説明

バリ取り装置

【課題】被加工物に孔を加工した際に孔の周囲に生じるバリを除去する。
【解決手段】クランクシャフトのカウンタウェイト201に加工したねじ孔203の口元203aに生じたバリを除去するバリ取り装置であって、先端部に形成され軸心に対して傾斜するテーパ面44aに連続して前記軸心に対して略直交する表面43aが形成された刃具40を具備し、刃具40のテーパ面44aと表面43aの外形が半円以下の円形をなし、刃具40をスプリングによってねじ孔203に接近する方向へ付勢しながら回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加工孔の口元に生じたバリを除去するバリ取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、狭い空間部に存在するバリを除去する工具としては、特許文献1に開示されているように、長形状の操作軸の先端に回転軸を軸支し、この回転軸の先端に切り欠き状の刃部を有する略円錐形状の刃具を固定し、刃具のテーパ面を被加工物の孔の口元に押し当てながら前記操作軸を回転することにより刃具を回転させて、前記孔の開口縁のバリを除去するようにしたものがある。
【0003】
また、特許文献2には、円錐形の一部を切り欠いた形状の刃具を基板の先端に回転可能に設け、刃具を被加工物の孔に当てた状態で、前記基板内に収容した歯車列を介して前記刃具を回転駆動し、孔のバリを除去するバリ取り装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−212035号公報
【特許文献2】特開昭62−88514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の前記各バリ取り装置は、孔の口元をテーパ状に面取りした面取り部のバリ除去には有効であるが、孔の周囲外側へ反り返ったバリを除去するには有効ではなく、そのようなバリを除去することが困難であった。
【0005】
そこで、この発明は、孔の周囲外側へ反り返ったバリを除去することが可能なバリ取り装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るバリ取り装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、被加工物(例えば、後述する実施例におけるクランクシャフト)に加工した孔(例えば、後述する実施例におけるねじ孔203)の口元(例えば、後述する実施例における口元203a)に生じたバリ(例えば、後述する実施例におけるバリ220)を除去するバリ取り装置(例えば、後述する実施例におけるバリ取り装置1)であって、先端部に形成され軸心に対して傾斜するテーパ面(例えば、後述する実施例におけるテーパ面44a)に連続して前記軸心に対して略直交する平坦面(例えば、後述する実施例における表面43a)が形成された刃具(例えば、後述する実施例における刃具40)を具備し、前記刃具の前記テーパ面と前記平坦面の外形が仮想円に形成されていることを特徴とするバリ取り装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記刃具の前記テーパ面と前記平坦面は、半円以下の円形をなすことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記刃具を、弾発部材(例えば、後述する実施例におけるスプリング60)によって前記被加工物の前記孔に接近する方向へ付勢しながら前記軸心周りに回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、刃具のテーパ面を孔に挿入させ、刃具の平坦面を孔の口元に当てて、刃具を孔に対して相対回転することにより、刃具の平坦面の切刃で、孔の口元に生じているバリを確実に除去することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、刃具の軸心と孔の中心が一致していない場合に、テーパ面と平坦面との接続部を孔の口元に当てることが可能となり、孔の口元に生じているバリを確実に除去することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、刃具のテーパ面と平坦面との接続部を常に孔の口元に当てて該口元になぞらせながら刃具を回転させることができ、孔の口元に生じているバリを確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明に係るバリ取り装置の実施例を図1から図11の図面を参照して説明する。なお、この実施例は、クランクシャフトに加工されたねじ孔の口元に生じたバリを除去するバリ取り装置の態様である。
【0013】
