説明

バッテリ電極用の材料、これを含有したバッテリ電極、ならびにこれらの電極を具備したバッテリ、およびバッテリ電極用の材料の調製方法

【課題】高いLi貯蔵能力を示し、陽極アッセンブリへの組み込みに関する体積変化の問題を緩和ないし回避する。
【解決手段】少なくとも2相からなるコンポジットを含んでなるバッテリ電極用材料。第1の相はガラスを含有した成分2を含み、第2の相はLiイオンを貯蔵する成分3を含む。Liイオンを貯蔵する成分が電気化学活性を示すことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ電極用の材料、これらの材料により構成されコンポジットなどの配列、これらの材料を使用したバッテリ電極、ならびにこれらの電極を内包したバッテリ、特に二次バッテリまたは蓄電池、ならびにバッテリ電極用の材料の調製方法に関する。
【0002】
リチウムイオン蓄電池は、例えば、J.O.Besenhard、「Handbook of Battery Materials」、Wiley−VCH、1998、ISBN 3−527−29469−4、David Linden、「Handbook of Batteries」(McGraw−Hill Handbooks)、第3版、Mcgraw−Hill Professional、 New York 2008、ISBN 978−0−0713−5978−8、またはほかにもLucien F.Trueb、Paul Rueetschi、「Batterien und Akkumulatoroen:Mobile Energiequellen fuer heute und morgen」、Springer、Berlin 1997, ISBN 978−3−5406−2997−9に説明されている。
【0003】
現在のリチウムイオン・セルでは、陰極側にLi遷移金属化合物が使用される。応用面からの要求により、エネルギ密度または出力密度および安全性に関して特段の要求が成される場合は、LiCoOなどの酸化物、LiMnなどのスピネル、または、例えばLiFePOなどのオリビン構造を持つ化合物が使用される。高電圧の用途向きとして、バナジン酸塩も開発段階にある。具体例として挙げたこれらの化合物は、特性の微細な調整のために、混晶(例えばLi(Ni、Co、Al)O)としても構成されるようになっている。あるいはその代わりに、またはそれに補足して、陰極は、さまざまな活性物質を混合して構成されてもかまわない。
【0004】
現在のリチウムイオン蓄電池のリチウムイオン・セルでは、陽極側にさまざまな実施態様をとる炭素が利用される。そこでは、カーボンブラック、ならびに、改質状態が異なる黒鉛が、例えば純黒鉛、非晶質黒鉛、またはほかにも表面改質黒鉛として、導入されるようになっている。
【0005】
【化1】

【0006】
炭素をベースとする電極の製造は、導電性カーボンブラック、黒鉛、結合剤、および溶媒から成る適切な組成物を、ドクターブレード塗布などのような、ウェットケミカル・コーティングプロセスにより塗布し、そのような材料塊を除電金属箔の表面に対して加圧して押し固めることにより行われるが、その際の付着は、例えば、このコーティング材料塊の総重量に関して5重量%の量のPVDF(ポリ弗化ビニリデン)などの結合剤により行われるようになっている。
【0007】
黒鉛は、充電工程においてはリチウムイオンを貯蔵し、放電時には、体積が実質的に変化することなく、これを放出することができる。それに加え、黒鉛は優れた導電性を示すが、もっともその導電性は、方向に依存したものとなっている。電解質からの黒鉛の保護は、さまざまなリチウム化合物から成る、SEI膜(固体電解質インターフェース)とも呼ばれる界面層を表面に生成することにより行われる。これは、初回の充電サイクル時に、狙い通りに管理されながら生成されるが、優れたLiイオン透過性を示す。黒鉛は加工性に優れており、このため陽極コンセプトに黒鉛を良好に組み込むことができる。黒鉛の場合は、界面のストイキオメトリの体積変化が最大で約10%であるが、これについては国際特許出願公開第2005096414号も参照されたい。
【0008】
黒鉛は、今日のバッテリにおける使用のためには十分なLi貯蔵能力を有している。LiC型の公称インターカレーション化合物を生成するために必要なリチウム1個当たりの炭素原子数は6個である。炭素の電気化学的な比理論容量は、約372mAh/gであり、それにより現在達成可能な約100〜180Wh/kgの範囲内のセル・エネルギ密度に寄与している。そのような比エネルギ密度は、リチウムイオン・バッテリの今日の用途にとっては十分なものであるが、しかし、エレクトロモビリティにおける適用などのような将来の適用には、それよりもはるかに大きい容量が必要となる。
【0009】
珪素、錫、アルミニウム、アンチモン、もしくはそれらの合金などの、比容量が高い材料を、電極材料として導入することを試してみるとよいかもしれない。珪素は、約4,200mAh/gという、理論上は最大の電気化学的な貯蔵容量を有しており、錫は、例えばLi4.2Siなどの自己形成合金によると、940mAh/gの貯蔵容量を有している。
【0010】
しかしながら、珪素または錫を使用する場合は、これらを受け容れる構造の200%超にも達することがある、膨大な体積変化が問題となる。珪素の場合は、体積変化率が約400%前後で推移する。これに相応して、珪素粒子が分裂片に分裂して、これらの分裂片がコンポジット複合体から脱離する怖れも高くなっている。
【0011】
それにより、粒子がなおも寄与するのは貯蔵だけとなり、電子の伝導には寄与しないことになる。これにさらに、SEI層もしくはSEI膜の常に新規再生を繰り返す表面が、新たに生成され、その際には、リチウムイオン蓄電池のリチウムイオンが減損するという事情が付け加わる。そのいずれの効果によっても、蓄電池の容量は、数回のサイクル後にはすでに著しく低下して、一部では黒鉛のレベルを下回ることになる。引き続きサイクル動作、すなわち充放電が繰り返される間の、可逆容量のこの低下を、以下ではフェーディングとも呼ぶ。
【0012】
体積変化の問題に配慮した陽極アッセンブリへの、珪素、および/または錫粒子、もしくはそれらの合金の組み込みを可能とする実験が、数多く実施されている。活性材料そのものの構成や、例えばナノ粒子を、例えばシリコンナノワイヤーを含めて使用すること以外にも、例えば珪素を適切なマトリックス中に充填するようにしたアプローチ法も知られている。このマトリックスは、銅であるとよい、すなわち、陽極側の古典的な材料もしくは除電体材料であるとよい。米国特許第2005208379号、ならびに、安田清隆「Advanced Silicon Anode Technology for High Performance Li−Ion Batteries」、Proceedings AABC2009 San Joseによると、そこでは、サイズが約2.5μmであるSi粒子が、ナノ粒子状の銅から成る組織の内部に埋め込まれるようになっている。銅粒子の直径は、5nmから50nmの間であり、その層厚は最大で200nmである。そこでは、銅の僅かな貯蔵能力と、その高い導電率が有利であるかもしれないが、しかしイオン伝導率は、この材料に固有の微小な値となっている。Liイオンは、Cuシースのクラックを通り、Si結晶粒に向かって、またはSi結晶粒から遠ざかるように、泳動しなければならない。
【0013】
さらに別の手法の中には、例えばSiの黒鉛中への充填/被覆に関するものがある。国際特許出願公開第2005096414号によると、基材への珪素の付着性を改善するために、例えば数時間をかける強力粉砕処理(Dimov et al.、Electrochem.、Acta 48(2003)、1579頁;Niu et al.、Electochem.、Solid State Lett.5(2002)、A107頁)、気相からのカーボンコーティング(Wilson et al.、J.Electrochem.Soc.、142(1995)、326頁)、および、それぞれの前駆体の均質混合物の熱分解(Larcher et al.、Solid State Ion.、122(1999)、71頁;Wen et al.、Electrochem.、Commun 5(2003)、165頁)などの、さまざまな技術が導入される。そこでは、珪素に富んだ組成(60〜80重量%のSi)についても、また珪素に乏しい組成(5〜20重量%のSi)についても、実験を行っている。
【0014】
上述の国際特許出願公開第2005096414号から察知することができるように、サイズが200nmまでだけの、好ましくは100nmまでの、凝集形態では1,000nmまでのSi粒子により、セル内に来たすフェーディングは僅かとなるはずである。そこでは、このSiの調製が、気相もしくは蒸気相から、ホットウォール反応を利用して行われるようになっている。Siナノ粒子は、結合剤、例えばPVDFを使用して、銅箔にドクターブレード塗布されて、導電率を改善するために、この複合体が、導電性カーボンブラックおよび/または微粒黒鉛で被覆される。この方法では、高額なコストの原因となるナノスケールのSiの使用が短所となっている。一般にナノ粒子の場合は、それに加えてさらに、均質な分散性に難点があり、結合剤と混合する際には、とかく無秩序に凝塊やクラスタを形成しがちである。
