説明

バクテリア死滅機能付漏水量測定装置及びその漏水量測定方法

【課題】バクテリア等の繁殖を防ぎ、正確な漏水量の測定を可能とし、作業員の清掃の負担を軽減する。
【解決手段】底部に排水口32が設けられ、短手方向の断面が略コの字の測定用水路13と、測定用水路の下流側側端部に、測定用水路の長手方向に対して垂直に流水を堰き止めるように設けられた測定用堰15と、測定用水路内の漏水の水頭水位を測定するために、測定用堰の上流側に設置される水位計測手段70と、水位計測手段によって測定された水位測定値から、漏水量を換算する漏水量換算手段を有するデータ処理部と、測定用堰の切欠部分を一定時間殺菌する殺菌手段50と、測定用水路の底部に設けられた排水口開放機構及び排水口閉鎖機構を有する排水手段30と、時刻を計時する計時部と、計時部が計時する時刻に基づいて、水位計測手段、殺菌手段及び排水手段の各動作を制御する制御部とを備えたダムの漏水量を計測する際に使用する堰式の漏水量測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムの漏水量を計測する際に使用される堰式漏水量計に係り、特に堰の切欠部分に付着するバクテリアの繁殖を防止できるバクテリア死滅機能付漏水量測定装置及びその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートダムやヒルダム等のダムを建設する際には、完成後のダム堤体の健全性を評価するために、ダム堤体内部に監査廊(点検用トンネル)が設置される。この監査廊には、ダムの安全性を管理するための設備として、ダム堤体の変形を把握するための計測機器、ダム基礎部の漏水による揚圧力を低減させるためのドレーン孔、ダム堤体の漏水量等を計測するための漏水量計等が設けられている。
【0003】
特に漏水量計により計測される漏水量は、ダム堤体の安全管理上最も重要な測定項目である。ダム堤体には、ダム堤体中の空隙や継目、基礎岩盤の節理、ひび割れ等への水の浸透により、ダム堤体を浮き上がらせようとする力(揚圧力)が掛かる。揚圧力が増加すると、ダムが崩壊する等の危険があるため、ダム管理者は、浸透する水の状態を示す漏水量を、計測対象とする漏水の種類等により複数箇所に集め、定期的に測定・管理し、ダム堤体に働く揚圧力を監視している。また、この測定値は管轄官庁に報告することが義務付けられている。
【0004】
漏水は、ダムの監査廊内に設置された堰式漏水量計に集められる。そして、堰を越流する水頭の位置、即ち、堰式漏水量計内の漏水の水位をミリ単位で測り、それを予め定められた流量換算式に代入し、水量に換算して漏水量とする。測定された漏水量のデータは管理所等に送信等され、管理基準値を上回っていないか、測定値に急激な変化等の異常はないか等が監視されている。そして、管理基準値を超えた場合には、濁りの有無、計器の動作確認等のより詳細な調査が行われる。
【0005】
漏水量は、上述したように計測した水位を流量換算式に代入して求めるため、水位においては1ミリ単位の誤差であっても、水量に換算すると大きな誤差となってしまう場合がある。よって、ダムの管理者には漏水の水位を正確に計測することが求められる。
【0006】
このような漏水量計については、例えば、特許文献1の実開昭61−206822号「ダム等の漏水量測定装置」などが提案されている。このダム等の漏水量測定装置は、漏水溝に三角堰槽を設置し、この三角堰槽に測定水路と整流板ブロックを連設し、三角堰槽には演算装置等を結線した漏水量計を、測定水路には演算装置等を結線した水温計を夫々取り付けたダム等の漏水量測定装置である。三角堰越流水位を自動演算機にて量に変えてデジタルプリンターに打ち出すと共に、故障の際には早期に発見し、漏水量測定の中断を防止することができるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61−206822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような漏水量計では、漏水が浮遊物等を含まない綺麗な水であることを前提として水位が測定され、この測定値から換算式や換算表を用いて正確な漏水量を換算できるように作られている。しかし実際は、漏水中には藻類、菌類などの微生物やバクテリアが混入、浮遊しており、これらの浮遊物が三角堰の切欠部分に付着し繁殖するため、水位が本来の位置より上昇して、正確な量を測定することができないという問題があった。