説明

バックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体、該蛍光体を用いた冷陰極蛍光ランプ、および液晶表示装置

【課題】 180〜300nmの紫外線励起下で従来の緑色蛍光体とほぼ同等の輝度を有していて残光時間が短く、バックライト用の希土類ケイ酸塩蛍光体、高光束で液晶ディスプレイなどのバックライトに用いた場合に優れた動画特性を実現する冷陰極蛍光ランプ、およびカラー液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】 少なくともTb、Si及びOからなり、紫外線励起により1/10残光時間が5ms以下である発光を呈し、好ましくは組成式(TbxCeyLn1-x-y23・nSiO2で表されるTb付活希土類ケイ酸塩蛍光体とする。(ただし、前記組成式中、LnはY、La、及びGdの中の少なくとも1種の希土類元素を表わし、x、y及びnはそれぞれ、0.03≦x≦0.40、0<y≦0.2、0.9<n≦1.4の条件を満たす数である)
さらにこの蛍光体を蛍光膜として用いた冷陰極蛍光ランプ、及びカラー液晶表示装置のバックライトとして該蛍光ランプを適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波長が180〜380nmの紫外線励起下で従来の緑色蛍光体と比べほぼ同等の明るさを有しながら、残光時間が画期的に短い、緑色発光のバックライト用希土類ケイ酸塩蛍光体およびこの蛍光体を蛍光膜に含む、高光束で液晶ディスプレイなどのバックライトに用いた場合に優れた動画特性を実現する冷陰極蛍光ランプおよび本発明の蛍光体を使用したカラー液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)はバックライトと液晶シャッターによる組み合わせによりパネル上に画像を構成し、さらにカラーフィルターを組み合わせることにより画像のカラー表示を可能にしている。LCDではすべてのピクセルが同時に表示され、1フレームの映像が次のフレームに置き換わるまで常に表示されているホールド表示である。ホールド表示では人間の目が持つ残像を感じる特性のため残像感は消えず、スポーツ番組などの動きの激しい映像では非常に残像感のある映像にしかならなかった。
世界のテレビの映像信号は、一秒間の表示コマ数が約50〜60フレームであり、日本でも毎秒60フレーム、1フレームの表示時間は約16msである。技術の進歩によって液晶の応答速度は16msよりも短くなり残像感は低減されたが、応答速度を速くするだけではそれ以上の効果は薄く、たとえ応答速度を0msにできたとしても残像感は消えない。
【0003】
LCDテレビにおいては、動きの激しい映像においてもインパルス型表示を行うカラーブラウン管(CRT)と同程度の動画特性が必要となってきている。そのためLCDにおける残像感をなくすために、従来は毎秒60フレームであった表示を倍の120フレームまで引き上げ、ホールドしている画像を半分の8msまで短くしたり、1フレーム分の映像信号を入力する毎に、全画面黒表示を行わせたり、バックライトの発光タイミングを選択的に行わせたり、あるいはその両方を組み合わせることにより、擬似インパルス型表示を実現することで、CRTに近い動画特性を得ている。
【0004】
LCDの残像感や輪郭のぼやけを低減するために、バックライトに用いる冷陰極蛍光ランプ(CCFL)を全画面黒表示に同期させて点滅させることが試みられている。60Hzであったフレーム周波数も、近年120Hz以上まで速くなるに従い、冷陰極蛍光ランプの点灯時間・消灯時間が短くなってきている。そのため上記冷陰極蛍光ランプに用いられる蛍光体についても、できるだけ残光時間の短いものの開発が要望されている。
従来より液晶バックライト用の冷陰極蛍光ランプには三波長形蛍光ランプが使われており、これら三波長形蛍光ランプには450、540および610nmの各波長域付近に、強く、かつ半値幅の狭い発光スペクトルのピークを有する青色、緑色、赤色蛍光体が使われている。
代表的な冷陰極蛍光ランプ用赤色蛍光体であるユウロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(以下、YOX蛍光体ともいう)は1/10残光時間はおよそ3.0ms、代表的な冷陰極蛍光ランプ用青色蛍光体であるユウロピウム付活アルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体(以下、BAM蛍光体ともいう)は1/10残光時間はおよそ1.0ms以下であるのに対し、現在冷陰極蛍光ランプ用として多用されている代表的な緑色蛍光体であるCeおよびTb共付活リン酸ランタン蛍光体(以下、LAP蛍光体ともいう)は1/10残光時間は7.4msである。これら赤色、青色、緑色蛍光体の中でも、特に緑色蛍光体は残光時間が他の2色に比べ長く、また540nmの波長域の緑色発光は比視感度が高いため緑色の残光が目立つという問題がある。
なお、本明細書において、1/10残光時間とは、蛍光体に紫外線を照射して発光させ、該励起光を遮断した直後の発光強度が1/10の明るさに減衰するまでに要する時間である。
【0005】
一方、上記LAP蛍光体以外の緑色蛍光体として、テルビウム付活のイットリウムシリケート蛍光体(以下YST蛍光体)が知られている。YST蛍光体は、例えば特許文献1、特許文献2等に記載されているように、主に高圧水銀灯に用いられている。また、特許文献3のように、PDP用として使用されることもあるが、この場合、VUVで励起する場合にはCeが不要であるため、通常Ceは添加されない。
またYST蛍光体の輝度向上のため、第3成分を追加する技術として、特許文献4、5のように、ScやBiを添加する技術も知られている。特許文献5には、低圧水銀灯でYST蛍光体を使用することも記載されている。
