説明

バルブステムシール装置

【課題】バルブステムシールが、バルブステムガイドから脱落する問題を回避出来るバルブステムシール密封装置を提供することを目的とする。
【解決手段】バルブステムガイドの外周に保持された円筒形状の金属環と、前記金属環の一端側に一体形成した、バルブステムと密封摺動するゴム状弾性材製のシールリップとを備えたバルブステムシールを前記バルブステムガイド側に固定しているバルブステムシール装置において、前記バルブステムガイドの外周面に形成した前記シールリップ側に向かって拡径する円錐台形状面と、前記金属環の円筒状内周面との間で嵌合保持されているストップリングを備え、前記ストップリングがカット部を有すると共に、前記金属環の他端側に前記ストップリングの軸方向移動を制限する移動制限手段を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブステムシール装置に係り、更に詳しくは、自動車エンジンや一般産業機械のバルブ部に用いられるバルブステムシール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図6に示すように、バルブステムガイド100の外周に保持された円筒形状の金属環200と、この金属環200の一端側に一体形成した、バルブステム300と密封摺動するゴム状弾性材製のシールリップ400とを備えたバルブステムシール700をバルブステムガイド100側に固定しているバルブステムシール装置が知られている。(特許文献1、2)
【0003】
そして、このバルブステムシール装置は、バルブステムシール700が、バルブステムガイド100から脱落することを防止する為に、金属環200の内周面に形成したゴム状弾性材層210に形成した突起220をバルブステムガイド100の外周面に設けた溝110に係合させる構成としている。
【0004】
しかし、突起220は、ゴム状弾性材である為、機械的強度が十分でないばかりでなく、熱的影響や経時変化により、嵌合固定力が低下し、振動による負荷やバルブステムシール装置内の内圧上昇による負荷が加わった場合、バルブステムシール700のシール機能が低下するばかりでなく、最悪の場合、バルブステムシール700が、バルブステムガイド100から脱落する問題を惹起した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3155483号公報
【特許文献2】特開2005−127147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて、バルブステムシールとバルブステムガイドとの係合が、十分な機械的強度を備えると共に、熱的影響や経時変化によっても、嵌合固定力が低下することが無い為、振動による負荷やバルブステムシール装置内の内圧上昇による負荷が加わった場合においても、バルブステムシールの良好なシール機能が維持できると共に、バルブステムシールが、バルブステムガイドから脱落する問題を回避出来るバルブステムシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバルブステムシール装置は、バルブステムガイドの外周に保持された円筒形状の金属環と、前記金属環の一端側に一体形成した、バルブステムと密封摺動するゴム状弾性材製のシールリップとを備えたバルブステムシールを前記バルブステムガイド側に固定しているバルブステムシール装置において、
前記バルブステムガイドの外周面に形成した前記シールリップ側に向かって拡径する円錐台形状面と、前記金属環の円筒状内周面との間で嵌合保持されているストップリングを備え、前記ストップリングがカット部を有すると共に、前記金属環の他端側に前記ストップリングの軸方向移動を制限する移動制限手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のバルブステムシール装置によれば、バルブステムシールとバルブステムガイドとの係合が、十分な機械的強度を備えると共に、熱的影響や経時変化によっても、嵌合固定力が低下することが無い為、振動による負荷やバルブステムシール装置内の内圧上昇による負荷が加わった場合においても、バルブステムシールの良好なシール機能が維持できると共に、バルブステムシールが、バルブステムガイドから脱落する問題を回避出来る。
また、請求項2記載の発明のバルブステムシール装置によれば、金属環の一部を折り曲げる事により、ストップリングによるバルブステムシールとバルブステムガイドとの嵌合固定を確実に行える。
【0009】
更に、請求項3記載の発明のバルブステムシール装置によれば、ストップリングによるバルブステムシールとバルブステムガイドとの嵌合固定を確実に行えると共に、バルブステムシールのバルブステムガイドからの取り外しが容易である。
