バラン回路
【課題】 ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させる。
【解決手段】 インダクタL1,L2と直列に補助コイル2a,2bを設置する。補助コイル2a,2bは、例えば、バイファイラー巻き(2本の絶縁線を平行に隣り合わせて巻回する巻き方)により形成した2つのコイルであり、それぞれが浮遊インダクタンスに相当するインダクタンスを有している。
【効果】 ノーマルモードでの信号の減衰が小さくなり、コモンモードでのノイズの減衰が大きくなる。
【解決手段】 インダクタL1,L2と直列に補助コイル2a,2bを設置する。補助コイル2a,2bは、例えば、バイファイラー巻き(2本の絶縁線を平行に隣り合わせて巻回する巻き方)により形成した2つのコイルであり、それぞれが浮遊インダクタンスに相当するインダクタンスを有している。
【効果】 ノーマルモードでの信号の減衰が小さくなり、コモンモードでのノイズの減衰が大きくなる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平衡−不平衡変換に用いられるバラン(BALance to UNbalance tranceformer)回路に関し、さらに詳しくは、ノーマルモードでの共振点とコモンモードでの共振点を一致させることができるバラン回路に関する。
【0002】
【従来の技術】図8は、従来のMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置のRF(Radio Frequency)パルス給電系を示す構成図である。MRI装置のRF系から送出された被検体励起用のRFパルス信号は、RFアンプPで増幅され、同軸ケーブルQおよびバラン回路51を介して、RFコイルFへ給電される。
【0003】前記バラン回路51は、第1のインダクタL1の一端および第2のインダクタL2の一端を第1の端子対T1,T2とし、前記第1のインダクタL1の他端および前記第2のインダクタL2の他端を第2の端子対T3,T4とし、前記第1のインダクタL1の一端と前記第2のインダクタL2の他端の間に第1の共振用コンデンサC1を接続し、前記第2のインダクタL2の一端と前記第1のインダクタL1の他端の間に第2の共振用コンデンサC2を接続した構成である。前記インダクタL1,L2は、等しいインダクタンスLを有する。また、前記共振用コンデンサC1,C2は、等しい静電容量Cを有する。前記バラン回路51は平衡−不平衡変換機能と共にインピーダンス変換機能も有しており、前記第1の端子対T1,T2は同軸ケーブルQの心線(信号線)および外部導体(GND線)にそれぞれ接続され、前記第2の端子対T3,T4はRFコイルFの給電点A1,A2への給電線にそれぞれ接続されている。
【0004】図9は、前記バラン回路51の調整方法を示す回路図である。前記第1の端子対T1,T2には、信号源SからRFパルス信号の周波数frの信号を入力する。また、第2の端子対T3,T4間を短絡する。これにより、前記バラン回路51には、ノーマルモード電流IN が流れる。この状態で、ノーマルモード電流IN が最小となるように、インダクタL1,L2のインダクタンスLを調整したり、共振用コンデンサC1,C2の静電容量Cを調整する。図10は、調整後のノーマルモードの共振特性図である。前記バラン回路51のノーマルモードの共振点は、周波数fr となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図11に示すように、現実の装置では、前記RFパルス給電系を含む大きなループが不可避に形成され、そのループに電流ic が流れる。この電流ic は、ノイズ源となるため、なるべく小さい方がよい。そのためには、RFパルス信号の周波数fr においてコモンモードでバラン回路51が共振し、そのコモンモードのインピーダンスが最大になればよい。そこで、図12に示すように、前記第1の端子対T1,T2間を短絡した接続点Taと、前記第2の端子対T3,T4間を短絡した接続点Tbとの間に、信号源Sからの信号を入力し、コモンモードの共振特性を測定する。なお、Ic はコモンモード電流である。すると、図1313に示すように、そのコモンモードの共振点の周波数fc は、RFパルス信号の周波数fr より大きくなる。このように、従来のバラン回路51では、ノーマルモードの共振点とコモンモードでの共振点が不一致となる問題点があった。
