説明

バケットコンベヤベルト

【課題】 芯体帆布に傷をつけることがなく、製造工数および材料費が少なく、低コストで耐久性に富み、しかもベルト本体が円滑に回走しうるようにしたバケットコンベヤベルトを提供する。
【解決手段】 べルト本体2の搬送面に、バケット取付手段14の少なくとも一部を取り付けた軟質材料製の複数のベース部材6を、べルト本体2の長手方向に所定の間隔をもって固着し、各バケット3を、バケット取付手段14をもってベース部材6に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端回走するようにしたべルト本体の搬送面に、複数のバケットを、べルト本体の長手方向に所定の間隔をもって取り付けたバケットコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉱石、石炭、穀物、砂利等の運搬用に、図9に示すようなバケットコンベヤベルトが使用されている(特許文献1参照)。同図に示すように、従来のバケットコンベヤベルト(51)は、芯体帆布(52)の両面をカバーゴム(53)(54)で被覆してなるべルト本体(55)に貫通孔(56)を形成し、この貫通孔(56)にボルト(57)を挿入し、このボルト(57)に螺合させたナット(58)により、バケット(59)をべルト本体(55)に固着している。
【特許文献1】特開平3−259809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような従来のバケットコンベヤベルト(51)は、べルト本体(55)にボルト(57)を通すための貫通孔(56)を穿設するため、芯体帆布(52)に傷をつけ、芯体帆布(52)の強度が低下する。そのため、従来は芯体帆布(52)を必要以上に枚数を多くしなければならず、これにより、べルト本体(55)の製造工数および材料が増え、コストアップするとともに、べルト本体(55)の厚さや重量も大きくなるという問題がある。
また、ボルト(57)の頭部(57a)がべルト本体(55)の裏面に露出しているため、この部分がプーリ(図示略)に当たって摩損しやすく、耐久性を低下させるだけでなく、べルト本体(55)の回走が不円滑になるという問題もある。
【0004】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、芯体帆布に傷をつけることがなく、製造工数および材料費が少なく、低コストで耐久性に富み、しかもベルト本体が円滑に回走しうるようにしたバケットコンベヤベルトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 無端回走するようにしたべルト本体の搬送面に、複数のバケットを、前記べルト本体の長手方向に所定の間隔をもって取り付けたバケットコンベヤベルトにおいて、前記べルト本体の搬送面に、バケット取付手段の少なくとも一部を取り付けた軟質材料製の複数のベース部材を、前記べルト本体の長手方向に所定の間隔をもって固着し、各バケットを、前記バケット取付手段をもって前記ベース部材に取り付ける。
【0006】
(2) 上記(1)項において、バケット取付手段を、ボルトとナットとからなるものとし、前記ボルトとナットとのいずれか一方を、ベース部材に埋設する。
【0007】
(3) 上記(2)項において、ナットを、べルト本体の長手方向と直交する方向を向く板材に複数のねじ孔を設けた板ナットとし、かつベース部材に、前記各ねじ孔に連通するボルト挿入孔を設ける。
【0008】
(4) 上記(2)項において、べルト本体の長手方向と直交する方向を向く基板に、複数のナットを基板の長手方向に並べて固着したものをベース部材に埋設し、かつ前記ベース部材に、前記各ナットのねじ孔に連通するボルト挿入孔を設ける。
【0009】
(5) 上記(2)〜(4)項のいずれかにおいて、バケットとベース部材の一部とを挟んで、ボルトとナットとを締着する。
【0010】
(6) 上記(2)項において、べルト本体の長手方向と直交する方向を向く基板に、複数のナットを基板の長手方向に並べて固着したものをベース部材に埋設し、かつ前記各ナットの端面を前記ベース部材の表面より露呈させる。
【0011】
(7) 上記(2)〜(6)項のいずれかにおいて、ボルトの先端を、ベース部材の裏面から突出させないようにして、ボルトをナットに螺合する。