そのため、現状ではバクテリア等の堆積物を除去するために、人手による定期的な清掃が行われているが、漏水量計は多数設けられているので、作業員の負担が大きかった。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するために提案されたものである。すなわち本発明の目的は、バクテリア等の繁殖を防ぎ、正確な漏水量の測定を可能とし、作業員の清掃の負担を軽減するバクテリア死滅機能付漏水量測定装置及び漏水量測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置は、ダムの漏水量を計測する際に使用する堰式の漏水量測定装置であって、底部に排水口(32)が設けられ、短手方向の断面が略コの字の測定用水路(13)と、該測定用水路の下流側側端部に、測定用水路の長手方向に対して垂直に流水を堰き止めるように設けられた測定用堰(15)と、測定用水路内の漏水の水頭水位を測定するために、前記測定用堰の上流側に設置される水位計測手段(70)と、該水位計測手段によって測定された水位測定値から、漏水量を換算する漏水量換算手段(541)を有するデータ処理部(540)と、前記測定用堰の切欠部分を一定時間殺菌する殺菌手段(50)と、前記測定用水路の底部に設けられた排水口開放機構(35)及び排水口閉鎖機構(36)を有する排水手段(30)と、時刻を計時する計時部(560)と、該計時部が計時する時刻に基づいて、前記水位計測手段、前記殺菌手段及び前記排水手段の各動作を制御する制御部(570)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0011】
さらに、前記計時部(560)は、時刻を計時する第1計時手段(561)と、第1計時手段にて計時された所定の時刻(T)からの、第1動作時間(t)、第2動作時間(t)及び第3動作時間(t)を計時する第2計時手段(562)と、を備え、前記データ処理部(540)は、直近の、前記水位測定手段(70)により測定された水位又は/及び前記漏水量換算手段(541)により換算された漏水量に基づいて前記第2動作時間(t)又は/及び前記第3動作時間(t)を求める動作時間決定手段(542)をさらに備え、前記制御部(570)は、前記第1計時手段において所定の時刻(T)に達した際に前記水位計測手段を動作させ、前記第2計時手段において第1動作時間(t)を計時した際には前記排水手段(30)の排水口開放機構(35)を動作させ、第2動作時間(t)を計時した際には前記殺菌手段(50)を動作させ、第3動作時間(t)を計時した際には前記排水手段(30)の排水口閉鎖機構(36)を動作させてもよい。
【0012】
また、前記測定用水路(13)の上方に、該測定用水路及び測定用堰を洗浄する洗浄手段(90)をさらに備え、前記動作時間決定手段(542)は、第4動作時間(t)をさらに求め、前記第2計時手段(562)は、前記第4動作時間(t)をさらに計時し、前記制御部(570)は、前記第2計時手段において第4動作時間(t)を計時した際には前記洗浄手段を動作させてもよい。
【0013】
前記殺菌手段(50)は、前記測定用堰(15)の切欠き部の周縁に設けたヒータ(52)であり、前記測定用堰は、さらに前記ヒータの下側に熱を遮断する遮熱層(56)を有してもよい。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様のダムの漏水量測定方法は、測定用堰を用いてダムの漏水量を測定する方法であって、前記測定用堰の上流側で、測定用水路内の漏水の水頭水位を測定し(S2)、水位測定後に、前記測定用水路の底部から前記測定用水路内の漏水を排出し(S7)、排水終了後に、前記測定用堰の切欠き部の周縁を加熱して、該切欠き部を殺菌し(S11)、殺菌終了後に、次の水頭水位の測定のために前記測定用水路内に漏水を集める(S13)、ことを特徴とする。
