説明

バリア性を有するチューブ容器

【課題】
部品点数が少なく安価に製造することができ、かつ製造工程数が少ないバリア性を有するチューブ容器。
【解決手段】
チューブ容器の肩部および口部付近の内面または/および外面に、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着したことを特徴とするチューブ容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バリア性を有するチューブ容器に関し、部品点数が少なく安価に製造することができ、かつ製造工程数が少なく、簡易に製造できるバリア性を有するチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品、食品、化粧品および練り歯磨き等の内容物を充填するチューブ容器としては、ラミネートチューブ容器、ブローチューブ容器があった。これらのチューブ容器の肩部または/および口部には、アルミニウム箔等で構成される遮蔽膜や閉鎖膜が溶着されることにより、チューブ容器の口部、肩部のバリア性が確保されている。図10(a)において、100は、上方に円筒状の筒体101a、下方に傘状の鍔体101bから構成される遮蔽膜101が溶着された遮蔽膜付チューブ容器である。又図11(a)は、内ショルダー201上に閉鎖膜202が溶着された円盤部材203を、チューブ容器ショルダー204の内側に溶着して製造される閉鎖膜付チューブ容器である。すなわち、閉鎖膜202は、内ショルダー201とチューブ容器ショルダー204に挟着されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭62−52143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような従来の技術にあっては、図10に示すラミネートチューブ容器にあっては、マンドレルヘッド103の上に、遮蔽膜101が載置され、マンドレルヘッド103と上金型104で、閉鎖膜101が挟着された後、上金型104の注入口から、溶融した樹脂105が充填され、チューブ容器ショルダー105が成形されると同時に、チューブ容器ショルダー105と遮蔽膜101及びアルミニウム箔を有する胴部106が溶着されるものである。しかし、このような製造方法においては、製造工程数が多く、複雑であるという欠点がある。又図11に示すラミネートチューブ容器200にあっては、チューブ容器の閉鎖膜部位を構成する部品点数は、概ね3点部品で構成されているため、製造コストが高く、又製造工程数が多いという欠点がある。
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、外気の透過および内容物の浸透を防止するため、製造コストが安価で、製造工程数が少ない簡易なバリア性を有するチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、チューブ容器の肩部および口部付近の内面または/および外面に、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着したことを特徴とするチューブ容器である。ダイヤモンドライクカーボンの蒸着により、肩部及び口部からチューブ容器内へ、外気が透過するのを遮断することができると共に、内容物の外部への浸透を防止することができる。
【0005】
請求項2記載の発明の解決手段は、チューブ容器の肩部付近の内面または/および外面に、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着したことを特徴とするチューブ容器である。同様に、ダイヤモンドライクカーボンの蒸着により、肩部からチューブ容器内へ、外気が透過するのを遮断することができると共に、内容物の外部への浸透を防止することができる。
【0006】
請求項3記載の発明の解決手段は、口部の天面に、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着したことを特徴とするチューブ容器である。
【0007】
請求項4記載の発明の解決手段は、口部の天面に、アルミニウム箔を有する蓋体を溶着したことを特徴とするチューブ容器である。アルミニウム箔を有する蓋体を、チューブ容器の口部天面に溶着することにより、口部の開口からチューブ容器内へ、外気が透過するのを遮断することができ、肩部及び口部へのダイヤモンドライクカーボンの蒸着との相乗効果により、肩部、口部、開口部全体のバリア性を確保することができる。
【0008】
請求項5記載の発明の解決手段は、チューブ容器の胴部、肩部および口部が、一体成形されたことを特徴とするチューブ容器である。
【0009】
請求項6記載の発明の解決手段は、チューブ容器の胴部が、肩部の下端に溶着または接着されていることを特徴とするチューブ容器である。
【0010】
請求項7記載の発明の解決手段は、 胴部の層構成が、バリア性樹脂の単層又はバリア性樹脂とポリオレフィン系樹脂の多層で構成されることを特徴とするチューブ容器である。