【0012】
(8) 上記(1)〜(7)項のいずれかにおいて、ベース部材を、べルト本体から離れるにしたがって狭幅となり、かつべルト本体の長手方向の両側に傾斜面を有する側面視台形とし、この台形の頂面にバケットを当接させて固定する。
【0013】
(9) 上記(1)〜(8)項のいずれかにおいて、ベース部材を、ゴムまたは軟質合成樹脂材料により形成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(a)請求項1記載の発明によると、べルト本体の搬送面に、バケット取付手段の少なくとも一部を取り付けた軟質材料製のベース部材を固着し、これに各バケットを取り付けるようにしたので、べルト本体にボルトを通すための貫通孔を形成する必要がなくなり、これにより、芯体帆布に傷をつけることがなくなるため、芯体帆布を必要以上の枚数を使用する必要がなく、べルト本体の製造および材料のコストダウンが図れるとともに、べルト本体の厚みや重量も小さくすることができる。
また、べルト本体の裏面にバケット取付手段が露出することがないので、従来のように、ボルト頭がべルト本体の裏面に露出して、その部分がプーリに当たり、べルト本体の回走が不円滑になったり、ボルト頭が摩損し易くなる等のおそれがない。
【0015】
(b) 請求項2記載の発明によると、バケット取付手段が、ボルトとナットとからなる簡単な構造であり、しかもバケットを簡単に取付けることができる。
【0016】
(c) 請求項3記載の発明によると、1個の板ナットに、複数のボルトを螺合して、バケットをベース部材に簡単かつ強固に取り付けることができるとともに、構造を簡素化でき、しかも板ナットがベース部材から外れにくい。
【0017】
(d) 請求項4記載の発明によると、1枚の基板と複数のナットとにより、板ナットを簡単に形成することができ、これをベース部材に埋設し、各ナットにボルトを螺合して、バケットをベース部材に簡単かつ強固に取り付けることができる。また、基板が、各ナットがベース部材から外れるのを阻止する作用をする。
【0018】
(e) 請求項5記載の発明によると、ボルトの頭部とナットとの間に、バケットとベース部材の一部とを挟んで、ボルトとナットとを締着するので、軟質材料製のベース部材がボルトの緩み止めとして作用し、ボルトの脱落を防止することができる。
【0019】
(f) 請求項6記載の発明によると、各ナットがベース部材の表面より露呈するので、ボルト締め作業が容易であり、バケットをべルト本体に強固に取り付けることができる。
【0020】
(g) 請求項7記載の発明によると、ボルトの先端がべルト本体に接触することがなく、べルト本体およびその内部の芯体帆布を傷めることがない。
【0021】
(h) 請求項8記載の発明によると、べルト本体がプーリーの回りを循環するときに、ベース部材の両側縁の傾斜面がべルト本体の変形に柔軟に追従し、この部分からの剥離を防止することができる。
【0022】
(i) 請求項9記載の発明によると、ベース部材が、回走時のべルト本体の動きに柔軟に追従することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のバケットコンベヤベルトの実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の一部の正面図、図2は、図1のII-II線拡大断面図である。
図1に示すように、バケットコンベヤベルト(1)は、少なくとも搬送部分をほぼ上下方向に向けて無端回走させられるようにしたべルト本体(2)の搬送面(図1の正面および図2の右面)に、その長手方向である上下方向に所定の間隔をおいて、上部開口のバケット(3)が取り付けられたものよりなっている。
【0024】
図2に示すように、べルト本体(2)は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、綿繊維、これらを組合わせたものなどからなる複数枚の織布を積層してなる芯体帆布(4)の両面を、カバーゴム(5a)(5b)で被覆してエンドレス状に構成したものである。べルト本体(2)の搬送面、すなわち、カバーゴム(5a)側には、バケット固定用のベース部材(6)が接着剤により固着されている。
【0025】
図3は、ベース部材の正面図、図4は、図3のIV-IV線断面図である。
