説明

バレル研磨機

【課題】バレル槽内の被研磨物、メディア等に3次元的な大きな流動を発生させ高品質な被研磨物を、能率良く研磨加工することができるバレル研磨機の提供。
【解決手段】本発明のバレル研磨機は、基台10と、基台に、水平方向に形成された軸線5の周りに旋回可能に設けられた旋回体13と、旋回体に回転可能に立設され、旋回体が旋回したとき鉛直面内を回転移動する回転軸体53と、一方の端部が回転軸体の端部に固定され、外周が多角形に形成された多角柱状のものであって、回転軸体の端部に設けられ、内部に工作物及びメディアが装入されるバレル槽50と、旋回体を軸線の周りに旋回させるための第1駆動体21と、バレル槽を回転軸線の周りに回転させるための第2駆動体31と、第1駆動体と旋回体との間に設けられる第1伝達機構20と、第2駆動体と回転軸体との間に設けられる第2伝達機構30とを備えている。バレル槽は、一対の構成に設けるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレル槽内に、被研磨物、メディア等を装入し、バレル槽、被研磨物、メディア等に運動を与えることにより、被研磨物のバリ取り加工、被研磨面の磨き加工等を行うバレル研磨機に関する。さらに詳しくは、バレル槽に公転運動及び自転運動させることで、バレル槽内の被研磨物とメディア等との流動移動を鉛直方向を含む3次元方向の各面内に発生させ、バレル研磨加工ができるバレル研磨機に関する。
【背景技術】
【0002】
バレル研磨とは、バレルの中に、被研磨物(工作物)、メディア(研磨材)等を装入して、バレル、被研磨物、メディアに運動を与えることにより、被研磨物とメディアとの間に相対摩擦を生じさせ、研磨する方法であり、被研磨物のバリ取り加工、丸み付け加工等に活用されている。従来より、バレル研磨法として、回転バレル研磨法、振動バレル研磨法、遠心バレル研磨法などが知られている。遠心バレル研磨法は、遠心力を利用することにより、回転バレル研磨法より研磨能力が高いとされている。また、遠心バレル研磨機は、構成が比較的簡単で、研磨効率がよく加工時間の短縮が可能であり、小物の研磨等にも向いているとされている。
【0003】
この遠心バレル研磨機は、回転盤の周囲にバレル槽(研磨槽)が取り付られており、回転盤(タレット)を公転運動させるとともにバレル槽を自転運動させることにより、バレル槽内に装入したメディアや被研磨物等の装入物を、公転運動に伴う遠心力によりバレル槽の外周側の内壁に引き寄せるとともに、上死点から旋回軌跡の内心に向かう側に表層部を循環流動させることで被研磨物とメディアとを相対運動させて研磨するものである。この遠心バレル研磨機には、回転盤が水平面内を公転運動する遠心バレル研磨機、遠心バレル研磨装置(例えば、特許文献1、2参照)と、回転盤が鉛直面内を公転運動する遠心バレル研磨装置(例えば、特許文献3、4参照)が知られている。
【0004】
また、遠心バレル研磨機、遠心バレル研磨装置を改良する技術も提案されている。垂直な公転軸に対して傾斜した状態に設けられたバレル槽を、公転軸まわりに公転させるとともに、垂直軸まわりに自転させる遠心バレル研磨装置に関する技術が知られている(例えば、特許文献5参照)。また、研磨槽が取り付けられた回転盤を垂直軸を中心として回転させると同時に、回転板および垂直軸を取り付けた回転体を水平軸を中心として揺動させるバレル研磨装置に関する技術が知られている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3710402号公報
【特許文献2】特開平07−052021号公報
【特許文献3】特開2000−108014号公報
【特許文献4】特開2008−036778号公報
【特許文献5】特開2008−155286号公報
【特許文献6】実開平07−027744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から4の技術は、バレル槽内の被研磨物、メディア等に3次元的な流動移動を生じさせるものでなかった。また、特許文献5、6の技術は、まだ、被研磨物、メディア等の3次元的な流動移動が限定的なものであり、バレル研磨機、バレル研磨装置の構成が複雑であるという問題点があった。