しかしながらいずれの文献も、点滅させて用いる動画特性の優れたバックライトを得るための条件も、短残光かつ高輝度のランプを得るための知見についても、特に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−071052号公報
【特許文献2】特開平4−234481号公報
【特許文献3】特開2001−135239号公報
【特許文献4】特開2005−146052号公報
【特許文献5】特開昭56−099277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は波長が180〜380nmの紫外線励起下で従来の緑色蛍光体と比べほぼ同等の明るさを有しながら、残光時間が画期的に短く、バックライト用希土類ケイ酸塩蛍光体およびこの蛍光体を蛍光膜に含む、高光束で液晶ディスプレイなどのバックライトに用いた場合に優れた動画特性を実現する冷陰極蛍光ランプおよび本蛍光体を用いたカラー液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、擬似インパルス型表示LCDのバックライトとして用いる、例えば冷陰極蛍光ランプ等に用いられる蛍光体において、特に重要視される特性である、蛍光体の残光時間の短縮化を実現するために、特にTbを付活剤として含む蛍光体に着目し、蛍光体の結晶構造や母体を構成する元素の種類やその含有比率、付活剤のTb含有量、共付活剤の有無とその含有量等、蛍光体の組成を広範囲にわたって検討し、その組成の違いによる残光特性や発光特性への影響に関して詳細に解析した。
その結果、従来の考えでは蛍光ランプ用蛍光体に用いるとHg吸着やイオン衝撃により蛍光ランプの寿命特性に大きな影響を及ぼす珪素を母体の一部に用いたTb付活希土類ケイ酸塩蛍光体において、意外にもこの蛍光体を蛍光ランプの蛍光膜として用いても光束維持率の大幅な低下がなく、かつこのTb付活希土類ケイ酸塩蛍光体を構成する付活剤のTb含有量や共付活剤のCe含有量によっては、従来の蛍光体と比べほぼ同等の発光効率を維持しつつ、残光時間の改善が図れるとの知見を得た。
【0009】
また、擬似インパルス型表示LCDでは残像感や輪郭のぼやけを低減するために、バックライトに用いるCCFLを点滅させている。この点滅方式では点灯時間が短いので点灯時の発光効率の立ち上がりに時間が掛かると、発光効率が最大になる前に冷陰極蛍光ランプが消灯するためにLCDの画面輝度が低くなる。残光時間が短い蛍光体は立ち上がり時間も短いため、バックライトに用いる冷陰極蛍光ランプに残光時間の短い蛍光体を用いるとLCDの画面輝度の低下を抑えることができる。
さらに、本発明者はTb付活希土類ケイ酸塩蛍光体において、このTb付活希土類ケイ酸塩蛍光体の母体を構成する珪素の組成比率{Si/(Ln+Tb+Ce)}が1を超えるようにすることにより、残光時間を維持しつつ、十分な発光輝度が得られるとの知見を得た。
【0010】
本発明は、このような知見をもとになし得たものであり、以下を要旨とする。
(1)少なくともテルビウム(Tb)、珪素(Si)、及び酸素(O)からなり、波長266nmの紫外線で励起したときの1/10残光時間が5ms以下であることを特徴とするバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
(2)前記蛍光体が、組成式(TbxCeyLn1-x-y23・nSiO2で表され、波長180〜380nmの紫外線を照射したとき発光することを特徴とする前記(1)に記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。(ただし、前記組成式中、LnはY、La、及びGdの中の少なくとも1種の希土類元素を表わし、x、y及びnはそれぞれ、0.03≦x≦0.40、0<y≦0.2、0.9≦n≦1.4の条件を満たす数である)
(3)前記組成式において、xが、0.1<x≦0.3の条件を満たす数であることを特徴とする前記(2)に記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
(4)前記組成式において、nが、1<n≦1.15の条件を満たす数であることを特徴とする前記(2)又は(3)に記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
【0011】
(5)前記組成式において、yが、0.01≦y≦0.1の条件を満たす数であることを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれかに記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
(6)前記組成式において、x+yが、0.1<x+y≦0.3の条件を満たす数であることを特徴とする前記(2)〜(5)のいずれか一項に記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
(7)該バックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体が、1回の電圧を駆けている時間が5ms以下になるバックライトユニット用である、前記(2)〜(6)記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
【0012】
(8)光に対して透明な管状の外囲器の内壁に蛍光膜を形成すると共に、該外囲器内に水銀と希ガスを封入してなり、該水銀の放電によって放射される波長180〜380nmの紫外線により前記蛍光膜を発光させる冷陰極蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜中に前記(1)〜(7)のいずれかに記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体を含むことを特徴とする冷陰極蛍光ランプ。
