説明

バケット式穀物リフト装置

【課題】穀物の残留を抑えて効率の良い掬い取りを可能とするスクレーパバケットにより移送効率を確保した上で、バケット全体の重量低減とバケット構成の簡易化とを合わせて可能とするバケット式穀物リフト装置を提供する。
【解決手段】バケット式穀物リフト装置は、上下に配置した2つの支軸2,3間を周回する周回機構4と、この周回機構4の周回方向に沿って順次配設支持した複数のバケット22と、これらバケット22が掬い取って上送するべき粒状の穀物を投入する投入部6とから構成され、上記バケット22は、周回機構4に背面側を取付け支持可能な容器状の穀物受部11と、その前縁位置で投入部6に受けた穀物を掬い取るスクレーパ部23とから構成するとともに、このスクレーパ部23は、前端部に掬い面23aを備えて合成樹脂材により穀物受部11と一体に形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に周回するバケットにより粒状の穀物を掬い取って上送するバケット式穀物リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の記載例のように、上下に周回するバケットにより粒状の穀物を掬い取って高位置に移送投出するバケット式穀物リフト装置が知られている。この穀物リフト装置の構成は、上下配置の2つの支軸間を周回動作する無端平ベルトによる高揚程の周回機構に複数の大型バケットを順次配列したものであり、スクレーパ付きのバケットとスクレーパ無しのバケットとを混在配列して構成され、これら2種類のバケット配置を特定することにより、全体の重量を極力抑えて動力負荷の軽減を図るとともに、所定配置のスクレーパバケットで掬い取り時の穀物の残留を抑えて移送効率を確保することができる。特に、樹脂製で軽量なスクレーパ無しのバケットを適用することによって運転動力を最小限に抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記バケット式穀物リフト装置は、2種類の大型バケットを必要とし、特に、スクレーパバケットは、不錆鋼板製でスクレーパを含む多くの部材とその組付け調整のための工数の問題と、重量による大きな動力負荷が避けられず、製造コストおよび耐久性を含む運転コストの問題を内包していた。
【0005】
本発明の目的は、穀物の残留を抑えて効率の良い掬い取りを可能とするスクレーパバケットにより移送効率を確保した上で、バケット全体の重量低減とバケット構成の簡易化とを合わせて可能とするバケット式穀物リフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上下に配置した2つの支軸間を周回する周回機構と、この周回機構の周回方向に沿って順次配設支持した複数のバケットと、これらバケットが掬い取って上送するべき粒状の穀物を投入するための投入部とからなるバケット式穀物リフト装置において、上記バケットは、周回機構に背面側を支持可能な容器状の穀物受部と、この穀物受部の前縁位置で上記投入部に受けた穀物を掬い取るスクレーパ部とから構成するとともに、このスクレーパ部は、前端部に掬い面を備えて合成樹脂材により穀物受部と一体に形成してなることを特徴とする。
【0007】
上記バケット式穀物リフト装置は、穀物受部とスクレーパ部とを合成樹脂材によって一体形成した所定精度のスクレーパ付きのバケットを共通に取付けて構成される。
【0008】
請求項2の発明は、上下に配置した2つの支軸間を周回する周回機構と、この周回機構の周回方向に沿って順次配設支持した複数のバケットと、これらバケットが掬い取って上送するべき粒状の穀物を投入するための投入部とからなるバケット式穀物リフト装置において、上記バケットは、周回機構に背面側を支持可能な容器状の穀物受部と、この穀物受部の前縁位置で投入部に受けた穀物を掬い取る掬い面を前端部に備える別体構成のスクレーパとから構成するとともに、穀物受部は、スクレーパを所定位置に位置決め保持するスクレーパ取付面を合成樹脂材により一体に形成してなることを特徴とする。
【0009】
上記バケット式穀物リフト装置は、別体構成のスクレーパを穀物受部の取付面に取付けることによって所要精度のスクレーパ付きのバケットが構成され、スクレーパ無しのバケットを含めて共通の穀物受部によって構成される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によるバケット式穀物リフト装置は、全バケットについて穀物受部とスクレーパ部とを合成樹脂材によって一体形成した共通のスクレーパ付きのバケットにより構成が簡易化されることから、生産管理、製造工程の効率の向上を図ることができるとともに、各バケットのスクレーパによって穀物移送効率を確保しつつ、バケットの軽量化によって動力負荷を抑えた運転が可能となる。
【0011】
請求項2の発明により、上記バケット式穀物リフト装置は、別体構成のスクレーパを穀物受部の取付部に取付けることによって所定精度で位置決めされたスクレーパ付きのバケットが構成され、スクレーパ付きとスクレーパ無しのバケットのいずれについても主要部材が共通化されることから、バケット構成の簡易化による生産管理、製造工程の効率の向上を図ることができるとともに、簡易な構成で所要精度が確保できるスクレーパによって穀物移送効率を確保しつつ、バケットの軽量化によって動力負荷を抑えた運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】バケット式穀物リフト装置の第一の構成例の正面図(a)および側面図(b)
【図2】スクレーパ付きのバケットの上面図、正面図および断面側面図(a〜c)
【図3】バケットの背面図
【図4】一体バケットの正面図(a)および断面側面図(b)