【0007】
一方、バレル研磨機は、製品の被研磨面を磨くという用途にも使用される。その場合、角部、縁部等にいわゆる「だれ」を生じさせることなく、被研磨面の研磨を確実に行うことが要求がされることがある。すなわち、角部、縁部等がとれすぎて、角部、縁部等がだれるというようなことが生じさせることなく、被研磨面の全面を磨き、シャープな形状の製品とすることが要求されるのである。しかしながら、前述した特許文献1から6に記載された従来のバレル研磨機、バレル研磨装置は、このような要求を満たすものでなく、バレル研磨機、バレル研磨装置としての機能が不十分であり、まだ改良、改善の余地があるものであった。
【0008】
本発明は、前述した問題点を解決するためになされたもので、次の目的を達成する。
本発明の目的は、バレル槽を公転運動及び自転運動させることで、バレル槽内の被研磨物とメディア等との流動移動を鉛直方向を含む3次元方向の各面内に発生させ、高品質な被研磨物を、能率良く研磨加工することができるバレル研磨機を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、被研磨物の角部がだれたり、被研磨面に磨き残しが生じさせることがないバレル研磨機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した目的を達成するために、次の手段を採用する。
本発明1のバレル研磨機は、
バレル研磨機の基台と、前記基台に、水平方向に形成された軸線の周りに旋回可能に設けられた旋回体と、前記軸線と直交する方向に回転軸線を有し、かつ、前記旋回体に回転可能に立設され、前記旋回体が旋回したとき鉛直面内を旋回移動する回転軸体と、一方の端部が前記回転軸体の端部に固定され、外周が多角形に形成された多角柱状のものであって、前記回転軸体の端部に設けられ、槽内部に被研磨物及びメディアが装入されるバレル槽と、前記旋回体を前記軸線の周りに旋回させるための第1駆動体と、前記バレル槽を前記回転軸線の周りに回転させるための第2駆動体と、前記第1駆動体と前記旋回体との間に設けられ、前記第1駆動体の駆動力を前記旋回体に伝達するための第1伝達機構と、前記第2駆動体と前記回転軸体との間に設けられ、前記第2駆動体の駆動力を前記回転軸体に伝達するための第2伝達機構とを備え、前記バレル槽を鉛直面内で公転運動させるとともに前記回転軸線の周りに自転運動させてバレル研磨を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明2のバレル研磨機は、本発明1において、
前記バレル槽は、前記回転軸体の両方の端部に、各々、設けられている一対の構成になっていることを特徴とする。
【0011】
本発明3のバレル研磨機は、本発明1または2において、
前記回転軸体は、前記旋回体に、前記軸線の方向に複数設けられたものであり、前記バレル槽が、複数設けられた前記回転軸体の端部に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明4のバレル研磨機は、本発明1から3において、
前記バレル槽は、他方の端部に開口部が形成されているバレル本体と、このバレル本体に着脱可能に設けられ、装着されたとき前記開口部を覆う蓋体とから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバレル研磨機は、バレル槽が鉛直面内で公転運動するとともに、公転運動している回転軸体の周りにバレル槽が自転運動する構成であり、被研磨物とメディア(研磨材)との流動現象が鉛直方向を含む3次元方向の各面内で生じる。そのため、バレル槽の自転運動及び公転運動の回転速度をあまり上げなくても確実なバレル研磨を行うことができる。言い換えると、このバレル研磨機は、被研磨物とメディアとに3次元的な流動移動を与えることができるので、低速の回転速度でもバレル研磨を行うことができ、能率良く、高品質な製品(被研磨物)をバレル研磨加工することができる。
【0014】
