説明

バレル研磨装置

【課題】 クラッチ部を排除しながら、ドラムプーリーを回転主軸に対して係止部により固定し、複数のバレルの作業バラツキを極力抑制するとともに、装置の故障をなくしたより信頼性の高いバレル研磨装置を提供する。
【解決手段】 駆動部3と、前記駆動部から駆動伝達部にて回転主軸110を中心に回転駆動されるドラム1と、前記回転主軸を中心に回転可能に取り付けられたドラムプーリー111と、前記ドラム外周近傍に一定間隔をもって自転可能な状態に取着され、かつ前記ドラムプーリーと駆動伝達部により回転駆動されるバレル21,22とからなるバレル研磨装置であって、前記ドラムプーリーと噛み合う係止部112bを設け、当該係止部によりドラムプーリーの回転主軸に対する回転を制御してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバレル研磨装置に関するもので、特に1つの回転主軸の駆動により複数のバレルを駆動させる構成のバレル研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バレル研磨装置はバレル内あるいはバレルに収納されたメディア収納具内に被加工物と研磨材を収納し、当該バレルを回転させることにより、流動研磨を行うものである。このような加工方法は水晶振動子等の水晶振動板の加工にも面取り加工として広く用いられており、水晶振動子の電気的特性向上に寄与していた。
【0003】
通常のバレル研磨装置は、駆動用のモータと、当該モータにより回転駆動されるドラムと、ドラムの外周近傍に取り付けられた複数のバレルからなり、ドラムの回転とともにバレル自体も自転するよう駆動伝達されている。これによりバレルはドラムの回転主軸に対し公転するとともに、バレルに取り付けられた自転軸を中心として自転する。このような動作によりバレル内あるいはバレルに収納されたメディア収納具内の水晶振動板等の被研磨物および研磨材は、バレル内で流動し研磨作業が進められる。
【0004】
一般的には処理作業効率向上を意図して、上記複数のバレルは1つの回転主軸からの駆動伝達部により同時に回転駆動するように構成され、駆動伝達部としてはVベルトや無端チェーン、タイミングベルト等を用いており、これにより大きなトルクの伝達を可能にしていた。
【0005】
Vベルトはメンテナンスの容易さ、あるいは静音動作に対応する等の利点を有していたが、長時間駆動によりVベルトの張力が変化し、ベルトの滑りが生じることがあった。無端チェーンはVベルトを用いていたような滑りの問題は生じないが、重量のある金属を使用しているため、取り扱いが不便であり、また定期的な注油が必要である等頻繁なメンテナンスを必要としていた。また動作時には動作音が高く、作業周囲環境に与える影響も大きいという問題があった。最近では、特許文献1に示すように、上記問題点を解決できるタイミングベルトを駆動伝達部として用いられる事が多くなっているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2003−205449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来のバレル研磨装置では、処理作業効率向上を意図して、上記複数のバレルは1つの回転主軸からのドラムプーリ-を介して駆動伝達部により同時に回転駆動するように構成されている。そして、研磨作業のなかで、駆動部の電源を切った後に、バレル内あるいはバレルに収納されたメディア収納具内の水晶振動板等の被研磨物を搬入あるいは搬出するためにバレルの取出口と、バレル研磨装置の取出口の方向を合わせる必要がある。
【0008】
しかしながら、バレルの回転数とドラムの回転数の設定によっては、これらの各取出口の位置が合わないことがあった。このため、従来のバレル研磨装置では、回転主軸とドラムプーリーの間、あるいは回転主軸に取り付けられた軸受けとドラムプーリーの間に取り付けられたクラッチ部を開放することで、回転主軸に対してドラムプーリーが回転し、バレルの回転も開放されるので、バレルの取出口と、バレル研磨装置の取出口の方向位置合わせを容易なものとできるように構成していた。このクラッチ部としては、回転主軸あるいは軸受けに対してパッドなどを電磁的締め付けや開放、あるいは手動でねじ込むことにより締め付けや開放するのが一般的である。前者は、電磁気的にパッドの締め付け強度が制御されているので安定しているものの、パッドの磨耗状態によりパッドの締め付けが緩くなる事があった。また、装置として大型化しやすく高価なものとなる。後者は、安価で装置の小型化が容易であるものの、作業者によってパッドの締め付け強度がばらつくので、パッドの締め付けが緩くなったまま作業が開始される事があった。
【0009】
