バンパステー
【課題】バンパステーの筒状部における最大反力荷重点をできる限り長い圧潰ストロークの過程において矩形波状に維持することができるように構成して、変形エネルギー面積を拡大できるようになした。
【解決手段】自動車10の車体骨格メンバー2とバンパレインフォース3との間に配置されるバンパステー1が、バンパレインフォース3側に対向して延在しバンパレインフォース3側からの衝撃力を吸収する筒状部1a−1を有する本体部1aと筒状部1a−1における車体骨格メンバー2側に対向する一端部側に形成され車体骨格メンバー2に装着される取付けフランジ部1bとで一体構成としており、本体部1aにおける軸方向中間部に一般部肉厚より肉厚に形成した肉厚部1a−4を設けた。
【解決手段】自動車10の車体骨格メンバー2とバンパレインフォース3との間に配置されるバンパステー1が、バンパレインフォース3側に対向して延在しバンパレインフォース3側からの衝撃力を吸収する筒状部1a−1を有する本体部1aと筒状部1a−1における車体骨格メンバー2側に対向する一端部側に形成され車体骨格メンバー2に装着される取付けフランジ部1bとで一体構成としており、本体部1aにおける軸方向中間部に一般部肉厚より肉厚に形成した肉厚部1a−4を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における車体骨格メンバーとバンパレインフォースとの間に配置されるパンパステーに関する。
【0002】
この種バンパステーは、例えば、自動車の車体前方側において、バンパレインフォースの前方側に配設されたバンパーフェイシアが自動車の衝突時に相手物体から衝撃を加えられた場合に、変形することにより当該衝撃を吸収して車体が変形しないように構成したものであり、バンパステーを交換するだけで、自動車の衝突事故後における車体側の修理を行わないようにして、修理コストの低減延いては省エネルギー化を意図している。
【背景技術】
【0003】
従来のこの種のバンパステーは、通常、金属製の成形品および樹脂製成形品が採用されている(特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2003−306096号公報。
【特許文献2】特表2005−308133号公報。
【0004】
例えば、図7および図8に示すバンパステーaによれば、バンパレインフォース(不図示)側に対向して延在してバンパレインフォース側からの衝撃力を吸収し車体の変形を抑える本体部bと、本体部bにおける前記車体を構成する車体骨格メンバー側に対向する一端部側に形成され前記車体骨格メンバーに装着される取付けフランジ部cとを一体に形成して構成されている。
【0005】
そして、本体部bは、肉厚を一定にして取付けフランジ部側を太径とする円錐台形状の筒状部b−1とその先細り先端側に形成された底板部b−2とで構成している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この結果、図9に示すように、自動車が衝突事故等に遭遇して、バンパレインフォースd側から衝撃力を受けると、本体部bにおける筒状部b−1に衝撃力が伝達され、筒状部先端は拡開変形し、底板部b−2は筒状部b−1から切離されることになる。更に衝撃力が加わると、筒状部b−1は、図11に示すように、更に拡開変形し、バンパレインフォースd側からの衝撃力を吸収するようになっている。
【0007】
このようにバンパステーaの衝撃力吸収過程をグラフに描画すると、図12に示すようになる。
【0008】
即ち、図12は、横軸にバンパステーaが圧潰するストロークをとり、縦軸に衝撃吸収する際にバンパステーaが発揮する反力荷重をとった場合、実線で示すように、バンパステーaにおける筒状部6−1が衝撃力を受けて、底板部b−2が切離されるように変形する際には、圧潰ストロークの変化量に比して、反力荷重が急激に立ち上がるが(図9の状態)、その後は、筒状部b−1のみの圧潰変形となることから、圧潰ストロークの中頃において反力荷重が落ちてしまい(図10の状態)、最後に図11の示す変形限界に達することになる。従って、実線で囲まれた面積が、バンパステーaにより吸収したエネルギーである。
【0009】
しかしながら、反力荷重は、ピーク値として、X点に求めるようになっている。即ち、X点は、バンパステーaが変形衝撃力に対して車体側が変形しないような範囲内における最大反力荷重点に設定するものである。
【0010】