【0015】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様のダムの漏水量測定方法は、測定用堰を用いてダムの漏水量を測定する方法であって、所定の時刻(T)が計時されたときに、前記測定用堰の上流側で、測定用水路内の漏水の水頭水位を測定し(S1、S2)、第1動作時間(t)が計時されたときに、前記測定用水路の底部から前記測定用水路内の漏水を排出し(S6、S7)、第2動作時間(t)が計時されたときに、前記測定用堰の切欠き部の周縁を加熱して、該切欠き部を殺菌し(S10、S11)、第3動作時間(t)が計時されたときに、次の水頭水位の測定のために前記測定用水路内に漏水を集める(S12、S13)、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置(100)及びその測定方法によれば、堰の切欠き部を殺菌する手段(50)を有するので、漏水中に浮遊する藻類、菌類の微生物やバクテリアが堰の切欠き部で繁殖・増殖することを防ぐことができる。また、排水装置(34)を備え、定期的にバクテリア死滅機能付漏水量測定装置(100)内の漏水を排水口(32)から排出するので、漏水中に浮遊するバクテリア等が装置内で増殖することを防ぐことができる。これにより、漏水量を正確に計測し、ダムの健全性を管理することが可能である。また、バクテリア等の増殖や付着を防止できるので、作業員の清掃の負担の軽減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置を排水路上に設置した状態を示す正面図である。
【図2】実施例1のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置を排水路上に設置した状態を示す平面図である。
【図3】実施例1のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置を排水路上に設置した状態を示す左側面図である。
【図4】バクテリア死滅機能付漏水量測定装置全体の制御を行う制御装置のブロック図である。
【図5】バクテリア死滅機能付漏水量測定装置による制御を示すフローチャートである。
【図6】制御装置に接続されている各装置の作動状況を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
以下、本発明のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置の実施の形態及びその漏水量測定方法を、図面に基づいて説明する。
図1〜3は実施例1のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置100を排水路300上に設置した状態を示す概略図であり、図1は正面図、図2は平面図、図3は左側面図である。なお、図3では、導水管3、排水手段30、水位測定手段70及び洗浄手段90を省略している。
図1〜3に示すように、実施例1のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置100は、三角堰15、排水手段30及び殺菌手段50を備えた長槽1と、長槽1を排水路300上に設置するための台座2と、測定用堰を越流する水頭水位を測る水位測定手段70と、長槽1内部を洗浄する洗浄手段90と、バクテリア死滅機能付漏水量測定装置100全体を制御する制御装置500(図示せず)とを備える。
【0019】
長槽1は、漏水を通流させる、短手方向の断面が略コの字状の測定用水路13と、測定用水路13の下流側に測定用堰として短手方向と平行に設けられた三角堰15と、測定用水路13の上流側に短手方向と平行に設けられた側壁部材17とから構成される。これらの構成要素は金属板等からなり、長槽1は、金属板等を溶着したり、板材と板材の間の空隙をゴムパッキン等(図示せず)で塞いだりして製作される。
長槽1の上流側には、導水管3がその先端を長槽1の内部に入り込むように配設されており、計測管理すべき漏水を集め長槽1に導く。また、図1〜3に示すように三角堰15を越流した漏水は、排水路300内に流れ落ちるようになっている。
【0020】
排水手段30は、図1、図2に示すように測定用水路13の上流側の底部に設けられた略円形の排水口32と、この排水口32を覆うように、測定用水路13の下側外壁面に設けられる排水装置34とからなる。排水口32は、導水管3の径より大きく、排水口32の中心と導水管3の中心とは、略鉛直線上にある。
排水装置34は、排水扉34aと、この排水扉34aを開閉可能に排水口32に係着させるヒンジ部34bと、排水扉34aをモータ駆動により自動的に開閉する排水口開放機構35及び排水口閉鎖機構36(図示せず)とからなる。
【0021】