【0015】
ほかにも、Si含有ポリマーの熱分解により、Si−O−Cを生成しながら珪素粒子を調製することを企図した代案もあるが、これについては例えば欧州特許出願公開第0867958号を参照されたい。
【0016】
また、ゲル中にSi粒子を黒鉛とともに埋め込む/組み合わせるという、さらにもう一つの代案もある。インターネットの情報(http://www.g−o.de/wissen−aktuell−10729−2009−10−29.html)によると、体積変化が黒鉛により緩衝されるとしている。使用されるゲルは、有機性のものである。
【0017】
あるいはその代わりに、国際特許出願公開第2009012899号に説明されるように、陽極側の電気化学活性を示す物質、特にSn含有化合物を、例えばセルロースなどのような非化学合成の多糖類の中に埋め込むようにしてもよい。この場合は、ドイツ特許第69601679号に記載されるように、ガラス材料も増量剤(第15頁中ほどを参照)として導入されるようになっている。貯蔵目的での、錫を含有した、黒鉛中に埋め込まれた、非晶質または半結晶質のSn−Co合金は、米国特許第2005208378号にも説明されている。
【0018】
最後に米国特許第20050233213号からは、Siを含有したコンポジット陽極材料が知られている。このコンポジットは、少なくとも50%が非晶質であり、SiO、Si、および場合によってはさらにもう一つの酸化物/さらにもう一つの化合物の混合物を一緒に調質することにより生成される。この材料はさらに、炭素を含有した材料により被覆される、またはその粒子により取り囲まれるようになっている。しかしながらこの材料の決定的な特徴は、xを0.5から1.5までの範囲とする、SiOが存在することにある。しかしいずれにせよ、材料の熱力学的安定性とならび、材料の適切な取り扱いの観点から、この材料が登場すると不利になるために、その使用は回避されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際特許出願公開第2005096414号
【特許文献2】米国特許第2005208379号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0867958号
【特許文献4】国際特許出願公開第2009012899号
【特許文献5】ドイツ特許第69601679号
【特許文献6】米国特許第2005208378号
【特許文献7】米国特許第20050233213号
【特許文献8】国際特許出願公開第2008069930号
【特許文献9】ドイツ特許第102005020168号
【特許文献10】ドイツ特許出願公開第10222609号
【特許文献11】ドイツ特許出願公開第10222958号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】J.O.Besenhard、「Handbook of Battery Materials」、Wiley−VCH、1998、ISBN 3−527−29469−4
【非特許文献2】David Linden、「Handbook of Batteries」(McGraw−Hill Handbooks)、第3版、Mcgraw−Hill Professional、 New York 2008、ISBN 978−0−0713−5978−8
【非特許文献3】Lucien F.Trueb、Paul Rueetschi、「Batterien und Akkumulatoroen:Mobile Energiequellen fuer heute und morgen」、Springer、Berlin 1997, ISBN 978−3−5406−2997−9
【非特許文献4】安田清隆「Advanced Silicon Anode Technology for High Performance Li−Ion Batteries」、Proceedings AABC2009 San Jose
【非特許文献5】Dimov et al.、Electrochem.、Acta 48 (2003)、1579
【非特許文献6】Niu et al.、Electochem.、Solid State Lett.5 (2002)、A107頁
【非特許文献7】Wilson et al.、J.Electrochem.Soc.、142(1995)、326頁
【非特許文献8】Larcher et al.、Solid State Ion.、122(1999)、71頁
【非特許文献9】Wen et al.、Electrochem.、Commun 5(2003)、165頁
【非特許文献10】http://www.g−o.de/wissen−aktuell−10729−2009−10−29.html
【非特許文献11】林、Jounal of Non−Crystalline Solids、vol.345&346(2004)、478〜483頁
【非特許文献12】林、Eur.J.Glass Sci.Technol.、A50(2009)、273頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
以上のような背景から、本発明の課題は、珪素または錫の材料固有の高い貯蔵容量が有効利用される一方で、上述の陽極アッセンブリへの組み込みに関する体積変化との関係での問題を緩和することができるか、または、それどころか完全に回避することができるコンセプトを提示することにある。
【0022】
保護雰囲気下での取り扱いを放棄できるようにすると、有利であるかもしれない。
【0023】
その際には、高寿命の、特に数百回もの充放電サイクルをものともしないリチウムイオン・バッテリセルが実現されるようにすると有利である。
【0024】
その材料は、その適切な組み込み方も含めて、経済的に調製可能/実施可能なものとする、すなわち、特にナノスケールの粉末としての活性物質の導入もしくは取り扱いを、本発明により回避できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明にしたがった解決策は、安全性に寄与するものであるが、これは例えば、場合によってはもはや結合剤の中だけにしか見られない、また少なからぬ実施形態においては、調製工程の間に限って存在することもあるポリマー成分を、低減または回避することにより達成できるようになっている。
【0026】
上述の課題は、請求項1に定義される材料により解決され、またこの材料は、請求項29に記載の方法により調製される。
【0027】
この材料は、
1.)分量が5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%である、電気化学活性を示す材料
2.)分量が5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%である、ガラスをベースとする材料、
ならびに、オプションとして、それに加えて、
3.)0〜50体積%の細孔
4.)0〜80重量%の導電性粒子
5.)0〜25重量%の天然または合成結合剤
から成ると好適である。
【0028】
この材料には、少なくとも2相のコンポジット、特に、第1の相がガラスを含有した成分を、第2の相がLiイオンを貯蔵する成分を含有している、2相または多相の複合材料が含まれると有利である。
【0029】
このガラスを含んだ成分が、ガラスセラミックスである、またはガラスセラミックスを含有している場合は、設計構造とのからみで、ガラスセラミックスの有利な熱特性ならびに温度変化に対する耐性を利用できるようになる。この場合は、仮に意図せざる昇温が生じたとしても安定性を示す構造を使用に供することができる。仮に意図せざる、特に管理下に置かれていない、蓄電池成分の化学反応が生じたとしても、ガラスセラミックスは、この反応に与ることはなく、また反応相手にとっては表面積が低減するように作用するために、難燃効果から消炎効果までを持ち合わせている上に、なおも高信頼度の機械的な担持機能および結合機能を提供してくれる。
【0030】
ガラスは、有利なことにも、第2の相のためのマトリックス要素として、特に、結合剤、担体、充填剤として、および/または、ほかにも埋封材料として、作用することができる。
【0031】
ガラスコンポーネントが、互いに接触した、好適には全体的に一貫して接触した状態にある場合、特に、少なくとも一つの最も近い位置にある隣接成分と直接機械的に接触した状態にある場合は、担体としての機械特性により、熱安定性および耐薬品性をもたらすことができる。この場合は、高分子担持構造の場合とは異なり、上述の管理下に置かれていない動作状態においても、なおも確実な保持機能および/または埋封機能を提供することが可能である。
【0032】
ガラス成分により、特に活性材料が堆積または付着できるようにするための、非常に大きな表面積を提供する、一つの多孔質成形体を形成できるようにすると有利である。この場合はその比表面積が、例えば0.5m/gから100m/gまでの範囲内にあるとよい。
【0033】
好ましい実施形態の一例においては、選択されたガラスが、腐食に対し不感となっている、すなわち空気中における耐食性を有している。特にこのガラスは、溶融技術によっても簡単に製造可能であるはずであり、また、サブマイクロメートル・スケールの粉末中への加工も問題なく可能であるはずである。このため硫化物を含有したガラスは、あまり適していない。
