説明

バックテンション機構を備えた印刷装置

【課題】バックテンション力を適正且つ安定させると共に、装置のコンパクト化を実現する。
【解決手段】装置内に装填されたインクリボンカセットを所定位置に保持する保持手段502と、インクリボンカセットの装填方向奥側にてインクリボンボビン110に対応する位置に配置されたバックテンション発生部材402と、バックテンション発生部材402に弾接すると共に、その回転軸410のまわりに回転可能に装着されたプレッサー403と、プレッサー403に対して同軸に一体回転可能で且つ回転軸410の軸方向に相対移動可能に軸支されると共に、インクリボンボビン110に係合するブッシュ404とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボンがロール状に巻かれた供給側ボビンに係合してバックテンションを付与するバックテンション機構を有する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクリボンを印刷記録媒体にサーマルヘッドを用いて昇華印刷する印刷装置が各種提案されている。この昇華型印刷装置の多くは、インクリボンの一端がロール状に巻かれた供給側ボビンと、他端が巻かれた巻取り側ボビンとを用いている。巻取り側のボビンを巻上駆動させながら、且つ供給側ボビンにバックテンションを与えながら、サーマルヘッドでリボンを印刷記録媒体に密着させて加熱させて印刷している。リボン供給側ボビンに付与するバックテンションは、インクリボンが巻取り側の引出し力によって引き出され過ぎないようにブレーキの役目をする。同時に、リボン巻取り側とリボン供給側双方でインクリボンを引くことでインクリボンにしわが発生することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−174973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バックテンションをリボン供給側ボビンに付与する構成として、例えば特許文献1のようなものが開示されている。この特許文献1では、バックテンションを発生させるために、ギアとばねに付勢された加圧部材の間にフェルトを挟んで一つのバックテンションユニットとしている。このバックテンションユニットの一端に供給側ボビン係合部を設け、他端に、該ユニット全体を供給側ボビン方向に付勢するバックテンションユニット付勢ばねを印刷装置のシャーシとの間に設けている。
【0005】
バックテンションユニット付勢ばねは、装填されたリボン供給側ボビンと、供給側ボビン係合部との位相が合っていなくても、供給側ボビン係合部が退避した状態のまま位相が合うまで、供給側ボビン係合部をリボン供給側ボビンの方向に付勢している。
更にフェルトを挟持している一つがギアであり、該ギアにサーマルヘッド上昇力と連動する動力を付与して、インクリボンを巻き戻し方向に駆動するようになっている。サーマルヘッドが下降する場合はワンウェイ機構が働き、ヘッド下降力が働かないようになっている。しかしながら、特許文献1の構成では以下の問題があった。
【0006】
第一の問題は、バックテンションユニット自体が、リボンカセット装填方向に退避するので、印刷装置の内部空間を退避のために空けておかねばならず印刷装置の大型化を招くことである。フェルトを用いてバックテンションを発生させる時、フェルト及び加圧部材間で発生する摩擦力がバックテンション力になっている。比較的大きなバックテンション力で摩擦力を発生させるため、バックテンション力のばらつきを小さくするためには、フェルトの摩擦面積を適正にする必要がある。このため比較的大きいバックテンション力が必要な場合、小さいフェルト摩擦面積のまま加圧力だけ大きくすると摩擦力が大きくばらつく。特許文献1の構成の場合、バックテンション力のばらつきを小さくしながらバックテンション力を更に大きくしようとすると、フェルト外径を大きくすることでフェルト摩擦面積を確保することになる。するとフェルトを挟持しているギアや加圧部材の外径も大きくなり、バックテンションユニットの外径自体が大きくなる。この大きくなった外径部が退避することになり、印刷装置の内部空間を退避のために広く空けておかねばならなくなる。
【0007】
第二の問題は、バックテンション力を発生させるフェルトの挟持部材の一つがギアであるため、ギアが完全に停止しないと正確なバックテンション力が発生できない点である。特許文献1では、リボンの巻戻し動作をさせるためにバックテンション力を発生させるフェルトの挟持部材の一つであるギアを、ヘッドの上昇動作に連動させて巻き戻させる。複数のギアやワンウェイ機構を介しているため、ギアのバックラッシが完全になくなり、且つワンウェイ機構の緩み取りが効くまで、フェルト片側保持が不安定になり、発生するバックテンション力にばらつきが生じる。特にヘッドダウン直後に、バックテンションのばらつきが発生し易く、ヘッドダウン直後の印刷が不安定になる等の問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、バックテンション力を適正且つ安定させると共に、装置のコンパクト化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するために、本発明は以下の構成にしている。