このように、回転主軸あるいは回転主軸に取り付けられた軸受けとドラムプーリーの間に取り付けられたクラッチ部の結合が弱い状態でバレル研磨装置を動作させると、1つの駆動軸に対する複数のバレルの回転駆動において、所定時間内に意図した回転数を得られないバレルが発生することがあり、作業サイクル毎に作業バラツキが生じることがあった。このようなバレルの回転バラツキが生じた場合、上述の水晶振動板の加工においては収納したバレル毎に周波数その他の電気的特性が大きく異なってしまうことがあった。また、クラッチ部に使われるパッドなどの焼けつき、装置の故障を招く危険があった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、クラッチ部を排除しながら、ドラムプーリーを回転主軸に対して係止部により固定し、複数のバレルの作業バラツキを極力抑制するとともに、装置の故障をなくしたより信頼性の高いバレル研磨装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために本発明のバレル研磨装置は、少なくとも1つの駆動部と、軸受けに取り付けられた回転主軸を中心に回転可能に取り付けられ、前記駆動部から駆動伝達部にて回転駆動されるドラムと、前記回転主軸を中心に回転可能に取り付けられたドラムプーリーと、前記ドラム外周近傍に一定間隔をもって自転可能な状態に取着され、かつ前記ドラムプーリーと駆動伝達部により回転駆動されるバレルと、被研磨物を搬入あるいは搬出してなる取出口とからなるとともに、前記ドラムと前記バレルの一定の回転比にて回転駆動してなるバレル研磨装置であって、前記ドラムプーリーと噛み合う係止部を設け、当該係止部によりドラムプーリーの回転主軸に対する回転を制御してなることを特徴とする。
【0012】
また、上記バレル研磨装置において、前記ドラムプーリーの一部にウォームホイールと、当該ウォームホイールと噛み合うウォームギアとを設け、前記ウォームギア回転させる可動部とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の特許請求項1によれば、前記ドラムプーリーと噛み合う係止部が設けられ、当該係止部によりドラムプーリーの回転主軸を中心とする回転を制御しているので、従来のようにクラッチ部の緩みによるドラムプーリーの回転が一切なくなり、複数のバレルの作業バラツキを極力抑制するとともに、装置の故障をなくしたより信頼性の高いバレル研磨装置を提供することができる。
【0014】
本発明の特許請求項2によれば、前記ドラムプーリーのウォームホイールに噛み合うウォームギアが設けられているので、ドラムプーリーを起点として回転させたとしても、ウォームホイールの回転する動力は、ウォームギアにより係止されるので、ドラムプーリーは前記回転主軸から回転することなく固定することができる。このため、従来のようにクラッチ部の緩みによるドラムプーリーの回転が一切なくなり、複数のバレルの作業バラツキを極力抑制するとともに、装置の故障をなくすことができる。また、クラッチ部をウォームギアに置き換えることで、装置の小型化や簡素化、および装置のコストダウンに大きく貢献できる。
【0015】
前記可動部によりウォームギアを回転させることで、ドラムプーリーが回転主軸を中心として回転させることができるので、バレル内あるいはバレルに収納されたメディア収納具内の被研磨物を搬入あるいは搬出する場合、前記可動部を動作させることで、バレル研磨装置の取出口と、各バレルの取出口の方向を容易に位置合わせすることができる。このため、作業効率を低下させることがない。このように加工精度ばらつきがなく、搬入搬出作業性の面でも低下することのないバレル研磨装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による実施形態を水晶振動板のバレル研磨装置を例にとり図1および図2とともに説明する。図1は本発明の実施形態を示す模式的側面図であり、図2は図1の模式的平面図である。
【0017】
本発明によるバレル研磨装置は、駆動モータ3(駆動部)と、駆動モータ3と駆動伝達部にて接続されたドラム1と、ドラムの外周近傍に回転可能状態に取り付けられた円筒形状の複数のバレル21,22,23,24とからなり、各構成要素は筐体F内に収納されている。筐体Fの上端部には、被研磨物を搬入あるいは搬出するための研磨装置の取出口F3が形成されている。駆動モータ3は回転数を所定の値に設定できる可変速型であり、モータ主軸30にはプーリー31が取り付けられている。筐体Fには軸受けF1,F2が設けられ、当該軸受けにドラム回転主軸110が水平に架設固定されている。ドラム1はドラム回転主軸110に垂直に配置された円盤11,12を対向状態で両端に有しており、図示していないが各円盤を複数の支柱で固定された構成である。当該円盤部分の一方の外周端面に周状のV字形溝のプーリーが形成され、前記駆動モータのプーリー31とVベルトVBにより接続されている。