ベース部材(6)は、ゴムまたは軟質合成樹脂材料等の軟質材料により形成され、べルト本体(2)から離れるにしたがって狭幅となり、かつべルト本体(2)の長手方向の両側である上下部に傾斜面(6a)(6a)を有し、かつ頂面(6b)が平坦面となった側面視台形状をなしている。
【0026】
ベース部材(6)の内部には、金属製の板ナット(7)が埋設されている。この板ナット(7)は、べルト本体(2)の長手方向と直交するべルト本体(2)の幅方向を向く基板(7a)に、複数個(図示の例では4個)のナット(7b)を、基板(7a)の長手方向に等間に並べて固着したものよりなっている。
基板(7a)およびナット(7b)には、ねじ孔(8)が連続して形成されている。
【0027】
ベース部材(6)には、板ナット(7)における各ねじ孔(8)に連通し、かつ頂面(6b)に開口するとともに、べルト本体(2)に接するベース部材(6)の裏面の直前で終端する有底のボルト挿入孔(9)が設けられている。
【0028】
図2に示すように、べルト本体(2)に固着されたベース部材(6)の頂面(6b)には、バケット(3)が、その後壁部(3a)を頂面(6b)に当接し、かつボルト(11)を、後壁部(3a)に穿設した通孔(12)からボルト挿入孔(9)に挿入し、板ナット(7)における各ねじ孔(8)に螺合して、各ナット(7b)とボルト(11)の頭部(11a)との間に、ベース部材(6)におけるボルト挿入孔(9)のまわりの部分と、バケット(3)の後壁部(3a)と、ワッシャ(13)とを挟んで締め付けることにより、取り付けられている。
ボルト(11)の先端は、ボルト挿入孔(9)の奥端内に収まり、ベース部材(6)の裏面には突出しないようにしてあるので、ボルト(11)の先端でべルト本体(2)や芯体帆布(4)を傷つけることがない。
【0029】
バケット(3)を取り付けた状態において、基板(7b)が、各ナット(7b)がベース部材(6)から外れるのを阻止する外れ止めの作用をし、バケット(3)を高強度でベース部材(6)に固定することができる。
【0030】
上記構成のバケットコンベヤベルト(1)は、図示しない駆動プーリ、および従動プーリに掛け回されて無端回走され、このべルト本体(2)がプーリの回りを循環するときに、ベース部材(6)もべルト本体(2)の変形に追従する。上記のように、ベース部材(6)を、両側縁に傾斜面(6a)を有する側面視台形に構成することにより、肉厚が薄くなっている傾斜面(6a)の部分がべルト本体(2)の変形に追従しやすくなり、本来は剥がれ易い側縁部からの剥がれを、効果的に防止することができる。
【0031】
なお、第1の実施形態においては、板ナット(7)とボルト(11)とにより、バケット取付手段(14)を形成し、その一部である板ナット(7)を、ベース部材(6)に埋設したが、例えば図5に示す本発明の第2の実施形態のように、バケット取付手段(14)の一部であるボルト(20)の頭部(20a)とそれに近いねじ部(20b)の一部とをベース部材(6)に埋設し、ベース部材(6)の頂面(6b)より外方に突出するねじ部(20b)に、バケット(3)の後壁部(3a)に穿設した通孔(12)とワッシャ(13)とを外嵌し、かつその前方よりナット(21)を螺合して締め付けることにより、バケット(3)を、ベース部材(6)の頂面(6b)に取り付けてもよい。
なお、前の実施形態におけるのと同様の部材には、同一の符号を付して示し、それらについての詳細な説明は省略する(第3以後の実施形態においても同様とする)。
【0032】
また、図6に示す本発明の第3の実施形態のように、板ナット(7)を、横長の板材(30)に、複数のねじ孔(31)を、板材(30)の長手方向に等間隔または適宜の間隔をもって穿設しただけの単純なものとしたり、または図7に示す本発明の第4の実施形態のように、横長の板材(30)に、複数のボス(32)を、板材(30)の長手方向に等間隔または適宜の間隔をもって形成し、各ボス(32)の中央にねじ孔(31)を穿設したものとしてもよい。
【0033】
さらに、図8に示す本発明の第5の実施形態のように、第1の実施形態におけるのと同一の板ナット(7)を、その各ナット(7b)がベース部材(6)の頂面(6b)より露呈するようにして埋設してもよい。
このようにすると、ボルト締め作業が容易となり、かつバケット(3)をべルト本体(2)に強固に取り付けることができる。
【0034】