(9)前記蛍光膜中に、発光強度の1/10残光時間が1.0ms以下である青色蛍光体、及び発光強度の1/10残光時間が3.0ms以下である赤色蛍光体を含むことを特徴とする前記(8)に記載の冷陰極蛍光ランプ。
(10)前記青色蛍光体が、Eu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体、又はEu共付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体であり、前記赤色蛍光体が、Eu付活希土類酸化物蛍光体またはEu付活希土類バナジン酸塩蛍光体、又はEu付活希土類バナジン酸塩蛍光体であることを特徴とする前記(9)に記載の冷陰極蛍光ランプ。
(11)前記冷陰極蛍光ランプの光束の1/10残光時間が3ms以下であることを特徴とする前記(8)〜(10)のいずれかに記載の冷陰極蛍光ランプ。
(12)前記冷陰極蛍光ランプの発光色のCIE表色系による発光色度x値、及びy値がそれぞれ0.23≦x≦0.35、及び0.18≦y≦0.35であることを特徴とする(8)〜(11)のいずれかに記載の冷陰極蛍光ランプ。
【0013】
(13)光シャッターとして機能する液晶からなる複数の液晶素子と該複数の液晶素子のそれぞれに対応する少なくとも赤、緑、青の3色の色素を有するカラーフィルターと、透過照明用のバックライトとを組み合わせて構成されるカラー液晶表示装置において、前記バックライトを構成する冷陰極蛍光ランプが前記(8)〜(12)のいずれかに記載の冷陰極蛍光ランプであることを特徴とするカラー液晶表示装置。
(14)前記冷陰極蛍光ランプが1回の電圧を駆けている時間が5ms以下である間欠点灯をすることを特徴とする前記(13)に記載のカラー液晶表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体は上記組成を有するため、高輝度であり、かつ、従来のCeおよびTb共付活燐酸ランタン蛍光体を代表とする従来の冷陰極蛍光ランプ用緑色蛍光体に比べて残光時間を短くすることがでる。
したがって、本発明の蛍光体をLEDや冷陰極蛍光ランプの緑色発光成分として蛍光膜に用いると、光束が高く、継続して点灯しても光束維持率の大幅な低下のない残光時間の短いLEDや冷陰極蛍光ランプが得られ、このランプをLCDなどのバックライト、特に擬似インパルス表示型LCDなどの間欠点灯するバックライトに用いると、残像感や輪郭のぼやけが低減された明るくて美しい映像、特に激しい動きのある映像が表示できる。
また、本発明のTb付活希土類ケイ酸塩蛍光体は、冷陰極蛍光ランプのみならず、通常の水銀ランプに好適に使用することができ、更には真空紫外域の励起源を利用するプラズマディスプレイや希ガスランプ等の真空紫外線発光素子に適用しても、その優れた特性が認められる。また、本発明の蛍光体と組み合わせて用いられる励起用光源の励起波長を380nm以下となるよう適宜選択することにより、LED用等にも好適に使用でき、これをバックライトとして使用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】Tb,Ce共付活ケイ酸イットリウム蛍光体の付活剤濃度と1/10残光時間との相関を例示するグラフである。
【図2】Tb,Ce共付活ケイ酸イットリウム蛍光体の付活剤濃度と相対発光輝度との相関を例示するグラフである。
【図3】Tb,Ce共付活ケイ酸イットリウム蛍光体の母体組成中における二酸化珪素の含有量と相対発光輝度との相関を例示するグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の特徴は、少なくともテルビウム(Tb)、珪素(Si)、及び酸素(O)からなり、波長266nmの紫外線で励起したときの1/10残光時間が5msec(以下、msと表記する)以下である蛍光体を開発したことにあり、これにより、特に液晶TV用バックライトとして使用する際に、非常に優れた動画特性が得られるというものである。
かかる蛍光体として、特に好ましくは、前記蛍光体が請求項2の発明に係る、組成式(TbxCeyLn1-x-y23・nSiO2で表され、波長180〜380nmの紫外線を照射したとき発光することを特徴とするバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体(ただし、前記組成式中、LnはY、La、及びGdの中の少なくとも1種の希土類元素を表わし、x、y及びnはそれぞれ、0.03≦x≦0.40、0<y≦0.2、0.9≦n≦1.4の条件を満たす数である。以下同様)。
【0017】
以下、本願発明を更に詳細に説明する。
本発明のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体(以下、単に本発明の緑色蛍光体ともいう)は、蛍光体原料を所定の組成になるように配合して調製する以外は従来のTb付活希土類ケイ酸塩蛍光体と同様にして製造することができる。
すなわち、本発明の緑色蛍光体は、その好ましい態様として、化学量論的に組成式(TbxCeyLn1-x-y23・nSiO2(ただし、LnはY、La、及びGdの中の少なくとも1種の希土類元素を表わし、x、y及びnはそれぞれ、0.03≦x≦0.40、0<y≦0.2、0.9≦n≦1.4の条件を満たす数である)となる割合で、
(i) 希土類金属(Ln)の酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物などの高温で希土類金属(Ln)の酸化物に変わり得るLnを含む化合物と、
(ii) 酸化ケイ素などの高温でケイ素に変わり得るケイ素を含む化合物、