図1に示すように、この実施例において孔のバリ取り加工の対象となる被加工物であるクランクシャフト200は、4気筒エンジン用であり、その1番気筒用のカウンタウェイト201,202の一方に、回転角センシング用の回転板を取り付けるためのねじ孔(孔)203が一対設けられている。なお、以下の説明で区別をする必要があるときは、ねじ孔203が設けられている1番気筒用のカウンタウェイトをねじ孔付きカウンタウェイト201、ねじ孔203が設けられていない1番気筒用のカウンタウェイトをねじ孔なしカウンタウェイト202という。
【0014】
ねじ孔は図1において二点鎖線で示すねじ切り機300により、ねじ孔付きカウンタウェイト201の外側から内側に向けて前進させていって貫通形成したものであり、ねじ切り機300のタップがねじ孔付きカウンタウェイト201の内側へ突出する際に、図11に示すように、ねじ孔203の口元203aに周囲外側へ反り返るバリ220が生じる場合がある。この実施例のバリ取り装置1は、このバリ220を除去する際に用いられる。
【0015】
図1および図2に示すように、バリ取り装置1は、クランクシャフト200を移動不能に保持するクランクシャフト支持装置100に隣接して設置されている。
初めに、クランクシャフト支持装置100を簡単に説明する。クランクシャフト支持装置100は、クランクシャフト200の4番気筒側の軸端部204を把持するチャック101と、クランクシャフト200の1番気筒側の軸端面205に当接離反可能で且つ軸端面205に当接してチャック101に接近する方向に押圧するプッシャ102と、クランクシャフト200の2番気筒用クランクピン206と3番気筒用クランクピン207の間のジャーナル部208を左右両側から挟んで把持する開閉可能なホルダ103a,103bとを備えている。このクランクシャフト支持装置100によって、クランクシャフト200はその軸心を水平にし、1番気筒用のカウンタウェイト201,202をバリ取り装置1側へ向けた姿勢で、回転不能且つ水平および上下移動不能に保持される。
なお、以下の説明では、図1に示すように、クランクシャフト支持装置100により支持されたクランクシャフト200の回転軸方向と同方向をY方向、水平面内でこのY方向と直交する方向をX方向と定義する。
【0016】
バリ取り装置1はベース2を備え、このベース2の上に移動台3がスライドレール4を介してX方向へ移動可能に取り付けられている。すなわち、移動台3はクランクシャフト支持装置100に対して接近離反可能にされている。さらに、図2に示すように、この移動台3の上に本体支持台5が別のスライドレール6を介してY方向へ移動可能に取り付けられている。すなわち、本体支持台5はクランクシャフト200の回転軸方向に沿って移動可能にされている。
【0017】
本体支持台5にはモータ10がその出力軸をX方向に向けて設置されており、モータ10の出力軸の回転は、ギヤボックス11内の傘歯車(図示略)等を介して、軸心をY方向に向けた回転軸12(図2参照)に伝達される。この回転軸12の先部は、本体支持台5に固定された平箱状のギヤボックス13内に挿入され、ギヤボックス13内に収容されている第1平歯車21がこの回転軸12の先端に相対回転不能に取り付けられている。つまり、モータ10によりギヤボックス13内の第1平歯車21を回転駆動することができるように構成されている。
【0018】
ギヤボックス13内には、前記第1平歯車21と、第1平歯車21に噛合する上側歯車列20Aと下側歯車列20Bが収容されている。上歯車列20Aと下歯車列20Bはいずれも、順次噛み合う4つの平歯車(第2平歯車22、第3平歯車23、第4平歯車24、第5平歯車25)から構成されており、それぞれの第2平歯車22が第1平歯車21に噛合している。上側歯車列20Aと下側歯車列20Bはいずれも下流側に配置された歯車ほどピッチ径が小さくなっており、回転速度が増速されるように構成されている。
【0019】
図2に示すように、ギヤボックス13は、その基部15に第1平歯車21と上下の第2平歯車22とが収容されており、この基部15から上下二股に分かれてアーム部16A,16BがX方向に延びていて、上側のアーム部16Aに上側歯車列20Aの第3,第4,第5平歯車23〜25が収容され、下側のアーム部16Bに下側歯車列20Bの第3,第4,第5平歯車23〜25が収容されている。
ギヤボックス13は、本体支持台5を位置調整することによって、クランクシャフト支持装置100に支持されたクランクシャフト200における1番気筒用のカウンタウェイト201,202に対応する位置に移動可能であり、両アーム部16A,16Bは1番気筒用のカウンタウェイト201,202間に挿入可能な寸法に設定されている。
【0020】
