説明

バンパカバー取付構造

【課題】バンパカバーが所定の基準値から外れた寸法のバラツキを有していても、バンパカバー上縁のフランジを所定の高さ位置にセットし得る、バンパカバーの取付構造を提供する
【解決手段】ヘッドランプ30とその下に設けたブラケット50との間に、バンパカバー40のフランジ41を配設するバンパカバーの取付構造であって、ブラケット50は、ヘッドランプ30下に設けられるブラケット本体部51と、ブラケット本体部51とヘッドランプ30との間で、外側へ付勢されてブラケット本体部51に移動可能に取り付けられた別ピースブラケット部52と、を備え、バンパカバー40の建付バラツキに応じて、別ピースブラケット部52が外側へ突き出てバンパカバー40に追従する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバンパカバーの取付構造に係り、特に、バンパカバーの建付バラツキが生じてもヘッドランプとバンパカバーとの隙が広がることを規制できるバンパカバー取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドランプに対するバンパカバーの配設位置を適正にするために、ヘッドランプの下に取付用のブラケットを設けて、このブラケットによってバンパカバーのフランジの配置位置を規制するバンパカバーの取付構造が考案されている。
【0003】
図5は車両100の右前部の平面図であり、図6は図5のB−B線に沿った部分断面図である。図中の符号FrはB−B線に沿った車両前方側を、Upは車両上方を、RHはA−A線に直交する水平方向であって右方を示す。
これらの図に示すように、車両100の前部には、中央のラジエータグリル120の両側にヘッドランプ130が設けられており、このヘッドランプ130の外側下方にバンパカバー140が設けられている。
【0004】
ヘッドランプ130は、車体に取り付けられる碗型のランプハウジング131と、このランプハウジング131の前方を覆うように被着するアウターレンズ132と、を備え、これらのアウターレンズ132とランプハウジング131とで画成される空間S2(図6参照)内に、図示省略するバルブやリフレクターが配設される。なお、図6では、ランプハウジング131及びアウターレンズ132の下側を部分的に表している。
【0005】
ランプハウジング131は、平坦な底部131Aと、底部131Aの先端に形成された取付部131Bと、底部131Aの下面から下方へ延出したスクリュー受部131Cと、を備えている。
アウターレンズ132は、意匠面を成すカバー本体部132Aと、カバー本体部132Aの下縁からランプハウジング131側へ延出した延長部132Bと、この延長部132Bの先端に設けられていて前述のランプハウジング131の取付部131Bと係合する係合部132Cと、を備えている。図6に示すように、延長部132Bは、カバー本体部132Aの下縁から次第に下がるよう傾斜して形成されている。
【0006】
ブラケット150は、ブロック状に形成されており、図示省略する孔に差し込んだスクリュー160を前述のスクリュー受部131Cに螺着させることで、ヘッドランプ130下に配設される。このブラケット150は、図6に示すように、スクリュー受部131Cからカバー本体部132Aの下縁までの長さを若干越える長さL2程度に寸法が設定されており、ブラケット150の外側の面には、ブラケット奧側に向けて高くなるスロープ150Aが形成されており、このスロープ150Aの上縁から水平に奧側に延出した平坦部150Bが形成されている。
この平坦部150Bは、アウターレンズ132の延長部132Bの下側に隙間D2を介して配設されている。
【0007】
バンパカバー140は、車体に固定されたバンパ本体(図示省略)を介して車体に取り付けられる。このバンパカバー140は、樹脂等の柔らかい素材で構成されており、車両外面を成す意匠を形作っている。
【0008】
このバンパカバー140の上縁には、図6に示すように、車両内側へ水平状に突出したフランジ141が形成されている。バンパカバー取付けの際、このフランジ141が、ヘッドラップ130の外側下方からヘッドランプ130へ向けて近接してくると、ブラケット150のスロープ150Aにガイドされて、ヘッドランプ130とブラケット150との隙間D2に導かれ、最終的にはフランジ141が図6に実線で示すようにブラケット150の平坦部150Bに載置されて隙間D2内に配置されることで、バンパカバー140の取付作業が完了する。
【0009】
