説明

バルーンカテーテルおよびバルーンカテーテル用コネクタ

【課題】バルーンカテーテル内に残存する気泡を簡便に取り除くとともに、カテーテルの低プロファイル化とデフレーションタイム短縮を両立させる。
【解決手段】バルーンカテーテル1はカテーテルシャフト2先端付近で相互に連通する二つの流体用ルーメン5を備えている。また、該流体用ルーメンへ別々に流体を流入、排出させることを可能にするコネクタをハブ4に接続することで、シャフト内をフラッシュすることが可能となり、バルーン3内に残存する恐れのある気泡を簡便に取り除くことができる。また、コネクタを外せば、流体用ルーメンと連通するハブ内の通路が基端側開口部付近9で連通しているため、二つの流体用ルーメンの両方から同時にバルーンへの液体の注入が可能となり、低プロファイル化とデフレーションタイム短縮を両立させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮的経管的に体内に導入され、血管内狭窄部治療や体内管腔閉塞に使用されるバルーンカテーテルおよびバルーンカテーテル用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管などの脈管内の所定の位置に挿入し、必要に応じて膨張させることで治療を行うバルーンを備えたカテーテルが使用されている。特に、血管内において狭窄あるいは閉塞が生じた場合において、血管の狭窄部位あるいは閉塞部位を拡張して血管末梢側の血流を改善するために行う血管形成術(PTA:Percutaneous Transluminal Angioplasty、PTCA: Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)などは、多くの医療機関において多数の術例があり、この種の症例における手術としては一般的になっている。
【0003】
PTA、PTCAに用いられるバルーンカテーテルは、主に血管の狭窄部位あるいは閉塞部位を拡張するために、ガイドカテーテルとガイドワイヤとのセットで使用される。このバルーンカテーテルを用いた一般的な術例は以下のとおりである。まずガイドカテーテルを大腿動脈、上腕動脈、橈骨動脈等の穿刺部位から挿通し大動脈を経て冠状動脈の入口に先端を位置させた後、バルーンカテーテルを貫通させたガイドワイヤを血管の狭窄部位あるいは閉塞部位を越えて前進させる。その後バルーンカテーテルをガイドワイヤに沿って前進させ、バルーンを狭窄部位あるいは閉塞部位に位置させた状態で膨張させて、狭窄部位あるいは閉塞部位を拡張する手順で行い、そしてバルーンを収縮させて体外に除去する。このバルーンカテーテルは、血管の狭窄部位あるいは閉塞部位の治療だけに限定されず、血管内への挿入、並びに種々の体腔、管状組織への挿入を含む多くの医療的用途に有用である。
【0004】
バルーンカテーテルを用いてバルーンを拡張する際には、体内での視認性を確保するために造影剤を混入した生理食塩水が使用される。これによりバルーンのX線造影画像からバルーンの形状や大きさを確認することが可能となり、バルーンカテーテルを安全に使用することができる。そのため、もしバルーン内に気泡が残存すると、X線造影画像が不明瞭になり、バルーンカテーテルを安全に使用することが困難になる恐れがある。また、何らかの原因でバルーンが破裂した場合には、血液中に気泡が混入してしまう危険性も考えられる。
【0005】
このような問題を解決するために、バルーン内に残存する気泡の除去を簡便に行うための種々の技術が開示されている。
【0006】
特許文献1では、カテーテル本体の基端側から先端側に延び、且つバルーンの内部空間とそれぞれ連通するバルーン膨張用液体注入用副通路と、バルーン内および副通路内の空気の排気用副通路を設け、注入用副通路には注射器装着時には開口し、非装着時には閉塞する弁体が設けられており、排気用副通路の基端は外部と連通可能な閉塞端となっていることを特徴とするバルーンカテーテルが開示されている。
【0007】
特許文献2では、先端が開口している第1のルーメンと該第1のルーメンの先端方向に伸びる第2のルーメンとを有する内管と、内管と同軸的に設けられるとともに内管の先端より所定長後退した位置に先端を有し、内管の外面との間に第3のルーメンを形成する外管と、基端部が外管に取り付けられ、先端部が内管に取り付けられ、先端部付近で第2のルーメンと連通し、基端部付近で第3のルーメンと連通する拡張体と、内管の基端部に設けられた、第1のルーメンと連通する第1の開口部および第2のルーメンと連通する第2の開口部と、外管の基端部に設けられた、第3のルーメンと連通する第3の開口部とを有することを特徴とする拡張体付カテーテルが開示されている。