【0034】
したがって、好ましい実施形態においては、ガラスが、珪酸塩、燐酸塩、硼酸塩、アルミン酸塩から成る群の中から選ばれている。
【0035】
さらにこのガラスは、弗素も含有することができる。その例としては、フルオロ燐酸塩系ガラスを挙げられる。
【0036】
ガラスが10−5S/cmを上回るイオン伝導率を有する場合は、ガラスをほかにも除電体として、単独で、またはさらに別の導電性を示す成分と協力して、電流を電極に導くために、または電極自体として、利用することができる。
【0037】
バッテリ電極用の材料の有機物量は、5重量%未満であると有利である。
【0038】
バッテリ陰極用の好ましい材料は、例えば、
−LiNiO、LiCoO、および混晶相(ほかにもAl、Mn、またはFeを含む)、
−LiMn
−LiFePo、LiVPO、LiMnPo、LiCoPO、LiNiPO、および混晶相、
−LiNiVO
から成る群の中から選ばれる、少なくとも一つの電気化学活性を示す材料を含有している。
【0039】
最も好ましい実施形態においては、電気化学活性を示す材料が、C、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn、Liから成る群の中から選ばれている。
【0040】
活性材料は、Si、Sn、またはそれらの合金を含む群の中からも、有利に選択することができる。
【0041】
バッテリ電極用の材料のコンポジットにはさらに、孔径が最大で10μmまでの細孔が含まれている。
【0042】
バッテリ電極用の材料のコンポジットにはさらに、黒鉛またはカーボンブラックとしての炭素、例えば銅などの金属、合金、または半金属などの、電子伝導性粒子が含まれている。
【0043】
活性材料は、これがばら材料として積層される、または積み上げられて加工される場合は、不規則に微細分散された形態で存在することができるが、この場合はガラス・マトリックスの内部にこれを有利に埋め込むことができる。
【0044】
ほかにも活性材料は、これに指向性を持たせた形態で、例えば楕円体、円柱体、角柱体などの定方位粒子として、ガラス中に分散された状態で存在して、この指向性を示す形態で、特に抵抗がイオンの伝播方向に沿って小さくなることにより、イオン輸送を支援できるようにするとよい。
【0045】
電気化学活性を示す粒子は、>100nm、最も好ましくは、>200nmの最小サイズを有することが好ましい。
【0046】
電気化学活性を示す材料が、ガラスの表面、特に多孔質ガラスの表面に析出される場合は、それにより、非常に小さな空間に活性材料を受け入れるために、非常に大きな表面領域を提供できるようになり、その結果、体積変化のための空間が、表面に対して好適には垂直に依然として存在するにもかかわらず、高い充填密度を達成することが可能となる。
【0047】
これについては、図4および5も参照されたい。
【0048】
さらに別の好ましい実施形態においては、電気化学活性を示す材料が、粉末中で焼結されている。
【0049】
電気化学活性を示す材料の表面が、少なくとも部分的に、CuまたはCなどの導電性材料により包み込まれている場合は、導電率、特に放電容量が改善される。この材料が電着される場合は、設計構造面での所与の条件に対して、その層厚を極めて正確に適合させることが可能となる。
【0050】
電気化学活性を示す材料の層厚または被覆量についても、この材料が、SiOの好適には化学反応から生成される場合は、極めて正確な最適化が可能となる。
【0051】
バッテリ電極用の材料では、電気化学活性を示す成分、または電気化学活性を示す粒子に、これらを埋め込んだり、ガラスを含有した成分または粒子と接触させたりする前に、Liが装入されている場合には、重大な長所がもたらされることになる。
【0052】
それによって、ガラスの内部には、体積が膨張した粒子により、粒子からLiが放出される際にはそれぞれ、ガラスまたは周囲の成分を損傷したり、これらに許容されない負荷をかけたりすることなく、収縮することができる、ある一定の容積が作り出されることになる。
【0053】
電気化学活性を示す成分または粒子に、これらを埋め込んだり、ガラスを含有した成分または粒子と接触させたりする前に、その一部だけに、すなわち飽和状態に達することがないように、Liが装入されていると、非常に好ましい。この実施形態においては、ガラスが弾性を示す領域内で、ガラス、特にガラス体、または多孔質ガラス、または焼結体を損傷することなく、なおも膨張を行うことが可能となるが、その際には、後に残されている開口細孔が占める割合が減少して、特に除電体または電極への残留している電気結合が改善されることになる。
【0054】
ここに記載される材料の主な適用領域の一つが、バッテリ用、特にLiイオン二次バッテリ用の電極である。
【0055】
バッテリ電極用の材料の調製方法においては、ガラスを含有した成分と、好適には電気化学活性を示す成分である、Liイオンを貯蔵する成分とが使用される。
【0056】
バッテリ電極用の材料の調製方法においては、ガラスを含有した成分と、好適には電気化学活性を示す成分である、Liイオンを貯蔵する成分とが接合されて、コンポジットを構成する。
【0057】
電気化学活性を示す成分または粒子に、これらを埋め込んだり、ガラスを含有した成分または粒子と接触させたりする前に、Liを装入し、Liを装入した粒子が、ほぼ完全に、または完全に、ガラスにより取り囲まれるようにしてバッテリ電極用の材料を調製する方法が有利になるが、なぜならばそれにより、Liを装入した粒子の高い反応能力にもかかわらず、外部に対してはそれほど反応性を示さない配列が得られるからである。そのようにカプセル化された粒子は、その後には再び、保護ガス雰囲気を不要として、これを取り扱って、後工程においてガラス体にこれを完全に受容させることが可能となる。
【0058】
これは、電気化学活性を示す成分または粒子に、これらを埋め込んだり、ガラスを含有した成分または粒子と接触させたりする前に、Liを部分的に装入する場合にも、実現される。
【0059】
本発明を以下に、好ましい実施形態に基づき、添付図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ガラス含有成分と、Liイオン貯蔵成分を有するバッテリ電極用の材料の領域の断面図であり、Liイオン貯蔵成分は好ましくは電気化学活性を示す成分であり、これらは少なくとも2相のコンポジットを形成し、このコンポジットは、第1の相がガラス含有成分を、第2の相がLiイオン貯蔵成分を、そして第3の相が導電成分を含む3相の複合材料である。
【図2】ガラス含有成分とLiイオン貯蔵成分を有するバッテリ電極用の別の材料の領域の断面図であり、これらは多相の複合材料を形成し、この複合材料では第1の相がガラス含有成分を、第2の層がLiイオン貯蔵成分を、第3の相が導電成分を含み、コンポジットとこれを含む複合材料とが焼成された成分を有する。
【図3】ガラス含有成分とLiイオン貯蔵成分と導電成分とを有するバッテリ電極用のさらに別の材料の領域の断面図である。
【図4】多孔質ガラス体と、この多孔質ガラス体に、またはその近傍に配置されたLiイオン貯蔵成分、ならびに別の導電成分とを有するバッテリ電極用のさらに別の材料の領域の断面図であり、前記別の導電成分は少なくとも部分的なコーティングとして実施されている。
【図5】多孔質ガラス体と、この多孔質ガラス体に、またはその近傍に配置されたLiイオン貯蔵成分、ならびに別の導電成分とを有するバッテリ電極用のさらに別の材料の領域の断面図であり、前記別の導電成分は導電性ガラスを含むか、または導電性ガラスからなる導電性コーティングとして実施されている。
【図6】多孔質ガラス体と、この多孔質ガラス体に、またはその近傍に配置されたLiイオン貯蔵成分、ならびに別の導電成分とを有するバッテリ電極用のさらに別の材料の領域の断面図であり、前記別の導電成分はLiイオン貯蔵成分を備える堆積体または積層体として実施されている。
【図7】多孔質ガラス体と、この多孔質ガラス体に、またはその近傍に配置されたLiイオン貯蔵成分、ならびに別の導電成分とを有するバッテリ電極用のさらに別の材料の領域の断面図であり、前記別の導電成分はLiイオン貯蔵成分を備える堆積体または積層体として実施されており、多孔質および/または導電性に構成されたコーティングが施されている。
【図8】ガラス含有成分とLiイオン貯蔵成分を有するバッテリ電極用のさらに別の材料の領域の断面図であり、Liイオン貯蔵成分は好ましくは、少なくとも2相のコンポジットを形成する電気化学活性を示す成分であり、このコンポジットは、第1の相がガラス含有成分を、第2の相がLiイオン貯蔵成分を、そして第3と第4の相がそれぞれ導電成分を含む3相の複合材料である。
【図9】非導電多孔質ガラスを有するバッテリ電極用のさらに別の材料の領域の断面図であり、このガラスの表面には、電子伝導性材料からなる薄い誘導層が形成されており、その表面にはリチウム貯蔵材料からなるナノ粒子が追加で析出された。
【図10】リチウム貯蔵材料からなる粒子を有するバッテリ電極用のさらに別の材料の領域の断面図であり、前記粒子は表面に電子伝導性材料の透かし層を有し、ガラス粒子によって互いに付着結合に移行されており、リチウム貯蔵能力のある細孔を備える粒子間に形成された。
