説明

バルーンカテーテル

【課題】
本発明は、押込性に優れるとともに、拡張用液体を迅速に流通させることができるバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明のバルーンカテーテルは、遠位部、近位部及び上記遠位部から上記近位部まで連続した内腔を有しており、上記内腔の側面に当接部が形成された外側チューブと、上記遠位部に形成されており、上記外側チューブの内腔と連続した内腔を有するバルーンと、上記外側チューブの内腔内の上記当接部よりも上記近位部側に位置しており、上記当接部と当接可能な管状部材と、先端部及び後端部を有しており、上記管状部材の内腔を維持しつつ上記管状部材内を挿通するコアワイヤとからなるバルーンカテーテルであって、上記先端部は上記管状部材に固定されており、上記後端部は上記近位部に固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管等の管腔内の狭窄部等を拡張するために用いられるバルーンカテーテルが知られている。
【0003】
バルーンカテーテルは、主に、拡張体であるバルーンと、バルーンが遠位部に取り付けられた外側チューブと、外側チューブの内腔内に配置されており、バルーンの先端部に開口した先端開口部及び外側チューブの外周の側面に開口した後端開口部を有する内側チューブとからなる。
【0004】
外側チューブは、内側チューブとの間に設けられた内腔を通してバルーンを拡張するための造影剤や生理食塩水等の拡張用液体を流通させるためのものであり、内側チューブは、バルーンカテーテルを病変部まで導くガイドワイヤを挿通させるためのものである。
【0005】
バルーンカテーテルは、医師等の手技者が近位部を把持し、遠位部を血管内に押し込むようにして使用されるため、バルーンを病変部の所望の位置に位置決めするためには、押込性に優れることと、遠位部の操作性に優れることとが求められる。
【0006】
このようなバルーンカテーテルとして、例えば、特許文献1〜3には、上述した部材の他に、外側チューブ内に挿入された金属製のコアワイヤをさらに有しており、コアワイヤの後端部が外側チューブの近位部と固定されており、コアワイヤの先端部が後端開口部直下の外側チューブ内に埋込固定されたバルーンカテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−125897号公報
【0008】
【特許文献2】特表平8−500505号公報
【0009】
【特許文献3】特表平9−503411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜3に記載の従来のバルーンカテーテルは、一般的には樹脂等から形成される外側チューブや内側チューブに比べて剛性の高いコアワイヤを有しているので、押込性に優れるとされている。
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1〜3に記載の従来のバルーンカテーテルでは、押込性が充分に高いとはいえないという問題がある。
【0012】
また、コアワイヤの先端部が後端開口部直下の外側チューブ内に埋込固定されているので、外側チューブの遠位部から近位部まで連続する内腔を確保するためには、後端開口部直下において、コアワイヤに隣接して拡張用液体を流通させるための別の内腔を形成する必要があり、拡張用液体の流通速度を確保するためにその内腔を大径化した場合には強度が低下したり、別の内腔を設けるための製造上の工程が複雑化したりするという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための第一の本発明は、遠位部、近位部及び上記遠位部から上記近位部まで連続した内腔を有しており、上記内腔の側面に当接部が形成された外側チューブと、
上記遠位部に形成されており、上記外側チューブの内腔と連続した内腔を有するバルーンと、
上記外側チューブの内腔内の上記当接部よりも上記近位部側に位置しており、上記当接部と当接可能な管状部材と、
先端部及び後端部を有しており、上記管状部材の内腔を維持しつつ上記管状部材内を挿通するコアワイヤとからなるバルーンカテーテルであって、
上記先端部は上記管状部材に固定されており、上記後端部は上記近位部に固定されていることを特徴とする。