即ち、本発明のバックテンション機構を備えた印刷装置は、インクリボンボビンに係合してバックテンションを付与するバックテンション機構を備えた印刷装置であって、装置内に装填されたインクリボンカセットを所定位置に保持する保持手段と、前記インクリボンカセットの装填方向奥側にて前記インクリボンボビンに対応する位置に配置されたバックテンション発生部材と、前記バックテンション発生部材に弾接すると共に、その回転軸のまわりに回転可能に装着されたプレッサーと、前記プレッサーに対して同軸に一体回転可能で且つ前記回転軸の軸方向に相対移動可能に軸支されると共に、前記インクリボンボビンに係合するブッシュとを有し、前記保持手段による保持が解除されると、前記インクリボンカセットが装置外へ離脱するように前記ブッシュを介して付勢されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のバックテンション機構を備えた印刷装置において、前記バックテンション発生部材に弾接するように前記プレッサーを付勢する第一弾性部材と、前記第一弾性部材とは独立して設けられると共に、前記インクリボンボビンに係合するように前記ブッシュを付勢する第二弾性部材とを更に有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のバックテンション機構を備えた印刷装置において、前記インクリボンカセットは、インクシートが予め巻回された前記インクリボンボビンが回転可能に保持されると共に、前記インクリボンボビンを係合方向に付勢するボビン付勢手段と、前記インクリボンボビンとカセットカバーの間の係合部とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のバックテンション機構を備えた印刷装置において、前記インクリボンカセットの装置内の第一位置で、前記インクリボンボビンと前記ブッシュの係合が解除されると共に、前記インクリボンボビンと前記カセットカバーが前記係合部にて係合して前記インクリボンボビンが回転規制され、前記インクリボンカセットの装置内の第二位置で、前記インクリボンボビンと前記ブッシュが係合すると共に、前記インクリボンボビンと前記カセットカバーの係合が解除されて前記インクリボンボビンが回転可能になることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のバックテンション機構を備えた印刷装置において、前記プレッサーと前記ブッシュは、軸方向に櫛歯状に互いに突出する突起を介して係合することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のバックテンション機構を備えた印刷装置において、前記第一弾性部材と前記第二弾性部材は、前記プレッサーの回転軸に沿って直列に配置されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のバックテンション機構を備えた印刷装置において、前記バックテンション発生部材は、少なくとも前記インクリボンカセットの装填方向奥側の固定面及び前記プレッサーのいずれかに固定されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のバックテンション機構を備えた印刷装置において、前記インクリボンカセットが前記保持手段で保持された状態で前記第一弾性部材、前記第二弾性部材、前記ボビン付勢手段の順に付勢力が大きく設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明による印刷装置では、比較的大きなバックテンション力を、ばらつきを小さくしながら、比較的小さな装置スペースもしくは空間を用いて発生させることが実現可能となる。また、構成が簡素なため組立性が良くコストも安い。更にリボンカセット取出しのための押出し力をインクリボン供給側ボビンの位相合わせばねと兼用でき、且つ専用ばね力の設定ができるのでインクリボンカセットの飛出し過ぎの防止も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る昇華型印刷装置の概略図である。
