部に挿入空間21eが設けられ、この挿入空間21eの下端回りに挿入空間21eよりも大きい収容空間21cが設けられて構成されている。第1の実施形態では、延長手段20としての延長筒体21の下部に挿入空間21eを備え、この挿入空間21eの下端に一段大きい支持枠部21bで収容空間21cが形成されている。延長手段20は、ハンド本体10の筒体13の下端に接続手段40を介在して着脱可能に接続される。
【0016】
延長手段20について具体的に説明する。
第1の実施形態での延長手段20は、挿入空間21e及び収容空間21cを構成する延長筒体21であり、係合ガイド25が挿入空間21e内で空気吸引通路1aの軸上に取り付けられ、吸着筒体30が係合ガイド25に係止されて吊り下げられている。係合ガイド25は全体的にヘッド部25aと軸部25bとを備え、ヘッド部25a及び軸部25bの軸上には貫通孔が形成され、空気吸引通路1aと挿入空間21eとがつなげられている。
【0017】
延長筒体21は、上側鍔部21aの上側にアタッチメント41bへの取付口となる上面を有し、ハンド本体10の筒体13の空気吸引通路1aにつながる挿入空間21eを下端側に備え、挿入空間21eの下端回りに収容空間21cを支持枠部21bで構成している。ここで、支持枠部21bは収容空間21cを取り囲むように左右前後に配置され、支持枠部21bは挿入空間21e側に内側面21fを有している。各内側面21fは、上方に向かうに従い空気吸引通路1aの軸側に傾斜するようテーパー状になっている。後述するように、延長手段20を吸着筒体30と共に電子部品Wの上方に配置し、次いで下降させ吸着筒体30の下端を電子部品Wのパッケージ上面に密着させて空気吸引通路1a内を負圧にする。すると、吸着筒体30が電子部品Wのパッケージ上面に吸着しさらに吸着筒体30が挿入空間21eに没入して上昇する。その際、テーパー状の内側面21fが電子部品Wを水平二方向に移動させながら浮上するので、電子部品Wが収容空間21cに収容されることができる。特に、図4及び図5に示すように、電子部品Wのパッケージの外周縁部W1が上面から裏側になるに従い一旦広くなってから再度狭くなるようにテーパー状に形成されている場合には、吸着筒体30の浮上に伴い、外周縁部W1がテーパー状の内側面21fと係合しあい、位置調整しながら電子部品Wが収容空間に入り込む。このように、電子部品Wをバキュームハンド1で吸着する際には、電子部品Wのパッケージの外周縁部W1とテーパー状の内側面21fとが互いに寄せ合うので、吸着筒体30が左右前後に微調整されて電子部品Wを支持枠部21bに対して位置決めすることができる。
【0018】
<接続手段40>
接続手段40は、ハンド本体10の筒体13に対して延長手段20を着脱可能に接続する。接続手段40は、図示のように、ハンド本体10の筒体下端に装着されたアタッチメント41bと、ハンド本体10から張り出した位置で回動可能に取り付けられる一対のレバー42と、を有し、一対のレバー42における各係止部42aが延長手段20の上側鍔部21aを下側から係止し、アタッチメント41bと延長手段20の取付口とが付勢部材44で密着状態となる。特に、一対のレバー42の回動軸となるピン軸42bと一対のレバー42への付勢部材44の取付位置とが、一対のレバー42における各係止部42aを挟んで対峙している。
【0019】
上記接続手段40についてさらに具体的に説明する。
接続手段40は、筒体13下端に装着される筒状のアダプタ41aと、このアダプタ41aに取り付けられる筒状のアタッチメント41bと、筒体13の周りに装着されるホルダ43と、ホルダ43の下端部で水平方向両側に延びる一対のレバー42と、付勢部材44としての引張ばねと、付勢部材44の一端側を係止する係止具45としてのばね係止具と、で構成されている。
【0020】
アダプタ41aは、筒体13の管用ねじ17に螺合して接続される。アタッチメント41bは、アダプタ41aに下方から強制的に嵌着され、かつ延長手段20としての延長筒体21の上面に全周密着状態に当接される。この筒状のアタッチメント41bはゴム成形体でなる。
ホルダ43は下部筒部13cに固定されている。ホルダ43は鉛直方向に孔部を有し、図3に示すように、この孔部に筒体13の下部筒部13cを被嵌し、かつ二つ割りのスリットを有する扁平部43aをボルト43bで締め付けている。
