説明

バチルスチューリンゲンシス菌株を用いる双翅目の昆虫の防除法

本発明は、バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を得て、かつバチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を昆虫と接触させるか、又は動物に投与し、又はバチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を侵食域に施こすことによって、双翅目の昆虫を防除するための方法を提供する。バチルスチューリンゲンシス菌株は、デルタ‐エンドトキシンCry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2及びその変体をコード化するためのエンドトキシン遺伝子を担持するプラスミドを含有する。菌株は、有利に、ATCC PTA - 6248として寄託されたバチルスチューリンゲンシス菌株LRC3である。菌株、胞子、クリスタル、突然変異体、変体、及びそれらを配合する組成物を製造するための方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双翅目(Order Diptera)の昆虫を防除するための、そのような昆虫に対して有効な殺虫性クリスタルを生産するバチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)の菌株を用いる方法に関する。特に、本発明は、菌株、胞子、クリスタル及びその変体及びそれらを配合する組成物を製造及び使用するための方法に関する。
【0002】
本発明の背景
バチルスチューリンゲンシス(Bt)は、グラム‐陽性の、条件的な、胞子‐形成性でかつ桿状形の細菌であり、これは胞子形成中に殺虫性クリスタルを生産する。これらのクリスタルは、一般に、デルタエンドトキシン(商業的に"Bt毒素"として知られる)として言及される、3種から7種の蛋白質を不活形又はプロトキシン形で含有し、その組合せは昆虫特異性を示す。一般に標的昆虫との非‐特異的接触によって致死させる慣用の化学的殺虫剤と異なり、Btを基礎とする生成物は、デルタ‐エンドトキシンを結合するために要求される、一般にアルカリ性(還元環境)中腸(pH範囲10〜12)及び特異的腸膜構造を有する昆虫によって摂取されなければならない。昆虫は適正な生理機能を有し、かつ感受性の強い発育段階でなければならないばかりでなく、細菌は十分な量で消費されなければならない。
【0003】
Btを基礎とする生成物は、死滅を引き起こすために、標的昆虫との相互作用の特異的設定を要求する。昆虫は、先ずクリスタルを摂取し、次いで、そのクリスタルは中腸に進まなければならない。クリスタルは、中腸に入った時に、消化液(pH10)の高還元力の結果として溶解される。放出されたプロトキシンは、次いで、腸プロテアーゼによって分解され、デルタ‐エンドトキシンと称する活性毒素を生産する。デルタ‐エンドトキシンは、中腸の内にある消化細胞と相互作用し、細胞の漏出を引き起こす。そのような漏出は、一般的な昆虫のホメオスタシス機序を破壊し、最後に昆虫の死滅を引き起こす。
【0004】
Bt菌株は2つの型の毒素、つまり、異なったcry遺伝子によってコード化されるCry(クリスタル)毒素、及びCry毒素の活性を増大させ、昆虫防除の有効性を高め得るCyt(細胞溶解性)毒素を生産する。現在、数種の有効なBt変体又はBtを基礎とする生成物が、幼虫段階の鱗翅類(Bt クルスタキ(kurstaki)、Btアイザワ(aizawa))、水生双翅類(Bt イスラエルシス(israeliensis))及び甲虫類(Btテネブリオニス(tenebrionis))を防除するために商業的に得られる。40種以上のBt毒素が同定されたが、6種だけが流通の商業的組成物で存在している:
Bt クルスタキ‐Cry1Aa、Cry1Ab、Cry1Ac、Cry1Ia、Cry2A
Btアイザワ‐Cry1Ab、Cry1Ac、Cry1C
Bt イスラエルシス‐Cry4A、Cry4B、Cry1l、CytA;及び
Btテネブリオニス‐Cry3。
【0005】
殆どのBt菌株は、共通の基本的毒素構造を共有するデルタ‐エンドトキシンを生産するが、それらは、多分、昆虫の腸内で毒素受容体に対する結合親和度が異なるために、昆虫宿主域において異なっている;例えば、Btアイザワイによって生産された毒素は、Bt クルスタキのそれとは少々異なり、かつそれらの宿主域は異なるが、鱗翅目の昆虫に高度に特異的であり、他の昆虫には無効である。極めて少数のBt毒素が、異なった昆虫群へのそれらの効果について極めて詳細に評価されている。
【0006】
双翅目は、2つの機能的翅、2つの平均棍及び吸収又は突刺用に変化された口器を有する広範囲の昆虫目である。そのような昆虫は、幼虫、蛹及び成虫期を伴う完全変態を経過する。双翅類は大きな3群に分けられる:糸角類(Nematocera)(例えば、ブユ、ガガンボ、アカイエカ(gnat)、ユスリカ、カ及びスナバエ);短角類(Brachycera)(例えば、ツリアブ、シカアブ、ウシアブ及びムシヒキアブ);及び環縫類(Cyclorrhapha)(生きていても死んでいても野菜又は動物物質中で繁殖したハエ(fly)、例えば、ボトルバエ(bottle fly)、イエバエ(blow fly)、ウシバエ、シカシラミバエ、カオバエ、ミバエ、イエバエ、ツノサシバエ、ウマシラミバエ、ヒトウマバエ(human bot fly)、ネズミバエ、ウサギウマバエ、ヒツジシラミバエ、ヒツジハナウマバエ(sheep nasal bot)、サシバエ、胃ウマバエ(stomach bot)及びツェツェバエ)。
【0007】
そのようなハエに曝される動物は、摂食行動及び成虫との機械的相互作用から生じる経済的に重大な体重損失を呈する。一般に、成虫は動物の近くの肥料及び朽藁と関連されるが、幼虫は異なった場所で発見され得る。数種の化学的生成物は成虫の活性を防除するために利用されるが、それらは一般に無効である又は環境への逆効果を有する。屋内限定の幼虫及び屋外限定の幼虫は、堆積肥料中に発見される。屋内限定の幼虫を防除するための化学的生成物として、クロマジン(Cyromazine)TM又はラルビデックス(Larvidex)TMは無効であることが判明した。屋外で限定の幼虫を防除するための生成物は、一般に登録されていない。屋外非限定の幼虫は、牧場中の単離した肥料中に発見される。これらの幼虫を防除するために使用される2種の化学的生成物(例えば、ディミリン(Dimilin)TM又はイベルメクチン(Ivermectin)TMは有効であるが、他の節足動物には逆効果を有する。付加的に、不所望の昆虫を防除するための化学薬品の常用は、化学的に耐性の菌株を選択し得て、その問題は、経済的に重要な多種の害虫で起こった。動物及び人間への逆効果のために、残存する数種の化学的殺虫剤の登録解除は、新規の技術の開発を必然的にする。
【0008】
流通のBt製剤でのもう1つの問題が、狭い宿主域にある。Bt菌株は、ハリアリ(fire ants)に対する使用について記載された(U.S.Patent No.6551800、Bulla, Jr. et al.);タバコスズメガ幼虫(tobacco hornworm)(U.S.Patent No.5308760、Brown et al.;Schnepf及びWhitley、1981);線虫(nematodes)(U.S.Patent No.4948734、Edwards et al.及びU.S.Patent No.5151363、Payne);甲虫(Coleoptera)、特に、ワタミハナゾウムシ(cotton boll weevil)、コロラドハムシ(Colorado potato beetle)、アルファルファゾウムシ(alfalfa weevil)、エジプトアルファルファゾウムシ(Egyptian alfalfa weevil)(U.S.Patent No.4797276及び4853331、Herrnstadt et al.、U.S.Patent No.4999192、Payne et al.及びU.S.Patent No.4849217、Soares et al.);鱗翅目(Lepidoptera)、特に、アブラナシロチョウ(Pienis brassicae)(オオモンシロチョウ(large white butterfly))、スポドプテラリットラリス(Spodoptera littoralis) (チチュウカイツルヨトウムシ(Mediterranean climbing cutworm))、ヘリオジスビレセンス(Heliothis virescens)(タバコ芽幼虫(tobacco budworm))、メメストラブラッジカエ(Memestra brassicae)(コナガ(cabbage moth))(Sanchis et al., 1988 ;Visser et al., 1990 ; U.S.Patent No.6448226、Lambert et al., U.S.Patent No.6570005、Schnepf et al., 及びU.S.Patent No.6593293、Baum et al.)。双翅目、U.S.Patent No.5888503、Hickle et al.では、カリホリダエ(Calliphoridae)科の昆虫(アメリカバエ幼虫(screw - worm)及びヒツジイエバエ(sheep blowfly))に対してのみ有効なBt菌株を記載し、一方で、U.S.Patent No.6482636、Donovan et al.は、カの幼虫に毒性であるBt イスラエルシス菌株を記載する。今日まで、流通のBt菌株及びその製剤は、一般に少数の、特別な昆虫目内に限定されるが、そのような目の全員には限定されない。
【0009】
狭い宿主域は特異的昆虫を標的にすることに有利であり、限定された毒性はそのような生成物の使用を減少させ得る。多くの昆虫は、作物又は他の侵食域で発見されるように、広範囲の殺虫剤は有効でもあり、経費‐効果的でもある。付加的に、流通の商業的生成物は主に幼虫を根絶させるが、成虫には影響を及ぼさない。幼虫にも成虫に対しても、防除を果たす殺虫剤が最も所望される。更に、生物学的起源の生成物は、容易に製造され、安全で、安価でかつ商業的に貴重であり、化学的殺虫剤を越える著しい利点を示す。
【0010】
本発明の概要
本発明は、バチルスチューリンゲンシス菌株を用いて双翅目を防除するための、昆虫を菌株又はその変体;菌株からの胞子又はその変体;菌株からのクリスタル又はその変体;又はデルタ‐エンドトキシンCry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2又はその変体を含有するクリスタルと接触させることによる方法を提供する。菌株は、ATCC PTA‐6248として寄託されたバチルスチューリンゲンシス菌株LRC3であることが有利である。
【0011】
従って、概して本発明は、次の段階を含む双翅目の昆虫を防除するための方法を提供する:
a)Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2又はその変体から選択される1種以上のデルタ‐エンドトキシンをコード化するための1種以上のエンドトキシン遺伝子を担持するプラスミドを含有するバチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を得る;及び次から選択される後続の1段階:
b)昆虫を、バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体と接触させる;
c)バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を侵食域に施こす;又は
d)バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を動物に投与する。
【0012】
他の観点では、バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を含む双翅目の昆虫を防除するための組成物が得られる。バチルスチューリンゲンシス菌株は、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2又はその変体から選択される1種以上のデルタ‐エンドトキシンをコード化するための1種以上のエンドトキシン遺伝子を担持するプラスミドを含有する。
【0013】
他の観点では、双翅目の昆虫を防除するためのバチルスチューリンゲンシス菌株のクリスタル又はその変体が得られる。クリスタルは、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2又はその変体から選択される1種以上のデルタ‐エンドトキシンを含有する。
【0014】
他の観点では、バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体の単離された核酸が得られ、この際、核酸は双翅目の昆虫に毒性の蛋白質をコード化する。蛋白質は、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2又はその変体から選択される。
【0015】
他の観点では、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2又はその変体から選択される1種以上のエンドトキシン遺伝子を含むバチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体のプラスミドが得られる。更に、核酸又はプラスミドを含むベクター及び宿主細胞が得られる。
【0016】
なお他の観点では、双翅目の昆虫を防除するためのバチルスチューリンゲンシス菌株が得られ、この際、菌株は、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2又はその変体から選択される1種以上のデルタ‐エンドトキシンをコード化するための1種以上のエンドトキシン遺伝子を担持するプラスミドを含有する。
【0017】
ここで及び請求の範囲で使用されるように、後記の用語及び語句は次の定義を有する:
"動物"は、例えば、乳牛及び食肉牛、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、シカ、バッファロー、オオジカ、ニワトリ、シチメンチョウ、同様に、家畜動物、例えば、ネコ、イヌ及びウマを包含することを意味する。この用語は幼獣及び成獣を含むことを意味する。
【0018】
"Bt"と略称される"バチルスチューリンゲンシス"は、胞子形成中に、殺虫特性を有するパラ胞子蛋白質クリスタルを生産する特異的グラム‐陽性細菌に関することを意味する。
【0019】
"クリスタル"又は"複数のクリスタル"は、バチルスチューリンゲンシス種中で形成されるパラ胞子クリスタルの蛋白質に関することを意味する。蛋白質は不活性(プロトキシン)又は活性(デルタ‐エンドトキシン又はBt毒素)であってよい。
【0020】
"デルタ‐エンドトキシン"又は"エンドトキシン"又は"Bt毒素"は、任意のバチルスチューリンゲンシス種によって生産される殺虫性毒素を意味する。
【0021】
単一Bt菌株の"DNA指紋"は、細菌ゲノム中で発見される種々な反復DNA配列を利用するゲノム指紋技法を使用することから得られる。これらの技術は、可変大きさの増幅DNA断片を産出するために、ゲノム中に散在している反復配列を標的とする単一オリゴヌクレオチドプライマーを使用する。結果的に、アガロースゲル上の断片プロフィールは、種/菌株水準に低下した重大な細菌を指紋付けるために使用される。ここで使用される3種の増幅技術は、REP(反復遺伝子外パリンドローム的(Repetitive Extragenic Palindromic))、ERIC(腸内細菌反復遺伝子間一致(Enterbacterial Repetitive Intergenic Consensus))及びRAPD(ランダム増幅多型DNA(Random Amplified Polymorphic DNA))である。
【0022】
2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドは、ヌクレオチド又はアミノ酸残基の配列が、各々、2つの配列の中で、ここで記載されたような最高の一致のために線列した時と同じである場合に、"相同"又は"同一"である。2種以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド間での配列比較は、一般に、配列類似性の局域を同定又は比較するための比較窓上で、2つの配列の割合を比較することによって行なわれる。比較窓は、一般に約20〜約200個の連続するヌクレオチド又は連続するアミノ酸残基である。ポリヌクレオチド及びポリペプチドについての"配列同定の%"又は"配列相同の%"は、比較窓上で任意に線列した配列を比較することによって測定され、この際、比較窓中のポリヌクレオチド又はポリペプチドの割合は、2つの配列の任意線列についての対照配列(これは付加又は欠失を比較しない)に比較されるように、付加又は欠失(例えば、ギャップ)を含み得る。%は、(a)同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が一致する位置の数を生じさせるための2つの配列中に生じる位置の数を測定することによって;(b)比較窓中の位置の全数により一致した位置の数を除することによって;及び(c)配列同定の%を生じさせるために結果を100で乗ずることによって計算される。
【0023】
比較のための配列の任意線列は、既知数字のコンピューター処理によって又は検査によって行われ得る。商業的に得られるフリーソフトウェアのソースを提供するリストは、Ausubel et al. (2000)に見出される。容易に得られる配列比較及び多配線列列数字は、各々、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)及びClustalW プログラムである。更に確かに、ここで及び請求の範囲で使用されるように、アミノ酸配列の"配列同定の%"又は"配列相同の%"は、前記のように得られる、BLASTPプログラムの欠失値に従って測定される任意の配線列列に基づき測定される。
【0024】
後記で更に詳しく論じられるように、ヌクレオチド配列間の類似性は、DNAハイブリダイゼーション分析によって測定することもでき、この際、二本鎖DNAハイブリッドの安定性は、生じる塩基対合の程度に依存する。高温及び/又は低塩濃度の条件は、ハイブリッドの安定性を減じ、かつ選択された類似程度よりも少なく有する配列のアニーリングを予防するために変化され得る。
【0025】
"宿主細胞"は、動物、植物、酵母、菌類、原生動物及び原核生物宿主細胞を包含する。
【0026】
"侵食域"は、双翅目の昆虫によって侵食された域を意味する。この用語は、堆積肥料、肥料パテ、分解物質、肥料ピット、糞尿池、敷藁屑、葉、作物又は幼虫及び成虫が関連される他の環境を含むことが意味される。
【0027】
"殺虫有効量"は、致死%、更なる作物傷害の欠如又は動物における更なる体重減少の欠如によって測定されるような、双翅目の昆虫を防除又は根絶させることができるBt菌株又はその変体、又は菌株の胞子又はクリスタル又はその変体の量を意味する。
【0028】
"単離"は、自然状態から"人の手によって"変えられたことを意味する。"単離"組成物又は物質が現実に生じる場合には、その本来の環境から変化又は除去されている、又は両方である。例えば、生きている動物中に自然に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチドは、"単離"されていないが、その自然状態の共存物質から分離された同一ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、ここでその用語が使用されるように、"単離"されている。
【0029】
"LD50"は、"致死量"を意味し、試験動物群の50%の致死を引き起こす全部一度に投与された物質の量である。LD50は、物質の短期中毒ポテンシャル又は急性毒性を測定するための方法である。
【0030】
"ミクロ配列"遺伝子評価は、ミクロ配列系へBt菌株からのDNAをハイブリッド化させることによって行なわれる。例えば、ここで使用される試験(Biotechnology Research Institute, Montreal, Quebec, Canadaで開発された)は、cry1、cry2、cry3、cry4、cry9及びcry11遺伝子上での第一次列情報を得ると同様に、第三次列に下がったcry1A遺伝子を検出する。
【0031】
遺伝子の"突然変異"又は"変体"は、同一のBt毒素についてコード化する、又は双翅目の昆虫を防除する又は根絶させることができる機能的に同等のBt毒素についてコード化するヌクレオチド配列に関する。
【0032】
蛋白質の"突然変異"又は"変体"は、例証されるデルタ‐エンドトキシンと双翅目の昆虫に対して同じ又は基本的に同じ生物学的活性を有する変体(誘導体又は類似体を含む)を意味する。そのような変体は、1以上の置換、付加、欠失、融合及び切断によるデルタ‐エンドトキシンからのアミノ酸配列で異なり、これは、双翅目の昆虫を防除又は根絶するための変体の能力を変更させずに、任意の組成物で存在し得る。
【0033】
菌株の"突然変異"又は"変体"は、例証されたBt菌株と、双翅目の昆虫に対して同じ又は基本的に同じ特性又は生物学的活性を有するBt菌株の変体を意味する。
【0034】
"双翅目"又は"双翅類"は、次の群の双翅類を含むことを意味する:糸角類(例えば、ブユ、ガガンボ、アカイエカ、ユスリカ、カ及びスナバエ);短角類(例えば、ツリアブ、シカアブ、ウシアブ及びムシヒキアブ);及び環縫類(生きていても死んでいても野菜又は動物物質中で繁殖したハエ、例えば、ボトルバエ、イエバエ、ウシバエ、シカシラミバエ、カオバエ、ミバエ、イエバエ、ツノサシバエ、ウマシラミバエ、ヒトウマバエ、ネズミバエ、ウサギウマバエ、ヒツジシラミバエ、ヒツジハナウマバエ、サシバエ、胃ウマバエ及びツェツェバエ)。
【0035】
"ポリヌクレオチド"又は"核酸"は、デオキシリボヌクレオチド(DNA中)又はリボヌクレオチド(RNA中)の直鎖配列を意味し、ここで1ヌクレオチドのペントース糖の3’炭素は、ホスフェート基を介して隣接ヌクレオチドのペントース糖の5’炭素に結合している。"ポリペプチド"又は"核酸"は、cDNA、ゲノムDNA及び合成DNAを含むDNA又はRNAを包含し、これは二本鎖又は一本鎖であり、一本鎖の場合には、コード鎖又は非‐コード(アンチ‐センス)鎖であってよい。
【0036】
"ポリペプチド"又は"蛋白質"は、ペプチド結合によって結合されるアミノ酸の直鎖ポリマーを意味する。
【0037】
"プラスミド"は、細菌中に生じる染色体外共有連続二本鎖DNA分子を意味する。
【0038】
"プロトキシン"は、中腸中で溶解されかつ有効になるまで酵素的に活性化されるべき前駆体蛋白質を意味する。
【0039】
"胞子"は、成熟した生物に発育することができる生殖体、しばしば単細胞を意味する。
【0040】
"毒素"は、昆虫死を引き起こし得る可溶化の酵素的に成熟した蛋白質を意味する。
【0041】
"毒性"は、双翅目の幼虫及び成虫を防除又は根絶させる能力を意味する。
【0042】
"形質転換"は、受容細胞のゲノムへのその取込み及び組込みに至る、異なった遺伝子型の他の細胞から精製組換えDNAの外用による細胞のゲノムの操作修飾を意味する。細菌では、組換体DNAは、細菌染色体には組込まれず、その代わりに、プラスミドのように、自立的に複製する。
【0043】
"トランスジェニック"は、外来DNAが生殖系列に導入された生物を意味する。
【0044】
"トランスジェニック植物"は、有性生殖であろうと無性生殖であろうと、外来DNAを密かに持ち続ける全ての由来植物、ハイブリッド及びその雑種を網羅し、かつトランスジェニック植物、植物組織及び植物細胞を包含することを意味する。
【0045】
"ベクター"は、宿主細胞中で自立的に複製することができ、かつ外来DNAを受容できる核酸分子を意味する。ベクターは、複製のそれ自体の起源、外来DNAの挿入のために使用され得る制限エンドヌクレアーゼのための1つ以上の単一認識部位、及び通例選択可能なマーカー、例えば、抗生物質耐性についてコード化する遺伝子、及び挿入DNAの発現のための認識配列(例えば、プロモーター)をしばしば有する。普通のベクターは、ファージ、コスミド、バクロウイルス、レトロウイルス及びプラスミドベクターを包含するが、これに限定されるものではない。
【0046】
図面の簡単な説明
図1は、線列1(ミオシン191、ホスホリラーゼ97、牛の血清アルブミン64、グルタミンデヒドロゲナーゼ51、アルコールデヒドロゲナーゼ39、炭酸脱水酵素28、ミオグロビンレッド19、リソチーム14)における標準分子量(kDa)を有する、Bt菌株LRC3(線列2)、Bt クルスタキ(HD1 - 線列3)及びBtイスラエリシス(4Q5 - 線列4)から単離されたクリスタルについての蛋白質横縞像を示す。
【0047】
図2は、REP - 1R及び2Iプライマーを用いる、数種の型のバチルスチューリンゲンシス菌株に比較したBt菌株LRC3のDNA指紋を示す。1線につき、各反応の8μlを装填した。線列M、DNAの大きさ、はしご状、キロ塩基で(kb)。線列1、B.チューリンゲンシス亜種(subsp.)クルスタキ4D1;線列2、B.チューリンゲンシス亜種イスラエルシスHD‐500;線列4、Bt菌株LRC3(Agriculture and Agri - Food Canada);線列C、対照(‐DNA鋳型)。A=REP‐1Rプライマー;B=REP‐2Iプライマー;C=REP‐1R及びREP‐21プライマー。
【0048】
図3は、Bc‐REP‐1及びBc‐REP‐2プライマーを用いる、数種の型のバチルスチューリンゲンシス菌株に比較したBt菌株LRC3のDNA指紋を示す。1線につき、各反応の8μlを装填した。線列M、DNAの大きさ、はしご状、キロ塩基で(kb)。線列1、B.チューリンゲンシス亜種(subsp.)クルスタキ4D1;線列2、B.チューリンゲンシス亜種イスラエルシスHD‐500;線列4、Bt菌株LRC3(Agriculture and Agri - Food Canada);線列C、対照(‐DNA鋳型)。A=Bc‐REP‐1プライマー;B=Bc‐REP‐2プライマー;C=Bc‐REP‐1及びREP‐2プライマー。
【0049】
図4は、ERIC‐1R及びERIC‐2プライマーを用いる、数種の型のバチルスチューリンゲンシス菌株に比較したBt菌株LRC3のDNA指紋を示す。1線につき、各反応の8μlを装填した。線列M、DNAの大きさ、はしご状(kbで)。線列1、B.チューリンゲンシス亜種(subsp.)クルスタキ4D1;線列2、B.チューリンゲンシス亜種イスラエルシスHD‐500;線列4、Bt菌株LRC3(Agriculture and Agri - Food Canada);線列C、対照(‐DNA鋳型)。A=ERIC‐2プライマー;B=ERIC‐1Rプライマー;C=ERIC‐2及びERIC‐1Rプライマー。
【0050】
図5は、BOX‐A1R及びERIC‐2プライマーを用いる、数種の型のバチルスチューリンゲンシス菌株に比較したBt菌株LRC3のDNA指紋を示す。1線につき、各反応の8μlを装填した。線列M、DNAの大きさ、はしご状(kbで)。線列1、B.チューリンゲンシス亜種(subsp.)クルスタキ4D1;線列2、B.チューリンゲンシス亜種イスラエルシスHD‐500;線列4、Bt菌株LRC3(Agriculture and Agri - Food Canada);線列C、対照(‐DNA鋳型)。A=BOX‐A1Rプライマー;B=BOX‐A1R及びERIC‐2プライマー。
【0051】
図6は、RAPDプライマー(0955‐03、1940‐12、1910‐08)を用いる、数種の型のバチルスチューリンゲンシス菌株に比較したLRC3のDNA指紋を示す。1線につき、各反応の8μlを装填した。線列M、DNAの大きさ、はしご状(kbで)。線列1、B.チューリンゲンシス亜種(subsp.)クルスタキ4D1;線列2、B.チューリンゲンシス亜種イスラエルシスHD‐500;線列4、Bt菌株LRC3(Agriculture and Agri - Food Canada);線列C、対照(‐DNA鋳型)。A=0955‐03プライマー;B=1940‐12プライマー;C=1910‐08プライマー。
【0052】
図7は、Bt菌株LRC3、バチルスチューリンゲンシス亜種クルスタキ及びバチルスチューリンゲンシス亜種イスラエルシスの遺伝子内容物を評価するミクロ配列探索表を示す。
【0053】
図8は、バチルスチューリンゲンシス亜種クルスタキHD‐1についてのミクロ配列検定結果を示す。
【0054】
図9は、バチルスチューリンゲンシス亜種イスラエリシスHD‐500についてのミクロ配列検定結果を示す。
【0055】
図10は、Bt菌株LRC3についてのミクロ配列検定結果を示す。
【0056】
本発明の詳細な説明
本発明は、バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を得て、かつバチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を昆虫と接触させるか又は動物に投与し、又はバチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を侵食域に施こすことによって、双翅目の昆虫を防除するための方法に広汎に関する。菌株は、有利に、ATCC PTA - 6248として寄託されたバチルスチューリンゲンシス菌株LRC3である。ここで記載したようなバチルスチューリンゲンシス菌株LRC3と同様の特性を有するバチルスチューリンゲンシス菌株、プラスミド、単離された核酸、蛋白質、突然変異体又はその変体、及び組成物は、本発明の範囲内にあることが認められる。
【0057】
本発明のバチルスチューリンゲンシス菌株は、本来、バチルスジェネティックストックセンター(Bacillus Genetic Stock Center) (Department of Biochemistry, Ohio State University, 484 West Twelve Avenue, Colombus, Ohio, U.S.A. 43210)から得られた。これは野生型菌株であり、2004年10月6日に、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)において、受入番号(Accession Number) PTA - 6248で寄託された。Bt菌株LRC3の特性は、次の表1に示される。
【0058】
表1.Bt イスラエルシスに比較されるBt LRC3菌株の特性
【表1】