【図11】リチウム貯蔵材料からなる粒子、ガラス粒子、電子伝導性材料からなる粒子、および細孔を有するバッテリ電極用のさらに別の材料の領域の断面図であり、前記粒子は互いに付着結合に移行されていた。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下の説明を理解する上での一助とすべく、まずは以下の説明で使用される幾つかの用語について立ち入ることにする。
【0062】
ガラスとは、溶融プロセスと、それに続く急冷から、またはゾル・ゲル法から、結果として生じる、構造上、少なくとも部分領域においては非晶質の、好適には無機の材料であると解釈されるものである。本明細書にいうガラスは、半結晶質であってもよいが、これは、ガラスが、非晶質のガラス中に結晶質の領域を内包すること、特にこれを完全に取り囲む場合もあることを意味しており、例えばガラスセラミックスの場合が、これに当該している。
【0063】
本発明にいうコンポジットであると看做されるものは、少なくとも二種類の区別可能な成分から成るすべての配列であり、特に、少なくとも二種類の成分の内いずれか一方または両方の接合方式、生成方式または加工方式を問わず、また、各成分の互いに対する化学結合や機械的固定方式も問わず、有形の立体配列はすべて、コンポジットであると看做される。
【0064】
したがって、本発明にいうコンポジットには、一般性に制約を加えることなく、例えば複合体、積層された、またはばら積みされた積み上げ体、または、焼結体もしくは固体、特に多孔質の固体などの、固体状の配列が含まれているとよい。
【0065】
コンポジットを含有した材料、またはコンポジットから成る材料はすべて、コンポジット材料であると看做される。
【0066】
本発明にしたがった材料は、
1.)分量が5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%である、電気化学活性を示す材料
2.)結合剤、担体、または埋封剤として使用可能な、分量が5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%である、ガラスをベースとする材料(ガラス、ガラスセラミックス)、
ならびに、オプションとして、それに加えて、
3.)0〜50体積%の細孔
4.)0〜80重量%の導電性粒子
5.)0〜25重量%の天然または合成結合剤
から成っている。
【0067】
前1.)項で言及される電気化学活性を示す材料については、
−LiCoO、LiNiO、もしくは、ほかにもAl、Mn、またはFeを含む混晶相をベースとする、陰極材料;LiFePOもしくはそのMn、V、Co、またはNiを含む類似物をベースとする、オリビン型の混晶、LiMnをベースとする、スピネル型の混晶;LiNiVOなどのバナジナイトをベースとする化合物、または、
−炭素または炭素成分を含む貯蔵材料、および/または、
−純珪素、および/または、
−例えばSi−Sn、Si−Li、Si−Sb、Si−C、Si−Sb−C、Si−Co−C、Si−AlなどのSiの合金、および/または、
−ドープしたSi(ドーパント:P、B、As、Sb、Ga、In)、および/または、
−炭化珪素、および/または、
−純錫、および/または、
−例えばSnFe、VSn、CeSn、AgSn、CuSn、Sn−Fe−C、Sn−Al−Cなどの錫の合金、および/または、
−純アンチモン、および/または、
−例えばCoSb、CuSb、AgSbなどのアンチモンの合金、および/または、
−イオンを貯蔵するガラス
が検討対象となる。
【0068】
ほかにも、Liイオンの受容能力のあるガラス、または半結晶質のガラス、ならびにガラスセラミックスを、電気活性を示す媒体として使用することができる。電気化学活性を示すガラスの例として挙げるならば、特にSnO−P系の低融点Sn含有ガラス(林、Jounal of Non−Crystalline Solids、vol.345&346(2004)、478〜483頁)、またはほかにも、SnO−B−V系ガラス(これについては:林、Eur.J.Glass Sci.Technol.、A50(2009)、273頁)を挙げられよう。
【0069】
上記で説明したように、溶融プロセスと、それに続く急冷から、またはゾル・ゲル法から、結果として生じる、構造上、少なくとも部分領域においては非晶質の、好適には無機の材料が、本明細書にいうガラスであると解釈される。その例としては、特にSnO−P系の低融点Sn含有ガラス(林、Jounal of Non−Crystalline Solids、vol.345&346(2004)、478〜483頁)、またはほかにも、SnO−B−V系ガラス(これについては:林、Eur.J.Glass Sci.Technol.、A50(2009)、273頁)を挙げられよう。ほかにも、国際特許出願公開第2008069930号に言及されているような、フルオロ燐酸塩系ガラスも使用することができる。
【0070】
2.)に列記される、ガラスをベースとする、またはガラスを含む、結合剤材料、基材、またはほかにも埋封材料は、プロセスおよび設計構造に対する強い依存性を示す。1.)項からの活性媒体がすでに存在しているのか、それとも、以下のb)項において詳しく説明するように、現場で生成されるのかに応じて、ガラスは、次のガラス群:
−純SiO
−改質SiO、例えばドープされたSiO
−石英ガラス、例えばSiO−Bガラス、非常に好ましくはLiO−BおよびSiOを含有したガラス
−燐酸塩ガラス、例えば70質量%超のPを含有した、非常に好ましくはP>80質量%である、燐酸塩ガラス−硼酸塩ガラス、例えば、硼燐珪酸塩ガラス、または、R=Mg、Caとしたとき、B−Al−RO系ガラス
−アルミン酸塩ガラス、例えば、R=Mg、Caとしたとき、Al−B−RO系ガラス
の中から、一つ一つ選択されるか、または、後ほど列記する個々の成分の混合比で、または、後ほど列記する個々の成分の内、複数の成分の混合比で、選択されるようになっている。
【0071】
上記にリストアップした中で、質量%という表記はいずれも、質量分率を示すものである。
【0072】
記載されるガラスは、多少なりとも弗素を含有しているとよい。具体例として、−国際特許出願第200869930号に言及されるように−フルオロ燐酸塩を使用することができる。
【0073】
コンポジットの実施形態および調製方法によっては、ガラスが、Liイオン伝導性、および/または電子の伝導性を示すことになる。
【0074】
コンポジットとして構成される、または存在することが好ましい材料は、3.)項に記載されるように、好適には開口細孔もしくは網状体の、ある一定の開口率もしくは空隙率を有している。開口率は、例えばゾル・ゲル・ガラスなどのガラス体から直接もたらされるようにするとよく、また網状体の空隙率は、例えばスポンジ構造または繊維状の構造により定義されたものであるとよい。
【0075】
空隙率は、0〜50体積%であることが好ましい。
【0076】
この空隙率により、電解液、ここでは特に、例えばLiPFまたはLiBOBなどの電導度塩もしくはイオン性液体を含んである、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、および/またはジエチレンカーボネート(DEC)をベースとする電解質の浸透を可能としている。
【0077】
特に4.)項で言及した複合体の内部における電子の伝導性を改善するために、コンポジットの内部には、例えばCu、Au、Ag、Alなどの金属、または、例えば元素半導体ならびに化合物半導体などの半金属が存在するとよい。同様に、黒鉛または導電性カーボンブラックを、例えばそれぞれ最大で80%ならびに最大で10%までの含有率で使用することも可能である。
【0078】
これについては意外なことにも、コンポジットが、硬質の材料によって完全に取り囲まれるのではなく、それよりもむしろ、なおも細孔が存在している場合には、コンポジットの構造安定性にとって、非常に有利であることが判明しているが、これは、そうすることによって、珪素の体積変化を緩衝する空間が、細孔によりもたらされることになるからである。
【0079】
その場合は外被材料として、ガラスが非常に好ましいことになるが、なぜならば、ガラスの組成のバリエーションは非常に豊かであるために、組成の最小限の変更により、膨張係数やガラスの空隙率などの特性をそれぞれ、所望されるコンポジットの厳密な成分組成に合わせて、狙い通りに調整することが可能となるからである。
【0080】
それに加えてさらに、ガラスは、バッテリ内部の侵襲性雰囲気に対して不活性であり、バッテリの寿命にマイナスの影響を及ぼすことはない。
【0081】
それ以外にもガラスは、傑出した温度安定性を示すが、それにより、バッテリの動作中は、その確実な動作のために、この上なくプラスの影響を与えられることになる。
【0082】
本発明にしたがった、電極−特に陽極−へのガラスの組み込みには、セルの性能に関して、大きな長所が随伴している。本発明にしたがった組み合わせ方式により、次の特性を利用できるようになる。
a)無機であるという特徴により、ガラスをベースとする/含む溶液は、ポリマー、特に有機ポリマーを含有したこれまでの構成よりも、温度安定性に優れている。それにより、セルの安全性が向上され、ひいてはシステム全体の安全性が向上される。ポリマーは、場合により存在する結合剤が占める割合は別にして、なおも存在するとしても、極僅かな量にしか過ぎない。
