説明

バラ積み船舶の積載率向上方法

【課題】不定形貨物を積載するバラ積み船舶の積載率向上を提供する。
【解決手段】不定形貨物を積載するバラ積み船舶の積載率向上方法であって、前記バラ積み船舶の艙内に、4本の支柱で支持された複数段の床面を有する多段ラックを設置し、該多段ラックの最上段は支柱のない床面だけの構造とし、前記多段ラックの最上段を含む各床面に不定形貨物を積載して固定することにより、前記バラ積み船舶の艙内の上部空間を有効活用し、好ましくは、前記4本の支柱は抜き差しが可能な複数種類の長さの支柱とし、前記不定形貨物の高さに合せて前記支柱の長さを選択することを特徴とする、バラ積み船舶の積載率向上方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラ積み船舶の積載率向上方法に関する。
具体的には、例えば、不定形貨物を積載するバラ積み船舶の積載率向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バラ積み船舶に鉄骨等の不定形貨物を積載するときには、その貨物の上段に同様の貨物を積載しようとすると木材その他を使用して上段の貨物を安全に積載できる状態にしなければならない。この状態を作るためには多くの資材と作業工数を投入しなければならず、かつ船舶の滞船時間の長時間化を招くことから多段積みすることはまれであり、バラ積み船舶の艙内容積つまり貨物の上部スペースの活用がなされておらず、結果としてバラ積み船舶の積載率を低位にさせている原因となっていた。
【0003】
また、この不定形貨物を船舶積載のために港湾用地に仮置きするときも、多段積が困難なために広大な置場面積を必要としていた。
【0004】
貨物の積載率向上に関しては、従来から種々の提案がなされており、例えば、特開平5−16875号公報(下記特許文献1)には、コンテナを、長さ、幅および高さを自由サイズ寸法に形成する一方、各コンテナの底面に、正方形状で周辺部に傾斜部を有する同一寸法の凹部を一定間隔で形成するとともに、上記の凹部および傾斜部と嵌合可能な凸部および傾斜部を、コンテナの上面、船倉の底板、倉口蓋の上面にそれぞれ形成し、コンテナの積載時に、上記の凸部(傾斜部を含む)と凹部(傾斜部を含む)とを嵌合させることにより、コンテナの水平移動や転倒を防止でき、その結果従来のガイドレールが不必要となり、任意サイズのコンテナの積載を可能としたコンテナ運搬船の船倉に多数のコンテナを積載する方法が記載されている。
【0005】
この特許文献1に記載された方法は、コンテナの積載方法に関する条件を緩和する方法であって、自由な大きさのコンテナの使用を実現するとともに、移動・転倒を簡単に防止できるという特徴を有する。
【0006】
しかし、特許文献1の方法は、積載する貨物の大きさに合ったコンテナを作成する必要があるうえ、船舶の構造も、このコンテナに合わせ、船底および船倉蓋に嵌合構造を持った専用船が必要になるという問題点があった。
【0007】
また、特開平11−100108号公報(下記特許文献2)には、ラック使用時には上段のラックの下枠体を下段のラックのパレット台上に載置した状態で各ラックを段積みし、不使用時には上段のラックの下枠体および各支柱体を下段のラックの下枠体および各支柱体上に積み重ねた状態で各ラックを格納することにより、パレット積み荷物を段積みする作業を簡易化する方法が記載されている。
【0008】
この特許文献2に記載されたラック、パレットを多段積みするためのラックの1種であり、使用しないときのコンパクトな保管を実現できる設計となっている。
【0009】
しかし、特許文献2の方法は、ラックの最上段で、複数のラックをまたがって貨物を積載することができないので、不定形大型貨物の積載には適さないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−16875号公報
【特許文献2】特開平11−100108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、不定形貨物を積載するバラ積み船舶の積載率向上を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述の課題を解決するために、鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)不定形貨物を積載するバラ積み船舶の積載率向上方法であって、前記バラ積み船舶の艙内に、4本の支柱で支持された複数段の床面を有する多段ラックを設置し、該多段ラックの最上段は支柱のない床面だけの構造とし、前記多段ラックの最上段を含む各床面に不定形貨物を積載して固定することにより、前記バラ積み船舶の艙内の上部空間を有効活用することを特徴とする、バラ積み船舶の積載率向上方法。
(2)前記4本の支柱は抜き差しが可能な複数種類の長さの支柱とし、前記不定形貨物の高さに合せて前記支柱の長さを選択することを特徴とする、請求項1に記載のバラ積み船舶の積載率向上方法。
【0013】
<作用>
(1)の発明によれば、多段ラックの最上段は支柱のない床面だけの構造とし、前記多段ラックの最上段を含む各床面に不定形貨物を積載して固定することにより、前記バラ積み船舶の艙内の上部空間を有効活用することができる。