なお、本明細書において、管状部材としては、例えば、断面形状が円形状(正円形状)や、後述する断面形状が非円形状の筒状体を指すものとする。また、管状部材の断面形状とは、管状部材をその長手方向に対して垂直な方向に沿って切断することにより得られる断面の形状を指すものとする。
【0014】
第二の本発明は、第一の本発明において、上記管状部材の断面形状が非円形状である。
なお、本明細書において、管状部材の断面形状が非円形状であるとは、管状部材の断面形状が正円形状以外の円形状又は角形状等であることをいい、例えば、楕円形状、長円形状、円弧と直線とにより囲まれた変形円形状、矩形状、正n角形状(nは、3以上の正の整数)等の形状を含むものとする。
【0015】
第三の本発明は、第二の本発明において、上記断面形状が楕円形状である。
なお、本明細書において、管状部材の断面形状が楕円形状であるとは、管状部材の断面形状が楕円形状である場合の他にも、楕円形が変形した変形楕円形状のような実質的にみて楕円形に類似する形状も含むものとする。
管状部材の断面形状が変形楕円形状である場合の一例については、後述の第一実施形態で説明する。
【0016】
第四の本発明は、第一〜第三のいずれかの本発明において、先端部及び後端部を有しており、上記外側チューブの内腔内を挿通している内側チューブをさらに備えており、上記内側チューブの先端部は、上記遠位部から前方に突出するとともに、上記バルーンの内腔内を貫通しており、上記内側チューブの後端部は、上記外側チューブの外周の側面に開口部を形成しており、上記当接部は、上記開口部よりも上記近位部側に位置している。
【発明の効果】
【0017】
第一の本発明に係るバルーンカテーテルでは、コアワイヤの先端部が当接部よりも近位部側に位置する管状部材に固定されており、コアワイヤの後端部が近位部に固定されている。
それゆえ、手技者等によりバルーンカテーテルの近位部に押込力が加えられると、コアワイヤ及び管状部材が近位部側から遠位部側に押し込まれ、管状部材が当接部に当接することにより外側チューブの遠位部付近にまで押込力が効率よく伝わる。
従って、本発明のバルーンカテーテルは、押込性に優れる。
【0018】
第一の本発明に係るバルーンカテーテルでは、管状部材の内腔を維持しつつコアワイヤが管状部材内を挿通しているので、外側チューブの内腔を管状部材及びコアワイヤが塞いでしまうことがなく、拡張用液体を流通させるための別の内腔を設けずとも、拡張用液体を迅速に内腔内に流通させることができる。
【0019】
第二の本発明に係るバルーンカテーテルは、第一の本発明に係るバルーンカテーテルにおいて、管状部材の断面形状が非円形状であるので、断面形状が円形状(正円形状)である管状部材と比べて、管状部材の断面形状の中心(重心)に近い位置をコアワイヤの先端部が挿通している。
従って、コアワイヤに加えられた押込力が管状部材全体に均等に伝わりやすく、当接部を介して外側チューブの遠位部全体を均等に押し込むことが可能となり、押込性及び操作性に優れる。
【0020】
第三の本発明に係るバルーンカテーテルは、第二の本発明に係るバルーンカテーテルにおいて、管状部材の断面形状が楕円形状であり、断面形状が非円形状の管状部材の中でも、管状部材の断面形状の中心(重心)により近い位置をコアワイヤの先端部が挿通している。
従って、第三の本発明に係るバルーンカテーテルは、押込性及び操作性により優れる。
【0021】
第四の本発明に係るバルーンカテーテルは、第一〜第三のいずれかの本発明に係るバルーンカテーテルにおいて、当接部が、内側チューブの後端部により形成された開口部よりも近位部側に位置している。
そのため、コアワイヤに加えられた押込力が管状部材及び当接部を介して外側チューブの遠位部のみならず内側チューブにも伝わるので、押込性により優れる。
【0022】
また、断面形状が非円形状であり、コアワイヤが断面形状の中心に近い位置を挿通する管状部材を採用している。
それゆえ、当接部が開口部よりも近位部側に位置しているにも関わらず、バルーンカテーテルが湾曲した場合であっても、コアワイヤの先端部と内側チューブとが当接しにくく、内側チューブの内腔が変形しにくい。
従って、本第四の発明に係るバルーンカテーテルは、ガイドワイヤの摺動抵抗が低い。