との混合物からなる蛍光体原料化合物を耐熱性容器に詰めてアルゴンガスや窒素ガスなどの中性ガス雰囲気あるいは少量の水素ガスを含む窒素ガスや一酸化炭素ガスなどの還元性雰囲気中において1200〜1600℃で1回もしくは複数回焼成する方法によって製造することができる。
また、上記蛍光体原料化合物を焼成する際、この原料化合物中にさらにハロゲンを含む化合物や硼素を含む化合物などをフラックスとして加えておいて焼成してもよい。なお、本発明の蛍光体の製造方法は上述の方法に限定されるものではなく、組成が上記化学量論量の範囲内にあれば従来から知られているいずれの方法によっても製造することができる。
【0018】
次に本発明の好ましい態様である、組成式が(TbxCey1-x-y23・nSiO2で表されるTb付活ケイ酸イットリウム蛍光体を例に、この蛍光体の付活剤(Tb)及び共付活剤(Ce)の濃度と1/10残光時間との相関、並びに発光輝度との相関について検討した結果について示す。
上記組成式において、Tb付活ケイ酸イットリウム蛍光体{(TbxCey1-x-y23・nSiO2}1モル中に含まれるテルビウム(Tb)、セリウム(Ce)及び二酸化ケイ素(SiO2)の各含有量(モル数)はそれぞれ2x、2yおよびnである。
なお、以下に示す相対発光輝度とは、組成式が(La0.55Ce0.3Tb0.15)PO4で表される蛍光ランプ用緑色蛍光体(LAP蛍光体)を253.7nmの紫外線で励起した時の発光輝度(発光スペクトルのピーク波長が543nm)を100とした時の各蛍光体の発光輝度の相対値である。
【0019】
図1は二酸化ケイ素の含有量が1.05モル(n=1.05)である、Tb付活ケイ酸イットリウム蛍光体{(TbxCey1-x-y23・1.05SiO2}を例に、この蛍光体を266nmの紫外線レーザーで励起したときの1/10残光時間と、Tb含有量(x)とCeの含有量(y)の合計(x+y)との相関を示したグラフである。
また、図2は前記と同じTb付活ケイ酸イットリウム蛍光体{(TbxCey1-x-y23・1.05SiO2}を例に、この蛍光体を253.7nmの紫外線で励起したときの発光輝度(相対値)と、Tb含有量(x)とCeの含有量(y)の合計(x+y)との相関を示したグラフである。なお、図中のそれぞれの点は後述する実施例にて実測した値である。
以下、図1、2を参照し、本発明をより詳しく説明する。
【0020】
まず、1/10残光時間は、その蛍光体の応答特性、あるいはLCDにおける動画特性の良し悪しの尺度を示す評価量で、この1/10残光時間が短いほど、残像感や輪郭のぼやけが低減された明るくて美しい映像、特に激しい動きのある映像が表示できることを意味する。
擬似インパルス表示型LCDにおいて残像感や輪郭のぼやけが低減された明るくて美しい映像を表示するためには、間欠点灯するバックライトが3ms以下の1/10残光時間をもつことが望ましく、より好ましくは2.5ms以下である。例えば、1/10残光時間がおよそ3.0msの冷陰極蛍光ランプ用赤色発光蛍光体であるYOX蛍光体と、1/10残光時間がおよそ1.0ms以下である冷陰極蛍光ランプ用青色発光蛍光体であるBAM蛍光体を用いた冷陰極蛍光ランプの1/10残光時間を3msより短くするためには、同時に用いる冷陰極蛍光ランプ用緑色発光蛍光体は少なくとも6ms以下の1/10残光時間であることが望ましい。
本発明の緑色発光蛍光体においては、この1/10残光時間が5.0ms以下であるものをその目標とした。より好ましい残光時間の目標値は4.8ms以下であることが望ましい。
【0021】
図1からわかるように、Tb付活ケイ酸イットリウム蛍光体におけるこの1/10残光時間は、Tb含有量(x)およびCe含有量(y)が多くなると小さくなる。特にCe含有量(y)が多くなると急激に小さくなる。また、Ceを含む(y>0)CeおよびTb共付活ケイ酸イットリウム蛍光体{(TbxCey1-x-y23・1.05SiO2}では、少量Ceを含有させることにより、1/10残光時間は急激に小さくなり、Ce含有量(y)が多くなるとさら1/10残光時間は短くなる。
図1や下記の実施例の記載から、Ce含有量(y)が0.003モルでこの1/10残光時間はおよそ6ms以下、Ce含有量(y)が0.01モル以上(y≧0.01)でこの1/10残光時間はおよそ5ms以下となる。またCeを含まない(y=0)Tb付活ケイ酸イットリウム蛍光体{(Tbx1-x23・1.05SiO2}において明確に判るが、Tb含有量(x)が多くなると1/10残光時間は小さくなり、Tb含有量(x)が0.25モル以上(x≧0.25)でこの1/10残光時間はおよそ5ms以下となる。
【0022】
Tb含有量(x)とCe含有量(y)の合計量が0.1モルを超えると(x+y>0.1)1/10残光時間はおよそ5ms以下となり、Tb含有量(x)及びCeの含有量(y)との合計量(x+y)が多くなるほどこの1/10残光時間は小さくなる。ただし、前記のように1/10残光時間のみに着目した場合、LCDにおける動画特性の良し悪しの観点からはTb含有量(x)およびCe含有量(y)を増加させることが一義的には好ましいと言えるが、輝度の面から見ると必ずしも満足な結果は得られない。この点を図2を用いて説明し、その後本発明のより好適な態様となる数値範囲について説明する。
【0023】
図2からわかるように、Tb付活ケイ酸イットリウム蛍光体を波長253.7nmの紫外線で励起した場合の発光輝度は、Tb付活ケイ酸イットリウム蛍光体中のTb含有量(x)とCe含有量(y)に大きく依存する。
Ceを含まない(y=0)のTb付活ケイ酸イットリウム蛍光体{(Tbx1-x23・1.05SiO2}においては、Tb含有量(x)が0.15モル(x=0.15)付近で最大になりLAP蛍光体とほぼ同等の発光輝度を示すが、Tb含有量(x)がそれより少なくなっても多くなっても発光輝度は低下する。この傾向は、Ce量の多寡によらず同様に観察される。
