説明

バスレフ型無指向性スピーカー

【課題】従前のバスレフ型スピーカーに比べて低中音域の音質を向上させ、さらに無指向性を示すバスレフ型無指向性スピーカーが望まれていた。
【解決手段】本発明に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、スピーカーと、両端に開口部を有する筒状の筐体と、筐体の内寸よりも小さい寸法の柱状部材を備え、筐体の一方の開口部にはスピーカーが取り付けられ、筐体の他方の開口部には柱状部材が筐体との間に筒状の隙間を形成するように取り付けられることによって、筒状の隙間をダクトとして機能させ、他方の開口部をポートとして機能させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスレフ型無指向性スピーカーに係り、さらに詳しくは、従前のバスレフ型スピーカーに比べて低中音域の音質を向上させ、さらに無指向性を示すバスレフ型スピーカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヘルムホルツの共鳴理論に基づいて、図15に示すようなエンクロージャーと呼ばれる筐体に設けた筒状のダクトと孔状のポートを用いて、スピーカー背面から出る音の中でも特に低音域の音を増幅させるバスレフ型スピーカーは知られており、特許文献1〜4にはダクトやポートを様々な形状、位置にしたバスレフ型スピーカーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−70198号公報
【特許文献2】特表平4−235500号公報
【特許文献3】特開平8−140177号公報
【特許文献4】特開2009−5180号公報
【特許文献5】特開2002−10383号公報
【特許文献6】特開2004−72140号公報
【特許文献7】特許第4262291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜4に記載されているような従来タイプのバスレフ型スピーカーは、いずれもダクトおよびポートが一方向にしか設けられていないことから、どうしても指向性が存在してしまうという欠点があった。
また、スピーカー背面から筐体内部に放出された音(音波や音に起因する空気の流れ)は、ダクト周辺において乱流を発生させてしまうことから、かかる乱流によってスピーカー背面から筐体内部に放出された音がスムースにダクトを通じてポートから筐体外部に放出されず、その結果ヘルムホルツの共鳴理論から導き出される理論値には程遠いレベルの増幅効果しか得られず、増幅性能の点においても不十分であるという欠点があった。
【0005】
一方、バスレフ型スピーカーとは別の種類のスピーカーに分類されるが、バックロードホーン型と呼ばれるスピーカーにおいては、特許文献5および特許文献6に示すように、スピーカー背面から出る音を縦長形状のホーン筐体下部から放出するスピーカーが開示されている。
【0006】
しかしながら、バックロードホーン型のように単純なホーン状の筐体を用いるスピーカーであれば、特許文献5および特許文献6に示すように、スピーカー背面から出る音をホーン筐体の下部から放出させることによって無指向性については実現することは可能であるものの、ダクトとポートを有していないことから、低音域の音の増幅効果を実現させることできないという欠点があった。
また、ダクトとポートを必要とするバスレフ型スピーカーにおいては、特許文献5および特許文献6に記載されている、単純な筒状の筐体を用いるという考え方をそのまま流用することはできないことから、筐体の下部にダクトとポートを設け、なおかつ無指向性を実現するバスレフ型スピーカーを作製することは困難となっていた。
【0007】
ここで、特許文献7には、スピーカー背面から出る音を筒状の筐体下部から放出する「パイプ型」と記載されたスピーカーが開示されている。
しかしながら、当該スピーカーにおいても、特許文献5および特許文献6と同様に、スピーカー背面から出る音を筐体の下部から放出させて無指向性を実現することは可能(特許文献7の図1参照)であるものの、筐体内部に設置された吸音材はスピーカーの背面近傍の位置にまで接近した状態で設置されていたり(特許文献7の図1参照)、または吸音材がスピーカー背面に接続されていたりするものである(特許文献7の図2参照)。
従って、当該スピーカーにおいては、筐体の下部にダクトに相当する部分がないことから、バスレフ型スピーカーとしての機能を発現するものではなく、低音域の音を増幅させることは困難であった。