また、両アーム部16A,16Bを1番気筒用のカウンタウェイト201,202間に挿入したときに、上側歯車列20Aの第5平歯車25の軸心がねじ孔付きカウンタウェイト201の上側のねじ孔203の軸心とほぼ一致し、下側歯車列20Bの第5平歯車25の軸心がねじ孔付きカウンタウェイト201の下側のねじ孔203の軸心とほぼ一致するように、高さ方向の寸法が予め設定されている。
【0021】
図3、図4は、第4平歯車24と第5平歯車25が収容された部分におけるギヤボックス13の拡大断面図であり、ギヤボックス13は、X方向に延びる接合面17を有する2つのブロック13A,13Bを突き合わせて、ボルト18で締結して一体化されており、2つのブロック13A,13Bの間に形成される収容室19に各平歯車21〜25が収容されている。
【0022】
第4平歯車24は、両ブロック13A,13Bに架け渡されて固定された支持ロッド26に、オイルレスブッシュ27を介して回転自在に取り付けられている。第2,第3平歯車も同様に取り付けられている。
【0023】
第5平歯車25は、その中央に軸部30を有し、この軸部30の両端部がオイルレスブッシュ31を介して両ブロック13A,13Bに回転自在に取り付けられており、軸部30の各端部がブロック13A,13Bから若干突出している。さらに、第5平歯車25の軸部30にはその軸心に沿って延びる円筒状の孔32が貫通形成されている。この孔32は、クランクシャフト200の1番気筒用のねじ孔付きカウンタウェイト201側が大径孔32aにされ、ねじ孔なしカウンタウェイト202側が小径孔32bにされている。
【0024】
大径孔32aには、刃具40とスプリング(弾発部材)60が収納されている。スプリング60は大径孔32aの底部と刃具40の基端面41との間に挟装され、刃具40をねじ孔付きカウンタウェイト201に接近する方向へ弾性付勢している。
【0025】
図5から図9に示すように、刃具40は、軸部42と、軸部42に連なる円板状のメイン刃部43と、メイン刃部43の端面中央に形成されたガイド刃部44と、を備えている。メイン刃部43とガイド刃部44は正面から見ると半円形をなし(図8参照)、メイン刃部43の外周に接する仮想円の中心と、ガイド刃部44の外周に接する仮想円の中心と、軸部42の軸心は、同心上に配置されている。なお、この実施例において、刃具40の軸心とは軸部42の軸心のことを言う。
【0026】
メイン刃部43の表面43aは刃具の軸心に対して略直交する平坦面で形成されている。精確に言うと、図6、図7に示すように、メイン刃部43の表面43aは刃具40の軸心に直交する平面ではなく、軸心から遠ざかるにしたがってメイン刃部43の肉厚が薄くなる方向に極めて僅かながら傾斜している。
一方、ガイド刃部44は、頂部が切断された円錐形を半分に切った如き形状をなし、ガイド刃部44の外周は刃具の軸心に対して傾斜するテーパ面44aをなし、このテーパ面44aがメイン刃部43の表面43aに連なっている。
そして、メイン刃部43の表面43aおよびガイド刃部44のテーパ面44aにおいて半円に切り欠かれた側のエッジが切刃45となる。
【0027】
軸部42は、メイン刃部43に連なる先端側が断面真円形の支持部46とされており、支持部46より基端面41側にはその外周部の一部が基端面41に至るまで垂直に切り欠かれた第1切欠部47が形成されている。また、軸部42の中間部には、第1切欠部47の垂直面に対して直交する水平面に切り欠かれた第2切欠部48と、第1切欠部47の垂直面および第2切欠部48の水平面に対して略45度に交わる面に切り欠かれた第3切欠部49が形成されている。
【0028】
刃具40は、軸部42が第5平歯車25の大径孔32aに挿入され、メイン刃部43とガイド刃部44が大径孔32aから突き出た状態に装着されている。図3、図4に示すように、大径孔32aはその内周面から突き出るストッパ突起33を備えており、このストッパ突起33が刃具40の第2切欠部48に嵌入している。ストッパ突起33は、刃具40の第1切欠部47、第2切欠部48、第3切欠部49を挿通可能で、且つ、第2切欠部48に係合して刃具40と第5平歯車25とを相対回転不能にし、且つ、第2切欠部48内において刃具40の軸方向へ相対移動可能な形状および大きさに形成されている。
【0029】
刃具40の第5平歯車25への装着は、予めスプリング60を第5平歯車25の大径孔32aに挿入しておき、大径孔32aのストッパ突起33が刃具40の軸部42の第1切欠部47に挿入されるように配置して軸部42を大径孔32aに挿入していく。そして、スプリング60に抗して刃具40を押し込み、ストッパ突起33が第3切欠部49に達したところで刃具40を第5平歯車25に対して90度回転し、ストッパ突起33を第2切欠部48に挿入する。この後、刃具40を開放すると、刃具40はスプリング60の弾性により大径孔32aから突き出る方向へ押し出され、図3に示すように、大径孔32aのストッパ突起33が第2切欠部48の後端壁48aに突き当たって、刃具40の飛び出しが阻止される。これにより、第5平歯車25からの刃具40の脱落が防止されるとともに、第5歯車25と刃具40の相対回転が阻止され、刃具40は第5平歯車25と一体となって回転することができる。