排水扉34aは、閉鎖時に水密性を保つためのシール材(図示せず)が装着された円盤部分xと、その下側の略U字形状の板状支持部分yとからなる。板状支持部分yの直線状の端部には、ヒンジ部34bが設けられている。排水口開放機構35及び排水口閉鎖機構36は、後述する制御装置90により動作制御され、水位計測時には閉鎖し、水位非計測時には開放して長槽1内の漏水を排水路300に排水する。
【0022】
長槽1の三角堰15の外壁面には、その切欠き部分に沿うように、殺菌手段50である、リード線(図示せず)の付いたリボン状のヒータ52が配置されている(図3参照)。ヒータ52は、発熱線をシリコーン樹脂で被覆したものであり、防水性を有する。
また、ヒータ52の側方及び下方には、ヒータ52を囲うように遮断層54が設けられている。この遮断層54は、熱伝導性の低い、弾性及び防水性を有する樹脂等から成る部材であり、三角堰15の外壁面に略V字状に設けられた孔(図示せず)に嵌設されている。なお、このヒータ52はタイマ54を備え、一定時間作動後に自動的に停止するものである。
【0023】
水位測定手段70は、漏水の水面に備えられた水圧式水位計72であり、三角堰15を越流する水頭水位を測定する。水圧式水位計72のセンサ72aで測定された信号はケーブル72bによって変換器72c(図示せず)に伝えられ、水位計測値に変換される。また、水位計測値のデータは水圧式水位計72の識別番号と共に、後述する制御装置500(図示せず)に送られる。この水圧式水位計72は、測定終了後に自動的に電源が切れる構成となっている。
【0024】
洗浄手段90は、漏水排水後に長槽1内を洗浄するシャワー装置92である。このシャワー装置92は、長槽1の4つの周壁面と略平行な4本の円筒状部材からなり、各円筒状部材は周壁の上方よりも内側の位置に、略矩形状になるように連結されている。また、長槽1の長手方向と平行な2本の円柱状部材は、その一端側が水栓を有する水供給部(図示せず)まで延びている。4本の円筒状部材の中空部も連通され、供給される水が各円柱状部材の中を自在に通過できる構造となっている。各円柱状部材の下側部分には複数の噴射孔(図示せず)が穿設され、水栓が開放されると長槽1の内壁に向かってシャワー状に水が噴射される。水流・水圧によって長槽1の内壁に付着したバクテリア等の汚れを洗い流すことができる。また、このシャワー装置92はタイマ94(図示せず)を備え、一定時間作動後に自動的に停止するものである。
なお、図示しないが、シャワー装置92は、水を長槽1の内面壁全体に噴射できるよう、例えば、各円筒状部材が回動可能となるように構成してもよい。
【0025】
図4は、バクテリア死滅機能付漏水量測定装置100全体の制御を行う制御装置500のブロック図である。
図4に示すように制御装置500は、入力機能及び表示機能を有する操作パネル部510と、出力機能を有する出力部520、ネットワークを通じて通信を行い、総合管理部等と情報の送受信を行う送受信部530、データ処理部540、記憶部550、計時部560、制御部570を備え、排水装置34、ヒータ52、水圧式水位計72、シャワー装置92が接続されている。
【0026】
操作パネル510は、制御装置500に接続された、排水装置34、ヒータ52、水圧式水位計72、シャワー装置92等の機器の制御状況、動作状況を表示する表示部と、各種操作キーにより、動作方法、動作時刻や動作時間等の設定条件を変更する入力部を有する。出力部520は、水圧式水位計72の識別番号、測定時刻、水位、漏水量等のデータを出力するプリンター等である。
送受信部530は、制御状況や動作状況、水位や漏水量等のデータを総合管理部等の他の管理所に送信したり、他の管理所からの機器の動作変更指令等を受信したりする。
【0027】
データ処理部540は、水圧式水位計72からの水位測定値を漏水量に換算する漏水量換算手段541と、換算した漏水量から後述する機器の動作時間(t〜t)を決定する動作時間決定手段542の他、送受信部530との間でデータの受け渡しを行う送受信処理手段543、送受信部530、操作パネル510又は出力部520とデータの受け渡しを行う入出力処理手段544、各種データを記憶部550に蓄積・保存するデータ蓄積手段545を有する。
【0028】
記憶部550は、水圧式水位計72の識別番号を識別子として、水位を計測した日時、水位測定値や漏水量等のデータを蓄積する測定値データベース(DB)551や、入力等された動作時刻(T)や動作時間(t〜t)の設定データを保存する動作設定データベース(DB)552等を備えている。