【0008】
以上のことから現在に至るまで、無指向性を有し、なおかつ低中音域の音質の向上を実現したバスレフ型スピーカーは開発されていなかった。
【0009】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、従前のバスレフ型スピーカーに比べて低中音域の音質を向上させ、さらに無指向性を示すバスレフ型無指向性スピーカーの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、スピーカーと、両端に開口部を有する筒状の筐体と、筐体の内寸よりも小さい寸法の柱状部材を備え、筐体の一方の開口部にはスピーカーが取り付けられ、筐体の他方の開口部には柱状部材が筐体との間に筒状の隙間を形成するように取り付けられることによって、筒状の隙間をダクトとして機能させ、他方の開口部をポートとして機能させることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、柱状部材に、板状部材が接続されており、かつ板状部材が他方の開口部との間にスピーカーの背面から生じる音を放射状に放出する隙間を形成するように取り付けられることによって、筒状の隙間をダクトとして機能させ、隙間をポートとして機能させることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、柱状部材が、さらに筐体および板状部材との間に、筒状の隙間および隙間を形成し、かつ筐体の傾倒を防止するための複数の側面視L字状のスペーサー部を備えたものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、筐体の中心軸と柱状部材の中心軸が、同一軸であることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、筐体および柱状部材の中心軸方向に対する垂直な断面において、筐体内部の断面積と柱状部材の断面積との差が、1cm〜80cmであることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、筐体の他方の開口部の端部と板状部材との間に形成される隙間が、3mm以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、柱状部材の形状が、円柱状、楕円柱状、角柱状、略円柱状、略楕円柱状、略角柱状、円錐状、角錐状、半球状あるいはこれらの形状の組み合わせであることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項8に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、筐体の形状が、円筒状、楕円筒状、角筒状、略円筒状、略楕円筒状、略角筒状、円錐状、角錐状あるいはこれらの形状の組み合わせであることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項9に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、筐体が、竹筒であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るバスレフ型無指向性スピーカーによれば、従前のバスレフ型スピーカーに比べて低中音域の音質を向上させ、さらに無指向性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るバスレフ型無指向性スピーカーの第1の実施の形態を示す模式図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図1のバスレフ型無指向性スピーカーに用いられる台座を示す模式図である。
【図4】図2のA−A‘部の切断面を示す図である。
【図5】本発明に係るバスレフ型無指向性スピーカーの第2の実施の形態を示す模式図である。
【図6】図5の断面図である。
【図7】図6のB−B‘部の切断面を示す図である。
【図8】本発明に係るバスレフ型無指向性スピーカーの第3の実施の形態を示す模式図である。
【図9】図8の断面図である。
【図10】図9のC−C‘部の切断面を示す図である。
【図11】参考例のバスレフ型無指向性スピーカーを示す模式図である。
【図12】図11の断面図である。
【図13】図12のD−D‘部の切断面を示す図である。