b)ガラスは、そのマトリックスとしての作用に関して、可変性を示す。例えばガラスは、Siが完全に取り囲まれている限りは、硬質のマトリックスとして作用し、これに取り囲まれている活性を示す貯蔵粒子の体積変化に、反作用を及ぼすことができる。
c)ガラスには、適切な成形方式(例えば焼結、拡散浸透)により、高い比表面積を備えることができる。ガラスは、珪素の析出または化学的な表面改質のための、担体もしくは出発材料として、利用することができる。
d)ガラスは、狙い通りの半結晶化が可能である。その際には、それぞれの晶相もしくはガラス相のイオン伝導率を、それぞれの相の比率により、狙い通りに調整することができる。
【0083】
したがってガラスは、本発明においては、結合剤、担体、または充填媒体として作用するようになっている。
【0084】
模索される長所を達成するためには、増量剤として使用されるだけでは不十分である。それよりもむしろ、それぞれのガラス成分またはガラスが占める部分によって、互いにつながり合った網状組織を構成して、これに、例えば導電性、機械的な、少なくとも部分的なシース、ならびに担持機能および保持機能などのような、さらに別の機能性を持たせた上で、充填材料または埋封材料として使用した方が、個々のガラス粒子の単なる集積よりも、はるかに有利である。
【0085】
模索される長所を達成するためには、増量剤として使用されるだけでは不十分である。活性粒子に、十分な機械的なホールド性を付与するためには、むしろ、それぞれのガラス成分またはガラスが占める部分が、互いにつながり合って網状組織を構成することが必要である。部分的なシース、ならびに担持機能および保持機能といった機能性を持たせて、充填材料または埋封材料として使用される場合は、個々のガラス粒子の単なる集積よりも、大幅に有利である。幾つかの実施形態においては、導電性(電子および/またはイオン伝導性)が必要とされている。
【0086】
上記で説明したように、活性媒体ならびに伝導性を示す追加成分は、本発明にしたがって、次の三通りの方法により、ガラス・マトリックスと実質的に互いに「接合」される、または調製されるようにするとよい:
a)マトリックスと既存活性粒子との化合
b)マトリックスからの活性成分の現場調製
c)ガラス状担持マトリックス表面での活性成分の現場調製
【0087】
a)項で言及したマトリックスと既存活性粒子との化合に際しては、活性成分が、次に示すさまざまな一連のプロセスにより、ガラスによって完全に、または部分的に被覆されるようにするとよい:
−活性材料を、ゾル・ゲル・ガラスから成るスラリーまたはスリップ中に混ぜ入れる。続いて温度を上昇して、好適には最低200℃の温度で乾燥させ、有機または無機の結合剤を放出させる。
−活性材料を、アルカリ珪酸塩、例えばメタ珪酸塩から成るスラリー中に混ぜ入れる。続いて温度を上昇して、好適には最低200℃の温度で乾燥させ、有機または無機の結合剤を放出させる。
【0088】
乾燥前には、除電体、特にCu除電体が、上述のスラリーに通して引き抜かれるようにするとよく、それによりこの除電体にはコーティングが施されることになる。
【0089】
不活性雰囲気または還元雰囲気中で次の方法を実行することにより、除電体の酸化または腐食が予防される。
−活性材料を、低融点のガラスまたはガラスセラミックス中に混ぜ入れる。その際にSi粒子の空気に触れた部分は、薬品の侵襲、特に酸化物の侵襲からSi粒子を保護することができるSiO皮膜により占有される。
−活性材料を、上記に記載のガラスと焼結する。
【0090】
上記a)項に記載される実施形態に関しては、マトリックスがイオン伝導性を示すと有利である。
【0091】
そのイオン伝導率は、室温で少なくとも10−5S/cm、好ましくは10−4S/cm、非常に好ましくは10−3S/cmである。
【0092】
活性材料に追加して、さらに別の成分、特に電子の伝導性を示す粒子が添加されるとよい。例えばCu粒子が装入されるとよいが、これは、活性媒体の粒子表面にガラスと交互に配列される。それにより、電子伝導性も、またイオン伝導性も示す表面層が生成されることになる。
【0093】
b)項で要求されるような活性成分は、
−自発的な分離
−温度により駆動される分離により、または、
−ガラスセラミックス・プロセス
により、ガラスの内部または表面上に生成されるとよい。
【0094】
ここでも、伝導性を示す物質を混合する、被覆する、または、伝導性を示す物質により粒子を占めるなどの、別の処置により、十分な伝導性が、別途、またはさらに追加して、もたらされない場合は、後に残されているマトリックスが、イオン伝導性を示すと有利であるかもしれない。
【0095】
マトリックスとして有利に使用することができる伝導性ガラスの可能性のある例は、次のとおりである。
−珪酸塩マトリックスから析出したSbガラス
−Li−バナジナイト−燐酸塩ガラスセラミックス
−フラッシュガラス、特に半導体を含有したスティープ・エッジフィルタ・ガラス
−非常に好ましくは、特にスピノーダル分解が生じる部分系の、LiO−B−SiO系ガラス、およびNaO−B−SiO系ガラス
−特にスピノーダル分解が生じる部分系の、BaO−SiO系ガラスおよびBaO−B−SiO系ガラス
−LiO−P系ガラス、もしくはLiO−B−P系ガラス、もしくはLiO−P−SiO系ガラス
−Si金属の熱膨張係数に対して実質的に適合化されたガラス・ソルダー
【0096】
c)項については、その代わりに、ガラスと、バッテリ陽極に適用するための活性媒体とから成るコンポジットを、次に示す表面化学反応、または表面付近での化学反応により作製することもできる:
−多孔質石英ガラスについては、分離した硼珪酸塩ガラスも含めて、強い還元性ガスを表面に沿って通過させ、このガスにより表面の一部をSiに還元する。
−エッチング法:珪酸塩ガラス粉末に、例えばAlCl溶液を含浸させて調質する。その結果、Si4+の還元によりSi粒子が生成される。
−ガラス粉末/ガラスセラミックス粉末(「GK」:Glaskeramik)を、固形または液状のSi化合物、特にシランと混合し、続いて調質する。Si化合物の分解により、ガラス/ガラスセラミックス粒子に取り囲まれたSi粒子が得られるが、他の反応性生物は気状であり、漏出する、または吸引される。同じ調質ステップまたは次の調質ステップ(温度を好適には>200℃に上昇して)において、先に浮動していたガラス/GK粒子を、オプションにより、稠密または部分的に焼結する。Si化合物については、例えば、いずれも室温で液状であるトリシラン(Si)またはテトラシラン(Si10)を使用することができる。あるいは、カルボニル、アセチルアセトネート、オキサレート、またはその他の適切な珪素化合物を導入することができる。適正な工程管理を遵守しなければならない−それによりシランを、分解の目的で、気密状態でSiおよびHに保つことができる。気状のSi化合物(例えばモノシランまたはジシラン)も使用可能であるが、その場合はこれらを、分解の目的で、ガラス粒子/ガラスセラミックス粒子から成る圧粉体に通して導かなければならない。
−多孔質ガラス/ガラスセラミックス体の、好適には連続細孔または網状細孔に、分解可能な固形、液状、または気状のSi化合物を、Si化合物が固形または液状である場合は、溶液/懸濁液を利用し、そうでない場合は細孔に通すことにより、浸透させ、引き続いて、または浸透の間に、熱分解し、その後は時と場合に応じて稠密に焼結する。
−金属性のAl粒子を低融点のガラス融液中に挿入して、SiOを還元してAlを酸化する。
【0097】
概して言えば、バッテリ電極用の材料の調製方法においては、ガラスを含有した成分と、電気化学活性を示すと好適であるLiイオンを貯蔵する成分とが使用されるようになっている。
【0098】
ガラスを含有した成分およびLiイオンを貯蔵する成分は、接合されてコンポジットを構成することが好ましい。
【0099】
以下では、バッテリ電極用の材料を調製するための、好ましい実施例について、いくつかの具体例を挙げながら詳しく説明する。
【実施例】
【0100】
実施例1
多孔質ガラスへのSiの析出
実施例1は、例えばVycor(登録商標)法により作製されたガラスである多孔質ガラスの作製、ならびに発生した多孔質構造での引き続くSiの析出に関するものである。
【0101】
多数のガラスには偏折の傾向があり、発生したミクロ相は水、酸および基に対して種々異なる耐性を有し、これにより極端な場合には1つの相が完全に除去されるという状況が30年代前半頃にVYCOR(登録商標)工程に生じた。
【0102】
この工程の利点は、低温での石英ガラスの形成を含む。通例、石英ガラスを作製するためには約2000℃の温度が必要であるが、VYCOR(登録商標)工程はこの温度を約1000〜1300℃に低下させることができる。
【0103】
VYCOR(登録商標)工程は、以下のステップにより記述することができるが、この方法は単に例として挙げられている。
・基礎ガラス(好ましくはVYCOR(登録商標)ガラスの範囲にある3元システムMO−B−SiOの組成物を備える)の溶解、
・基礎ガラスを圧縮、引き伸ばし、吹き付け、熱処理(時間および温度に依存して)により成形、
・成形体の表面を(例えばフッ酸、苛性ソーダ液により、または機械的にも)酸腐食、
