説明

バッテリパック

【課題】バッテリの劣化の程度を容易に認識することができ、適切な時期に新しいものと交換することを可能とするバッテリパックを提供する。
【解決手段】直列及び/又は並列に接続された複数のバッテリセル2、2を密閉ケース1に内蔵させたバッテリパックにおいて、前記密閉ケース内部1に通じる空気溜まり部1aを形成し、前記空気溜まり部1aを囲む隔壁の少なくとも一部を空気溜まり部が見えるように透明部材1bで形成すると共に前記透明部材1bに目盛りを形成し、前記密閉ケース1とバッテリセル2、2の間の空気溜まり部1a除く部分にゲル状充填剤3を充填した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は携帯機器に用いられるバッテリパックに係わり、特に、その充填剤の充填構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバッテリパックの例を図4により説明する。図4に示すバッテリセル2、2は並列または直列に接続されており、充填剤5を介在させて密閉ケース4内に収容される。密閉ケース4は樹脂製であり、接着または熱融着により密閉状態とされるが、そのとき、並列または直列に接続された充放電用の端子を密閉ケース4の外面に露出させる。充填剤5としては、通常RTVゴム(Room Temperature Vulcanizing) が使用されている。
【0003】
ところで、バッテリは充放電を繰り返すと、ガスが発生してセルが劣化する。ガスの発生によるバッテリセル2、2の膨脹には充填剤5として硬度の柔らかいRTVゴムを使用し、さらに密閉ケース4の接着強度を強くすることで対応していたが、以下に述べるような問題があった。
【0004】
図5にバッテリセル2、2が矢印で示すように膨脹した状態を示す。充填剤5は硬度が柔らかいため、小さい外力で容易に曲げや伸びを生じさせることができるが、体積弾性率(体積ひずみに対する圧力増大率)は液体と同様に大きい。図5に示すように、バッテリセル2、2が膨脹し、そのとき密閉ケース4が変形しなければ、バッテリセル2、2の体積が僅かに増大しても密閉ケース4内の圧力は非常に大きくなる。そのため接着部分が剥がれることがあった。
【0005】
また、接着部分が剥がれるような不良の発生時期を予測することができなかった。さらに、接着部分が剥がれる前に生じたセルの劣化を認識することができず、バッテリパックの交換が適切な時期に行われないという問題があった。
【0006】
特開2004−273221号公報に開示された開示された積層型電池パックは積み重ねられた二次電池の共通の側面に配置されたリード板5に、引っ張り力が加えられると剥離する易剥離部9が設けられている。
【0007】
そして、二次電池が所定以上に膨脹すると、リード板5に大きい引っ張り力が加わり易剥離部9が破断して積層型電池パックが使用不能となる。このようにしてガス発生による熱暴走が防止できる。
【0008】
上記特開2004−273221号公報に開示された積層型電池パックはガス発生による熱暴走を防止できるが、易剥離部9が破断する時期を予測することができなかった。さらに、易剥離部9が破断した場合にその状況を直ちに認識することができず、戸惑うことがあった。また、易剥離部9が破断する前に生じたセルの劣化を認識することができず、電池パックの交換を適切な時期に行えないという問題があった。
【特許文献1】特開2004−273221号公報、段落0019〜段落0023、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、バッテリの劣化の程度を容易に認識することができ、適切な時期に新しいものと交換することを可能とするバッテリパックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のバッテリパックは、1つまたは複数のバッテリセルと、前記バッテリセルを収納する収納部を有し、前記収納部に前記バッテリセルを収納して密閉する密閉ケースと、前記収容部内に充填されたゲル状充填剤と、前記収容部に連通した空気溜まり部と、前記空気溜まり部の隔壁の少なくとも1部を形成する透明部材と、を備えるものである。
【0011】
また、前記バッテリパックにおいて、前記透明部材に目盛りを形成したものである。
【0012】
また、前記各バッテリパックにおいて、バッテリセルと充填剤が収納された初期状態において、前記空気溜まり部内を1気圧より低い圧力に減圧したものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明のバッテリパックによれば、バッテリセルの劣化の程度を容易に認識することができ、適切な時期に新しいものと交換することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施例であるバッテリパックの密閉ケースを示す断面図である。
【図2】同密閉ケースにバッテリセルと充填剤が収納された初期状態を示す断面図である。