【図14】実施例および参考例のバスレフ型無指向性スピーカーの周波数特性を示す模式図である。
【図15】従来のバスレフ型スピーカーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる各実施の形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
【0022】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態に係るバスレフ型無指向性スピーカー1aの構成を説明する。図1は本発明に係るバスレフ型無指向性スピーカーの第1の実施の形態を示す模式図であり、図2は図1の断面図であり、図3は図1のバスレフ型無指向性スピーカーに用いられる台座を示す模式図であり、図4は図2のA−A‘部の切断面を示す図である。
本実施形態のバスレフ型無指向性スピーカー1aは、図1および図2に示すように、スピーカー2、筒状の筐体3、台座4によって構成されており、筐体3の一方の開口部5aにはスピーカー2が取り付けられ、他方の開口部5bには台座4が取り付けられた構造となっている。
台座4は、図1および図2に示すように、主に柱状部材6と板状部材8によって構成されている。そして、柱状部材6が他方の開口部5bに対して筐体3との間に筒状の隙間7を形成し、板状部材8が他方の開口部5bとの間にスピーカー2の背面から筐体3内部に生じる音を放射状に放出する隙間9を形成するように取り付けられている。
【0023】
なお、第1の実施の形態のバスレフ型無指向性スピーカー1aは、柱状部材6が側面視L字状のスペーサー部10を備えていることから、筐体3は台座4にはめ込まれるように取り付けられることで、スペーサー部10aによって傾倒が防止されつつ、スペーサー部10b上に載置された状態となっているが、単純に嵌合するような状態で取り付けるだけではなく、接着やビスなどによって筐体3と台座4を固定してもよい。
【0024】
次に、各構成要件について説明する。
【0025】
(スピーカー)
スピーカー2については公知のものを使用する。また、スピーカーの配線は筐体3の内面に沿って配設され、後記する隙間9から取り出されてアンプ(図示せず)やプレーヤー(図示せず)などに接続される。
また、スピーカー3の上部にはスピーカー3の正面から出る音を放射状に拡散させるためのコーンやディフューザーなどを設けるようにしてもよい。
【0026】
(筐体)
本発明における筐体3は両端に開口部5を有する筒であり、内寸が後記する柱状部材6よりも大きいものが使用される。
【0027】
筐体3の形状については、本実施形態のバスレフ型無指向性スピーカー1aは円筒状のものを使用しているが、内部が空洞になっていれば特に形状には限定されず、円筒状、楕円筒状、角筒状、略円筒状、略楕円筒状、略角筒状、円錐状、角錐状など各種の形状のものを使用することができる。なお、角筒状、略角筒状、角錐状については、各種の多角形の形状のものを含む意である。
【0028】
筐体3の材質についても特に限定されるものではなく、木製、竹製、金属製、プラスチック製など各種の材質のものを使用することができるが、それらの中でも以下の点などから竹筒を用いると好適である。
天然の材料である竹筒は内面および外面が波打った形状を形成しており、さらに節があったり、内面および外面の表面には細かな凹凸が存在している状態となっている。従って、かかる不連続な面がスピーカー2背面から生じた音を乱反射させることから、パイプ鳴りなどの定在波の発生を抑制する効果を発現させることができる。
また、バスレフ型に限らず、スピーカー装置はスピーカー部分のみが振動し、それを支える筐体自体は振動しないことが理想であるところ、竹は材料として硬いことから、他の材料よりも筐体自体の振動を抑制することができる。
また、竹筒を使用することによって意匠面においても優れたものとなる。
さらに、竹を使用することで近年荒廃が著しい竹林の整備にも貢献することができる。
【0029】
なお、筐体3の内面には、別途吸音材などを設けることもできる。
【0030】
(台座、柱状部材、板状部材)
本発明における台座4は、筐体3内部との間に筒状の隙間7を形成させるための柱状部材6と、他方の開口部5bとの間にスピーカー2背面から生じる音を放射状に放出する隙間9を形成するとともにバスレフ型無指向性スピーカー1aを床や地面に縦立または正立させるための板状部材8の2つの部位を少なくとも有するものが使用される。