【0011】
請求項8記載の発明の解決手段は、アルミニウム箔とポリオレフィン系樹脂のラミネートで構成されることを特徴とするチューブ容器である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、外気の透過および内容物の浸透を防止することができる効果を有する。又製造コストが安価で、製造工程数が少ないという利点があり、製造が簡易であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図2は、本発明の実施例1を示す図面である。1はブロー成形等で造られる、胴部、肩部および口部が一体成形により製造されるチューブ容器である。このチューブ容器1の肩部2および口部3の内面には、ダイヤモンドライクカーボン4が蒸着されている。蒸着されるダイヤモンドライクカーボン4は、上方が円筒状の筒体4aを呈し、下方が傘状の鍔体4bを呈する遮蔽壁から構成される。円筒状の筒体4aは天面が開放されており、また鍔体4bにより、肩部2の内面全体が遮蔽するように被覆される。蒸着されるダイヤモンドライクカーボン4の肉厚は、0.5μm〜0.01μm程度が適する。
【実施例2】
【0015】
図3は、本発明の実施例2を示す図面である。実施例1と異なるのは、チューブ容器11が、肩部12の下端部12aで、胴部15と溶着または接着により継がれている点である。胴部15は、アルミニウム箔を有するラミネートで構成されている。すなわち、肩部12の下端部12aの上面には、胴部15が溶着されている。肩部12の下端部12aが半径方向に若干の肉厚を有し、この肩部12の下端部12a全体が覆われるように、ダイヤモンドライクカーボン14が蒸着されている。
【実施例3】
【0016】
図4は、本発明の実施例3を示す図面である。同様に、21は、肩部22の下端部22aで溶着または接着によって継がれているラミネートチューブ容器である。実施例2と異なる点は、肩部22、口部23の内面および天面23a、さらに肩部22、口部23の外面に、ダイヤモンドライクカーボン24を蒸着したものである。その他チューブ容器の構成は実施例2と同様である。この実施例3は、肩部22、口部23の全体を両側から覆うように、ダイヤモンドライクカーボンが蒸着されている。
【実施例4】
【0017】
図5は、本発明の実施例4を示す図面である。31は、肩部32の下端部32aで溶着によって継がれているラミネートチューブ容器である。実施例3と異なる点は、肩部32、口部33の内面、および口部33の天面33aに、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着したものである。その他チューブ容器の構成は、実施例3と同様である。
【実施例5】
【0018】
図6は、本発明の実施例5を示す図面である。41は、肩部42の下端部42aで溶着によって継がれているラミネートチューブ容器である。実施例4と異なる点は、肩部42の内面にのみ、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着したものである。口部43の内面及び天面43aに、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着していない点である。その他チューブ容器の構成は、実施例4と同様である。
【0019】
ダイヤモンドライクカーボンは、図1に示すような製造装置において、チューブ容器の頭部6に蒸着される。図1に示すように、チューブ容器の頭部6を反応容器70内に載置し、反応容器70内を減圧する。真空度は適宜設定することができる。そして、硬質炭素膜形成用の原料ガス72として、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、含酸素炭化水素類、含窒素炭化水素類などが使用され、グロー放電により膜形成を行う。
【実施例6】
【0020】
図7は、本発明の実施例6を示す図面である。51はブロー成形等で造られる、胴部、肩部および口部が一体成形により製造されるチューブ容器である。このチューブ容器51の肩部52および口部53の内面には、ダイヤモンドライクカーボン54が蒸着されている。蒸着されるダイヤモンドライクカーボン54は、上方が円筒状の筒体54aを呈し、下方が傘状の鍔体54bを呈する遮蔽壁で構成されている。円筒状の筒体54aは天面が開放されており、口部の天面53aには、アルミニウム箔56aを有する蓋体56が溶着または接着されている。これにより、口部53からのガス透過を完全に防止することができる。
【実施例7】
【0021】
図8は、本発明の実施例7を示す図面である。61は、肩部62の下端部62aで胴部65が溶着または接着によって継がれているラミネートチューブ容器である。このチューブ容器61の肩部62および口部63の内面には、ダイヤモンドライクカーボン64が蒸着されている。蒸着されるダイヤモンドライクカーボン64は、上方が円筒状の筒体64aを呈し、下方が傘状の鍔体64bを呈している遮蔽壁で構成されている。円筒状の筒体64aは天面が開放されており、口部の天面63aには、アルミニウム箔66aを有する蓋体66が溶着または接着されている。これにより、同様に、口部63からのガス透過を完全に防止することができる。