そして、車体の変形を最大限小さくするためには、反力荷重は、筒状部b−1における変形最終点であるY点に至る間において、X点における反力高さを維持して、バンパステーaによる変形エネルギーを二点鎖線示ハッチンで示す面積分稼ぐように設計されることが理想的であるが、上記したように、反力荷重は、X点に到達した後圧潰ストローク中頃で落ち込んでしまうことから、その分変形エネルギーが減少してしまい、車体の変形となって表れてしまい、衝突事故後の自動車の修理に際して、車体側の変形を誘発し、衝突事故後車体骨格メンバー等の車体の修復等が必要となって、修理コストを上げることになってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、バンパステーの筒状部における最大反力荷重点をできる限り長い圧潰ストロークの過程において矩形波状に維持することができるように構成して、吸収エネルギーをより大きくとれるようにしたバンパステーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のバンパステーは、自動車の車体骨格メンバーとバンパレインフォースとの間に配置されるバンパステーであって、該バンパステーは、前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか一方側に対向して延在し前記バンパレインフォース側からの衝撃力を吸収する筒状部を有する本体部と前記筒状部における前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか他方側に対向する一端部側に形成され前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか他方に装着される取付けフランジ部とで一体構成としており、前記筒状部における軸方向中間部に一般部肉厚より厚肉に形成した肉厚部を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
かかる構成により、本発明は、本体部の筒状部における軸方向中間部に一般部肉厚より厚肉に形成した肉厚部を設けたことにより、バンパステーの最大反力荷重点を、バンパステーの筒状部における変形最終点に至るまでの間における圧潰ストロークの過程において落ち込み無く維持して、矩形波状にすることができることになり、その分、変形エネルギー面積を拡大することができ、車体やバンパー或いはバンパレインフォースの変形をできる限り抑えて、自動車の修理コストを低減することができ、しかも、肉厚部の肉厚寸法を適宜選択することにより、バンパステーの最大反力荷重を設計的にコントロールすることができる。
【0014】
また、本発明にかかる前記肉厚部は、前記筒状部の外壁、内壁又は内外両壁側に形成して構成することになる。
【0015】
かかる構成により、肉厚部のバンパステーの基体部における設置部位について、自動車の車体構造、レイアウト等デザイン・設計上の観点から適宜選択することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成する本発明におけるバンパステーは、本体部の筒状部における軸方向中間部に一般部肉厚より厚肉に形成した肉厚部を設けたことにより、バンパステーの最大反力荷重点を、バンパステーの筒状部における変形最終点に至るまでの間における圧潰ストロークの過程において落ち込み無く維持して、矩形波状にすることができることになり、その分、変形エネルギー面積を拡大することができ、車体やバンパーフェイシア或いはバンパレインフォースの変形をできる限り抑えて、自動車の修理コストを低減することができ、しかも、肉厚部の肉厚寸法を適宜選択することにより、バンパステーの最大反力荷重を設計的にコントロールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図を用いて、本発明を実施するための最良の実施の形態について、説明する。
【0018】
図1は本発明に係る一実施例におけるバンパステーを採用した自動車のバンパー構造を概略的に描画した分解斜視図、図2は図1におけるパンパステーの斜視図、図3は図2のA−A断面図である。
【0019】
先ず、図1において、バンパステー1は、樹脂製一体ものとして構成されており、自動車10の前部側におけるサイドメンバー或いはクロスメンバー等の車体骨格メンバー2とバンパレインフォース3との間に配置されており、バンパレインフォース3側に対向して延在しバンパレインフォース3側からの衝撃を吸収する本体部1aと、本体部1aにおける車体骨格メンバー2側に対向する一端部側に形成される取付けフランジ部1bとで構成している。
【0020】
取付けフランジ部1bには、複数個の取付け用孔1b−1が穿設されていて、取付け孔1b−1に挿通したボルト1b−2を車体骨格メンバー2側に螺合することによって、バンパステー1は車体骨格メンバー2に装着されるようになっている。
【0021】
バンパレインフォース3は、バンパステー1にボルト等を用いて取付けられており、取着された状態で車体側に取着されたバンパーフェイシア4内に覆われ収容された状態となって表出しないようになっている。
【0022】