このことについては、第一実施形態に係るバルーンカテーテルの作用効果において図面を用いて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態に係るバルーンカテーテルを模式的に示す全体図である。
【図2】図2(a)は、図1に示すバルーンカテーテルのA領域の部分拡大図であり、図2(b)は、図2(a)に示すバルーンカテーテルのA−A線断面図である。図2(c)は、外側チューブの近位部を押し込んだ場合における図1に示すバルーンカテーテルのA領域の部分拡大図であり、図2(d)は、図2(c)に示すバルーンカテーテルのB−B線断面図である。
【図3】図3(a)は、断面形状が円形状の管状部材を使用した場合の当接部近傍を模式的に示す部分拡大図であり、図3(b)は、図3(a)に示すC−C線断面図であり、図3(c)は、図3(a)に示す管状部材が180°回転した場合の当接部近傍を模式的に示す部分拡大図であり、図3(d)は、図3(c)に示すD−D線断面図である。
【図4】図4(a)は、図2(c)に示す管状部材が180°回転した場合の当接部近傍を模式的に示す部分拡大図であり、図4(b)は、図4(a)に示すE−E線断面図である。
【図5】図5(a)は、第三実施形態に係るバルーンカテーテルの当接部近傍を模式的に示す部分拡大図であり、図5(b)は、図5(a)に示すF−F線側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一実施形態)
本実施形態に係るバルーンカテーテルの構成について、図面を参照しつつ以下に説明する。
【0025】
図1は、本発明の第一実施形態に係るバルーンカテーテルを模式的に示す全体図である。
図2(a)は、図1に示すバルーンカテーテルのA領域の部分拡大図であり、図2(b)は、図2(a)に示すバルーンカテーテルのA−A線断面図である。
図2(c)は、外側チューブの近位部を押し込んだ場合における図1に示すバルーンカテーテルのA領域の部分拡大図であり、図2(d)は、図2(c)に示すバルーンカテーテルのB−B線断面図である。
なお、図1、図2(a)及び後述の図3(a)において、図示左側が体内に挿入される遠位側(先端側)、右側が医師等の手技者によって操作される近位側(後端側、基端側)である。また、バルーンカテーテルの遠位部と外側チューブの遠位部とを単に遠位部ともいい、バルーンカテーテルの近位部と外側チューブの近位部とを単に近位部ともいう。
【0026】
図1及び図2に示すバルーンカテーテル10は、外側チューブ20、バルーン30、内側チューブ40、管状部材50、コアワイヤ60及びコネクタ70から形成されている。
【0027】
外側チューブ20は、遠位部20a、近位部20b及び遠位部20aから近位部20bまで連続した内腔20cを有する管状体である。
より具体的にいうと、外側チューブ20は、遠位部20a側から順に、先端外側チューブ21、中間外側チューブ22及び後端外側チューブ23からなる。
なお、外側チューブ20の内腔20cには、バルーン30を拡張させるための拡張用液体を流通させることができる。
【0028】
先端外側チューブ21及び中間外側チューブ22は、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等の樹脂から形成されている。
【0029】
先端外側チューブ21は、先端側に位置する本体チューブ21aと、後端側に位置するポートチューブ21bとからなる。
本体チューブ21aの遠位端の外周には、バルーン30の後端取付部33が固定されている。
【0030】
ポートチューブ21bには、後述する内側チューブ40の後端部40bがポートチューブ21bの端面(外側チューブ20の外周の側面)に開口してなる開口部(後端側開口部)44が形成されている。
ポートチューブ21bは、本体チューブ21aよりも硬い樹脂で形成されていてもよい。
【0031】
また、中間外側チューブ22は、先端外側チューブ21(ポートチューブ21b)との接合部近傍の位置において、近位部20b側から遠位部20a側に向かって内腔20cが縮径することにより内径縮径部20eを有している。
【0032】