計時部560は、時刻を計時する第1計時手段561と、第一計時手段において計時された所定の時刻から各動作時間(t,t,t,t)を計時する第2計時手段562を備えている。
【0029】
制御部570は、計時部560の第1計時手段561において所定の時刻(T)に達した際に水圧式水位計72を動作させる。この第1計時手段によって計時される所定の時刻(T)とは、水位の計測を一定の時間間隔で行うための時刻であり、例えば毎正時等である。また、第2計時手段562において、所定の時刻(T)から第1動作時間(t)を計時した際には排水装置34の排水口開放機構35を動作させ、第2動作時間(t)を計時した際にはヒータ52を動作させ、第3動作時間(t)を計時した際には排水装置34の排水口閉鎖機構36を動作させる。また、所定の時刻(T)から第4動作時間(t)を計時した際にはシャワー装置92を動作させる。制御部570は、入力、決定等されたデータに基づいて動作時刻(T)や各動作時間(t〜t)を変更することもできる。
なお、前述したように、水圧式水位計72は水位計測終了後に、排水装置34の排水口解放機構35は排水口解放後に、排水装置34の排水口閉鎖機構36は排水口閉鎖後に、自動的に動作が終了する。また、シャワー装置92は一定時間動作後にタイマ94により動作を停止する。
【0030】
次に、実施例1のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置100の動作内容について、図5に示すフローチャートにより説明する。また、図6は制御装置500に接続されている各装置の動作状況を示すタイムチャートである。
【0031】
制御部570は、計時部560の第1計時手段561により所定の時刻(T:xは自然数)が計時される(S1)と、水圧式水位計72により水位を計測する(S2)。
計測した水位に基づきデータ処理部540の漏水量換算手段541により漏水量を換算する(S3)。
測定された時刻、水位測定値及び換算された漏水量は測定された水圧式水位計72の識別番号を識別子として、データ蓄積手段545により測定値データベース551に保存する(S4)。
【0032】
データ処理部540の動作時間決定手段542により、制御部570は、直近に測定された水位測定値又は/及びこの値から換算された漏水量に基づいて、第2動作時間(t)から第4動作時間(t)を決定する(S5)。具体的には、動作時間決定手段542により、換算された漏水量等に基づいて漏水の排水に必要な時間を導き出す(詳細は後述)。
【0033】
計時部560の第2計時手段562により第1動作時間(t)が計時される(S6)と、制御部570は、排水装置34の排水口解放機構35を動作させる(S7)。これにより、長槽1底部の排水扉34aが開き、長槽1内の漏水が排出される。また、排水口32上に設けられた導水管3からの漏水も排水口32の孔を通り、直接排水路300に流れ落ちる。
【0034】
計時部560の第2計時手段562により第4動作時間(t)が計時される(S8)と、制御部570は、シャワー装置92を動作させる(S9)。これにより、長槽1の内側に付着した漏水中の浮遊物等が排出される。
【0035】
計時部560の第2計時手段562により第1動作時間(t)が計時される(S10)と、制御部570は、ヒータ52を動作させる(S11)。これにより、三角堰15の切欠き部が殺菌され、バクテリアの繁殖・増殖を防ぐことができる。
【0036】
計時部560の第2計時手段562により第3動作時間(t)が計時される(S12)と、制御部570は、排水装置34の排水口閉鎖機構36を動作させる(S13)。これにより、長槽1内に導水管3からの漏水が徐々に溜まり、三角堰15を越流するようになり、再び次の所定の時刻(Tx+1)に水圧式水位計72による計測が可能となる。
【0037】
ここでデータ処理部540の動作時間決定手段542が行う処理内容の例を説明する。
<前提条件>
1.水圧式水位計72が水位を計測するのに必要な時間(分) :A(Aは定数)
2.所定の時刻(T)から次の時刻(Tx+1)までの時間(分) :B(Bは定数)
3.排水装置34の排水口開放機構35を作動する時間t(分) :t=B+α
(水位計測が確実に終わった時とするため、α分の予備の時間を加えたもの)
4.洗浄手段90の動作している時間(分) :C(Cは定数)
5.排水装置34の排水口閉鎖機構36を作動する時間t(分) :t=A−D