さらにCeを含む(y>0)CeおよびTb共付活ケイ酸イットリウム蛍光体{(TbxCey1-x-y23・1.05SiO2}では、Tb含有量(x)が少ないTb付活ケイ酸イットリウム蛍光体(x=0.03)ではCe含有量(y)が0.03モル以下(y≦0.03)では発光輝度は上昇するが、Ce含有量(y)が0.05モル以上(y≧0.05)では発光輝度は低下する。一方、Tb含有量(x)が多いTb付活ケイ酸イットリウム蛍光体(x≧0.07)ではCe含有量(y)が増えるに従い発光輝度は低下していくが、Ce含有量(y)が0.03モル以下(y≦0.03)ではその発光輝度の低下は小さい。
【0024】
従って、これら図1及び図2の結果から、本発明の蛍光体は266nmの紫外線レーザーで励起したときの1/10残光時間が短い点においてと、波長253.7nmの紫外線による励起下において発光輝度が高い点において、Tb共付活希土類ケイ酸塩蛍光体{(TbxCeyLn1-x-y23・nSiO2}1モルに含まれるTb含有量(x)およびCe含有量(y)が、それぞれ0.03〜0.40モルの範囲(0.03≦x≦0.40)および0〜0.2モルの範囲(0<y≦0.2)にあることが好ましい。そして以上のように、Tb含有量(x)の設定に合わせ、Ce含有量(y)を特定することにより、更に好ましいバックライト用緑色発光蛍光体を造ることができる。
Tbの含有量(x)とCeの含有量(y)のより好ましい範囲を説明すると、Tbの含有量(x)としては、相対輝度のピークを示す0.15モルを挟み、かつより短残光になる方向を加味して0.1<x≦0.3である。
また、Ceの含有量(y)の好適な範囲は0<y≦0.2であり、十分な残光低減化の観点から、より好ましくは下限値としてyが0.01以上、そして最も好ましくは、yが0.03以上である。一方効果の点から、より好ましい上限値は0.1である。
そして、輝度と残光時間のバランスを考えると、x+yのより好ましい範囲は0.1<x+y≦0.3とするのがよい。
【0025】
図3はTbの含有量(x)及びCeの含有量(y)がそれぞれ0.2モル(x=0.2)、及び0.01モル(y=0.01)である、TbおよびCe共付活ケイ酸イットリウム蛍光体{(Tb0.2Cey0.010.7923・nSiO2}を例に、この蛍光体の母体組成中のSiO2のモル数(n)と発光輝度(相対値)との関係を例示したグラフである。
図3 からわかるように、このTb付活ケイ酸イットリウム蛍光体の発光輝度は、蛍光体母体組成中のSiO2のモル数に大きく依存する。驚くべきことに発光輝度はSiO2のモル数が1を超えたとたんに跳ね上がり、1.01モル(n=1.01)で最大値を示し、SiO2のモル数がそれより高くなっても低くなっても発光輝度は低下する。特にSiO2のモル数が1モル未満(n<1)では、その発光輝度は急激に悪くなる。一方SiO2のモル数が1モル以上(n≧1)ではその発光輝度はLAP蛍光体の80%以上と比較的高いことがわかる。
従って図3に示す結果から、本発明の蛍光体は253.7nmの紫外線による励起下において輝度が高い点で、Tb共付活ケイ酸イットリウム蛍光体{(TbxCeyLn1-x-y23・nSiO2}1モルに含まれるSiO2のモル数(n)が1<n≦1.15の範囲にあることが、粉体の輝度の点から好ましい。すなわちTb含有量(x)およびCe(y)含有量に加え、この蛍光体中に含まれるSiO2のモル数(n)を特定することにより、更に好ましいバックライト用緑色発光蛍光体を造ることができる。
なお、以上の説明においては、(TbxCey1-x-y23・nSiO2を用いて説明したが、Yの一部あるいは全てをLa又はGdに置換しても、同様の残光時間の短縮効果が得られる。
【0026】
次に、本発明の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)について説明する。本発明の蛍光体は、180〜380nmの広い範囲の紫外光により励起され、発光することができるため、LEDなどによって励起することも可能であるが、液晶TV用のバックライトとしては、現在冷陰極蛍光ランプが一般的であるため、これを例に説明するものであり、本発明の短残光であること、輝度が高いことなどの発光特性上の特徴から、LED励起の場合でも、同様に有用であることはいうまでもない。
【0027】
本発明の冷陰極蛍光ランプは、光に対して透明な管状の外囲器の内壁に蛍光膜を形成すると共に、該外囲器内に水銀と希ガスを封入してなり、該水銀の放電によって放射される波長180〜380nmの紫外線により前記蛍光膜を発光させるものであり、ガラス管の内壁に形成される蛍光膜が上記本発明の蛍光体を含有する以外は従来の冷陰極蛍光ランプと同様である。
すなわち、水、酢酸ブチルなどの溶媒中に本発明の蛍光体をポリエチレンオキサイド、ニトロセルロースなどのバインダーと共に分散させてなる蛍光体スラリーをガラスなどの光透過性の細管中に吸い上げて管の内壁に塗布して乾燥・ベーキング処理した後、所定の位置に一対の電極を取り付け、管の内部を排気した後、管内にアルゴン−ネオン(Ar−Ne)などの希ガスおよび水銀蒸気を封入してから管の両端を封ずることによって製造される。電極は従来の冷陰極蛍光ランプと同様、管の両端に取り付けられる。
【0028】
前記の本発明の緑色蛍光体を冷陰極蛍光ランプの蛍光膜として使用する場合、白色に占める青色の発光成分の比率が比較的高く色温度の高い冷陰極蛍光ランプや、白色に占める赤色の発光成分の比率が比較的高く色温度の低い冷陰極蛍光ランプではその効果が相対的に低くなる。すなわち色温度の高い冷陰極蛍光ランプでは残光時間の短い青色の発光成分の比率が比較的高く、緑色蛍光体の配合比率が低くなり、緑色蛍光体の残光時間の影響が低くなるためである。
逆に色温度の低い冷陰極蛍光ランプでは冷陰極蛍光管の赤色の発光成分の比率が高いために冷陰極蛍光管の残光時間は緑色蛍光体よりむしろ赤色蛍光体の残光時間に大きく影響されるためである。
