説明

バッテリ残容量表示装置およびバッテリ残容量表示方法

【課題】バッテリ残容量が、バッテリの劣化を促進する満充電状態や深放電状態にある状態でバッテリが使用されることを抑制する。
【解決手段】バッテリBATへの充電状況を表す車両情報に基づき、バッテリ残容量が第1バッテリ残容量B1以上および第2バッテリ残容量B2以下の状態でバッテリBATへの充電操作が行われた頻度を表す第1頻度F1および第2頻度F2を獲得する(ステップS1、S2)。第1頻度F1と第2頻度F2とに応じて最上位セグメントに対応するバッテリ残容量の下限値または最下位セグメントに対応するバッテリ残容量の上限値を補正し、最上位セグメントまたは最下位セグメントが点灯/消灯するタイミングをずらす(ステップS3〜S7)。これによりドライバがバッテリBATへの充電操作を行うタイミングをずらし、満充電状態や深放電状態にある状態でバッテリBATが使用されることを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリで駆動する電動モータを駆動源とする、例えば電気自動車などに搭載されたバッテリのバッテリ残容量を表示するバッテリ残容量表示装置およびバッテリ残容量表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリに蓄電された電力を用いて駆動する電動モータを駆動源とする、例えば電気自動車などにおいて、バッテリ残容量の表示計として複数のセグメントを用いてデジタル式にバーグラフとして表示する表示計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この従来のデジタル式容量表示計は、例えば5個のセグメントが設けられ、満充電の状態を100%とし、各セグメントがバッテリ残容量の20%を表している。すなわち、満充電の際には5個のセグメント全てが点灯する。満充電の状態から車両が走行してバッテリのエネルギのうち20%が消費され、エネルギ容量の残容量が80%となったときには1個のセグメントが消灯して4個のセグメントのみが点灯する。このように、バッテリ残容量状態を段階的にバーグラフとして表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−261123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のデジタル式容量表示計においては、1セグメントあたりの容量を均等に割り振っている。そのため、1セグメントが消灯するごとに充電を行う傾向のあるドライバや、残り1セグメントの点灯状態になった段階で初めて充電を行う傾向のあるドライバなどの充電タイミングでは、バッテリの残容量が満充電状態または深放電状態に近い状態でバッテリが使用される度合が多くなる。
このように、バッテリの残容量が満充電状態または深放電状態に近い状態でバッテリが使用されるという状態は、一般的にバッテリが劣化しやすい状態であるとされているため、バッテリの劣化を促進させることになる。
【0005】
つまり、ドライバによるバッテリへの充電操作のタイミングによってはバッテリの劣化を促進させてしまい、すなわち航続距離を減少させてしまうことになる。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題点に着目してなされたものであり、バッテリが劣化しやすい満充電状態と深放電状態にある状態でバッテリが使用されることを抑制するのに好適なバッテリ残容量表示装置およびバッテリ残容量表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、現在のバッテリ残容量に応じてバッテリ残容量表示状態を段階的に変更することにより、現在のバッテリ残容量に応じたバッテリ残容量表示状態を表示部に表示する。このとき、バッテリ残容量表示状態を、ドライバがバッテリへの充電を行うときの充電操作特性に基づいて補正する。ドライバは、表示されたバッテリ残容量表示状態を参考にして充電の必要性を判断し充電操作を行う。そのため、例えばバッテリ残容量表示状態を実際のバッテリ残容量よりも高めに表示すればドライバはこれまでよりも実際のバッテリ残容量がより少なくなった時点でバッテリへの充電を行う傾向となり、すなわち、ドライバがバッテリへの充電を行うタイミングを調整することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドライバの充電操作特性に応じてバッテリ残容量表示状態を補正することができるため、ドライバがバッテリへの充電を行うタイミングを調整することができる。このため、ドライバの充電操作特性に応じてバッテリ残容量表示状態を補正することにより、ドライバの充電操作特性により、バッテリ残容量が特定のバッテリ残容量である状態でバッテリが使用される傾向となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のバッテリ残容量表示装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】バッテリ残容量の表示の一例である。
【図3】バッテリへの充電操作特性の一例を示す特性図である。
【図4】バッテリへの充電操作特性の一例を示す特性図である。
【図5】補正処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
(構成)
図1は、本発明のバッテリ残容量表示装置100の概略構成を示すブロック図の一例である。
図1に示すように、バッテリ残容量表示装置100は、制御部1と、車両情報取得装置2と、記憶装置3と、残容量表示補正装置4と、残容量表示装置5と、を含んで構成される。
制御部1は、マイクロコンピュータおよびその周辺機器から構成される。
車両情報取得装置2は、電気自動車Crに取り付けられたセンサ(図示せず)や、当該センサの出力信号を処理して制御部1に出力する信号処理部(図示せず)などを含んで構成される。前記センサとして、電気自動車Crに搭載されたバッテリBATの残容量を検出するセンサ、ドライバを識別するためのドライバIDを獲得する入力装置などを含む。
【0010】
車両情報取得装置2は、車両情報として前記バッテリBATへの充電開始日時および充電開始時のバッテリ残容量と、充電終了日時および充電終了日時のバッテリ残容量とを少なくとも取得する。そして、車両情報取得装置2は、前記バッテリBATに割当られたバッテリIDと電気自動車Crのドライバに割り当てられたドライバIDとを対応付けて前記車両情報を記憶装置3に格納する。
なお、ここでいう電気自動車Crとは、バッテリで駆動する電動モータを駆動源とする車両であればよく、例えばバッテリで駆動する電動モータのみを駆動源とする車両、或いは、エンジンと電動モータとを駆動源とするハイブリッド車両(所謂プラグインハイブリッド車両等)を含む。
【0011】
記憶装置3は、車両情報取得装置2が取得した車両情報を保持する。
残容量表示補正装置4は、マイクロコンピュータおよびその周辺機器から構成される。なお、この残容量表示補正装置4の機能を制御部1に盛り込んで構成してもよい。