更にまた、請求項4記載の発明のバルブステムシール装置によれば、ストップリングの軸方向移動を制限する移動制限手段がフランジ部であったとしても、バルブステムシールのバルブステムガイドからの取り外しが可能である。
【0010】
また、請求項5記載の発明のバルブステムシール装置によれば、ストップリングとバルブステムガイドとの間の嵌合力を高める事が出来る。
更にまた、請求項6記載の発明のバルブステムシール装置によれば、ストップリングと金属環との間の嵌合力を高める事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る第1の態様のバルブステムシール装置の縦断面図。
【図2】図1のバルブステムシール装置が固定される前の状態の縦断面図。
【図3】本発明に係る第2の態様のバルブステムシール装置の縦断面図。
【図4】第2の態様のバルブステムシール装置に使用する留め輪の平面図。
【図5】本発明に係る第2の態様のバルブステムシール装置の部分側面図。
【図6】従来技術に係るバルブステムシール装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1及び図2に基づき本発明に係る第1の態様のバルブステムシール装置について説明する。
【0013】
図1において、本発明に係るバルブステムシール装置は、バルブステムガイド1の外周に保持された円筒形状の金属環2と、この金属環2の一端側に一体形成した、バルブステム3と密封摺動するゴム状弾性材製のシールリップ4とを備えたバルブステムシール7をバルブステムガイド1側に固定する構成となっている。
【0014】
そして、バルブステムシール7をバルブステムガイド1側に固定する方策として、バルブステムガイド1の外周面に形成したシールリップ4側に向かって拡径する円錐台形状面11と、金属環2の円筒状内周面21との間で嵌合保持されているストップリング5を備え、ストップリング5が円周上1箇所カット部51を有すると共に、金属環2の他端側にストップリング5の軸方向移動を制限する為に、金属環2を内方に折り曲げたフランジ部22を設けている。
【0015】
また、ストップリング5は、その内周面には、バルブステムガイド1の円錐台形状面11に対応する円錐台形状部52が形成され、その外周面には、金属環2の円筒状内周面21に対応する円筒状外周面53が形成されている。
【0016】
そして、この様な構成を備えるバルブステムシール装置は、図2に示す状態を経て、図1に示す状態に組み立てられるものである。
すなわち、図2に示す様に、バルブステムシール7がバルブステムガイド1側に近寄った状態(図上下方に移動した状態)においては、フランジ部22の内周端とバルブステムガイド1外周面との間隙は、ストップリング5が通過出来るだけの大きさを備えている。
この為、円周上1箇所カット部51を有するストップリング5を縮径させる事により(カット部51の端部が相互に接する状態に近づける事により)、フランジ部22の内周端とバルブステムガイド1外周面との間隙を通過させる。
そして、ストップリング5がこの間隙を通過すると、自らの復元力により拡径して図2に示す状態となる。
【0017】
この結果、カット部51の間隙は、元の間隙の大きさに戻り、ストップリング5の下方端面はフランジ部22に接して、軸方向下方への移動を制限される。
図2の状態から、バルブステムシール7を図上上方に移動させると、ストップリング5は、ストップリング5の内周側に設けた円錐台形状部52が、バルブステムガイド1に設けた円錐台形状面11と接しながら拡径し、ストップリング5の外周側に設けた円筒状外周面53が金属環2の円筒状内周面21に接することになる。
【0018】
この状態で、ストップリング5は、更なる拡径を金属環2の円筒状内周面21により阻害される為、これ以上ストップリング5が図上上方に移動することは無い。
この状態が、図1に示した状態である。
この為、バルブステムシール7とバルブステムガイド1との係合が、十分な機械的強度を備えると共に、熱的影響や経時変化によっても、嵌合固定力が低下することが無い為、振動による負荷やバルブステムシール装置内の内圧上昇による負荷が加わった場合においても、バルブステムシール7の良好なシール機能が維持できると共に、バルブステムシール7が、バルブステムガイド1から脱落する問題を回避出来る。
【0019】
ストップリング5の材質としては、合成樹脂材、金属材等が適宜選択して用いられるが、縮径が容易な点から合成樹脂材が好ましい。
シールリップ4を構成するゴム状弾性材としては、フッ素ゴム、NBR、シリコンゴム等が適宜選択して用いられる。
【0020】