【0018】
前記ドラム1内であって、対向する円盤11,12の外周近傍には、同心円上でかつ等間隔に4組のバレル軸受け13,14(バレル21,22についてのみ図示)が形成されており、バレル21,22,23,24が当該バレル軸受けに回転自在に設置されている。なお、当該バレルはバレル軸受けの伸長方向に対し、若干の傾きを持って取り付けられており、これにより、研磨実施時に後述する中空パイプに収納された内容物(水晶振動板と研磨材)を揺動させることが可能となる。各バレルの周端部の一部には、被研磨物を搬入あるいは搬出するためのバレルの取出口21a,22a,23a,24aが形成されている。
【0019】
各バレルは円筒形状であり、またバレル回転軸210,220,230,240は前記円盤11の外側すなわちドラム外側に導出されている。当該導出された回転軸には各バレルに対応したバレルプーリー211,221,231,241がそれぞれ形成されており、かつ各バレルプーリーにはギア211a,221a,231a,241aが形成されている。当該バレルプーリーは基本的に同サイズであり、かつギア数も等しく形成されている。
【0020】
一方ドラム1の外側で筐体Fとの間には、ドラム回転主軸110の周囲にあり筐体Fに固定された複数のドラムプーリー111と、ウォームホイール112aとが一体的に設けられ、前記各ドラムプーリーには複数のギア111aが形成されている。前記ウォームホイール112aは、ウォームギア112b(係止部)とお互いにギアが噛み合うように構成され、当該ウォームギア112bと一体に設けられた外部ハンドル113(可動部)を回すことで、前記ドラムプーリー111が前記ドラム回転主軸110を中心として回転できるような機構となっている。
【0021】
前記複数のドラムプーリー111は前記各バレルと接続されたバレルプーリー211,221,231,241に対応して設けられ、基本的には各ギアのサイズ並びにギア数は等しく設定されている。これらバレルプーリー211,221,231,241と複数のドラムプーリー111間にはそれぞれ無端のタイミングベルトTBが架設されており、ドラムプーリー111から各プーリーに駆動伝達される。本発明では各ドラムプーリーとバレルプーリーをギアとタイミングベルトを回転させているので、滑りがなく、各バレルは意図した回転数、回転速度で動作し、所望の研磨作業を行うことができ、バレル毎の処理バラツキを極力抑制することができる。従って、複数のバレルの作業バラツキを極力抑制するとともに、装置メンテナンスが容易でかつ静音動作にも対応したバレル研磨装置を得ることができる。
【0022】
なお、図2に示すように、各バレル内には中空パイプ(メディア収納具)21b,21c,22b,22cが2本収納可能となっており(バレル23,24については省略)、当該中空パイプ内に被研磨物である水晶振動板と研磨材が収容されている。なお、各バレルへの収納本数は任意に決定すればよく、1つのバレルに複数の中空パイプ(メディア収納具)を収納することで研磨作業効率を飛躍的に向上することができる。
【0023】
以上のように構成されたバレル研磨装置の動作について以下に説明する。
【0024】
駆動モータ3の電源を入力する前に、前記外部ハンドル113を回しながら、バレル研磨装置の取出口F3と、各バレルの取出口21a,22a,23a,24aの方向を手動で位置合わせし、各バレル21,22,23,24の内部に、被研磨物である水晶振動板と研磨材が収容された中空パイプ(メディア収納具)21b,21c,22b,22cを2本ずつ収納し、当該バレルに固定する。
すべてのバレル内部に中空パイプが収納固定(搬入)されると、駆動モータ3の電源を入れて、プーリー31からVベルトVBを駆動伝達部としてドラム1を回転させる。ドラム回転主軸110には前述のとおり、ウォームギア112bによってウォームホイール112aとドラムプーリー111は前記ドラム回転主軸110を中心として回転することなく固定されており、前記ドラムプーリーすなわちドラム回転主軸110を中心にしてドラム1が回転することにより、当該ドラム1に取り付けられたバレル21,22,23,24に自転駆動力が与えられる。このときの駆動伝達部はタイミングベルトTBにより行うが、このような駆動伝達部によりドラムプーリー111とバレルプーリー間にはベルトの滑りが生じることが無く、意図した回転数、回転速度のバレル研磨を行うことができる。なお、駆動モータの可変速機能を用いて回転数を調整することにより加工精度をさらに向上させることができる。
【0025】
そして、駆動モータ3の電源を切って、前記外部ハンドル113を回しながら、バレル研磨装置の取出口F3と、各バレルの取出口21a,22a,23a,24aの方向を手動で位置合わせし、各バレル21,22,23,24の内部に収納固定された前記中空パイプ(メディア収納具)21b,21c,22b,22cを取り出す(搬出)ことで、研磨作業が終了する。