(D:漏水を長槽1に溜めるのに必要な予め定めた十分な時間)
となっている場合において、
まず、制御装置500は、測定された直近の水位測定値又は/及び換算された漏水量に基づいて漏水の排水に必要な時間k(分)を求める。さらに、洗浄手段90の動作時間t(分)は、漏水の排水が終了する時間である、「t=B+α+k」に決定する。これにより、長槽1の内壁面の汚れを効果的に洗い流すことができる。また、殺菌手段50を作動する時間t(分)は、殺菌手段50がヒータ52である場合には、バクテリア等が増殖せず、ヒータ52に掛かった水が落ち着くまでの予備の時間β分を加え「t=B+α+k+C+β」に決定する。このようにして、制御装置500は動作時間決定手段542により、第2動作時間(t)及び第4動作時間(t)を決定する。
なお、第3動作時間(t)は、測定された直近の水位測定値又は/及び換算された漏水量に基づいたものとしてもよい。例えば、水位測定値又は/及び換算された漏水量から、漏水を再度集めて直近の計測状態にするのに必要な時間k´(分)を求める。そして、漏水量が先の測定時から変化していることを考慮し、第3動作時間tを、「t=B−k´−γ」(γ(分)は十分に漏水を集めるための時間)としてもよい。
【0038】
上述した動作を1サイクルとして、計時部560の第1計時手段561が所定の時刻(T)を計時することによって、このサイクルが繰り返される。
なお、第1計時手段561の所定の時刻(T)、第2計時手段562の各動作時間(t〜t)、シャワー装置92のタイマ94及びヒータ52のタイマ54の設定時間は、操作パネル510の入力部からの入力や、送受信部530により受信した動作指令によって定めることも可能である。
【0039】
実施例1のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置100及びその漏水量測定方法によれば、三角堰15の切欠き部周辺にヒータ52を設け定期的に加熱殺菌し、切欠き部に付着したバクテリア等を死滅させ、その繁殖を防ぐことができる。また、加熱殺菌する際には、排水装置34により漏水を排水するので、長槽1内から切欠き部を越流する水に邪魔されることなく殺菌することができる。さらに、排水装置34を長槽1の底部に設けることによって、長槽1内に溜まった浮遊物も排出することができ、水位計測時にのみ長槽1に漏水を溜めるので、切欠き部にバクテリア等が付着したり、スライムが堆積したりする頻度を減らすことができる。よって、水位測定値、すなわち漏水量を精度良く測定することができ、ダムの安定性についての信頼性を向上させることができる。また、作業員の清掃負担の軽減が図れる。
【0040】
また、排水扉34aを開放している間は、導水管3からの漏水が排水口32を通り直接排水路300に流れる構成となっているので、長槽1内が汚れるのを防ぐことができる。
さらに、シャワー装置92により、排水後に長槽1の内壁面、切欠き部や底面に付着した浮遊物やスライム等の汚れを洗い流すことができる。切欠き部洗浄用にさらに高圧の水が出るシャワー装置を備えても良い。
なお、熱遮断部56は、切欠き部周辺のみを加熱し、バクテリア死滅機能付漏水量測定装置100の各部材の溶接部分やゴムパッキン等に悪影響を与えるのを防ぐために設けられたものであるが、必須の構成要素ではない。
【0041】
本実施例のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置100は、計時部560及び制御部570を有するので、操作パネル510の入力部から入力されたデータや送受信部から受信した指令データにより、予め水圧式水位計72、排水装置34、シャワー装置92、ヒータ52等の機器を動作する各時刻を任意に設定し、各機器を設定した所定の時刻に動作させることができる。例えば、水圧式水位計72はN時丁度、排水装置34の排水口開放機構35はN時5分、シャワー装置92はN時15分、ヒータ52はN時20分、排水装置34の排水口閉鎖機構36はN時32分に動作する(N=0〜23の整数)等、設定することができる。
【0042】
また、制御部570は操作パネル510の入力部から入力されたデータや送受信部により受信した指令データにより、シャワー装置92のタイマ94やヒータ52のタイマ54の設定時間を変更することも可能である。このような構成を取ることによって、各設定時間、動作時刻を任意に定めることができ、点検等の際でも容易に機器を制御することが可能である。