残容量表示補正装置4は、記憶装置3に格納された車両情報に基づいて、電気自動車Crのドライバがどのようなタイミングで充電操作を行っているのかを判断する。そして、残容量表示装置5は、ドライバの充電操作がバッテリBATの劣化を促進させ易いバッテリ残容量で行われているかを判断し、そうである場合には劣化の促進を抑制するように残容量表示装置5に表示されるバッテリ残容量を補正する。
【0012】
そして、制御部1は、車両情報取得装置2からバッテリ残容量を受信し、受信したバッテリ残容量を残容量表示装置5に表示する。制御部1は、このバッテリ残容量の表示を、例えば図2に示すように、現在のバッテリ残容量を、5つのセグメントを有するバーグラフで表すことによりデジタル式残量表示を行う。また、制御部1は、残容量表示補正装置4によりバッテリ残容量の表示方法が補正されたときには、補正された表示方法にしたがってバッテリ残容量を表示する。
【0013】
(デジタル式残量表示の補正の原理)
次に、バッテリ残容量をデジタル式残量表示で表示する際の原理を説明する。
バッテリ残容量を、図2に示すように5つのセグメントを有するバーグラフで表すことによりデジタル式残量表示を行う場合、バッテリ残容量が満充電状態または深放電状態にある状況でバッテリBATが使用される頻度が高いということは、一般的にドライバは次のようなタイミングでバッテリBATへの充電操作を行っているとみなすことができる。
【0014】
つまり、デジタル式残量表示を行う場合、満充電状態では5つのセグメント全てを点灯させ、バッテリBATのバッテリ残容量が満充電状態から1段階(20%)減ったときには点灯中の5つのセグメントのうち1つを消灯させ4つのセグメントのみを点灯させる、というように、点灯させるセグメントの数を変化させることで、現在のバッテリ残容量を段階的に表している。
ここで、満充電状態にある状態でバッテリBATが使用される頻度が高いということは、ドライバがバッテリBATへの充電操作を以下のタイミングで行っていると推測することができる。
【0015】
すなわち、残容量表示装置5に表示されたバーグラフにおいて、5つのセグメント全てが点灯している状態から1つが消灯し4つのセグメントのみが点灯する状態となったタイミングでバッテリBATへの充電を行う。これにより満充電状態に復帰し5つのセグメントが点灯する状態となる。以後、この動作を繰り返し、4つのセグメントのみが点灯する状態となる都度、このタイミングでバッテリBATへの充電を行っていると推測することができる。
【0016】
一方、深放電状態にある状態でバッテリBATが使用される頻度が高いということは、ドライバがバッテリBATへの充電操作を以下のタイミングで行っていると推測することができる。
すなわち、残容量表示装置5に表示されたバーグラフにおいて、5つのセグメントのうち3つのセグメントが消灯し2つのセグメントのみが点灯している状態から、さらにセグメント1つが消灯し、点灯しているセグメントが1つのみとなったときに充電を行う必要があると判断する。そして、その次に充電設備がある場所に立ち寄った際に、ようやくバッテリBATへの充電を行う。これにより満充電状態に復帰し5つのセグメントが点灯する状態となり、以後、この動作を繰り返し、1つのセグメントのみが点灯する状態となる都度、このタイミングでバッテリBATへの充電を行っていると推測することができる。
【0017】
このようなタイミングでのバッテリBATへの充電操作は、デジタル式残量表示を行うためのバーグラフにおいて、ドライバが各セグメントの点灯/消灯の状態からバッテリ残容量を予測して、バッテリBATへの充電操作のタイミングを計っているために生じるものと予測される。
そこで、ドライバによるバッテリBATへの充電操作が、バッテリ残容量が満充電状態に近い領域及び深放電状態に近い領域のいずれよりも離れた領域にある状態で行われる頻度が高くなるように、残容量表示装置5での各セグメントの点灯/消灯するタイミングを変更する。つまり、バッテリ残容量が、満充電状態と深放電状態とから離れた領域にある状態で、セグメントの点灯/消灯が行われるように、残容量表示装置5での各セグメントの点灯/消灯するタイミングを変更する。
【0018】
前述のようにドライバは、残容量表示装置5での各セグメントの点灯/消灯するタイミングを参考にして、バッテリBATへの充電操作を行うか否かを判断する。そのため、残容量表示装置5での各セグメントの点灯/消灯するタイミングを変更することにより、ドライバによるバッテリBATへの充電操作のタイミングを、ドライバがそれを意識しなくてもずらすことができる。すなわち、バッテリ残容量が満充電状態よりもより少ない状態、または深放電状態よりもバッテリ残容量がより多い状態であるときにドライバによるバッテリBATへの充電操作が行われるように誘導することができる。
【0019】
そこで、セグメントの点灯/消灯のタイミングを、満充電状態よりもバッテリ残容量がより少ない状態であるときにドライバによる充電操作が行われるように設定する。
例えば、バッテリ残容量が100%〜80%のときを満充電状態と考えたとき、セグメントの点灯/消灯のタイミングを、バッテリ残容量が80%を下回ったときとした場合、バッテリ残容量は、100%から80%を若干下回った範囲で増減することになる。つまり、バッテリ残容量が満充電状態及びそれに近い状態にある頻度が高くなってしまう。
【0020】
これに対し、バッテリ残容量が70%程度のときにドライバによる充電操作が行われるように、セグメントの点灯/消灯のタイミングを設定した場合には、バッテリ残容量は100%〜70%の間で増減することになる。すなわち、バッテリ使用時においてバッテリ残容量が増減する範囲が、満充電状態に近い領域を超えた範囲にまで広くなる。
このようにバッテリ残容量が増減する範囲が広くなることによって、同一条件で同じ時間バッテリBATを使用したとしても、バッテリ残容量が増減する範囲が狭い場合に比較してバッテリ残容量が増減する範囲が広い場合の方が、バッテリBATへの充電回数は減少する。このため、結果的に、バッテリBATが満充電状態にある状況でバッテリBATが使用される回数を削減することができる。
【0021】
同様に、セグメントの点灯/消灯のタイミングを、深放電状態よりもバッテリ残容量がより多い状態であるときに、ドライバによる充電操作が行われるように設定する。例えば、バッテリ残容量が20%〜0%のときを深放電状態と考えた場合、セグメントの点灯/消灯のタイミングを、バッテリ残容量が20%を下回ったときとしたときには、バッテリ残容量は、100%から20%を若干下回った範囲の間で増減することになり、深放電状態及びそれに近い状態にある頻度が比較的高くなってしまう。
【0022】
これに対し、セグメントの点灯/消灯のタイミングを、バッテリ残容量が30%程度のときにドライバによる充電操作が行われるように設定した場合には、バッテリ残容量は100%〜30%の間で増減することになり、バッテリ残容量が深放電状態(20%〜0%)に至ることを抑制することができる。このため、結果的に、深放電状態にある状況でバッテリBATが使用される回数を削減することができる。
