説明

バケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械

【課題】 土壌や土質および地盤改良工事における深層及び浅層の各混合時の流動化処理土の施工管理を、より効果的にする撹拌促進手段を備えたバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械を提供する。
【解決手段】 バケットミキサーにおけるバケット2内に、掘削機能と回転攪拌機能を持つ回転攪拌翼5を複数枚備え、隣り合う2枚の前記回転攪拌翼の間に、撹拌促進手段として非回転攪拌翼17を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌や土質および地盤改良工事における深層及び浅層の各混合時の流動化処理土の施工管理に適したバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の土壌や土質および地盤改良工法は、現地土壌とセメントや水、その他の添加材を機械撹拌混合して固化させることにより、次のように行われている。
【0003】
この地盤改良工法では、図6に示されるように、建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の現地土壌を掘削・排土して所定大きさの空所52を形成する空所形成作業と、空所52内でセメント等の固化材と水とを撹拌混合して固化材混入スラリーを生成する固化材混入スラリー生成作業と、空所52内で固化材混入スラリーと先に掘削・排土した現地土壌Sを撹拌混合して固化材と現地土壌混合スラリーを生成する固化材・現地土壌混合スラリー生成作業とを順次行い、その固化材と現地土壌混合スラリーを固化させることによって改良地盤(改良体K)を構築している(特許文献1)。
【0004】
なお、この土壌や土質および地盤改良工法で構築される改良体Kは、建造物の基礎が設置される部分ごとに平面四角形状に形成してもよく、又は各基礎にまたがるように連続壁状態に形成してもよい。なお、改良体を連続壁状態で形成する場合は、適宜長さ(例えば2〜3m)に区分けしながら行うとよい。
【0005】
空所形成作業では、建造物の基礎が構築される位置の現地土壌は掘削機60を使用して掘削・排土し、その掘削した現地土壌Sを空所52の近くに盛土しておく。このように、予め空所52を形成すると、空所52の底部の支持地盤の状態を目視又は接触等によって直接確認することができる。しかし、空所が狭い時や少ない場合は、底部の支持層を試掘確認したら直ちに本施工に入る事もできる。
【0006】
なお、形成される空所52は、地表から比較的浅い範囲に形成されるために、掘削機60としてバックホーのような比較的簡易な掘削機(中型機)が使用可能である。また形成される空所深さが約5m以深の場合は、施工機械のアームが長い大型機に変えて施工を行うことができる。
【0007】
また、掘削機60は、バケット61部分に撹拌装置62を備えており、バケット61による掘削機能と撹拌装置62による回転撹拌機能を兼備している。以下では、このようなバケットによる掘削機能と攪拌装置による攪拌機能を兼備しているものをバケットミキサーと呼ぶこととする。
【0008】
形成した空所52の付近には、固化材を所定量ずつ分包した複数個の固化材入り袋Caを運んでおく。このようにしておくと、計量しなくても1回当たり何袋分の固化材を投入するかで固化材量を把握できる。又、空所52の近くに水管63の注水口64を導いておく。なお、水管63には、バルブ65と流量計66が設けられており、流量計66を見ながら空所52内に注水すると、正確な量を加水できる。
【0009】
また、空所付近に余裕がある敷地の場合は、プラント式にセメント固化材と水を予め撹拌混合して排出ポンプと輸送ホースで空所52まで送り、投入量を計測しながら撹拌混合する方法もできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−106467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これまでのバケットミキサーは、バケット内に掛け渡した回転軸に、その軸方向に間隔をおいて複数の回転撹拌翼が取付けられているが、回転撹拌翼の取り付け間隔より撹拌混合したい現地土の土塊の大きさが大きい場合は、回転撹拌翼の取り付けた間隔や格子網目の隙間から落下や送出がなされず、そこで空回りや供回りが起こり迅速な粉砕ができず効率が上がらない。
【0012】