【0006】そこで、本発明の目的は、ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させることができるバラン回路を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者が鋭意研究したところ、ノーマルモードの共振点とコモンモードでの共振点が不一致となる原因は、バラン回路の浮遊インダクタンスにあることを見出した。すなわち、図14に示すように、ノーマルモードでは、バラン回路51のインダクタンスLに浮遊インダクタンスLs が加わり、このとき次式が成立している。
2πfr=1/√{(L+Ls )・C} …(1)ところが、コモンモードでは、浮遊インダクタンスLs が加わらないため、次式が成立することになる。
2πfc=1/√{L・C} …(2)
この結果、fr <fc となるのである。
【0008】さて、本発明は、第1の観点では、第1のインダクタの一端および第2のインダクタの一端を第1の端子対とし、前記第1のインダクタの他端および前記第2のインダクタの他端を第2の端子対とし、前記第1のインダクタの一端と前記第2のインダクタの他端との間に第1の共振用コンデンサを接続し、前記第2のインダクタの一端と前記第1のインダクタの他端との間に第2の共振用コンデンサを接続したバラン回路において、同一方向の電流を流すとそれぞれがインダクタとして機能し、逆方向の電流を流すといずれもインダクタとして機能しないように組み合わせた2つの補助コイルの一方を前記第1のインダクタに直列になるように設置し、他方を前記第2のインダクタに直列になるように設置したことを特徴とするバラン回路を提供する。この第1の観点によるバラン回路では、ノーマルモードでは、補助コイルに逆方向の電流が流れるから、補助コイルはインダクタとして機能せず、上記(1)式が成立し、 2πfr=1/√{(L+Ls )・C} …(1)となる。ところが、コモンモードでは、補助コイルに同方向の電流が流れるから、補助コイルはインダクタとして機能し、そのインダクタンスをΔLとするとき、次式が成立する。
2πfc=1/√{(L+ΔL)・C} …(3)ここで、ΔL=Ls となるように調整すれば、fr =fc となる。すなわち、ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させることが出来る。
【0009】また、本発明は、第2の観点では、第1のインダクタの一端および第2のインダクタの一端を第1の端子対とし、前記第1のインダクタの他端および前記第2のインダクタの他端を第2の端子対とし、前記第1のインダクタの一端と前記第2のインダクタの他端との間に第1の共振用コンデンサを接続し、前記第2のインダクタの一端と前記第1のインダクタの他端との間に第2の共振用コンデンサを接続したバラン回路において、コモンモードではインダクタンスを増やすように機能し且つノーマルモードではインダクタンスを増やすように機能しない補助インダクタを設置したことを特徴とするバラン回路を提供する。この第2の観点によるバラン回路では、ノーマルモードでは、補助インダクタがインダクタンスを増やすように機能せず、上記(1)式が成立し、 2πfr=1/√{(L+Ls )・C} …(1)となる。ところが、コモンモードでは、補助インダクタがインダクタンスを増やすように機能し、そのインダクタンスの増分をΔLとするとき、次式が成立する。
2πfc=1/√{(L+ΔL)・C} …(3)ここで、ΔL=Ls となるように調整すれば、fr =fc となる。すなわち、ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させることが出来る。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図に示す発明の実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0011】−第1の実施形態−図1は、本発明の第1の実施形態にかかるMRI装置のRFパルス給電系の構成図である。MRI装置のRF系から送出された被検体励起用のRFパルス信号は、RFアンプPで増幅され、同軸ケーブルQおよびバラン回路1を介して、RFコイルFへ給電される。このRFコイルFは、バードケージコイルや,ソレノイドコイルや,表面コイルなどである。