したがって、セグメントの点灯/消灯のタイミングを、ドライバによるバッテリBATへの充電操作のタイミングに応じてずらすことによって、バッテリ残容量が、バッテリBATの劣化を促進させる満充電状態と深放電状態とにある状態で、バッテリBATが使用されることを抑制することができる。
【0023】
(デジタル式残量表示の補正方法)
次に、バッテリ残容量をデジタル式残量表示で表示した場合のセグメントの点灯/消灯のタイミングを補正する際の補正方法を、図2、図3および図4を伴って説明する。
本デジタル式残量表示では、図2に示すようにバーグラフを構成する5つのセグメントを有している。そして、補正前のデジタル式残量表示では図2の「補正前の表示例」に示すように、各セグメントがバッテリ残容量の20%に対応し、バッテリ残容量が100%以下80%以上のときにはセグメント5つが点灯する。また、80%未満60%以上のときにはセグメント4つのみが点灯し、60%未満40%以上のときにはセグメント3つのみが点灯し、40%未満20%以上のときにはセグメント2つのみが点灯し、20%未満0%以上のときにはセグメント1つのみが点灯する。
バッテリ残容量が100%以下80%以上である領域(満充電状態)および20%未満0%以上である領域(深放電状態)を、バッテリBATの劣化を促進しやすいバッテリ残容量としている。
【0024】
前述したように、5つのセグメント全てが点灯した状態からセグメント1つが消灯した段階で直ちに充電を行う傾向にあるドライバの場合、各セグメントにバッテリ残容量の20%が割り当てられているときには、バッテリ残容量が80%未満となって点灯中の5つのセグメントのうち1つが消灯した段階でバッテリBATへの充電を開始することになる。このため、バッテリ残容量は、100%から80%近傍の間で増減することになり、すなわち、ほとんどがバッテリBATの劣化を促進させる満充電状態にあることになり、バッテリBATは、バッテリ残容量がバッテリBATの劣化を促進させる満充電状態にある状態で使用されることになる。
【0025】
そこで、これを回避するために、まずドライバの過去の車両情報、すなわち、充電開始時のバッテリ残容量などに基づいて、ドライバのバッテリBATへの充電操作特性を検出する。この充電操作特性は、例えば図3に示す、バッテリBATへの充電開始時のバッテリ残容量を横軸とし、縦軸を頻度とするヒストグラムから特定する。バッテリBATへの充電操作特性が、図3の実線で示す特性線L1で示す特性の場合、バッテリ残容量が75%程度であるときに充電が開始される頻度が最も高い。つまり、バッテリ残容量が80%を下回って比較的すぐの段階、すなわち、全セグメントが点灯している状態からセグメント1つが消灯した段階でバッテリBATへの充電操作が行われる頻度が高いことがわかる。
【0026】
そこで、図3において、バッテリ残容量が80%以上である期間が、バッテリBATを使用する期間全体の予め設定した所定割合(例えば50%)となるようにバッテリ残容量の表示方法を補正する。
具体的には、実際のバッテリ残容量が例えば60%を下回るまでの間は5つのセグメント全てが点灯状態を維持するように、バッテリ残容量の表示方法を補正する。なお、前記所定割合は50%に限らず任意に設定することができる。
ここで、前述のように、ドライバは点灯中の5つのセグメントのうち1つが消灯した時点で充電を行う傾向がある。
【0027】
したがって、実際のバッテリ残容量が60%未満となる時点で点灯中の5つのセグメントのうち1つを消灯させる構成とした場合、バッテリ残容量が60%を下回ったときにバッテリBATへの充電を行うことになる。そのため、この場合のバッテリBATへの充電操作特性は、図3に破線で示す特性線L2で示すようにバッテリ残容量が60%を下回って比較的すぐの段階で充電操作が行われる頻度が高くなる。その結果、バッテリ残容量が60%を下回った時点でバッテリBATへの充電が行われるため、バッテリ残容量は100%〜略60%程度の範囲で増減することになる。
【0028】
つまり、補正前は、バッテリ使用時においてバッテリ残容量が増減する範囲は略領域Aであったが、補正後は、バッテリ使用時におけるバッテリ残容量が増減する範囲は略領域Bとなり、すなわち領域Cだけバッテリ残容量が増減する範囲が広くなる。
これにより、補正後は、バッテリ残容量が領域Bにある状態でバッテリBATが使用されることになる。つまり、領域Bのうち、バッテリ残容量が80%以上である割合は50%程度であるため、バッテリ残容量が80%以上の状態でバッテリBATが使用される割合は、バッテリBATを使用する期間全体の50%程度となる。
【0029】
同様に、5つのセグメントのうち1つのセグメントのみが点灯する状態となった段階でやっとバッテリBATへの充電を行う傾向にあるドライバの場合、各セグメントにバッテリ残容量の20%が割り当てられているときには、バッテリ残容量が20%未満となって1つのセグメントのみが点灯する状態となった段階でバッテリBATへの充電を開始することになる。このため、バッテリ残容量が20%を下回った時点からバッテリBATへの充電が開始されるまでの間、バッテリ残容量は20%を下回った深放電状態を維持する。すなわち、バッテリBATは、バッテリ残容量がバッテリBATの劣化を促進させる深放電状態にある状態で使用されることになる。
【0030】
ここで、ドライバの過去の車両情報、すなわち、充電開始時のバッテリ残容量などに基づいて、ドライバのバッテリBATへの充電操作特性を検出する。この場合、5つのセグメントのうち1つのセグメントのみが点灯する状態となった段階でやっとバッテリBATへの充電を行う傾向にあるドライバの充電操作特性は、例えば図4のヒストグラムに示す実線で表される特性線L3で示す特性となる。すなわち、バッテリ残容量が15%程度であるときに、バッテリBATへの充電が開始される頻度が最も高い。つまり、バッテリ残容量が20%を下回った後、つまり、1つのセグメントのみが点灯する状態となった後、比較的速やかにバッテリBATへの充電操作が行われる頻度が高いことがわかる。
【0031】
そこで、図4において、過去の車両情報に基づきバッテリ残容量が20%を下回った状態でバッテリBATへの充電が行われるときのバッテリ残容量の平均値を求め、1つのセグメントのみを点灯する状態に切り替えるときのセグメントを点灯/消灯するタイミングを決定するバッテリ残容量の境界値を平均値分だけ大きくし、セグメントを点灯/消灯するタイミングを早める。
【0032】
例えばバッテリBATへの充電が行われるときのバッテリ残容量の平均値が10%であるとすると、1つのセグメントのみを点灯する状態に切り替えるときのバッテリ残容量を20%から30%(=20%+10%)に切り替える。
ここで、前述のように、ドライバは、1つのセグメントのみが点灯する状態となった時点でバッテリBATへの充電を行う傾向がある。
【0033】