本発明は、土壌や土質および地盤改良工事における深層及び浅層の各混合時の流動化処理土の施工管理を、より効果的にする撹拌促進手段を備えたバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械は、バケット内に、掘削機能と回転攪拌機能を持つ回転攪拌翼を複数枚備え、隣り合う2枚の前記回転攪拌翼の間に、非回転攪拌翼を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明によるバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械においては、前記複数の回転攪拌翼のそれぞれは、前記バケット内に横向きに掛け渡された回転軸に取付けられて、該回転軸を間にしてその直径方向に延びる少なくとも2枚のブレードから成り、前記複数の回転攪拌翼はまた、それぞれの延在方向が互いに異なるようにされていることが望ましい。この場合、前記非回転攪拌翼は、回転軸を間にしてその直径方向に延びるように配置されてその両端がバケット内の固定部に固定され、その中間部を前記回転軸が回転可能に貫通するように構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械におけるバケットミキサーの回転軸に複数枚の回転撹拌翼を設置し、しかも回転攪拌翼と交互に且つ適切な間隔をおいて非回転撹拌翼を配置したことにより、回転攪拌翼と非回転攪拌翼との間での土塊の切断や粉砕の効率が良くなり、結果的に施工性能を向上させることができる。
【0016】
従って、本発明によるバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械によれば、施工時間の短縮化や施工品質の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械を、バックホーに適用した場合におけるバケットミキサーを側面側から見た断面図である。
【図2】図1に示したバケットミキサーの一部断面正面図である。
【図3】図1に示したバケットミキサーの側面図である。
【図4】図1に示したバケットミキサーの正面図である。
【図5】本発明によるバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械の一例である、バックホーと呼ばれる機械による掘削、攪拌を説明するための図である。
【図6】従来の土壌や土質および地盤改良工法の一例を説明するための斜視図である。
【図7】従来型と本発明によるバケットミキサーに対して行なった性能比較試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、流動化処理土の施工管理に適した、本発明によるバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械の実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0019】
図5は、本発明によるバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械の一例としてバックホーと呼ばれる機械による掘削、攪拌を示す。
【0020】
バックホー70は、第1アーム71と第2アーム72を有し、第2アーム72の先端にバケットミキサー73を備える。
【0021】
図5(A)は、バックホー70が、第1アーム71と第2アーム72を介してバケットミキサー73を改良土層(地盤)内に挿入し、掘削している状態を示す。
【0022】
図5(B)は、バックホー70が、バケットミキサー73を上下左右方向に移動させて地盤内の改良土層内を攪拌している状態を示す。
【0023】
このようなバックホー等による機械を使用して建造物の基礎が構築される位置の現地土壌を掘削・排土し、流動化処理土の施工管理を行なうときの工程については、図6を参照して説明したので、この工程と同様な点の説明は省略する。
【0024】
図7は、本発明による新案型(回転攪拌翼のブレード総数6枚(3箇所×2枚))と従来型(回転攪拌翼のブレード総数10枚(5箇所×2枚))のバケットミキサーについて行った性能比較試験の結果を示す。図7(A)は、バケットミキサーの機械性能や仕様を示し、図7(B)はその比較試験の結果である。
【0025】
図7のバケットミキサーの性能比較試験から、砂質土は従来型より新案型が低い強度となるが、他の土質(ロームと粘性土)では強度の差が少なく同等の結果となる。これらから、砂質土の地盤は良く撹拌できる地盤材料で大きな強度(一軸圧縮強度試験)が得られるが、他の土質(ロームと粘性土)では撹拌が十分でなくかつ弱く低い強度なのにも関わらず、その差が顕著に現れないのはバケットミキサーの撹拌効率に寄与しているといえる。
【0026】
図1〜図4は、本発明によるバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械を、図5で説明したバックホーに適用した場合におけるバケットミキサーを示す図であり、図1は側面側から見た断面図、図2は一部断面正面図、図3は側面図、図4は正面図を示す。
【0027】
バケットミキサーはバケット2を有し、ハウジング3内には、横向きに回転軸4が回転可能に支持されている。回転軸4には、軸方向に間隔をおいてここでは3枚の回転撹拌翼5が取付けられている。回転攪拌翼5は、回転軸4を間にしてその直径方向に延びる少なくとも2枚のブレードから成り、各ブレードの先端には周方向に延びるカッター(爪)6が取付けられている。図1には回転攪拌翼5の正回転方向を実線の矢印、逆転方向を破線の矢印でそれぞれ示しており、ブレード先端におけるカッター6の延在方向は正回転方向である。3枚の回転攪拌翼5はまた、回転軸4を中心とする延在方向の角度が互いに異なるようにされている。
【0028】