【図2】本発明に係るインクシートの構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態で用いるインクシートカセットの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における印刷装置のシャーシとバックテンション発生手段の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるインクシートカセットの印刷装置への装填状態を表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組合せの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る昇華型印刷装置の概略図である。ロール状に巻回されたロール用紙101から給紙ローラ102の回転によって用紙(記録媒体)112が引き出され、ステッピングモータにより回転が制御されるグリップローラ103まで用紙112の先端が送られる。このグリップローラ103の対向側に用紙112を挟み込む形でピンチローラ106が配置されており、グリップローラ103の回転により、用紙112は用紙検出センサ114まで搬送される。用紙検出センサ114としてはフォトリフレクタ等が用いられ、用紙検出センサ114により、用紙112の先端が検出された後は、オープンループで用紙112の搬送位置制御を行う。
【0021】
グリップローラ103の更なる回転により、用紙112はプラテンローラ104、排紙ローラ107へと搬送される。プラテンローラ104の対向側にはサーマルヘッド109が配置され、このサーマルヘッド109と用紙112の間をインクシート105が通過する。なお、このインクシート105によりインクリボンが構成される。
【0022】
図2は、インクシートの構成例である。このインクシート105は、イエロー(Y)色201、マゼンタ(M)色202、シアン(C)色203の昇華性染料のインク部分と、熱溶融インクのOP層204とを含んでいる。そして、これらの面順次に配列された昇華型インク部分と熱溶融インク部分とからなる各組が周期的に配置されている。また、各昇華型インク部分及び昇華型インク部分と熱溶融インク部分との間には、インクシート105の頭出し検知用のマーカ205が配置されており、マーカ205の検出はマーカ検出センサ113によって行われる。マーカ検出センサ113としてはフォトリフレクタ等が用いられ、各色の印画前もしくは印画後にマーカ検出センサ113によるインクシート105の頭出しが行われる。
【0023】
インクシート105は、インクシート供給側ボビン110(本発明に係るインクリボンボビン)から供給され、サーマルヘッド109と用紙112との間を通ってモータの回転駆動により巻取り制御されるインクシート巻取り側ボビン108へ巻き取られる。なお、このサーマルヘッド109は少なくとも用紙112の幅(主走査方向)に相当する分、複数の発熱体を配列したライン型のサーマルヘッドで、用紙112はこのサーマルヘッド109に直交するA方向(副走査方向)に搬送されて画像が転写(記録)される。
【0024】
用紙112に画像を転写する際には先ず、サーマルヘッド109とプラテンローラ104が離反状態のままにしておく。そして、不図示のインクリボン巻上げ手段によってインクシート巻取り側ボビン108がインクシート頭出し検知用のマーカ205が検出されるまで巻き上げられる。この時、インクシート供給側ボビン110には後述するバックテンション発生手段により、インクシート105の引出しを妨げる方向にバックテンションが働く。バックテンションは、インクシート巻上げ駆動の慣性力によるインクシート105の引出し過ぎ防止や、インクシート105上にしわが発生することを防止する。更には用紙搬送時にインクシート105が、紙との摩擦力で不用意にインクシート供給側ボビン110から引き出されてしまうことを防止している。
【0025】
インクシート105の頭出しが完了すると、サーマルヘッド109とプラテンローラ104が圧着状態となり、インクシート105がサーマルヘッド109の発熱体と用紙112に接する状態となる。不図示のロール紙駆動手段が用紙巻戻し駆動を開始し、且つインクシート巻上げ手段でインクシート巻上げが開始される。この状態で、不図示のメインコントローラによってサーマルヘッド109の発熱体がその画像データに応じて発熱駆動される。この発熱体の発熱により、昇華したインクシート105の昇華性染料が、プラテンローラ104により圧接されている用紙112の受容層へ転写されて定着することにより画像が形成される。印刷している間も、インクシート供給側ボビン110にはバックテンションが発生しており、インクシート105が巻上げ側だけで引っ張られることでインクシート105にしわが発生することを防止している。
【0026】
このようにY/M/C色の各色の転写が終了した後、OP層204がサーマルヘッド109の発熱体の熱で溶融されて、転写済み用紙のカラー画像の表面をコーティングする保護層を形成する。こうして1枚のカラー画像の印刷が終了すると、用112紙はB方向に搬送され、カッタ111により、その連続紙が所望のサイズに切断され、排紙ローラ107の回転により印刷済みの用紙112がプリンタ外部へ排紙される。
【0027】
