説明

バッキング用樹脂組成物

【課題】保存安定性に優れるとともに、高い遅燃性を発現させることが可能なバッキング用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のバッキング用樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリル系ポリマー100質量部と、(B)難燃剤20〜500質量部と、(C)界面活性剤0.5〜10質量部とを含有し、前記(A)(メタ)アクリル系ポリマーが、(a)メタクリル酸グリシジル0.2〜20質量%、(b)不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、及び(c)その他の共重合可能な単量体70〜99.3質量%(但し、(a)+(b)+(c)=100質量%)を含む単量体成分を乳化重合することによって得られたポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッキング用樹脂組成物に関する。更に詳しくは、保存安定性に優れるとともに、高い遅燃性を発現させることが可能なバッキング用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車数の増大や住宅の密集化に伴い、それらの火災に対する対策は極めて重要である。特に、各種の車両や家屋の内装材についての難燃化の要望が大きく、種々の難燃化技術が提案されている。
【0003】
例えば、自動車の内装に用いられる繊維製品(例えば、カーペット)の難燃化については、遅燃性又は難燃性のバッキング用樹脂組成物を繊維製品に裏打ち加工することによって行われている。
【0004】
このようなバッキング用樹脂組成物としては、従来、塩化ビニル系、塩化ビニリデン系等のハロゲンを含む難燃性のエマルジョンが用いられていたが、火災時あるいは熱リサイクル等の燃焼時にハロゲンガス等の有毒ガスを発生させて人体に重篤な害をもたらせ、また大気汚染や焼却炉の劣化を招く等の欠点を有していた。
【0005】
そこで、上記欠点を克服すべく、エチレン系重合体水性エマルジョンにエポキシ系樹脂を配合したバッキング用遅燃性樹脂水性組成物(以下、バッキング用樹脂組成物という)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−237764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のバッキング用樹脂組成物は、ハロゲンガス等の有毒ガスの発生は抑制できるものの、十分な遅燃性を発現させることができないという問題があった。
【0007】
また、従来のバッキング用樹脂組成物に用いられるエマルジョンには、原料としてメタクリル酸グリシジルが使用されることがある。
【0008】
この場合、エマルジョンを構成するポリマーはその骨格中にメタクリル酸グリシジルに由来するエポキシ基を有しており、このエポキシ基が徐々に開環するために架橋反応性が低下してしまう。
【0009】
このため、従来のバッキング用樹脂組成物は保存安定性が低く、長期保存ができないという問題もあった。
【0010】
また、従来のバッキング用樹脂組成物は上記したように保存安定性が低いため、その流動性の変化が激しく、遅燃性を付与するための繊維製品に塗工し難いという問題もあった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、保存安定性に優れるとともに、高い遅燃性を発現させることが可能なバッキング用樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)(メタ)アクリル系ポリマー100質量部と、(B)難燃剤20〜500質量部と、(C)界面活性剤0.5〜10質量部とを含有する(メタ)アクリルエマルジョンからなり、この(A)(メタ)アクリル系ポリマーが、(a)メタクリル酸グリシジル0.2〜20質量%、(b)不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、及び(c)その他の共重合可能な単量体70〜99.3質量%(但し、(a)+(b)+(c)=100質量%)を含む単量体成分を乳化重合することによって得られたポリマーであるバッキング用樹脂組成物を用いることにより、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。
【0013】
具体的には、本発明により、以下のバッキング用樹脂組成物が提供される。
【0014】
[1] (A)(メタ)アクリル系ポリマー100質量部と、(B)難燃剤20〜500質量部と、(C)界面活性剤0.5〜10質量部とを含有する(メタ)アクリルエマルジョンからなり、前記(A)(メタ)アクリル系ポリマーが、(a)メタクリル酸グリシジル0.2〜20質量%、(b)不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、及び(c)その他の共重合可能な単量体70〜99.3質量%(但し、(a)+(b)+(c)=100質量%)を含む単量体成分を乳化重合することによって得られたポリマーであるバッキング用樹脂組成物。
【0015】
[2] 前記(A)(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点が−50〜100℃である前記[1]に記載のバッキング用樹脂組成物。
【0016】