図2(a)及び図2(b)に示すように、中間外側チューブ22(内径縮径部20e)の最大内径φmax1は後述の管状部材50の最大径φmax2よりも大きく、中間外側チューブ22(内径縮径部20e)の最小内径φmin1は管状部材50の最大径φmax2よりも小さく、管状部材50が内径縮径部20eのいずれかの部位と当接可能に形成されている。
即ち、中間外側チューブ22の内腔20cの側面には、管状部材50が当接可能な当接部20dが形成されている。
【0033】
図1に示す後端外側チューブ23は、ハイポチューブとも呼ばれる管状体である。
後端外側チューブ23の材質としては、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti合金のような超弾性合金等を使用してもよい。
後端外側チューブ23の先端部は、中間外側チューブ22の後端部に挿入されて固定されている。
【0034】
後端外側チューブ23の後端には、コネクタ70が取り付けられている。
コネクタ70に取り付けられた図示しないインデフレータから拡張用液体が供給されると、拡張用液体は、内腔20cを通ってバルーン30を拡張する。
なお、コネクタ70は、取り付けられていなくともよく、他の部材であってもよい。
【0035】
バルーン30は、軸線方向中央にバルーン30が拡張するための拡張部31と、後述する内側チューブ40の先端部40aの最先端に固定された先端取付部32と、外側チューブ20(本体チューブ21a)の遠位部20aの外周面に固定された後端取付部33とに囲まれた内腔34を有する袋状体である。
バルーン30の内腔34は、外側チューブ20の内腔20cと連続している。
【0036】
内側チューブ40は、先端部40a及び後端部40bを有しており、外側チューブ20の先端外側チューブ21の内腔内に同軸状に挿通された管状体であり、図示しないガイドワイヤが挿通可能に形成された内腔41を有している。
内側チューブ40は、先端外側チューブ21及び中間外側チューブ22と同様の樹脂で形成されていてもよい。
なお、内側チューブは、必ずしも必要ではなく、形成されていなくともよい。
内側チューブが形成されていない場合、外側チューブの遠位部がバルーンの内腔内を前方に貫通していてもよいし、貫通していなくともよい。
【0037】
内側チューブ40の先端部40aは、先端外側チューブ21の先端から突出している先端部40aを有しており、先端部40aにはチップ42が取り付けられている。
【0038】
チップ42は、先端に向かって外径が漸進的に減少するテーパー筒状の部材であり、先端に先端側開口部43を有する。
チップ42は、内側チューブ40の先端部40aを形成する樹脂よりも柔軟な樹脂で形成されていてもよい。
【0039】
内側チューブ40の先端部40aにおけるバルーン30の拡張部31の内部に位置する部分には、所定の距離離間した一対の放射線不透過性のマーカー35a、35bが取り付けられている。
【0040】
管状部材50は、図2(b)及び図2(d)に示すように、肉薄の短い筒状体からなり、その断面形状は非円形状である。
【0041】
管状部材50の具体的な形状は、長軸φmax2及び短軸φmin2を有しており、長軸φmax2を対称軸とした場合には非対称の変形楕円形状である。
そのため、短軸φmin2を構成する第一短軸φmin3の長さは、同じく短軸φmin2を構成する第二短軸φmin4の長さよりも短い。
また、長軸φmax2の長さ(管状部材の最大径)は、中間外側チューブ22の最大内径φmax1よりも小さく、中間外側チューブ22の内径縮径部20eの最小内径φmin1よりも大きい。
【0042】
管状部材50の長手方向に沿った長さは、コアワイヤ60と固定できるのであれば特に限定されず、管状部材50の厚さは、管状部材50が当接部20dと当接した際に容易に破損しない程度の強度を確保できるのであれば、特に限定されない。
【0043】
また、管状部材50の断面形状において、管状部材50の内腔51は、コアワイヤ60よりも大きく、コアワイヤ60が管状部材50の内腔51を維持しつつ管状部材50内を挿通できるようになっている。
それゆえ、管状部材50の内腔51は、外側チューブ20の内腔20cと連通している。
【0044】
係る構成を有する管状部材50は、中間外側チューブ22の内径縮径部20eの内腔内における当接部20dよりも近位部20b側に位置している。
