説明

バラスト水処理装置

【課題】本発明は、バラスト水処理装置の小型化を図ることを目的とするものである。
【解決手段】この目的を達成するために本発明のバラスト水処理装置12は、バラスト水流入口13および、バラスト水流出口14を有するバラスト水処理容器15と、このバラスト水処理容器15内に設けた紫外線照射手段の一例である紫外線ランプ16と光触媒体とを備え、光触媒体は板状基部18と、板状基部18の表面を被う光触媒部19を有し、板状基部18には、少なくとも1つの遊端を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の安定航行を行うために、船舶の停泊地において、バラスト水が適宜取り込まれ、また排出されるようになっている。しかし、バラスト水を取り込む停泊地と、それを排出させる停泊地とは異なることが多いので、生態系の破壊が問題となっている。
【0003】
すなわち、バラスト水を取り込んだ停泊地に生息していた水生生物や細菌類等の生物種が、その環境とは異なる停泊地において排出されると、その排出地における生物種の生態系を破壊させることがあるのである。
【0004】
そこで、バラスト水を処理することで、上述した生態系の破壊を防止しようとするバラスト水処理装置が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/093811号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記バラスト水処理装置は、バラスト水流入口、およびバラスト水流出口を有するバラスト水処理容器と、このバラスト水処理容器内にオゾン水を流入させるオゾン注入手段とを備えた構成となっている。
【0007】
すなわち、船舶のシーチェストからくみ上げたバラスト水に、バラスト水処理容器内において、オゾン水を混入させ、オゾンの強酸化作用により、前記水生生物や細菌類等の生物種を殺滅させるようにしているのである。
【0008】
しかしながら、このようにオゾンを利用するものは、オゾン発生手段や、オゾンによりバラスト水の配管が腐食するのを防止するためのオゾン脱気手段が必要となり、その結果としてバラスト水処理装置が大型化しやすくなる。
【0009】
そこで、本発明はバラスト水処理装置の小型化を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するために本発明は、バラスト水流入口および、バラスト水流出口を有するバラスト水処理容器と、このバラスト水処理容器内に設けた紫外線照射手段と光触媒体とを備え、前記光触媒体は板状基部と、前記板状基部の表面を被う光触媒部を有し、前記光触媒体は、前記バラスト水処理容器内に着脱自在に装着されるとともに、少なくとも1つの遊端を有する構成とし、これにより、所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、バラスト水流入口および、バラスト水流出口を有するバラスト水処理容器と、このバラスト水処理容器内に設けた紫外線照射手段と光触媒体とを備え、前記光触媒体は板状基部と、前記板状基部の表面を被う光触媒部を有し、前記光触媒体は、前記バラスト水処理容器内に着脱自在に装着されるとともに、少なくとも1つの遊端を有する構成としたものであるので、その小型化が図れるものとなる。
【0012】
すなわち、本発明においては、バラスト水処理容器内に設けた紫外線照射手段からの紫外線と、この紫外線を受けた光触媒体により発生した、活性化された水酸ラジカルとにより、水生生物や細菌類等の生物種を殺滅させるものであるので、バラスト水処理容器外に、従来のようなオゾン発生手段や、オゾン脱気手段を設ける必要がなく、その結果として小型化が図れるものとなる。
【0013】
また、本発明において前記光触媒体は、前記バラスト水処理容器内に着脱自在に装着されるとともに、少なくとも1つの遊端を有する構成としたものであるので、遊端が水流で撓み、その結果として水流も撹拌され、水流中に含まれる水生生物や細菌類等の生物種との接触確率が高くなる。
【0014】
このため、光触媒体による水生生物や細菌類等の生物種を殺滅させる効果を高めることができる。
【0015】
また、本発明において前記光触媒体は、前記バラスト水処理容器内に着脱自在に装着されるとともに、少なくとも1つの遊端を有する構成としたものであるので、遊端が水流で撓み、その結果として光触媒体表面に照射される紫外線強度が高くなる機会が増え、光触媒の活性が向上する。
【0016】
このため、光触媒体による水生生物や細菌類等の生物種を殺滅させる効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるバラスト水処理装置を用いた船舶を示す斜視図
【図2】同要部を示す図
【図3】同バラスト水処理装置の構成を示す断面図
【図4】同バラスト水処理装置の要部を示す拡大断面図
【図5】同バラスト水処理装置の要部を示す平面断面図
【図6】同バラスト水処理装置の要部を示す平面断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1の1は、港2に係留している船舶を示し、この船舶1の喫水線3の下方にはシーチェスト4が設けられている。
【0020】
図2は図1における船舶1のバラスト水の取り込み、排出経路を示している。すなわち、船舶1内にバラスト水を取り込む場合には、まず船舶1内の切換弁5をシーチェスト4側に切換え、切換弁7を流入口8側に切換え、次に船舶1内のポンプ9を駆動する。
【0021】