[3] 前記(B)難燃剤が、リン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びポリリン酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種の難燃剤である前記[1]又は[2]に記載のバッキング用樹脂組成物。
【0017】
[4] 前記(A)(メタ)アクリル系ポリマーが、アニオン系乳化剤又は反応性乳化剤を用いて乳化重合することによって得られたポリマーである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のバッキング用樹脂組成物。
【0018】
[5] (D)増粘剤を更に含有する前記[1]〜[4]のいずれかに記載のバッキング用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、保存安定性に優れるとともに、高い遅燃性を発現させることが可能なバッキング用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体的な実施の形態に基づいて説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0021】
[バッキング用樹脂組成物]
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリル系ポリマー100質量部と、(B)難燃剤20〜500質量部と、(C)界面活性剤0.5〜10質量部とを含有する(メタ)アクリルエマルジョンからなり、(A)(メタ)アクリル系ポリマーが、(a)メタクリル酸グリシジル0.2〜20質量%、(b)不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、及び(c)その他の共重合可能な単量体70〜99.3質量%(但し、(a)+(b)+(c)=100質量%)を含む単量体成分を乳化重合することによって得られたポリマーであるバッキング用樹脂組成物である。
【0022】
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物は、各種の車両や家屋の内装に用いられる繊維製品、例えば、カーペット等に裏打ち加工を行うための樹脂組成物であり、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物を上記繊維製品に裏打ち加工することにより、その繊維製品に遅燃性を発現させることができる。
【0023】
なお、ここにいう「遅燃性」という意味は、日本工業規格 JIS D 1201−1977の「自動車室内用有機資材の燃焼性試験方法」において燃焼性区分として用いられている「遅燃性」を意味する。即ち、無風の大気中でいったん着火した資材が着火源を取り去った後も10cm/min以下の燃焼速度でゆっくりと燃え続ける性質をいう。
【0024】
このJIS D 1201−1977の燃焼性試験方法は、米国自動車安全基準(FederalMotor Vehicle Safety Standard)FMVSS−302に規定されている燃焼試験に準拠したものである。
【0025】
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物は、上記したように(A)(メタ)アクリル系ポリマーが、(a)メタクリル酸グリシジル0.2〜20質量%と、(b)不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%と、(c)その他の共重合可能な単量体70〜99.3質量%(但し、(a)+(b)+(c)=100質量%)とを含む単量体成分を乳化重合することによって得られたポリマーであることから、(b)不飽和カルボン酸単量体によって、(a)メタクリル酸グリシジルに由来するエポキシ基の開環反応が起こり難くなっており、架橋反応性の低下が良好に抑制されている。
【0026】
このため、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物は、保存安定性に優れ、長期保存が可能である。
【0027】
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物を用いて遅燃性を付与する繊維製品としては、火災時に有害ガスの発生のない繊維製品であることが好ましく、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル等を原料とする合成繊維、羊毛等の天然繊維及び合成繊維と天然繊維の混紡繊維等を挙げることができる。
【0028】
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物によって裏打ち加工された繊維製品は、特に、自動車内装材、例えば、天井、ドア、座席等の表張り材料や、デッキ、床等のカーペット材(例えば、ニードルパンチカーペット)等として好適に用いることができる。
【0029】
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物を繊維製品に裏打ち加工する場合には、バッキング用樹脂組成物によって形成されるバッキング層によって良好に遅燃性を発現させることができるように、20〜150g/m(固形分換算)塗工することが好ましく、30〜100g/m(固形分換算)塗工することが更に好ましい。
【0030】