【0008】
これらの先行技術ではバルーン内に連通する注入用ルーメン以外に、カテーテル先端側で注入用ルーメンと連通する排気用ルーメンを備えることで、バルーン内に残存する気泡を除去するものであり、排気用ルーメンを余分に1つ加えることによってカテーテルのプロファイルの増大を招く。バルーンカテーテルを狭い体腔や血管の狭窄部位等で使用する際には、プロファイルができるだけ小さいほうが挿入しやすい。
【0009】
一方、それぞれのルーメンを小さくすることにより、プロファイルを増大させることなく排気用ルーメンを設ける場合には、注入用ルーメンも小さくなるため、バルーンを収縮させるのに必要となる時間(デフレーションタイム)が長くなる。それに伴って血管を閉塞して血流を遮断する時間が長くなることが考えられる。冠動脈や頚動脈等の重要な動脈において長時間末梢に血流が流れなくなると、冠動脈の場合は心臓の状態悪化、頚動脈の場合は意識障害等の副作用が起こってしまう。
【特許文献1】特公平2−3625号公報
【特許文献2】特公平3−18905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の問題に鑑み本発明が解決しようとするところは、バルーンカテーテル内に残存する気泡を簡便に取り除くことが可能であるとともに、カテーテルの低プロファイル化とデフレーションタイム短縮を両立させることができるバルーンカテーテルを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決すべく本発明者は鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
流体用ルーメンを二つ有するカテーテルシャフトと、カテーテルシャフト先端に配置されたバルーンと、カテーテルシャフト基端部に配置されたハブから構成されるバルーンカテーテルであって、前記流体用ルーメンは、少なくとも一方が前記バルーンに直接連通するとともに、カテーテルシャフト先端付近において相互に連通する部分を有し、カテーテルシャフトの中間部からハブの先端部までは各々独立して存在し、ハブ基端部では、一体となった流路を形成することを特徴とする、バルーンカテーテルに関する。
【0012】
また本発明は、前記バルーンカテーテルに接続するコネクタであって、前記コネクタはハブとの接続部と、少なくとも一つの基端側開口部と、基端側から先端側まで独立して存在する通路と、先端側開口部とを有し、前記コネクタの先端側開口部は、ハブ先端部からハブ内部において独立している流路と液密に接続可能であることを特徴とする、バルーンカテーテル用コネクタに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバルーンカテーテルおよびバルーンカテーテル用コネクタによれば、バルーンカテーテル内に残存する気泡を簡便に取り除くことが可能であるとともに、カテーテルの低プロファイル化とデフレーションタイム短縮を両立させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態をより詳細に説明するが、本発明は種々の実施形態が採用可能であり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明に係るバルーンカテーテル1は図1、図3、図5、図7に示すように流体用ルーメン5を有するカテーテルシャフト2と、カテーテルシャフト2の先端側に取付けられたバルーン3と、カテーテルシャフト2の基端部に配置されたハブ4から構成される。
【0016】
本発明において、流体用ルーメン5は、図1のようにカテーテルシャフト内部において、二つのルーメンが平行に配設された構造(バイアキシャル構造)でもよく、図3、図5、図7に示すように同軸上に配設された構造(コアキシャル構造)でもよい。なお、これら以外の構造でも本発明の発明の効果を何ら制限するものではない。
【0017】
ガイドワイヤルーメン10の基端側開口部10Bは、図1または図5に示す実施形態のように、ガイドワイヤルーメン10が、カテーテル1の基端部から先端側に渡って延在し、ハブの基端部に基端側開口部10Bを有するオーバー・ザ・ワイヤ型(OTW型)に配設しても良いし、図3と図7に示す実施形態のように、ガイドワイヤルーメン10の基端側開口部10Bが、バルーンカテーテル1の基端部と先端部の途中に設けられている高速交換型(RX型)に配設してもよい。なお、これら以外の構造でも本発明の効果を何ら制限するものではない。
