説明

バケット式昇降機

【課題】残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供する。
【解決手段】装置の下部に設けた穀粒供給口13と、装置の上部に設けた穀粒排出口と、装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリ6を巻装するベルト11に一定間隔で取付けた複数のバケット10と、装置内にエアノズル(送風機)22とを備え、装置後部に設けた穀粒供給口13の上部にエアノズル22を備え、エアノズル22の送風角度が装置の後板3と底部移動樋20の後端との交差点を通る接線lに対して60度以上である。加えて、ベルトに形状の異なる底面を有するバケットを組み合わせ自在に備え、エアノズル22の送風口を送風方向に対して可動自在に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットで穀粒を揚穀する昇降機において、揚穀作業終了後に昇降機内に残った穀粒を取り出し得る装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバケット式昇降機は、機体下部に設けた穀粒供給口から供給する穀粒を機体内部に設けたプーリを巻装する地面に対して垂直方向に長いベルトにより上昇するバケットを用いて、機体上部に設けた穀粒排出口まで揚穀する。この揚穀作業終了後に機内底板に残った穀粒を回収するために送風ノズルを備える(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−359444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のバケット式昇降機では、機内底板に残った穀粒のみを送風ノズルからの送風により底板に沿って吹き上げ、送風方向下手側に設けた案内部により送風方向を変更し、バケットの上昇移動路と交差させて吹き上げられた穀粒を上昇するバケットに掬って回収するため、バケット内の穀粒の一部が連れ回りにより穀粒排出口で排出されず、バケットに滞留後底板に再度落下したり、機内各装置に有する滞留箇所に吹き上げられた穀粒が滞留し、機内に残留する穀粒の除去ができないという問題があった。
そこでこの発明の目的は、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、装置の下部に設けた穀粒供給口と、前記装置の上部に設けた穀粒排出口と、前記装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリを巻装するベルトに一定間隔で取付けた複数のバケットと、前記装置内に送風機とを備え、前記穀粒供給口に供給した穀粒を前記バケットにより連続的に揚穀し、前記穀粒排出口で前記バケット内の前記穀粒を連続的に放擲するとともに、前記装置内下部の底部移動樋の底面に残留した前記穀粒を前記送風機で除去するバケット式昇降機において、
前記装置の後部に前記穀粒供給口と、前記装置の後部の前記穀粒供給口の上部に前記送風機とを備え、前記送風機の送風角度が前記装置の後板と前記底部移動樋の後端との交差点を通る接線に対して60度以上であることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバケット式昇降機において、前記ベルトに形状の異なる底面を有する前記バケットを組み合わせ自在に備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のバケット式昇降機において、前記送風機の送風口を送風方向に対して可動自在に備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のバケット式昇降機において、前記バケットを周速自在に備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のバケット式昇降機において、前記穀粒排出口と該穀粒排出口付近に位置する前記バケットとの間に穀粒取出口を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のバケット式昇降機において、前記穀粒排出口の内部に前記送風機を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、装置の下部に設けた穀粒供給口と、装置の上部に設けた穀粒排出口と、装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリを巻装するベルトに一定間隔で取付けた複数のバケットと、装置内に送風機とを備え、穀粒供給口に供給した穀粒をバケットにより連続的に揚穀し、穀粒排出口でバケット内の穀粒を連続的に放擲するとともに、装置内下部の底部移動樋の底面に残留した穀粒を送風機で除去するバケット式昇降機において、装置の後部に穀粒供給口と、装置の後部の穀粒供給口の上部に送風機とを備え、送風機の送風角度が装置の後板と底部移動樋の後端との交差点を通る接線に対して60度以上であるので、穀粒が穀粒供給口に滞留することを防ぎ、かつ底部移動樋上に残留した穀粒の対流を容易に発生させ、バケットへの掬い取りを容易に行うことができる。