【0059】
Bt菌株LRC3は、胞子に隣接形成する1種以上の蛋白質封入体である特殊形態を有する、グラム‐陽性の、条件的な、胞子‐形成性かつ桿‐形の細菌である。これらの封入体は、顕微鏡的にBt菌株を分化することを助ける特殊形成されたクリスタルとして現われる;例えば、Bt菌株LRC3は錐体クリスタルを生産するが、Bt イスラエルシスは無定形クリスタルを生産する。更にBt菌株は、免疫学的に、細胞表面抗原、例えば、H‐抗原(鞭毛抗原)を基礎として分類され得る。
【0060】
更に、Bt菌株は、それらの単一のBt毒素蛋白質プロフィールと区別され得る。Bt菌株は、2つの型の毒素、つまり、異なったcry遺伝子によってコード化されるCry(クリスタル)毒素及びCry毒素の活性を増加させ得るCyt(細胞溶解)毒素を生産する。クリスタルは、不活性(プロトキシン)であり、かつ標準SDS - PAGEゲル上でその分子量によって概算で区別され得る蛋白質を含む;例えば、そのような蛋白質は、SDS - ポリアクリルアミドゲル上で単離され、大部分の帯域は一般に120〜140kDaの範囲の分子量で現われ、60〜70kDa及び23〜30kDa範囲の付加的な帯域群を伴う。Bt菌株LRC3についての蛋白質プロフィールは図1に示され、例2に記載される。図1はBt菌株LRC3(線列2)から単離されるクリスタルについての蛋白質横縞像を示す。蛋白質プロフィールの分析は、各菌株について異なった電気泳動像を示した。Bt クルスタキHD‐1は、Cry1A蛋白質を表わす約191、120kDa帯域及びCry2a蛋白質を表わす64kDa帯域を有する。Bt イスラエルシス4Q5は、約、Cry4蛋白質を表わす約100kDa帯域、Cry4B蛋白質を表わす97kDa帯域、Cry10及びCry11蛋白質を表わす64kDa帯域、Cyt1蛋白質を表わす27〜30kDa帯域を有する。Bt菌株LRC3は、約、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1K蛋白質を表わす120〜191kDa帯域、Cry11蛋白質を表わす80kDa蛋白質、Cry2蛋白質を表わす70kDa帯域、未確定の蛋白質を表わす55kDa帯域、未確定の蛋白質を表わす38〜48kDa帯域、Cyt蛋白質を表わす25〜28帯域を有する。
【0061】
DNA指紋法は、Bt菌株LRC3を、Bt組成物中で通例使用される他の大部分のBt菌株と区別するために行なわれた。種々のハイブリダイゼーションを基礎とする、増幅を基礎とする又は配列を標的とするゲノム指紋技術は、単一のBt亜種を同定するために開発された。数種の内生散在性反復DNA要素は、多くの細菌中に保存されている。反復遺伝子外パリンドローム(REP)配列、腸内細菌性反復遺伝子間共通(ERIC)配列、及びBOX要素(Versalovic et al. 1991a, 1991b)を包含する反復配列群は同定されている。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)中でこれらの要素間にある別個のDNA配列の増幅を可能にするプライマーが設計された。その後に、特殊な細菌に特異性でありかつ比較分析が可能であるDNA指紋を生産するために、PCR断片はゲル電気泳動法によって分離される。ランダムに増幅される多形性DNA(RAPD)は、任意のプライマーを用いるPCRを使用して鋳型DNAの増幅する不確定の領域を取り込む選択的方法である。そのような方法は、細菌を識別及び比較するのに有用である。3種の異なった判別法、つまり、REP、ERIC及びRAPDが、それ自体分化したプライマー配列を有する各方法で、指紋像を生産するために使用された。一般にDNA指紋法は、反復配列を増幅させるために単一のプライマーを使用するが、2種のプライマーの使用は、2つの個々のプライマーの合計ではない第三の像を生産し得る。この第三の像は、Bt菌株間の区別を引き出し得るが、単一プライマーはそれを行なわない。
【0062】
図2〜6は、種々の技術及びプライマーを用いて、Bt クルスタキ及びBt イスラエルシスのそれらに比較されるBt菌株LRC3のDNA指紋を示す(図2では、REP - 1R及びREP - 2Iプライマーを用いるREP増幅;図3では、Bc - REP - 1及びBc - REP - 2プライマー;図4では、ERIC - 2及びERIC - 1Rプライマーを用いるERIC増幅;図5では、BOX - A1Rプライマー;及び図6では、0955 - 03、1940‐12及び1910‐08プライマーを用いるRAPD増幅)。例3は、更に詳細に結果を述べる。一般に、Bt菌株LRC3についてのDNA指紋は、全3種の方法を用いて、Bt クルスタキ及びBt イスラエルシスのDNA指紋と区別され得る。
【0063】
Bt菌株は、異なったcry遺伝子によってコード化されたCry(クリスタル)毒素を生産する。Bt菌株LRC3のcry遺伝子内容物を、商業的組成物中に存在するBt菌株の2つの主要な型、Bt クルスタキ及びBt イスラエルシスのcry遺伝子内容物と比較した。図7は、遺伝子ミクロ配列探索表を示す。図8〜10は、Bt クルスタキ、Bt イスラエルシス及びBt菌株LRC3についての遺伝子ミクロ配列結果を示す。明確には、特殊Cry遺伝子の存在に相応するスポットは、図7の遺伝子ミクロ配列探索表に従って四角に囲まれる。例4はその結果を更に詳説する。Bt クルスタキ中で同定された遺伝子は、予期されたように、Cry1A遺伝子、Cry1Ia遺伝子及びCry2Aa遺伝子を包含する(図8)。同様にBt イスラエルシスは予期された遺伝子を含有し、Cry4及びCry11遺伝子を包含する(図9)。Bt菌株LRC3について同定されたCry遺伝子は、Cry1A、Cry1Abb、Cry1Fb、Cry1Hb、Cry1Ic、Cry1Ka、及びCry2である(図10、例4中の表5及び6)。
【0064】
双翅目の昆虫を根絶するためのBt菌株LRC3の効力を測定して、Bt イスラエルシスの殺虫活性と比較した。流通の商業的生成物、特にBt イスラエルシスでの問題は、狭い宿主域に属する。狭い宿主域は、特殊昆虫を標的にすることに有利であるが、限定された毒性はそのような生成物の使用を減少させる。多数の昆虫は、動物と、作物上で又は他の侵食域で関連される。広範囲の殺虫剤は、一度で多数の昆虫を根絶させ、費用効果で有効な選択を得る。従って、殺虫剤の宿主範囲の拡大が最も所望される。Bt イスラエルシスは、カ及びブユの幼虫だけに影響する極めて狭い宿主範囲を有する。
【0065】
しかし、Bt イスラエルシスに比べて、Bt菌株LRC3は、糸角類(例えば、ブユ、ガガンボ、アカイエカ、ユスリカ、カ及びスナバエ);短角類(例えば、ツリアブ、シカアブ、ウシアブ及びムシヒキアブ);及び環縫類(生きている及び死んだ野菜又は動物物質中で繁殖したハエ、例えば、ボトルバエ、イエバエ、ウシバエ、シカシラミバエ、カオバエ、ミバエ、イエバエ、ツノサシバエ、ウマシラミバエ、ヒトウマバエ、ネズミバエ、ウサギウマバエ、ヒツジシラミバエ、ヒツジハナウマバエ、サシバエ、胃ウマバエ及びツェツェバエ)を含む双翅目の昆虫に対するより広範囲の活性を示す。Bt菌株LRC3は、カオバエ、ミバエ、ツノサシバエ、イエバエ及びサシバエに対して特に有効である。Bt イスラエルシスは幼虫だけに対して有効であるが、Bt菌株LRC3は、例5及び7〜9で説明されるように、成虫にも幼虫に対しても有効である。
【0066】
Bt菌株LRC3及びそのクリスタルの活性を、Bt イスラエルシス及びそのクリスタルと比較した。Bt菌株LRC3の殺虫活性を、Bt イスラエルシスのそれと、成虫、例えば、イエバエ及びウマバエへの飼養生物検定を行なうことによって比較した(例5)。Bt菌株LRC3及びBt イスラエルシスは、それらの全体で使用され得る(即ち、胞子/クリスタル/細菌生成物を包含する)。Bt菌株LRC3は、成虫のイエバエにもウマバエに対しても活性であるが、Bt イスラエルシスは無効である。成虫(即ち、イエバエ及びウマバエ)に対するBt菌株LRC3の精製クリスタルの有効性を試験した(例7)。Bt菌株LRC3の精製クリスタルに対して、ウマバエ成虫は、イエバエ成虫よりも10倍の感受性であることが、LD50値に基づき明らかである。このことは、各種のハエが、それらの腸生理学に依り、Bt毒素へのそれらの感受性において異なると予想される。
【0067】
更に、幼虫(即ち、カオバエ、ミバエ、ツノサシバエ、イエバエ及びウマバエ)に対するBt菌株LRC3の殺虫活性を、飼育及びリング生物検定を行なうことによって試験した(例8)。その結果は、Bt菌株LRC3もBt イスラエルシスも、単純食餌で同様の活性を示すことを表示する。しかし、Bt菌株LRC3は、複合飼育環境での非‐水生幼虫に対して、Bt イスラエルシスよりも有効であり、Bt菌株LRC3は、複合環境ではBt イスラエルシスよりも良好に残存することが示唆される。幼虫(例えば、イエバエ及びウマバエ)に対するBt菌株LRC3の精製クリスタルの殺虫活性を、リング生物検定で試験した(例9)。Bt菌株LRC3の精製クリスタルは、高等幼虫に対して、Bt イスラエルシスのクリスタルよりも有効である。Bt菌株LRC3の精製クリスタルについてのLD50は、カの幼虫に対するBt イスラエルシスについて報告されたLD50(約1ng)よりも10倍低かった。Bt菌株LRC3及びBt イスラエルシスの精製クリスタルの活性で認められる差異は、細菌生成物中に存在する溶菌ホスホリパーゼCが、イエバエ幼虫に対する殆どの活性に効力を有することを示唆する(Keller and Langenbruch 1993)。Bt菌株LRC3及びデルタ‐エンドトキシンクリスタルでのハエ幼虫に対する同様の効果は、デルタ‐エンドトキシンクリスタルがハエ幼虫の致死能力を有する活性生物を含有することを示す。
【0068】
流通の商業的Bt イスラエルシス生成物に比較して、Bt菌株LRC3又はその胞子又はクリスタルは、幼虫期でも成虫期でも広範囲の昆虫を有効に根絶させる能力を有する。Bt菌株LRC3とBt イスラエルシスとの間のデルタ‐エンドトキシン(又は毒素)蛋白質プロフィールは、数種の類似蛋白質の存在を示すにも拘らず、Bt菌株LRC3は、防除され得る昆虫の分布区域も世代も拡張する別個の蛋白質を有する。従って、Bt菌株LRC3又はその胞子又はクリスタルに基づく殺虫剤は、費用効果で、かつ有効性を有する。生物学的起源の生成物として、Bt菌株LRC3又はその胞子又はクリスタルは、捕食性の昆虫、鳥及び哺乳動物に非毒性である化学的殺虫剤以上の著しい有利性を示し、当業者に周知の標準発酵技術を使用して容易に製造される。
【0069】
Bt菌株LRC3は、標準的な周知の培地及び発酵技術を使用して培養され得る。一般に、Bt菌株は、糖、有機酸、アルコール又は他の炭素給源;窒素給源、例えば、アンモニウム;及び所望の場合には、ビタミンを含有する培地上で良好に生長する。Bt菌株は、多くの複合培地、例えば、ディフコ(DifcoTM)栄養寒天培地、LB寒天培地、TBブロス又は他の一般的細菌生長培地上でも培養され得る。Bt菌株LRC3が好気的に最も生長するので、フラスコ中で培養液を強力に振盪させることによって、培養液を空気に曝す。1実施態様で、Bt菌株LRC3は、バクト‐ペプトン、グルコース、第一燐酸カリウム、第二燐酸カリウム及び塩溶液(一方は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び硫酸鉄を含む;他方は、硫酸マグネシウムを含む)を含む発酵培地に接種するために使用される。塩溶液は濾過殺菌され、Bt菌株LRC3の接種時に、オートクレーブ処理されたブロスに加えられる。フラスコは28℃で、回転振盪器上200rpmで3日間、又は細菌が100x倍率の複合顕微鏡で確証されるようなクリスタルを生産するまで恒温保持される。
【0070】
好適な発酵技術は、当業者に公知の技術を使用する工業的発酵槽に容易に規模を大きくすることができる。一般に第一段階は、培地、温度及びpHでの試験的変動のために、5〜10リットルの実験室用発酵槽を用いて行なわれ、次いで、試験工場及び商業的段階のための次第により大きい発酵槽(例えば、150000ガル)の使用が続く。
【0071】
Bt菌株培養液の貯蔵は、常規的継代培養中のプラスミドの損失、従って、クリスタル生産又は他のプラスミド‐生産表現型の可能な損失を防ぐために推奨される。Bt菌株培養液の長期間貯蔵のために、3〜5日間の培養から得られるペレットを、グリセロールと85:15%の割合で混合させる。培養活動中は−20℃で貯蔵し、長期間貯蔵の培養液は−80℃で貯蔵する。クリスタルBt菌株の長期間貯蔵のために、微生物による汚染を防ぐためにクリスタル水中懸濁液にアジ化ナトリウムを加え、溶液を4℃で貯蔵する。
【0072】
発酵に続いて、Bt菌株又はその胞子又はクリスタルは、種々の処方物又は組成物中で使用され得る。Bt菌株、クリスタル及び胞子を含有する発酵培地は、容易に凍結乾燥され、かつその全部で使用され得るが、クリスタルは当業者に公知の方法、例えば、簡単な遠心分離を使用して、胞子及び発酵培地から分離され得る。例6は、Bt菌株LRC3からクリスタルを単離及び精製するための方法を記載する。更に、胞子からのクリスタルの分離段階は、当業者に公知の技術、例えば、紫外線照射又はニトロソグアニジンを用いて、Bt菌株の無胞子性突然変異体又は変体を生産することによって省略することができる。
【0073】
Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、固体、液体、懸濁液、飼料添加物、混合物又は飼料組成物として、次のように組成され得る:
i)固体
Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、固体、顆粒、丸剤、ペレット、ペースト、円盤状物、粉末又は微粉末として組成され得る。粉末又は微粉末の形では、Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、堆積肥料、肥料パテ又は分解物質;肥料穴倉、下水溜り又は敷藁堆積上;葉、作物又は昆虫が関連される他の環境上;又は飼料庫中に又は動物用の定量飼料と混合して噴霧又は散布され得る。
【0074】
ii)液体及び懸濁液
Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、凍結乾燥された又は粉末化のBt菌株、胞子又はクリスタルを好適な液体中に加えることによって、溶液又は懸濁液として組成された液体中に配合され得る。泡状物、ゲル状物、懸濁液、エマルジョン等が同様に好適である。そのような形態で、Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、堆積肥料、肥料パテ又は分解物質;肥料穴倉、下水溜り又は敷藁堆積上;葉、作物又は昆虫が関連される他の環境上;又は飼料庫中に又は動物用の定量飼料上に噴霧又は浸漬され得る。Bt菌株、その胞子又はクリスタルの溶液は、投入浸漬、注入浸漬、噴射又は噴霧によって感受性動物に投与され得る。投入浸漬及び注入浸漬は、動物を飽和させるのに有効である;従って、Bt菌株、その胞子又はクリスタル溶液の投与は、常習的にされる必要はない。しかし、噴射又は噴霧による繰返投与は効果的な湿潤を保証するために要求され得る。
【0075】
iii)飼料添加物又は飼料組成物
Bt菌株、その胞子又はクリスタルを、乳牛及び食肉牛、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、シカ、バッファロー、オオジカ、ニワトリ、シチメンチョウ、同様に家畜、例えば、ネコ、イヌ及びウマを含む(これに限定されるものではない)幼獣及び成獣のために、凍結乾燥のBt菌株、その胞子又はクリスタルを含む飼料添加物又は大粒丸剤の形で、昆虫の環境に間接的に投与することができる。飼料添加物は、動物の常用飼料物質と一緒に包含される又は丸剤又は円盤状剤として供給され得る。
【0076】
飼料物質への活性成分の配合は、一般に活性成分のプレミックスを製造し、プレミックスをビタミン及びミネラルと混合させ、かつ次いでプレミックス又は飼料添加物を飼料に添加させることによって行われる。Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、当業者に公知の他の活性成分と混合され得る。Bt菌株、その胞子又はクリスタルを包含する活性成分は、単独で、又は他の活性成分と組み合わせて、予備混合された補足剤を得るために栄養剤と混合され得る。次いで、プレミックスは飼料物質に添加される。更に、Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、Bt菌株、その胞子又はクリスタルで処理された飼料物質を含む飼料組成物の形で得られ得る。Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、乾燥形で飼料物質と混合され得る;例えば、粉末として、又は水剤又は噴霧剤として使用されるための液体として。