バンパステー1の本体部1aは、図2および図3に詳細に示すように、取付けフランジ部1b側が太径となった略円錐台形状を呈する筒状部1a−1と、筒状部1a−1のバンパレインフォース3側における先細り先端部1a−3側に段差を設けて内方に引っ込んだ状態で形成された底板部1a−2とで構成されている。先細り先端部1a−3側は、バンパレインフォース3に当接した状態となって、底板部1a−2又は先細り先端部1a−3が図示しないがバンパレインフォース3に締結されている。なお、底板部1a−2は、先細り先端部1a−3に段差を有さず、面一に形成される場合もある。
【0023】
更に、本体部1aにおける底板部1a−2および取付けフランジ部1bに対して離間する軸方向中間部外周壁には、一般部肉厚より肉厚に形成した肉厚部1a−4が一体に設けられている。
【0024】
次に、上記のように構成する本発明に係る実施の形態において、自動車10が衝突事故等を起してバンパーフェイシア4に衝撃が加わった場合の作用について説明する。
【0025】
自動車10が衝突事故等に遭遇して、相手物体(不図示)がバンパーフェイシア4に衝突した場合、バンパレインフォース3を介してバンパステー1に当該衝撃が伝達されることになる。
【0026】
この結果、バンパステー1は、本体部1aにおける先細り先端壁部1a−3が先ず受け、変形しながら、次に底板部1a−2が受けることになって、高い反力を発生させることなり、更に、衝撃力が加わると、筒状部1a−1が底板部1a−2から切り離されて拡開変形して行き、初期時点より反力を下げながら、バンパレインフォース3側から伝達された衝撃力を吸収するようになっている。
【0027】
次に、このようにバンパステー1の筒状部1a−1が発揮する反力荷重推移を図4を用いて説明する。
【0028】
図4は、本発明におけるバンパステー1による圧潰ストロークを横軸にとり、縦軸に衝撃吸収する際に生じるバンパステー1による反力荷重をとった場合の衝撃力吸収過程を描画したグラフである。
【0029】
図4によれば、バンパステー1における衝撃吸収当初においては、先細り先端壁部1a−3から底板部1a−2が変形することになることから、圧潰ストロークに比して、反力荷重が急激に立ち上がり、バンパステー1が変形衝撃力に対して自動車10の車体骨格メンバー2等車体側が変形しないような範囲内における最大反力荷重点Xに一挙に到達し、その後は、筒状部1a−1を圧潰変形していくのであるが、筒状部1a−1における中間部には、肉厚部1a−4が存在することになって、従来の一定肉厚に形成された筒状部に比して、反力荷重を高めることができることから、圧潰ストロークの中頃においても反力荷重が落ちることなく、最大反力荷重点Xに近似した反力荷重を発揮して推移し、筒状部1a−1における変形最終点であるY点に至る所謂矩形波を描画することになり、衝撃力に対する車体側の変形を最大限抑えるようになすための理想的な変形エネルギーを得ることができる。
【0030】
図5および図6は、本発明に係る他の実施の形態を示すもので、図5に示すバンパステー1は、肉厚部1a−4を筒状部1a−1の軸方向中間部内周壁に形成したものであり、図6に示すバンパステー1は、肉厚部1a−4を筒状部1a−1の軸方向中間部の内外周両壁に共に形成したものである。
【0031】
図5及び図6或いは図2、図3に示すバンパステー1のいずれを使用するかは、自動車の車体構造、レイアウト等デザイン・設計上の観点から適宜選択されることになる。
【0032】
以上のように構成した本発明の実施の形態によるバンパステー1は、本体部1aの筒状部1a−1における軸方向中間部に一般部肉厚より肉厚に形成した肉厚部1a−4を設けたことにより、バンパステー1の筒状部1a−1における最大反力荷重点Xを、筒状部1a−1における変形最終点Yに至る間における圧潰ストロークの過程において、矩形波状に推移させることができることになり、その分、変形エネルギー面積を拡大することができ、車体の変形を最大限抑えて、自動車の修理コストを低減することができ、しかも、肉厚部1a−4の肉厚寸法を適宜選択することにより、バンパステー1の筒状部1a−1の最大反力荷重を設計的にコントロールすることができる。
【0033】
なお、上記本発明に係る実施の形態においては、バンパステー1を樹脂製一体ものとして製作したものに限定して説明したが、これに限定されるものではなく本発明は金属製のバンパステーにも適用できるものである。
【0034】
また、上記実施の形態においては、筒状部1a−1をバンパレインフォース3側に対向して延在するようにして、取付けフランジ部1−2を車体骨格メンバー2に装着するように構成したが、これに限定されるものではなく、筒状部1−1aを車体骨格メンバー2側に対向するように延在させ、取付けフランジ部1bをバンパレインフォース3側に装着するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明におけるバンパステーは、本体部の筒状部における軸方向中間部に一般部肉厚より肉厚に形成した肉厚部を設けたことにより、バンパステーの最大反力荷重点を、バンパステーの変形限界に至る間における圧潰ストロークの過程においてそのまま維持できることになり、その分、変形エネルギー面積を拡大することができ、車体やバンパーフェイシア或いはバンパレインフォースの変形をできる限り抑えて、自動車の修理コストを低減することができ、しかも、肉厚部の肉厚寸法を適宜選択することにより、バンパステーの最大反力荷重を設計的にコントロールすることができるために、自動車における車体骨格メンバー端面とバンパレインフォースとの間に配置されるパンパステー等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る一実施例におけるバンパステーを採用した自動車のバンパー構造を概略的に描画した分解斜視図である。