従って、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、ベルトに形状の異なる底面を有するバケットを組み合わせ自在に備えるので、各バケットによって拡散方向の異なる噴風により穀粒が装置内の滞留箇所に滞留することを防止することができる。従って、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、送風機の送風口を送風方向に対して可動自在に備えるので、送風方向を移動させることにより穀粒が装置内の滞留箇所に滞留することを防止することができる。従って、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、バケットを周速自在に備えるので、バケットの周速を遅くすることによりバケット内に掬われた穀粒の穀粒排出口への排出時における連れ回りを防ぎ、バケット内の穀粒を排出することができる。従って、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、穀粒排出口とその穀粒排出口付近に位置するバケットとの間に穀粒取出口を備えるので、穀粒排出口まで届かずに落下したバケット内の穀粒を回収することができる。従って、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、穀粒排出口の内部に送風機を備えるので、穀粒排出時にバケット内で連れ回ってしまい排出されない穀粒を噴風により排出することができる。従って、残粒除去を確実に行うバケット式昇降機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の一例としてのバケット式昇降機の縦断側面図、図2は図1のバケット式昇降機の底部を拡大した縦断側面図、図3は図1のバケット式昇降機の上部を拡大した縦断側面図を示す。
【0018】
この例のバケット式昇降機1は、前板2と後板3および左右側板4により形成され、バケット式昇降機1内部の上部と下部には軸心が左右方向のプーリ5,6がそれぞれ設けられ、このプーリ5と6に無端状のベルト11が巻装される。このベルト11には適宜間隔を開けて複数の上開き側面視略U字型などのバケット10が取り付けられている。
【0019】
バケット式昇降機1の上部に設けられた不図示の可変速モータにより、プーリ5と同軸に設けられた不図示のプーリが回転され、バケット式昇降機1の下部に備えられた穀粒供給口13からバケット式昇降機1の上部に備えられた穀粒取出口12および穀粒排出口14の上下間をベルト11に沿ってバケット10が周回される。
【0020】
穀粒供給口13は、穀粒(米、麦など)を張り込む穀粒供給ホッパー15、供給ホッパー15の投入口16、供給口13に向けて穀粒をガイドする傾斜板17などから構成されている。
【0021】
バケット式昇降機1内部におけるプーリ6の下部には、側面視円弧などの形状を有する底部移動樋(底板)20が設けられる。さらに後板3に備えた穀粒供給口13の上部には、底部移動樋20上に残粒している穀粒をバケット10の上昇側21に向けて圧縮空気などの噴風で吹き上げるためのエアノズル(送風機)22が設けられ、エアノズル22の一端である噴射口24を後板3に設けられた挿入部より挿入されている。また、噴射口24とは反対側の他端には不図示のコンプレッサーなどに接続した送風管26が接続される。
【0022】
後板3と底部移動樋20の後端との交差点における接線lに対して、噴射口24より噴射される圧縮空気の噴出角度θが60度以上になるようにエアノズル22が設けられる。
【0023】
図3に示すように、穀粒排出口14の上部には、下降側に転じたバケット10内の穀粒に向けて圧縮空気の噴風を吹き込むために設けられたエアノズル27の一端である噴射口28が穀粒排出口14の後板または側板に設けられた挿入部より挿入される。また、噴射口28とは反対側の他端には不図示のコンプレッサーなどに接続した送風管29が接続される。
【0024】
また、プーリ6が巻装されるベルト11の張りを調節するための不図示のテンション機構(張設装置)や、プーリ6とベルト11の隙間に穀粒が挟まれる(噛み込まれる)ことによる、プーリ6とベルト11の損傷を防止するための不図示の穀粒噛み込み防止装置などをバケット式昇降機1内に備えてもよい。
【0025】