この種のヘッドランプとこのヘッドランプ下に設けられたブラケットとの間にバンパカバーのフランジを配設するバンパカバーの取付構造が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2007−237892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図6に示すバンパカバーの取付構造において、バンパカバー140の製造の際に成型バラツキが生じると、図2に一点鎖線で示すように製造したバンパカバー140のフランジがブラケット150の平坦部150Bに届かず、ブラケット150のスロープ面上に位置することになる。例えば、製造したバンパカバー140が大きなバラツキを持っている場合、ブラケット150によって規定される高さの基準位置から、バンパカバー140のフランジ141が外れることになる。これではバンパカバー140の上縁とヘッドランプ130との隙が広がり、外観上の見栄えなどが低減してしまう。
この場合、バンパカバー140のフランジ141を長くして、成型バラツキが生じても常に平坦部150B上に載置させることも考えられるが、樹脂成形後の溶融樹脂が固化する速度が部分的に異なることからヒケが生じるので、フランジ141の長さにも限界がある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みて、バンパカバーが所定の基準値から外れた寸法のバラツキを有するものであっても、バンパカバー上縁のフランジを所定の高さ位置にセットすることができる、バンパカバーの取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のバンパカバー取付構造は、ヘッドランプとヘッドランプ下に設けられたブラケットとの間に、バンパカバーのフランジを配設するバンパカバーの取付構造であって、ブラケットは、ヘッドランプ下に設けられるブラケット本体部と、ブラケット本体部とヘッドランプとの間で、外側へ付勢されてブラケット本体部に移動可能に取り付けられた別ピースブラケット部と、を備えており、バンパカバーの建付バラツキに応じて、別ピースブラケット部が外側へ突き出てバンパカバーに追従することを特徴としている。
【0013】
ブラケット本体部は、好ましくは、ヘッドランプとの間に配設される壁部と、壁部を水平に貫通した穴部と、を備え、別ピースブラケット部が、穴部を挿通するベース部と、ベース部に設けられていてこのベース部を壁部外方へ付勢する弾機部と、ベース部の先端部に設けられていてフランジを載置する受部と、を備えている。弾機部は、ベース部の先端部から左右に突出しベース部後側へ向けて弓形の突片から成ることが望ましい。好ましくは、別ピースブラケット部の基部に、ベース部の穴部からの脱落を規制する抜止部を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えばバンパカバーの製造の際の成型バラツキが起因して建付バラツキが生じても、その建付バラツキに応じて別ピースブラケット部が車両前方へ突き出てバンパカバーに追従する。これにより、別ピースブラケット部がバラツキ程度に応じてバラツキをチューニングするバネとして機能するので、バンパ取付バラツキを吸収することができる。
したがって、バンパカバーのフランジを高さ方向における基準の位置にセットすることができて、建付精度を向上させることができる。よって、ヘッドランプとバンパカバーとの建付けによる隙が広がることを防止できて、所望の外観を呈することが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係るバンパカバー取付構造1を適用した車両10の右前部を示す平面図であり、図2は図1のA−A線に沿った部分断面図である。図中の符号FrはA−A線に沿った車両前方側を、Upは車両上方を、RHはA−A線に直交する水平方向であって右方を示す。
【0016】
本実施形態を適用した車両10は、図に示すように、車両の前部中央のラジエータグリル20の両側にヘッドランプ30が設けられており、このヘッドランプ30の外側下方にバンパカバー40が設けられている。
【0017】
ヘッドランプ30は、車体に取り付けられる碗型のランプハウジング31と、このランプハウジング31の前方を覆うように被着するアウターレンズ32と、を備え、これらのアウターレンズ32とランプハウジング31とで画成される空間S1(図2参照)内に、図示省略するバルブやリフレクターが配設される。なお、図2では、ランプハウジング31及びアウターレンズ32の下側を部分的に表している。
【0018】
ランプハウジング31は、平坦な底部31Aと、底部31Aの先端に形成された取付部31Bと、底部31Aの下面から下方へ延出したスクリュー受部31Cと、を備えている。
アウターレンズ32は、意匠面を成すカバー本体部32Aと、カバー本体部32Aの下縁からランプハウジング31側へ延出した延長部32Bと、この延長部32Bの先端に設けられていて前述のランプハウジング31の取付部31Bと係合する係合部32Cと、を備えている。図2に示すように、延長部32Bは、カバー本体部32Aの下縁から次第に下がるよう傾斜して形成されている。
【0019】