一対のレバー42では、ホルダ43の下端張り出し部43cに回動軸となるピン軸42bで基端部を枢着されている共に、反対側に張り出している他端部が連結ピン42c,42dで連結されている。一方の連結ピン42cには引張ばねの一端側が固定され、他方の連結ピン42dは作業者のハンドルとしても機能する。
付勢部材44としての引張ばねは、上端を係止具45の下端に係止され、かつ下端を連結ピン42cに係止され、一対のレバー42を引き上げている。ここで、係止具45は、水平ブラケット12に設けられたねじ孔へ螺合して挿通されたスタッドボルト45aと、スタッドボルト45aに螺合されたロックナット45bと、で構成されている。なお、ホルダ43における下端張り出し部43cにピン43dが下側に突出して固定され、このピン43dが延長手段20の上側鍔部21aに設けられた回り止め兼位置決め用孔に嵌合される。
一対のレバー42はそれぞれ係止部42aとして係止爪を有し、この係止部42aで上側鍔部21aを引き上げて係止している。この引き上げ係止は、付勢部材44としての引張ばねの付勢により行われる。
【0021】
<吸着筒体30>
吸着筒体30は挿入空間21eに収容され、下端を延長手段20の下端から突出した位置で電子部品Wに密着して没入可能に取り付けられる。具体的には、図示のように、吸着筒体30は逆さカップ状を呈するように形成され、上面部30aに孔を有している。この孔に前述の係合ガイド25の軸部25bが挿入され、係合ガイド25が延長手段20の挿入空間21eに下側から挿入され、延長手段20の軸上の貫通孔21dに係合ガイド25を螺合して取り付けられる。このように、逆さカップ状の吸着筒体30が係合ガイド25のヘッド部25aで吊り下げされている。
【0022】
ここで、吸着筒体30はアルミニウムなどの軽金属でなることが好ましい。この吸着筒体30の下端が電子部品Wに当接した状態で空気吸引通路1aが減圧されて負圧になると、吸着筒体30が電子部品Wに吸着するところ、吸着筒体30を軽金属製で構成しておくことで、より小さい減圧レベルで電子部品Wを吸着したまま吸着筒体30を浮上させ、挿入空間21e内に没入可能となる。
【0023】
上記吸着筒体30について具体的に説明する。
吸着筒体30は例えばアルミニウム押出成形体であり、逆さカップ状で上面部30aに孔を有し下端外周側に膨らんで厚肉となっている。吸着筒体30は、上端を、延長手段20の貫通孔21dに螺合された係合ガイド25のヘッド部25aにより吊られた状態に係止され、延長筒体下端の挿入空間21e内に没入可能に収容されている。吸着筒体30は、下端が延長筒体下端よりも例えば約0.5mm〜3mm張り出している。吸着筒体30の下端が電子部品Wに当接した状態で空気吸引通路1aが負圧となると、吸着筒体30に持ち上げる力が生じる。すると、吸着筒体30における上面部30aが係合ガイド25のヘッド部25aから離隔移動し上昇する。このように、吸着筒体30の下端30bが、延長手段20の下端より突出した位置でICチップ等の電子部品W上面に密着して吸着することができ、電子部品Wのパッケージ上面を収容空間21cの段部端面に密着する状態になるまで引っ込むことが可能である。ここで、支持枠部21bにおいてテーパー状の内側面21fの上端にはパッキング22が取り付けられ、電子部品Wのパッケージ上面と延長手段20とを密着させ、電子部品Wを確実に吸着して保持することができる。
【0024】
吸着筒体30は、前述のようにアルミニウム押出成形による金属製である場合のみならず、例えば肉厚0.5mm〜2mm程度の肉薄成形又は肉薄加工が可能なプラスチック製でも構わない。吸着筒体30が金属製、プラスチック製の何れの場合であっても、吸着筒体30の下端の平面精度を良好にしておく必要がある。これは、ICチップ等の電子部品Wに対する吸着筒体30の吸着力が弱くならないためである。
【0025】
<吸着搬送について>
第1の実施形態に係るバキュームハンド1による電子部品Wの吸着搬送について説明する。バキュームハンド1では、ハンド本体10の空気吸引通路1aの上端が負圧発生装置に接続される。具体的には、図1及び2に示すように、筒体13の上端の管用ねじ16にエルボ18が螺合され、このエルボ18に図示しない負圧発生装置へ配管19で接続される。ハンド本体10におけるブラケット11に取り付けられたロボットアームで、ハンド本体10が支持され、ロボットアームで移動可能となる。ロボットアームのハンドリング運行により、シャトルポケットのデバイス載置部Sに正列載置された電子部品Wのパッケージ上面に、延長筒体21の下端よりも下方に突出している吸着筒体30の下端を密着させる。