ここで、穀粒供給ホッパー15から穀粒を張り込むと、穀粒は穀粒供給口13よりバケット式昇降機1内に入り、底部移動樋20上に堆積してベルト11に沿って連続的に周回する複数のバケット10により掬われて上昇し、上部のプーリ5の外周に沿ってそれぞれのバケット10が上昇方向から下降方向に反転したところで穀粒が放擲されて穀粒排出口14より排出される。
【0026】
バケット10の開口部18は、穀粒を挟んで砕くのを防ぐなどのことから底部移動樋20に対して所定の間隔をおいて周回移動するため、揚穀作業中にバケット10により掬いきれなかった穀粒やバケット10などから落下した穀粒は、底部移動樋20上に残留してしまう。
【0027】
そこで、揚穀作業終了後、穀粒供給口13の上部に設置されたエアノズル22の噴射口24から圧縮空気を底部移動樋20上に残留した穀粒に対して断続的に噴射させることにより、吹き上げられた穀粒がベルト11の上昇側21上方に位置するバケット10に掬われて、上記揚穀作業時同様に穀粒排出口14に回収される。
【0028】
このとき、後板3と底部移動樋20の後端との交差点における接線lに対して、噴射口24より噴射される圧縮空気の噴出角度θが60度から90度付近までになるので、底部移動樋20上に残留した穀粒が垂直に近い角度から噴風を受けることで、吹き上げられた穀粒が対流し易くなり、バケット10への穀粒取込みが容易になる。
【0029】
エアノズル22から断続的に圧縮空気を噴射させることにより、1回の噴射で吹き上げきれなかった穀粒を一旦底部移動樋20上に拡散させることで、前回の噴射時よりも残粒量が減っているため、続けて行う噴射により短時間かつ効率よく残留する穀粒を吹き上げて、バケット10内に掬い取ることができる。この圧縮空気の噴射は、例えば5MPaなどの圧力で、噴射の間隔は、例えば5秒噴射後2秒休止など穀粒の種類などにより適宜圧力と間隔を設ける。
【0030】
図4は、バケット10における底面の別の形状を示す(a)は、開口部18aに対して、底部が側面視略三角形の頂点となるバケット10aの斜視図であり、(b)は、開口部18bに対して、底部が側面視波状となるバケット10bの斜視図である。
【0031】
側面視略U字型のバケット10に加えて、バケット10aまたはバケット10bなどをベルト11に適宜間隔を開けて組み合わせ自在に複数取付けることにより、揚穀作業終了後、残留した穀粒の除去操作時にエアノズル22により噴射され、バケット10やバケット10aまたはバケット10bなどの底面に当たって各バケットにより拡散方向の異なる噴風が、例えば装置内に設けられたテンション機構などに滞留した穀粒を底部移動樋20上に落下させ、再びエアノズル22の噴風により吹き上げられてバケット10,10a,10bなどに掬われて回収される。
【0032】
図5において、バケット式昇降機1下部の(a)は背面図、(b)は縦断側面図を示す。後板3上には、エアノズル22の側部にステッピングモータ30を設置する。このステッピングモータ30は、不図示の駆動軸を介してエアノズル22に設けられているため、エアノズル22および噴射口24が駆動軸の動きに連動して、垂直方向に設定した角度の幅内で揺動(首ふり)することから、噴風方向の変化により例えば装置内に設けられたテンション機構などに滞留した穀粒を底部移動樋20上に落下させ、再び噴風により吹き上げられてバケット10などに掬われて回収される。
【0033】
以上詳述したように、この例のバケット式昇降機1は、装置の下部に設けた穀粒供給口13と、装置の上部に設けた穀粒排出口14と、装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリ5,6を巻装するベルト11に一定間隔で取付けた複数のバケット10と、装置内にエアノズル(送風機)22とを備え、装置後部に設けた穀粒供給口13の上部にエアノズル22を備え、エアノズル22の送風角度が装置の後板3と底部移動樋20の後端との交差点を通る接線lに対して60度以上である。加えて、ベルトに形状の異なる底面を有するバケットを組み合わせ自在に備え、エアノズル22の送風口を送風方向に対して可動自在に備える。
【0034】
なお、穀粒供給口13の設置は装置後部に限定されるものではなく、装置前部または装置の前後部両方に設置してもよい。バケット10底面の形状は、上開き側面視略V字型や側面視波状に限定されず、エアノズル22の噴風を拡散する形状であればよい。また、エアノズル22の揺動は、垂直方向に限られず、水平方向または垂直水平両方向であってもよい。その場合、ステッピングモータ30を後板3上のエアノズル22下部に設ける。
【0035】
さらに、エアノズル22の噴射口24からの送風は、圧縮空気に限られず窒素などの不活性ガスを用いてもよい。
【0036】