すると、シーチェスト4から例えば海水がバラスト水として流入し、その後、ポンプ9、流入口8を介してバラストタンク10内に取り込まれる。
【0022】
また、バラストタンク10内のバラスト水を排出する場合には、切換弁5を流出口11側に切換え、切換弁7を流入口8とは反対側に切換え、次にポンプ9を駆動する。
【0023】
すると、バラストタンク10内のバラスト水は流出口11から切換弁5、ポンプ9、切換弁7を介してシーチェスト4を介して船舶1外に排出される。
【0024】
図3は図2におけるポンプ9から切換弁7までの間に介在されたバラスト水処理装置12を示している。
【0025】
このバラスト水処理装置12は、図3〜図5に示すように、バラスト水流入口13および、バラスト水流出口14を有するバラスト水処理容器15と、このバラスト水処理容器15内に設けた紫外線照射手段の一例である複数の紫外線ランプ16と、複数の光触媒体17とを備えている。
【0026】
前記光触媒体17は板状基部18と、板状基部の表面を被う光触媒部19を有しているが、この光触媒体17の一端は、バラスト水処理容器15内に着脱自在に装着されるとともに、少なくとも1つの遊端を有する構成となっている。
【0027】
具体的には、図5に示すバラスト水処理容器15の内壁面と紫外線ランプ16の間に設けた光触媒体17は、その一端が板体17Aへの取り付け部となっており、また他端が遊端となっている。そして、板体17Aがバラスト水処理容器15の内壁面に対して着脱自在となっている。
【0028】
また、紫外線ランプ16間に設けた光触媒体17は、その板状基部18の中部に、この板状基部18を前記バラスト水処理容器15に着脱自在に装着させる支持部17Bを固定して取り付け部とし、前記板状基部18の両端は遊端としている。そして、支持部17Bがバラスト水処理容器15の内壁面に対して着脱自在となっている。
【0029】
また、光触媒体17を構成する板状基部18は、チタン、ステンレスの少なくとも1つで構成されている。これらの金属は、バラスト水処理装置12内を通過する海水に対し、劣化がしづらい金属であり、光触媒体17は高度な耐久性を保つことができる。
【0030】
光触媒体17の板状基部18には、図4に示すように、耐紫外線バインダー20にて光触媒粉21および反射材料22を付着させた構成となっており、反射材料22は、アルミニウムフレーク、石英砂の少なくとも1つで構成されている。これらの反射材料は、紫外線の反射率が高い無機材料である。これにより、紫外線ランプ16からの紫外線は、距離に応じて光の強度が減衰するが、光触媒体17の表面が紫外線を効率的に反射させることにより、光の強度の減衰を防ぐことができる。
【0031】
なお、光触媒体17を紫外線ランプ16に対向させると、紫外線ランプ16に近い分、紫外線の強度は強いが、紫外線の照射面積(受光面積)が小さくなるというデメリットが生じる。しかし、本実施形態によれば、紫外線ランプ16の両側に、光触媒体17を複数配置したので、紫外線のエネルギーを効率的に利用しつつ、照射面積(受光面積)を維持できるという効果を得られる。
【0032】
また、光触媒体17を多数設置すると、バラスト水と光触媒体17との接触面積が増えるが、光触媒体17に紫外線が届かない影になる部分が増える。しかし、本実施形態のように光触媒体17で紫外線を効率的に反射させることにより、光触媒体17において紫外線が直接届かず影になる部分が増えるのを防止することが出来る。なお、光触媒体17の板状基部18には、金属に限られること無く、紫外線の反射率が高い物質を利用しても良い。
【0033】
また、光触媒体17の耐紫外線バインダー20としてシリカを用いる構成とした。
【0034】
また、光触媒粉21はアナタース型酸化チタンとフッ素を含み、アナタース型酸化チタンとフッ素が化学結合している酸化チタン光触媒である構成であり、その詳細な内容は、本願特許出願人が先に出願しているWO2008/132824号公報に詳細に記載されている。
【0035】
本実施形態によれば、バラスト水処理容器15内には図3〜図5で説明したように、紫外線照射手段の一例として設けた複数の紫外線ランプ16と、紫外線ランプ16間に配置した複数の光触媒体17とを設けている。
【0036】
このため、バラスト水処理容器15内に設けた紫外線ランプ16からの紫外線と、この紫外線を受けた光触媒体17により発生した、活性化された水酸ラジカルとにより、水生生物や細菌類等の生物種は殺滅させられることになる。
【0037】
本実施の形態において、光触媒体17の板状基部18の一部が遊端となっている。
【0038】
したがって、バラスト水処理容器15内にバラスト水が流入すると、この遊端が撓み、バラスト水にも、乱流が発生する。乱流が発生することにより、光触媒体表面のバラスト水処理容器15内に設けた紫外線ランプ16からの紫外線を受けた光触媒体17により発生した、活性化された水酸ラジカルと水生生物や細菌類等の生物種が、より反応する機会が向上する。これにより、水生生物や細菌類等の生物種は殺滅させやすくなる。
【0039】
また、光触媒体17の板状基部18は、取り付け部から遊端側に向けて図6に示すように薄くし、水流でより撓みやすく、乱流を発生しやすくしても良い。
【0040】
また、光触媒体17が撓むことで光触媒体17表面に照射される紫外線の強度が高くなる機会が増えるので、光触媒の活性が向上する。これにより、水生生物や細菌類等の生物種は殺滅させやすくなる。
【0041】