そのため、近位部20b側に当初位置しており当接部20dから離間している管状部材50が遠位部側20b側に移動した場合には、内径縮径部20eの当接部20dと管状部材50とが当接する。
このように、管状部材50は、外側チューブ20(中間外側チューブ22)の内腔20c内の当接部20dよりも近位部20b側に位置しており、当接部20dと当接可能に形成されている。
なお、管状部材は、当接部から当初離間していなくともよく、当接部に当初から当接していてもよい。
【0045】
管状部材50の材質としては、例えば、ステンレス鋼や、Ni−Ti合金のような超弾性合金等を使用してもよいし、管状部材50は単一又は複数の素線を撚り合わせてなる中空コイル体であってもよい。
上記素線の材質としては、例えば、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、フェライト二相ステンレス又は析出硬化ステンレス等のステンレス、Ni−Ti合金等の超弾性合金、タングステン等が挙げられる。
【0046】
コアワイヤ60は、先端部60a及び後端部60bを有しており、先端部60a側に向かって先細りになるテーパー状の線材であり、管状部材50の内腔51を維持しつつ管状部材50内を挿通している。
【0047】
コアワイヤ60の先端部60aは、管状部材50の内腔51の一の側面に、例えば、溶接や接着剤等の固定手段により固定されている。また、コアワイヤ60の後端部60bは、近位部20b(後端外側チューブ23における先端部の内腔の側面)に、例えば、溶接や接着剤等の固定手段により固定されている。
【0048】
そのため、手技者がバルーンカテーテル10の近位部20bを軸方向に押し込む押込力は、後端外側チューブ23からコアワイヤ60へと伝わり、コアワイヤ60が遠位部20a側に押し込まれて移動する。それに伴って、コアワイヤ60の先端部60aと固定された管状部材50も遠位部20a側に押し込まれて移動し、内径縮径部20eの当接部20dと管状部材50とが当接する。
これにより、ポートチューブ21b及び内側チューブ40が遠位部20a側に押し込まれる。
なお、管状部材50が当接部に当初から当接している場合であっても、同様に、本体チューブ21a、ポートチューブ21b及び内側チューブ40が遠位部20a側に押し込まれる。
【0049】
以上の構成に基づいて、本実施形態のバルーンカテーテル10を心臓の冠状動脈にある狭窄部を拡張する手技に用いる場合について、説明する。
【0050】
治療の目標である狭窄部がある心臓の冠状動脈には、ガイドワイヤが予め挿入されており、このガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテル10が体内に挿入される。
ガイドワイヤは、バルーンカテーテル10のチップ42の先端側開口部43から挿入され、内側チューブ40の内腔内41を通過して、開口部(後端側開口部)44から延出される。
【0051】
手技者が放射線透視下において、マーカー35a、35bを用いてバルーン30を目的部位である狭窄部に位置決めした後、コネクタ70に接続された図示しないインデフレータから拡張用液体が供給される。
この時、拡張用液体は、外側チューブ20の内腔20cに流入し、外側チューブ20の先端外側チューブ21の先端からバルーン30の内腔34内に流出し、バルーン30を拡張させる。
【0052】
バルーン30によって狭窄部を拡張する手技が終了すると、手技者は、インデフレータによって、拡張用液体をバルーン30から排出する。即ち、拡張用液体は、バルーン30内から流出し、外側チューブ20の内腔20cを通して排出される。
この後、バルーンカテーテル10は体外へ引き出されて、手技が終了する。
【0053】
本実施形態のバルーンカテーテルでは、以下の作用効果を享受することができる。
【0054】
(1)本実施形態のバルーンカテーテルは、管状部材及び後端外側チューブに固定されたコアワイヤと、管状部材と当接可能な当接部とを有しており、手技者により加えられた押込力が、コアワイヤ、管状部材及び当接部を介して外側チューブの遠位部付近にまで効率よく伝わる。
【0055】
(2)コアワイヤは、管状部材の内腔を維持しつつ管状部材内を挿通しているので、拡張用液体を流通させるための別の内腔を設けずとも、拡張用液体を迅速に内腔内に流通させることができる。
【0056】