【0077】
前記の組成物は、付着剤、結合剤、植物物質、担体、清浄剤、希釈剤、分散剤、乳化剤、賦形剤、増量剤、充填剤、無機ミネラル、殺虫性担体、殺虫性添加剤、ポリマー、流動剤、拡散剤付着アジュバント、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、又はそれらの組合せを配合することができる。組成物の貯蔵安定性、処理又は投与において補助する成分が好適である。更に、Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、添加的な有益性を得るために、他の細胞、クリスタル、クリスタル蛋白質、プロトキシン、毒素及び他の殺虫剤、例えば、生物致死剤、飼料、殺菌剤及び除草剤と組み合わせられ得る。
【0078】
Bt菌株、その胞子又はクリスタルの濃度は、選択される組成物、適用法、環境状態、侵食程度、又は昆虫の成長段階に依存する多数の因子で変化する。全般的に、有効な殺虫量、つまり、%致死率、更なる作物損害の欠如、又は動物における更なる体重減少の欠如によって測定されるような、昆虫の防除又は撲滅能力を有するBt菌株、その胞子又はクリスタルの量が所望される。特異的に、乾燥組成物は、活性Bt菌株、その胞子又はクリスタル1〜95質量又は容量%、より有利に活性Bt菌株、その胞子又はクリスタル20〜80質量又は容量%、及び最も有利に活性Bt菌株、その胞子又はクリスタル30〜60質量又は容量%を含有し得る。液体組成物は、活性Bt菌株、その胞子又はクリスタル1〜60質量又は容量%、より有利に活性Bt菌株、その胞子又はクリスタル10〜50質量又は容量%、及び最も有利に活性Bt菌株、その胞子又はクリスタル20〜40質量又は容量%を含有し得る。組成物は、胞子10〜10個/ml、より有利に胞子200〜800個/ml、及び最も有利に胞子300〜700個/mlを含有し得る。大面積の土地への投与のために、組成物は、1ヘクタール当たり約50g(乾燥又は液体)〜1kg以上、より有利に1ヘクタール当たり約50g(乾燥又は液体)〜1kg以上、及び最も有利に1ヘクタール当たり約50g(乾燥又は液体)〜1kg以上を投与され得る。土地の状態において、環境的要素、例えば、風又は雨量によって活性物質が排除されることを避けるために、常習的投与が要求される。
【0079】
前記の組成物は、昆虫を防除又は撲滅するための多様の方法で、侵食領域又は感受性動物に投与され得る。用語"侵食領域"は、双翅目の昆虫によって被害を受けた領域に関する。粉末又は微粉末の形で、Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、堆積肥料、肥料パテ又は分解物質;肥料穴倉、下水溜り又は敷藁堆積上;葉、作物又は昆虫が関連される他の環境上;又は飼料庫中に又は動物用の定量飼料上に撒かれる又は散布され得る。
【0080】
Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、"餌箱"、つまり、昆虫を食物給源に誘引して、昆虫に有効量のBt菌株、その胞子又はクリスタルを摂取させるような誘引剤、例えば、血液又は発酵乳を含有する蓋付の箱中で昆虫に与えられ得る。そのような箱は、昆虫が頻繁に出入する領域に置かれる。
【0081】
更に、Bt菌株、その胞子又はクリスタルの丸剤又は円盤状剤は、昆虫の環境に徐々にクリスタルを放出させるために、水生環境に浸漬され得る。例えば、そのような丸剤又は円盤状剤は、昆虫、例えば、カが繁殖又は孵化する溜り水中に置かれ得る。そのような丸剤又は円盤状剤は、直接、堆積肥料、肥料パテ、分解物質、肥料ピット、糞尿池、敷藁屑に、葉、作物又は昆虫が関連される他の環境上に、又は飼料棚中に、又は動物用の定量飼料と混合して供給され得る。
【0082】
Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、動物用の飼料添加物又は飼料組成物の形で、昆虫の環境に間接的に投与され得る。Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、Bt菌株、その胞子又はクリスタルで処理された飼料物質を含む飼料添加物又は飼料組成物の形で得られ得る。Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、乾燥形で、例えば、粉末として、又は飼料物質を被覆するための液体として、飼料物質と混合され得る。Bt菌株、その胞子又はクリスタルの丸剤又は円盤状剤が動物によって消費される場合に、Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、堆積肥料、肥料パテ、肥料ピットに、動物の飼料を経て間接的に置かれ得る。
【0083】
更に、Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、人間によって頻繁に出入される環境、例えば、温室、ピクニック域、バックヤード、公園又は湖と関連される昆虫を防除又は根絶するために使用され得る。Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、例えば、人間には迷惑である蚊又はブユを防除するために、特別な環境に供給され得る。従って、Bt菌株、その胞子又はクリスタルは、基本的に人間、ペット及び野生動物には非‐毒性であるので、殺虫剤の使用が、通例、逆効果を引き起こす感性域で使用され得る。
【0084】
本発明は、同様に、バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体の単離された核酸に及び、この際、核酸は双翅目の昆虫への蛋白質毒性をコード化する。蛋白質は、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2又はその変体であることが有利である。核酸は、cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka、cry2又はその変体から選択されるエンドトキシン遺伝子を含むことが有利である。更に、本発明は、全長配列及びその断片を含むBt菌株LRC3の遺伝子及びそのような遺伝子の使用に及ぶ。当業者に公知の標準技術は、Bt菌株の遺伝子及びクリスタルをコード化する特殊遺伝子を単離するために使用され得る(Sambrook et al., 1989 ; Ausubel et al., 2000)。断片は、当業者に公知の標準技術に従って、商業的に得られるエキソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼを使用して作られ得る。
【0085】
そのような遺伝子は、種々の発現系に導入され得る。宿主細胞は、動物、植物、酵母、菌類、原生動物及び原核生物宿主細胞を包含し得るが、これに限定されるものではない。適当な宿主の選択は、因子、例えば、遺伝子‐宿主適合性、発現効力、遺伝子の安定性及び最少分解又は不活性化に依存する。
【0086】
重要な作物の成長領域に自然に宿り、かつ昆虫のための周知の飼料給源である微生物は、形質転換され、成長領域に供給されかつ昆虫によって摂取される。Bt菌株LRC3よりも早い生長率を有する好適な微生物は、所望のクリスタルの生産を促進させるために遺伝子で形質転換され、又はクリスタルの活性を延長させるために又は分解を予防するために変性され得る。更に、昆虫によって侵食された特殊環境で育つ特異的微生物を形質転換させることが所望される;例えば、水中で良好に生き残る微生物は、水生双翅目、例えば、蚊の幼虫に対して有効である。使用され得た微生物は、クロカビ(Aspergillus niger)、アスペルギルスフィキュウム(Aspergillus ficuum)、アスペルギルスアワモリ(Aspergillus awamori)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)、枯草菌(Bacillus subtilis)又はリヒェニホルミス(licheniformis)、クラビバクターキシリ(Clavibacter xyli)、大腸菌(Escherichia coli)、クルイベロミセスラクチス(Kluyveromyces lactis)、ムコルミエヘイ(Mucor miehei)、ピチアパストリス(Pichia pastoris)、プセイドミナスフルオレスセンス(Pseudomonas fluorescens)、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びトリコデルマレエセイ(Trichoderma reesei)を包含するが、これに限定されるものではない。
【0087】
昆虫‐耐性トランスジェニック植物は、その組織中に毒性クリスタルを発現するために工学的に処理され、それによって作物を餌とする昆虫を殺すことができる。動物については、特殊植物種における遺伝子の発現は、Bt菌株、その胞子又はクリスタルを、感受性動物に補足するための経済的で直接的な方法を提供する。植物種は、大麦、キャノーラ(canola)、トウモロコシ、亜麻、耕作果物、干し草、カラス麦、馬鈴薯、米、ライ麦、モロコシ、トマト、野菜、耕作ブドウ、小麦及び花壇用植物を包含するが、これに限定されるものではない。本発明で使用するための有利な植物種は、大麦、トウモロコシ、干し草、及び小麦である。
【0088】
宿主細胞中へ外来DNAを導入させるために、微粒子衝撃、アグロバクテリウム(Agrobacterium)‐媒介の形質転換、プセイドモナスフルオレスセンス(Pseudomonas fluorescens)媒介の形質転換、プロトプラスト形質転換、顕微注射、高速弾道浸透及び電気穿孔を含む種々の技術が提供されるが、これに限定されるものではない。
【0089】
更に本発明は、全長配列及びその断片を含む、Bt菌株の変体又は突然変異、及びその遺伝子に及ぶ。本発明は、有利に、双翅目の昆虫を防除又は根絶するための、Bt菌株LRC3の変体又は突然変異及びその遺伝子の使用に及ぶ。Bt菌株の突然変異は、紫外線照射又はニトロソグアニジンを包含するが、これに限定されない当業者に公知の技術によって誘発され得る。培養液を、自発的突然変異、例えば、形態又は色の視覚的観察又は類似特性、例えば、封入型、H‐抗原、又は蛋白質プロフィールの存在の同定によって、変体についてスクリーニングすることができる。次いで、変体は、クリスタル毒性について慣用の小規模スクリーニングによって更に選択される。次いで、好適な変体は、収率向上又は突然変異、組換体又は遺伝子的に工学処理されたその誘導体を生産するために菌株それ自体を操作する公知技術の使用によって、毒素生産のために最適化される。そのような操作は、選択された変体、例えば、エチルメタンスルホネート突然変異を介して得られるような、クリスタルを生産するが、胞子を生産しない無胞子性変体の有利な表現型の調整を同様に含む。Bt菌株又はその変体は、同様に、特殊毒性プロフィールの遺伝子決定因子を同定する、好適な遺伝子‐特異性又は配列‐特異性プローブを構築する、及びそれら決定因子の存在のための他の菌株を詳細にプレ‐スクリーニングするための出発物質として使用されることが認められる。
【0090】
選択的に、当業者は、Bt菌株から得られる遺伝子又はBt菌株の変体又は突然変異体から得られる遺伝子を、標準突然変異誘発技術を介して変更し、かつ変更遺伝子配列をクリスタル蛋白質の発現のために試験することができる。当業者に公知の有用な突然変異誘発技術は、オリゴヌクレオチド‐支配突然変異誘発、領域‐特異的突然変異誘発、リンカー‐スキャニング突然変異誘発、及びPCRによる部位‐支配突然変異誘発(Sambrook et al., 1989 ; Ausubel et al., 2000)を包含するが、これに限定されるものではない。相同ヌクレオチド配列は、DNAハイブリダイゼーション分析によって測定され得る。2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドは、各々2つの配列中のヌクレオチド又はアミノ酸残基が、ここで記載されるように最高の一致のために線列した時に同じである場合に、"相同"又は"同一"である。2つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチドの間の配列比較は、一般に、配列類似性の局部領域を同定及び比較するために、比較窓上の2つの配列部分を比較することによって行なわれる。比較窓は、一般に、約20〜約200個の連続ヌクレオチド又は連続アミノ酸残基である。ポリヌクレオチド及びポリペプチドについての"配列同一%"又は"配列相同%"は、比較窓上の2つの最適な線列した配列を比較することによって測定することができ、この際、比較窓中のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列部分は、2配列の最適線列のための対照配列(付加又は欠失を含まない)に比較されるように、付加又は欠失(即ち、ギャップ)を含む。%は、;(a)釣り合った位置の数を得るために、2つの配列中で同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が生じる位置の数を測定することによって;(b)比較窓中の位置の全数によって釣り合った位置の数を除することによって;(c)配列同一%を得るために、結果に100を乗じることによって計算される。
【0091】
比較のための配列の最適線列は、既知数字のコンピューター処理によって、又は検査によって処理される。アミノ酸配列の"配列同一%"又は"配列相同%"は、前記のように得られるBLASTPプログラムの欠失値に従って測定される最適配線列列に基づき測定される。ヌクレオチド配列間の相同性は、同様にDNAハイブリダイゼーション分析によって測定することができ、この際、二本鎖DNAハイブリッドの安定性は、生じる塩基対の程度に依存する。高温及び/又は低塩濃度の条件は、ハイブリッドの安定性を減少させ、選択された相同程度よりも少なく有する配列のアニーリングを予防するために変えられ得る。
【0092】
更に、本発明は、Bt菌株の変体又は突然変異体クリスタルを用いる、双翅目の昆虫の防除又は根絶法に及ぶ。変体は、公知の標準技術を使用して生産される(Sambrook et al., 1989 ; Ausubel et al., 2000)。それらの当業者は、一定のアミノ酸置換、付加、欠失、及び翻訳後修飾によって、生物学的活性を損失又は減少させずに、蛋白質が変性されることを認める。特に、保存的アミノ酸置換、即ち、1つのアミノ酸と類似した大きさの他のアミノ酸との置換、電荷、極性及び立体配座は、蛋白質機能を著しく変化させそうにないことは周知である。蛋白質の成分である20種の標準アミノ酸は、次のような保存的アミノ酸の4群に広く分類され得る:非極性(疎水性)群は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニ‐ルアラニン、プロリン、トリプトファン、及びバリンを含む;極性(非荷電、中性)群は、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン及びチロシンを含む;陽電荷(塩基性)群は、アルギニン、ヒスチジン及びリシンを含む;及び陰電荷(酸性)群は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。蛋白質中の1つのアミノ酸と同じ群内の他のアミノ酸との置換は、蛋白質の生物学的活性へ不利益な作用を及ぼすことはない。
【0093】
ここで詳細に記載された以外の選択的方法、成分、工程及び技術は、本発明を実施するために使用される又は容易に適応され得ることは、通常の当業者には明白である。更に本発明を、次の非‐限定例で説明する。ここで使用される全略語は、当業で使用される標準的略語である。例中に詳細には記載されていない特殊工程は、公知技術水準で周知である。
【0094】
例1 Bt菌株LRC3の特性及び培養
バチルスチューリンゲンシス菌株を、起源的に、バチルスゲネティックストックセンター(Bacillusu Genetic Stock Center)(Department of Biochemistry, Ohio State University, 484 West Twelve Avenue, Colombus, Ohio, U. S. A. 43210)から得た。この野生型は、2004年10月6日に、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)に、受付番号(Accession Number)PTA‐6248で寄託された。Bt菌株LRC3を次の発酵培地で接種するために使用した:
表2.Bt LRC3菌株を培養するために使用される培地の組成
【表2】

