説明

バスバー成型用金型及びこのバスバー成型用金型を用いたバスバー製造方法

【課題】バスバーの成型にかかるコストを低減することができるバスバー成型用金型及びこのバスバー成型用金型を用いたバスバー製造方法を提供する。
【解決手段】一対の導通部材3,5とこの一対の導通部材3,5間を接続する上流可溶体7とが設けられた上流側可溶体部9と、一対の導通部材3,5と複数の端子部11とを接続する複数の下流可溶体13が設けられた下流側可溶体部15と、一対の導通部材3,5と一体的に設けられ接続用の孔部17,19が設けられた固定部21,21とを備えたバスバー23を成型するバスバー成型用金型1において、上流側可溶体部9を成型する上流側金型25と、下流側可溶体部15を成型する下流側金型27と、固定部21,21を成型する固定部金型29,29とを、所定の位置に配置してバスバー23を成型し、上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とを、バスバー23の所望の形状に合わせて交換可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー成型用金型及びこのバスバー成型用金型を用いたバスバー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バスバーとしては、一対の導通部材としての連結プレート部とこの一対の連結プレート部間を接続する上流可溶体とが設けられた上流側可溶体部と、一対の連結プレート部と複数の端子部とを接続する複数の下流可溶体が設けられた下流側可溶体部と、一対の連結プレート部と一体的に設けられ接続用の孔部が設けられた固定部とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このバスバーは、一対の導通部材と端子部とを金属板からくり抜いて連鎖状導体とさせ、この連鎖状導体をばらばらに分離した後、樹脂で覆うインサート成形を施し、可溶体を所定の位置に配置させて複合型ヒュージブルリンクとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−62085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のようなバスバーは、共通部品として多車種に展開されることが望ましく、多車種に共通部品として展開できるのであれば、バスバーを成型する金型も1種類で済む。
【0006】
しかしながら、バスバーが、例えば、高定格容量やバッテリの直上に配置される場合には、各車両毎の電流値やスペース要件があるため、同じバスバーを多車種に適用することができず、1車種に対して1種類のバスバーを適用している。加えて、同車種であっても、ハンドルの左右が異なる車両があり、このような場合にも、異なる種類のバスバーを適用している。
【0007】
このため、複数種類のバスバーを成型するためには、僅かなバスバーの構造の違いであっても、このバスバーと同数の金型を用いる必要があり、バスバー成型用金型にかかるコストが増加していた。
【0008】
そこで、この発明は、バスバーの成型にかかるコストを低減することができるバスバー成型用金型及びこのバスバー成型用金型を用いたバスバー製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、一対の導通部材とこの一対の導通部材間を接続する上流可溶体とが設けられた上流側可溶体部と、前記一対の導通部材と複数の端子部とを接続する複数の下流可溶体が設けられた下流側可溶体部と、前記一対の導通部材と一体的に設けられ接続用の孔部が設けられた固定部とを備えたバスバーを成型するバスバー成型用金型であって、前記上流側可溶体部を成型する上流側金型と、前記下流側可溶体部を成型する下流側金型と、前記固定部を成型する固定部金型とを有し、前記上流側金型と前記下流側金型と前記固定部金型とは、所定の位置に配置されて前記バスバーを成型し、前記上流側金型と前記下流側金型と前記固定部金型とは、前記バスバーの所望の形状に合わせて交換可能であることを特徴とする。
【0010】
このバスバー成型用金型では、上流側金型と下流側金型と固定部金型とがバスバーの所望の形状に合わせて交換可能であるので、バスバーの変更部分の金型のみを交換することによって、所望のバスバーを成型させることができ、変更しない部分の金型を無駄に作製することがない。
【0011】
従って、このようなバスバー成型用金型では、多種多様なバスバーに対して変更部分の金型のみを交換すればよく、バスバーの成型にかかるコストを低減することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のバスバー成型用金型であって、前記上流側金型は、前記上流側可溶体部における前記上流可溶体の位置を変更可能とすることを特徴とする。
【0013】