(3)管状部材の断面形状は非円形の楕円形状であり、管状部材の断面形状の中心(重心)に近い位置をコアワイヤの先端部が挿通している。
それゆえ、コアワイヤに加えられた押込力が管状部材全体に均等に伝わりやすく、当接部を介して外側チューブの遠位部全体を均等に押し込むことが可能であり、操作性に優れる。
【0057】
(4)当接部は、内側チューブの後端部により形成された開口部よりも近位部側に位置しているので、コアワイヤに加えられた押込力が管状部材及び当接部を介して外側チューブの遠位部のみならず内側チューブにも伝わりやすく、押込性により優れる。
【0058】
(5)管状部材の断面形状が非円形の楕円形状であるので、当接部が開口部よりも近位部側に位置しているにも関わらず、ガイドワイヤの摺動抵抗が低い。
このことについて、図面を用いて以下に詳しく説明する。
【0059】
図3(a)は、断面形状が円形状の管状部材を使用した場合の当接部近傍を模式的に示す部分拡大図であり、図3(b)は、図3(a)に示すC−C線断面図であり、図3(c)は、図3(a)に示す管状部材が180°回転した場合の当接部近傍を模式的に示す部分拡大図であり、図3(d)は、図3(c)に示すD−D線断面図である。
図4(a)は、図2(c)に示す管状部材が180°回転した場合の当接部近傍を模式的に示す部分拡大図であり、図4(b)は、図4(a)に示すE−E線断面図である。
【0060】
まず、断面形状が円形状(正円形状)である管状部材を用いた場合について、図面を用いて説明する。
【0061】
図3(a)及び図3(b)に示すように、管状部材150の断面形状が円形状である場合には、管状部材150の内腔151を維持しつつ、コアワイヤ160の先端部160aと管状部材150の内腔151の側面とが固定されており、コアワイヤ160は、管状部材150の断面形状の中心から比較的離れた後端開口部144側(図中上側)を挿通している。
【0062】
ここで、手技者が近位部を回転操作した場合には、樹脂等からなる中間外側チューブ122がねじれ、コアワイヤ160及び管状部材150が、例えば、図3(c)及び図3(d)に示すように180°回転し、コアワイヤ160が管状部材150の断面形状の中心から比較的離れた後端開口部144と反対側(図中下側)を挿通することがある。
その結果、図3(c)に示すように、コアワイヤ160の後端部が押し下げられることにより管状部材150が支点となってコアワイヤ160の先端部160aが押し上げられ、コアワイヤ160の先端部160aが内側チューブ140を上側へ押し込むことにより、内側チューブ140の内腔141がつぶされやすくなることがある。
従って、内側チューブ140の内腔141内を挿通するガイドワイヤ(図示せず)の摺動抵抗が高くなることがある。
【0063】
次に、断面形状が非円形である楕円形状の管状部材を使用した場合について、図面を用いて説明する。
【0064】
図2(a)〜図2(d)に示すように、管状部材の断面形状が楕円形状である場合には、管状部材の内腔を維持しつつコアワイヤの先端部と管状部材の内腔の側面とが固定されているので、コアワイヤは管状部材の断面形状の中心に近い位置を挿通している。
【0065】
ここで、手技者が近位部を回転操作した場合には、樹脂等からなる中間外側チューブ22がねじれ、コアワイヤ60及び管状部材50が、例えば、図4(a)及び図4(b)に示すように180°回転することがある。
しかしながら、もともとコアワイヤ60は管状部材50の断面形状の中心に近い位置を挿通しているので、管状部材50が回転してもコアワイヤ60の位置があまりかわることがなく、管状部材50の断面形状の中心に近い位置をコアワイヤ60が挿通しやすくなる。
【0066】
そのため、図4(a)に示すコアワイヤ60の後端部が押し下げられたとしても、管状部材50が支点となってコアワイヤ60の先端部60aが押し上げられることが少なく、内側チューブ40の内腔41がつぶされにくい。
従って、内側チューブ40の内腔41内を挿通するガイドワイヤ(図示せず)の摺動抵抗が高くなりにくい。
なお、係る作用効果は、断面形状が非円形状の管状部材の中でも、断面形状が楕円形状の管状部材である場合に好適に発揮することができるが、断面形状いかんによっては、楕円形状以外の非円形状の管状部材であっても好適に発揮することができる。
【0067】
(第二実施形態)