このようにしてバッキング層が形成された繊維製品は、上述したJIS D 1201−1977における自動車室内用有機資材の燃焼性試験方法において燃焼性区分として用いられている遅燃性を示すことができる。
【0031】
なお、バッキング用樹脂組成物の塗布量が上記範囲未満であると、遅燃性が不十分であることがあり、また、塗布量が上記範囲を超えた場合には、粉落ち等が発生したり、コスト高になることがある。
【0032】
また、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物は、遅燃性を付与する繊維製品に裏打ち加工して用いるため、カーペット等の繊維製品に適切な量を塗工することができるような粘性を有するものであることが好ましい。
【0033】
例えば、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物は、25℃における粘度が、1000〜20000mPa・sであることが好ましく、1500〜5000mPa・sであることが更に好ましい。
【0034】
バッキング用樹脂組成物の粘度が1000mPa・s未満であると、粘性が低すぎて、カーペット等の繊維製品に適切な量を塗工するが困難となることがある。
【0035】
また、バッキング用樹脂組成物の粘度が20000mPa・sを超えると、作業性、即ち塗工性が低下するため、裏打ち加工が困難になることがある。
【0036】
なお、粘度の測定は、ブルックフィールド型回転粘計を用いて測定することができる。
【0037】
また、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリル系ポリマーと、(B)難燃剤20〜500質量部と、(C)界面活性剤とを含有する(メタ)アクリルエマルジョンからなるものであり、この(メタ)アクリルエマルジョンとしては、固形分濃度が40〜65質量%であることが好ましく、45〜60質量%であることが更に好ましい。
【0038】
バッキング用樹脂組成物の固形分が40質量%未満であると、乾燥性が悪くなり、ハンドリングが悪くなる。また65質量%を超えると、作業性、即ち塗工性が低下することがある。
【0039】
なお、例えば、特開2004−339402号公報には、グリシジル基を有する重合性単量体(a)、多価カルボン酸基及び/又は無水カルボン酸基を有する重合性単量体(b)を含有する単量体混合物を乳化重合して得られる自己架橋型繊維加工用水性分散液が開示されているが、このような水性分散液は、遅燃性を発現させる効果を備えておらず、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物とはまったく異なるものである。
【0040】
以下、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物を、各構成成分ごとに更に具体的に説明する。
【0041】
[(A)(メタ)アクリル系ポリマー]
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物に用いられる(A)(メタ)アクリル系ポリマーは、(a)メタクリル酸グリシジル0.2〜20質量%と、(b)不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%と、(c)その他の共重合可能な単量体70〜99.3質量%(但し、(a)+(b)+(c)=100質量%)とを含む単量体成分を、例えば、乳化剤、水及び重合開始剤の存在下で乳化重合することによって得ることができる。
【0042】
なお、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物に用いられる(A)(メタ)アクリル系ポリマーは、乳化重合によって得られたエマルジョンの状態として用いることができる。
【0043】
上記した乳化剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、脂肪酸塩等のアニオン系乳化剤、商品名で、ネオペレックスG25、ラテムルS−180A、エマール10N〔花王社製〕、エレミノールJS−2〔三洋化成工業社製〕、アクアロンKH−10〔第一工業製薬社製〕、アデカリアソープSE−10N、アデカリアソープSR−10〔以上、旭電化工業社製〕、Antox MS−60〔日本乳化剤社製〕、サーフマーFP−120〔東邦化学工業社製〕などの反応性乳化剤等のいずれでも使用可能である。
【0044】
このような乳化剤は、単独で又は二種以上を併せて用いることができる。
【0045】
なお、この乳化剤は、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物を構成する(C)界面活性剤の一部として用いることができる。
【0046】
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物においては、(A)(メタ)アクリル系ポリマーが、アニオン系乳化剤又は反応性乳化剤を用いて乳化重合することによって得られたポリマーであることが好ましい。
【0047】
また、重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩や、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド、2,2′−アゾビス〔2−N−ベンジルアミジノ〕プロパン塩酸塩等の水溶性開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性開始剤;酸性亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、テトラエチレンペンタアミン、アスコルビン酸等の還元剤を併用したレドックス系開始剤などが使用できる。