このバレル研磨機は、バレル槽が公転運動により上位置、下位置にも移動する。そのため、被研磨物が軸方向に延びた長物の場合、バレル槽の公転運動への移動に伴って、被研磨物は、長手方向の軸線を鉛直方向と平行な方向に向けるとともに、表面積が小さく、受ける抵抗が少ない面を前方にして、メディアとともに相対的に流動移動する。言い換えると、表面積の大きい側の表面に沿って、被研磨物とメディアとが、相対的に流動移動して、擦れるようになる。従って、このバレル研磨機は、被研磨物が、多角形状の長物であった場合、被研磨物の角部がだれたり、被研磨物の表面に磨き残しが生じさせることがなく、高品質の被研磨物をバレル研磨加工することができる。
【0015】
また、このバレル研磨機は、構成が簡素であり、信頼性、作業性に優れ、メンテナンスが容易である。また、一対のバレル槽を、旋回体に複数設けることができ、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明のバレル研磨機の概要を模式的に示した正面図である。
【図2】図2は、バレル槽の動作を説明するための斜視図である。
【図3】図3は、図1をX方向から矢視したX矢視図である。
【図4】図4は、被研磨物のバレル研磨状態を模式的に示した説明図である。
【図5】図5は、被研磨物の周辺をメディアが流動移動する状態を模式的に示した説明図である。
【図6】図6は、バレル研磨機の他の実施の形態を示し、一対のバレル槽が複数設けられた構成を部分的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のバレル研磨機について、図面に基づいて、その実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明のバレル研磨機の概要を模式的に示した正面図、図2は、バレル槽の動作を説明するための斜視図、図3は、図1をX方向から矢視したX矢視図である。図4は、被研磨物のバレル研磨状態を模式的に示した説明図であり、図5は、被研磨物の周辺をメディアが流動移動する状態を模式的に示した説明図である。
【0018】
バレル研磨機1は、バレル研磨機1のベースを構成する基台10、旋回体13、回転軸体であるバレル軸体53、バレル槽50、第1駆動体21、第2駆動体31、第1伝達機構20、第2伝達機構30等から構成されている。一対のバレル槽50,50が、旋回及び回転するバレル研磨加工領域2は、基台10、基台10に設けられるカバー体19等で囲繞されている。このことにより、安全性を向上させている。このカバー体19には、開口部(図示せず)が設けられており、バレル槽50に被研磨物W、メディア(研磨材)M等を出し入れする作業等が可能となっている。この開口部には、開閉カバー(図示せず)が設けられており、バレル研磨作業を行うとき、開閉カバーがカバー体19の開口部を閉状態としている。
【0019】
基台10には、取り付け棚部10a、10aが設けられている。取り付け棚部10a、10aには、軸受ユニット11、12が各々立設されている。
旋回体13は、略直方体状のものであり、長手方向の両端に旋回支持軸14、15が、各々、固定されている。旋回支持軸14は、軸受ユニット12の軸受16に回転可能に支持されている。旋回支持軸15は、軸受ユニット11の軸受17に回転可能に支持されている。すなわち、旋回体13は、軸受ユニット11、12に支持されて、旋回支持軸14、15の中心軸線である軸線5(図2参照)の周り方向に旋回可能に設けられている。旋回体13の長手方向の両端面における短辺側及び長辺側の中心位置、略中心位置に、軸線5が設けられている。
【0020】
旋回体13には、バレル軸体53が軸受54、55に支持されて回転可能に支持されている。バレル軸体53の回転軸線6(図2参照)は、旋回支持軸14、15の軸線5に対して直交する方向に設けられている。バレル軸体53は、旋回体13に回転可能に立設されている。バレル軸体53は、旋回体13から同一寸法分突出するように設けられている。バレル槽50は、外周面(多角柱体の側面)が多角柱(この形態では、6角柱)状のものであって、内部には被研磨物W、メディアM等が装入される。バレル槽50は、バレル本体51と蓋体52とから構成されている。バレル本体51は、多角形の側面51b、底面51aを有する多角柱(この形態では、6角柱)状の容器(バレル)であり、底面51aと対向する部位が被研磨物W、メディアM等が装入するための開口部となっている。なお、この底面51aがバレル槽50の一方の端部であり、バレル本体51の開口部側がバレル槽50の他方の端部側となっている。バレル本体51の内部に被研磨物、メディア等が装入される。蓋体52は、バレル本体51の開口部を塞いで覆うためのものである。