なお、本実施形態においては、図3に示すように、筐体3と柱状部材6および板状部材8との間に筒状の隙間7および隙間9を形成し、かつ筐体の傾倒を防止するための側面視L字状のスペーサー部10が複数個設けられている。
また、柱状部材6については、内部を中空状にすることもでき、それによって筐体3内部との間に筒状の隙間7を形成するためだけではなく、スピーカーを制御にする回路などを収納する容器として使用できるという利点がある。
【0031】
柱状部材6の形状については、本実施形態のバスレフ型無指向性スピーカー1aは円柱状のものを使用しているが、筐体と柱状部材との間に筒状の隙間7を形成するようになっていれば特に形状には限定されず、円柱状、楕円柱状、角柱状、略円柱状、略楕円柱状、略角柱状、円錐状、角錐状、半球状など各種の形状のものを使用することができる。ここで、角筒状、略角筒状、角錐状については、各種の多角形の形状のものを含む意である。
また、筐体3と柱状部材6との間に筒状の隙間7が形成される必要があることから、柱状部材6の大きさは筐体の内寸よりも小さいことが必要である。
【0032】
板状部材8の形状については、筐体3と柱状部材6との間に筒状の隙間7を形成するようになっていればその他の形状は特に限定されず、板状部材8の下に足部(図示せず)などを設けることもできるが、図5に示すように板状のものとするとバスレフ型無指向性スピーカー1aを安定して床や地面に縦立または正立させることができるとともに、スピーカー2の背面から生じる音を筐体3内部から放射状に放出することを外観からはわかりづらくすることができ、また意匠面においても優れたものとなることから好適である。
【0033】
また、必要に応じて設けることができるスペーサー部10の形状については、筐体3と柱状部材6との間に筒状の隙間7を形成するようになっていればその他の形状は特に限定されないが、図1および図2に示すように側面視L字状のものとすると、上記の通り、スピーカー2の背面から生じる音を筐体3内部から放射状に放出することができるとともに、筐体3の傾倒を防止することができるので好適である。
【0034】
柱状部材6、板状部材8、スペーサー部10の材質については、筐体3と同様に特に限定されるものではなく、木製、竹製、金属製、プラスチック製など各種の材質のものを使用することができる。
【0035】
さらに、柱状部材6、板状部材8、スペーサー部10には、筐体3と同様に別途吸音材などを設けることもできる。
【0036】
(筒状の隙間)
本発明のバスレフ型無指向性スピーカーは、上記の通り、筐体3内部と柱状部材6との間に筒状の隙間7が形成されていることを特徴とする。
この筒状の隙間7は、バスレフ型無指向性スピーカーのダクトの役目を果たすことから、筐体3および柱状部材6の中心軸方向に対する垂直断面視における隙間が筒状になっていれば、その隙間の大きさや幅に差が生じていても特段問題になることはないが、できれば隙間の大きさや幅に極端な違いがない、ある程度の均一性を有することが好ましい。従って、筐体3の中心軸と柱状部材6の中心軸が同一軸であることが好適である。
【0037】
筒状の隙間7の大きさ(面積)については、バスレフ型無指向性スピーカーの大きさや増幅させたい音域などによって適宜決定されるものである。
ここで、バスレフ型スピーカーはヘルムホルツの共鳴理論を用いて低音域の音を増幅させるスピーカーであり、その共振周波数はダクトの断面積、ダクトの長さ、筐体の容積、スピーカーの特性によって決定されるものであるところ、同じ筐体とスピーカーを使用する限り、筐体の容積とスピーカーの特性については本発明のバスレフ型無指向性スピーカーにおいても従来のバスレフ型スピーカーと同じである。
従って、本発明のバスレフ型無指向性スピーカーにおいては、筒状の隙間7がダクトの役目を果たすことから、共振周波数は、ダクトの面積に相当する筐体3内部の断面積と柱状部材6の断面積の差と、柱状部材6の高さによって決定されることになる。すなわち、図4に示すように筐体3の内径をr1、柱状部材6の半径をr2、柱状部材6の長さをh1とすると、その共振周波数はπ(r1)−π(r2)とh1によって決定されることになる。なお、本実施例においては、柱状部材6がスペーサー部10を備えていることから、ダクトに相当する面積は正確にはπ(r1)−π(r2)から更にスペーサー部の断面積を引いた面積となるが、本実施形態のようにスペーサー部10の断面積に対してπ(r1)−π(r2)が十分に大きい場合には、スペーサー部10の断面積を考慮することなくバスレフ型無指向性スピーカーを作製することができる。