【0048】
乳化重合の際における乳化剤の使用量は、(a)+(b)+(c)=100質量部に対し、通常、1〜10質量部、好ましくは2〜5質量部である。
【0049】
1質量部未満では、乳化が十分でなく、また、重合安定性が悪くなる傾向にある。また、10質量部を超えると、重合によって得られる粒子の径が小さくなり、その結果、塗工性が悪くなる傾向にある。
【0050】
また、重合開始剤の使用量は、(a)+(b)+(c)=100質量部に対し、通常、0.01〜3質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。0.01質量部未満では、重合安定性が十分でなく、また、凝集物が発生し、更に未反応分の単量体が多くなる。
【0051】
また、3質量部を超えると、乳化重合によって得られるポリマーの粒子径が大きくなり、また、反応速度が速くなり過ぎて好ましくない。
【0052】
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物に用いられる(A)(メタ)アクリル系ポリマーにおいては、(A)(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点が、−50〜100℃であることが好ましく、−20〜80℃であることが更に好ましく、0〜70℃であることが特に好ましい。
【0053】
(A)(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点が−50℃未満であると、バッキング用樹脂組成物の遅燃性が十分に発現されないことがあり、また、ガラス転移点が100℃を超えると、バッキング用樹脂組成物の重合が困難になることがある。
【0054】
なお、本明細書におけるガラス転移点は、以下に示す方法によって測定した値を意味するものとする。
【0055】
まず、(A)(メタ)アクリル系ポリマーを含む水系分散体約5gをガラス板に薄く引き伸ばし、25℃で7日間乾燥させることによって、乾燥フィルムを得る。
【0056】
得られた乾燥フィルムについて、示差走査熱量分析計(DSC)、例えば、理学電気社製のDSC、を使用し、昇温速度=20℃/分、チッ素雰囲気下、サンプル量=20mgの条件で測定する。
【0057】
[(a)メタクリル酸グリシジル]
(a)メタクリル酸グリシジルは、架橋性を有する単量体であり、(A)(メタ)アクリル系ポリマーを乳化重合するための単量体成分((a)+(b)+(c))に0.2〜20質量%含まれている。
【0058】
(a)メタクリル酸グリシジルの量が0.2質量%未満であると、バッキング用樹脂組成物の遅燃性を発現させる効果が得られない、また、(a)メタクリル酸グリシジルの量が20質量%を超えると、重合安定性が低下するため、(A)(メタ)アクリル系ポリマーの乳化重合が困難となる。
【0059】
なお、特に限定されることはないが、(a)メタクリル酸グリシジルは、(A)(メタ)アクリル系ポリマーを乳化重合するための単量体成分に2〜12質量%含まれていることが好ましい。
【0060】
[(b)不飽和カルボン酸単量体]
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物において、(A)(メタ)アクリル系ポリマーを乳化重合するための単量体成分として用いられる(b)不飽和カルボン酸単量体は、不飽和カルボン酸単量体とそのモノエステルとを含む単量体である。
【0061】
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物に用いられる(b)不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、テトラコン酸等の不飽和カルボン酸、また、飽和カルボン酸単量体のモノエステル、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、フタル酸モノヒドロキシレンアクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノ−2−アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸モノ−2−メタクリロイルオキシエチル、フタル酸、こはく酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸とアリルアルコール、メタリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシル基含有不飽和化合物とのモノエステル等の遊離カルボキシル基含有エステル類等を挙げることができる。これらは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
なかでも、アクリル酸、メタクリル酸を好適に用いることができる。
【0063】
なお、(b)不飽和カルボン酸単量体が0.5質量%未満であると、メタクリル酸グリシジルに由来するエポキシ基の開環反応が起こり易くなり、架橋反応性の低下を抑制することができない。
【0064】
また、10質量%を超えると、乳化重合が困難になるとともに、乳化重合して得られる(A)(メタ)アクリル系ポリマーを含むエマルジョンが高粘度となり、(B)難燃剤等との混合が困難になる。