・好ましくはアルコール、水、または希薄ソーダ溶液により実施することのできる洗浄工程、
・酸または無機塩溶液による、好ましくは約90〜100℃の温度での抽出工程、
・多孔質VYCOR(登録商標)ガラスに至る洗浄工程、乾燥、ならびに
・好ましくは1000〜1300℃で実施される焼成工程、そして石英ガラスが得られる。
【0104】
最後のステップで、多孔質ガラスは約30%までの体積収縮の下で、透明でほぼ純粋なシリカガラスに融合する。
【0105】
VYCOR(登録商標)基礎ガラスでは、ナトリウムイオンをリチウムまたはカリウムのような他のイオンにより置換することができる。しかしこのとき理想的なVYCOR(登録商標)基礎ガラス組成も変化する。なぜならアルカリ濃度が異なると、2元LiO−B−およびKO−B−ガラスシステムには硼酸変態が、2元NaO−B−ガラスシステムの場合とは異なり存在するからである。VYCOR(登録商標)ガラス溶解物にはまた、少量の酸化アルミニウム(Al)を加えることもでき、これにより相分離工程および浸出工程をより良好に調整することができる。この場合、VYCOR(登録商標)石英ガラス中に、ある程度のAl残留含量が確定される。
【0106】
第1の実施例では、70重量%SiO、23重量%B、7重量%NaOからなるガラスが溶解され、続いて例えば600℃の温度での数時間の熱処理によりスピノーダル分解された。
【0107】
このようにして、難溶性のSiO−濃厚相と、比較的容易に可溶性のNaO−B−含有相とからなる浸透構造が発生する。後者は酸中での処理によって溶出され、これによりもっぱらSiO含有ガラスからなる多孔質網状組織が得られる。
【0108】
このガラスには、Si粒子を作製するためにシラン化合物が導かれる。
【0109】
ここでシラン化合物は、SiHのように気体で良く、例えばTEOSのように液体でも良い。
【0110】
浸透をサポートするために多孔質ガラスを、負圧または真空にされた反応室に貯蔵することができる。
【0111】
引き続き反応ガスを、不活性または還元性の雰囲気下で導くことにより、シラン化合物が珪素に変換される。
【0112】
本発明の実現は特定のコーティング方法に限定されるものではなく、むしろ珪素層を作製するための、公知のほとんどすべての方法を適用することができ、したがって例えば薄膜太陽電池産業で使用されるような例えばPECVD法(プラスマエンハンスト蒸着)も適用することができる。
【0113】
実施例2
Si高含有焼結体の作製
Si高含有の焼結体を作製するために、70〜95重量%のSi粉末が30〜5重量%のソルダーガラスと混合される。
【0114】
ソルダーガラスとしては、燐酸塩、フルオロ燐酸塩、硼酸塩、ZnO−B−SiOまたはPbO−SiO−Al−Bのガラスファミリーからのガラスが適するが、基本的に他のソルダーガラスも適する。
【0115】
粉体混合物はムーランで微細に混合され、圧縮され、引き続きガラス流がTgから約TEWの範囲の処理温度で、不活性化雰囲気下で焼成される。TEWはいわゆる軟化温度、すなわちガラスの粘度が値logη=7.6dPasに相当する温度である。
【0116】
オプションとして、例えば電子伝導性粒子のような別の固体構成要素をセラミックスに取り入れることができる。この場合も、50重量%までの多孔質を発生することができる。
【0117】
実施例3
Siが堆積された多孔質ゾル・ゲル・ガラス
活性材料ならびに場合により、例えば前に説明したさらなる粒子状導電材料が、ゾル・ゲル・ガラスからなるスラリーまたはスリップに導入される。
【0118】
多孔質ゾル・ゲル・ガラスの作製については、例えば使用可能なゾル・ゲル・ガラスのためのドイツ特許第102005020168号も参照されたい。このゾル・ゲル・ガラスには活性材料、ならびに場合によりさらなる粒子状導電材料が埋め込まれる。ドイツ特許第102005020168号に記載された多孔質ガラスは、そこに記載されたつや消し層に適するだけでなく、本発明の目的のための多孔質基礎ガラスとして用いることもできる。
【0119】
多孔質を規定どおりに高めるために、天然または人工の発泡剤または線維フリースをスラリーにより被覆することができ、このスラリーは後での乾燥の際にまず、溶剤の漏出により固有の負荷能力を発揮し、乾燥温度がさらに上昇すると発泡剤の酸化およびガス状でのその漏出を可能にする。
【0120】
次にさらに温度が上昇すると、有機物/水の乾燥および駆逐がTg以上の温度で焼成工程に移行し、この焼成工程は残留する構造物に格別の高い安定度を付与する。
【0121】
この多孔質で焼却された、両面が泡状または繊維状の基本骨格は、様々なやり方で使用することができる。
【0122】
1.電気化学活性を示す材料からなる粒子状混合物により後で被覆され、場合により電気化学的に導電性に(電解)コーティングされるゾル・ゲル・ガラスの純粋な支持骨格として。
【0123】
2.電気化学活性を示す材料と導電性材料からなる粒子状混合物により後で密に被覆されるゾル・ゲル・ガラスの純粋な支持骨格として。
【0124】
3.好ましくは粒子状の混合物または電気化学活性を示す材料からなる構成要素がゾル・ゲル・ガラスの凝固の前に取り込まれ、後で場合により導体により電解被覆されるゾル・ゲル・ガラスからなる支持骨格として。
【0125】
4.好ましくは粒子状の混合物または電気化学活性を示す材料からなる構成要素、ならびに導電材料がゾル・ゲル・ガラスの凝固の前に取り込まれるゾル・ゲル・ガラスからなる支持骨格として。
【0126】
電気化学活性を示す材料および導電材料の両者の酸化または腐食、または成分の酸化または腐食には、不活性または反応性の雰囲気を使用することにより対抗作用することができる。
【0127】
さらに、場合により酸化された構成要素の還元を、還元された雰囲気中での温度を高めた還元ステップで後で実施することもできる。
【0128】
これにより準備された構造物は、薄く偏平のまたはウェッブ状の基本骨格を有し、この基本骨格は泡または線維フリースを焼却することにより、電気化学活性を示す材料による被覆および/または導電材料による被覆のために非常に大きな表面を有する。薄い壁またはウェッブによって、基本骨格またはマトリックスの優れた機械的柔軟性が提供され、この基本骨格は電気化学活性を示す材料が体積変化すると、機械的力または応力を緩和するようになる。
【0129】
同時に基本骨格の開放構造によって、バッテリの電解液中のイオン輸送が支援される。
【0130】
実施例4
Si高含有アノード層の作製
Si高含有のアノード層(Si>90体積%)を作製するために、実施例2または3と同様に処置され、焼成後に得られた焼結体が製粉され、得られたセラミックス粉末が引き続き、例えばPVDF、ポリフッ化ビニリデンのような結合剤ならびに溶剤、および好ましくは銅または黒鉛のような導電材料と混合される。
【0131】
得られたコーティングペーストが引き続き、ドクターブレード塗布、噴霧またはフローコーティングのような適切な方法によって、例えば銅または少なくとも導電材料からなる誘導フィルムに塗布され、乾燥により定着される。
【0132】
このようにして、充電または放電の際に発生する体積変化に対して優れた安定性を備えるSi高含有のアノード層が得られる。
【0133】
以下に例として、好ましくは前記のように作製されたさらなる実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0134】
図1は、ガラス含有成分2とLiイオン貯蔵成分3を備えるリチウムイオン二次バッテリ用の、当業者にはそれ自体公知のバッテリ電極のための第1の材料1の領域の断面図を示す。
【0135】
Liイオン貯蔵成分3は、好ましくは前記のイオン伝導性ガラスの1つを含むか、またはこれらのガラスの1つまたは複数からなるガラス2により完全に包囲されている。
【0136】
2つの成分2、3は少なくとも2相のコンポジットを形成し、このコンポジットは図1に示した実施形態では3相の複合材料である。なぜなら導電材料4がともにガラス2に埋め込まれているからである。
【0137】
導電材料4は、導電性を改善し、電流に対する誘導機能を用意するために、Cu粒子のような金属、または例えば黒鉛の形の炭素も含んで良い。
【0138】
図1に示された実施形態では、Liイオン貯蔵成分3を含む第2の相と、導電成分4を含む第3の相が、ガラス含有成分を備える第1の相により完全に包囲されている。
【0139】
一般性を制限することなく、導電材料4は、炭素の場合と同じように電気化学活性を示すことができ、この材料1のリチウム貯蔵能力を向上させる。
【0140】
導電ガラスの導電能力がすでに十分な実施形態では、追加での導電材料の使用を省略することができる。これにより実質的に2相のみのコンポジットが準備される。
【0141】
図2から、ガラス含有成分6とLiイオン貯蔵成分7を有するバッテリ電極用の別の材料5の領域の断面が見て取れる。
【0142】
前に説明した第1の実施形態の場合にように、第1の相がガラス含有成分6を、第2の相がLiイオン貯蔵成分7を、第3の相が導電成分8を含む多相の複合材料が形成される。
【0143】
コンポジットおよびこれを含む複合材料は、前記の焼成に使用された方法により焼成されたセラミックス成分を有する。
【0144】