そして、この中でも筐体3および柱状部材6の中心軸方向に対する垂直な断面視における筐体3内部の断面積と柱状部材6の断面積との差が1cm〜80cmであることが好ましく、より好ましくは7cm〜40cmであり、さらに好ましくは10cm〜20cmである。
また、柱状部材6の高さは、1cm〜50cmであることが好ましく、より好ましくは5cm〜20cmである。
【0038】
(隙間)
次に、他方の開口部5bと板状部材8との間に形成される隙間9は、バスレフ型無指向性スピーカーのポートの役目を果たすものであり、図1〜図4に示すようなスリット状の形態を採用すれば、放射状に音を放出することができることから無指向性を実現することができ好適である。なお、特に無指向性を必要としない場合には、隙間9は一方向にのみ開口することもできる。
【0039】
隙間9の大きさ(幅)については、筒状の隙間7の大きさと同様、バスレフ型無指向性スピーカーの大きさや増幅させたい音域などによって適宜決定されるものであるが、筐体の他方の開口部の端部と板状部材との間に形成される隙間が、3mm以上であることが好ましく、より好ましくは5mm〜500cmであり、さらに好ましくは10mm〜200mmである。
【0040】
なお、隙間9の大きさ(幅)は筒状の隙間7の幅よりも長い方が好ましい。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係るバスレフ型無指向性スピーカー1bの構成を説明する。図5は本発明に係るバスレフ型無指向性スピーカーの第2の実施の形態を示す模式図であり、図6は図5の断面図であり、図7は図6のB−B‘部の切断面を示す図である。
【0042】
本実施形態のバスレフ型無指向性スピーカー1bは、図5および図6に示すようにスペーサー部10を備えずに、別途、ステーや金具などの治具11を用いて筒状の隙間7および隙間9が形成されている以外は、第1の実施の形態のバスレフ型無指向性スピーカー1aと同じ構成を有している。このような形態を採用することによっても、ダクトとポートに相当する筒状の隙間7と隙間9を形成することができることから本発明のバスレフ型無指向性スピーカーを作製することができる。
【0043】
なお、本実施形態においても、第1の実施の形態のバスレフ型無指向性スピーカー1aの場合と同様に、その共振周波数は、図7に示すようにπ(r1)−π(r2)とh1によって決定されることになり、治具11の断面積に対してπ(r1)−π(r2)が十分に大きい場合には、治具11の断面積を考慮することなくバスレフ型無指向性スピーカーを作製することができる。
【0044】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態に係るバスレフ型無指向性スピーカー1cの構成を説明する。図8は本発明に係るバスレフ型無指向性スピーカーの第3の実施の形態を示す模式図であり、図9は図8の断面図であり、図10は図9のC−C‘部の切断面を示す図である。
【0045】
本実施形態のバスレフ型無指向性スピーカー1cは、筐体3の両方の開口部にスピーカーが取り付けられている構造になっている。
具体的には、図8および図9に示すように、上方の開口部には高音用のスピーカー2aを接続した柱状部材6が取り付けられており、筐体3の下方の開口部には低音用のスピーカー2bが取り付けられている構造となっている。そして、高音用のスピーカー2aが内蔵された柱状部材6が筐体3との間に筒状の隙間7および隙間9を形成するように取り付けられている。
さらに、高音用のスピーカー2aの上方にはスピーカー2aから生じる音を放射状に放出するディフューザー12aが取り付けられており、低音用のスピーカー2bの下方にはスピーカー2bから生じる音を放射状に放出するディフューザー12bが取り付けられている。
【0046】
このような形態を採用することによっても、ダクトに相当する筒状の隙間7とポートに相当する、筐体3と柱状部材6によって筐体3の高音用のスピーカー2a側の開口部に形成される輪状の隙間を形成することができ、さらに増幅の要望があまりない高音域の音については柱状部材に内蔵することができる。従って、本発明のバスレフ型無指向性スピーカーは、筐体に2つのスピーカーを取り付けることができる。
【0047】
ここで、本実施形態においては、第1の実施の形態や第2の実施の形態の場合とは異なり、スペーサー部10や治具11がないことから、その共振周波数は、図10に示すようにπ(r1)−π(r2)とh1によって決定されることになる。