【0043】
さらに、第1計時手段561、第2計時手段562、漏水量換算手段541、動作時間決定手段542により、直近の水位計測値や漏水量のデータから排水時間等を導き出し、これに基づいて排水装置34、シャワー装置92、ヒータ52等の機器が動作する時刻を自動的に定めることもできる。これにより、導き出した排水時間に基づいて排水終了後汚れが乾いてこびりついてしまう前にシャワー装置92を動作させたり、濡れたままヒータ52が動作することのないよう、自動的に設定することができる。
【0044】
バクテリア死滅機能付漏水量測定装置100の各部材の形状、大きさ、構成等は、上述したものに限られず、水に浸っていない状態で、切欠き部が殺菌できるものであればよい。例えば、殺菌手段50は、加熱殺菌に限らず紫外線ランプによる紫外線照射や、100度以上の蒸気による湿熱加熱等でもよい。
【0045】
排水手段30(排水口32、排水装置34)や排水路300の大きさや構成も本実施例に示したものに限らない。例えば、排水口32の位置は、漏水を集める導水管3の開口部の位置によって適宜変更することができる。前述したように排水扉34a開放時に、導水管3の漏水が直接排水路300に流れ落ちることが望ましい。また、排水口32の径は、殺菌手段を十分に作動させることができるように、排水に時間が掛かり過ぎないような大きさとする。
また、バクテリア死滅機能付漏水量測定装置100の長槽1は上面が開放された箱型状であるが、これに限られない。例えば、監査廊の略コの字状の漏水溝に漏水が流れている場合等は、測定用水路13を漏水溝に直接設置し、側壁部材17を設けないものとしてもよい。この場合においては、排水口32等の位置や排水路300の構成を適宜変更する必要がある。
なお測定用堰は三角堰15に限らず、四角堰又は全幅堰でもよいのはもちろんである。
【0046】
本実施例においては、水位計測手段70として水圧式水位計72を用いたが、漏水量を導くための水位が測定できるものであればこれに限らない。また、洗浄手段であるシャワー装置92の構成も排水後に長槽1の内壁面、切欠き部や底面に残った汚れを排水口32に洗い流せれば、前述した構成に限らない。なお、洗浄手段90は必須の構成要素ではない。洗浄手段90を欠いた構成である場合には、排水により、切欠き部及びヒータ全体が漏水の水面よりも上となった時点で、殺菌手段50を動作させることができる。
【0047】
本実施例のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置100及びその漏水量測定方法によれば、制御部570等により、各機器を任意の時刻に動作するように設定したり、直近に測定された漏水量等により自動的に決定された時間に、一部の機器を動作させることができる。このような機構を有することにより、バクテリア等の繁殖や増殖をより効果的に防ぐことができる。
また、入力部や表示部を備えた操作パネル510、出力部520、送受信部530、記憶部540等を有することにより、ダムの安全性を示す漏水量等の測定データの管理が容易となる。
【0048】
なお、本発明は上述した発明の実施の形態に限定されず、殺菌手段及び排水手段を備え、切欠き部のバクテリア等の繁殖を防ぐことができれば、図示したような構成に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置及び漏水量測定方法は、堰を利用する流水計等だけでなく、殺菌手段や排水手段の構成を適宜変化させることで、様々な水槽等に利用する事ができる。
【符号の説明】
【0050】
100 バクテリア死滅装置付漏水量測定装置
1 長槽
2 台座
3 導水管
13 測定用水路
15 三角堰
17 側壁部材
30 排水手段
32 排水口
34 排水装置
50 殺菌手段
52 ヒータ
54 タイマ
56 熱遮断部
70 水位測定手段
72 水圧式水位計
90 洗浄手段
92 シャワー装置
94 タイマ
300 排水路
500 制御装置
510 操作パネル
520 出力部
530 送受信部
540 データ処理部
541 漏水量換算手段
542 動作時間決定手段
550 記憶部
551 測定値DB
552 動作設定DB
560 計時部
561 第1計時手段
562 第2計時手段
570 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムの漏水量を計測する際に使用する堰式の漏水量測定装置であって、