【0065】
なお、特に限定されることはないが、(b)不飽和カルボン酸単量体は、(A)(メタ)アクリル系ポリマーを乳化重合するための単量体成分に2〜4質量%含まれていることが好ましい。
【0066】
[(c)その他の共重合可能な単量体]
(c)その他の共重合可能な単量体は、上記した(a)メタクリル酸グリシジル及び(b)不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な単量体であり、例えば、炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を好適例として挙げることができる。
【0067】
このような炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることにより、バッキング用樹脂組成物の遅燃性をより向上させることができる。
【0068】
上記した炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの直鎖又は分岐脂肪族アルコールのアクリル酸エステル及び対応するメタクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0069】
これらは、単独であるいは二種類以上併用することができる。なかでも、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0070】
このような(c)その他の共重合可能な単量体は、単独で又は二種以上を併せて用いることができる。
【0071】
なお、このような炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(c)その他の共重合可能な単量体として、(A)(メタ)アクリル系ポリマーを乳化重合するための単量体成分に70〜99.3質量%含まれていることが好ましい。
【0072】
炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、70質量%未満であると、バッキング材としての風合いが悪くなることがあり、また、99.3質量%を超えると、繊維への接着性が悪くなることがある。
【0073】
また、上記した炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(c)その他の共重合可能な単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,4−ジエチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;酢酸ビニルなどのビニル系単量体;ジビニルベンゼンなどの上記以外の多官能性単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミドなどの酸アミド化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどのピペリジン系単量体;ジカプロラクトンなどが挙げられる。
【0074】
これらの(c)その他の共重合可能な単量体は、上記した炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと併せて用いることができる。
【0075】
[(B)難燃剤]
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物に用いられる(B)難燃剤は、(A)(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、20〜500質量部含有されており、バッキング用樹脂組成物に難燃性を付与するものである。
【0076】
なお、(B)難燃剤の量が20質量部未満であると、十分な遅燃効果を発現させることができない。また、(B)難燃剤の量が500質量部を超えると、バッキング用樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて、ハンドリングが困難になる。
【0077】
なお、特に限定されることはないが、(B)難燃剤の量は、100〜300質量部であることが好ましく、120〜200質量部であることが更に好ましい。このように構成することによって、十分な遅燃性を発現させることができるとともに、ハンドリングが良好になる。
【0078】
また、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物は、火災時あるいは熱リサイクル等の燃焼時にハロゲンガス等の有毒ガスを発生することがないように、(B)難燃剤が、実質的にハロゲン系組成物を含有しない難燃剤であることが好ましい。
【0079】
なお、実質的にハロゲン系組成物を含有しないとは、難燃剤の製造工程上の都合等により微量のハロゲンが混入することはかまわないということを意味する。
【0080】
このような(B)難燃剤としては、例えば、アルミニウム系化合物、マグネシウム系化合物、アンチモン系化合物、ホウ素系化合物、ジルコニウム系化合物、リン酸アンモニウム等の従来公知の難燃剤を好適に用いることができるが、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物においては、リン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びポリリン酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種の難燃剤であることが好ましい。