【0012】前記バラン回路1は、第1のインダクタL1の一端および第2のインダクタL2の一端を第1の端子対T1,T2とし、前記第1インダクタL1の他端に第1の補助コイル2aの一端を接続し、前記第2のインダクタL2の他端に第2の補助コイル2bの一端を接続し、前記第1の補助コイル2aの他端および前記補助コイル2bの他端を第2の端子対T3,T4とし、前記第1のインダクタL1の一端と前記第2の補助コイル2bの他端の間に第1の共振用コンデンサC1を接続し、前記第2のインダクタL2の一端と前記第1の補助コイル2aの他端の間に第2の共振用コンデンサC2を接続した構成である。前記インダクタL1,L2は、等しいインダクタンスLを有する。また、前記共振用コンデンサC1,C2は、等しい静電容量Cを有する。前記バラン回路1は平衡−不平衡変換機能と共にインピーダンス変換機能も有しており、前記第1の端子対T1,T2は同軸ケーブルQの心線(信号線)および外部導体(GND線)にそれぞれ接続され、前記第2の端子対T3,T4はRFコイルFの給電点A1,A2への給電線にそれぞれ接続されている。
【0013】前記補助コイル2a,2bは、例えば、バイファイラー巻き(2本の絶縁線を平行に隣り合わせて巻回する巻き方)により形成した2つのコイルであり、それぞれが浮遊インダクタンスLs に相当するインダクタンスΔLを有している。
【0014】図2は、前記バラン回路1の調整方法を示す回路図である。前記第1の端子対T1,T2には、信号源SからRFパルス信号の周波数frの信号を入力する。また、第2の端子対T3,T4間を短絡する。これにより、前記バラン回路1には、ノーマルモード電流IN が流れる。この状態で、ノーマルモード電流IN が最小となるように、インダクタL1,L2のインダクタンスLを調整したり、共振用コンデンサC1,C2の静電容量Cを調整する。図3は、調整後のノーマルモードの共振特性図である。
【0015】図4は、前記バラン回路1を、ノーマルモードの等価回路で表した回路図である。ノーマルモードでは、バラン回路1のインダクタンスLに浮遊インダクタンスLs が加わが、補助コイル2a,2bに逆方向の電流IN が流れるから補助コイル2a,2bはインダクタとして機能せず、上記(1)式が成立し、 2πfr=1/√{(L+Ls )・C} …(1)となる。
【0016】一方、コモンモードでは、図5に示すように、浮遊インダクタンスLs が加わらないが、補助コイル2a,2bに同方向の電流Ic が流れるから、補助コイル2a,2bはインダクタとして機能し、そのインダクタンスをΔLとするとき、次式が成立する。
2πfc=1/√{(L+ΔL)・C} …(3)ここで、ΔL=Ls となるように調整してあるから、fr =fc となる。すなわち、図6に示すように、コモンモードの共振点をノーマルモードの共振点に一致させることが出来る。
【0017】なお、図示は省略するが、前記バラン回路1をNMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号の受信系に用いることも出来る。この場合、RFコイルFの信号取出点A,Bから取り出されたNMR信号は、前記バラン回路1の端子対T3,T4に入力され、前記端子対T1,T2から出力され、同軸ケーブルQを介してプリアンプに入力され、プリアンプて増幅後、MRI装置の受信系に受け入れられる。
【0018】−第2の実施形態−図7は、本発明の第2の実施形態にかかるバラン回路の構成図である。このバラン回路11は、2分割した第1のインダクタL1a,L1bの間に第1の補助コイル2aを挟むように設置し、また、2分割した第2のインダクタL2a,L2bの間に第2の補助コイル2bを挟むように設置し、前記インダクタL1aの一端と前記インダクタL2bの他端の間に第1の共振用コンデンサC1を接続し、前記インダクタL2aの一端と前記インダクタL1bの他端の間に第2の共振用コンデンサC2を接続した構成である。前記インダクタL1a,L1b,L2a,L2bのインダクタンスは、上記第1の実施形態にかかるバラン回路1のインダクタL1,L2のインダクタンスLの1/2である。
【0019】以上の第2の実施形態にかかるバラン回路11は、電気的な動作は前記第1の実施形態のバラン回路1と基本的に同じであり、ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させることが出来る。さらに、各部品を対称に配置できるので、実装上便利になる。
【0020】
【発明の効果】本発明のバラン回路によれば、ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させることができるため、ノーマルモードでの信号の減衰が小さくなり、コモンモードでのノイズの減衰が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態にかかるMRI装置のRFパルス給電系の構成図である。
【図2】第1の実施形態にかかるバラン回路の調整方法を示す回路図である。
【図3】ノーマルモードの共振特性図である。
【図4】第1の実施形態にかかるバラン回路をノーマルモードの等価回路で表した回路図である。