バンパカバー取付構造1では、ヘッドランプ30の下にブラケット50が設けられており、このブラケット50が、ヘッドランプ30下に固定されるブラケット本体部51と、このブラケット本体部51に移動可能に取り付けられた別ピースブラケット部52と、から成ることを特徴としている。
【0020】
ブラケット本体部51は、ブロック状に形成されており、図示省略する孔に差し込んだスクリュー60を前述のスクリュー受部31Cに螺着させることで、ヘッドランプ30下に固定される。このブラケット本体部51は、図2に示すように、スクリュー受部31Cからカバー本体部32Aの下縁までの長さを若干越える長さL1程度に寸法が設定されており、ブラケット本体部51の外側の面には、ブラケット奧側に向けて高くなる短スロープ51Aが形成されており、この短スロープ51Aの上縁から水平に奧側に延出した上面51Bが形成されている。
さらに、ブラケット本体部51は、図3に示すように、上面51Bから起立した壁部51Cと、この壁部51Cを水平に貫通した穴部51Dと、を備えている。特に、壁部51Cは、ヘッドランプ30と上面51Bとの間に配設されている。
【0021】
別ピースブラケット部52は、図3に示すように、ブラケット本体部51の穴部51Dを挿通するベース部52Aと、このベース部52Aに設けられていてベース部52Aを壁部51C外方へ付勢する弾機部52Bと、ベース部52Aの先端部に設けられていてフランジ41を載置する受部52Cと、を備えている。
本実施形態において、弾機部52Bは、例えば図3に示すように、ベース部52Aの先端部から左右に突出しベース部後側へ向けて弓形の突片55L,55Rから成っている。
また、別ピースブラケット部52の基部には、ベース部52Aがブラケット本体部51の穴部51Dからの脱落を規制するため、抜止部52Dが備えられており、図示するように、本実施形態の抜止部52Dは外方向に突出した爪部として形成されている。
【0022】
バンパカバー40は、車体に固定されたバンパ本体(図示省略)を介して車体に取り付けられる。このバンパカバー40は樹脂等の柔らかい素材で構成されており、車両外面を成す意匠を形作っている。
このバンパカバー40の上縁には、図2に示すように、車両内側へ水平状に突出したフランジ41が形成されており、バンパカバー取付けの際、このフランジ41がヘッドランプ30とブラケット50との隙間D1(図2参照)に配置される。
【0023】
次に、バンパカバー40のフランジ41を所定の隙間D1に配置する作業について説明する。この場合、予め、ランプハウジング31を車体に取り付け、ブラケット本体部51をランプハウジング31に固定させ、別ピースブラケット部52をブラケット本体部51に取り付ける。その際、別ピースブラケット部52の弾機部の反撥力に抗してそのベース部52Aを穴部51Dに押し込み、その状態を維持させる。それから、バンパカバー40を図示省略するバンパ本体に取り付ける。そのとき、バンパカバー40のフランジ41を、前述の隙間D1へ外側から近づけていき、例えば、フランジ41の裏面に別ピースブラケット部52の受部52Cを当接させる。
そして、弾機部52Bの反撥力を開放させると、別ピースブラケット部52は、その弾機部の反撥力によって外側へ突き出る方向へ移動しようとする。その時、バンパカバー40のフランジ41が隙間D1の奧側に入り込む十分な長さであれば、別ピースブラケット部52はフランジ周辺のカバー裏面に押されて、ベース部52Aが穴部51D内に深く入り込んだ位置に留まる。
一方、製造時のバラツキによって、バンパカバー40のフランジ先端が隙間D1の奧側に入り込む程の十分な長さを持たない場合には、弾機部52Bの反撥力を開放させると、別ピースブラケット部52がその弾機部52Bの反撥力によって図4に示す点線の位置から実線の位置まで外側へ突き出る方向へ移動することで、その受部52Cの前面がバンパカバー40の裏面に当接する。これにより、フランジ41の先端位置が規定の位置よりずれていても、ブラケット本体部51から前方に突き出た別ピースブラケット部52の受部52Cにフランジ41を載せることで、図2に一点鎖線で示すように所定の高さにフランジ41がセットされる。
【0024】
このように、本実施形態に係るバンパカバー取付構造1によれば、バンパカバー40の製造の際の成型バラツキが起因して建付バラツキが生じても、その建付バラツキに応じて別ピースブラケット部52が車両前方へ突き出てバンパカバー40に追従する。例えば、製造したバンパカバー40が大きなバラツキを持っている場合でも、そのフランジ41を所定の高さ位置に持ち上げるように、別ピースブラケット部52がブラケット本体部51から突き出る。
これにより、バラツキ程度に応じて別ピースブラケット部52のバラツキチューニングバネとして機能する弾機部がバンパ取付バラツキを吸収する。