【0081】
水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムからなる難燃剤は、それ自体が燃焼しないことと、分解時に吸熱をすること、そして分解して熱容量の大きな水分子を放出することによって燃焼を阻害する効果を得ることができる。
【0082】
例えば、水酸化アルミニウムは、燃焼時の温度の上昇によって分解し、酸化アルミニウムと水になる。この分解反応は吸熱的に進行する。
【0083】
また、リン酸アンモニウムは、遅燃性を付与するための繊維製品等と反応してリン酸エステルを生成し、この繊維製品の炭化を促進する。
【0084】
このため、たとえ繊維製品に火がついたとしても、炎が燃え広がることなく速やかに鎮火することができる。
【0085】
[(C)界面活性剤]
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物に用いられる(C)界面活性剤は、バッキング用樹脂組成物の保存安定性を向上させるとともに、塗工性等を改良する作用を示す成分であり、(A)(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.5〜10質量部含有されている。
【0086】
(C)界面活性剤の量が0.5質量部未満であると、バッキング用樹脂組成物の保存安定性が低下してしまう。また、(C)界面活性剤の量が10質量部を超えると、耐水性が悪くなることがある。
【0087】
なお、特に限定されることはないが、(C)界面活性剤は、0.5〜8質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることが更に好ましい。このように構成することによって、バッキング用樹脂組成物の保存安定性を更に向上させることができる。
【0088】
このような界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、長鎖スルフォコハク酸塩、ポリアクリル酸塩等の界面活性剤を挙げることができる。
【0089】
また、好ましい界面活性剤の商品名としては、ネオペレックスG25〔花王社製〕、ALCOPOL−FA35〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製〕等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上を併せて用いることができる。
【0090】
また、この(C)界面活性剤としては、(A)(メタ)アクリル系ポリマーを乳化重合する際に使用する乳化剤も含まれる。
【0091】
[(D)増粘剤]
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物は、(D)増粘剤を更に含有することが好ましい。
【0092】
この(D)増粘剤は、高分子多糖類、例えば、キサンタンガム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ペクチン、ザンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアノガラクタン、ヒアルロン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0093】
(D)増粘剤は、バッキング用樹脂組成物に粘性、好ましくはチクソトロピー性を付与するための添加剤である。このような(D)増粘剤を更に含有することにより、裏打ち加工時における液だれ等の発生を抑制し、良好な塗工性を実現することができる。
【0094】
この(D)増粘剤を更に含有する場合には、(A)(メタ)アクリル系ポリマー100質量部とした場合に、0.01〜5質量部含有されていることが好ましく、0.1〜5質量部含有されていることが更に好ましい。
【0095】
(D)増粘剤の含有量が上記範囲未満であると、増粘剤を含有することによる効果を得ることができないことがある。また、(D)増粘剤の含有量が上記範囲を超えると、バッキング用樹脂組成物の粘度が必要以上に高くなり、実用性に欠けるおそれがある点において好ましくない。
【0096】
[その他の添加物]
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物においては着色剤等のその他の添加物を更に含有したものであってもよい。
【0097】
本実施の形態のバッキング用樹脂組成物は、上記したように乳化重合によって得られた(A)(メタ)アクリル系ポリマー100質量部と、(B)難燃剤20〜500質量部と、(C)界面活性剤0.5〜10質量部と、必要に応じて(D)増粘剤とを撹拌混合して製造することができる。
【0098】
なお、(A)(メタ)アクリル系ポリマーは、乳化重合時に得られエマルジョン(即ち、(A)(メタ)アクリル系ポリマーを含むエマルジョン)の状態で用いることができ、この(A)(メタ)アクリル系ポリマーを含むエマルジョンに、上記(B)難燃剤と(C)界面活性剤とを撹拌混合して、本実施の形態のバッキング用樹脂組成物を製造することが好ましい。
【実施例】
【0099】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0100】
<評価方法>
ポリエステルニードルパンチカーペット(目付230g/m)に、各実施例及び比較例によって得られたバッキング用樹脂組成物を80g/m(固形分換算)塗工し、120℃×5分間乾燥した。これを350mm×200mmに裁断し、20℃、65%RHの雰囲気中で24時間放置したものを試料とした。