図3は、本実施形態で用いるインクシートカセット(インクリボンカセット)の斜視図である。図3(a)はカセットに具備している部品の斜視図である。インクシート供給側ボビン110、巻取り側ボビン108共に、同じインクシートボビン300が巻き中心にあり、各々のボビン軸部301にインクシート105の端部が巻きつけられている。インクシートボビン300の一方のフランジ表面には、印刷装置に装填されていないカセット単体状態でインクシートボビン300の回転を止めるために放射状に設けられた凹部302が有る。後述するカセット内部に設けたボビン係止リブが、凹部302にボビン付勢手段として弾性手段であるばね304で押圧されることで係合方向に付勢され、ボビン回転が止められている。303はインクシートボビン300に印刷装置からの回転力を伝達させるための回転係合リブである。
【0028】
図3(b)はインクシートカセットの外観斜視図である。インクシート供給側ボビン110は供給側カバー306で、インクシート巻取り側ボビン108は巻取り側カバー305で覆われており、供給側カバー306と巻取り側カバー305の両端はリブ307で連結されている。両側のリブ307とカバー305,306とで囲まれた部分は、インクシート105が露出しており、この空間内でサーマルヘッド109が上下動してインクシート105を用紙112に押圧する。
【0029】
次に図4と図5を用いて、本実施形態のバックテンション機構の説明をする。図4は、本実施形態の印刷装置のシャーシとバックテンション発生手段の斜視図である。図5は、本実施形態のインクシートカセットのリボン供給側の印刷装置への装填状態を表した断面図である。
図4(a)は、本実施形態の印刷装置のシャーシ400とバックテンション発生手段10を抽出して表している。シャーシ400はプレス曲げ成形で一体構成になっている。インクシートカセット装填口401が一端側に開口しており、インクシートカセット装填方向の奥側である他端側に、インクシート供給側ボビン110の回転係合部303と係合するバックテンション発生手段10が具備されている。
【0030】
図4(b)は、バックテンション発生手段10の斜視図である。インクシートカセット装填方向の奥側のシャーシ面(側面)に絞り部409を凹設し、更に絞り部409の凹面(底面)に軸410がかしめ等により植設されている。該絞り部409の凹面において軸410を中心にバックテンション発生部材となる環状のフェルト402が両面テープで固定されている。フェルト402は、インクシート供給側ボビン110に対応配置される。フェルト402は羊や兎の毛を圧縮したものが一般的に用いられる。
【0031】
ここで、フェルト及び樹脂間で摩擦力を発生させると、その材質にもよるが樹脂と樹脂の間で摩擦力を発生させる場合に比べ、静止摩擦力と動摩擦力の変動が小さい。即ちフェルト402をバックテンション発生部材として用いることで、インクシート供給側ボビン110の動き始めと、それが動いている最中とのバックテンション差を少なくできる。回転軸となる軸410にはプレッサー403が回転可能に嵌合支持される。更に軸410に設けられたEリング406とプレッサー403との間に装着されたバックテンションばね405(第一弾性部材)の弾性力で、プレッサー403はフェルト402側に押しつけられて弾接する。プレッサー403のフェルト402に対する接触面には、軸410と同心円状の不図示の凸凹部が形成され、この凸凹部がフェルト402に所定加圧力で密着することでバックテンションが発生する。
【0032】
フェルト402の摩擦力でバックテンションを発生させる場合、フェルト402に相対するプレッサー403との接触面積を適切に設定することが重要である。つまり、バックテンションばね405のばね力を強くするだけでは発生する摩擦力、即ちバックテンションにばらつきが生じ易い。本発明の構成では、比較的大きいバックテンション力を必要とするのに対応して、広い面積と大きい外径を必要とするフェルト402とプレッサー403の摩擦発生面を、カセット装填方向の奥側の端面に沿って配置する。これにより広い面積と大きい外径を必要とする部品が、印刷装置内の軸410の長手方向に移動しないようにして、且つ所定空間内で回転するだけにして、他部品の動作や配置に影響が出難いようにしている。
【0033】
また、インクシートカセットの装填方向奥側のシャーシ面を絞り、この凹面409内にフェルト402とプレッサー403の摩擦発生面を埋没させることによって、更に他部品の空間使用への影響を軽減させている。また、フェルト402が、ただシャーシ400とプレッサー403の間で挟まれているのではなく、フェルト402が固定面であるシャーシ400に両面テープで固定されている。このためフェルト402とプレッサー403の間の回転摩擦の関係でバックテンションが成立する。そして、シャーシ400とフェルト402の間の摺動摩擦の変動がない分、フェルト402とプレッサー403の間の摺動摩擦がプレッサー403の回転直後から安定して発生する。
【0034】
本実施形態ではシャーシ400側をフェルト402の固定に用いたが、シャーシ400とフェルト402の間を可動の関係にして、フェルト402とプレッサー403間を両面テープ等で固定してもよい。
【0035】
