説明

バグフィルタ用リテーナ

【課題】本発明は、濾布に付着した粉塵を十分に払い落とせ、かつ、濾布の傷みが発生しにくいバグフィルタ用リテーナを提供することを目的とする。
【解決手段】パルスジェット形の払い落とし機構70のノズル70aから噴射された圧縮空気がリテーナ本体20の長手下方および半径方向に供給されるとともに、前記圧縮空気の噴射によってリテーナ本体20外からベンチュリ管40へ吸引された空気が整流手段としてのホーン型の管50の外壁に沿って濾布25の上端部内面に向かって供給されるように構成されている。ベンチュリ管40と、整流手段としての管50とは別体に形成される。ベンチュリ管40は、中間部の直径よりも下端の直径が大きく形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵機であるバグフィルタの濾布を内側から支持するバグフィルタ用リテーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バグフィルタとして、含塵気流を通過させて粉塵を分離捕集する濾布と、濾布の形状を保持するため濾布を内側から支持するリテーナ本体と、を備えたものが用いられている。集塵機を運転すると、濾布は粉塵を捕集して運転時間の経過とともに吸引力の損失が大きくなるので、捕集した粉塵を間欠的に又は連続的に払い落とす必要がある。
【0003】
例えば、この濾布で捕集した粉塵を払い落とすために、パルスジェット形の払い落とし機構をバグフィルタに備えたものが知られている。しかし、この払い落とし機構で粉塵を払い落とす際に、濾布の上端部側では、集塵時のブロアによる吸引負圧に抗してリテーナ本体の内部を十分な正圧にできず、濾布の上端部側で粉塵を払い落とせないという問題が発生していた。これを解決する技術として、図6に示すような構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、図6を参照しながら説明する。図6において、外周に濾布125が配設されたバグフィルタ用リテーナ110のリテーナ本体120の上端側の中心部に内挿され、長手方向の上端部に上端に向かって収縮して形成された上端収縮部140aと、長手方向の下端部に下端に向かって収縮し上端収縮部140aとの間に円柱状の胴部140bを挟んで形成された下端収縮部140cと、を備えたリテーナ用コーン140が配設された構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−49341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の図6に記載された構成は、パルスジェット形の払い落とし機構170のノズル170aから噴射される圧縮空気の一部をリテーナ本体120の半径方向に分散させ、リテーナ本体120の上端側に負圧が発生することを防止し、リテーナ本体120の上端側を含む濾布125全体を外方に膨らませ、濾布125に付着した粉塵を払い落とすことを狙ったものである。
【0007】
すなわち、図7に示すように、濾布125に多くの粉塵が付着した結果、バグフィルタの入口(図示せず)の圧力P1と出口の圧力P2との差圧ΔPが所定の閾値を超えてしまった時、図7のbに示すタイミングでパルスジェット形の払い落とし機構170のノズル170aから圧縮空気を噴射され、濾布125に付着した粉塵を払い落とす。しかし、リテーナ用コーン140を設けたことにより、パルスジェット形の払い落とし機構170のノズル170aから噴射された圧縮空気がリテーナ本体120の長手下方に十分供給されなくなり(図6のイを参照)、濾布125に付着した粉塵を十分に払い落とせず、差圧ΔPが閾値より僅かに小さくなるだけである(図7を参照)。したがって、図7のc、dに示すタイミングで頻繁にパルスジェット形の払い落とし機構170のノズル170aから圧縮空気を噴射させなければならない。このように頻繁にパルスジェット形の払い落とし機構170のノズル170aから圧縮空気を噴射させても、差圧ΔPが閾値より僅かに小さくなるだけであり(図7を参照)、濾布125に付着した粉塵を十分に払い落とせない。したがって、濾布125に付着した粉塵を十分に払い落とせないわりに、パルスジェット形の払い落とし機構170のノズル170aから頻繁に噴射した圧縮空気で濾布125を叩くため、濾布125が傷みやすいという問題点を有していた。
【0008】
本発明の目的は、濾布に付着した粉塵を十分に払い落とせ、かつ、濾布の傷みが発生しにくいバグフィルタ用リテーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、第1の発明は、
パルスジェット形の払い落とし機構を有したバグフィルタの濾布を内側から支持するバグフィルタ用リテーナであって、
前記払い落とし機構のノズル近傍まで延びたリテーナ本体と、
このリテーナ本体の上端部に配設され、かつ、下端側が前記リテーナ本体の外周に配設された前記濾布の上端近傍まで延びたベンチュリ管と、