すると、延長筒体21下端の支持枠部21bが電子部品Wのパッケージ上面を取り囲んで近接し、電子部品Wのパッケージと収容空間21cとが対向する。この時点で、負圧発生装置の負圧を作用させると、負圧発生装置の負圧が、筒体13と筒状のアダプタ41aと筒状のアタッチメント41bと延長手段20としての延長筒体21と係合ガイド25とを介し、吸着筒体30の内部空間に生起する。吸着筒体30は、電子部品Wのパッケージ上面に密着した時点で内部に負圧を生起すると、図4に示すように吸着筒体30が電子部品Wを吸着し、その後、図5に示すように吸着筒体30と共に電子部品Wが上昇して収容空間21cに電子部品Wが吸着して収容される。この状態で、バキュームハンド1を取り付けたロボットアームを駆動して所定の位置に搬送し、負圧発生装置の負圧を解除すると、電子部品W及び吸着筒体30の自重で下降し、電子部品Wが収容空間21cから排出され、必要に応じて空気吸引通路1a内の圧力を大気圧にすることで、吸着筒体30から電子部品Wの吸着が解除され、電子部品Wが所定の位置に載置される。
【0026】
第1の実施形態では、接続手段40がハンド本体10と延長手段20とを着脱可能に接続している。具体的には、ハンド本体10の筒体13に取り付けられたアタッチメント41bと延長手段20としての延長筒体21とが連通し、延長筒体21の上面とアタッチメント41bとが密着状態で接続されている。この状態で付勢部材44の一端を係止具45から外して係合を解くと、図6に示すように一対のレバー42が回動し各レバー42の係止部42aが延長筒体21の上側鍔部21aから外れて係止が解ける。よって、延長手段20を取り外し、新しくハンドリングの対象とする電子部品に対応した延長手段20を取り付けることができる。即ち、延長手段20を交換することができる。吸着筒体30は延長手段20の収容空間21c内に没入可能に収容されているので、延長手段20と一体に交換できる。従って、ハンド本体10に対して延長手段20を取り外すことができ、延長手段20について複数種類のICチップに対応したパーツを取り揃えておけば、形状や寸法の異なるICチップのハンドリングに迅速に交換して適応できる。
【0027】
また、図示したように、一対のレバー42には、空気吸引通路1aの軸回りで延長手段20の上側鍔部21aに係合するように、係止部42aとして係合爪が設けられている。この係止部42aの位置が適切であるため、ハンド本体10の筒体13にアダプタ41aを介して装着したアタッチメント41bと延長手段20としての延長筒体21の上面とを密着させることができる。一対のレバー42の回動軸としてのピン軸42bをハンド本体10の下側張り出し部43cに設け、係止部42aを挟んで逆側に付勢部材44の下端を取り付けるようにしたので、付勢部材44の上端を係止具45から外し、係止部42aと延長手段20との係合を解除したり、その逆の作業も容易に行え、作業効率もよい。
【0028】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態について説明する。
図7は、第2の実施形態に係るバキュームハンド2の正面からみた部分断面図である。図8は、図7に示すバキュームハンド2の側面図である。
第2の実施形態に係るバキュームハンド2は、第1の実施形態におけるハンド本体10、接続手段40にそれぞれ対応するハンド本体50、接続手段80を備える点で同じであるが、延長手段60及び吸着筒体70が第1の実施形態の延長手段20及び吸着筒体30と異なる。特に、延長手段60が上部筒体61に一対の枠部材62を取り付けて構成されている点と、吸着筒体30が蛇腹管でなる点で相違する。以下詳説する。
【0029】
ハンド本体50は、第1の実施形態と同様、図示しないロボットアームに支持されるブラケット51と、このブラケット51の下端に取り付けられた水平ブラケット52と、この水平ブラケット52に支持され垂下する筒体53と、を有する。筒体53内には空気吸引通路2aとなる貫通孔が設けられている。筒体53の上端にエルボ58が螺合され、さらに負圧発生装置へ配管59で接続される点は、第1の実施形態と同じである。
【0030】