【0021】
バレル軸体53の両端には、バレル本体51の底面51aが、各々、固定されている。バレル軸体53の両端に、各々、一個ずつ、一対のバレル槽50が設けられている。バレル槽50は、バレル軸体53の両端に、一対の構成で設けられている。このように構成すると、旋回体13、バレル軸体53、バレル槽50等の回転方向の回転バランスがよい。バレル槽50は、被研磨物W、メディアM等を装入後、蓋体52で開口部を覆いボルト53で固定される(図3参照)。バレル槽50は、自転運動及び公転運動することで、内部に装入された被研磨物Wに対してバレル研磨を行うためのものである。そして、バレル槽50は、所定の角度位置に位置決めすることにより、バレル本体51の開口部がカバー体19の開口部近傍に位置することになる。従って、カバー体19の開口部を介して、作業者が、バレル本体51に被研磨物W、メディアM等の出し入れ等を行うことがたいへん容易であり、作業性等に優れている。
【0022】
基台10には、旋回体13を旋回運動させるための第1駆動体21が設けられている。第1駆動体21は、減速モータ、減速機付モータ等低回転速度で駆動回転できるものが好ましく、この形態ではモータ21aを備えたギヤードモータとなっている。第1駆動体21の出力軸には、主スプロケット22が固定されている。旋回支持軸15には、従スプロケット24が固定されている。主スプロケット22と従スプロケット24との間には、駆動チェーン23が巻回されている。第1駆動体21が所定の回転速度(回転数)で回転すると、主スプロケット22、駆動チェーン23、従スプロケット24を介して、旋回体13が旋回支持軸14、15の軸線5(図2参照)の周りに旋回運動を行う。旋回体13が、旋回支持軸14、15の軸線5の周りに旋回すると、一対のバレル槽50、50は軸線5の周りに公転運動を行う。
【0023】
すなわち、一対のバレル槽50、50、バレル軸体53等は、鉛直面内を公転運動する。主スプロケット22、駆動チェーン23、従スプロケット24が、第1伝達機構20を構成している。なお、第1伝達機構20は、スプロケット/チェーン機構だけでなく、プーリ/ベルト機構、歯付プーリ/歯付ベルト機構などで構成したものであってもよく、要するに第1駆動体21の回転駆動力を旋回体13に伝達できるものであればよい。また、この形態の説明でいう「鉛直方向」とは、鉛直方向に対して所定の角度(例えば、±20度)以内の方向を含んでいるものである。また、この形態の説明でいう「鉛直面」とは、鉛直面に対して所定の角度(例えば、±20度)以内の平面を含んでいるものである。
【0024】
基台10には、一対のバレル槽50、50を、バレル軸体53の回転軸線6(図2参照)の周りに自転運動させるための第2駆動体31が設けられている。第2駆動体31は、減速モータ、減速機付モータ等低回転速度で駆動回転できるものが好ましく、この形態ではモータ31aを備えたギヤードモータとなっている。第2駆動体31の出力軸には、主スプロケット32が固定されている。旋回支持軸14側には、従スプロケット34が固定されている。主スプロケット32と従スプロケット34との間には、駆動チェーン33が巻回されている。従スプロケット34には、第1傘歯車35が固定されている。従スプロケット34及び第1傘歯車35は軸受43、43によって、旋回支持軸14に対して回転可能に設けられている。軸受43、43は、旋回支持軸14にナット44により軸線方向に固定されている。
【0025】