【0018】
カテーテルシャフト内部において、ガイドワイヤルーメン10は二つの流体用ルーメン5がバイアキシャル構造の場合には、前記流体用ルーメン5に平行に配設された構造(図1)や、流体用ルーメン5の一方のルーメンと同軸上に配設することが可能である。また、二つの流体用ルーメン5がコアキシャル構造の場合には、流体用ルーメン5と平行に配設された構造(図3)や、流体用ルーメン5の外側ルーメン内で内側シャフトと平行に配設された構造や、流体用ルーメン5と同軸上に配設された構造(図5、図7)とすることが可能である。なお、これら以外の構造でも本発明の効果を何ら制限するものではない。
【0019】
図3、図5、図7のようなコアキシャル構造の場合、基端側と先端側において、ルーメンを構成するチューブの硬さを変化させることが容易である。たとえば、基端側から先端側にかけて徐々に柔らかくなるようにチューブを配設することで、長さ方向における連続的な剛性の分布を実現しやすく、バルーンカテーテル1の設計における操作性の向上という観点からは、コアキシャル構造の方が好ましい場合がある。また、バルーンカテーテル1に配設されるルーメンは流体用ルーメン5とガイドワイヤルーメン10のみに限定されず他のルーメンを有しても良い。たとえばバルーンカテーテル1の機能上必要とされる場合には、薬剤注入用ルーメンなどを新たに配設することも可能である。
【0020】
流体用ルーメンの少なくとも一方が、バルーンに直接連通する部分に関して、図1あるいは図3にそれぞれ示した実施形態において、二つの流体用ルーメン5は、先端がどちらもバルーンカテーテル1の外部とは連通しておらず(図1;図2(I)、図3;図4(IX))、バルーンカテーテル1の先端付近の連通部7で相互に連通した構造であり(図1;図2(II)、図3;図4(X))、流体用ルーメン5のうち少なくとも一方のルーメンがバルーン3との連通部6を通じて、バルーン3から流体の流入、流出を許容する構造を有している(図1;図2(III)、図3;図4(XI))。
【0021】
一方、図5、図7に示した実施形態においては、二つの流体用ルーメン5の先端がバルーンカテーテル1の外部とは連通していない点は図1、図3と同様であるが(図5;図6(XVII)、図7;図8(XXVII))、流体用ルーメン5はバルーン2の内側を通じて相互に連通している(図5;図6(XVIII)(XIX)、図7;図8(XXVIII)(XXIX))。流体用ルーメン5の両方がバルーン3との連通部6を通じて、バルーン3から流体の流入、流出を許容する構造を有している。
【0022】
本発明において、流体用ルーメン5は、カテーテルシャフト内部を経てハブ4の先端部まで、各々独立して存在しており、流体用ルーメン5に通じるハブ4内の通路8は、ハブ先端側の開口部からハブ内部においても別々の通路として存在している(図1;図2(IV)(V)(VI)、図3;図4(XIII)(XIV)(XV)、図5;図6(XX)(XXI)(XXII)(XXIII)(XXIV)、図7;図8(XXXII)(XXXIII)(XXXIV))。ハブ4内の通路は、ハブ4の基端部において、一体となった流路9を形成するという特徴を持っている(図1;図2(VII)、図3;図4(XVI)、図5;図6(XXV)、図7;図8(XXXV))。
【0023】
本発明において、バルーンカテーテル1のシャフト2の内径及び外径は特に制限はされない。いずれの部位の外径も細ければ細いほどカテーテルの狭窄部位への挿入性は向上するが、バルーン3の拡張・収縮の応答性に大きな影響を及ぼす流体用ルーメン5の径方向の断面積やシャフトの耐圧強度などを考慮して適宜選択することが出来る。たとえば外径について一例を挙げると、一般的なPTCA用のバルーンカテーテルの場合、外径は0.45mmから1.30mm、好ましくは0.55mmから1.15mmである。
【0024】
本発明において、流体用ルーメン5とバルーン3の連通部6は、シャフト2上に穴を設けることにより流体用ルーメンとバルーンを連通させてもよく、流体用ルーメンの先端側開口部とバルーンを連通させても良い。すなわち、図1、図3、図5の実施形態に示すように、バルーン3内部に位置するシャフト2上に開けられた穴が連通部となっている構造でもよく、流体用ルーメンの先端側開口部が流体用ルーメンとバルーンの連通部となっている構造でもよい。図5の実施形態では、バルーン3は先端側と基端側において、流体用ルーメンと連通しているが、基端側の連通部は、コアキシャル構造に配置された流体用ルーメンのうち、外側の流体用ルーメンの先端側開口部と連通するとともに、内側の流体用ルーメンとは流体用ルーメンを構成するシャフト上に穴を設けることにより連通させた状態を示している。図7の実施形態では、流体用ルーメン5の先端側開口部が連通部となっている。なお、これら以外の構造でも本発明の効果を何ら制限するものではない。