延長手段60は、上側鍔部61aと下側鍔部61bとを有しそれぞれ上下側に突出した取付部を有する上部筒体61と、下側鍔部61bに取り付けられる一対の枠部材62と、から構成されている。上部筒体61の下側鍔部61bと枠部材62とは上側からボルト63で固定されている。延長手段60は、ハンド本体50の筒体53の下端に接続手段80を介して着脱可能に連通して接続される。一対の枠部材62は挿入空間62eを形成し、一対の枠部材62の下端に一段大きい支持枠部62dで収容空間62cを形成している。支持枠部62dの内側面62fはテーパー状に成っており、ハンド本体50の筒体53にはアダプタ81aを介してアタッチメント81bが装着されており、上部筒体61がハンド本体50に着脱可能に連通して接続される点は第1の実施形態と同様である。
【0031】
また、一対の枠部材62の下端で各支持枠部62dが対向するように配置され、支持枠部62dは挿入空間62e側に内側面62fを有している。各内側面62fは、上方に向かうに従い空気吸引通路2aの軸側に傾斜したテーパー状になっている。第1の実施形態と同様、延長手段60を吸着筒体70と共に電子部品Wの上方に配置し、次いで下降させ吸着筒体70の下端を電子部品Wのパッケージ上面に密着させて空気吸引通路2a内を負圧にする。すると、吸着筒体70が電子部品Wのパッケージ上面に吸着しさらに吸着筒体70が挿入空間62eに没入して上昇する。その際、テーパー状の内側面62fが電子部品Wを水平二方向に移動させながら浮上するので、電子部品Wを収容空間62cに収容することができる。特に、電子部品Wのパッケージの外周縁部W1が上面から裏側になるに従い一旦広くなってから再度狭くなるようにテーパー状になっている場合、吸着筒体70の浮上に伴い、電子部品Wのパッケージの外周縁部W1がテーパー状の内側面62fと係合しあい、位置調整しながら電子部品Wが収容空間に入り込む。このようにして、蛇腹状の吸着筒体70を左右に微調整して電子部品Wを支持枠部62dに対して位置決めすることができる。なお、支持枠部62dは一対ではなく上部筒体61の下側鍔部61bの下端に左右前後にそれぞれ設け、蛇腹状の吸着筒体70が左右前後に微調整して電子部品Wを支持枠部62dに対して位置決めするようにしてもよい。
【0032】
吸着筒体70は蛇腹管で構成されている。この吸着筒体70は、空気吸引通路2aと連通するように取り付けられ、延長手段60の挿入空間62eに収容される。吸着筒体70の下端70aは、延長手段60の下端より突出した位置よりICチップ等の電子部品Wの上面に密着して吸着し引っ込む位置に可動することができる。
【0033】
接続手段80は、筒体53の下端に装着される筒状のアダプタ81aと、このアダプタ81aに取り付けられる筒状のアタッチメント81bと、筒体53の周りに装着されるホルダ83と、ホルダ83の下端に水平方向両側に延びる一対のレバー82と、付勢部材84としての引張ばねと、付勢部材84の一端側を係止する係止具85としてのばね係止具と、ピン83dと、で構成されている。一対のレバー82は、第1の実施形態と同様、それぞれ係止部82aを有し、この係止部82aで延長手段60の上側鍔部61aを引き上げ係止している。付勢部材84と係止具85との係止を解くと、一対のレバー82の係止部82aと上側鍔部61aとの係止が解け、延長手段60を取り外すことができる。よって、第1の実施形態と同様に、新しくハンドリングの対象とする電子部品に対応した延長手段60を取り付けることができる。
【0034】
第2の実施形態では、吸着筒体70は蛇腹管からなり、延長手段60の挿入空間62e内に吸着筒体70が収容され、吸着筒体70下端が一対の枠部材62の下端よりも例えば約0.5mm〜1mm張り出している。吸着筒体70は、その下端に持ち上げる力が加わると、延長手段60の収容空間62cの段部端面よりも上位置まで引っ込むように圧縮される。
よって、吸着筒体70の下端70aが、延長手段60の下端より突出した位置でICチップ等の電子部品Wに密着して吸着し、電子部品Wのパッケージ上面を収容空間62cの段部端面に密着する状態になるまで引っ込むことができる。蛇腹管で構成した吸着筒体70は、延長手段60に取り付けられているので、延長手段60と一体に交換できる。
【0035】
以上説明したように、第2の実施形態では、ハンド本体50から延長手段60を取り外すことができる。よって、延長手段60を形状や寸法の異なるICチップに対応したパーツを取り揃えておけば、形状や寸法の異なるICチップのハンドリングに際し、迅速に交換して適応できる。
【0036】
本発明の実施するに際しては特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の設計変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバキュームハンドの正面からみた部分断面図である。