【0101】
<遅燃性の評価>
遅燃性の評価方法としては、燃焼試験FMVSS−302に従い、上記方法にて作製した試料について水平法により燃焼試験を行った。試験は10点行い、平均の燃焼速度を算出した。燃焼速度が10cm/min以上のものは不合格とした。
【0102】
<保存安定性>
各実施例及び比較例によって得られたバッキング用樹脂組成物の粘度を測定することによって保存安定性の評価を行った。バッキング用樹脂組成物を調製した直後の粘度(以下、「初期粘度」という)と、40℃で7日間放置した粘度(以下、「7日後粘度」という)とを測定した。初期粘度に対する7日後粘度の割合(粘度上昇割合)が130%以上となっているものは不合格とした。なお、粘度の測定は、ブルックフィールド型回転粘計を用いて測定した。
【0103】
<(A)(メタ)アクリル系ポリマーの調製>
実施例及び比較例にて、(A)(メタ)アクリル系ポリマーの調製に用いた原材料を下記に示す。
【0104】
(a)メタクリル酸グリシジル;
メタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」と略する) 三菱ガス化学社製。
【0105】
(b)不飽和カルボン酸単量体;
アクリル酸(以下、「AA」と略する) 三菱化学社製。
【0106】
(c)その他の共重合可能な単量体(以下、単に(c)単量体ということがある);
メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と略する) 三菱レイヨン社製、
アクリル酸ブチル〔試薬特級〕(以下、「BA」と略する) 和光純薬社製、
アクリロニトリル(以下、「AN」と略する) ダイヤニトリックス社製、
スチレン(以下、「ST」と略する) 三菱化学社製。
【0107】
重合開始剤;
過硫酸ナトリウム〔試薬一級〕 和光純薬社製。
【0108】
乳化剤;
アルキルベンゼンスルフォン酸塩〔ネオペレックスG25(商品名)〕 花王社製。
【0109】
<バッキング用樹脂組成物の調製>
実施例及び比較例にて、バッキング用樹脂組成物の調製に用いた原材料を下記に示す。
【0110】
(B)難燃剤;
水酸化アルミニウム〔B303(商品名)〕 日本軽金属社製。
【0111】
(C)界面活性剤;
アルキルベンゼンスルフォン酸塩〔ネオペレックスG25(商品名)〕 花王社製、
長鎖スルフォコハク酸〔ALCOPOL−FA35(商品名)〕 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製。
【0112】
(D)増粘剤;
キサンタンガム〔ケルザン(商品名)〕 ケルコ社製、
ポリアクリル酸〔アロンA−20P(商品名)〕 東亜合成社製。
【0113】
架橋剤;
エポキシ架橋剤〔デナコールEX−421(商品名)〕 ナガセケムテックス社製。
【0114】
(実施例1)
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、脱イオン水40部に、アルキルベンゼンスルフォン酸塩(乳化剤)0.06部を仕込み、65℃に昇温した。
【0115】
また、別途、GMAを12部、AAを3部、MMAを47.4部、BAを27.9部、ANを6部、STを3.7部、及びアルキルベンゼンスルフォン酸塩(乳化剤)を1.25部、を脱イオン水50部に乳化分散させ、予備乳化液を調製した。
【0116】
この予備乳化液を滴下ロートより、上記フラスコに4時間かけて滴下するとともに、重合開始剤として、過硫酸ナトリウム0.3部を10%水溶液として添加し、重合を開始した。
【0117】
65℃の反応温度を4時間維持した後、80℃に昇温して、引き続き2時間反応を継続し、(A)(メタ)アクリル系ポリマーを含むエマルジョン(固形分濃度50質量%)を得た。なお、このエマルジョンに含有される上記乳化剤は、本実施例にて製造するバッキング用樹脂組成物の(C)界面活性剤となる。
【0118】
この(A)(メタ)アクリル系ポリマー100部を含むエマルジョンに、(B)難燃剤として水酸化アルミニウムを150部と、(C)界面活性剤として、アルキルベンゼンスルフォン酸塩1.75部、及び長鎖スルフォコハク酸〔ALCOPOL−FA35(商品名)〕0.7部と、(D)増粘剤としてキサンタンガム〔ケルザン(商品名)〕の3%水溶液0.6部、及びポリアクリル酸〔アロンA−20P(商品名)〕1.0部とを加え、よく撹拌混合して、(メタ)アクリルエマルジョンからなるバッキング用樹脂組成物(実施例1)を得た。
【0119】
なお、本実施例のバッキング用樹脂組成物の調製に用いた(A)(メタ)アクリル系ポリマー100部を含むエマルジョンには、上記乳化重合に用いた乳化剤が(C)界面活性剤として1.31部更に含まれている。
【0120】
得られたバッキング用樹脂組成物を用いて上記した方法によって燃焼速度と保存安定性とについて評価を行った。バッキング用樹脂組成物の配合処方及び評価結果について表1に示す。
【0121】
(実施例2)
予備乳化液の組成を、GMAを3部、AAを3部、MMAを56.4部、BAを27.9部、ANを6部、STを3.7部とした以外は、実施例1と同様の方法によってバッキング用樹脂組成物(実施例2)を得た。
【0122】
得られたバッキング用樹脂組成物を用いて上記した方法によって燃焼速度と保存安定性とについて評価を行った。バッキング用樹脂組成物の配合処方及び評価結果について表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