バケット取付手段(14)としては、上記のようなボルトとナットとの他に、例えばフックや面ファスナ等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態の一部の正面図である。
【図2】図1のII-II線拡大断面図である。
【図3】ベース部材の正面図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の一部の縦断側面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態における板ナットの斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施形態における板ナットの斜視図である。
【図8】本発明の第5の実施形態の一部の縦断側面図である。
【図9】従来のバケットコンベヤベルトの一例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0036】
(1) バケットコンベヤベルト
(2) べルト本体
(3) バケット
(3a) 後壁部
(4) 芯体帆布
(5a)(5b) カバーゴム
(6) ベース部材
(6a) 傾斜面
(6b) 頂面
(7) 板ナット
(7a) 基板
(7b) ナット
(8) ねじ孔
(9) ボルト挿入孔
(11) ボルト
(11a) 頭部
(12) 通孔
(13) ワッシャ
(14) バケット取付手段
(20) ボルト
(20a) 頭部
(20b) ねじ部
(21) ナット
(30) 板材
(31) ねじ孔
(32) ボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端回走するようにしたべルト本体の搬送面に、複数のバケットを、前記べルト本体の長手方向に所定の間隔をもって取り付けたバケットコンベヤベルトにおいて、
前記べルト本体の搬送面に、バケット取付手段の少なくとも一部を取り付けた軟質材料製の複数のベース部材を、前記べルト本体の長手方向に所定の間隔をもって固着し、各バケットを、前記バケット取付手段をもって前記ベース部材に取り付けたことことを特徴とするバケットコンベヤベルト。
【請求項2】
バケット取付手段を、ボルトとナットとからなるものとし、前記ボルトとナットとのいずれか一方を、ベース部材に埋設した請求項1記載のバケットコンベヤベルト。
【請求項3】
ナットを、べルト本体の長手方向と直交する方向を向く板材に複数のねじ孔を設けた板ナットとし、かつベース部材に、前記各ねじ孔に連通するボルト挿入孔を設けた請求項2記載のバケットコンベヤベルト。
【請求項4】
べルト本体の長手方向と直交する方向を向く基板に、複数のナットを基板の長手方向に並べて固着したものをベース部材に埋設し、かつ前記ベース部材に、前記各ナットのねじ孔に連通するボルト挿入孔を設けた請求項2記載のバケットコンベヤベルト。
【請求項5】
ボルトの頭部とナットとの間に、バケットとベース部材の一部とを挟んで、ボルトとナットとを締着した請求項2〜4のいずれかに記載のバケットコンベヤベルト。
【請求項6】
べルト本体の長手方向と直交する方向を向く基板に、複数のナットを基板の長手方向に並べて固着したものをベース部材に埋設し、かつ前記各ナットの端面を、前記ベース部材の表面より露呈させた請求項2記載のバケットコンベヤベルト。
【請求項7】
ボルトの先端を、ベース部材の裏面から突出させないようにして、ボルトをナットに螺合した請求項2〜6のいずれかに記載のバケットコンベヤベルト。
【請求項8】
ベース部材を、べルト本体から離れるにしたがって狭幅となり、かつべルト本体の長手方向の両側に傾斜面を有する側面視台形とし、この台形の頂面にバケットを当接させて固定した請求項1〜7のいずれかに記載のバケットコンベヤベルト。
【請求項9】
ベース部材を、ゴムまたは軟質合成樹脂材料により形成した請求項1〜8のいずれかに記載のバケットコンベヤベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−1732(P2006−1732A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182942(P2004−182942)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】