図1に示した実施形態と同じように、導電ガラスの導電能力がすでに十分であれば、追加での導電材料の使用を省略することができる。これにより同様に、実質的に2相のみのコンポジットが準備される。
【0145】
図3は、ガラス含有成分10とLiイオン貯蔵成分11、ならびに導電成分12を有するバッテリ電極用のさらに別の材料9の領域の断面図である。
【0146】
この粒子材料は、電極用の除電体または電極自体に取り付けることができる。さらにこの実施形態は、好ましくはバラ材として焼成のための前駆体を形成することができ、または後の図面に示された実施形態での使用に用いることができる。
【0147】
その代わりに、除電体または電極への電気接触が十分である限り、この実施形態でも導電材料を省略することができる。
【0148】
図4には、多孔質ガラス体14と、この多孔質ガラス体に、またはその近傍に配置されたLiイオン貯蔵成分15ならびに別の導電成分16とを有するバッテリ電極用のさらに別の材料13の領域の断面図が示されている。
【0149】
導電成分16は少なくとも部分的なコーティングとして実施されており、このコーティングは好ましくは電解的に、または気相析出、とりわけCVD法のような代案のコーティング法により被覆されている。
【0150】
部分的なコーティングは、例えば蒸気相から、Liイオン貯蔵成分15の粒子をそれぞれ遮蔽することにより配向して析出することにより得ることができる。
【0151】
部分的なコーティングはまた、全面のコーティングから後での研磨処置により得ることもできる。全面に析出された層は、とりわけ高速の流動流体での、所期のとおりの酸侵襲またはベース侵襲により得ることができ、その作用は粒子の先端または隆起部でより強力である。
【0152】
この実施形態の利点は、Liイオン貯蔵成分15の体積変化に対する抵抗が小さいことである。
【0153】
図5は、多孔質ガラス体18と、この多孔質ガラス体に、またはその近傍に配置されたLiイオン貯蔵成分19ならびに別の導電成分20とを有するバッテリ電極用のさらに別の材料17の領域の断面図であり、前記別の導電成分20は伝導性の、とりわけイオン伝導性のコーティングとして実施されている。
【0154】
伝導性コーティングは、前に説明した導電性ガラスを含むか、または完全にこの導電性ガラスからなる。
【0155】
この実施形態の利点は、導電性ガラスがポケット状に構成されていることであり、このポケット状の構成がLiイオン貯蔵成分19の体積変化、すなわち機械的抵抗に対抗し、それでも、導電性ガラスが数nmの範囲、とりわけ10〜100nm、または最大1〜10μmの範囲の非常に薄い層により準備される場合であっても十分な広がりを許容する。
【0156】
さらにこの層に多数のサイクルの後にひびが入ったとしても、ポケット内の貯蔵能力のある材料の損失を、従来技術から公知の従来の実施形態の場合よりも少なくすることができる。
【0157】
図6は、多孔質ガラス体22を有するバッテリ電極用さらに別の材料21の領域の断面図である。
【0158】
多孔質ガラス体22は、図4、5および7に示した実施形態の場合と同じように前記の方法の1つにより、例えばVYCOR(登録商標)ガラスとしてゾル・ゲル・法で、または固体として存在するガラスの表面処理により得ることができる。
【0159】
多孔質ガラス体22には、またはその近傍にはLiイオン貯蔵成分23ならびにさらなる導電成分24が配置されており、これらはそれぞれ、すでに前に詳細に説明した適切な物質からなる。
【0160】
成分23と24は堆積体または層として実施されており、実質的に多孔質ガラス体22の表面内に取り込まれている。
【0161】
この堆積体の機械的固定は、例えば焼成過程により、またはセパレータ材料のような不活性材料の材料層を用いた被覆により行うことができる。
【0162】
機械的固定の別の手段が図7に示されており、この図は層25だけ拡張された断面を示し、それ以外は図6に示したものに対応する。
【0163】
コーティング25は適当な塗布技術またはコーティング技術により多孔質に、したがってイオン透過性に形成することができる。
【0164】
層25は例えば格子状の金属からなり、この金属は機械的保持機能の他に電気誘電体として作用する。その代わりにコーティング25は、前に説明したように導電性ガラスを含むことができる。
【0165】
コーティングの施されたこの実施形態は、図6に示された実施形態と同じように、それぞれのLiイオン貯蔵成分がほぼその最大体積に達している状態について示す。
【0166】
必要であれば、それぞれの粒子間に追加の保持を準備することができる。この追加の保持は、粒子を図3に示したように別のガラス要素により被覆し、このガラス要素を互いに接触させ、好ましくは一貫して接触させ、とりわけ少なくとも1つの隣接体に機械的に直接接触するようにし、それぞれの接触点で焼成過程が行われることによって準備される。
【0167】
ここで次の隣接体は、それぞれガラス含有成分、リチウムイオン貯蔵成分、または導電材料も含むことができる。
【0168】
図8は、バッテリ電極用のさらに別の材料26の領域の断面を示し、
この材料は、リチウムが完全に積み込まれた、リチウム貯蔵材料28からなる粒子、同じ材料の非化学量論的なリチウムまたは化学量論以下のリチウムを含む粒子29、ならびにこれにより発生した細孔30を含むガラスマトリックス27からなる。その他この材料にはさらに、電子伝導性の粒子31と32が含まれている。
【0169】
図9には、バッテリ電極用のさらに別の材料33の領域の断面が示されており、
この材料は非導電性ガラス34からなり、この非導電性ガラスの表面は電子伝導性層35により覆われ、この電子伝導性層の上にはリチウム貯蔵材料36のナノ粒子が支持されている。例えばゾル・ゲル工程により、または熱的偏折と引き続く溶出により作製することのできるガラスは、細孔37とともに多孔質の浸透構造を形成し、これにより電解材料の浸透を可能にする。
【0170】
図10には、バッテリ電極用のさらに別の材料38の領域の断面図が示されており、この材料は、その表面に電子伝導性材料40の透かし層を有するリチウム貯蔵粒子39によって形成される。粒子はガラス粒子41によって互いに結合されており、これにより細孔42を含み、機械的に良好な結合を備えたコンポジットが形成される。
【0171】
最後に図11には、バッテリ電極用のさらに別の材料43の領域の断面図が示されており、この材料は、リチウム貯蔵粒子44、結合のためのガラス粒子45、ならびに電子伝導性材料46からなる粒子によって形成される。ガラス粒子により、多数の細孔47があっても機械的に高強度の結合が可能になる。
【0172】
一般的に、電気化学活性を示す成分または電気化学活性を示す粒子は、その埋め込みの前に、またはガラス含有成分と、あるいはLiが積み込まれた粒子と接触される前に、その完全な飽和状態まで、または部分的にだけLiにより満たしておくことができる。
【0173】
これにより体積変化の度合いと、ガラスのそれぞれの柔軟性が、ガラス体の体積に収容される際にも焼成の際にも、規定どおりに調整され、このようにしてサイクル耐性を格段に高めることができる。なぜなら、ガラスの損傷を回避することができ、あるいは少なくとも格段に緩和することができるからである。
【0174】
例としてこの構造が、図8では参照符合28、29および30の付された粒子と、ガラス内のそれらの空洞部で識別することができる。
【0175】
Liによる積込みが増大すると粒子は膨張し、−粒子29と30参照−まずガラス内に規定された空洞に、これが完全に満たされるまで広がる。粒子28参照。Liがさらに積み込まれると、ガラスが弾性に撓み、粒子にさらなる空間を提供する。
【0176】
粒子がLi放電されると、粒子は再び収縮し、ガラスが弾性に収縮するので、まず自由空洞が発生しなくなる。
【0177】
さらに放電が進むと、粒子はさらに収縮し、これにより自由空洞が生じるが、しかし通例、この自由空洞内にはガラス、とりわけイオン伝導性のガラスへの十分な接触が存在しており、さらなる放電および充電過程は妨げられない。
【0178】
しかしここで、粒子の大きさはナノメータ直径に制限されるものではなく、使用されるガラスの弾性に応じて数10μmから約100μmの直径も十分に使用できる。
【0179】
好ましくはこの粒子の直径は約0.2〜10μmである。
【0180】
ガラスの有利な使用によってさらに、Liの積込みをまず不活性の雰囲気または反応性の雰囲気で実施し、その後に電気化学活性を示す粒子を、前に説明したようにガラスにより包囲またはカプセル化することができる。
【0181】
積み込まれた粒子の埋め込みは例えば真空中で蒸気ガラスにより行うことができ、Liが積み込まれた反応性の粒子が化学的にほぼ不活性となり、その後で別のガラスに、例えばその体積に確実に埋め込むことができる。
【0182】
この種の蒸着法は例えば、半導体素子のためのドイツ特許出願公開公報第10222609号、ならびに表面構造化のためのドイツ特許出願公開第10222958号に記載されている。
【0183】
蒸着は、対応する蒸着区間の下で一貫して、またはバッチごとに、例えば対応する槽が設けられ、好ましくは蒸気ガラスが付着しない、またはほとんど付着しない材料からなる支持体で実施することができる。このような材料はその他に、例えばテフロン(登録商標)である。
【0184】