【0030】
また、刃具40において断面円形の支持部46の直径は、大径孔32aの内径よりも僅かに小さく設定されており、刃具40は第5平歯車25に装着された状態において、大径孔23a内で径方向に若干移動することができるようにされている。
【0031】
次に、このバリ取り装置1の作用を説明する。
クランクシャフト200のねじ孔付きカウンタウェイト201にねじ孔203を加工した際にねじ孔203の口元203aに生じたバリ220を、バリ取り装置1によって除去する場合には、まず、本体支持台5をY方向に位置調整することによって、ギヤボックス13の両アーム部16A,16Bをクランクシャフトの1番気筒用のカウンタウェイト201,202間に位置させる。
【0032】
次に、移動台3をX方向に位置調整することによって、両アーム部16A,16Bを1番気筒用のカウンタウェイト201,202間に進入させていき、図3に示すように、両アーム部16A,16Bの上下に設置された第5平歯車25,25の軸心を、ねじ孔付きカウンタウェイト201に設けられた上下のねじ孔203の中心におおよそ一致させる。
【0033】
次に、本体支持台5をY方向に移動させることによって、図4に示すように、上下の第5平歯車25に装着された刃具40のガイド刃部44をねじ孔203内に挿入し、刃具40のメイン刃部43の表面43aをねじ孔付きカウンタウェイト201の内側表面201aにほぼ接触させる。
【0034】
このとき、第5平歯車25の軸心とねじ孔203の中心が完全に一致している場合には、ガイド刃部44がねじ孔203内に挿入され、メイン刃部43の表面43aがねじ孔203の口元203aに接触する。その際、刃具40がスプリング60によってねじ孔付きカウンタウェイト201へ接近する方向へ付勢されているので、メイン刃部43の表面43aは所定の圧力でねじ孔203の口元203aに圧接することとなる。
【0035】
この状態で、モータ10を駆動して第5平歯車25を回転させると、メイン刃部43における表面43aのエッジによって構成された切刃45がねじ孔203の口元203aに接触しながら回転し、その際に切刃45が口元203aのバリ220を切り取る。このようにして、切刃45がねじ孔203の口元203aの全周をなぞるので、口元203aの周方向いずれの位置に存在するバリ220も除去することができる。
【0036】
一方、第5平歯車25の軸心とねじ孔203の中心が一致していない場合には、ガイド刃部44をねじ孔203に接近させていったときに、ガイド刃部44全体がねじ孔203内に挿入される前に、ガイド刃部44のテーパ面44aがねじ孔203の口元203aに接触する。ここで、刃具40はスプリング60によってねじ孔付きカウンタウェイト201へ接近する方向へ付勢されており、且つ、刃具40の支持部46が第5平歯車25の大径孔32a内において径方向に若干移動可能に装着されているので、ガイド刃部44のテーパ面44aがねじ孔203の口元203aに接触した後、さらにガイド刃部44をねじ孔203に接近する方向へ移動させると、ガイド刃部44がねじ孔203の口元203aに案内されて、刃具40がねじ孔203の軸心方向に移動せしめられる。その結果、ガイド刃部44のテーパ面44aとメイン刃部43の表面43aとの接続部50にねじ孔203の口元203aに接触し、メイン刃部43の表面43aが所定の圧力でねじ孔203の口元203aに圧接することとなる。
【0037】
この状態で、モータ10を駆動して第5平歯車25を回転させると、第5平歯車25の大径孔32a内での刃具40の径方向移動を伴いながら、ガイド刃部44のテーパ面44aとメイン刃部43の表面43aとの接続部50をねじ孔203の口元203aに接触させた状態を保持しつつ、口元203aになぞらせながら刃具40を回転させることができる。なお、ガイド刃部44は正面から見ると半円形であり、180度以下であるので、第5平歯車25の大径孔32a内での刃具40の径方向移動が保障される。
【0038】
したがって、メイン刃部43における表面43aのエッジによって構成された切刃45がねじ孔203の口元203aに接触しながら回転し、その際に切刃45が口元203aのバリ220を切り取る。このようにして、切刃45がねじ孔203の口元203aの全周をなぞるので、口元203aの周方向いずれの位置に存在するバリ220も除去することができる。
【0039】