従って、本発明の緑色蛍光体を用いる冷陰極蛍光ランプとしては、本発明の冷陰極蛍光ランプの中でも、例えば発光色のCIE表色系の発光色度(x,y)範囲が、x=0.23〜0.35、y=0.18〜0.35を有する冷陰極蛍光ランプに用いるのが、本発明の効果を十分活用できる点で特に好ましい。
【0029】
また、本発明の冷陰極蛍光ランプを本発明の液晶表示装置、特に擬似インパルス表示型LCDのバックライトとして使用する場合、従来から使用されている冷陰極蛍光ランプを用いた場合より残像感や輪郭のぼやけを低減した応答特性の速い液晶表示装置が得られる。またバックライトに用いる冷陰極蛍光ランプを点滅させるために生じる、LCDの画面輝度の低下も抑えることができる。
従って本発明の液晶表示装置に用いるバックライトの中でも、例えば発光色のCIE表色系の発光色度がx=0.23〜0.35、y=0.18〜0.35を有するバックライトを液晶表示装置に用いるとその効果を充分発揮することができる。
さらに本発明の緑色蛍光体を本発明の冷陰極蛍光ランプの蛍光膜に使用する場合、蛍光膜にこれと同時に使用する青色蛍光体として、1/10残光時間が1.0ms以下の青色蛍光体、および1/10残光時間が3.0ms以下の赤色蛍光体を用いると、より残像感や輪郭のぼやけを低減した応答特性の速い液晶表示装置を実現する冷陰極蛍光ランプが得られる。
【0030】
かかる1/10残光時間が1.0ms以下の青色蛍光体としては、Eu付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体あるいはEu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体との組み合わせがよい。当然これら蛍光体を混合して組み合わせてもよい。これらの蛍光体は1/10残光時間が1.0ms以下と短いのに加え、253.7nmの紫外線による励起下において輝度が高く、これら蛍光体を冷陰極蛍光ランプに用いた場合に高い光束が得られ、継続して点灯しても経時的に高輝度を維持することができるため本発明の緑色蛍光体を用いる効果が絶大となる。
【0031】
1/10残光時間が3.0ms以下の赤色蛍光体としては、Eu付活希土類酸化物蛍光体、Eu付活希土類バナジン酸塩蛍光体またはEu付活希土類燐・バナジン酸塩蛍光体との組み合わせがよい。当然これら蛍光体を混合して組み合わせてもよい。これらの蛍光体は1/10残光時間がY23:Eu蛍光体で3.0ms、Gd23:Eu蛍光体で1.6ms、YVO4:Eu蛍光体で1.8ms、Y(P,V)O4:Eu蛍光体で1.8msと短いのに加え、253.7nmの紫外線による励起下において輝度が高く、これら蛍光体を冷陰極蛍光ランプに用いた場合に高い光束が得られ、継続して点灯しても経時的に高輝度を維持することができるため本発明の緑色蛍光体を用いる効果が絶大となる。
【0032】
また、本発明の緑色蛍光体を本発明の冷陰極蛍光ランプの蛍光膜に使用する場合、蛍光膜に使用する緑色蛍光体として、セリウムテルビウム共付活燐酸ランタン蛍光体やテルビウム付活アルミン酸マグネシウムセリウム蛍光体と混合して用いてもよい。
上述のようにして製造された本発明の冷陰極蛍光ランプ等は高輝度で残光時間が短く、高輝度で残像感や輪郭のぼやけを低減した応答特性の速い液晶表示装置のバックライトとして使用でき、さらに本発明の冷陰極蛍光ランプ等を用いたバックライトを有する液晶表示装置は高輝度で残像感や輪郭のぼやけを低減した応答特性の速い液晶表示装置となる。
【0033】
本発明のカラー液晶表示装置は透過照明用のバックライトの光源として、前記の本発明の冷陰極蛍光ランプが用いられる以外は従来のカラー液晶表示装置と同様の構成を有し、
光シャッターとして機能する液晶からなる複数の液晶素子と、該複数の液晶素子のそれぞれに対応する少なくとも赤、緑、青の3色の色素を有するカラーフィルターと、透過照明用のバックライトとを組み合わせて構成されるカラー液晶表示装置であり、好ましくは1回の電圧を駆けている時間が5ms以下である間欠点灯をすることを特徴とする液晶表示装置である。
【実施例】
【0034】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
23 0.79 mol
Tb47 0.10 mol
CeO2 0.02 mol
SiO2 1.05 mol
BaCl2 0.02 mol
上記各化合物からなる蛍光体原料を十分に混合し、坩堝に充填し、蓋をして水蒸気を含んだ窒素水素雰囲気中において最高温度1550℃とし、昇降温時間を含めて12時間かけて焼成した。
次いで、焼成粉を分散、洗浄、乾燥、篩の処理を行い、フィッシャーサブシーズサイザーで測定したときの平均粒径が5.7(μm)であり、その組成式が(Y0.79Tb0.20Ce0.0123・1.05SiO2で表される、実施例1のTbおよびCe共付活ケイ酸イットリウム蛍光体を得た。なお、BaCl2は蛍光体の製造にしばしば用いられるフラックスである。
この実施例1の蛍光体を、266nmのレーザーにて励起して測定した時の1/10残光時間は4.4msであった。また、発光543nmに発光ピークを有しており、発光色のCIE表色系による発光色度(x,y)は、x=0.353、y=0.573であり、緑色蛍光体として実用的な発光色であった。
この実施例1の蛍光体に253.7nmの紫外線を照射してそのときの発光輝度を測定したところ、これと同一の条件で測定した下記比較例1のLa0.55Ce0.30Tb0.15PO4蛍光体(LAP蛍光体)の90%であった。
【0035】