したがって、バッテリ残容量が30%未満となる時点で1つのセグメントのみを点灯させる構成とした場合、バッテリ残容量が30%を下回ったときにバッテリBATへの充電が行われることになる。そのため、この場合の充電操作特性は、図4に破線で示す特性線L4で示すようにバッテリ残容量が30%を下回って比較的すぐの段階で充電操作が行われる頻度が高くなる。その結果、バッテリ残容量は100%〜略30%の間で増減することになる。
つまり、補正前はバッテリ残容量が20%を下回り1つのセグメントのみが点灯する状態となった後、バッテリBATへの充電が開始されるまでの間(バッテリ残容量が領域Dであるとき)にもバッテリBATを使用している。
【0034】
同様に補正後も、バッテリ残容量が30%を下回り1つのセグメントのみが点灯する状態となった後、バッテリBATへの充電が開始されるまでの間(バッテリ残容量が領域Eであるとき)にもバッテリBATを使用している。しかしながら領域Eは、20%よりも大きい領域であり、深放電状態の範囲外である。
そのため、バッテリ残容量が20%以下の状態でバッテリBATが使用される状況が抑制される。したがって、バッテリBATの劣化を促進させる深放電状態にある状態で使用されることを抑制することができる。
【0035】
(残容量表示補正装置4での具体的な補正処理)
次に、残容量表示補正装置4での補正処理の処理手順の一例を、図5を伴って説明する。
ここでは、上述の動作を実現するために以下の手順で処理を行う。
この補正処理は、例えば、起動時、或いは、ドライバにより補正処理の起動指示が行われたときなど、予め設定したタイミングで実行される。
残容量表示補正装置4は、まず、ステップS1で、車両情報取得装置2から電気自動車Crを運転するドライバのドライバIDを獲得し、このドライバIDに対応する車両情報を記憶装置3から獲得する。なお、記憶装置3にドライバIDに対応する車両情報が記憶されていないときには、補正処理を終了する。
【0036】
一方、ドライバIDに対応する車両情報を獲得したならば、ステップS1からステップS2に移行し、車両情報をもとに、バッテリ残容量が第1バッテリ残容量B1以上である状態でバッテリBATへの充電操作が行われた頻度を表す第1頻度F1を獲得する。同様に、バッテリ残容量が第2バッテリ残容量B2以下である状態でバッテリBATへの充電操作が行われた頻度を表す第2頻度F2を獲得する。なお、第1バッテリ残容量B1および第2バッテリ残容量B2は任意に設定される。
【0037】
次いでステップS3に移行し、第1頻度F1の上限値V1および第2頻度F2の上限値V2を設定する。この上限値V1およびV2は、バッテリ残容量が、前述した第1バッテリ残容量B1以上または第2バッテリ残容量B2以下である状態で充電が開始された頻度が全充電操作回数の何%にあたるかを算出するためのものである。例えば、バッテリ残容量が、第1バッテリ残容量B1以上または第2バッテリ残容量B2以下であるときに充電が開始された頻度が全充電操作回数のY%となるように設定したい場合には、“全充電操作回数×Y%”という計算式から算出された値がV1およびV2として設定される。例えば、Y=50%としたい場合には、“全充電操作回数×0.5”という計算式から算出された値がV1およびV2として設定される。
【0038】
この上限値V1およびV2は可変な値である。したがって、Y=50%ではなく他の値に設定したい場合には、上限値V1およびV2を変更すればよい。
次いでステップS4に移行し、第1頻度F1とその上限値V1とを比較する。第1頻度F1>上限値V1であるときにはステップS5に移行し、第1頻度F1≦上限値V1であるときにはステップS6に移行する。
【0039】
つまり、バッテリ残容量が第1バッテリ残容量B1以上である状態でバッテリBATへの充電操作が行われたときの回数が、当該ドライバの全充電回数全体のY%以上の回数であるか否かを判定する。
ステップS5では、充電開始時のバッテリ残容量が第1バッテリ残容量B1以上であり且つ最大となるバッテリ残容量を抽出しこれを最大バッテリ残容量SOCmaxとする。そして、第1バッテリ残容量B1と最大バッテリ残容量SOCmaxとの差D1を補正値として獲得する。
【0040】
なお、ここでは、第1バッテリ残容量B1と最大バッテリ残容量SOCmaxとの差D1を補正値としているが、充電開始時のバッテリ残容量のうち、第1バッテリ残容量B1以上である充電開始時のバッテリ残容量の平均値を補正値として用いてもよい。また、平均値に限るものではなく、第1バッテリ残容量B1以上となる充電開始時のバッテリ残容量についてその大きさを表す代表値であっても適用することができる。また、差D1として予め設定した固定値を設定することも可能である。
【0041】
ここで、5つのセグメントのうち、全セグメントが点灯している状態からセグメント1つのみを消灯させるときに消灯させるセグメントを最上位セグメント(図2において5つのセグメントのうち最右端のセグメント)とする。また、セグメント1つのみを点灯させる状態とするときに点灯させるセグメントを最下位セグメント(図2において5つのセグメントのうち最左端のセグメント)とする。
【0042】
そして、最上位セグメントに割り当てられたバッテリ残容量の下限値を補正対象とする。この場合、図2に示すようにバッテリBATのバッテリ残容量を5つのセグメントで表すようにしているため、最上位セグメントは、100%〜80%に該当する。したがって、補正対象は下限値80%となる。
この補正対象の下限値から差D1を減算した値(80%−D1)を最上位セグメントの補正後の下限値とする。そして、ステップS6に移行する。
【0043】
ステップS6では、第2頻度F2とその上限値V2とを比較する。第2頻度F2>上限値V2であるときにはステップS7に移行し、第2頻度F2≦上限値V2であるときには補正処理を終了する。
つまり、バッテリ残容量が第2バッテリ残容量B2以上である状態でバッテリBATへの充電操作が行われたときの回数が、当該ドライバの全充電回数全体のY%以上の回数であるか否かを判定する。
ステップS7では、充電開始時のバッテリ残容量が第2バッテリ残容量B2以下であり且つ最小となるバッテリ残容量を最小バッテリ残容量SOCminとする。そして、第2バッテリ残容量B2と最小バッテリ残容量SOCminとの差D2を補正値として獲得する。
【0044】
なお、ここでは、第2バッテリ残容量B2と最小バッテリ残容量SOCminとの差D2を補正値としているが、充電開始時のバッテリ残容量のうち、第2バッテリ残容量B2以下である充電開始時のバッテリ残容量の平均値を補正値として用いてもよい。また、平均値に限るものではなく、第2バッテリ残容量B2以下となる充電開始時のバッテリ残容量についてその大きさを表す代表値であっても適用することができる。また、差D2として予め設定した固定値を設定することも可能である。
【0045】
そして、最下位セグメントに割り当てられたバッテリ残容量の上限値を補正対象とする。この場合、図2に示すようにバッテリBATのバッテリ残容量を5つのセグメントで表すようにしているため、最下位セグメントは、20%〜0%に該当する。
したがって、補正対象は上限値20%となる。この補正対象の上限値に差D2を加算した値(20%+D2)を最下位セグメントの補正後の上限値とする。