【0022】
図9は、図8のA部拡大断面図である。図9(a)は、胴部65が単層の樹脂で構成されている実施態様である。肩部62と同様の樹脂で構成するのが望ましい。例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂等のガスバリア性樹脂で構成されることが望ましい。
【0023】
図9(b)は、胴部65が多層の樹脂で構成されている実施態様である。例えば、内層76、外層76がポリエチレン樹脂、中間層77がエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂等のガスバリア性樹脂で構成されることが望ましい。層間に接着性樹脂が介在されてもよい。
【0024】
図9(c)は、胴部65がラミネートの樹脂で構成されている実施態様である。例えば、内層79、外層79がポリエチレン樹脂、80がアルミニウム箔で構成されている。同様に、層間に接着性樹脂が介在されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、外部からの酸素等のガスの透過を防止でき、流通、販売部門において内容物の劣化を防止することができる。したがって、医薬品、食品、歯磨き等を収納するのに広く適し、多岐分野にわたって利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るダイヤモンドライクカーボンを、チューブ容器の頭部に蒸着する製造装置を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1を示すチューブ容器の断面図。
【図3】本発明の実施例2を示す断面図。
【図4】本発明の実施例3を示す断面図。
【図5】本発明の実施例4を示す断面図。
【図6】本発明の実施例5を示す断面図。
【図7】本発明の実施例6を示す、口部天面に蓋体を溶着または接着した断面図。
【図8】本発明の実施例7を示す、口部天面に蓋体を溶着または接着した断面図。
【図9】図8のA部拡大の各々の実施態様を示す図面(a)(b)(c)。
【図10】従来の遮蔽膜を有するチューブ容器の断面図(a)およびチューブ容器の製造方法(b)。
【図11】従来の閉鎖膜を有するチューブ容器の断面図(a)およびチューブ容器の製造方法(b)。
【符号の説明】
【0027】
1、11、21、31、41、51、61 チューブ容器
2、12、22、32、42、52、62 肩部
3、13、23、33、43、53、63 口部
4、14、24、34、44、54、64 ダイヤモンドライクカーボン
23a、33a、43a、53a、63a 口部天面
56、66 蓋体
5、15、25、35、45、55、65 胴部
12a、22a、32a 肩部下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ容器の肩部および口部付近の内面または/および外面に、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着したことを特徴とするチューブ容器。
【請求項2】
チューブ容器の肩部付近の内面または/および外面に、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着したことを特徴とするチューブ容器。
【請求項3】
前記口部の天面に、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着したことを特徴とする請求項1または2記載のチューブ容器。
【請求項4】
前記口部の天面に、アルミニウム箔を有する蓋体を溶着または接着したことを特徴とする請求項1乃至3記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記チューブ容器は、胴部、肩部および口部が、一体成形されたことを特徴とする請求項1乃至4記載のチューブ容器。
【請求項6】
前記チューブ容器は、胴部が肩部の下端に溶着または接着されていることを特徴とする請求項1乃至4記載のチューブ容器。
【請求項7】
前記胴部の層構成が、バリア性樹脂の単層又はバリア性樹脂とポリオレフィン系樹脂の多層で構成されることを特徴とする請求項5または6記載のチューブ容器。
【請求項8】
前記胴部の層構成が、アルミニウム箔とポリオレフィン系樹脂のラミネートで構成されることを特徴とする請求項5または6記載のチューブ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−284127(P2007−284127A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115381(P2006−115381)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】