次に、実施例1の蛍光体(緑色発光成分蛍光体)、Eu付活酸化イットリウム蛍光体(赤色発光成分蛍光体)及びEu付活アルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体(青色発光成分蛍光体)を所定混合比で混合してなる混合物100重量部を、1.1%ニトロセルロースを含む酢酸ブチル200重量部と0.7重量部の硼酸塩系結合剤とともに十分に混合して蛍光体スラリーを調製し、この蛍光体スラリーを管径が外径2.6mm、内径2.0mmで管長が300mmのガラスバルブ内面に塗布し乾燥させ、650℃で15分間ベーキング処理をして、内部に水銀5mgとNe−Arの混合ガスをおよそ10kPaの封入圧で封入して電極を取り付け、ランプ電流6mAの実施例1の冷陰極蛍光ランプを製造した。なお冷陰極蛍光ランプはその発光色度がx=0.270、y=0.240になるように、実施例1の蛍光体とEu付活酸化イットリウム蛍光体とEu付活アルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体蛍光体との混合比を調整した。
【0036】
この実施例1の冷陰極蛍光ランプの光束は、緑色発光成分蛍光体として実施例1の蛍光体に代えて下記比較例1のLAP蛍光体を使用した以外はこれと同様にして製造された冷陰極蛍光ランプの光束の95%であった。さらに、前記の実施例1の冷極蛍光ランプの1/10残光時間は2.4msであった。
これに対して下記比較例1の冷陰極蛍光ランプの1/10残光時間は3.5msであり、実施例1の冷陰極蛍光ランプでは下記の比較例1の冷陰極蛍光ランプ(従来の冷陰極蛍光ランプ)に比べて応答特性が著しく改善されていた。
この実施例1の冷陰極蛍光ランプをバックライトの光源として用いて赤、緑、青のカラーフィルターを有する液晶表示装置を製造し、液晶画面においてバックライトの間欠点灯を行ったところ、1/10残光時間は2.7msと応答特性が著しく改善されていた。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1の蛍光体に代えて、1/10残光時間が7.4msで、蛍光ランプ用蛍光体の緑色成分蛍光体として代表的なLAP蛍光体{組成式が(La0.55Ce0.3T b0.15)PO4であるLAP蛍光体}を用いた以外は実施例1の冷陰極蛍光ランプと同様にして発光色度がx=0.270、y=0.240である、比較例1の冷陰極蛍光ランプを製造して、本発明の冷陰極蛍光ランプとの発光特性の比較に供した。
なお比較例1の冷陰極蛍光ランプの1/10残光時間は3.5msであり、この比較例1の冷陰極蛍光ランプをバックライトの光源として用いて赤、緑、青のカラーフィルターを有する液晶表示装置を製造し、液晶画面においてバックライトの間欠点灯を行ったところ、1/10残光時間は3.8msであった。
【0038】
〔比較例2〕
23 0.97 mol
Tb47 0.015 mol
SiO2 1.05 mol
BaCl2 0.02 mol
蛍光体原料として上記原料を用いる以外は実施例1と同様にして、フィッシャーサブシーズサイザーで測定したときの平均粒径が7.2(μm)であり、その組成式が(Y0.97Tb0.0323・1.05SiO2で表される比較例2のTb付活ケイ酸イットリウム蛍光体を得た。
この比較例2の蛍光体の1/10残光時間は6.2msで、543nmに発光ピークを有しており、発光色のCIE表色系による発光色度はx=0.353、y=0.572であり、緑色蛍光体として実用的な発光色であった。
この比較例2の蛍光体に253.7nmの紫外線を照射してそのときの発光輝度を測定したところ、これと同一の条件で測定した比較例1のLa0.55Ce0.30Tb0.15PO4蛍光体(LAP蛍光体)の70%であった。
次に、実施例1の蛍光体に代えて、比較例2の蛍光体を用いた以外は実施例1の冷陰極蛍光ランプと同様にして製造した、発光色のCIE表色系の発光色度がx=0.270、y=0.240である比較例2の冷陰極蛍光ランプの1/10残光時間は2.9msであった。比較例1の冷陰極蛍光ランプ(従来の冷陰極蛍光ランプ)に比べれば応答特性は改善されていた。
【0039】
(実施例2〜31、比較例3〜6)
蛍光体原料として、表1に示す組成比になるように調合比率を変えた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜31の蛍光体、及び比較例3〜6の蛍光体を製造し、得られた各蛍光体の発光輝度、1/10残光時間、及びランプの1/10残光時間を測定した。その結果を実施例1の蛍光体、及び比較例1、2の蛍光体、及びランプの特性とともに表1に示す。
また、残光時間が短くなるということは、発光の立ち上がり時間も短くなるということであり、このため連続光で励起された場合の輝度が劣っていても、残光時間が短い時には、ランプあるいはバックライトとしては逆に明るくなることも十分考えられる。そこで残光時間と、連続光による発光強度から、各蛍光体について理論計算を行った結果(シミュレーション結果)も表1中に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
このシミュレーションデータからは、実施例1の蛍光体は連続光により励起されている時には、LAP蛍光体の90%の輝度しか示さないが、残光時間が短い、すなわち発光の立ち上がりも早いため、出願時一般的なフレームレートである60Hzを用い、Duty比0.25(点灯時間約4ms)の場合、驚くべきことにLAP蛍光体より20%も明るくなることを示している。
さらに、将来技術を想定しフレームレートを現在使用されている最も高い240Hzとし、Duty比0.2(点灯時間約0.8ms)を仮定した場合には、LAP蛍光体よりも40%も明るくすることができることがわかる。
また、例えば実施例21の蛍光体のように、連続光による発光強度がLAPの半分以下であっても、残光時間が3.0msと、LAP蛍光体の半分以下になるため、結果としてフレームレートを240Hzとし、Duty比0.2とするならば、LAP蛍光体よりも明るい冷陰極蛍光ランプが得られることを示している。