旋回体13の旋回支持軸14側には、傘歯車軸37が軸受41、42に支持されて回転可能に設けられている。傘歯車軸37には、第2傘歯車36、第1スプロケット38が固定されている。第1傘歯車35と第2傘歯車36とは噛み合っている。前述したバレル軸体53には、第2スプロケット39が固定されている。第1スプロケット38と第2スプロケット39との間には駆動チェーン40が巻回されている。第2駆動体31が所定の回転速度(回転数)で回転すると、主スプロケット32、駆動チェーン33、従スプロケット34、第1傘歯車35、第2傘歯車36、第1スプロケット38、駆動チェーン40、第2スプロケット39を介してバレル軸体53が回転する。
【0026】
バレル軸体53が回転すると、一対のバレル槽50、50が、バレル軸体53の回転軸線6の周りに回転する。すなわち、一対のバレル槽50、50が回転軸線6の周りに自転運動する。主スプロケット32、駆動チェーン33、従スプロケット34、第1傘歯車35、第2傘歯車36、第1スプロケット38、駆動チェーン40、第2スプロケット39が第2伝達機構30を構成している。なお、第2伝達機構30は、スプロケット/チェーン機構だけでなく、プーリ/ベルト機構、歯付プーリ/歯付ベルト機構などで構成したものであってもよく、要するに第2駆動体31の回転駆動力をバレル軸体53に伝達できるものであればよい。
このように、バレル研磨機1は、3次元方向への流動移動を行わせるにもかかわらず、構成が簡素であり、信頼性、作業性、メンテナンス等に優れている。
【0027】
カバー体19の前面には、操作盤(図示せず)を備えた制御装置(図示せず)が設けられている。操作盤には、第1駆動体21、第2駆動体31を回転させるための操作ボタン等手動操作手段、運転情報、メンテナンス情報等を表示するための表示装置、自動運転を行うための自動操作手段等が設けられている。また、制御装置には、公転運動、自転運動の回転速度、バレル研磨時間等を設定するとともに、設定された回転速度、バレル研磨時間等バレル研磨条件を記憶し、記憶されたバレル研磨条件に基づいて、自動運転を行うための機能等も有している。
【0028】
次に、バレル研磨機1の作用について説明を行う。
このバレル研磨機1で行うバレル研磨加工について説明を行う。この実施の形態の説明では、プラスチック製の長物(例えば、幅4mm*高さ5mm*長さ150mm)の被研磨物Wをバレル研磨加工する場合を例にして説明を行う。なお、バレル研磨条件(公転運動の回転速度、自転運動の回転速度、バレル研磨時間等)、メディア(研磨材)の種類、研磨助材の種類等は、被研磨物の材質、被研磨物の形状等により、適宜、選択されるものであることはいうまでもない。
【0029】
バレル槽50のバレル本体51から蓋体52をとり、バレル本体51の開口部を開口させる。開口部から、被研磨物W、研磨材であるメディア(例えば、クルミ殻、プラスチック、セラミック)M、研磨助材としての油等を所定量装入する。バレル本体51の開口部を蓋体52で塞いで覆いボルト53で固定する。このように、一対のバレル槽50、50の両方に被研磨物W、メディア(例えば、クルミ殻)M、油等を所定量(例えば、バレル槽の容量の50%相当分)装入する。なお、被研磨物Wの材質等によっては、前述したメディアMに加え、研磨助材をバレル槽50に装入してもよい。カバー体19の開閉カバーを閉じ、研磨加工領域2を遮蔽する。
【0030】
第1駆動体21、第2駆動体31を、図示しない制御装置を介して、所定の回転速度で回転させる。このとき、第2駆動体31は、一対のバレル槽50、50を回転軸線6の周りに、所定の回転速度(例えば、25〜30rpm)で回転させ、一対のバレル槽50、50を自転運動させる。例えば、矢印Bで示す回転方向に回転させる。なお、バレル槽50の自転運動の回転方向は、矢印Bで示す回転方向の反対方向であってもよい。また、第1駆動体21は、旋回台13を、所定の回転速度(例えば、25〜30rpm)で軸線5の周りに旋回させ、一対のバレル槽50、50を公転運動させる。例えば、矢印Aで示す回転方向に公転運動させる。なお、バレル槽50の公転運動の回転方向は、矢印Aで示す回転方向の反対方向であってもよい。
【0031】
このバレル研磨作業を所定時間(例えば20時間)行うと、被研磨物Wのバレル研磨加工が完了する。被研磨物W、メディアM等は、一対のバレル槽50、50の内部において、低い回転速度で鉛直方向を含む3次元方向に大きく流動移動するため、被研磨物WとメディアMが相対的に擦られ被研磨物の表面(被研磨面)にバレル研磨加工が施される。