このようにしてバラ材として存在する、擬似的に不活性の粒子は、その毒性も格段に減少されているので、その後の取扱いを格段に簡単にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ電極用の材料であって、
ガラスを含有した成分、および
好適には電気化学活性を示す成分である、Liイオンを貯蔵する成分
を含んでいる、バッテリ電極用の材料。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ電極用の材料において、少なくとも2相のコンポジット、特に、第1の相がガラスを含有した成分を、第2の相がLiイオンを貯蔵する成分を含有している、2相または多相の複合材料を特徴とする、バッテリ電極用の材料。
【請求項3】
前記ガラスを含んだ成分が、ガラスまたはガラスセラミックスである、請求項1または2に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項4】
前記ガラスが、前記第2の相のためのマトリックス要素として、特に、結合剤、担体、充填剤として、および/または、ほかにも埋封材料として作用する、請求項1、2、または3に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項5】
少なくともそれぞれのガラスコンポーネントが、互いに接触した、好適には全体的に一貫して接触した状態にある、特に、少なくとも一つの最も近い位置にある隣接成分と直接機械的に接触した状態にある、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項6】
前記各ガラス成分により、一つの多孔質成形体が形成される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項7】
前記ガラスが、珪酸塩、燐酸塩、硼酸塩、アルミン酸塩から成る群の中から選ばれている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項8】
前記ガラスに弗素が含有される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項9】
前記ガラスが、10−5S/cmを上回るイオン伝導率を有している、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項10】
バッテリ電極用の材料の有機物量が、5重量%未満である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のバッテリ陰極用の材料であって、
前記電気化学活性を示す材料が、
−LiNiO、LiCoO、および混晶相(ほかにもAl、Mn、またはFeを含む)、
−LiMn
−LiFePo、LiVPO、LiMnPo、LiCoPO、LiNiPO、および混晶相、
−LiNiVO
から成る群の中から選ばれている、バッテリ陰極用の材料。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のバッテリ電極、特に陽極用の材料であって、前記電気化学活性を示す材料が、C、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn、Liから成る群の中から選ばれている、バッテリ電極、特に陽極用の材料。
【請求項13】
活性材料が、Si、またはSn、またはそれらの合金を含む群の中から選ばれている、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項14】
前記コンポジットにさらに、孔径が最大で10μmまでの細孔が含まれている、請求項1乃至13のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項15】
前記コンポジットにさらに、黒鉛またはカーボンブラックとしての炭素、金属、合金、または半金属などの電子伝導性粒子が含まれている、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項16】
前記活性材料が、不規則に微細分散された形態で、または、これに指向性を持たせた形態で、例えば楕円体、円柱体、角柱体などの定方位粒子として、ガラス中に分散されている、請求項1乃至15のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項17】
前記電気化学活性を示す材料から成る粒子が、>100nm、好ましくは>200nmの最小サイズを有している、請求項1乃至16のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項18】
前記電気化学活性を示す材料が、ガラスの表面に析出されている、または、ガラスが前記電気化学活性を示す材料の表面に析出されている、請求項1乃至17のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項19】
前記電気化学活性を示す材料が、ガラス粉末中で焼結されている、請求項1乃至18のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項20】
前記電気化学活性を示す材料の表面が、少なくとも部分的に、CuまたはCなどの導電性材料により包み込まれており、前記導電性材料が、好適には電着されている、請求項1乃至19のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項21】
前記電気化学活性を示す材料が、ガラス中に含有されるSiOの反応、好適には化学反応から生成されている、請求項1乃至20のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項22】
バッテリ電極用の材料、特に請求項1乃至21の少なくともいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料であって、
5〜95重量%、好ましくは10〜90%の電気化学活性を示す材料、および/または、
好適には前記電気化学活性を示す材料のための結合剤、担体、または埋封剤としての材料を含んだ、5〜95重量%、好ましくは10〜90%のガラスまたはガラスセラミックス
を含んでいる、バッテリ電極用の材料。
【請求項23】
バッテリ電極用の材料、特に請求項1乃至22のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料であって、
0〜50体積%の細孔、および/または、
0〜80重量%の導電性粒子、および/または、
0〜25重量%の天然または合成結合剤
を含んでいる、バッテリ電極用の材料。
【請求項24】
前記電気化学活性を示す成分、または電気化学活性を示す粒子に、前記成分または粒子を埋め込んだり、ガラスを含有した成分または粒子と接触させたりする前に、Liが装入されている、請求項1乃至23のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項25】
前記電気化学活性を示す成分または粒子に、前記成分または粒子を埋め込んだり、ガラスを含有した成分または粒子と接触させたりする前に、Liが部分的に装入されている、請求項1乃至24のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料。
【請求項26】
バッテリ用の電極、特に、請求項1乃至25のいずれか1項に記載の材料から成る、Liイオン二次バッテリ用の電極。
【請求項27】
バッテリ、特に、請求項1乃至25のいずれか1項に記載の材料から成る、Liイオン二次バッテリ。
【請求項28】
バッテリ、特に、請求項26に記載の電極を有している、Liイオン二次バッテリ。
【請求項29】
バッテリ電極用の材料、特に請求項1乃至22のいずれか1項に記載のバッテリ電極用の材料の調製方法であって、ガラスを含有した成分と、好適には電気化学活性を示す成分である、Liイオンを貯蔵する成分とを使用する、バッテリ電極用の材料の調製方法。
【請求項30】
前記ガラスを含有した成分と、好適には電気化学活性を示す成分である、前記Liイオンを貯蔵する成分とが接合されてコンポジットを構成する、請求項29に記載のバッテリ電極用の材料の調製方法。
【請求項31】
前記電気化学活性を示す成分または粒子に、前記成分または粒子を埋め込んだり、ガラスを含有した成分または粒子と接触させたりする前に、Liが装入される、請求項29または30に記載のバッテリ電極用の材料の調製方法。
【請求項32】
前記電気化学活性を示す成分または粒子に、前記成分または粒子を埋め込んだり、ガラスを含有した成分または粒子と接触させたりする前に、Liが部分的に装入される、請求項29、30、または31に記載のバッテリ電極用の材料の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−119263(P2011−119263A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271554(P2010−271554)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】