このバスバー成型用金型では、上流側金型が上流側可溶体部における上流可溶体の位置を変更可能とするので、上流側金型のみを交換することによって、同一車種における右ハンドル車と左ハンドル車に適用されるバスバーを成型することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、バスバーの一対の導通部材とこの一対の導通部材間を接続する上流可溶体とが設けられた上流側可溶体部を成型する上流側金型と、前記バスバーの前記一対の導通部材と複数の端子部とを接続する複数の下流可溶体が設けられた下流側可溶体部を成型する下流側金型と、前記バスバーの前記一対の導通部材と一体的に設けられ接続用の孔部が設けられた固定部を成型する固定部金型とを備えたバスバー成型用金型のバスバー製造方法であって、前記バスバーの所望の形状に合わせて前記上流側金型と前記下流側金型と前記固定部金型とを選択する第1行程と、この第1行程で選択された前記上流側金型と前記下流側金型と前記固定部金型とを所定の位置に配置させる第2行程と、この第2行程で配置された前記上流側金型と前記下流側金型と前記固定部金型とに対してバスバーの素材を配置させ、前記バスバーを成型させる第3行程とを有することを特徴とする。
【0015】
このバスバー製造方法では、上流側金型と下流側金型と固定部金型とをバスバーの所望の形状に合わせて選択するので、各金型の選択によって多種多様なバスバーを成型することができ、バスバーの成型にかかるコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バスバーの成型にかかるコストを低減することができるバスバー成型用金型及びこのバスバー成型用金型を用いたバスバー製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係るバスバー成型用金型とバスバーの上面図である。(b)は本発明の実施の形態に係るバスバー成型用金型の概略図である。
【図2】(a)は本発明の実施の形態に係るバスバー成型用金型の一例の上流側金型によって成型されたバスバーの上面図である。(b)は本発明の実施の形態に係るバスバー成型用金型の他例の上流側金型によって成型されたバスバーの上面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るバスバー成型用金型の一例の固定部金型によって成型されたバスバーの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図3を用いて本発明の実施の形態に係るバスバー成型用金型及びこのバスバー成型用金型を用いたバスバー製造方法について説明する。
【0019】
本実施の形態に係るバスバー成型用金型1は、一対の導通部材3,5とこの一対の導通部材3,5間を接続する上流可溶体7とが設けられた上流側可溶体部9と、一対の導通部材3,5と複数の端子部11とを接続する複数の下流可溶体13が設けられた下流側可溶体部15と、一対の導通部材3,5と一体的に設けられ接続用の孔部17,19が設けられた固定部21,21とを備えたバスバー23を成型する。
【0020】
また、バスバー成型用金型1は、上流側可溶体部9を成型する上流側金型25と、下流側可溶体部15を成型する下流側金型27と、固定部21,21を成型する固定部金型29,29とを有する。
【0021】
さらに、上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とは、所定の位置に配置されてバスバー23を成型する。
【0022】
そして、上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とは、バスバー23の所望の形状に合わせて交換可能である。
【0023】
また、上流側金型25は、上流側可溶体部9における上流可溶体7の位置を変更可能とする。
【0024】
さらに、このようなバスバー成型用金型1のバスバー製造方法は、バスバー23の所望の形状に合わせて上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とを選択する第1行程と、この第1行程で選択された上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とを所定の位置に配置させる第2行程と、この第2行程で配置された上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とに対してバスバー23の素材を配置させ、バスバー23を成型させる第3行程とを有する。
【0025】
図1〜図3に示すように、バスバー23は、導電性材料からなり、上流側可溶体部9と、複数の端子部11と、下流側可溶体部15と、固定部21とを備えている。上流側可溶体部9は、一対の導通部材3,5と、上流可溶体7とからなる。
【0026】
一対の導通部材3,5は、車両に搭載されたバッテリなどの電源に接続され、複数の端子部11に電源からの電力を供給する。この一対の導通部材3,5間には、上流可溶体7が設けられている。
【0027】
上流可溶体7は、一対の導通部材3,5間を接続し、一対の導通部材3,5を流れる比較的大きな過電流によって溶断する大容量ヒューズとなっている。この上流可溶体7によって接続された一対の導通部材3,5は、複数の端子部11に電力を供給する。