【0095】
塩溶液#1及び#2を濾過殺菌し、かつBt菌株LRC3での接種時に、オートクレーブ処理したブロスに加えた。フラスコを28℃回転振盪器上200rpmで3日間、又は光学顕微鏡下(油)100x倍率で検証されるように、細菌がクリスタル蛋白質を生産するまで恒温保持した。
【0096】
例2 Bt菌株LRC3、Bt クルスタキ及びBt イスラエルシスから精製した蛋白質デルタ‐エンドトキシンクリスタル
Bt クルスタキoy及びBt イスラエルシス菌株を、各々、バチルスゲネティックストックセンターから、BGSC受付番号4D1及び4Q5で得た。SDS‐PAGEを使用する蛋白質プロフィールは、標準Bt クルスタキ及びBt イスラエルシスとBt菌株LRC3とのクリスタル組成比較を得るために行なわれた(図1)。3種の菌株についての精製クリスタルを、NuPAGETM Mops-Novex10%Bis‐Trisゲル(インビトロゲン(Invitrogen))上で展開させた。図1は、Bt菌株LRC3(線列2)、Bt クルスタキ(線列3)及びBt イスラエルシス(線列4)から単離されるクリスタルについての蛋白質結合像を示し、線列1では、標準分子量(molecular weight standards)(kDa)を用いる(ミオシン191、ホスホリラーゼ97、牛血清アルブミン64、グルタミン脱水素酵素51、アルコール脱水素酵素39、炭酸脱水酵素28、ミオグロビンレッド19、リソチーム14)。Bt クルスタキは、Cry1Aa、Cry1Ab及びCry1Acを表わす約191、120kDa帯域、及びCry2Aを表わす約64kDa帯域を有する。Bt イスラエルシスは、Cry4Aを表わす約100kDa帯域、Cry4Bを表わす約97kDa蛋白質、cry10及びCry11を表わす64kDa蛋白質、及びCyt1A毒素を表わす30又は27kDa帯域を有する。標準SDS‐ゲル系上で展開する試料中に認められなかった約19kDa蛋白質帯域も存在する。Bt菌株LRC3は、約191kDa帯域、120kDa帯域、80kDa帯域、70kDa帯域、55kDa帯域、48kDa帯域、40kDa帯域、38kDa帯域、28kDa帯域及び25kDa帯域を有する。
【0097】
例3 Bt菌株LRC3とBt クルスタキ及びBt イスラエルシスとの比較のためのDNA指紋法
a)REP、BOX及びERICプライマーのためのPCR混合物
3つの異なった型の方法を、それら自体特殊プライマー配列を有する各方法で、指紋像、つまり、REP、ERIC及びRAPDを生じさせるために使用した(表3)。標準REP‐PCR混合物を、Bc‐REP‐PCR混合物(Reyes - Ramirez and Ibarra, 2005)以外、全プライマーについて作成した(Urzi et al., 2001)。
【0098】
表3:指紋増幅に使用されるプライマーの配列
【表3】