【図3】同バッテリパックのバッテリセルが劣化した状態を示す断面図である。
【図4】従来のバッテリパックの例を示す断面図である。
【図5】同バッテリパックのバッテリセルが劣化した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下この発明を実施するための形態を実施例に即して説明する。
【0016】
図1はこの発明の実施例であるバッテリパックの密閉ケースを示す断面図、図2は同密閉ケースにバッテリセルと充填剤が収納された初期状態を示す断面図、図3は同バッテリパックのバッテリセルが劣化した状態を示す断面図である。
【0017】
図1に示す密閉ケース1はバッテリセル収納部1cとこれに連通する空気溜まり部1aとが密閉状態に形成される。バッテリセル収納部1cには図2および図3に示すバッテリセル2、2とゲル状充填剤3とが収納されるが、バッテリセル2、2をバッテリセル収納部1c内で位置決めするためのリブは図示していない。空気溜まり部1aの隔壁の一部が透明部材1bで形成されている。
【0018】
図2に示すように、バッテリセル収納部1cに収納されるバッテリセル2、2は並列または直列に接続されており、ゲル状充填剤3を介在させて密閉ケース1内に収容される。密閉ケース1は樹脂製であり、接着または熱融着により密閉状態とされるが、そのとき、並列または直列に接続された充放電用の端子を密閉ケース1の外面に露出させる。
【0019】
図2はバッテリセル2、2が充放電が繰り返される前の初期の状態を示しており、図2に示すように空気溜まり部1aの中にはゲル状充填剤3が殆ど入り込んでいない。この初期状態では空気溜まり部1a部内は1気圧より低い圧力に減圧されている。
【0020】
バッテリセル2、2の充放電が繰り返されると、バッテリセル2、2は図3に示すように、膨脹して、バッテリセル2、2周囲のゲル状充填剤3は図2の矢印方向に押されて空気溜まり部1a内に押し込まれる。
【0021】
空気溜まり部1aの容積は、未使用のバッテリセルの体積と充放電テストを行い劣化したバッテリセルの体積とを比較する実験を行って決定してもよく、また、バッテリセルのメーカよりの体積変化のデータがあればそれにより決定してもよい。
【0022】
透明部材1bには、バッテリセル2、2の交換時期を示す目盛りが設けられている。バッテリパックを充電するときに携帯機器から取り出すものは、充電するときに空気溜まり部1aを見てバッテリパックの交換時期を判断できる。また、携帯電話機のように、バッテリパックを取り出すことなく充電するものは、携帯機器のケースにバッテリパックの空気溜まり部1aが見える透明部材を設けるとよい。
【0023】
また、密閉ケース1内にバッテリセル2、2とゲル状充填剤3を封止するときに、空気溜まり部1a内の空気を減圧状態としてもよい。このような構成によると、バッテリセル2、2が膨脹したときの密閉ケース1内の圧力上昇が押さえられて、密閉ケース1が破損する恐れがなくなる。
【0024】
密閉ケース1の内面にバッテリセル2、2の位置を決めるリブが設けられていることにより、長時間バッテリパックを同一姿勢に放置してもゲル状充填剤が流れてバッテリセル2、2の位置が変わることが防止される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明のバッテリパックはバッテリの劣化の程度を容易に認識することができ、適切な時期に新しいものと交換することが可能であり、携帯機器に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 密閉ケース、1a 空気溜まり部、1b 透明部材、1c バッテリセル収納部
2 バッテリセル
3 ゲル状充填剤
4 密閉ケース
5 充填剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のバッテリセルと、
前記バッテリセルを収納する収納部を有し、前記収納部に前記バッテリセルを収納して密閉する密閉ケースと、
前記収容部内に充填されたゲル状充填剤と、
前記収容部に連通した空気溜まり部と、
前記空気溜まり部の隔壁の少なくとも1部を形成する透明部材と、
を備えるバッテリパック。
【請求項2】
前記透明部材に目盛りを形成した請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
バッテリセルと充填剤が収納された初期状態において、前記空気溜まり部内を1気圧より低い圧力に減圧した請求項1または2のいずれかに記載のバッテリパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−40314(P2011−40314A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187948(P2009−187948)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】