そして、補正処理を終了する。
【0046】
(動作)
次に、上記実施形態の動作を説明する。
ドライバが電気自動車Crを起動すると残容量表示補正装置4では、図5に示す補正処理を実行する。このとき、このドライバがこの電気自動車Crを初めて運転する場合には、記憶装置3にこのドライバの過去の車両情報は格納されていない。したがって、この時点で補正処理を終了する。
ここで、制御部1は、図2に示すように、バッテリ残容量を5つのセグメントを用いて残容量表示装置5に表示するための、各セグメントの点灯/消灯を規定するバッテリ残容量の範囲と各セグメントの点灯/消灯状態との対応を表すセグメント対応基準を備えている。
【0047】
そして、ドライバIDで特定される車両情報が記憶装置3に格納されていないときには、セグメント対応基準にしたがってバッテリ残容量表示を行う。すなわち、車両情報取得装置2からバッテリ残容量を獲得し、このバッテリ残容量に基づいてセグメントを点灯または消灯させて残容量表示装置5にバッテリ残容量を表示する。
【0048】
これによって、図2に「補正前の表示例」として示すように、満充電状態のときには全セグメントが点灯状態となり、バッテリ残容量が20%減少する毎に、セグメントが1つずつ消灯され、深放電状態(20〜0%)のときにはセグメント1つのみが点灯した状態となる。つまり、実際のバッテリ残容量の変化に応じてセグメント表示は段階的に変化し、且つ一定幅のバッテリ残容量(20%)で変化する。すなわち、バッテリ残容量に対しセグメント表示は段階的に且つ線形的に変化する。
【0049】
電気自動車Crのドライバは、残容量表示装置5に表示された点灯しているセグメントの数からバッテリ残容量を認識し必要に応じてバッテリBATへの充電を行う。
このドライバによるバッテリBATへの充電操作が行われたとき、充電開始時のバッテリ残容量および日時、充電終了時のバッテリ残容量および日時が収集される。そして、これらがバッテリBATを識別するためのバッテリIDおよびドライバを特定するためのドライバIDと対応付けられて車両情報として記憶装置3に格納される。
【0050】
このドライバが、次にこの電気自動車Crを運転するときには、このドライバの過去の車両情報は記憶装置3に格納されている。このため、図5の補正処理において、ステップS1からステップS2に移行し、バッテリ残容量が第1バッテリ残容量B1以上である状態でバッテリBATへの充電操作が行われた頻度を表す第1頻度F1とバッテリ残容量が第2バッテリ残容量B2以下である状態で充電操作が行われた頻度を表す第2頻度F2とを獲得する。
【0051】
前記第1バッテリ残容量B1は例えば70%、第2バッテリ残容量B2は例えば20%とする。
そのため、バッテリ残容量が70%以上であるときに充電操作が行われた頻度が第1頻度F1、バッテリ残容量が20%以下であるときに充電操作が行われた頻度が第2頻度F2として検出される。
そして、例えば、バッテリ残容量が70%以上であるときに充電操作が行われる頻度を、全充電操作回数の50%としたい場合には、
上限値V1=V2=“全充電操作回数×0.5”
として設定される(ステップS3)。そして、まず上限値V1と第1頻度F1とに基づいて、バッテリ残容量が70%以上であるときに充電操作が行われた回数が、全充電操作回数の50%以上の回数となっているかが判断される(ステップS4)。
【0052】
このとき、バッテリ残容量が70%以上であるときに充電操作が行われた回数が、全充電操作回数の50%以上の回数ではないとき、すなわち、バッテリ残容量が70%以上であるときに充電操作が行われた回数が全充電操作回数の50%未満であるときには、満充電状態でバッテリBATが使用される状況は多くは無いと判断できるため補正は行わない。
【0053】
一方、バッテリ残容量が70%以上であるときに充電操作が行われた回数が、全充電操作回数の50%以上の回数であるときには、満充電状態付近の領域でのバッテリBATの使用が多いと判断できるため補正を行う。すなわち、充電開始時のバッテリ残容量のうち、バッテリ残容量が70%以上であり且つ最大となるバッテリ残容量=例えば、79%と第1バッテリ残容量B1=70%との差D1=9%をとる。
【0054】
そして、最上位セグメントに割り当てられている下限値80%を、差D1=9%分シフトした71%を最上位セグメントの新たな下限値として設定する(ステップS5)。
このため、補正後のバッテリ残容量は、図2の「補正後の表示例1」に示すように、バッテリ残容量が100%〜71%のときには全セグメントが点灯し、バッテリ残容量が71%を下回ったときにセグメントが1つ消灯する。
つまり、実際のバッテリ残容量の変化に応じてセグメント表示は段階的に変化するが、セグメント表示が段階的に変化するときのバッテリ残容量の幅は、一定幅ではなく、バッテリ残容量に対して非線形なバッテリ残容量幅でセグメント表示は段階的に変化する。
そして、セグメントが1つ消灯すると、ドライバはバッテリBATへの充電を行う。
【0055】
前述のように、点灯中の全セグメントのうち1つが消灯するタイミングを、バッテリ残容量が80%を下回った時点から71%を下回った時点に変更しているため、バッテリ残容量の実際の変化に対し、セグメントが消灯するタイミングが補正前よりも遅くなる。そのため、必然的にドライバがバッテリBATへの充電を行う回数が減りすなわちバッテリBATの劣化を促進させる満充電状態付近の領域でバッテリBATを使用する頻度が低減されるため、バッテリBATの劣化を従来よりも遅らせることが可能となる。
【0056】
ここで、例えば、図3に示すように、バッテリBATへの充電操作を行うタイミングに比較的幅のあるドライバの場合には、充電開始時のバッテリ残容量のうち、バッテリ残容量が70%以上であり且つ最大となるバッテリ残容量=例えば、95%と第1バッテリ残容量B1=70%とから差D1=25%が得られる。
したがって、最上位セグメントに割り当てられている下限値80%を、差D1=25%分シフトした55%を最上位セグメントの新たな下限値として設定する。
【0057】
そのため、補正後のバッテリ残容量は、バッテリ残容量が100%〜55%のときに全セグメントが点灯し、バッテリ残容量が55%を下回ったときにセグメントが1つ消灯する。つまり、点灯中の全セグメントのうち1つが消灯するタイミングに対して、充電開始時のバッテリ残容量のばらつきが大きい場合には、ばらつきの大きさに応じて最上位セグメントの下限値をより大きく補正し、最上位セグメントが消灯するタイミングをより遅らせている。そのため、ばらつきが大きいときでも、バッテリ残容量が80%の満充電状態近傍で充電操作が行われることを抑制することができ、すなわち、満充電状態でバッテリBATを使用する状況を抑制することができる。
【0058】
なお、この場合、セグメント対応基準では、バッテリ残容量が60%未満〜40%のときにはセグメント3つのみを点灯状態とさせている。最上位セグメントの下限値が60%を下回るときには、セグメント4つのみ、またはセグメント3つ、セグメント2つ、セグメント1つのみを点灯させるバッテリ残容量の範囲の何れか1つまたは複数についてその範囲を変更し、各セグメントに対応するバッテリ残容量の範囲が重ならないように調整すればよい。