【図5】第1の実施形態にかかるバラン回路をコモンモードの等価回路で表した回路図である。
【図6】第1の実施形態にかかるバラン回路のコモンモード共振特性図である。
【図7】第2の実施形態にかかるバラン回路の回路図である。
【図8】従来のMRI装置のRFパルス給電系の構成図である。
【図9】従来のバラン回路の調整方法を示す回路図である。
【図10】ノーマルモードの共振特性図である。
【図11】コモンモード電流の説明図である。
【図12】従来のバラン回路のコモンモード共振特性を測定する回路図である。
【図13】従来のバラン回路のコモンモード共振特性図である。
【図14】従来のバラン回路をノーマルモードの等価回路で表した回路図である。
【符号の説明】
1,11,51 バラン回路
2a,2b 補助コイル
L1,L1a,L1b 第1のインダクタ
L2,L2a,L2b 第2のインダクタ
C1 第1の共振用コンデンサ
C2 第2の共振用コンデンサ
T1〜T4 端子
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平衡−不平衡変換に用いられるバラン(BALance to UNbalance tranceformer)回路に関し、さらに詳しくは、ノーマルモードでの共振点とコモンモードでの共振点を一致させることができるバラン回路に関する。
【0002】
【従来の技術】図8は、従来のMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置のRF(Radio Frequency)パルス給電系を示す構成図である。MRI装置のRF系から送出された被検体励起用のRFパルス信号は、RFアンプPで増幅され、同軸ケーブルQおよびバラン回路51を介して、RFコイルFへ給電される。
【0003】前記バラン回路51は、第1のインダクタL1の一端および第2のインダクタL2の一端を第1の端子対T1,T2とし、前記第1のインダクタL1の他端および前記第2のインダクタL2の他端を第2の端子対T3,T4とし、前記第1のインダクタL1の一端と前記第2のインダクタL2の他端の間に第1の共振用コンデンサC1を接続し、前記第2のインダクタL2の一端と前記第1のインダクタL1の他端の間に第2の共振用コンデンサC2を接続した構成である。前記インダクタL1,L2は、等しいインダクタンスLを有する。また、前記共振用コンデンサC1,C2は、等しい静電容量Cを有する。前記バラン回路51は平衡−不平衡変換機能と共にインピーダンス変換機能も有しており、前記第1の端子対T1,T2は同軸ケーブルQの心線(信号線)および外部導体(GND線)にそれぞれ接続され、前記第2の端子対T3,T4はRFコイルFの給電点A1,A2への給電線にそれぞれ接続されている。
【0004】図9は、前記バラン回路51の調整方法を示す回路図である。前記第1の端子対T1,T2には、信号源SからRFパルス信号の周波数frの信号を入力する。また、第2の端子対T3,T4間を短絡する。これにより、前記バラン回路51には、ノーマルモード電流IN が流れる。この状態で、ノーマルモード電流IN が最小となるように、インダクタL1,L2のインダクタンスLを調整したり、共振用コンデンサC1,C2の静電容量Cを調整する。図10は、調整後のノーマルモードの共振特性図である。前記バラン回路51のノーマルモードの共振点は、周波数fr となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図11に示すように、現実の装置では、前記RFパルス給電系を含む大きなループが不可避に形成され、そのループに電流ic が流れる。この電流ic は、ノイズ源となるため、なるべく小さい方がよい。そのためには、RFパルス信号の周波数fr においてコモンモードでバラン回路51が共振し、そのコモンモードのインピーダンスが最大になればよい。そこで、図12に示すように、前記第1の端子対T1,T2間を短絡した接続点Taと、前記第2の端子対T3,T4間を短絡した接続点Tbとの間に、信号源Sからの信号を入力し、コモンモードの共振特性を測定する。なお、Ic はコモンモード電流である。すると、図1313に示すように、そのコモンモードの共振点の周波数fc は、RFパルス信号の周波数fr より大きくなる。このように、従来のバラン回路51では、ノーマルモードの共振点とコモンモードでの共振点が不一致となる問題点があった。