【0099】
b)RAPDプライマーについてのPCR混合物
RAPDは、最適な増幅帯域生産を得るために使用される各プライマーについての種々のプロトコール試験を必要とする困難な方法であり得る。ニルソン(Nilsson)et al., 1998の方法は、0955‐03及び0940‐12プライマーに使用されるが、ブロッソー(Brousseau)et al., 1993の方法は、プライマー0910‐08に使用された。
【0100】
c)REP、BOX及びERICプライマーのためのPCR増幅条件
全ての指紋増幅条件は、プライマーの変化しやすい大きさのために、アニーリング反応中でのみ生じる任意の変化と同一であった。次のPCRプログラムが使用された:95℃で5分間の初期変性、次いで変性(95℃で1分間)の35サイクル、適当な温度(表4参照)で2分間のプライマーアニーリング、及び重合(72℃で2分間)。最終増幅は72℃で10分間であった。
【0101】
d)アガロースゲル電気泳動法
電気泳動に先立ち、ビストラグリーン(Vistra GreenTM)(Amersham Life Science, RPN 5786)を、最終濃度1X(濃度は10000Xである)で各PCR‐発生試料に直接添加した。各試料を1.2%アガロースゲル(Multicell 400 - 700115)上で、100ボルト(V)で1時間及び次いで175ボルトで更に2時間展開させた。ゲルを、535nmWB50 SYBR グリーンフィルター(Green filter)を用いるコダック(KodakTM)ゲルロック(Gel Logic)200イメージングシステム(imaging system)を用いて視覚化した。
【0102】
表4:プライマー及びプライマー対を指紋化するために使用されるアニーリング温度
【表4】