【0059】
このようにして、満充電状態付近の領域でのバッテリBATの使用が多いかどうかの判定を行ったならば、次に、深放電状態付近の領域でのバッテリBATの使用が多いかどうかの判定を行う。
まず、上限値V2と第2頻度F2とに基づいて、バッテリ残容量が20%以下である状態でバッテリBATへの充電操作が行われた回数が、全充電操作回数の50%以上の回数となっているかが判断される(ステップS6)。
【0060】
このとき、バッテリ残容量が20%以下である状態でバッテリBATへの充電操作が行われた回数が、全充電操作回数の50%以上ではないとき、すなわちバッテリ残容量が20%以下である状態でバッテリBATへの充電操作が行われた回数が全充電操作回数の50%未満であるときには、深放電状態でバッテリBATが使用される状況は、多くは無いと判断されるため補正は行わない。
【0061】
一方、バッテリ残容量が20%以下である状態でバッテリBATへの充電操作が行われた回数が、全充電操作回数の50%以上の回数であるときには、バッテリBATが深放電状態にあるときにバッテリBATが使用される状況が多いと判断できるため補正を行う。
すなわち、充電開始時のバッテリ残容量のうち、バッテリ残容量が20%以下であり且つ最小となるバッテリ残容量を求め、この最小値=例えば10%と第2バッテリ残容量B2=20%との差D2=10%をとる。そして、最下位セグメントに割り当てられている上限値20%を、差D2=10%分上方にシフトした30%を、最下位セグメントの新たな上限値として設定する(ステップS7)。
【0062】
このため、補正後のバッテリ残容量は、図2の「補正後の表示例2」に示すように、バッテリ残容量が40%未満〜31%のときには2つのセグメントのみが点灯し、バッテリ残容量が30%以下のときには1つのセグメントのみが点灯する。
つまり、実際のバッテリ残容量の変化に応じてセグメント表示は段階的に変化するが、セグメント表示が段階的に変化するときのバッテリ残容量の幅は、一定幅ではなく、バッテリ残容量に対して非線形なバッテリ残容量幅でセグメント表示は段階的に変化する。
【0063】
前述のように、2つのセグメントのみが点灯している状態から1つのみが点灯する状態に切り替わるタイミングを、バッテリ残容量が20%を下回ったタイミングから、30%以下となるタイミングに変更している。このため、バッテリ残容量の変化に対し、セグメントが1つのみ点灯する状態となるタイミングが補正前よりも早くなる。したがって、必然的にバッテリBATの劣化を促進させる深放電状態付近の領域でバッテリBATを使用する頻度が低減されるため、バッテリBATの劣化を従来よりも遅らせることが可能となる。
【0064】
したがって、バッテリBATの劣化を促進させる満充電状態や深放電状態付近の領域でバッテリBATを使用することに起因する、バッテリBATの劣化を抑制することができ、そのため航続距離が短縮されることを抑制することができる。
なお、上記実施の形態において、残容量表示装置5が表示部に対応し、制御部1が表示制御部に対応し、車両情報取得装置2および記憶装置3が充電操作履歴収集部に対応し、5つのセグメントの点灯または消灯状態がバッテリ残容量表示状態に対応し、満充電状態および深放電状態が特定バッテリ残容量に対応している。
【0065】
また、残容量表示補正装置4で実行される図5のステップS2〜ステップS4、ステップS6の処理が判定部に対応し、ステップS5、S7の処理が補正部に対応している。
また、図5のステップS2の処理が第1頻度検出部に対応し、ステップS3の処理が第1上限値設定部に対応し、ステップS5の処理が更新部に対応している。また、全セグメントが点灯している状態(バッテリ残容量が100%〜80%)が第1バッテリ残容量表示状態に対応し、4つのセグメントのみが点灯している状態(バッテリ残容量が80%〜60%)が第2バッテリ残容量表示状態に対応している。
【0066】
また、図5のステップS2の処理が第2頻度検出部に対応し、ステップS3の処理が第2上限値設定部に対応し、ステップS7の処理が更新部に対応している。また、最下位セグメントのみが点灯している状態(バッテリ残容量が20%〜0%)が第3バッテリ残容量表示状態に対応し、2つのセグメントのみが点灯している状態(バッテリ残容量が40%〜20%)が第4バッテリ残容量表示状態に対応している。
【0067】
(実施形態の効果)
(1)このように、車両情報としてドライバの過去の充電操作履歴を参照し、このドライバがどのようなタイミングでバッテリBATへの充電操作を行う傾向があるのかを判断する。そして、バッテリBATへの充電操作がバッテリBATの劣化を促進する可能性がある場合には、バッテリ残容量の表示を切り替えるためのセグメントに対応するバッテリ残容量の範囲を表す境界値を補正することで、残容量表示装置5に表示されたバッテリ残容量を参照したドライバがバッテリBATへの充電操作を行うタイミングを遅くする又は早めるように誘導している。
【0068】
これにより、ドライバが自らの意志でバッテリBATへの充電を行うタイミングを変更することなく、残容量表示装置5の表示にしたがって従来どおりに充電操作を行うだけでバッテリBATの劣化を抑制する可能性が高くなる。その結果、バッテリBATの劣化に伴い、電気自動車Crの航続距離が短縮されてしまうことを抑制することができる。
【0069】
(2)また、過去のドライバの充電操作履歴に基づきドライバの充電操作特性を検出し、この充電操作特性に応じて、セグメントに対するバッテリ残容量の境界値を補正している。このため、ドライバの充電操作特性に応じて、より的確にセグメントの点灯/消灯のタイミングを設定することができ、より的確にバッテリBATが使用されるときのバッテリ残容量の範囲を調整することができる。
【0070】
(3)また、車両情報として、バッテリBATへの充電が行われたときの充電開始日時、充電開始時のバッテリ残容量などを収集しているため、車両情報からドライバがバッテリBATへの充電を行う際の充電操作特性を容易に獲得することができる。また、車両情報をドライバIDと対応付けて設定しているため、複数のドライバが同一の電気自動車Crを運転する場合であっても、バッテリ残容量表示の切り替えタイミングをドライバ毎のバッテリBATへの充電操作特性に応じて設定することができる。したがって、バッテリBATの劣化をより的確に抑制することができる。
【0071】
(4)また、バッテリ残容量が、第1バッテリ残容量B1以上である状態でバッテリBATへの充電操作が開始された頻度を第1頻度F1とし、この第1頻度F1が第1上限値V1よりも大きいときにバッテリ残容量の表示を切り替えるためのセグメントに対応するバッテリ残容量の範囲を表す境界値を補正する。このため、バッテリ残容量が、第1バッテリ残容量B1以上である状態でバッテリBATへの充電操作が開始される頻度を容易に抑制することができる。
【0072】