【図2】図1における樹脂製のパンパステーの斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明における樹脂製のバンパステーによる圧潰ストロークを横軸にとり、縦軸に衝撃吸収する際に生じるバンパステー1による反力荷重をとった場合の衝撃力吸収過程を描画したグラフである。
【図5】本発明における他の実施の形態に係るバンパステーの図3と同様な断面図である。
【図6】本発明における更に他の実施の形態に係るバンパステーの図3と同様な断面図である。
【図7】従来技術における樹脂製のバンパステーの斜視図である。
【図8】図7のB−B断面図である。
【図9】図7に示すバンパステーとバンパレインフォースとの通常時における位置関係を描画した説明図である。
【図10】同じく、自動車の衝突時等においてバンパステーが衝撃を受けた場合の変形の中間過程を描画した説明図である。
【図11】同じく、自動車の衝突時等においてバンパステーが衝撃を受けた場合の変形の最終過程を描画した説明図である。
【図12】従来におけるバンパステーによる横軸にバンパステーの圧潰ストロークをとり、縦軸に衝撃吸収する際に生じる反力荷重をとった場合の衝撃力吸収過程を描画したグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1 バンパステー
1a 本体部
1a−1 筒状部
1a−2 底板部
1a−3 先細り先端部
1a−4 肉厚部
1b 取付けフランジ部
2 車体骨格メンバー
3 バンパレインフォース
4 バンパーフェイシア
10 自動車
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における車体骨格メンバーとバンパレインフォースとの間に配置されるパンパステーに関する。
【0002】
この種バンパステーは、例えば、自動車の車体前方側において、バンパレインフォースの前方側に配設されたバンパーフェイシアが自動車の衝突時に相手物体から衝撃を加えられた場合に、変形することにより当該衝撃を吸収して車体が変形しないように構成したものであり、バンパステーを交換するだけで、自動車の衝突事故後における車体側の修理を行わないようにして、修理コストの低減延いては省エネルギー化を意図している。
【背景技術】
【0003】
従来のこの種のバンパステーは、通常、金属製の成形品および樹脂製成形品が採用されている(特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2003−306096号公報。
【特許文献2】特表2005−308133号公報。
【0004】
例えば、図7および図8に示すバンパステーaによれば、バンパレインフォース(不図示)側に対向して延在してバンパレインフォース側からの衝撃力を吸収し車体の変形を抑える本体部bと、本体部bにおける前記車体を構成する車体骨格メンバー側に対向する一端部側に形成され前記車体骨格メンバーに装着される取付けフランジ部cとを一体に形成して構成されている。
【0005】
そして、本体部bは、肉厚を一定にして取付けフランジ部側を太径とする円錐台形状の筒状部b−1とその先細り先端側に形成された底板部b−2とで構成している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この結果、図9に示すように、自動車が衝突事故等に遭遇して、バンパレインフォースd側から衝撃力を受けると、本体部bにおける筒状部b−1に衝撃力が伝達され、筒状部先端は拡開変形し、底板部b−2は筒状部b−1から切離されることになる。更に衝撃力が加わると、筒状部b−1は、図11に示すように、更に拡開変形し、バンパレインフォースd側からの衝撃力を吸収するようになっている。
【0007】
このようにバンパステーaの衝撃力吸収過程をグラフに描画すると、図12に示すようになる。
【0008】
即ち、図12は、横軸にバンパステーaが圧潰するストロークをとり、縦軸に衝撃吸収する際にバンパステーaが発揮する反力荷重をとった場合、実線で示すように、バンパステーaにおける筒状部6−1が衝撃力を受けて、底板部b−2が切離されるように変形する際には、圧潰ストロークの変化量に比して、反力荷重が急激に立ち上がるが(図9の状態)、その後は、筒状部b−1のみの圧潰変形となることから、圧潰ストロークの中頃において反力荷重が落ちてしまい(図10の状態)、最後に図11の示す変形限界に達することになる。従って、実線で囲まれた面積が、バンパステーaにより吸収したエネルギーである。