【0103】
e)蛍光DNA標識化
1つの反応でゲノムDNAを直鎖増幅及び標識化するためにランダムプライマーを使用するビオプライム(BioprimeTM)DNAラベリングシステム(labeling System)(インビトロゲン)でゲノムDNAを標識化した。キットと共に得られるビオチン‐dNTP 混合物を、1段階でDNAを蛍光的に標識化するために、自家製のdNTP混合物及びCy5‐dCTP(パーキンエルマー(Perkin - Elmer))に代えた。他の点では、反応を製造者のプロトコールに従って行なわれ、37℃で3.5時間恒温保持した。反応は、ピュアリンク(PureLinkTM)PCR精製キット(Purification Kit)(インビトロゲン)を用いて精製された。DNA収率及び純度、同様に色素の配合は、260nm(DNA)及び650nm(Cy5色素)での光学密度を測定することによって、及びダノドロップ(DanoDrop)ND - 1000分光光度計(ダノドロップテクノロジー(NanoDrop Technology))で260nm/280nm率を計測することによって評価された。3.9〜4.7%のシアニン色素配合を示すDNAだけが、ハイブリダイゼーションに使用された(これは、色素配合0.7〜1.0ピコモル(pmol)/μlであり、http://www.pangloss.com/seidel/Protocols/percent_inc.html参照)。
【0104】
f)cryArrayハイブリダイゼーション及び分析
cryArray11.0版チップ上でのハイブリダイゼーションのために、プレ‐ハイブリダイゼーション段階を、先ずディグエージーヒューブ緩衝液(DIGTM Easy Hyb Buffer)(ロッシュ(Roche))を用いて、5%BSA(ギブコ(Gibco))の存在で、水浴中47℃で1時間行なった。次いで、カバーグラスを除去するために、スライドを37℃に予備加熱された0.1X SSC中に浸漬し、エアーダスターで乾燥させた。ビオプリム標識化反応中に発生される全標識化DNA(試料に依存して1.3〜2.1μg)を、ハイブリダイゼーションに使用した。DNAを、スピードバク(SpeedVac)中で乾燥させ、DIG緩衝液中に再懸濁させた。DNAを95℃で5分間変性させ、かつ氷上に5分間置き、その後に47℃で4時間ハイブリダイゼーションを行なった(レトウスキ(Letowski)et al., 2005)。37℃に予備‐加熱された0.1X SSC/0.2%SDSを用いて、カバーグラスを除去し、スライドを37℃で5分間0.1X SSC/0.2%SDSで3回洗浄した。SSC0.1Xでの最終洗浄は、37℃で5分間行い、その後にスライドをエアーダスターで乾燥させた。
【0105】
g)結果
図2は、個々にREP‐1R及びREP‐2Iプライマーを使用して(区分A及びB)及び組み合わせて(区分C)、Bt クルスタキ(線列1)及びBt イスラエルシス(線列3)に比較したBt菌株LRC3(線列4)のDNA指紋を示す。1線列当たり、各反応の8μlを装填させた。線列Mは、はしご状でキロベース(kb)でのDNAの大きさであるが、線列Cは対照(‐DNA型)である。REP‐1Rプライマーによって生産された像は、Bt菌株LRC3及びBt イスラエルシスが極めて類似していることを示唆した;しかし、Bt イスラエルシスDNAは、Bt菌株LRC3には不在であった1.5kbでの強力な帯域を生産した。
【0106】
類似の筋書きが、REP‐2Iプライマーで認められ、そこでは全ての菌株が多くの共通の帯域を分担したが、Bt菌株LRC3は、Bt クルスタキとは0.2kbでの強力な帯域によって、かつBt イスラエルシスとは1.3〜1.6kbの2帯域の欠失によって区別され得た。これら2つのプライマーの組合せは、〜0.3kbでBt イスラエルシスについての弱い単一帯域を与え、これは、殆ど同一のBt菌株LRC3を識別させた。
【0107】
図3は、個々にBc‐REP‐1及びBc‐REP‐2プライマーを使用して(各々、区分A及びB)及び組み合わせて(区分C)、Bt クルスタキ(線列1)及びBt イスラエルシス(線列3)に比較したBt菌株LRC3(線列4)のDNA指紋を示す。1線列当たり、各反応の8μlを装填させた。線列Mは、はしご状(kbで)のDNAの大きさであるが、線列Cは対照(‐DNA鋳型)である。異なった像が、バチルスを基礎とするREPプライマー、Bc‐REP‐1及びBc‐REP‐2を用いて認められた。Bc‐REP‐1プライマーは、共通帯域を生産しないことによって、Bt クルスタキとのBt菌株LRC3の卓越した識別を得た。Bt菌株LRC3及びBt イスラエルシスは、唯一の帯域2.7kb及び2.2kbを各々有することによって区別され得た。Bc‐REP‐2は、Bt菌株の更に良好な識別体であった。この点では、殺蚊性Bt イスラエルシス及びBt菌株LRC3間の多数の類似性が認められた;しかし、Bc‐REP‐2は、〜0.8kbで強力な唯一の1帯域を生産したBt イスラエルシスでは見られなかったBt菌株LRC3についての2つの強力な帯域を明らかに生産した。興味深いことに、2つのBc‐REPプライマーを一緒に混合させて2つの菌株を類似に見させる場合には、Bt イスラエルシスについての1つの強力な及び2つの弱い同一とされる帯域を除いては、Bt イスラエルシス又はBt菌株LRC3についてはBc‐REP‐2で見られた強力な帯域は消失する。
【0108】
図4は、個々に腸内細菌科(Enterobacteriaceae)を基礎とするREPプライマーERIC‐1及びERIC‐2を使用して(各々、区分A及びB)及び組み合わせて(区分C)、Bt クルスタキ(線列1)及びBt イスラエルシス(線列3)に比較したBt菌株LRC3(線列4)のDNA指紋を示す。更に多くの帯域がBt菌株の中に生産されるが、多くの共通の帯域が分担された;しかし、他の菌株からBt菌株LRC3を識別する唯一の帯域が、ERICプライマーについて認められ得る。2つのプライマーを組み合わせた場合には、帯域化像は、この混合物が個々のプライマーと同様に識別しないことを示唆する多くの弱い帯域を伴って一層複雑であった。
【0109】
図5は、個々にBOX‐A1Rプライマーを用いるERIC増幅技術を使用して(区分A)及びERIC‐2プライマーと組み合わせて(区分B)、Bt クルスタキ(線列1)及びBt イスラエルシス(線列3)に比較したBt菌株LRC3(線列4)のDNA指紋を示す。ERICプライマーで見られる増幅帯域の多重度は、BOX‐A1Rが単独で使用された場合ですら高かった。このプライマー像は、唯一1.6kb帯域を有するBt菌株LRC3で生じた。更に、Bt菌株LRC3は、2.6kb帯域を有し、かつ1.9kb帯域を欠失することによってBt イスラエルシスとは更に区別され得た。興味深いことに、ERIC‐2プライマーと共にBOX‐A1Rを使用して、BOX‐A1Rプライマー単独で見られた1kb以上の多数の帯域の大多数が消失し、かつプライマー単独でも見られなかった新規の帯域が0.5kb以下で現われた。これらの低帯域は、3つの単離体間の容易な識別を与える。
【0110】
図6は、0955‐03、1940‐12及び1910‐08プライマー(各々、区分A、B及びC)でのRAPD増幅技術を用いる、Bt クルスタキ(線列1)及びBt イスラエルシス(線列2)に比較したBt菌株LRC3(線列4)のDNA指紋を示す。線列Mは、はしご状(kbで)でのDNAの大きさであり、かつ線列Cは、対照(‐DNA鋳型)である。1線列当たり、各反応の8μlを装填した。0955‐03及び1940‐12は、菌株の間で共通の強力な帯域を持たない卓越した識別像を生産した。1910‐08プライマーは、菌株の間で多数の共通帯域を生産した;しかし、Bt菌株LRC3と他の菌株との間の差異は、夫々の場合に応じて見い出され得た。
【0111】
例4 Bt菌株LRC3、Bt クルスタキ及びBt イスラエルシスのCry遺伝子内容物
cryArray 11.0版チップ上でのハイブリダイゼーションに先立ち、先ずプレ‐ハイブリダイゼーション段階を、5%牛血清アルブミン(ギブコ)が存在して、ディッグイージーヒューブ緩衝液(DIGTM Easy Hyb Buffer)(ロッシュ)を用いて、水浴中47℃で1時間行なった。次いで、カバースライドを除去するために、スライドを予備‐加熱した0.1X SSC中に浸漬させ、エアーダスターで乾燥させた。ビオプリム標識化反応中に発生した全標識化DNA(試料に依り、1.3〜2.1μg)を、ハイブリダイゼーションに使用した。DNAをサーバントスピードバック(Savant SpeedVacTM)中で乾燥させ、ディッグ緩衝液中で再懸濁させた。DNAを95℃で5分間変性させ、かつ氷上に5分間置き、その後に47℃で4時間ハイブリダイゼーションを行なった(Letowski et al., 2005)。37℃に予備‐加熱した0.1X SSC/0.2%SDSを用いて、カバーグラスを除去し、スライドを37℃で5分間0.1X SSC/0.2%SDSで3回洗浄した。SSC0.1Xでの最終洗浄を37℃で5分間行ない、その後にスライドをエアーダスターで乾燥させた。
【0112】
Bt菌株LRC3のcry遺伝子内容物を、第三順位のCry1に集中するが、cry2、cry3、cry4、cry9及びcry11について一般的な第一順位の遺伝子試料も含有するcryArrayチップ、11.0版を使用して評価した。図7は、cry微配列検定として言及されるcryArray結果についての指紋検索表を示す。全オリゴヌクレオチド試料は、チップの上部4分の3で指紋化される第三cry1‐特異的試料、チップの右下の四分円でのより一般的な第二順位のcry1プライマー及び左下の4分円での他の一般的な第一順位の遺伝子試料と三重で指紋化された。4種の指紋菌株からの精製ゲノムDNAを、シアニン‐5色素で標識化し、再精製した。各DNA試料約1.3〜2.1μgを、cryArrayにハイブリダイゼーションした。
【0113】
cryArrayにハイブリダイゼーションした第一菌株は、商業的に周知の菌株Bt クルスタキであった(図8)。多数の陽性蛍光スポットが観察され得た。検定の冗長設計によって強制されるように、特殊遺伝子について設計された全試料は、菌株中に存在すると見なされるべきその遺伝子について陽性でなければならない。このチップは、2つの第一遺伝子群、cry1及びcry2を明らかに同定した。第二水準で、cry1遺伝子は、cry1A及びcry1Iの間で分けられた。このチップは主に大きなcry1遺伝子群に集中したので、ただ1つの第二cry2遺伝子試料が指紋化された;従って、cry2A遺伝子だけが同定された。第三水準で、cry1及びcry2信号が、その全部がこの菌株中にあると知られる3つの既知第二群の遺伝子、cry1A遺伝子(cry1Aa、b及びc)、cry1Ia遺伝子及びcry2Aa遺伝子として同定された。
【0114】
冗長研究法により、陽性又は蛍光性である遺伝子特異的オリゴの部分集合だけを示す遺伝子は、存在するとは考えられない。Bt菌株LRC3は双翅‐活性であり、ゲノム水準でBt イスラエルシスに最も類似性を示したので(指紋データによって示されるように)、標識化Bt イスラエルシスでのハイブリダイゼーションが実施された(図9)。第一順位のcry4及びcry11遺伝子試料は陽性であった。
【0115】
Bt菌株LRC3からの標識化ゲノムDNAが、cryArrayにハイブリダイゼーションされた場合には、多数のスポットがcry1及びcry2遺伝子に相応して陽性であった(図10)。Bt クルスタキ及びBt イスラエルシスを用いて、第二ハイブリダイゼーションが第一の結果を確証するために実施された。結果は、第一ハイブリダイゼーションと100%一致である(データは示されない)。一般的な第一及び第二順位の試料設計は、検査者に新規の遺伝子変体を検出させる。例えば、第二順位のcry1Bについての試料は陽性であるが、第三順位のcry1B試料(即ち、cry1Ba、cry1Bb等)のいずれも陽性ではない場合には、遺伝子の新規変体が存在する。
【0116】
Bt菌株LRC3結果の要約が表5及び6に示すように、試験された7つの異なった第一群の中で、2つが陽性であった(cry1及びcry2)。これらの2つの第一順位内で、第三順位での少なくとも7つの異なった遺伝子がこの菌株中に存在する(表6)。更に、これら7つの遺伝子の内で、一般的な第二cry1A試料が明らかに陽性である場合に、陽性の第三cry1A順位試料の欠失によって推論されるように、cry1Aの新規変体が注目された。cry2順位では、第三cry2Aa試料は陰性であるが、第一試料は陽性であった。全第二cry2遺伝子群はチップ上に表現されないので、新規のcry2遺伝子であるかどうかは決定されない。為され得る唯一の決定は、それがcry2Aa遺伝子ではないということである(表6)。
【0117】
表5.陽性第一順位又は下位
【表5】