【0025】
本発明において、2つの流体用ルーメン5が相互に連通する連通部7に関しては、流体用ルーメンとバルーンの連通部6と同じ位置に配置しても良いし、別の位置に配置しても良い。すなわち、図1、図3の実施形態のようにバルーン3との連通部6とは別にバルーンカテーテル1の先端側で連通部7を形成している構造でもよく、また図5、図7のように、流体用ルーメン5とバルーン3の連通部6及びバルーン3内部を通じて流体用ルーメン5が連通している構造としてもよい。また、さらにこれら以外の構造でも本発明の効果を何ら制限するものではないが、バルーン内の気泡を効果的に取り除くという観点においてはは、流体用ルーメン5が相互に連通する連通部7の位置は、バルーン3の基端部よりも先端側であることが好ましい。
【0026】
本発明において、バルーンカテーテル1のシャフト2の材質は特に限定されない。つまり、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマーなどが使用可能である。
【0027】
本発明において、バルーン3の製造方法としてはディッピング成形、ブロー成形等があり、使用用途に応じて適当な方法を選択することができる。心臓の冠状動脈の狭窄部を拡張治療するバルーンカテーテル1の場合は、十分な耐圧強度を得るためにブロー成形が好ましい。ブロー成形によるバルーンの製造方法の一例を以下に示す。まず、押出成形等により任意寸法のチューブ状パリソンを成形する。このチューブ状パリソンをバルーン形状に一致する型を有する金型内に配置し、二軸延伸工程により軸方向と径方向に延伸することにより、前記金型と同一形状のバルーン3を成形する。尚、二軸延伸工程は加熱条件下で行われても良いし、複数回行われても良い。また、軸方向の延伸は径方向の延伸と同時に若しくはその前後に行われても良い。さらに、バルーン3の形状や寸法を安定させるために、アニーリング処理を実施しても良い。また、血管閉塞用のバルーンカテーテル1の場合には、ブロー成型以外にもディッピング成型や押出成型したチューブを加工することによりバルーン3を製造することが可能である。
【0028】
バルーン3が拡張されたときの外径は0.50mmから35.00mm、好ましくは1.00mmから30.00mmであり、バルーン3の長さは2.00mmから80.00mm、好ましくは3.50mmから60.00mmである。
【0029】
本発明において、バルーン3の製造に使用される樹脂は特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエチレンテレフタレート、ラテックス、シリコンゴム、スチレンオレフィンゴムなどが使用可能であり、これらの樹脂の2種類以上を混合したブレンド材料や2種類以上を積層した多層構造を有する材料であっても構わない。
【0030】
本発明において、ハブ4を構成する材質としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリサルホン、ポリアリレート、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリオレフィン等の樹脂が好適に使用できる。また、ハブ4の基端側開口部は注入用シリンジ、三方活栓、Yコネクタ等を接続できるように雌ルアーロック構造であることが好ましい。
【0031】
本発明において、バルーンカテーテル1の加工方法については接着剤による接着、融着可能な材質の組み合わせである場合は融着等の方法が使用可能である。接着剤を使用する場合、接着剤の組成及び化学構造、硬化形式は限定されない。つまり、組成及び化学構造の点からは、ウレタン型、シリコン型、エポキシ型、シアノアクリレート型等の接着剤が好適に使用され、硬化形式の点からは、2液混合型、UV硬化型、吸水硬化型、加熱硬化型等の接着剤が好適に使用される。接着剤を使用する場合、接続部位の剛性が、該接続部位の前後で不連続に変化しない程度の硬化後の硬度を有する接着剤を使用することが好ましく、接続部位の材質、寸法、剛性等を考慮して接着剤を選択することが可能である。また、接続部位の細径化を実現するために接続部を加熱処理しても良く、ポリオレフィン等の難接着性の材質の場合は、接続部位を酸素ガス等でプラズマ処理し接着性を向上させた上で接着しても良い。融着により接続する場合には、必要なルーメンを確保するために、任意寸法・形状の芯材を挿入しても良い。この場合、加工終了後に芯材を除去することを考慮すると芯材の外表面にはポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリパラキシリレン、ポリモノクロロパラキシリレン等をコーティングしておき、芯材を除去しやすくしておくことが好ましい。使用する前記芯材の寸法や断面形状等は本発明の効果を何ら制限するものではなく、加工時の作業性や必要とされるルーメンの断面積等を考慮して決定され得る。