ここで、バケット10内に掬われた穀粒は、バケット10がプーリ5の周囲を上昇側から下降側に転じたところで穀粒排出口14に排出されるため、そのときの遠心力により穀粒の一部がバケット10内で連れ周りを起こし、穀粒排出口14に排出されずに残留してしまう。このため、バケット式昇降機1の上部に可変速モータ(不図示)を設けることにより、揚穀作業終了後の残粒除去作業時にバケット10の周速を遅くさせることで、バケット10内の穀粒排出時における連れ周りを防ぎ、穀粒排出口14に排出することができる。
【0037】
穀粒排出口14と、この穀粒排出口14付近に位置するバケット10との間には穀粒取出口12が設けられているため、上記残粒除去作業時におけるバケット10の周速が遅すぎるなどで、バケット10内の穀粒が穀粒排出口14まで到達せずに落下する場合、その穀粒を穀粒取出口12により回収することができる。
【0038】
また、穀粒排出口14の上部には、エアノズル27の一端である噴射口28を穀粒排出口14の後板または側板に設けられた挿入部より挿入されているので、上記のような穀粒排出時において穀粒排出口14に排出されず遠心力により連れ回りを生じ、バケット10内に残留する穀粒に対して、噴射口28からの噴風によりその残粒を強制的に穀粒排出口14に排出することができる。
【0039】
以上詳述したように、この例のバケット式昇降機1は、装置の下部に設けた穀粒供給口13と、装置の上部に設けた穀粒排出口14と、装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリ5,6を巻装するベルト11に一定間隔で取付けた複数のバケット10と、装置内にエアノズル(送風機)22とを備え、装置後部に設けた穀粒供給口13の上部にエアノズル22を備え、エアノズル22の送風角度が装置の後板3と底部移動樋20の後端との交差点を通る接線lに対して60度以上である。加えて、バケット10を周速自在に備え、穀粒排出口14とその穀粒排出口14付近に位置するバケット10との間に穀粒取出口12を備え、穀粒排出口14の内部にエアノズル27を備える。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のバケット式昇降機の一例を示す縦断側面図である。
【図2】図1のバケット式昇降機の底部を拡大した縦断側面図である。
【図3】図1のバケット式昇降機の上部を拡大した縦断側面図である。
【図4】(a)と(b)は、図1のバケット式昇降機の底部の形状が異なるバケットの斜視図である。
【図5】ステッピングモータを取付けた図1のバケット式昇降機の(a)は底部背面図、(b)は底部を拡大した縦断側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 バケット式昇降機
2 前板
3 後板
4 左右側板
5,6プーリ
10,10a,10b バケット
11 ベルト
12 穀粒取出口
13 穀粒供給口
14 穀粒排出口
15 穀粒供給ホッパー
16 投入口
17 傾斜板
18,18a,18b 開口部
20 底部移動樋
21 上昇側
22,27 エアノズル
24,28 噴射口
26,29 送風管
30 ステッピングモータ
θ 送風角度
l 接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の下部に設けた穀粒供給口と、
前記装置の上部に設けた穀粒排出口と、
前記装置内の上部と下部にそれぞれ設けたプーリを巻装するベルトに一定間隔で取付けた複数のバケットと、
前記装置内に送風機とを備え、
前記穀粒供給口に供給した穀粒を前記バケットにより連続的に揚穀し、前記穀粒排出口で前記バケット内の前記穀粒を連続的に放擲するとともに、前記装置内下部の底部移動樋の底面に残粒した前記穀粒を前記送風機で除去するバケット式昇降機において、
前記装置の後部に前記穀粒供給口と、
前記装置の後部の前記穀粒供給口の上部に前記送風機とを備え、
前記送風機の送風角度が前記装置の後板と前記底部移動樋の後端との交差点を通る接線に対して60度以上であることを特徴とするバケット式昇降機。
【請求項2】
前記ベルトに形状の異なる底面を有する前記バケットを組み合わせ自在に備えることを特徴とする請求項1に記載のバケット式昇降機。
【請求項3】
前記送風機の送風口を送風方向に対して可動自在に備えることを特徴とする請求項1に記載のバケット式昇降機。
【請求項4】
前記バケットを周速自在に備えることを特徴とする請求項1に記載のバケット式昇降機。
【請求項5】
前記穀粒排出口と該穀粒排出口付近に位置する前記バケットとの間に穀粒取出口を備えることを特徴とする請求項1に記載のバケット式昇降機。
【請求項6】
前記穀粒排出口の内部に前記送風機を備えることを特徴とする請求項1に記載のバケット式昇降機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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