また、図4(b)において、404は軸410に嵌合し回転可能に具備されているブッシュであり、インクシート供給側ボビン110の回転係合部303(図4(a)参照)と係合する。ブッシュ404は、Eリング406との間に装着されたブッシュばね407(第二弾性部材)で、軸410の先端に具備されたCリング408側に片寄せ付勢されている。なお、バックテンションばね405とブッシュばね407とはEリング406を介して相互に独立しており、互いのばね力は伝わらないようになっている。
【0036】
ブッシュ404は軸長手方向に櫛歯状に延びる突起として形成されるリブ404aを具備しており、該リブ404aが、同様にプレッサー403から軸長手方向に櫛歯状に延びる突起として形成されるリブ403aと軸長手方向に可動に互いに嵌合している。ブッシュ404は、インクシート供給側ボビン110の回転係合部303に係合する係合部404bを有している。ブッシュ404が、プレッサー403と一体回転可能であると共に、軸長手方向には相対移動可能に軸支される。インクシートカセットが印刷装置に装填されて、インクシートボビン300がブッシュ404を押すと、ブッシュ404は軸410長手方向に押し込まれる。押し込まれることでインクシート供給側ボビン110の回転係合部303とブッシュ404の係合部404bが係合関係になる。そして、インクシート巻取り側ボビン108が巻取り駆動されて、インクシート105が引かれることでインクシートボビン301が回転を開始する。
【0037】
これによりフェルト402とプレッサー403の間で発生したバックテンションがプレッサー403を回り難くするバックテンショントルクとして、リブ403aを介してリブ404aに伝わる。大きいバックテンションが必要な場合は、バックテンションばね405を強くする。バックテンションばね力は、軸410中心に発生する回転方向のバックテンショントルクとしてのみブッシュ404に伝わり、Eリング406を隔ててブッシュばね407に軸長手方向の押し力としては伝わらない。
【0038】
図5(a)は、インクシートカセットを装填する場合の断面図である。インクシートカセットが印刷装置に完全に装填されていない第一位置で、インクシート供給側ボビン110の凹部302は、ばね304によってカセットカバーの供給側カバー306内部に設けられたボビン係止リブ308に片寄せされ嵌っている。これによりインクシート供給側ボビン110は回転規制される。また、インクシートカセットは、印刷装置のインクシートカセット装填口401(図4(a)参照)に設けられたカセットロックレバー502の傾斜面を押しながら装填される。カセットロックレバー502は、印刷装置のインクシートカセット装填口401を形成する部品500との間に装着されたばね501によってカセット係止方向に付勢されており、この付勢力に抗しながらインクシートカセットを装填させる。
【0039】
図5(b)は、インクシートカセットが装填された場合の断面図である。インクシートカセットが印刷装置に完全に装填される第二位置で、カセットロックレバー502が供給側カバー306の表面を沿う方向にばね501の付勢力で移動する(図5(b)、矢印C参照)。これにより印刷装置内でのインクシートカセットの装填方向の位置が決まる。このようにカセットロックレバー502は、インクシートカセットを装置内の所定位置に保持する。インクシートボビン300の回転係合部303とブッシュ404の係合部404bの位相が合い、ブッシュばね407の付勢力でインクシートボビン300がボビン長手方向に押される。すると、ばね304よりもブッシュばね407の付勢力が強いので、インクシートボビン300は、供給側カバー306内部に設けられた支持部309に当接する位置まで押し戻される。この状態では、凹部302とボビン係止リブ308との嵌め合いは解かれ、インクシートカセット内部でインクシート供給側ボビン110は回転可能状態にある。図5(a)の位置よりも図5(b)の位置でばね405は圧縮されているが、Eリング406が介在するためその圧縮力はバックテンションばね405には伝わらない。よってインクシートカセット部品の寸法公差で微妙にカセット装填完了位置でのボビン300位置がずれても、発生するバックテンション力には影響がない。
【0040】
図5に示されるように、バックテンションを発生させるバックテンションばね405とブッシュ404を付勢するためのブッシュばね407を同軸に直列に配置している。更にプレッサー403とブッシュ404も同軸に直列に配置し、バックテンションの動力伝達を軸方向に互いに嵌合するリブを用いることで、バックテンション発生手段10のシャーシ400から突出する軸外径部や軸長手方向に移動する部分を小さくできる。シャーシ400から突出する軸外径部や軸長手方向に移動する部分を小さくできることで、その周囲の部品の可動空間、配置空間に自由度が生まれ、印刷装置の小型化を実現可能になる。
【0041】