【0042】
このような観点から、本発明におけるバックライト用蛍光体が、その効果を十分に得るために、1回の電圧を駆けている時間が5ms以下になるバックライトユニットに使用されることが特に好ましいことがわかる。励起光に水銀を用いる冷陰極管でも、VUVを用いる希ガスランプでも、あるいは近紫外のLEDでも同様である。
なお、各実施例においては、現在一般的な冷陰極蛍光ランプを用いて説明したが、短残光という特性は、励起が水銀線でもVUVでも、あるいはLED励起源であっても、全く同様の効果を示すので、同様に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともテルビウム(Tb)、珪素(Si)、及び酸素(O)からなり、波長266nmの紫外線で励起したときの1/10残光時間が5ms以下であることを特徴とするバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
【請求項2】
前記蛍光体が、組成式(TbxCeyLn1-x-y23・nSiO2で表され、波長180〜380nmの紫外線を照射したとき発光することを特徴とする請求項1に記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。(ただし、前記組成式中、LnはY、La、及びGdの中の少なくとも1種の希土類元素を表わし、x、y及びnはそれぞれ、0.03≦x≦0.40、0<y≦0.2、0.9≦n≦1.4の条件を満たす数である)
【請求項3】
前記組成式において、xが、0.1<x≦0.3の条件を満たす数であることを特徴とする請求項2に記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
【請求項4】
前記組成式において、nが、1<n≦1.15の条件を満たす数であることを特徴とする請求項2又は3に記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
【請求項5】
前記組成式において、yが、0.01≦y≦0.1の条件を満たす数であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
【請求項6】
前記組成式において、x+yが、0.1<x+y≦0.3の条件を満たす数であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
【請求項7】
前記バックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体が、1回の電圧を駆けている時間が5ms以下になるバックライトユニット用である、請求項2〜6記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体。
【請求項8】
光に対して透明な管状の外囲器の内壁に蛍光膜を形成すると共に、該外囲器内に水銀と希ガスを封入してなり、該水銀の放電によって放射される波長180〜380nmの紫外線により前記蛍光膜を発光させる冷陰極蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜中に請求項1〜7のいずれか一項に記載のバックライト用Tb付活希土類ケイ酸塩蛍光体を含むことを特徴とする冷陰極蛍光ランプ。
【請求項9】
前記蛍光膜中に、発光強度の1/10残光時間が1.0ms以下である青色蛍光体、及び発光強度の1/10残光時間が3.0ms以下である赤色蛍光体を含むことを特徴とする請求項8に記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項10】
前記青色蛍光体が、Eu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体、又はEu共付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体であり、前記赤色蛍光体が、Eu付活希土類酸化物蛍光体またはEu付活希土類バナジン酸塩蛍光体、又はEu付活希土類バナジン酸塩蛍光体であることを特徴とする請求項9に記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項11】
前記冷陰極蛍光ランプの光束の1/10残光時間が3ms以下であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項12】
前記冷陰極蛍光ランプの発光色のCIE表色系による発光色度x値、及びy値がそれぞれ0.23≦x≦0.35、及び0.18≦y≦0.35であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項13】
光シャッターとして機能する液晶からなる複数の液晶素子と該複数の液晶素子のそれぞれに対応する少なくとも赤、緑、青の3色の色素を有するカラーフィルターと、透過照明用のバックライトとを組み合わせて構成されるカラー液晶表示装置において、前記バックライトを構成する冷陰極蛍光ランプが請求項8〜12のいずれか1項に記載の冷陰極蛍光ランプであることを特徴とするカラー液晶表示装置。
【請求項14】
前記冷陰極蛍光ランプが1回の電圧を駆けている時間が5ms以下である間欠点灯をすることを特徴とする請求項13に記載のカラー液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−222389(P2010−222389A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68041(P2009−68041)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】