本発明によるバケットミキサーは、隣り合う回転撹拌翼5の間に適切な間隔をおいて非回転撹拌翼(固定翼)17を攪拌促進ブレードとして備えることを特徴とする。非回転攪拌翼17は、回転軸4を間にしてその直径方向に延び、両端がハウジング3(バケット2)の固定部に固定され、中間部を回転軸4が回転可能に貫通している。ここでは、非回転攪拌翼17の一端はハウジング3の後部の上部内壁、他端はハウジング3の開口に近い前端側にそれぞれ固定されているが、固定位置はこれらの場所に限定されるものではない。非回転攪拌翼17は、回転攪拌翼5が3枚の場合には2枚で回転攪拌翼の数に応じて設置枚数も変わる。また、ここでは、2枚の非回転攪拌翼17は、回転軸4を中心とする延在方向の角度が同じになるようにしているが、これに限定されるものではない。
【0029】
次に、ハウジング3に設置されている動力伝達部7について説明する。動力伝達部7は、油圧モーター8と、油圧モーター8の出力軸に固定されている第1歯車9と、回転軸4に固定されている第2歯車10と、第1歯車9と第2歯車10の間に掛け渡されているチェーン11とから構成される。
【0030】
土壌や土質および地盤改良用の固化剤液は、グラウトホース12内を流れてハウジング3内に至り、4箇所の固化剤液吐出口(ノズル)(図示省略)から各回転攪拌翼5の付近に流出する。
【0031】
バケット2には傾斜計14が設置されるが、傾斜計はバックホーのアーム部にも設置(2軸式の場合2箇所)される。図示しない制御装置は、各アーム長と傾斜計の検出した角度から傾斜計を設置した各位置を演算し、基準の地表面からバケット2の先端刃先までの位置と深さを算出する。
【0032】
バケット2の下部前端には、4個の爪(カッター)15が固定されている。図示は省略しているが、ハウジング3の下部における後部は網目格子とされる。この網目格子は、格子より小さい粘性土やローム・シルト粘土の土塊や砂利・土砂は通過させるが、それより大きい土塊や砂礫、またはごみ等は通過させない役目をする。
【0033】
油圧モーター8が回転すると、動力伝達部7を介して回転撹拌翼5は図1に実線で示される正転方向に回転するので、バケット2内に取り込まれた現地土壌と固化剤液吐出口から導入された固化剤液が撹拌される。
【0034】
なお、回転撹拌翼5が図1に破線で示される逆転方向に回転すると、網目格子を通過できなかった砂礫や小石やごみ等がハウジング3の開口から排出される。
【0035】
以上説明してきたように、バケットミキサーの回転軸4に複数枚の回転撹拌翼5を設置し、しかも回転攪拌翼5と交互に且つ適切な間隔をおいて非回転撹拌翼17を配置したことにより、回転攪拌翼5と非回転攪拌翼17の間での土塊の切断や粉砕の効率が良くなり、結果的に施工性能を向上させることができる。つまり、回転軸4を回転させると、回転撹拌翼5と非回転撹拌翼17との間で強制的にせん断(はさみで切るような状態)や粉砕が行えるので、撹拌促進手段としての効果を創出できる。
【0036】
本発明によるバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械は、土壌や土質および地盤改良工事における深層及び浅層の各混合時の流動化処理土の施工管理に適し、施工性能や施工時間などの効率向上に寄与する。
【0037】
なお、図示しての詳しい説明は省略するが、回転軸は1軸のみならず、2軸や多数軸でも同じ効果が得られる。
【符号の説明】
【0038】
2 バケット
3 ハウジング
4 回転軸
5 回転撹拌翼
6 カッター
7 動力伝達部
8 油圧モーター
9 第1歯車
10 第2歯車
11 チェーン
12 グラウトホース
14 傾斜計
15 バケット部爪(カッター)
17 非回転撹拌翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケット内に、掘削機能と回転攪拌機能を持つ回転攪拌翼を複数枚備える土壌や土質および地盤改良機械において、
隣り合う2枚の前記回転攪拌翼の間に、非回転攪拌翼を備えたことを特徴とするバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械。
【請求項2】
前記複数の回転攪拌翼のそれぞれは、前記バケット内に横向きに掛け渡された回転軸に取付けられて、該回転軸を間にしてその直径方向に延びる少なくとも2枚のブレードから成り、前記複数の回転攪拌翼はまた、それぞれの延在方向が互いに異なるようにされていることを特徴とする請求項1に記載のバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械。
【請求項3】
前記非回転攪拌翼は、回転軸を間にしてその直径方向に延びるように配置されてその両端がバケット内の固定部に固定され、その中間部を前記回転軸が回転可能に貫通していることを特徴とする請求項2に記載のバケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−47155(P2011−47155A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195086(P2009−195086)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(509240930)
【出願人】(506354010)株式会社フレスコーヴォ (5)
【出願人】(506287383)
【Fターム(参考)】