本実施形態に係るバルーンカテーテルは、管状部材の断面形状が円形状(正円形状)であること以外は、第一実施形態のバルーンカテーテルと同様の構成を有している。
即ち、本実施形態のバルーンカテーテルは、図3(a)〜図3(d)を用いて説明したバルーンカテーテルである。
【0068】
本実施形態でも、第一実施形態で述べた作用効果(1)、(2)及び(4)を発揮することができる。
なお、作用効果(5)で述べたガイドワイヤの摺動抵抗については、例えば、管状部材を小径化することにより低くすることができる。管状部材を小径化すると、管状部材の断面形状の中心により近い位置をコアワイヤが挿通することになるからである。
【0069】
(第三実施形態)
図5(a)及び図5(b)に示す本実施形態に係るバルーンカテーテルは、中間外側チューブの内腔及びポートチューブの内腔が略同一であり、内径縮径部による当接部が形成されておらず、突起体からなる当接部が中間外側チューブの内腔の側面に形成されていること以外は、第一実施形態のバルーンカテーテルと同様の構成を有している。
【0070】
図5(a)は、第三実施形態に係るバルーンカテーテルの当接部近傍を模式的に示す部分拡大図であり、図5(b)は、図5(a)に示すF−F線側面図である。
【0071】
本実施形態の当接部は、図5(b)に示すように、中間外側チューブ322の内腔320cを確保しつつその内腔320cの側面から半径方向に突出した6個の突起体320dにより形成されている。
なお、突起体の個数は6個に限定されず、例えば、1〜10個であってもよい。
【0072】
6個の当接部320dは、内腔320cの側面の全周に形成されており、互いに空間を空けて等間隔で並んでいる。
【0073】
当接部320dは、例えば、金属、樹脂等から形成されていてもよく、中間外側チューブ322の内腔320cの側面とは、例えば、接着剤等により固定されていてもよい。
【0074】
係る実施形態でも、第一実施形態で述べた作用効果(1)〜(5)を発揮することができる。
加えて、次の作用効果を発揮することができる。
【0075】
(6)複数の当接部が内腔の側面の全周に形成されているので、コアワイヤ及び管状部材が回転した場合であっても、管状部材と当接部とが確実に当接し、手技者により加えられた押込力が、コアワイヤ、管状部材及び当接部を介して外側チューブの遠位部付近にまで効率よくかつ確実に伝わる。
【0076】
(7)複数個の当接部が互いに空間を空けて等間隔で内腔の側面に形成されているので、上記空間を介して拡張用液体を迅速に流通させることができる。
【0077】
(8)内腔縮径部が形成されておらず、中間外側チューブの内腔及びポートチューブの内腔が略同一であって均一な大きさの内腔が連続しているので、拡張用液体を迅速に流通させることができる。
【0078】
(その他の実施形態)
本発明のカテーテルにおいて、管状部材の断面形状は、上述した円形状(正円形状)や、変形楕円形状に限られず、例えば、楕円形状、長円形状、円弧と直線とにより囲まれた変形円形状、矩形状、正n角形状(nは、3以上の正の整数)等の形状であってもよい。
【0079】
本発明のカテーテルにおいて、当接部は、当接部と当接部よりも近位部側に位置する管状部材とが当接可能であるのであれば、外側チューブの内腔の側面におけるいずれかの位置に形成されていればよく、上述したように、中間外側チューブの内腔の側面に当接部が形成されていてもよいし、先端外側チューブの内腔の側面に当接部が形成されていてもよい。
また、第一〜第三実施形態で説明したように、コアワイヤの先端部と管状部材の内腔における一の側面とが固定されていてもよいし、コアワイヤの先端部と管状部材の内腔における複数の側面とが固定されていてもよい。
例えば、図2(b)に示すA−A線断面図において、コアワイヤの上側外周面と管状部材の上側内側面とが固定されているが、これに加えて、コアワイヤの下側外周面と管状部材の下側内側面とが固定されていてもよい。
【0080】
本発明のカテーテルにおいて、第一〜第三実施形態で説明したように、コアワイヤの先端部は管状部材から遠位部側に突出していてもよいし、コアワイヤの先端部が管状部材から遠位部側に突出しておらず、コアワイヤの最先端部と管状部材とが固定されていてもよい。
【0081】
