説明

バグフィルター型脱臭装置

【課題】集塵機能、脱臭機能を発揮できながら、脱臭部におけるバグフィルターの破損によっても粉状活性炭が容易に外部に排出されることがなく、且つ、運転に際してもその騒音が大幅に減少されるようにすること。
【解決手段】脱臭粉状体としての粉状活性炭を脱臭部に対して循環供給し、排風機により吸引口から吸引した脱臭対象外気を脱臭する脱臭装置であって、前記脱臭部に対して、バグフィルター部を備えた補助ろ過部が付設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気発生場所、例えば、鋳物工場、魚類等の臭気発生生食品加工場、病院等において脱臭を行うためのバグフィルター型脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した臭気発生工場、室内等にあっては、臭気発生する外気を脱臭し、環境改善する必要性がある。
こうした臭気発生は、ダスト、粉塵発生を伴う場合も多く、集塵と脱臭とを同時に行う必要性もあり、これまで、両機能を達成できる集塵、脱臭装置が開発されている。
こうした集塵、脱臭装置としては、例えば、本発明者が提案しているように、次のような装置が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2009−190019
【特許文献2】特開2008−30010
【0004】
上記文献の集塵、脱臭技術は、フィルター自体に活性炭を含有させたり、脱硫目的で生石灰を吹き込んだりする技術であり、また、バグフィルター型集塵機に活性炭と生石灰とを投入し、バグフィルターから落下したものを回収して再び集塵機に投入するように、還流する方式のものであり、活性炭等の再利用を行うようにすることができ、経済性を向上させることができた。
【0005】
このようなバグフィルター型集塵、脱臭装置は、鋳物工場等の全体を集塵するところの大型の集塵機であり、本来は、集塵の機能を優先するものであって、このような大型の集塵機で脱臭を行おうとすれば、高価な活性炭等が大量に必要となると共に工場外の大気への放出エアーから臭気を消すことは出来るが、作業現場では問題が残るものである。
【0006】
即ち、実際の臭気発生現場としては、鋳物工場、例えば、シェルモールド等の臭気発生を伴う中子を使用するアルミ鋳造、或いはアルミダイカスト成型、薬品を使用する病院等の医療施設、化学工場、種々の異臭発生研究所等(換気については夫々のケースで規則により定められている)で、臭気発生が局所的であると言えるもので、その局所的作業現場の作業員がその臭気に晒されるという問題は解決できないものであった。
これを解消するためには、所望の場所、例えば、成型機の近辺に敷設できる小型の脱臭、集塵装置が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようなバグフィルター型脱臭装置は、粉状活性炭を循環使用できる構成とされていることで、集塵、脱臭の両方の機能を発揮でき、且つ、粉状活性炭を循環使用することができて、脱臭機能を向上させることができる点において格段の進歩を見たものである。
【0008】
しかし、上述したバグフィルター型集塵、脱臭装置は、粉状活性炭の循環使用に際し、万一、バグフィルターが何らかの事情で破損した場合、その粉状活性炭が外部に放出されてしまう虞があった。
また、小型の脱臭、集塵装置であっても、その排風機の吸引、排気に際しての騒音が相当なもの、現実には、80デシベル程度もあり、他の騒音が発生する工場では問題はないが、病院、事務所、食品加工工場など騒音発生の少ない場所に設置して用いるには問題であった。
【0009】
本発明は、集塵機能を備えることは勿論ながら、粉状活性炭の循環使用による継続した脱臭機能を発揮できながら、脱臭部におけるバグフィルターの破損によっても粉状活性炭が容易に外部に排出されることがなく、且つ、運転に際してもその騒音が大幅に減少されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるバグフィルター型脱臭装置は、上記目的を達成するために、バグフィルター部1及びバグフィルター部1の払い落としを行うパルスジェット機構2を備えたバグフィルター型の集塵構成と同様の構成の脱臭部3と、脱臭粉状体としての粉状活性炭Pを前記脱臭部3に対して循環供給する循環供給部4からなり、排風機13により吸引口5から吸引した脱臭対象外気を粉状活性炭Pを用いて脱臭して排出口6から排気するように構成した脱臭装置であって、前記脱臭部3に対して、バグフィルター部10を備えた補助ろ過部7が付設され、前記排風機13は、前記脱臭部3と前記補助ろ過部7との間に配置され、前記脱臭部3により脱臭した脱臭対象外気は前記補助ろ過部7に送り込まれ、該補助ろ過部7を通して外部に排出されるように構成されている。