このベンチュリ管の下端近傍から前記リテーナ本体の長手下方に向かって所定長さ延出した整流手段と、を有し、
この整流手段は、前記ノズルから前記ベンチュリ管に向かって噴射された圧縮空気を前記リテーナ本体の長手下方および半径方向に供給するとともに、前記圧縮空気の噴射によって前記リテーナ本体外から前記ベンチュリ管へ吸引された空気が前記整流手段の外壁に沿って前記濾布の上端部内面に向かって供給されるように構成されたことを特徴とするバグフィルタ用リテーナである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記整流手段は、前記リテーナ本体の長手下方に向かって開いたホーン型の管であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係るバグフィルタ用リテーナによれば、
払い落とし機構のノズル近傍まで延びたリテーナ本体と、
このリテーナ本体の上端部に配設され、かつ、下端側が前記リテーナ本体の外周に配設された濾布の上端近傍まで延びたベンチュリ管と、
このベンチュリ管の下端近傍から前記リテーナ本体の長手下方に向かって所定長さ延出した整流手段と、を有し、
この整流手段は、前記ノズルから前記ベンチュリ管に向かって噴射された圧縮空気を前記リテーナ本体の長手下方および半径方向に供給するとともに、圧縮空気の噴射によって前記リテーナ本体外から前記ベンチュリ管へ吸引された空気が前記整流手段の外壁に沿って前記濾布の上端部内面に向かって供給されるように構成されているため、以下のような作用効果を奏する。
1)噴射された圧縮空気がリテーナ本体の長手下方および半径方向に供給されるとともに、前記圧縮空気の噴射によって前記リテーナ本体外から前記ベンチュリ管へ吸引された空気が前記整流手段の外壁に沿って前記濾布の上端部内面に向かって供給されるため、一回の噴射で濾布全体に付着した粉塵を払い落とすのに十分な正圧が確保される(後記図3に示すように、一回の噴射で差圧ΔPが閾値より十分に小さくなる)。
2)また、一回の噴射で濾布全体に付着した粉塵を払い落とせるため、濾布の傷みも発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るバグフィルタ用リテーナの逆洗時の濾布の状態を示す要部模式断面図である。
【図2】図1に示すバグフィルタ用リテーナにおけるベンチュリ管、整流手段とリテーナ本体間の連結状態を説明するための模式斜視図である。
【図3】同バグフィルタ用リテーナを用いた場合の差圧ΔPの時間的変化を説明するための説明図である。
【図4】図1に示すバグフィルタ用リテーナにおけるベンチュリ管、整流手段とリテーナ本体の寸法を説明するための模式拡大図である。
【図5】本発明に係るバグフィルタ用リテーナの整流手段の変形例を説明する概観図である。
【図6】従来例に係るバグフィルタ用リテーナの逆洗時の濾布の状態を示す要部模式断面図である。
【図7】同バグフィルタ用リテーナを用いた場合の差圧ΔPの時間的変化を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係るバグフィルタ用リテーナの逆洗時の濾布の状態を示す要部模式断面図、図2は図1に示すバグフィルタ用リテーナにおけるベンチュリ管、整流手段とリテーナ本体間の連結状態を説明するための模式斜視図、図3は同バグフィルタ用リテーナを用いた場合の差圧ΔPの時間的変化を説明するための説明図、図4は図1に示すバグフィルタ用リテーナにおけるベンチュリ管、整流手段とリテーナ本体の寸法を説明するための模式拡大図である。
【0015】
図1〜図4において、パルスジェット形の払い落とし機構70を有したバグフィルタ(図示せず)の濾布25を内側から支持するバグフィルタ用リテーナ10であって、払い落とし機構70のノズル70a近傍まで延びたリテーナ本体20と、上端40a側がリテーナ本体20の外延部20aを介してリテーナ本体20の上端部に配設され、かつ、下端40b側がリテーナ本体20の外周に配設された濾布25の上端近傍(天板30近傍の位置に相当)まで延びたベンチュリ管40(長さl1)と、このベンチュリ管40の下端40b近傍からリテーナ本体20の長手下方に向かって所定長さ(l2)延出した整流手段としてのリテーナ本体20の長手下方に向かって開いたホーン型の管50と、を有し、このホーン型の管50は、ノズル70aからベンチュリ管40に向かって噴射された圧縮空気をリテーナ本体20の長手下方および半径方向に供給するとともに、前記圧縮空気の噴射によってリテーナ本体20外からベンチュリ管40へ吸引された空気がホーン型の管50の外壁に沿って濾布25の上端部内面に向かって供給されるように構成されている。
【0016】
また、ベンチュリ管40の下端40bとホーン型の管50の上部外壁とが4本のリム65により連結され、ホーン型の管50の下端50bはリテーナ本体20を束ねる円輪20bに4本のリム60により連結されている。
【0017】