【0032】
このバレル研磨機1は、一対のバレル槽50、50が鉛直面内で公転運動するとともに、公転運動しているバレル軸体53の回転軸線6の周りに一対のバレル槽50、50が自転運動する構成であり、被研磨物WとメディアMとの流動現象が3次元方向の各面内(例えば水平面、鉛直面を含む各面内)で生じる。このバレル研磨機1は、被研磨物WとメディアMとに3次元的な大きな流動移動を作り出してバレル研磨加工を行う。そのため、一対のバレル槽50、50の自転運動及び公転運動の回転速度をあまり上げなくても確実なバレル研磨を行うことができる。
【0033】
また、一対のバレル槽50、50が鉛直面内で公転運動をすることにより、一対のバレル槽50、50が図4における上下左右位置を含む各位置に回転移動する。そのため、一対のバレル槽50、50内の被研磨物WとメディアM等も、遠心力の作用により蓋体52側に押し付けられ、図4の上下左右の各位置に示すように回転移動する。また、被研磨物WとメディアM等は、バレル槽50の公転運動による遠心力と、被研磨物Wの自重とメディアMの自重との差等とによって相対的に流動移動し、メディアM等と被研磨物Wの表面とが擦られることで被研磨物Wの表面が磨かれる。
【0034】
このとき、被研磨物Wが軸方向に所定の長さ延びた長物であれば、一対のバレル槽50、50が公転運動すると、被研磨物Wは、表面積が小さく、被研磨物WとメディアMとが相対的に流動移動するときに受ける抵抗が少ない方向、すなわち長手方向端部側表面Waの一方が流動移動の前方に位置するようになる(図5参照)。被研磨物Wは、被研磨物Wの表面周囲を相対的に流れるメディアMの抵抗により、被研磨物W及びメディアMが流動移動する方向に、被研磨物Wの長手方向の軸線が向くように相対運動を行う。すなわち、被研磨物Wに対して、メディアは、図5の矢印で示す方向に相対的に流動移動する。また、被研磨物Wは、一対のバレル槽50、50が公転運動している鉛直面と略平行な方向に、長手方向の軸線を向けて公転運動する。
【0035】
そして、図5に示すように、表面積の大きい側部側表面Wbに沿って、被研磨物WとメディアMとが、相対的に流動移動して、擦れるようになる。従って、被研磨物Wが多角状の被研磨物(例えば、多角棒状体、直方体)の場合、このバレル研磨機1は、メディアMが被研磨物Wの角部を丸くするように流動移動しないため被研磨物Wの角部がだれたりしない。また、メディアMが被研磨物Wの表面に沿って、相対的に、流動移動するため、被研磨物Wの表面に磨き残しが生じさせることがない。
【0036】
さらに、一対のバレル槽50、50は、公転運動しているバレル軸体53の回転軸線6の周りに回転(自転運動)している。言い換えると、一対のバレル槽50、50は、旋回支持軸14、15の軸線5の周りに公転運動しながら、バレル軸体53の回転軸線6の周りに自転運動している。このことにより、バレル槽50内の被研磨物W、メディアM等に鉛直方向を含む3次元方向の各方向に流動移動を与え、高品質の被研磨物Wをバレル研磨加工することができる。このように、一対のバレル槽50、50が公転運動、及び、自転運動するので、被研磨物W、メディアM等の流動移動を、鉛直方向を含む3次元方向の各面内に発生させ、低速の回転速度でも、能率良く、高品質な製品(被研磨物)をバレル研磨加工することができる。このように、このバレル研磨機1は、3次元的な大きな流動移動を作り出してバレル研磨を行うので、低速の回転速度の公転運動、自転運動でもバレル研磨を確実に行うことができ、被研磨物Wの表面(被研磨面)に磨き残しが生じさせることがない。
【0037】
また、一対のバレル槽50、50に高速の回転速度で公転運動、自転運動をさせないので、被研磨物W同士、被研磨物WとメディアMとが、高い相対速度で、かつ、過度に擦れ合うことがない。また、バレル槽50に被研磨物Wが、遠心力により、過度に押し付けられることがない。すなわち、このバレル研磨機1では、被研磨物Wの角部がだれたり、被研磨物Wの表面(被研磨面)に傷を生じさせたりすることがない。言い換えると、このバレル研磨機1は、能率良く、高品質な製品(被研磨物W)にバレル研磨加工することができる。