【0011】
本発明において、脱臭対象外気とは、鋳物工場、食品加工工場、病院、化学薬品を使用する研究所等、脱臭を行い作業環境を改善しなければならない外気の全てを含む。
【0012】
本発明のバグフィルター型の集塵構成と同様の構成の脱臭部とは、それ自体公知の構成で、吸引口乃至吸引ダクトを有する集塵室に設けた、バグフィルター(袋状体)の一側から排風機で外気を負圧吸引し、バグフィルターの他側から外部に排気し、所定の間隔でバグフィルターを振動(パルスジェット)させて、目詰まりを解消できるようにした構成のものを言う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、集塵機能の発揮は勿論ながら、粉状活性炭の循環使用による継続した脱臭機能を発揮できるバグフィルター型脱臭装置において、バグフィルター部を備えた補助ろ過部の付設により、脱臭部におけるバグフィルターの破損によっても粉状活性炭が容易に外部に排出されることがなく、同時に、バグフィルター部を備えた補助ろ過部に対して排風機により脱臭外気を送風して通過させる方式であるので、このバグフィルター部が緩衝機能を発揮して、従来では80デシベル程度あった騒音を55デシベル程度まで抑制できるという顕著な効果を奏するのである。
本発明にかかるその他の具体的な効果は、以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施に際し、前記排風機13は、前記脱臭部3の上部に配置され、前記補助ろ過部7は、前記脱臭部3の上部で、且つ、前記排風機13の横に配置され、下方から吸引した脱臭外気を横方に送風し、前記補助ろ過部7のバグフィルター部10を通して外部に排出するように構成されているのが好ましい。
これによって、脱臭装置全体をコンパクトに形成できる利点がある。
【0015】
更に、前記脱臭部3のバグフィルター部1及び前記補助ろ過部7のバグフィルター部10は、そのバグフィルターの袋状体の長手方向が横向きとなるように配置されていることが好ましい。
従来一般の集塵装置にあっては、通常バグフィルターは上下の方向に垂下状態で配置されているが、このような構成であると、装置の高さが高くなり、設置スペースを大きなものとする必要があり、通常の事務所などの室内に設置できない。
本発明であれば、高さ2メートル程度に抑えることが可能であり、通常の室内での設置も容易である(実施例の処理風量30立方メートル毎分)
【0016】
更に、前記粉状活性炭Pに生石灰の粉状が混合されていることが好ましい。
これにより、脱臭対象外気中のCO2を反応吸収し、また、他の有害ガス、微細粉塵を吸着して脱臭対象外気の更なるクリーン化を図ることができる。
【0017】
また、前記粉状活性炭Pに抗菌材ABの粉状が混合されていることが好ましい。
脱臭対象外気の異臭に含まれる種々のカビ菌、細菌類が、二段のバグフィルター部1及び10を通過して外部に排出されるのを防止し、極力滅菌した状態で排出できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかるバグフィルター型脱臭装置の全体の正面図。
【図2】本発明にかかるバグフィルター型脱臭装置の全体の右側面図。
【図3】本発明にかかるバグフィルター型脱臭装置の背面図。
【図4】本発明にかかるバグフィルター型脱臭装置の平面図。
【図5】本発明にかかるバグフィルター型脱臭装置の図2におけるA−A矢視断面図。
【図6】本発明にかかるバグフィルター型脱臭装置の全体の左側面図。
【図7】本発明にかかるバグフィルター型脱臭装置の配管を示す平面図。
【実施例】
【0019】
本発明にかかるバグフィルター型脱臭装置の好適実施例について、以下、図1乃至図7に基づいて詳述する。ここでは、集塵対象外気として、食品加工工場(魚類加工)の異臭外気を対象として説明する。
【0020】