このとき、バッテリ残容量の範囲を表す境界値を補正する補正値として、バッテリBATへの充電操作を開始したときのバッテリ残容量のうち第1バッテリ残容量B1以上であり且つ最大のバッテリ残容量と第1バッテリ残容量B1との差を補正値D1としている。このため、バッテリBATへの充電を行うときのバッテリ残容量にばらつきがある場合であっても、バッテリ残容量が第1バッテリ残容量B1以上である状態でバッテリBATへの充電操作が開始される頻度を的確に抑制することができる。
【0073】
(5)また、バッテリ残容量が、第2バッテリ残容量B2以下である状態でバッテリBATへの充電操作が開始された頻度を第2頻度F2とし、この第2頻度F2が第2上限値V2よりも大きいときにバッテリ残容量の表示を切り替えるためのセグメントに対応するバッテリ残容量の範囲を表す境界値を補正する。このため、バッテリ残容量が、第2バッテリ残容量B2以下である状態でバッテリBATへの充電操作が開始される頻度を容易に抑制することができる。
【0074】
このとき、バッテリ残容量の範囲を表す境界値を補正する補正値として、バッテリBATへの充電操作を開始したときのバッテリ残容量のうち第2バッテリ残容量B2以下であり且つ最小のバッテリ残容量と第2バッテリ残容量B2との差を補正値D2としている。このため、バッテリBATへの充電を行うときのバッテリ残容量にばらつきがある場合であっても、バッテリ残容量が第2バッテリ残容量B2以上である状態でバッテリBATへの充電操作が開始される頻度を的確に抑制することができる。
【0075】
(6)特に、第1バッテリ残容量B1および第2バッテリ残容量B2を、それぞれ満充電状態におけるバッテリ残容量および深放電状態におけるバッテリ残容量を考慮して設定することによって、満充電状態近傍あるいは深放電状態近傍においてバッテリBATへの充電操作が開始される頻度を抑制することができる。そのため結果的に、バッテリBATへの劣化を促進する満充電状態あるいは深放電状態である状態でバッテリBATが使用される頻度を抑制することができ、効果的である。
【0076】
(変形例)
上記実施形態では、残容量表示補正装置4での補正処理を、起動時など予め設定したタイミングで実行する場合について説明したがこれに限るものではない。
例えば、ある程度の期間における車両情報を獲得することができ、ドライバの充電操作特性を比較的高精度に検出できるときには、最上位セグメントの下限値および最下位セグメントの上限値を補正した後、この下限値および上限値をドライバIDと対応付けて記憶しておく。そして、以後、このドライバが電気自動車Crを利用するときには、記憶していた下限値および上限値を用いて、残容量表示装置5におけるバッテリ残容量表示の切替えタイミングを調整するようにしてもよい。
【0077】
このようにすることによって、最上位セグメントの下限値および最下位セグメントの上限値の演算を行う必要がないため、その分、速やかにドライバのバッテリへの充電操作特性に応じたバッテリ残容量表示を行うことができる。これとともに、残容量表示補正装置4における処理負荷を軽減することができる。
また、上記実施の形態においては、バッテリBATへの充電操作特性を検出するための車両情報を収集し、収集した車両情報に基づきセグメントに対応するバッテリ残容量の範囲の境界値を補正する場合について説明したが、これに限るものではない。
【0078】
例えば、満充電状態であり全セグメントが点灯している状態から最上位セグメントのみが消灯した時点でバッテリBATへの充電を行う充電操作特性を有するドライバ向けに上述の手順でバッテリ残容量の範囲の境界値を補正したセグメント対応を第1モードとして予め設定しておく。同様に、2つのセグメントのみが点灯している状態から最下位セグメントのみが点灯する状態となった時点でバッテリBATへの充電を行う充電操作特性を有するドライバ向けに上述の手順でバッテリ残容量の範囲の境界値を補正したセグメント対応を第2モードとして予め設定しておく。
【0079】
そして、5つのセグメントが20%毎に割り当てられたセグメント対応基準を設定する基準モードと、前記第1モードと第2モードとの何れかのモードを選択可能に構成し、選択されたモードに対応するセグメント対応基準またはセグメント対応にしたがって、セグメントの点灯/消灯を切り替える構成としてもよい。
なお、ここでは、セグメント対応基準の他に、第1モードおよび第2モードに対応するセグメント対応を2つ設けた場合について説明したが、さらに多くの充電操作特性に対応したセグメント対応を設けることも可能である。
【0080】
そして、このような構成とし、ドライバが自身のバッテリBATへの充電操作特性を判断しそれに応じて何れかのモードを選択することで、上記実施形態と同等の作用効果を得ることができる。つまり、ドライバは、自身が、バッテリBATへの充電操作を、最上位セグメントのみが消灯した時点でバッテリBATへの充電を行うか、最下位セグメントのみが点灯した状態となった時点でバッテリBATへの充電を行うかといったことを判断し、その判断結果に基づいてモードを選択する構成とする。このような構成とすることによって、車両情報の収集を装置側で行わなくても、バッテリBATの劣化を促進させる満充電状態または深放電状態付近の領域でバッテリBATを使用することを抑制することができる。
【0081】
また、例えば、ドライバの過去の車両情報が、記憶装置3に収集されていないときには、ドライバの自己申告に応じて、手動で前記基準モードと第1モードおよび第2モードの何れかを選択することで、ドライバの自己申告に応じたタイミングで、セグメントの点灯/消灯を切替える。そして、その後、このドライバの車両情報をある程度収集することができたときに、前記図5に示す補正処理を開始し、ドライバの実際のバッテリBATへの充電操作特性に応じてセグメントの点灯/消灯を切替えることで、バッテリBATの劣化を促進させる満充電状態または深放電状態付近の領域でバッテリBATを使用することを抑制するように構成することも可能である。このような構成とした場合、異なる複数のドライバが利用するレンタカーや業務用車両など、ドライバの車両情報が記憶装置3に収集されていないことの多い車両に適用すれば効果的である。
【0082】
また、上記実施の形態において、バッテリBATの劣化度合を定期的に判断し、バッテリBATの劣化が通常よりも急速に進んでいるときに、図5に示す補正処理を実行する構成としてもよい。
前記バッテリBATの劣化度合は、例えば、最大充電量を計測すればよい。
そして、バッテリ使用時間に対するバッテリBATの劣化度合として理想的な劣化度合を予め設定しておき、この理想的な劣化度合と、実際の劣化度合とを比較することにより、バッテリBATの劣化が通常よりも急速に進んでいるか否かを判断するようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態においては、バッテリ残容量を5つのセグメントにより5段階に表示する場合について説明したが、5段階未満あるいは6段階以上で表示する場合であっても適用することができる。