【0006】そこで、本発明の目的は、ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させることができるバラン回路を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者が鋭意研究したところ、ノーマルモードの共振点とコモンモードでの共振点が不一致となる原因は、バラン回路の浮遊インダクタンスにあることを見出した。すなわち、図14に示すように、ノーマルモードでは、バラン回路51のインダクタンスLに浮遊インダクタンスLs が加わり、このとき次式が成立している。
2πfr=1/√{(L+Ls )・C} …(1)ところが、コモンモードでは、浮遊インダクタンスLs が加わらないため、次式が成立することになる。
2πfc=1/√{L・C} …(2)
この結果、fr <fc となるのである。
【0008】さて、本発明は、第1の観点では、第1のインダクタの一端および第2のインダクタの一端を第1の端子対とし、前記第1のインダクタの他端および前記第2のインダクタの他端を第2の端子対とし、前記第1のインダクタの一端と前記第2のインダクタの他端との間に第1の共振用コンデンサを接続し、前記第2のインダクタの一端と前記第1のインダクタの他端との間に第2の共振用コンデンサを接続したバラン回路において、同一方向の電流を流すとそれぞれがインダクタとして機能し、逆方向の電流を流すといずれもインダクタとして機能しないように組み合わせた2つの補助コイルの一方を前記第1のインダクタに直列になるように設置し、他方を前記第2のインダクタに直列になるように設置したことを特徴とするバラン回路を提供する。この第1の観点によるバラン回路では、ノーマルモードでは、補助コイルに逆方向の電流が流れるから、補助コイルはインダクタとして機能せず、上記(1)式が成立し、 2πfr=1/√{(L+Ls )・C} …(1)となる。ところが、コモンモードでは、補助コイルに同方向の電流が流れるから、補助コイルはインダクタとして機能し、そのインダクタンスをΔLとするとき、次式が成立する。
2πfc=1/√{(L+ΔL)・C} …(3)ここで、ΔL=Ls となるように調整すれば、fr =fc となる。すなわち、ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させることが出来る。
【0009】また、本発明は、第2の観点では、第1のインダクタの一端および第2のインダクタの一端を第1の端子対とし、前記第1のインダクタの他端および前記第2のインダクタの他端を第2の端子対とし、前記第1のインダクタの一端と前記第2のインダクタの他端との間に第1の共振用コンデンサを接続し、前記第2のインダクタの一端と前記第1のインダクタの他端との間に第2の共振用コンデンサを接続したバラン回路において、コモンモードではインダクタンスを増やすように機能し且つノーマルモードではインダクタンスを増やすように機能しない補助インダクタを設置したことを特徴とするバラン回路を提供する。この第2の観点によるバラン回路では、ノーマルモードでは、補助インダクタがインダクタンスを増やすように機能せず、上記(1)式が成立し、 2πfr=1/√{(L+Ls )・C} …(1)となる。ところが、コモンモードでは、補助インダクタがインダクタンスを増やすように機能し、そのインダクタンスの増分をΔLとするとき、次式が成立する。
2πfc=1/√{(L+ΔL)・C} …(3)ここで、ΔL=Ls となるように調整すれば、fr =fc となる。すなわち、ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させることが出来る。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図に示す発明の実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0011】−第1の実施形態−図1は、本発明の第1の実施形態にかかるMRI装置のRFパルス給電系の構成図である。MRI装置のRF系から送出された被検体励起用のRFパルス信号は、RFアンプPで増幅され、同軸ケーブルQおよびバラン回路1を介して、RFコイルFへ給電される。このRFコイルFは、バードケージコイルや,ソレノイドコイルや,表面コイルなどである。