したがって、バンパカバー40のフランジ41を高さ方向における基準の位置にセットすることができて、建付精度を向上させることができる。よって、ヘッドランプ30とバンパカバー40との建付けによる隙が広がることを防止できて、所望の外観を呈することができる。
【0025】
本実施形態に係るバンパカバー取付構造1によれば、ヘッドランプ30の下のバンパカバー40のフランジ41を長く設定出来ない部位に有効である。
また、バンパカバー40の取付時に、別ピースブラケット部52は、抜止部52Dによってブラケット本体部51からの脱落を規制できるので、便利である。
【0026】
以上詳述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
例えば、上記実施形態では、弾機部52Bを、別ピースブラケット部52の一部を可撓に構成しそれ自体の反発力を利用したが、別部材のはじきやばねを取り付けて弾機部としてもよい。また、ブラケット本体部51に弾機部の機能を持たせても良い。例えば、ブラケット本体部51の穴部51Dに隣接した外面に、はじきやばねを取り付けて、当該はじきやばねによって別ピースブラケット部が外側へ付勢されるように構成する。
バンパカバー取付構造を構成する、ヘッドランプ、バンパカバー、ブラケット(ブラケット本体部及び別ピースブラケット部)の形状や寸法などは図示例に限定されるものではない。
別ピースブラケット部は、抜止部や受部を備えずに構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るバンパカバー取付構造を適用した車両の右前部を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った部分断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るバンパカバー取付構造におけるブラケットの部分斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るバンパカバー取付構造における別ピースブラケット部の作用を説明するための図である。
【図5】従来の車両の右前部の平面図である。
【図6】図5のB−B線に沿った部分断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 バンパカバー取付構造
10 車両
20 ラジエータグリル
30 ヘッドランプ
31 ランプハウジング
31A 底部
31B 取付部
31C スクリュー受部
32 アウターレンズ
32A カバー本体部
32B 延長部
32C 係合部
40 バンパカバー
41 フランジ
50 ブラケット
51 ブラケット本体部
51A 短スロープ
51B 上面
51C 壁部
51D 穴部
52 別ピースブラケット部
52A ベース部
52B 弾機部
52C 受部
52D 抜止部
55L 突片
60 スクリュー
D1 隙間
S1 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプとヘッドランプ下に設けられたブラケットとの間に、バンパカバーのフランジを配設するバンパカバーの取付構造であって、
上記ブラケットは、
上記ヘッドランプ下に設けられるブラケット本体部と、
上記ブラケット本体部と上記ヘッドランプとの間で、外側へ付勢されて上記ブラケット本体部に移動可能に取り付けられた別ピースブラケット部と、を備えており、
上記バンパカバーの建付バラツキに応じて、上記別ピースブラケット部が外側へ突き出て上記バンパカバーに追従することを特徴とする、バンパカバー取付構造。
【請求項2】
前記ブラケット本体部が、上記ヘッドランプとの間に配設される壁部と、上記壁部を水平に貫通した穴部と、を備え、
前記別ピースブラケット部が、上記穴部を挿通するベース部と、前記ベース部に設けられていて上記ベース部を壁部外方へ付勢する弾機部と、上記ベース部の先端部に設けられていて前記フランジを載置する受部と、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のバンパカバー取付構造。
【請求項3】
前記弾機部が、前記ベース部の先端部から左右に突出しベース部後側へ向けて弓形の突片から成ることを特徴とする、請求項2に記載のバンパカバー取付構造。
【請求項4】
前記別ピースブラケット部の基部に、ベース部の前記穴部からの脱落を規制する抜止部を備えていることを特徴とする、請求項2又は3に記載のバンパカバー取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−214634(P2009−214634A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58851(P2008−58851)
【出願日】平成20年3月8日(2008.3.8)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)