(比較例1)
予備乳化液の組成を、AAを3部、MMAを59.4部、BAを27.9部、ANを6部、STを3.7部とした以外は、実施例1と同様の方法によってバッキング用樹脂組成物(比較例1)を得た。本比較例においては、予備乳化液にはGMAを使用していない。
【0125】
得られたバッキング用樹脂組成物を用いて上記した方法によって燃焼速度と保存安定性とについて評価を行った。バッキング用樹脂組成物の配合処方及び評価結果について表1に示す。
【0126】
(比較例2)
実施例1に用いた(A)(メタ)アクリル系ポリマー100部に対して、水酸化アルミニウム((B)難燃剤)の量を10部とした以外は実施例1と同様の方法によってバッキング用樹脂組成物(比較例2)を得た。
【0127】
得られたバッキング用樹脂組成物を用いて上記した方法によって燃焼速度と保存安定性とについて評価を行った。バッキング用樹脂組成物の配合処方及び評価結果について表1に示す。
【0128】
(比較例3)
実施例1に用いた(A)(メタ)アクリル系ポリマー100部に対して、水酸化アルミニウム((B)難燃剤)の量を700部とした以外は実施例1と同様の方法によってバッキング用樹脂組成物(比較例3)を得た。
【0129】
得られたバッキング用樹脂組成物を用いて上記した方法によって燃焼速度と保存安定性とについて評価を行った。バッキング用樹脂組成物の配合処方及び評価結果について表1に示す。
【0130】
(比較例4)
比較例1に用いた(A)(メタ)アクリル系ポリマー100部に対して、エポキシ架橋剤〔デナコールEX421(商品名)〕5部を更に加える以外は比較例1と同様の方法によってバッキング用樹脂組成物(比較例4)を得た。
【0131】
得られたバッキング用樹脂組成物を用いて上記した方法によって燃焼速度と保存安定性とについて評価を行った。バッキング用樹脂組成物の配合処方及び評価結果について表1に示す。
【0132】
表1に示すように、実施例1及び実施例2のバッキング用樹脂組成物を裏打ち加工した試料(ニードルパンチカーペット)は、燃焼速度が6cm/minであり、遅燃性に優れたものであった。
【0133】
また、バッキング用樹脂組成物の粘度上昇割合も少なく、保存安定性に優れたものであり、また、塗工性についても優れたものであった。
【0134】
一方、比較例1及び比較例2のバッキング用樹脂組成物を裏打ち加工した試料は、燃焼速度が速く(比較例1が13cm/min、比較例2が22cm/min)、十分な遅燃性が付与されていなかった。
【0135】
また、比較例3及び比較例4のバッキング用樹脂組成物は、7日後の粘度上昇割合が非常に高く、保存安定性が極めて悪いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明のバッキング用樹脂組成物は、保存安定性に優れるとともに、高い遅燃性を発現させることができ、自動車の内装材、家屋等の床部に用いるカーペット等に裏打ち加工するためのバッキング用樹脂組成物として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリル系ポリマー100質量部と、(B)難燃剤20〜500質量部と、(C)界面活性剤0.5〜10質量部とを含有する(メタ)アクリルエマルジョンからなり、
前記(A)(メタ)アクリル系ポリマーが、(a)メタクリル酸グリシジル0.2〜20質量%、(b)不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、及び(c)その他の共重合可能な単量体70〜99.3質量%(但し、(a)+(b)+(c)=100質量%)を含む単量体成分を乳化重合することによって得られたポリマーであるバッキング用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点が−50〜100℃である請求項1に記載のバッキング用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)難燃剤が、リン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びポリリン酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種の難燃剤である請求項1又は2に記載のバッキング用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)(メタ)アクリル系ポリマーが、アニオン系乳化剤又は反応性乳化剤を用いて乳化重合することによって得られたポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載のバッキング用樹脂組成物。
【請求項5】
(D)増粘剤を更に含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のバッキング用樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−204559(P2007−204559A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23535(P2006−23535)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000230397)株式会社イーテック (49)
【Fターム(参考)】