(2)の発明によれば、4本の支柱は抜き差しが可能な複数種類の長さの支柱とするので、前記不定形貨物の高さに合せて前記支柱の長さを選択することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、船舶の艙内の上部空間を有効活用することができるので不定形貨物を積載するバラ積み船舶の積載率向上方法を提供することができ、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に用いるラックの実施形態を例示する図である。
【図2】本発明のバラ積み船舶の積載率向上方法の実施形態を例示する積付図である。
【図3】本発明に用いるラックの組み立て手順を例示する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明を実施するための最良の形態について、図1〜図3を用いて詳細に説明する。図1〜図3において、1は床面(1段目)、2は床面(2段目)、3は床面(3段目)、4は支柱、5はジョイント部、6はワイヤ固定部を示す。
【0017】
図1は、本発明に用いるラックの実施形態を例示する図である。本発明は、不定形貨物を積載するバラ積み船舶の積載率向上方法であって、前記バラ積み船舶の艙内に、4本の支柱4で支持された複数段の床面を有する多段ラックを設置し、該多段ラックの最上段3は支柱のない床面だけの構造とし、前記多段ラックの最上段3を含む各床面に不定形貨物を積載して固定することにより、前記バラ積み船舶の艙内の上部空間を有効活用することを特徴とする。
【0018】
図1に示すように、本発明に用いるラックは、4本の支柱4で支持された複数段の床面1〜3を有する多段ラックであって、該多段ラックの最上段3は支柱のない床面だけの構造とし、前記多段ラックの最上段3を含む各床面に不定形貨物を積載して固定することにより、前記バラ積み船舶の艙内の上部空間を有効活用することができる。
【0019】
図2は、本発明のバラ積み船舶の積載率向上方法の実施形態を例示する積付図である。
図2に示すように、多段積が可能な4本の支柱4で支持される多数のラックを設置し、多段積みを可能とすることで、艙内上部空間の有効活用を実現することができる。
【0020】
この方法によれば、従来のように積載する貨物の大きさに合ったコンテナの開発を必要としないうえ、船舶の構造もこのコンテナに合わせ、船倉内に特殊な構造は必要なく、汎用性が高い。
【0021】
また、図2に示すように、多段積みラックの最上段3は支柱のない床面だけの構造とすることで、1つのラックに積載できない長さ・高さ・幅を有する貨物を複数のラックを使用してまたがって積載することができるので、ラックに乗り切れない大きな貨物も積載することができる。
【0022】
図3は、本発明に用いるラックの組み立て手順を例示する図である。
【0023】
図3(a)に示すように、前記4本の支柱4は抜き差しが可能な複数種類の長さの支柱とし、前記不定形貨物の高さに合せて前記支柱の長さを選択することによって、ラック内空間のロス低減も実現することができる。
【0024】
また、貨物をラックに固定するラッシング用ワイヤを固定するために、ラックの各床面の下部にワイヤ固定部6を設けることが好ましい。なお、本発明に使用するラックの材料は問わないが、強度および汎用性の観点から構造用鋼SS41からなる角管または形鋼を用いることが好ましい。
【0025】
図3(b)は、本発明に用いるラックのジョイント部の構造を例示する図である。
【0026】
図3(b)に示すように、本発明に用いるラックのジョイント部は、支柱4の上部を凸状とし、床面の下部を凹状とし、この凹凸部を嵌合させることにより、前記4本の支柱4を抜き差し可能にすることができる。
なお、ラックの積載条件は特にないため、通常のバラ積み船舶全ての対応が可能となるうえ、船舶への積み卸しに前後する仮置場での保管効率についても、本方法を利用することで置場面積の使用率向上につながる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のバラ積み船舶の積載率向上方法は、実施計画中であり、不定形貨物を船舶積載のために港湾用地に仮置きする場合にも使用できるため、今後の適用拡大が期待される。
【符号の説明】
【0028】
1 床面(1段目)
2 床面(2段目)
3 床面(3段目)
4 支柱
5 ジョイント部
6 ワイヤ固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不定形貨物を積載するバラ積み船舶の積載率向上方法であって、前記バラ積み船舶の艙内に、4本の支柱で支持された複数段の床面を有する多段ラックを設置し、該多段ラックの最上段は支柱のない床面だけの構造とし、前記多段ラックの最上段を含む各床面に不定形貨物を積載して固定することにより、前記バラ積み船舶の艙内の上部空間を有効活用することを特徴とする、バラ積み船舶の積載率向上方法。
【請求項2】
前記4本の支柱は抜き差しが可能な複数種類の長さの支柱とし、前記不定形貨物の高さに合せて前記支柱の長さを選択することを特徴とする、請求項1に記載のバラ積み船舶の積載率向上方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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