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明のバケット式穀物リフト装置1は、図1の正面図(a)および側面図(b)に第一の構成例を示すように、上下に配置した支軸2,3間を周回する平ベルトによる周回機構4と、この周回機構の周回方向に沿って順次配置したスクレーパ付きのバケット5a…とスクレーパ無しのバケット5b…と、これらバケット5a,5bが掬い取って上送するべき粒状の穀物を投入する投入部6と、穀物を上位投出する投出部7とから構成される。下側の支軸3にはモータ3aを備えて周回機構4を駆動する。
【0014】
スクレーパ付きのバケット5aは、図2の上面図、正面図および断面側面図(a〜c)に示すように、周回機構4に取付け支持可能に形成したポリアミド樹脂等の合成樹脂製の穀物受部11と、その前縁位置で投入部6に受けた穀物を掬い取るスクレーパ部12とから構成する。
【0015】
穀物受部11は、上部を開口した容器状に形成し、その背面板11aには、図3の背面図に示すように、周回機構4に固定するための取付孔11b,11bを形成したスクレーパ無しのバケットであり、また、前縁まで立ち上がる傾斜底板11cには別体構成のスクレーパ14を所定精度で位置決めするスクレーパ取付面11dを形成する。
【0016】
スクレーパ14は、その前端に幅広の掬い面14aを備えて耐摩耗性の弾性樹脂材により別体に形成し、また、穀物受部11のスクレーパ取付面11dを貫通してビス孔11e,11eを形成し、スクレーパ14に副板14bを当ててビス13で固定することにより所要精度で位置決め固定することができる。このようにしてスクレーパ付きのバケット5aを構成し、また、穀物受部11をそのまま用いてスクレーパ14の取付け無しのバケット5bを構成する。
【0017】
上記構成のバケット式穀物リフト装置1は、穀物受部11を共通にしてスクレーパ付きとスクレーパ無しの両バケット5a,5bが構成されるとともに、所要精度のスクレーパ部12を簡易に構成することができることから、最小限度の部材により所要精度で効率よく製造することができ、また、所要配置のスクレーパ14により、最小限の重量で効率良く穀物を掬い取って上送することができる。
【0018】
次に、本発明のバケット式穀物リフト装置の第二の構成例について説明する。なお、以下において、前記同様の部材は、その符号を付すことにより説明を省略する。
第二の構成例の穀物リフト装置は、前記穀物リフト装置の二種類のバケット5a,5bの代わりに、その全てをスクレーパが一体の共通のバケット22…を用い、これら共通のバケット22…を周回機構4の周回方向に沿って順次配置して構成する。
【0019】
詳細には、各バケット22は、図4の正面図(a)および断面側面図(b)に示すように、上部を開口した容器状に穀物受部11を形成し、その傾斜底板11cの前縁位置にスクレーパ部23を突出してポリアミド樹脂等の合成樹脂材により一体に構成する。スクレーパ部23の前端には所要精度で幅広の掬い面23aを一体に形成する。
【0020】
このように構成した穀物リフト装置は、穀物受部11とスクレーパ部23とが合成樹脂材によって一体に形成されたスクレーパ付きのバケット22を全数用いて構成することができ、簡易な構成のバケット22のスクレーパ部23により穀物を効率良く掬い取って上送することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 バケット式穀物リフト装置
2 支軸
3 支軸
4 周回機構
5a スクレーパバケット
5b バケット
6 投入部
7 投出部
11 穀物受部
11a 背面板
11b 取付孔
11c 傾斜底板
11d スクレーパ取付面
11e ビス孔
12 スクレーパ部
12a 掬い面
14 スクレーパ
22 バケット
23 スクレーパ部
23a 掬い面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に配置した2つの支軸間を周回する周回機構と、この周回機構の周回方向に沿って順次配設支持した複数のバケットと、これらバケットが掬い取って上送するべき粒状の穀物を投入するための投入部とからなるバケット式穀物リフト装置において、
上記バケットは、周回機構に背面側を支持可能な容器状の穀物受部と、この穀物受部の前縁位置で上記投入部に受けた穀物を掬い取るスクレーパ部とから構成するとともに、このスクレーパ部は、前端部に掬い面を備えて合成樹脂材により穀物受部と一体に形成してなることを特徴とするバケット式穀物リフト装置。
【請求項2】
上下に配置した2つの支軸間を周回する周回機構と、この周回機構の周回方向に沿って順次配設支持した複数のバケットと、これらバケットが掬い取って上送するべき粒状の穀物を投入するための投入部とからなるバケット式穀物リフト装置において、
上記バケットは、周回機構に背面側を支持可能な容器状の穀物受部と、この穀物受部の前縁位置で投入部に受けた穀物を掬い取る掬い面を前端部に備える別体構成のスクレーパとから構成するとともに、穀物受部は、スクレーパを所定位置に位置決め保持するスクレーパ取付面を合成樹脂材により一体に形成してなることを特徴とするバケット式穀物リフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−188186(P2012−188186A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51113(P2011−51113)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000113919)マルマス機械株式会社 (10)
【Fターム(参考)】