図4に示すように、ホーン型の管50の上端50aはベンチュリ管40の下端40bより上方へΔlだけ入り込んでいる。また、ベンチュリ管40の中間部、下端40bの直径をそれぞれD2、D3と定義し、ホーン型の管50の上端50a、下端50bの直径をそれぞれD1、D4と定義し、リテーナ本体20を束ねる円輪20bの直径をD5と定義する。また、これらの各直径は、下記式(1)、(2)に示す関係を有する。
(D2)/3 ≦ D1 ≦ D3 ――― 式(1)
D1 ≦ D4 ≦ D5 ――― 式(2)
【0018】
次に、濾布25に付着した粉塵を払い落とすバグフィルタ用リテーナ10の逆洗時の動作について、説明する。
【0019】
図3に示すように、濾布25に多くの粉塵が付着した結果、バグフィルタの入口(図示せず)の圧力P1と出口の圧力P2との差圧ΔPが所定の閾値を超えた時は、図3のaに示すタイミングでパルスジェット形の払い落とし機構70のノズル70aから圧縮空気を噴射される。この時、噴射された圧縮空気がリテーナ本体20の長手下方および半径方向に供給されるとともに、前記圧縮空気の噴射によってリテーナ本体20外からベンチュリ管40へ吸引された空気がホーン型の管50の外壁に沿って濾布25の上端部内面に向かって供給されるため、一回の噴射で濾布25全体に付着した粉塵を払い落とすのに十分な正圧(例えば、図1のアにベクトルとして表示)が確保される。したがって、一回の噴射で差圧ΔPが閾値より十分に小さくなる。よって、一回の噴射で濾布25全体に付着した粉塵を払い落とせるため、払い落とし機構70のノズル70aから噴射される圧縮空気の回数が少なくて済み、濾布25の傷みも発生しにくい。
【0020】
本実施形態においては、整流手段としてリテーナ本体20の長手下方に向かって開いたホーン型の管50の例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図5(a)〜(f)に記載したさまざまな形状のものを用いることが可能である。
【0021】
また、本実施形態においては、リム60、65をそれぞれ4本用いる例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、2本〜32本程度を使用するのが適当である。
【符号の説明】
【0022】
10…バグフィルタ用リテーナ
20…リテーナ本体
20a…外延部
20b…円輪
25…濾布
30…天板
40…ベンチュリ管
40a、50a…上端
40b、50b…下端
50…ホーン型の管
60、65…リム
70…払い落とし機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスジェット形の払い落とし機構を有したバグフィルタの濾布を内側から支持するバグフィルタ用リテーナであって、
前記払い落とし機構のノズル近傍まで延びたリテーナ本体と、
このリテーナ本体の上端部に配設され、かつ、前記リテーナ本体の外周に配設された前記濾布の上端近傍まで下端側が延びたベンチュリ管と、
このベンチュリ管の下端近傍から前記リテーナ本体の長手下方に向かって所定長さ延出するとともに前記ベンチュリ管とは別体に形成された整流手段と、を有し、
前記ベンチュリ管は、中間部の直径よりも下端の直径が大きく形成され、
前記整流手段は、前記ノズルから前記ベンチュリ管に向かって噴射された圧縮空気を前記リテーナ本体の長手下方および半径方向に供給するとともに、前記圧縮空気の噴射によって前記リテーナ本体外から前記ベンチュリ管へ吸引された空気が前記整流手段の外壁に沿って前記濾布の上端部内面に向かって供給されるように構成されたことを特徴とするバグフィルタ用リテーナ。
【請求項2】
前記ベンチュリ管の下端の直径は、前記整流手段の上端の直径よりも大きく形成されたことを特徴とする請求項1に記載のバグフィルタ用リテーナ。
【請求項3】
前記整流手段の上端は、前記ベンチュリ管の下端より上方へ入り込んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のバグフィルタ用リテーナ。
【請求項4】
前記整流手段の上端の直径をD1、前記ベンチュリ管の前記中間部の直径をD2としたとき、
(D2)/3≦D1
を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバグフィルタ用リテーナ。
【請求項5】
前記ベンチュリ管の下端は、前記濾布の上端の横に配設されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバグフィルタ用リテーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−96236(P2012−96236A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−36608(P2012−36608)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【分割の表示】特願2009−82625(P2009−82625)の分割
【原出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】