【0012】前記バラン回路1は、第1のインダクタL1の一端および第2のインダクタL2の一端を第1の端子対T1,T2とし、前記第1インダクタL1の他端に第1の補助コイル2aの一端を接続し、前記第2のインダクタL2の他端に第2の補助コイル2bの一端を接続し、前記第1の補助コイル2aの他端および前記補助コイル2bの他端を第2の端子対T3,T4とし、前記第1のインダクタL1の一端と前記第2の補助コイル2bの他端の間に第1の共振用コンデンサC1を接続し、前記第2のインダクタL2の一端と前記第1の補助コイル2aの他端の間に第2の共振用コンデンサC2を接続した構成である。前記インダクタL1,L2は、等しいインダクタンスLを有する。また、前記共振用コンデンサC1,C2は、等しい静電容量Cを有する。前記バラン回路1は平衡−不平衡変換機能と共にインピーダンス変換機能も有しており、前記第1の端子対T1,T2は同軸ケーブルQの心線(信号線)および外部導体(GND線)にそれぞれ接続され、前記第2の端子対T3,T4はRFコイルFの給電点A1,A2への給電線にそれぞれ接続されている。
【0013】前記補助コイル2a,2bは、例えば、バイファイラー巻き(2本の絶縁線を平行に隣り合わせて巻回する巻き方)により形成した2つのコイルであり、それぞれが浮遊インダクタンスLs に相当するインダクタンスΔLを有している。
【0014】図2は、前記バラン回路1の調整方法を示す回路図である。前記第1の端子対T1,T2には、信号源SからRFパルス信号の周波数frの信号を入力する。また、第2の端子対T3,T4間を短絡する。これにより、前記バラン回路1には、ノーマルモード電流IN が流れる。この状態で、ノーマルモード電流IN が最小となるように、インダクタL1,L2のインダクタンスLを調整したり、共振用コンデンサC1,C2の静電容量Cを調整する。図3は、調整後のノーマルモードの共振特性図である。
【0015】図4は、前記バラン回路1を、ノーマルモードの等価回路で表した回路図である。ノーマルモードでは、バラン回路1のインダクタンスLに浮遊インダクタンスLs が加わが、補助コイル2a,2bに逆方向の電流IN が流れるから補助コイル2a,2bはインダクタとして機能せず、上記(1)式が成立し、 2πfr=1/√{(L+Ls )・C} …(1)となる。
【0016】一方、コモンモードでは、図5に示すように、浮遊インダクタンスLs が加わらないが、補助コイル2a,2bに同方向の電流Ic が流れるから、補助コイル2a,2bはインダクタとして機能し、そのインダクタンスをΔLとするとき、次式が成立する。
2πfc=1/√{(L+ΔL)・C} …(3)ここで、ΔL=Ls となるように調整してあるから、fr =fc となる。すなわち、図6に示すように、コモンモードの共振点をノーマルモードの共振点に一致させることが出来る。
【0017】なお、図示は省略するが、前記バラン回路1をNMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号の受信系に用いることも出来る。この場合、RFコイルFの信号取出点A,Bから取り出されたNMR信号は、前記バラン回路1の端子対T3,T4に入力され、前記端子対T1,T2から出力され、同軸ケーブルQを介してプリアンプに入力され、プリアンプて増幅後、MRI装置の受信系に受け入れられる。
【0018】−第2の実施形態−図7は、本発明の第2の実施形態にかかるバラン回路の構成図である。このバラン回路11は、2分割した第1のインダクタL1a,L1bの間に第1の補助コイル2aを挟むように設置し、また、2分割した第2のインダクタL2a,L2bの間に第2の補助コイル2bを挟むように設置し、前記インダクタL1aの一端と前記インダクタL2bの他端の間に第1の共振用コンデンサC1を接続し、前記インダクタL2aの一端と前記インダクタL1bの他端の間に第2の共振用コンデンサC2を接続した構成である。前記インダクタL1a,L1b,L2a,L2bのインダクタンスは、上記第1の実施形態にかかるバラン回路1のインダクタL1,L2のインダクタンスLの1/2である。
【0019】以上の第2の実施形態にかかるバラン回路11は、電気的な動作は前記第1の実施形態のバラン回路1と基本的に同じであり、ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させることが出来る。さらに、各部品を対称に配置できるので、実装上便利になる。
【0020】
【発明の効果】本発明のバラン回路によれば、ノーマルモードの共振点とコモンモードの共振点を一致させることができるため、ノーマルモードでの信号の減衰が小さくなり、コモンモードでのノイズの減衰が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態にかかるMRI装置のRFパルス給電系の構成図である。
【図2】第1の実施形態にかかるバラン回路の調整方法を示す回路図である。
【図3】ノーマルモードの共振特性図である。
【図4】第1の実施形態にかかるバラン回路をノーマルモードの等価回路で表した回路図である。