【図2】図1に示すバキュームハンドの側面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示すバキュームハンドを電子部品に密着させる状態を示す部分断面図である。
【図5】図1に示すバキュームハンドを電子部品に密着させてバキュームした状態を示す部分断面図である。
【図6】図2において接続手段による接続を解除した様子を示すバキュームハンドの側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るバキュームハンドの正面からみた部分断面図である。
【図8】図7に示すバキュームハンドの側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1,2:バキュームハンド
1a,2a:空気吸引通路
10,50:ハンド本体
11,51:ブラケット
12,52:水平ブラケット
13,53:筒体
13a:上部筒部
13b:鍔部
13c:下部筒部
13d:貫通孔
14,15,43b,63:ボルト
18,58:エルボ
19,59:配管
20,60:延長手段
21:延長筒体
21a,61a:上側鍔部
21b:支持枠部
21c,62c:収容空間
21d:貫通孔
21e,62e:挿入空間
21f,62f:内側面
22:パッキング
25:係合ガイド
25a:ヘッド部
25b:軸部
30,70:吸着筒体
30a:上面部
30b,70a:下端
40,80:接続手段
41a,81a:アダプタ
41b,81b:アタッチメント
42,82:レバー
42a,82a:係止部
42b:ピン軸
42c,42d:連結ピン
43,83:ホルダ
43a:扁平部
43c:下端張り出し部
43d,83d:ピン
44,84:付勢部材
45,85:係止具
45a:スタッドボルト
45b:ロックナット
61:上部筒体
61b:下側鍔部
62:枠部材
62d:支持枠部
S:デバイス載置部
W:電子部品
W1:外周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端側のブラケットに筒体が垂下して取り付けられ、かつ該筒体に空気吸引通路の一部が設けられて構成されたハンド本体と、
上記ハンド本体内の空気吸引通路に連通するように下部に挿入空間が設けられ、かつ、該挿入空間の下端周りに該挿入空間より大きい収容空間が設けられて構成された延長手段と、
上記延長手段の挿入空間に収容され、下端を上記延長手段の下端より突出した位置で電子部品に密着して没入可能に取り付けられる吸着筒体と、
上記ハンド本体の筒体に対し上記延長手段を着脱可能に接続する接続手段と、
を備える、バキュームハンド。
【請求項2】
前記接続手段は、前記ハンド本体の筒体下端に装着されたアタッチメントと、前記ハンド本体から張り出した位置で回動可能に取り付けられる一対のレバーと、を有し、
上記一対のレバーにおける各係止部が前記延長手段の上側鍔部を下側から係止し、上記アタッチメントと前記延長手段の取付口とが付勢部材で密着状態となる、請求項1に記載のバキュームハンド。
【請求項3】
前記一対のレバーの回動軸と前記一対のレバーへの前記付勢部材の取付位置とが、前記一対のレバーにおける各係止部を挟んで対峙している、請求項2に記載のバキュームハンド。
【請求項4】
前記延長手段が前記挿入空間及び収容空間を構成する延長筒体を有し、
係合ガイドが前記挿入空間内で前記空気吸引通路の軸上に取り付けられ、
前記吸着筒体が上記係合ガイドに係止されて吊り下げられている、請求項1に記載のバキュームハンド。
【請求項5】
前記吸着筒体は逆さカップ状を呈し、前記係合ガイドに係止するよう上面部に孔を有する、請求項4に記載のバキュームハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−246184(P2009−246184A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92003(P2008−92003)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(508056109)株式会社ネツレンタクト (10)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)