【0026】
なお、上記自転駆動力はギア111aとバレルに設けられた各プーリーのギア比によってドラム回転方向と順方向あるいは逆方向あるいは自転無しを選択することができる。ギア比においてドラム側のギア111a=バレル側のギアであれば自転はせず、ドラム側のギア111a>バレル側のギアであれば順方向に自転し、ドラム側のギア111a<バレル側のギアであれば逆方向に自転する。本実施の形態においては、図1内の矢印で示すようにドラムの回転方向に対してバレルが逆方向に回転するよう設定されている。また自転数はギア比によって決まり比率が広がるほど自転数があがる。本実施の形態においては、例えば1自転(逆転)/25公転するよう設定されている。このような回転を行わしめることにより、バレルに収納された中空パイプ内の内容物は自転しつつ所定周期でパイプの端部が上下に揺動し、内容物の均一な研磨を実現している。
【0027】
本発明のバレル研磨装置は、前記ドラムプーリー111にウォームホイール112aを一体化した状態でドラム回転主軸110に取り付けられ、当該ウォームホイール112aを回転させるウォームギア112bが接続されているので、ドラムプーリー111を起点として回転させたとしても、ウォームホイール112aの回転する動力は、ウォームギア112bにより係止されるので、ドラムプーリー111は前記ドラム回転主軸110を中心として回転することなく固定することができる。このため、従来のようにクラッチ部の緩みによるドラムプーリーの回転が一切なくなり、複数のバレルの作業バラツキを極力抑制するとともに、装置の故障をなくすことができる。また、前記外部ハンドル113によってウォームギア112bを回転させることで、ドラムプーリー111がドラム回転主軸110を中心として回転させることができるので、バレル内あるいはバレルに収納されたメディア収納具内の被研磨物を搬入あるいは搬出する場合、前記外部ハンドル113を動作させることで、バレル研磨装置の取出口F3と、各バレルの取出口21a,22a,23a,24aの方向を手動で位置合わせすることができる。このため、作業効率を低下させることがない。このように加工精度ばらつきがなく、搬入搬出作業性の面でも低下することのないバレル研磨装置を提供することができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、ドラムプーリーの回転を制御してなる係止部として、ウォームギアを例にしているが、他のギア、あるいは複数のギアを用いてドラムプーリーの回転を制御してもよい。また、ドラムプーリーの一部に噛み合う物としてギアに限らず、爪状の突起が設けられたものでもよい。前記可動部として外部ハンドルを人為的に回す構成を例にしているが、駆動モータにより回す構成にも適用できる。上記実施形態では、ドラム回転主軸が軸受けに固定された構成を例にしているが、ドラム回転主軸が軸受けから回転する構成であってもよい。水晶振動板のバレル研磨装置を例にしたが、セラミックなどの他の圧電板にも適用できるものである。
【0029】
本発明は、その精神または収容な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態によるバレル研磨装置の模式的な側面図。
【図2】本発明の実施形態によるバレル研磨装置の模式的な平面図。
【符号の説明】
【0031】
1 ドラム
21,22,23,24 バレル
3 駆動モータ
VB Vベルト
TB タイミングベルト
F 筐体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの駆動部と、軸受けに取り付けられた回転主軸を中心に回転可能に取り付けられ、前記駆動部から駆動伝達部にて回転駆動されるドラムと、前記回転主軸を中心に回転可能に取り付けられたドラムプーリーと、前記ドラム外周近傍に一定間隔をもって自転可能な状態に取着され、かつ前記ドラムプーリーと駆動伝達部により回転駆動されるバレルと、被研磨物を搬入あるいは搬出してなる取出口とからなるとともに、前記ドラムと前記バレルの一定の回転比にて回転駆動してなるバレル研磨装置であって、
前記ドラムプーリーと噛み合う係止部を設け、当該係止部によりドラムプーリーの回転主軸に対する回転を制御してなることを特徴とするバレル研磨装置。
【請求項2】
前記ドラムプーリーの一部にウォームホイールと、当該ウォームホイールと噛み合うウォームギアとを設け、前記ウォームギア回転させる可動部とを設けたことを特徴とする特許請求項1記載のバレル研磨装置。

【図1】
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【図2】
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