また、第5平歯車25の軸心とねじ孔203の中心が一致している場合であっても、あるいは第5平歯車25の軸心とねじ孔203の中心が一致していない場合であっても、刃具40を回転させたときにメイン刃部43の切刃45がねじ孔付きカウンタウェイト201の内側表面201aを傷つけることはない。これは、メイン刃部43の表面43aが刃具40の軸心に対して僅かながら傾斜し、軸心から遠ざかるにしたがってメイン刃部43の肉厚が薄くなるテーパ面にされているので、メイン刃部43の表面43aがねじ孔付きカウンタウェイト201の内側表面201aに面接触することがないからである。なお、メイン刃部43の表面43aをテーパ面とする代わりに、軸心から遠ざかるにしたがってメイン刃部43の肉厚が薄くなる曲面状にしてもよい。
【0040】
以上説明するように、この実施例のバリ取り装置1によれば、ガイド刃部44のテーパ面44aに連続してメイン刃部43の表面43aが形成され、これら表面43aとテーパ面44aの外形が仮想円をなしているので、刃具40のガイド刃部44をねじ孔203に挿入し、メイン刃部43の表面43aをねじ孔203の口元203aに当てて、刃具40を回転することにより、刃具40の表面43aの切刃45で、ねじ孔203の口元203aに生じているバリ220を確実に除去することができる。
【0041】
また、刃具40のガイド刃部44が半円以下に形成されているので、刃具40の軸心とねじ孔203の中心が一致していない場合に、刃具40が第5平歯車25の大径孔32a内で径方向に偏位することにより、メイン刃部43の表面43aとガイド刃部44のテーパ面44aとの接続部50をねじ孔203の口元203aに当てることが可能となり、ねじ孔203の口元203aに生じているバリ220を確実に除去することができる。
【0042】
さらに、刃具40を、スプリング60によってねじ孔付きカウンタウェイト201のねじ孔203に接近する方向へ付勢しながら回転させているので、刃具40の表面43aとテーパ面44aとの接続部50を常にねじ孔203の口元203aに当てて口元203aになぞらせながら刃具40を回転させることができ、ねじ孔203の口元203aに生じているバリ220を確実に除去することができる。
【0043】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、孔の口元のバリは、クランクシャフトのカウンタウェイトにねじ孔を加工した際に生じたバリに限らず、被加工物はクランクシャフトに限るものでもなく、この発明のバリ取り装置は、あらゆる被加工物に対して孔加工した際に孔の口元に生じるバリの除去に対応可能である。
また、ガイド刃部の外形は半円以下が望ましいが、半円形に限るものではなく、1/3円形や1/4円形などでもよい。
また、孔はねじ孔でなく、単なる貫通孔であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明に係るバリ取り装置の平面図である。
【図2】この発明に係るバリ取り装置の正面図である。
【図3】この発明に係るバリ取り装置における刃具周りの要部拡大断面図(その1)である。
【図4】この発明に係るバリ取り装置における刃具周りの要部拡大断面図(その2)である。
【図5】前記刃具の外観斜視図である。
【図6】前記刃具の平面図である。
【図7】前記刃具の正面図である。
【図8】前記刃具の側面図である。
【図9】前記刃具の軸部の端面図である。
【図10】刃具の作用を説明する図である。
【図11】バリ取り前のねじ孔の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 バリ取り装置
40 刃具
43a 表面(平坦面)
44a テーパ面
60 スプリング(弾発部材)
200 クランクシャフト(被加工物)
203 ねじ孔(孔)
203a 口元
220 バリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に加工した孔の口元に生じたバリを除去するバリ取り装置であって、先端部に形成され軸心に対して傾斜するテーパ面に連続して前記軸心に対して略直交する平坦面が形成された刃具を具備し、前記刃具の前記テーパ面と前記平坦面の外形が仮想円に形成されていることを特徴とするバリ取り装置。
【請求項2】
前記刃具の前記テーパ面と前記平坦面は、半円以下の円形をなすことを特徴とする請求項1に記載のバリ取り装置。
【請求項3】
前記刃具を、弾発部材によって前記被加工物の前記孔に接近する方向へ付勢しながら前記軸心周りに回転させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバリ取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−131922(P2009−131922A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308903(P2007−308903)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】