【図5】第1の実施形態にかかるバラン回路をコモンモードの等価回路で表した回路図である。
【図6】第1の実施形態にかかるバラン回路のコモンモード共振特性図である。
【図7】第2の実施形態にかかるバラン回路の回路図である。
【図8】従来のMRI装置のRFパルス給電系の構成図である。
【図9】従来のバラン回路の調整方法を示す回路図である。
【図10】ノーマルモードの共振特性図である。
【図11】コモンモード電流の説明図である。
【図12】従来のバラン回路のコモンモード共振特性を測定する回路図である。
【図13】従来のバラン回路のコモンモード共振特性図である。
【図14】従来のバラン回路をノーマルモードの等価回路で表した回路図である。
【符号の説明】
1,11,51 バラン回路
2a,2b 補助コイル
L1,L1a,L1b 第1のインダクタ
L2,L2a,L2b 第2のインダクタ
C1 第1の共振用コンデンサ
C2 第2の共振用コンデンサ
T1〜T4 端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1のインダクタの一端および第2のインダクタの一端を第1の端子対とし、前記第1のインダクタの他端および前記第2のインダクタの他端を第2の端子対とし、前記第1のインダクタの一端と前記第2のインダクタの他端との間に第1の共振用コンデンサを接続し、前記第2のインダクタの一端と前記第1のインダクタの他端との間に第2の共振用コンデンサを接続したバラン回路において、同一方向の電流を流すとそれぞれがインダクタとして機能し、逆方向の電流を流すといずれもインダクタとして機能しないように組み合わせた2つの補助コイルの一方を前記第1のインダクタに直列になるように設置し、他方を前記第2のインダクタに直列になるように設置したことを特徴とするバラン回路。
【請求項2】 第1のインダクタの一端および第2のインダクタの一端を第1の端子対とし、前記第1のインダクタの他端および前記第2のインダクタの他端を第2の端子対とし、前記第1のインダクタの一端と前記第2のインダクタの他端との間に第1の共振用コンデンサを接続し、前記第2のインダクタの一端と前記第1のインダクタの他端との間に第2の共振用コンデンサを接続したバラン回路において、コモンモードではインダクタンスを増やすように機能し且つノーマルモードではインダクタンスを増やすように機能しない補助インダクタを設置したことを特徴とするバラン回路。
【請求項1】 第1のインダクタの一端および第2のインダクタの一端を第1の端子対とし、前記第1のインダクタの他端および前記第2のインダクタの他端を第2の端子対とし、前記第1のインダクタの一端と前記第2のインダクタの他端との間に第1の共振用コンデンサを接続し、前記第2のインダクタの一端と前記第1のインダクタの他端との間に第2の共振用コンデンサを接続したバラン回路において、同一方向の電流を流すとそれぞれがインダクタとして機能し、逆方向の電流を流すといずれもインダクタとして機能しないように組み合わせた2つの補助コイルの一方を前記第1のインダクタに直列になるように設置し、他方を前記第2のインダクタに直列になるように設置したことを特徴とするバラン回路。
【請求項2】 第1のインダクタの一端および第2のインダクタの一端を第1の端子対とし、前記第1のインダクタの他端および前記第2のインダクタの他端を第2の端子対とし、前記第1のインダクタの一端と前記第2のインダクタの他端との間に第1の共振用コンデンサを接続し、前記第2のインダクタの一端と前記第1のインダクタの他端との間に第2の共振用コンデンサを接続したバラン回路において、コモンモードではインダクタンスを増やすように機能し且つノーマルモードではインダクタンスを増やすように機能しない補助インダクタを設置したことを特徴とするバラン回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【図14】
【公開番号】特開平10−126196
【公開日】平成10年(1998)5月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−277956
【出願日】平成8年(1996)10月21日
【出願人】(000121936)ジーイー横河メディカルシステム株式会社 (23)
【公開日】平成10年(1998)5月15日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)10月21日
【出願人】(000121936)ジーイー横河メディカルシステム株式会社 (23)
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