【0028】
複数の端子部11は、車両に搭載された電子部品などに接続されたワイヤハーネスなどの導通部材(不図示)が接続される孔部からなる接続部31が形成され、電源からの電力を電子部品などに供給する。この複数の端子部11と一対の導通部材3,5との間には、下流側可溶体部15が設けられている。
【0029】
下流側可溶体部15は、複数の下流可溶体13からなる。複数の下流可溶体13は、一対の導通部材3,5と複数の端子部11との間を接続し、電源と電子部品との間を流れる過電流によって溶断するヒューズとなっている。この複数の下流可溶体13によって複数の端子部11と接続された一対の導通部材3,5には、固定部21が設けられている。
【0030】
固定部21は、一対の導通部材3,5にそれぞれ設けられ、一対の導通部材3,5に設けられた孔部17,19を備えている。孔部17,19は、一対の導通部材3,5の上流側可溶体部9からそれぞれ外側に延設された部分に設けられている。この孔部17,19には、ボルトなどの固定手段(不図示)が挿通され、電源に固定されると共に電源と一対の導通部材3,5とが電気的に接続される。
【0031】
このように構成されたバスバー23は、バスバー成型用金型1によって成型された後、樹脂33でモールド成型されてヒュージブルリンクユニットとなる。このヒュージブルリンクユニットを電源ボックスなどに配置させることにより、電源と電子部品とがヒューズ機能を備えたバスバー23を介して接続される。このようなバスバー23は、バスバー成型用金型1によって成型される。
【0032】
バスバー成型用金型1は、上流側金型25と、下流側金型27と、固定部金型29とを備えている。上流側金型25は、バスバー23の上流側可溶体部9を成型する。この上流側金型25は、上流可溶体7を搭載される車種の定格電流値で溶断するように設定する。この上流可溶体7の設定変更により、多車種に対応することができる。また、上流側金型25は、図2に示すように、上流側可溶体部9の一対の導通部材3,5における上流可溶体7の位置を変更可能としている。この上流可溶体7の位置変更により、同一車種における右ハンドル車と左ハンドル車とのそれぞれの回路に対応することができる。
【0033】
下流側金型27は、バスバー23の下流側可溶体部15を成型する。この下流側金型27は、複数の下流可溶体13を搭載される車種の電子部品の定格電流値で溶断するように設定する。この複数の下流可溶体13の設定変更により、多車種に対応することができる。
【0034】
固定部金型29は、バスバー23の固定部21を成型する。この固定部金型29は、図3に示すように、一対の導通部材3,5の固定部21における長さLや一対の導通部材3,5の固定部21における孔部17,19の位置を搭載される車種の電源に合わせて設定する。この一対の導通部材3,5の固定部21における長さLや孔部17,19の位置の設定変更により、様々な電源への取付形態に対応することができる。なお、この固定部金型29による固定部21の成型においては、一対の導通部材3,5の固定部21における長さLのみ、もしくは孔部17,19の位置のみの設定であってもよい。
【0035】
このような上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とは、例えば、図1(b)の矢印で示すように、バスバー23の素材の搬送方向に対して直列に配置され、搬送されるバスバー23の素材を成型し、所望の形状のバスバー23を製造する。なお、上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29との搬送方向の上流及び下流には、バスバー23の素材や所望の形状となったバスバー23に加工を施す複数の共用金型35が配置されている。
【0036】
このように配置される上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とは、それぞれがカセット状に交換可能であり、搭載される車種に合わせて変更部分のみが他の金型に交換され、バスバー23を所望の形状に成型する。なお、図1(b)では、上流側金型25のみを交換する場合が示してあるが、他の金型についても同様に交換することができる。
【0037】
このように上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とを交換可能とすることにより、バスバー23の変更部分のみを交換すればよく、多くの車種にバスバー成型用金型1を適用することができる。また、バスバー23の変更部分のみの金型作製となるので、変更しない部分の金型を作製する必要がなく、金型にかかるコストを削減することができる。加えて、無駄に大きな金型を作製することがないので、金型の保管スペース、金型のメンテナンス費や管理費なども削減することができる。
【0038】