このバグフィルター型脱臭装置は、袋状のろ布を多数並べてなるバグフィルター部1(テトロンフェルトの濾布)及びバグフィルター部1(テトロンフェルトの濾布)の払い落としを行うパルスジェット機構2を備えたバグフィルター型の集塵構成と同様の構成の脱臭部3と、脱臭粉状体としての粉状活性炭Pを前記脱臭部3に対して循環供給する循環供給部4からなり、排風機(ブロア)13により吸引口5から吸引した脱臭対象外気を粉状活性炭Pを用いて脱臭して排出口6から排気するように構成したものである。
かかる基本構成は、引用文献1の引用特開2009−190019において本発明者が提案したものと略同一である。
【0021】
本発明では、前記脱臭部3に対して、バグフィルター部10を備えた補助ろ過部7が付設されているものであり、前記排風機13は、前記脱臭部3と前記補助ろ過部7との間に配置され、前記脱臭部3により脱臭した脱臭対象外気は前記補助ろ過部7に送り込まれ、該補助ろ過部7を通して外部に排出されるように構成されている。
【0022】
具体的には、前記排風機13は、前記脱臭部3の上部に配置され、前記補助ろ過部7は、前記脱臭部3の上部で、且つ、前記排風機13の横に配置され、下方から吸引した脱臭外気を横方に送風し、前記補助ろ過部7のバグフィルター部10を通して外部に排出するように構成されている。尚、バグフィルター部10については、上述のパルスジェット機構2を備えていない。
【0023】
そして、前記脱臭部3のバグフィルター部1(横6列)及び前記補助ろ過部7のバグフィルター部10(横7列)は、そのバグフィルターの袋状体の長手方向が横向きとなるように配置されている。
【0024】
ここで使用される前記粉状活性炭Pは、60ミクロン程度の粒径の微粉であるが、その他、200〜2000メッシュとし、また、1ミリ以下の粉状体を混合して用いるようにしてもよい。また、ここでは、生石灰の粉状が、前記粉状活性炭Pに対して重量比で、1対0.1としているが、1対1として混合されているものでもよい。前記粉状活性炭Pの使用量としては、風量1m/分につき、0.05〜0.3gとしている。この粉状活性炭Pは、図6に示す開閉自在の供給口16から
【0025】
更に、前記粉状活性炭Pに抗菌材AB(Anti−bacterium)の粉状が少量混合されている(0.1%から10%)。抗菌材ABとしては、銀系ゼオライトが用いられている。ゼオライト自体には本来脱臭機能が備わっており、更に、銀コーティングにより、殺菌機能を発揮する。このような粉状活性炭Pに含まれる前記抗菌材ABは、殺菌剤(sterilizer)を包含するもので、その他に、殺菌機能を発揮する特殊な貝殻粉(ホタテ貝など)、チタン粉末などを用い得る。
【0026】
前記排風機13としては、ここでは、風量30m/min、静圧は、−3.44kPa、駆動用のモーターは、4.5KWのものである。また、パルスジェット機構2の圧縮空気は、コンプレッサー14(ベーンタイプ)によりタンク2Aに溜めて使用しており、多数の吹き込みノズル(図2で6個表示)を備えたパルスジェットの構成は、それ自体、集塵機として汎用されている公知のものであるので、ここでの詳述は省略する。尚、パルスジェット機構2の作動は、通常の集塵機の場合、ダンパー操作で吸引負圧を遮断して行うが、ここでは、ダンパー設置を省くなどの簡素化のために、そのまま運転中に行うが、一般ダストなどの微粉塵とは異なり、粉状活性炭Pであれば、十分な払い落とし効果は得られる。
【0027】
上記循環供給部4は、脱臭部3のホッパー3Aの底部に払い落とされた粉状活性炭Pを、定量排出するロータリーバルブ9、該ロータリーバルブ9から前記脱臭3に還流する還流管11、及び該還流管11を通して前記脱臭部3に前記粉状活性炭Pを、空気圧送方式で、還流するブロアー12からなる。このブロアー12は、リングブロアーと呼ばれるもので、風量2.5m/min、静圧は、−4.90kPa、駆動用のモーターは、0.85KWである。
【0028】
そして、前記ロータリーバルブ9の排出側に切り替えバルブ15が設けられ、該切り替えバルブ15により、長期使用の前記粉状活性炭Pの全面的或いは部分的に新規な粉状活性炭Pに取替えるに際して、前記切り替えバルブ15を操作して、外部への排出を行うことができるように構成され、通常は、還流管11への流れが形成されている。
【0029】
(作用)
上述のように構成されたバグフィルター型脱臭装置は、図6に示す自在の供給口16から、脱臭部3のホッパー3A内に粉状活性炭Pが所定量供給される。そして、前記排風機13及び循環供給部4のブロアー12が駆動される。