本発明のカテーテルにおいて、当接部は、管状部材と当接可能であるのであれば、上述したように、近位部側から遠位部側に向かって内腔が縮径した内径縮径部からなるものであってもよいし、外側チューブの内周面から半径方向に突出した一個又は複数個の突起体からなるものであってもよい。
【0082】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、第一〜第三実施形態で説明した内側チューブは形成されていなくともよい。
内側チューブが形成されていない場合、外側チューブの遠位部がバルーンの内腔内を前方に貫通していてもよいし、貫通していなくともよい。
【0083】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、内側チューブが形成されている場合、当接部は開口部よりも近位部側に位置していることが内側チューブの押込性に優れる点で望ましいが、当接部は開口部よりも遠位部側に位置していてもよい。
当接部が開口部よりも遠位部側に位置している場合には、外側チューブにおけるバルーンに近いより遠位部側にまで押込力が伝わるので望ましい。
【0084】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、各実施形態では迅速交換型のバルーンカテーテルを例にして説明したが、本発明に係る構成要件は、オーバーザワイヤ型の構成にも好適に適用することが可能であり、上述した本発明に係る作用効果を好適に享受することができる。
なお、オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルとは、内側チューブをバルーンカテーテルの近位部まで配置した構成である。
【0085】
本発明のバルーンカテーテルは、心臓の血管の治療に用いるものであるが、下肢の血管や透析のためのシャントを拡張する手技等、各種の手技に用いてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 バルーンカテーテル
20、120、320 外側チューブ
20a 外側チューブの遠位部
20b 外側チューブの近位部
20c、120c、320c 外側チューブの内腔
20d、120d、320d 当接部
30 バルーン
34 バルーンの内腔
50、150、350 管状部材
51、151、351 管状部材の内腔
60、160、360 コアワイヤ
60a、160a、360a コアワイヤの先端部
60b、160b、360b コアワイヤの後端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位部、近位部及び前記遠位部から前記近位部まで連続した内腔を有しており、前記内腔の側面に当接部が形成された外側チューブと、
前記遠位部に形成されており、前記外側チューブの内腔と連続した内腔を有するバルーンと、
前記外側チューブの内腔内の前記当接部よりも前記近位部側に位置しており、前記当接部と当接可能な管状部材と、
先端部及び後端部を有しており、前記管状部材の内腔を維持しつつ前記管状部材内を挿通するコアワイヤとからなるバルーンカテーテルであって、
前記先端部は前記管状部材に固定されており、前記後端部は前記近位部に固定されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記管状部材の断面形状は、非円形状である請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記断面形状は、楕円形状である請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
先端部及び後端部を有しており、前記外側チューブの内腔内を挿通している内側チューブをさらに備えており、
前記内側チューブの先端部は、前記遠位部から前方に突出するとともに、前記バルーンの内腔内を貫通しており、
前記内側チューブの後端部は、前記外側チューブの外周の側面に開口部を形成しており、
前記当接部は、前記開口部よりも前記近位部側に位置している請求項1〜3のいずれかに記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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