底部に排水口(32)が設けられ、短手方向の断面が略コの字の測定用水路(13)と、
該測定用水路の下流側側端部に、測定用水路の長手方向に対して垂直に流水を堰き止めるように設けられた測定用堰(15)と、
測定用水路内の漏水の水頭水位を測定するために、前記測定用堰の上流側に設置される水位計測手段(70)と、
該水位計測手段によって測定された水位測定値から、漏水量を換算する漏水量換算手段(541)を有するデータ処理部(540)と、
前記測定用堰の切欠部分を殺菌する殺菌手段(50)と、
前記測定用水路の底部に設けられた排水口開放機構(35)及び排水口閉鎖機構(36)を有する排水手段(30)と、
時刻を計時する計時部(560)と、
該計時部が計時する時刻に基づいて、前記水位計測手段、前記殺菌手段及び前記排水手段の各動作を制御する制御部(570)と、を備えた、ことを特徴とするバクテリア死滅機能付漏水量測定装置。
【請求項2】
前記計時部(560)は、時刻を計時する第1計時手段(561)と、第1計時手段にて計時された所定の時刻(T)からの、第1動作時間(t)、第2動作時間(t)及び第3動作時間(t)を計時する第2計時手段(562)と、を備え、
前記データ処理部(540)は、直近の、前記水位測定手段(70)により測定された水位又は/及び前記漏水量換算手段(541)により換算された漏水量に基づいて前記第2動作時間(t)又は/及び前記第3動作時間(t)を求める動作時間決定手段(542)をさらに備え、
前記制御部(570)は、前記第1計時手段において所定の時刻(T)に達した際に前記水位計測手段を動作させ、前記第2計時手段において第1動作時間(t)を計時した際には前記排水手段(30)の排水口開放機構(35)を動作させ、第2動作時間(t)を計時した際には前記殺菌手段(50)を動作させ、第3動作時間(t)を計時した際には前記排水手段(30)の排水口閉鎖機構(36)を動作させること、を特徴とする請求項1に記載のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置。
【請求項3】
前記測定用水路(13)の上方に、該測定用水路及び測定用堰を洗浄する洗浄手段(90)をさらに備え、
前記動作時間決定手段(542)は、第4動作時間(t)をさらに求め、
前記第2計時手段(562)は、前記第4動作時間(t)をさらに計時し、
前記制御部(570)は、前記第2計時手段において第4動作時間(t)を計時した際には前記洗浄手段を動作させること、を特徴とする請求項2に記載のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置。
【請求項4】
前記殺菌手段(50)は、前記測定用堰(15)の切欠き部の周縁に設けたヒータ(52)であり、
前記測定用堰は、さらに前記ヒータの下側に熱を遮断する遮熱層(56)を有する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のバクテリア死滅機能付漏水量測定装置。
【請求項5】
測定用堰を用いてダムの漏水量を測定する方法であって、
前記測定用堰の上流側で、測定用水路内の漏水の水頭水位を測定し(S2)、
水位測定後に、前記測定用水路の底部から前記測定用水路内の漏水を排出し(S7)、
排水終了後に、前記測定用堰の切欠き部の周縁を加熱して、該切欠き部を殺菌し(S11)、
殺菌終了後に、次の水頭水位の測定のために前記測定用水路内に漏水を集める(S13)、ことを特徴とするバクテリア死滅機能付漏水量測定方法。
【請求項6】
測定用堰を用いてダムの漏水量を測定する方法であって、
所定の時刻(T)が計時されたときに、前記測定用堰の上流側で、測定用水路内の漏水の水頭水位を測定し(S1、S2)、
第1動作時間(t)が計時されたときに、前記測定用水路の底部から前記測定用水路内の漏水を排出し(S6、S7)、
第2動作時間(t)が計時されたときに、前記測定用堰の切欠き部の周縁を加熱して、該切欠き部を殺菌し(S10、S11)、
第3動作時間(t)が計時されたときに、次の水頭水位の測定のために前記測定用水路内に漏水を集める(S12、S13)、ことを特徴とするバクテリア死滅機能付漏水量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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