【0048】
(参考例)
次に、本発明に係るバスレフ型無指向性スピーカーに関連する参考例を説明する。図11は参考例のバスレフ型無指向性スピーカーを示す模式図であり、図12は図11の断面図であり、図13は図12のD−D‘部の切断面を示す図である。
【0049】
図11および図12に示すように、参考例のバスレフ型無指向性スピーカー101は、両端に開口部を有する筒状の筐体103の一方の開口部105aにスピーカー102が取り付けられ、他方の開口部105bに台座104が取り付けられた構造になっている。
また、台座104は、中央部にポート部109となる開口を設けた板状部材108と、ポート部109と接続し、かつ筐体103内部に向かって伸びる円筒状のダクト部107と、板状部材108を支える複数の足部106によって構成されている。
【0050】
このように、参考例のような構造を採用することによっても、ポート部から放出した音は放射状に拡散することから無指向性を実現することができ、上記ダクト部およびポート部による低中音域の増幅効果も発現させることができる。
【0051】
ここで、参考例のバスレフ型無指向性スピーカー101についても、低中音域の増幅性能はダクトの断面積およびダクトの長さによって決まることになる。具体的には、図11および図13に示すようにダクトの内径をr3、ダクト部の長さをh2とすると、その増幅性能はπ(r3)とh2によって決定されることになる。
従って、上記した本発明のバスレフ型無指向性スピーカーのπ(r1)−π(r2)の値と参考例のバスレフ型無指向性スピーカーのπ(r3)の値が同じであれば、同じ共振周波数を実現することができることになる。
【0052】
次に、実施例および参考例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0053】
(実施例)
内部の節を除去した、長さ100cm、外径略13cm、内径略11cmの竹筒を筐体に用い、一方の開口部にはスピーカー(FOSTEX社製、品番FE103En)を取り付け、他方の開口部には台座を取り付けることによって、実施例のバスレフ型無指向性スピーカーを作製した。ここで台座は、厚み30mmの板状部材に、高さ10cm、直径10cmの円柱状の柱状部材を設けるとともに、柱状部材の側壁に図4におけるL1:10cm、L2:1cm、L3:1.5cmの寸法の側面視L字状のスペーサー部を4つ設けたものを作製した。
なお、かかる台座を取り付けることによって、当該バスレフ型無指向性スピーカーのダクトの面積(筐体内部と柱状部材との間に形成される筒状の隙間=筐体および柱状部材の中心軸方向に対する垂直な断面視における筐体内部の断面積と柱状部材の断面積との差)は約16.5cmとなっており、ポートの大きさ(他方の開口部の端部と板状部材との間に形成される隙間)は1cmとなっている。
【0054】
(参考例)
実施例と同じ竹筒とスピーカーを取り付け、他方の開口部には台座を取り付けることによって、参考例のバスレフ型無指向性スピーカーを作製した。ここで台座は、中央部に半径2.3cmの開口を設けた板状部材に、筐体内部に向かって伸びる高さ10cm、内径4.6cmの円筒状のダクト部を設けるとともに、高さ6.5cmの板状部材を支える4本の足部を設けたものを作製した。
なお、かかる台座を取り付けることによって、当該バスレフ型無指向性スピーカーのダクトの面積は実施例と略同じ約16.6cmとなっており、ポートの大きさは約16.6cmとなっている。
【0055】
(周波数特性の測定)
次に、上記によって作製したバスレフ型無指向性スピーカーの周波数特性を測定した。結果を図14に示す。
その結果、実施例、参考例ともに、図15に示す従来のバスレフ型スピーカーに比べて、高い増幅効果を発現させることができた。具体的には、低音域(50〜200Hz)の音だけでなく、元来バスレフ型スピーカーにおいては困難といわれている中低音域(200〜500Hz)の音についても高い増幅効果を発現させることができた。
そして、その中でも、特に本発明のバスレフ型無指向性スピーカーに係る実施例については、参考例に比べてさらに高い低中音域の音の増幅効果を発現させることができた。この理由としては、参考例ではスピーカー背面から筐体内部に放出された音が板状部材とダクト部との接続部近傍において若干の乱流を発生させてしまうのに対し、実施例においてはこのようなことがなく、スピーカー背面から筐体内部に放出された音が筒状の隙間および隙間からスムースに放出されるためと考えられるからである。