【0038】
〔他の実施の形態〕
図6は、バレル研磨機の他の実施の形態を示し、一対のバレル槽が複数列設けられた構成を部分的に示した正面図である。この他の実施の形態のバレル研磨機は、旋回体13に回転可能に複数のバレル軸体53、53を設け、このバレル軸体53、53の両端に一対のバレル槽50、50を設けている。言い換えると、一対のバレル槽50が、旋回支持軸14、15の軸線5の方向に複数列(図6の例では2列)配設された形態である。第1スプロケット38の回転は、チェーン40、バレル軸体53、53に設けられたスプロケットを介して伝達される。このように、一対のバレル槽50、50(またはバレル槽50)を複数槽設けると、1回のバレル研磨加工で大量に生産することができ、生産性を向上させることができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、被研磨物は、バレル研磨を行う表面(被研磨面)の所定の位置に、所定の高さの凹部、凸部等が形成されているものであってもよい。さらに、このバレル研磨機は、乾式バレル研磨、湿式バレル研磨のどちらにも対応可能である。また、メディアは、セラミックメディア、プラスチックメディア、金属メディア、クルミ殻、コーン等のソフトメディアなどが使用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 … バレル研磨機
5 … 軸線
6 … 回転軸線
10 … 基台
11、12…軸受ユニット
13 … 旋回体
14、15…旋回支持軸
20 … 第1伝達機構
21 … 第1駆動体
30 … 第2伝達機構
31 … 第2駆動体
50 … バレル槽
51 … バレル本体
52 … 蓋体
53 … バレル軸体(回転軸体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル研磨機の基台(10)と、
前記基台に、水平方向に形成された軸線(5)の周りに旋回可能に設けられた旋回体(13)と、
前記軸線と直交する方向に回転軸線(6)を有し、かつ、前記旋回体に回転可能に立設され、前記旋回体が旋回したとき鉛直面内を旋回移動する回転軸体(53)と、
一方の端部が前記回転軸体の端部に固定され、外周が多角形に形成された多角柱状のものであって、前記回転軸体の端部に設けられ、槽内部に被研磨物及びメディアが装入されるバレル槽(50)と、
前記旋回体を前記軸線の周りに旋回させるための第1駆動体(21)と、
前記バレル槽を前記回転軸線の周りに回転させるための第2駆動体(31)と、
前記第1駆動体と前記旋回体との間に設けられ、前記第1駆動体の駆動力を前記旋回体に伝達するための第1伝達機構(20)と、
前記第2駆動体と前記回転軸体との間に設けられ、前記第2駆動体の駆動力を前記回転軸体に伝達するための第2伝達機構(30)とを備え、
前記バレル槽を鉛直面内で公転運動させるとともに前記回転軸線の周りに自転運動させてバレル研磨を行う
ことを特徴とするバレル研磨機。
【請求項2】
請求項1に記載されたバレル研磨機において、
前記バレル槽は、前記回転軸体の両方の端部に、各々、設けられている一対の構成になっている
ことを特徴とするバレル研磨機。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたバレル研磨機において、
前記回転軸体は、前記旋回体に、前記軸線の方向に複数設けられたものであり、
前記バレル槽が、複数設けられた前記回転軸体の端部に設けられている
ことを特徴とするバレル研磨機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載されたバレル研磨機において、
前記バレル槽は、他方の端部に開口部が形成されているバレル本体と、このバレル本体に着脱可能に設けられ、装着されたとき前記開口部を覆う蓋体とから構成されている
ことを特徴とするバレル研磨機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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