【0118】
表6.陽性遺伝子の第三順位要約
【表6】

【0119】
a cry1A第二群遺伝子は検出されたが、これは既知cry1A群のいずれにも属さず、新規遺伝子を考慮されるべきである。
【0120】
b cry2第二群遺伝子は検出されたが、cry2Aa以外のcry2遺伝子に特異的な試料は、チップ上に無く、従って、それはcry2Aa遺伝子ではないとだけ決定し得る。
【0121】
c 宿主特異性は、バチルスチューリンゲンシスクリスタル毒素遺伝子命名法サイト(http://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil Crickmore/Bt/)(NCBIに再向)か、又はCFS毒性データベースウエブサイト(http://www.glfc.cfs.nrcan.gc.ca/science/research/netintro99_e.html)で検証させた。疑問符(?)マークは、その特異性が一般的知識ではない又は未知であることを意味する。
【0122】
例5 双翅目の成虫に対するBt菌株LRC3の殺虫効果
Bt菌株LRC3の殺虫効果を、Bt イスラエルシス(BGSC‐4Q5)のそれと、イエバエ及びウマバエの成虫への飼養生物検定を行なうことによって比較した。ツノサシバエ成虫は、動物を離れて養育され得ないので試験されなかったが、カオバエもクリスタル蛋白質が乾燥食餌のために組成される必要があったために含まれなかった。Bt菌株LRC3及びBt イスラエルシスは、それらの全体で使用された(即ち、胞子/クリスタル/細菌生成物を包含する)。新規に発生した30匹のイエバエ又はウマバエの成虫を生物検定室に入れ、Bt菌株LRC3又はBt イスラエルシスを普通食餌(即ち、イエバエには濃縮牛乳及びウマバエには血液)中約10org/mlの容量で与えた。3日間、全ハエは新鮮飼料/細菌を与えられ、死んだハエはいずれも除去された。全てのハエは、処理に曝された3日間後に評価された(表7)。Bt菌株LRC3は、イエバエ成虫にもウマバエ成虫に対しても有効であることが判明したが、Bt イスラエルシスは無効であった。
【0123】
表7.双翅目の成虫に対するBt菌株LRC3の殺虫効果
【表7】

【0124】
例6 Bt菌株LRC3及びBt イスラエルシス(BGSC‐4Q5)からのクリスタルの精製
Bt菌株LRC3及びBt イスラエルシスからのクリスタルを単離し、精製した。各細菌を栄養培地335ml中で培養した(例1、表2)。3個のフラスコを活動株からの各生物について生長させ、28℃で7日間、200rpmで振盪させた。培養物を250ml入り遠心壜中7000rpmで20分間の遠心分離によって収穫した。次いで、1菌株当たり、3つのフラスコからのペレットを、1つの250ml入り遠心壜中に溜め、殺ハエ生理食塩水100mlを加えた。各壜に、リソチーム0.4gを加え、壜を振盪器上に200rpmで2日間置いた。壜を10000rpmで20分間遠心分離させ、上澄液を捨てた。食塩洗浄液(トリス0.1モル、 NaCl1モル、EDTA10ミリモル、pH7.0)100ml及びトリトン(TritonTM)‐X100 1%を加え、壜を振動プレート上に2日間置いた。次いで、後続の遠心分離、特殊緩衝液中でのペレットの再懸濁又は洗浄、及び攪拌を行なった:
a)遠心分離、食塩洗浄液200ml中でのペレットの再懸濁、及び1日間の攪拌;
b)遠心分離、50%食塩洗浄液200ml中でのペレットの再懸濁、及び1日間の攪拌;
c)遠心分離、50%食塩洗浄液100ml中でのペレットの再懸濁、リソチーム0.2gの添加、及び2日間の攪拌;
d)遠心分離、50%食塩洗浄液200mlで2回のペレットの洗浄;
e)遠心分離、25%食塩洗浄液200mlで2回のペレットの洗浄;及び
f)遠心分離、無菌蒸留水200mlで2回のペレットの洗浄。
【0125】
精製クリスタルペレットを、最後に、無菌蒸留水25〜50ml中に再懸濁させた。クリスタルの長期間貯蔵のために、0.02%アジ化ナトリウムの添加が推奨される。最終調製物を10%SDS‐PAGEゲル上での試料の展開によって純度について検証し、調製物の蛋白質濃度を、ビオ‐ラド蛋白質検定(Bio‐RadTM Protein Assay)(ビオ‐ラドラボラトリーズ(Bio - Rad Laboratories), 1000 Alfred Nobel Drive, Hercules, CA, U. S. A. 94547)を用いて決定した。
【0126】
例7 双翅目の成虫に対するBt菌株LRC3の精製クリスタルの殺虫効果
イエバエ及びウマバエの成虫に対するBt菌株LRC3の精製クリスタルの効果を試験した。Bt イスラエルシスクリスタルは、細菌が活性ではなかったので、試験されなかった。30匹の新規に発生したイエバエ又はウマバエの成虫を、生物検定室に加え、Bt菌株LRC3の精製クリスタルを、普通食餌(すなわち、イエバエには濃縮牛乳及びウマバエには血液)中クリスタル蛋白質約389ng/mlの用量で与えた。3日間、全ハエは新鮮飼料/精製クリスタルが与えられ、死んだハエはいずれも除去された。全てのハエは、処理に曝された3日間後に評価された(表8)。
【0127】
表8.双翅目の成虫に対するBt菌株LRC3の精製クリスタルの殺虫効果
【表8】

【0128】
LD50値(即ち、試験ハエ群の50%の致死率を引き起こす精製クリスタルの量)が、精製クリスタルの短期中毒ポテンシャル又は急性毒性を測定するために得られた。LD50値に基づき、ウマバエ成虫は、Bt菌株LRC3の精製クリスタルに対して、イエバエ成虫よりも10倍(10x)多い感受性であると思われる。
【0129】
例8 双翅目の幼虫に対するBt菌株LRC3の殺虫効果
Bt菌株LRC3菌株を、例1に記載したように培養し、遠心分離させかつ無菌水中で再懸濁させ、胞子約10個/mlを有する調製物を得た。次いで、この細菌調製物を各種ハエの飼養食餌と、胞子2.5x10個/食餌gの用量で混合した。対照処理は無菌水を含む。
【0130】
i)飼養生物検定
カオバエについて、35個の卵を濾紙上に置き、次いで、処理された家畜肥料上に逆さまに置いた。ミバエについては、オス及びメスを実験室コロニーから得て、4ペアを標準ミバエ飼養バイアル中に置いた。蛹化は、実験の開始後1〜2週間を割り当てられた。ツノサシバエについては、25個の卵を濾紙上に置き、次いで、処理された家畜肥料上に逆さまに置いた。イエバエは実験室コロニーから集められ、洗浄され、かつ孵化第一齢幼虫が集められた。約30匹の第一齢幼虫を濾紙上に置き、次いで、処理された人工ハエ飼養食餌(即ち、小麦ふすま、ビールかす、アルファルファ、ビール酵母、及び水)上に逆さまに置いた。ウマバエ卵を実験室コロニーから集め、洗浄し、栄養寒天プレート上の濾紙上に置いた。卵を25℃、相対湿度60%及び光周性16:8で一晩恒温保持した。新規に発生した第一齢幼虫を約24時間後に集めた。約30匹の第一齢幼虫を濾紙上に置き、次いで、処理された人工ハエ飼養食餌(小麦ふすま、おがくず、ビールかす、アルファルファ、ビール酵母、水)上に逆さまに置いた。
【0131】
ii)リング生物検定
約30匹の第一齢幼虫のイエバエ又はウマバエを飼養し、次いで、ペプトン1.0g/L、NaCl2.0g/L、KH2PO4 0.26g/L、Na2HPO4 2.6g/L、寒天15g/L及び卵黄4個/Lを合わせることによって製造した卵黄培地プレート上の濾紙上に置き、次いで、最終混合物を標準ペトリ皿中に注ぎ、室温に冷却させた。飼料は、同量のエンペドバクター(Empedobacter)及びフラボバクター(Flavobacter)を卵黄プレートに蒔くことによってハエ幼虫に与えた。プレートを桶中に置き、1枚のペーパータオルで覆った。次いで、プレートを、28℃、相対湿度60%及び光周性16:8で、イエバエについては約1週間及びウマバエについては2週間恒温保持した。次いで、プレートを蛹について検証した(表9)。表5において、"ND"は、実験が、異なったハエ特性及び飼養可能性に関した理由で行なわれなかったことを示す。
【0132】
表9 双翅目の幼虫に対するBt菌株LRC3の殺虫効果
【表9】

【0133】
結果は、Bt菌株LRC3もBt イスラエルシスも、単純食餌における類似活性を有することを示す。しかし、Bt菌株LRC3は、複合飼養環境での非‐水生幼虫に対して、Bt イスラエルシスよりも有効であり、Bt菌株LRC3は、複合環境で、Bt イスラエルシスよりも良好に残存し得ることを示唆する。更に結果は、補正検定系で、特異的Bt菌株がより高度のハエに対する活性を有することが判明したことを示す。不適当な検定系が以前の技術で使用されたので、より高度のハエに対するこれらの特殊Bt菌株の活性は、以前のままで検出されなかった。
【0134】
例9 双翅目の幼虫に対するBt菌株LRC3の精製クリスタルの殺虫効果
Bt菌株LRC3の精製クリスタルの効果を、イエバエ及びウマバエの幼虫に対して試験した。試験を例6に記載したように行なった("リング生物検定"参照)。結果を表10に示す。
【0135】
表10.双翅目の幼虫に対するBt菌株LRC3の精製クリスタルの殺虫効果
【表10】