【0032】
本発明において、バルーンカテーテル1にコアワイヤやX線不透過マーカーが設けられていても良い(図示せず)。コアワイヤの役割はガイドワイヤに沿って体外からバルーンカテーテル1を押し進めていく際の操作性を向上させ、バルーンカテーテル1のキンク(折れ)を防止することであり、使用される材料種については特に制限を受けない。コアワイヤの寸法や取付け位置についても、シャフト2の寸法や材質、使用目的等を考慮して決定することができる。X線不透過マーカーに関しては、本発明に係るバルーンカテーテル1を用いた治療中にバルーンカテーテル1の特定部位の視認性を向上させ、バルーンカテーテル1の位置決めを容易に行うことを目的として設けてもよい。X線不透過マーカーはX線不透過性を有する材料であれば良く、金属や樹脂等の材料の種類は問われない。また、設ける位置、個数等も問われず、バルーンカテーテル1の使用目的に応じて設定することが可能である。
【0033】
本発明において、バルーンカテーテル1の外面には、血管内或いはガイドカテーテル内への挿入を容易にする為に親水性のコーティングを施すことができる。すなわち、シャフト2の外面やバルーン3の外面等の血液と接触する部位の少なくとも一部に血液と接触した際に潤滑性を呈する親水性のコーティングを施すことが可能である。但し、親水性のコーティングを施す部位、施す長さについてはバルーンカテーテル1の使用目的に応じて決定できる。親水性のコーティングの種類は本発明の効果を制限するものではなく、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタアクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーが好適に使用でき、コーティング方法も限定されない。
【0034】
バルーンカテーテル1の使用目的によっては、バルーン3の拡張時にスリッピングを生じないように、バルーン3の外面に疎水性のコーティングを施すことができる。疎水性のコーティングの種類は特に限定されず、シリコン等の疎水性ポリマーが好適に使用できる。
【0035】
本発明に関わるバルーンカテーテル1に接続するコネクタ12は、ハブ先端部からハブ内部において独立している流路と液密に接続可能であればよく、ハブ内部の流路によって種々の形状を採用することが可能である。例えば、ハブ内部の通路がバイアキシャル構造である場合(図1、図5)には、図9や図10の構造が採用可能であり、ハブ内部の通路がコアキシャル構造の場合(図3、図7)には、図11や図12の構造が採用可能である。
【0036】
コネクタ12は少なくとも1つの注入口13と、ハブ4との接続部15と、注入口13から接続部15まで連通する通路14を備え、コネクタ12がハブ4に取り付けられた際には、2つの流体用ルーメン5と連通するハブ4内の通路8の基端側開口部付近の連通部9が別々に分断され、流体用ルーメン5の基端部とそれぞれ別々に連通しているハブ4内の通路8が延長され、2つの流体用ルーメン5にそれぞれ別々に流体の流入、流出が可能となる構造であればよく、図9〜図12以外の構造でも発明の効果を何ら制限するものではない。
【0037】
また、図9、図11のコネクタ12はバルーンカテーテル1のハブ4の内側に嵌る形で接続する構造であり、図10、図12のコネクタ12はバルーンカテーテル1のハブ4の外側に嵌る形で接続する構造となっているが、接続部はこれら以外の構造でも発明の効果を何ら制限するものではない。コネクタ12に少なくとも1つ存在する注入口13に関しては、注入用シリンジ、三方活栓、Yコネクタ等を接続できるように雌ルアーロック構造であることが好ましい。コネクタ12を構成する材質としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリサルホン、ポリアリレート、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリオレフィン等の樹脂が好適に使用できる。