前記循環供給部4のブロアー12が駆動されると、脱臭部3のホッパー3Aの底部に供給された粉状活性炭Pが、ロータリーバルブ9を経て、空気圧送でもって、還流管11を通って脱臭部3の吸引口5の近傍で放出され、脱臭対象外気と接触しながら脱臭部3の内部に至り、バグフィルター部1において粉状活性炭Pがろ過されて、同時に、脱臭作用を受ける。
【0030】
次いで、脱臭された脱臭対象外気は、前記排風機13に取り込まれ、そして、前記補助ろ過部7に排出され、ここで、バグフィルター部10により再度ろ過されて後に、排出口6を経て脱臭装置の外部に排出される。
従って、万一、バグフィルター部1の破損によって、粉状活性炭Pがバグフィルター部1を通過したとしても、補助ろ過部7のバグフィルター部10により、外部に直接排出されるのを阻止されることになる。
【0031】
そして、前記排風機13は、吸引外気を直接に外部へ排出するのではなく、補助ろ過部7に一旦排出して、そこに設けられたバグフィルター部10のろ過を経て外部に排出するものであるから、この補助ろ過部7が騒音発生の緩衝部として機能し、減音作用を得ることができるのであり、実験によれば、補助ろ過部7のない場合に80デシベル程度あった騒音が、これを付設することで、55デシベル程度にまで抑制できた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明にかかるバグフィルター型脱臭装置は、異臭発生の魚貝類等の生食品加工場、病院など、本来騒音発生の少ない場所、更には、鋳物工場等の臭気発生の現場に設置して、その局所において脱臭機能を発揮させることができ、種々の異臭発生対象場所に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1:バグフィルター部
2:パルスジェット機構
3:脱臭部
4:循環供給部
5:吸引口
6:排出口
7:補助ろ過部
10:バグフィルター部(補助ろ過部)
13:排風機
AB:抗菌材
P:粉状活性炭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バグフィルター部(1)及びバグフィルター部(1)の払い落としを行うパルスジェット機構(2)を備えたバグフィルター型の集塵構成と同様の構成の脱臭部(3)と、脱臭粉状体としての粉状活性炭(P)を前記脱臭部(3)に対して循環供給する循環供給部(4)からなり、排風機(13)により吸引口(5)から吸引した脱臭対象外気を粉状活性炭(P)を用いて脱臭して排出口(6)から排気するように構成した脱臭装置であって、
前記脱臭部(3)に対して、バグフィルター部(10)を備えた補助ろ過部(7)が付設され、
前記排風機(13)は、前記脱臭部(3)と前記補助ろ過部(7)との間に配置され、前記脱臭部(3)により脱臭した脱臭対象外気は前記補助ろ過部(7)に送り込まれ、該補助ろ過部(7)を通して外部に排出されるように構成されている、
ことを特徴とするバグフィルター型脱臭装置。
【請求項2】
前記排風機(3)は、前記脱臭部(3)の上部に配置され、前記補助ろ過部(7)は、前記脱臭部(3)の上部で、且つ、前記排風機(13)の横に配置され、下方から吸引した脱臭外気を横方に送風し、前記補助ろ過部(7)のバグフィルター部(10)を通して外部に排出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバグフィルター型脱臭装置。
【請求項3】
前記脱臭部(3)のバグフィルター部(1)及び前記補助ろ過部(7)のバグフィルター部(10)は、そのバグフィルターの袋状体の長手方向が横向きとなるように配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバグフィルター型脱臭装置。
【請求項4】
前記粉状活性炭(P)に生石灰の粉状が混合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のバグフィルター型脱臭装置。
【請求項5】
前記粉状活性炭(P)に抗菌材(AB)の粉状が混合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のバグフィルター型脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−176392(P2012−176392A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58517(P2011−58517)
【出願日】平成23年2月27日(2011.2.27)
【出願人】(392011080)
【Fターム(参考)】