以上から、本発明に係るバスレフ型無指向性スピーカーは、無指向性を示しつつ、低中音域の音の増幅効果をより向上させることができることがわかった。
【符号の説明】
【0056】
1a バスレフ型無指向性スピーカー
1b バスレフ型無指向性スピーカー
1c バスレフ型無指向性スピーカー
2 スピーカー
3 筐体
4 台座
5a 開口部
5b 開口部
6 柱状部材
7 筒状の隙間
8 板状部材
9 隙間
10 スペーサー部
10a スペーサー部
10b スペーサー部
11 治具
12a ディフューザー
12b ディフューザー
101 バスレフ型無指向性スピーカー
102 スピーカー
103 筐体
104 台座
105a 開口部
105b 開口部
106 足部
107 ダクト部
108 板状部材
109 ポート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーと、
両端に開口部を有する筒状の筐体と、
前記筐体の内寸よりも小さい寸法の柱状部材を備え、
前記筐体の一方の開口部には前記スピーカーが取り付けられ、
前記筐体の他方の開口部には前記柱状部材が前記筐体との間に筒状の隙間を形成するように取り付けられることによって、
前記筒状の隙間をダクトとして機能させ、前記他方の開口部をポートとして機能させることを特徴とするバスレフ型無指向性スピーカー。
【請求項2】
前記柱状部材に、
板状部材が接続されており、かつ前記板状部材が前記他方の開口部との間に前記スピーカーの背面から生じる音を放射状に放出する隙間を形成するように取り付けられることによって、
前記筒状の隙間をダクトとして機能させ、前記隙間をポートとして機能させることを特徴とする請求項1に記載のバスレフ型無指向性スピーカー。
【請求項3】
前記柱状部材が、
さらに前記筐体および前記板状部材との間に、前記筒状の隙間および前記隙間を形成し、かつ前記筐体の傾倒を防止するための複数の側面視L字状のスペーサー部を備えたものであることを特徴とする請求項2に記載のバスレフ型無指向性スピーカー。
【請求項4】
前記筐体の中心軸と前記柱状部材の中心軸が、
同一軸であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバスレフ型無指向性スピーカー。
【請求項5】
前記筐体および前記柱状部材の中心軸方向に対する垂直な断面において、
前記筐体内部の断面積と前記柱状部材の断面積との差が、
1cm〜80cmであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバスレフ型無指向性スピーカー。
【請求項6】
前記筐体の他方の開口部の端部と前記板状部材との間に形成される隙間が、
3mm以上であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のバスレフ型無指向性スピーカー。
【請求項7】
前記柱状部材の形状が、
円柱状、楕円柱状、角柱状、略円柱状、略楕円柱状、略角柱状、円錐状、角錐状、半球状あるいはこれらの形状の組み合わせであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のバスレフ型無指向性スピーカー。
【請求項8】
前記筐体の形状が、
円筒状、楕円筒状、角筒状、略円筒状、略楕円筒状、略角筒状、円錐状、角錐状あるいはこれらの形状の組み合わせであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のバスレフ型無指向性スピーカー。
【請求項9】
前記筐体が、
竹筒であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のバスレフ型無指向性スピーカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−81061(P2013−81061A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219800(P2011−219800)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【特許番号】特許第4870242号(P4870242)
【特許公報発行日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(511240003)
【Fターム(参考)】