この場合には、最上位セグメントの下限値または最下位セグメントの上限値に替えて、バッテリBATの劣化を促進させる満充電状態と非満充電状態との境界に相当するセグメント、または深放電状態と非深放電状態との境界に相当するセグメントに対応するバッテリ残容量の範囲の境界値を変更すればよい。
【0084】
また、点灯させるセグメントの数を変更することでバッテリ残容量を表すデジタル式残量表示を行う場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、1本のバーの長さを伸び縮みさせることでバッテリ残容量を表示する方法、バッテリ残容量に対応する目盛り位置を指し示すことでバッテリ残容量を表示する方法、あるいは、バッテリ残容量をデジタル表示する場合、あるいは段階的に数値表示する場合などであっても適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 制御部
2 車両情報取得装置
3 記憶装置
4 残容量表示補正装置
5 残容量表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリで駆動する電動モータを駆動源とする車両における、前記バッテリのバッテリ残容量を段階的に表示する表示部と、
前記表示部に表示されるバッテリ残容量表示状態を前記バッテリの現在のバッテリ残容量に応じて段階的に変化させる表示制御部と、
前記バッテリに対する充電操作履歴を収集する充電操作履歴収集部と、
前記充電操作履歴に基づき、前記バッテリ残容量が特定バッテリ残容量であるときに前記バッテリへの充電操作が行われる傾向にあることを判定する判定部と、
当該判定部により前記バッテリ残容量が前記特定バッテリ残容量のときに前記バッテリへの充電操作が行われる傾向にあると判定される場合に、前記表示制御部により前記表示部に表示される段階的な前記バッテリ残容量表示状態を補正する補正部と、を備えることを特徴とするバッテリ残容量表示装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記傾向にあると判定される場合に、実際のバッテリ残容量の変化に対して前記バッテリ残容量表示状態が非線形に段階的に変化するように、前記バッテリ残容量表示状態を補正することを特徴とする請求項1記載のバッテリ残容量表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記バッテリの現在のバッテリ残容量に応じて一定幅のバッテリ残容量毎に前記バッテリ残容量表示状態を変更することにより、現在のバッテリ残容量に応じた前記バッテリ残容量表示状態を段階的に変化させ、
前記補正部は、前記傾向にあると判定される場合に、前記バッテリ残容量表示状態が表す実際のバッテリ残容量の範囲を変更し、
前記表示制御部は、変更後の前記バッテリ残容量の範囲に基づいて前記表示部に表示されるバッテリ残容量表示状態を変化させることを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリ残容量表示装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記充電操作履歴に基づき、バッテリ残容量が前記特定バッテリ残容量に応じて設定される第1バッテリ残容量以上である状態で前記バッテリへの充電操作が開始された第1頻度を検出する第1頻度検出部と、
前記第1頻度の上限値である第1上限値を設定する第1上限値設定部と、
を備え、
前記補正部は、
前記第1頻度が前記第1上限値よりも大きいとき、前記特定バッテリ残容量を表す第1バッテリ残容量表示状態と当該第1バッテリ残容量表示状態よりもバッテリ残容量が1段階小さいことを表す第2バッテリ残容量表示状態との境界を表すバッテリ残容量の境界値から所定の第1補正値を減算した値を、前記第1バッテリ残容量表示状態と前記第2バッテリ残容量表示状態との境界を表すバッテリ残容量の新たな境界値とする更新部を備えることを特徴とする請求項3記載のバッテリ残容量表示装置。
【請求項5】
前記更新部は、
前記第1頻度が前記第1上限値よりも大きい場合、前記バッテリへの充電操作を開始したときのバッテリ残容量のうち最大のバッテリ残容量と前記第1バッテリ残容量との差を前記第1補正値として算出することを特徴とする請求項4記載のバッテリ残容量表示装置。
【請求項6】
前記判定部は、
前記充電操作履歴に基づき、バッテリ残容量が前記特定バッテリ残容量に応じて設定される第2バッテリ残容量以下である状態で前記バッテリへの充電操作が開始された第2頻度を検出する第2頻度検出部と、
前記第2頻度の上限値である第2上限値を設定する第2上限値設定部と、
を備え、
前記補正部は、
前記第2頻度が前記第2上限値よりも大きいとき、前記特定バッテリ残容量を表す第3バッテリ残容量表示状態と当該第3バッテリ残容量表示状態よりもバッテリ残容量が1段階大きいことを表す第4バッテリ残容量表示状態との境界を表すバッテリ残容量の境界値に所定の第2補正値を加算した値を、前記第3バッテリ残容量表示状態と前記第4バッテリ残容量表示状態との境界を表すバッテリ残容量の新たな境界値とする更新部を備えることを特徴とする請求項2から請求項5の何れか1項に記載のバッテリ残容量表示装置。
【請求項7】
前記更新部は、
前記第2頻度が前記第2上限値よりも大きい場合、前記バッテリへの充電操作を開始したときのバッテリ残容量のうち最小のバッテリ残容量と前記第2バッテリ残容量との差を前記第2補正値として算出することを特徴とする請求項6記載のバッテリ残容量表示装置。
【請求項8】
前記充電操作履歴収集部は、
前記バッテリへの充電操作を行うときの充電開始日時およびバッテリ残容量を少なくとも収集することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のバッテリ残容量表示装置。
【請求項9】
前記特定バッテリ残容量は、前記バッテリの劣化を促進する満充電状態および深放電状態の少なくとも何れか一方に相当するバッテリ残容量であることを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載のバッテリ残容量表示装置。
【請求項10】
バッテリで駆動する電動モータを駆動源とする車両における、前記バッテリのバッテリ残容量を段階的に表示するバッテリ残容量表示方法であって、
前記表示部に表示されるバッテリ残容量表示状態を前記バッテリの現在のバッテリ残容量に応じて段階的に変化させるステップと、
前記表示部に段階的に表示される前記バッテリ残容量表示状態を、前記車両のドライバが前記バッテリへの充電を行うときの充電操作特性に基づいて補正するステップと、を備えることを特徴とするバッテリ残容量表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−69227(P2013−69227A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208964(P2011−208964)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】