【0136】
参考資料

【0137】

【0138】
特許書類

【0139】
この明細書に挙げられた全公文書は、本発明が属する当業者の水準を示す。ここで、全公文書は、各個の公文書が参照によって関連されることを特異的及び各自的に示されたように、同じ範囲まで参照によって関連される。
【0140】
先の発明が、明瞭及び理解の目的のために、図及び例を介して多少詳細に記載されているが、次の請求によって定義されるように、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、一定の変化及び修正が行われ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】Bt菌株LRC3(線列2)、Bt クルスタキ(HD1 - 線列3)及びBt イスラエルシス (4Q5 - 線列4)から単離されたクリスタルについての蛋白質横縞像を示す
【図2】REP - 1R及び2lプライマーを用いる、数種の型のバチルスチューリンゲンシス菌株に比較されるBt菌株LRC3のDNA指紋を示す
【図3】Bc‐REP‐1及びBc‐REP‐2プライマーを用いて、数種の型のバチルスチューリンゲンシス菌株に比較したBt菌株LRC3のDNA指紋を示す
【図4】ERIC‐1R及びERIC‐2プライマーを用いて、数種の型のバチルスチューリンゲンシス菌株に比較したBt菌株LRC3のDNA指紋を示す
【図5】BOX‐A1R及びERIC‐2プライマーを用いて、数種の型のバチルスチューリンゲンシス菌株に比較したBt菌株LRC3のDNA指紋を示す
【図6】RAPDプライマー(0955‐03、1940‐12、1910‐08)を用いて、数種の型のバチルスチューリンゲンシス菌株に比較したBt菌株LRC3のDNA指紋を示す
【図7】Bt菌株LRC3、バチルスチューリンゲンシス亜種クルスタキ及びバチルスチューリンゲンシス亜種イスラエルシスの遺伝子内容物を評価するミクロ配列探索表を示す
【図8】バチルスチューリンゲンシス亜種クルスタキHD‐1についてのミクロ配列検定結果を示す
【図9】バチルスチューリンゲンシス亜種イスラエリシスHD‐500についてのミクロ配列検定結果を示す
【図10】Bt菌株LRC3についてのミクロ配列検定結果を示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の:
a)Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2又はその変体を含む群から選択される1種以上のデルタ‐エンドトキシンをコード化するための1種以上のエンドトキシン遺伝子を担持するプラスミドを含有するバチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を得る段階;及び次から選択される後続の1段階:
b)昆虫を、バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体と接触させる段階;
c)バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を侵食域に施こす段階;又は
d)バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を動物に投与する段階
を含む双翅目の昆虫の防除法。
【請求項2】
昆虫は、ネマトセラ(Nematocera)、ブラシセラ(Bracycera)及びシクロルハファ(Cyclorrhapha)を含む群から選択される昆虫の幼虫又は成虫である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
昆虫は、ブユ、ガガンボ、アカイエカ、ユスリカ、カ、スナバエ、ツリアブ、シカアブ、ウマバエ、ムシヒキアブ、ボトルバエ、イエバエ、ウシバエ、シカシラミバエ、イエバエ、カオバエ、ミバエ、ツノサシバエ、ウマシラミバエ、ヒトウマバエ、ネズミバエ、ウサギウマバエ、ヒツジシラミバエ、ヒツジハナウマバエ、サシバエ、胃ウマバエ及びツェツェバエを含む群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1種以上のエンドトキシン遺伝子は、cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka、cry2及びその変体を含む群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
デルタ‐エンドトキシンは、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K及びCry2の全部である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
エンドトキシン遺伝子は、cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka及びcry2の全部である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
菌株は、ATCC PTA - 6248として寄託されたバチルスチューリンゲンシス菌株LRC3である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
動物は、乳牛、食肉牛、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、シカ、バッファロー、オオジカ、ニワトリ、シチメンチョウ、ネコ、イヌ、及びウマを含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体は、固体、液体、飼料添加物又は飼料組成物の形で与えられる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体は、付着剤、結合剤、植物物質、担体、清浄剤、希釈剤、分散剤、乳化剤、賦形剤、増量剤、充填剤、無機ミネラル、殺虫性担体、ポリマー、流動剤、拡散剤付着アジュバント、安定化剤、界面活性剤、農薬添加剤、湿潤剤、Bt細胞、クリスタル、クリスタル蛋白質、プロトキシン、毒素、生物致死剤、肥料、殺菌剤、除草剤又はその組合せと組み合わせて与えられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を、固体の形で、菌株、胞子、クリスタル又は変体1〜95質量又は容量%、より有利に菌株、胞子、クリスタル又は変体2〜80質量又は容量%、及び最も有利に菌株、胞子、クリスタル又は変体30〜60質量又は容量%の濃度で与える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を、液体の形で、菌株、胞子、クリスタル又は変体1〜60質量又は容量%、より有利に菌株、胞子、クリスタル又は変体10〜50質量又は容量%、及び最も有利に菌株、胞子、クリスタル又は変体20〜40質量又は容量%の濃度で与える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を、胞子10〜10個/ml、より有利に胞子200〜800個/ml、及び最も有利に胞子300〜700個/mlの濃度で与える、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を、1ヘクタール当たり、少なくとも50g及びより有利に1ヘクタール当たり少なくとも1kgの濃度で与える、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2及びその変体を含む群から選択される1種以上のデルタ‐エンドトキシンをコード化するための1種以上のエンドトキシンを担持するプラスミドを含有するバチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を含む、双翅目の昆虫を防除するための組成物。
【請求項16】
昆虫は、ネマトセラ(Nematocera)、ブラシセラ(Bracycera)及びシクロルハファ(Cyclorrhapha)を含む群から選択される昆虫の幼虫又は成虫である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
昆虫は、ブユ、ガガンボ、アカイエカ、ユスリカ、カ、スナバエ、ツリアブ、シカアブ、ウマバエ、ムシヒキアブ、ボトルバエ、イエバエ、ウシバエ、シカシラミバエ、イエバエ、カオバエ、ミバエ、ツノサシバエ、ウマシラミバエ、ヒトウマバエ、ネズミバエ、ウサギウマバエ、ヒツジシラミバエ、ヒツジハナウマバエ、サシバエ、胃ウマバエ及びツェツェバエを含む群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
1種以上のエンドトキシン遺伝子は、cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka、cry2及びその変体を含む群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
デルタ‐エンドトキシンは、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K及びCry2の全部である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
エンドトキシン遺伝子は、cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka及びcry2の全部である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
菌株は、ATCC PTA - 6248として寄託されたバチルスチューリンゲンシス菌株LRC3である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体は、固体、液体、飼料添加物又は飼料組成物の形である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
更に、付着剤、結合剤、植物物質、担体、清浄剤、希釈剤、分散剤、乳化剤、賦形剤、増量剤、充填剤、無機ミネラル、殺虫性担体、ポリマー、流動剤、拡散剤付着アジュバント、安定化剤、界面活性剤、農薬添加剤、湿潤剤、Bt細胞、クリスタル、クリスタル蛋白質、プロトキシン、毒素、生物致死剤、肥料、殺菌剤、除草剤又はその組合せを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を、固体の形で、菌株、変体、又はそのクリスタル1〜95質量又は容量%、より有利に菌株、変体、又はそのクリスタル2〜80質量又は容量%、及び最も有利に菌株、変体、又はそのクリスタル30〜60質量又は容量%の濃度で含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を、液体の形で、菌株、変体、又はそのクリスタル1〜60質量又は容量%、より有利に菌株、変体、又はそのクリスタル10〜50質量又は容量%、及び最も有利に菌株、変体、又はそのクリスタル20〜40質量又は容量%の濃度で含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を、胞子10〜10個/ml、より有利に胞子200〜800個/ml、及び最も有利に胞子300〜700個/mlの濃度で含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体、又はバチルスチューリンゲンシス菌株の胞子又はクリスタル又はその変体を、1ヘクタール当たり、少なくとも50g、及びより有利に、1ヘクタール当たり、少なくとも1kgの濃度で含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2及びその変体を含む群から選択される1種以上のデルタ‐エンドトキシンを含有する、双翅目の昆虫の防除において使用するためのバチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体のクリスタル。
【請求項29】
バチルスチューリンゲンシス菌株は、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2及びその変体を含む群から選択される1種以上のデルタ‐エンドトキシンをコード化するための1種以上のエンドトキシンを担持するプラスミドを含有する、請求項28に記載のクリスタル。
【請求項30】
1種以上のエンドトキシン遺伝子は、cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka、cry2及びその変体を含む群から選択される、請求項29に記載のクリスタル。
【請求項31】
デルタ‐エンドトキシンは、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K及びCry2の全部である、請求項30に記載のクリスタル。
【請求項32】
エンドトキシン遺伝子は、cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka及びcry2の全部である、請求項31に記載のクリスタル。
【請求項33】
菌株は、ATCC PTA - 6248として寄託されたバチルスチューリンゲンシス菌株LRC3である、請求項32に記載のクリスタル。
【請求項34】
核酸は、双翅目の昆虫に毒性の蛋白質をコード化し、その蛋白質は、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2及びその変体を含む群から選択される、バチルスチューリンゲンシス菌株又はその変体の単離された核酸。
【請求項35】
cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka、cry2及びその変体を含む群から選択されるエンドトキシン遺伝子を含む、請求項34に記載の単離された核酸。
【請求項36】
菌株は、ATCC PTA - 6248として寄託されたバチルスチューリンゲンシス菌株LRC3である、請求項35に記載の単離された核酸。
【請求項37】
cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka、cry2及びその変体を含む群から選択される1種以上のエンドトキシン遺伝子を含む、請求項1に記載のプラスミド。
【請求項38】
1種以上のエンドトキシン遺伝子は、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2及びその変体を含む群から選択される1種以上のデルタ‐エンドトキシンをコード化する、請求項37に記載のプラスミド。
【請求項39】
デルタ‐エンドトキシンは、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K及びCry2の全部である、請求項38に記載のプラスミド。
【請求項40】
エンドトキシン遺伝子は、cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka及びcry2の全部である、請求項39に記載のプラスミド。
【請求項41】
菌株は、ATCC PTA - 6248として寄託されたバチルスチューリンゲンシス菌株LRC3である、請求項40に記載のプラスミド。
【請求項42】
請求項34に記載の核酸を含むベクター。
【請求項43】
請求項34に記載の核酸又はcry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka、cry2及びその変体を含む群から選択される1種以上のエンドトキシン遺伝子を有するプラスミドを含む単離された宿主細胞。
【請求項44】
細胞は、クロカビ(Aspergillus niger)、アスペルギルスフィキュウム(Aspergillus ficuum)、アスペルギルスアワモリ(Aspergillus awamori)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)、枯草菌(Bacillus subtilis)又はリヒェニホルミス(licheniformis)、クラビバクターキシリ(Clavibacter xyli)、大腸菌(Escherichia coli)、クルイベロミセスラクチス(Kluyveromyces lactis)、ムコルミエヘイ(Mucor miehei)、ピチアパストリス(Pichia pastoris)、プセイドミナスフルオレスセンス(Pseudomonas fluorescens)、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、トリコデルマレエセイ(Trichoderma reesei)、及び植物細胞を含む群から選択される、請求項43に記載の宿主細胞。
【請求項45】
菌株は、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K、Cry2及びその変体を含む群から選択される1種以上のデルタ‐エンドトキシンをコード化するための1種以上のエンドトキシン遺伝子を担持するプラスミドを含有する、請求項1に記載のバチルスチューリンゲンシス菌株。
【請求項46】
1種以上のエンドトキシン遺伝子は、cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka、cry2及びその変体を含む群から選択される、請求項45に記載の菌株。
【請求項47】
デルタ‐エンドトキシンは、Cry1A、Cry1B、Cry1F、Cry1H、Cry1I、Cry1K及びCry2の全部である、請求項46に記載の菌株。
【請求項48】
エンドトキシン遺伝子は、cry1A、cry1Bb、cry1Fb、cry1Hb、cry1Ic、cry1Ka及びcry2の全部である、請求項47に記載の菌株。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−516615(P2008−516615A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537085(P2007−537085)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001606
【国際公開番号】WO2006/042404
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(304017317)カナダ国 (2)
【氏名又は名称原語表記】Her Majesty the Queen in Right of Canada as represented by the Minister of Agriculture and Agri−Food Canada
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 3000 Main, 5403 − 1st Avenue,  Lethbridge, Alberta T1J 4B1, Canada
【Fターム(参考)】