インクシートカセットを印刷装置から取り出したい場合には、カセットロックレバー502をばね501の付勢方向と逆向きに引き上げると、カセットロックレバー502による保持が解除される。そして、ブッシュばね407の付勢力によって装置外へ離脱するように付勢され、略図5(a)の状態のように飛び出る。本実施形態ではEリング406を境にして、バックテンションを発生させるばね405と、ブッシュ404bに付勢力を付与しているブッシュばね407を独立させ、各々別々にばね力の設定が可能である。故に、強いバックテンション力を発生させるためにばね405を強くしていても、インクシートカセットは飛び出し過ぎることはない。
【0042】
本実施形態では比較的高いバックテンション力を発生させるため、インクシートカセット装填完了の図5(b)の状態で発生するばね力が、バックテンションばね405>ブッシュばね407>ボビン片寄せ用のばね304の関係になっている。
より正確なバックテンション力を発生させるために、バックテンションばね、リボンブッシュばねの端部にワッシャ等を介在させて、ばね端部の回転摺動摩擦の低減を行ってもよい。
【符号の説明】
【0043】
105 インクシート
110 インクシート供給側ボビン
108 インクシート巻取り側ボビン
400 シャーシ
402 フェルト
403 プレッサー
404 ブッシュ
405 バックテンションばね
406 Eリング
407 ブッシュばね
408 Cリング
409 シャーシ絞り部
410 軸
502 カセットロックレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンボビンに係合してバックテンションを付与するバックテンション機構を備えた印刷装置であって、
装置内に装填されたインクリボンカセットを所定位置に保持する保持手段と、
前記インクリボンカセットの装填方向奥側にて前記インクリボンボビンに対応する位置に配置されたバックテンション発生部材と、
前記バックテンション発生部材に弾接すると共に、その回転軸のまわりに回転可能に装着されたプレッサーと、
前記プレッサーに対して同軸に一体回転可能で且つ前記回転軸の軸方向に相対移動可能に軸支されると共に、前記インクリボンボビンに係合するブッシュとを有し、
前記保持手段による保持が解除されると、前記インクリボンカセットが装置外へ離脱するように前記ブッシュを介して付勢されるようにしたことを特徴とするバックテンション機構を備えた印刷装置。
【請求項2】
前記バックテンション発生部材に弾接するように前記プレッサーを付勢する第一弾性部材と、
前記第一弾性部材とは独立して設けられると共に、前記インクリボンボビンに係合するように前記ブッシュを付勢する第二弾性部材とを更に有することを特徴とする請求項1に記載のバックテンション機構を備えた印刷装置。
【請求項3】
前記インクリボンカセットは、インクシートが予め巻回された前記インクリボンボビンが回転可能に保持されると共に、前記インクリボンボビンを係合方向に付勢するボビン付勢手段と、前記インクリボンボビンとカセットカバーの間の係合部とを有することを特徴とする請求項2に記載のバックテンション機構を備えた印刷装置。
【請求項4】
前記インクリボンカセットの装置内の第一位置で、前記インクリボンボビンと前記ブッシュの係合が解除されると共に、前記インクリボンボビンと前記カセットカバーが前記係合部にて係合して前記インクリボンボビンが回転規制され、
前記インクリボンカセットの装置内の第二位置で、前記インクリボンボビンと前記ブッシュが係合すると共に、前記インクリボンボビンと前記カセットカバーの係合が解除されて前記インクリボンボビンが回転可能になることを特徴とする請求項3に記載のバックテンション機構を備えた印刷装置。
【請求項5】
前記プレッサーと前記ブッシュは、軸方向に櫛歯状に互いに突出する突起を介して係合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバックテンション機構を備えた印刷装置。
【請求項6】
前記第一弾性部材と前記第二弾性部材は、前記プレッサーの回転軸に沿って直列に配置されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のバックテンション機構を備えた印刷装置。
【請求項7】
前記バックテンション発生部材は、少なくとも前記インクリボンカセットの装填方向奥側の固定面及び前記プレッサーのいずれかに固定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のバックテンション機構を備えた印刷装置。
【請求項8】
前記インクリボンカセットが前記保持手段で保持された状態で前記第一弾性部材、前記第二弾性部材、前記ボビン付勢手段の順に付勢力が大きく設定されることを特徴とする請求項3に記載のバックテンション機構を備えた印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−14078(P2013−14078A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148556(P2011−148556)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】