【0038】
図1のバルーンカテーテル1に図9のコネクタ12が接続された状態が図13に示されており、また図3のバルーンカテーテル1に図12のコネクタ12が接続された状態が図14に示されている。図13、図14を参照して本発明に関わるバルーンカテーテル1における空気の排出方法について説明する。バルーンカテーテル1にコネクタが接続されることにより、カテーテルシャフト2内の二つの流体用ルーメンの一方が注入用ルーメンとなり、もう片方が排出用ルーメンとして機能する。まず初めに、コネクタ12の注入用通路14Aから造影剤を混入した生理食塩水等の液体を注入する。注入された液体は、ハブ4の注入用通路8A及びバルーンカテーテル1の注入用ルーメン5Aを通じて空気を押し出すようにバルーンカテーテル1の先端付近まで流入する。注入された液体が注入用ルーメン5Aと排出用ルーメン5Bの連通部7まで到達すると、その後液体は排出用ルーメン5Bの方へ流入する。以上のように、該コネクタの注入口から、注入用ルーメンおよびバルーンを経て、排出用ルーメンまで一つながりで連通する通路ができるため、シャフト内をフラッシュすることが可能となり、バルーン内に残存する恐れのある気泡を簡便に取り除くことができる。
ここで、バルーン3内の空気はシャフト2とバルーン3の連通部6から注入された液体によって取り除くことも可能であるが、バルーン3の拡張前にバルーン拡張防止用カバー16を被せておくことでバルーン3内への空気の進入を防ぐことも可能であるため、バルーン拡張防止用カバー16の使用が好ましい。
【0039】
このバルーン拡張防止用カバー16の材質はバルーン3の拡張圧で変形しない材質であれば特に限定されず、バルーン3の収縮状態の外径に適合する内径を有することが好ましい。その後、排出用ルーメン5Bに流入した液体は、空気を押し出すようにハブ4の排出用通路8Bを通じて排出され(図13に関しては、さらにコネクタ12の排出用通路14Bを通じて排出され)、シャフト2とバルーン3内の空気の排出が達成される。
【0040】
空気の排出操作後はコネクタ12を取り外すことによって、図1、図3、図5、図7のように排出用ルーメン5Bを注入用ルーメン5Aとして利用し、流体用ルーメン5を同時に使用してバルーン3への造影剤を混入した生理食塩水等の液体の注入が可能となる。そのため、排出用ルーメン5Bが注入に使用できない特許文献1、特許文献2と比べてデフレーションタイムの短縮が可能となり、それに伴ってバルーンカテーテル1の低プロファイル設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るバルーンカテーテルの一実施例であり、2つの流体用ルーメンがバイアキシャル構造、ガイドワイヤルーメンの開口部がOTW型に配置され、ガイドワイヤルーメンが流体用ルーメンと平行に配設されたバルーンカテーテルの縦断面を示す一部概略側面図である。
【図2】図1のバルーンカテーテルの各部位における断面端面図である。
【図3】本発明に係るバルーンカテーテルの一実施例であり、2つの流体用ルーメンがコアキシャル構造、ガイドワイヤルーメンの開口部がRX型に配置され、ガイドワイヤルーメンが流体用ルーメンと平行に配設されたバルーンカテーテルの縦断面を示す一部概略側面図である。
【図4】図3のバルーンカテーテルの各部位における断面端面図である。
【図5】本発明に係るバルーンカテーテルの一実施例であり、流体用ルーメンがコアキシャル構造、ガイドワイヤルーメンの開口部がOTW型に配置され、ガイドワイヤルーメンが流体用ルーメンと同軸上に配設されたバルーンカテーテルの縦断面を示す一部概略側面図である。
【図6】図5のバルーンカテーテルの各部位における断面端面図である。
【図7】本発明に係るバルーンカテーテルの一実施例であり、流体用ルーメンがコアキシャル構造、ガイドワイヤルーメンがRX型に配置され、ガイドワイヤルーメンが流体用ルーメンと同軸上に配設されたバルーンカテーテルの縦断面を示す一部概略側面図である。
【図8】図7のバルーンカテーテルの各部位における断面端面図である。
【図9】本発明に係るOTW型のバルーンカテーテルに接続するコネクタの一実施例であり、カテーテルのハブの内側に嵌る形で接続する構造であるコネクタの縦断面を示す側面図である。
【図10】本発明に係るOTW型のバルーンカテーテルに接続するコネクタの一実施例であり、カテーテルのハブの外側に嵌る形で接続する構造であるコネクタの縦断面を示す側面図である。