このようなバスバー成型用金型1によるバスバー23の製造方法は、まず、搭載される車種に合わせたバスバー23の形状となるように、上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とを選択する。(第1行程)
次に、選択された上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とを、図1(b)に示すように、バスバー23の搬送方向に対して直列に配置する。(第2行程)
そして、直列に配置された上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とに対して、バスバー23の素材を搬送方向の上流に配置させ、バスバー23の素材を搬送して順次各金型によってバスバー23の素材を成型し、所望の形状のバスバー23を成型させる。(第3行程)
このようなバスバー成型用金型1では、上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とがバスバー23の所望の形状に合わせて交換可能であるので、バスバー23の変更部分の金型のみを交換することによって、所望のバスバー23を成型させることができ、変更しない部分の金型を無駄に作製することがない。
【0039】
従って、このようなバスバー成型用金型1では、多種多様なバスバー23に対して変更部分の金型のみを交換すればよく、バスバー23の成型にかかるコストを低減することができる。
【0040】
また、上流側金型25は、上流側可溶体部9における上流可溶体7の位置を変更可能とするので、上流側金型25のみを交換することによって、同一車種における右ハンドル車と左ハンドル車に適用されるバスバー23を成型することができる。
【0041】
さらに、バスバー成型用金型1のバスバー製造方法では、上流側金型25と下流側金型27と固定部金型29とをバスバーの所望の形状に合わせて選択するので、各金型の選択によって多種多様なバスバー23を成型することができ、バスバー23の成型にかかるコストを低減することができる。
【0042】
なお、本発明の実施の形態に係るバスバー成型用金型では、上流側金型と下流側金型と固定部金型とを有しているが、これに限らず、車両毎に変更が予想されるバスバーの箇所を可能な限り分割し、これら分割箇所を成型することができる複数の金型を交換可能としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…バスバー成型用金型
3,5…一対の導通部材
7…上流可溶体
9…上流側可溶体部
11…端子部
13…下流可溶体
15…下流側可溶体部
17,19…孔部
21…固定部
23…バスバー
25…上流側金型
27…下流側金型
29…固定部金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の導通部材とこの一対の導通部材間を接続する上流可溶体とが設けられた上流側可溶体部と、前記一対の導通部材と複数の端子部とを接続する複数の下流可溶体が設けられた下流側可溶体部と、前記一対の導通部材と一体的に設けられ接続用の孔部が設けられた固定部とを備えたバスバーを成型するバスバー成型用金型であって、
前記上流側可溶体部を成型する上流側金型と、前記下流側可溶体部を成型する下流側金型と、前記固定部を成型する固定部金型とを有し、前記上流側金型と前記下流側金型と前記固定部金型とは、所定の位置に配置されて前記バスバーを成型し、
前記上流側金型と前記下流側金型と前記固定部金型とは、前記バスバーの所望の形状に合わせて交換可能であることを特徴とするバスバー成型用金型。
【請求項2】
請求項1記載のバスバー成型用金型であって、
前記上流側金型は、前記上流側可溶体部における前記上流可溶体の位置を変更可能とすることを特徴とするバスバー成型用金型。
【請求項3】
バスバーの一対の導通部材とこの一対の導通部材間を接続する上流可溶体とが設けられた上流側可溶体部を成型する上流側金型と、前記バスバーの前記一対の導通部材と複数の端子部とを接続する複数の下流可溶体が設けられた下流側可溶体部を成型する下流側金型と、前記バスバーの前記一対の導通部材と一体的に設けられ接続用の孔部が設けられた固定部を成型する固定部金型とを備えたバスバー成型用金型のバスバー製造方法であって、
前記バスバーの所望の形状に合わせて前記上流側金型と前記下流側金型と前記固定部金型とを選択する第1行程と、この第1行程で選択された前記上流側金型と前記下流側金型と前記固定部金型とを所定の位置に配置させる第2行程と、この第2行程で配置された前記上流側金型と前記下流側金型と前記固定部金型とに対してバスバーの素材を配置させ、前記バスバーを成型させる第3行程とを有することを特徴とするバスバー製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−93217(P2013−93217A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234686(P2011−234686)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】