そして、このようにして水生生物や細菌類等の生物種が殺滅させられたバラスト水が、次にはバラスト水処理容器15のバラスト水流出口14から切換弁7を介してバラストタンク10内、または切換弁7、を介してシーチェスト4から船舶1外に排出される。
【0042】
つまり、バラスト水の取り込み時に、バラスト水処理容器15で、水生生物や細菌類等の生物種を殺滅はしたが、例えば、それら生物種の休眠胞子などが処理できずに残ってしまった場合には、それがバラストタンク10内で発芽してしまう虞もあるので、このようなバラスト水の排出時にも、バラスト水処理容器15で、それら生物種の殺滅を行うのである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように本発明はバラスト水流入口および、バラスト水流出口を有するバラスト水処理容器と、このバラスト水処理容器内に設けた紫外線照射手段とを備え、前記光触媒体は板状基部と、前記板状基部の表面を被う光触媒部を有し、前記光触媒体は、前記バラスト水処理容器内に着脱自在に装着されるとともに、少なくとも1つの遊端を有する構成としたものであるので、その小型化が図れるものとなる。
【0044】
すなわち、本発明においては、バラスト水処理容器内に設けた紫外線照射手段からの紫外線と、この紫外線を受けた光触媒体により発生した、活性化された水酸ラジカルとにより、水生生物や細菌類等の生物種を殺滅させるものであるので、バラスト水処理容器外に、従来のようなオゾン発生手段や、オゾン脱気手段を設ける必要がなく、その結果として小型化が図れるものとなる。
【0045】
また、本発明において前記光触媒体は、前記バラスト水処理容器内に着脱自在に装着されるとともに、少なくとも1つの遊端を有する構成としたものであるので、遊端が水流で撓み、その結果として水流も撹拌され、水流との接触確率が高くなる。
【0046】
また、本発明において前記光触媒体は、前記バラスト水処理容器内に着脱自在に装着されるとともに、少なくとも1つの遊端を有する構成としたものであるので、遊端が水流で撓み、その結果として光触媒体表面に照射される紫外線強度が高くなる機会が増え、光触媒の活性が向上する。
【0047】
このため、光触媒体による水生生物や細菌類等の生物種を殺滅させる効果を高めることができる。
【0048】
したがって、船舶のバラスト水処理装置としての活用が期待される。
【符号の説明】
【0049】
1 船舶
2 港
3 喫水線
4 シーチェスト
5 切換弁
7 切換弁
8 流入口
9 ポンプ
10 バラストタンク
11 流出口
12 バラスト水処理装置
13 バラスト水流入口
14 バラスト水流出口
15 バラスト水処理容器
16 紫外線ランプ
17 光触媒体
18 板状基部
19 光触媒部
20 耐紫外線バインダー
21 光触媒粉
22 反射材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水流入口および、バラスト水流出口を有するバラスト水処理容器と、このバラスト水処理容器内に設けた紫外線照射手段と光触媒体とを備え、
前記光触媒体は板状基部と、
前記板状基部の表面を被う光触媒部を有し、
前記光触媒体は、前記バラスト水処理容器内に着脱自在に装着されるとともに、少なくとも1つの遊端を有する構成であることを特徴とするバラスト水処理装置。
【請求項2】
前記光触媒体の板状基部の一端を前記バラスト水処理容器への取り付け部とし、この板状基部の他端を遊端とした請求項1に記載のバラスト水処理装置。
【請求項3】
前記板状基部の中部に、この板状基部を前記バラスト水処理容器に着脱自在に装着させる支持部を固定して取り付け部とし、前記前記板状基部の両端を遊端とした請求項1に記載のバラスト水処理装置。
【請求項4】
前記光触媒体の板状基部は、取り付け部から遊端側に向けて肉厚を薄くしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のバラスト水処理装置。
【請求項5】
前記光触媒体の板状基部は、チタン、ステンレスの少なくとも一つで構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のバラスト水処理装置。
【請求項6】
前記光触媒部は光触媒粉と、耐紫外線バインダーと、反射材料を有し、前記反射材料が、アルミニウムフレーク、石英砂の少なくとも1つで構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のバラスト水処理装置。
【請求項7】
前記耐紫外線バインダーとしてシリカを用いたことを特徴とする請求項6に記載のバラスト水処理装置。
【請求項8】
前記光触媒体の光触媒粉はアナタース型酸化チタンとフッ素を含み、前記アナタース型酸化チタンとフッ素が化学結合している酸化チタン光触媒であることをと特徴とする請求項1〜7に記載のバラスト水処理装置。
【請求項9】
バラスト水処理容器内に複数の紫外線照射手段を設けるとともに、隣接する紫外線照射手段間に請求項3に記載の光触媒体を配置したバラスト水処理装置。
【請求項10】
バラスト水処理容器の内壁面と紫外線照射手段間に板状基部を設け、板状基部の一端を前記バラスト水処理容器へ取り付けた請求項9に記載バラスト水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−125735(P2012−125735A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281603(P2010−281603)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】