【図11】本発明に係るRX型のバルーンカテーテルに接続するコネクタの一実施例であり、カテーテルのハブの内側に嵌る形で接続する構造であるコネクタの縦断面を示す側面図である。
【図12】本発明に係るRX型のバルーンカテーテルに接続するコネクタの一実施例であり、カテーテルのハブの外側に嵌る形で接続する構造であるコネクタの縦断面を示す側面図である。
【図13】図1のバルーンカテーテルに図9のコネクタを接続した状態の縦断面を示す一部概略側面図である。
【図14】図3のバルーンカテーテルに図12のコネクタを接続した状態の縦断面を示す一部概略側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 バルーンカテーテル
2 シャフト
3 バルーン
4 ハブ
5 流体用ルーメン
5A 注入用ルーメン
5B 排出用ルーメン
6 流体用ルーメンとバルーンの連通部
7 流体用ルーメンの連通部
8 流体用ルーメンに通じるハブ内の通路
8A ハブ内の注入用通路
8B ハブ内の排出用通路
9 流体用ルーメンに通じるハブ内の通路の連通部
10 ガイドワイヤルーメン
10A ガイドワイヤルーメンの先端側開口部
10B ガイドワイヤルーメンの基端側開口部
11 ガイドワイヤルーメンに通じるハブ内の通路
12 コネクタ
13 注入口
14 コネクタ内の通路
14A コネクタ内の注入用通路
14B コネクタ内の排出用通路
15 カテーテルとの接続部
16 バルーン拡張防止用カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体用ルーメンを二つ有するカテーテルシャフトと、カテーテルシャフト先端に配置されたバルーンと、カテーテルシャフト基端部に配置されたハブから構成されるバルーンカテーテルであって、前記流体用ルーメンは、少なくとも一方が前記バルーンに直接連通するとともに、カテーテルシャフト先端付近において相互に連通する部分を有し、カテーテルシャフトの中間部からハブの先端部までは各々独立して存在し、ハブ基端部では、一体となった流路を形成することを特徴とする、バルーンカテーテル。
【請求項2】
該二つの流体用ルーメンがバイアキシャル構造であることを特徴とする、請求項1記載のバルーンカテーテル
【請求項3】
該二つの流体用ルーメンがコアキシャル構造であることを特徴とする、請求項1記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
該バルーンカテーテルがガイドワイヤルーメンを備えることを特徴とする、請求項1〜3記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
該ガイドワイヤルーメンがカテーテルの基端部から先端側に渡って延在し、ハブの基端部に基端側開口部を有するOTW型であることを特徴とする、請求項4記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
該ガイドワイヤルーメンの基端側開口部が、カテーテルの基端部と先端部の途中に設けられているRX型であることを特徴とする、請求項4記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
該流体用ルーメンがバルーンに直接連通する部分が、バルーン内部に位置するシャフト上に開けられた穴であることを特徴とする、請求項1〜6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
該流体用ルーメンがバルーンに直接連通する部分が、該流体用ルーメンの先端側開口部であることを特徴とする、請求項1〜6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
該二つの流体用ルーメンが該バルーン基端部よりも先端側で相互に連通することを特徴とする、請求項1〜8に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
請求項1〜9記載のバルーンカテーテルに接続するコネクタであって、前記コネクタはハブとの接続部と、少なくとも一つの基端側開口部と、基端側から先端側まで独立して存在する通路と、先端側開口部とを有し、前記コネクタの先端側開口部は、ハブ先端部からハブ内部において独立している流路と液密に接続可能であることを特徴とする、バルーンカテーテル用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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