ついで、図3乃至図5に基づき本発明に係る第2の態様のバルブステムシール装置について説明する。
第1の態様のバルブステムシール装置と相違する点は、第1の態様におけるストップリング5の軸方向移動を制限する移動制限手段が、金属環2を内方に折り曲げたフランジ部22で有ったのに対し、第2の態様におけるストップリング5の軸方向移動を制限する移動制限手段が、金属環2に設けた留め孔23と係合する突起部61を備えた留め輪6であることである。
【0021】
すなわち、留め輪6は、図4に示す様に、金属材製の環の円周上1箇所にカット部62を備え、カット部62と180°ずれた位置に突起部61が形成されている。
そして、ストップリング5をバルブステムガイド1の外周面に形成したシールリップ4側に向かって拡径する円錐台形状面11と、金属環2の円筒状内周面21との間で嵌合保持した状態で、留め輪6を縮径しながら金属環2の円筒状内周面21内に挿入し、留め輪6の突起部61が、図5に示す様な、バルブステムシール7の金属環2に設けた留め孔23と係合し、ストップリング5の軸方向移動を制限する。
【0022】
この様な構成とする事により、留め孔23を介して留め輪6の突起部61を径方向内方に押し込む事により、留め輪6と共にストップリング5を取り外す事が出来る。
この事により、ストップリング5によるバルブステムシール7とバルブステムガイド1との嵌合固定を確実に行えると共に、バルブステムシール7のバルブステムガイド1からの取り外しが容易となる。
【0023】
また、図示していないが、金属環2を他端側から複数本の切込を形成している態様とする事により、金属環2の拡径が容易となる為、ストップリング5の軸方向移動を制限する移動制限手段がフランジ部22であったとしても、バルブステムシール7のバルブステムガイド1からの取り外しが可能である。
【0024】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
自動車エンジンや一般産業機械のバルブ部に用いられるバルブステムシール装置として有用である。
【符号の説明】
【0026】
1 バルブステムガイド
2 金属環
3 バルブステム
4 シールリップ
5 ストップリング
6 留め輪
7 バルブステムシール
11 円錐台形状面
21 円筒状内周面
22 フランジ部
23 留め孔
51 カット部
52 円錐台形状部
53 円筒状外周面
61 突起
62 カット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブステムガイド(1)の外周に保持された円筒形状の金属環(2)と、前記金属環(2)の一端側に一体形成した、バルブステム(3)と密封摺動するゴム状弾性材製のシールリップ(4)とを備えたバルブステムシール(7)を前記バルブステムガイド(1)側に固定しているバルブステムシール装置において、
前記バルブステムガイド(1)の外周面に形成した前記シールリップ(4)側に向かって拡径する円錐台形状面(11)と、前記金属環(2)の円筒状内周面(21)との間で嵌合保持されているストップリング(5)を備え、前記ストップリング(5)がカット部(51)を有すると共に、前記金属環(2)の他端側に前記ストップリング(5)の軸方向移動を制限する移動制限手段を設けたことを特徴とするバルブステムシール装置。
【請求項2】
前記移動制限手段が、前記金属環(2)の他端側を内方に折り曲げたフランジ部(22)であることを特徴とする請求項1記載のバルブステムシール装置。
【請求項3】
前記移動制限手段が、前記金属環(2)に設けた留め孔(23)と係合する突起部(61)を備えた留め輪(6)であることを特徴とする請求項1記載のバルブステムシール装置。
【請求項4】
前記金属環(2)が、他端側から複数本の切込を形成していることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のバルブステムシール装置。
【請求項5】
前記ストップリング(5)の内周面に、前記円錐台形状面(11)に対応する円錐台形状部(52)が形成されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載のバルブステムシール装置。
【請求項6】
前記ストップリング(5)の外周面に、前記円筒状内周面(21)に対応する円筒状外周面(53)が形成されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載のバルブステムシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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