【0009】
しかしながら、反力荷重は、ピーク値として、X点に求めるようになっている。即ち、X点は、バンパステーaが変形衝撃力に対して車体側が変形しないような範囲内における最大反力荷重点に設定するものである。
【0010】
そして、車体の変形を最大限小さくするためには、反力荷重は、筒状部b−1における変形最終点であるY点に至る間において、X点における反力高さを維持して、バンパステーaによる変形エネルギーを二点鎖線示ハッチンで示す面積分稼ぐように設計されることが理想的であるが、上記したように、反力荷重は、X点に到達した後圧潰ストローク中頃で落ち込んでしまうことから、その分変形エネルギーが減少してしまい、車体の変形となって表れてしまい、衝突事故後の自動車の修理に際して、車体側の変形を誘発し、衝突事故後車体骨格メンバー等の車体の修復等が必要となって、修理コストを上げることになってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、バンパステーの筒状部における最大反力荷重点をできる限り長い圧潰ストロークの過程において矩形波状に維持することができるように構成して、吸収エネルギーをより大きくとれるようにしたバンパステーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のバンパステーは、自動車の車体骨格メンバーとバンパレインフォースとの間に配置されるバンパステーであって、該バンパステーは、前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか一方側に対向して延在し前記バンパレインフォース側からの衝撃力を吸収する筒状部を有する本体部と前記筒状部における前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか他方側に対向する一端部側に形成され前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか他方に装着される取付けフランジ部とで一体構成としており、前記筒状部における軸方向中間部に一般部肉厚より厚肉に形成した肉厚部を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
かかる構成により、本発明は、本体部の筒状部における軸方向中間部に一般部肉厚より厚肉に形成した肉厚部を設けたことにより、バンパステーの最大反力荷重点を、バンパステーの筒状部における変形最終点に至るまでの間における圧潰ストロークの過程において落ち込み無く維持して、矩形波状にすることができることになり、その分、変形エネルギー面積を拡大することができ、車体やバンパー或いはバンパレインフォースの変形をできる限り抑えて、自動車の修理コストを低減することができ、しかも、肉厚部の肉厚寸法を適宜選択することにより、バンパステーの最大反力荷重を設計的にコントロールすることができる。
【0014】
また、本発明にかかる前記肉厚部は、前記筒状部の外壁、内壁又は内外両壁側に形成して構成することになる。
【0015】
かかる構成により、肉厚部のバンパステーの基体部における設置部位について、自動車の車体構造、レイアウト等デザイン・設計上の観点から適宜選択することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成する本発明におけるバンパステーは、本体部の筒状部における軸方向中間部に一般部肉厚より厚肉に形成した肉厚部を設けたことにより、バンパステーの最大反力荷重点を、バンパステーの筒状部における変形最終点に至るまでの間における圧潰ストロークの過程において落ち込み無く維持して、矩形波状にすることができることになり、その分、変形エネルギー面積を拡大することができ、車体やバンパーフェイシア或いはバンパレインフォースの変形をできる限り抑えて、自動車の修理コストを低減することができ、しかも、肉厚部の肉厚寸法を適宜選択することにより、バンパステーの最大反力荷重を設計的にコントロールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図を用いて、本発明を実施するための最良の実施の形態について、説明する。
【0018】
図1は本発明に係る一実施例におけるバンパステーを採用した自動車のバンパー構造を概略的に描画した分解斜視図、図2は図1におけるパンパステーの斜視図、図3は図2のA−A断面図である。
【0019】
先ず、図1において、バンパステー1は、樹脂製一体ものとして構成されており、自動車10の前部側におけるサイドメンバー或いはクロスメンバー等の車体骨格メンバー2とバンパレインフォース3との間に配置されており、バンパレインフォース3側に対向して延在しバンパレインフォース3側からの衝撃を吸収する本体部1aと、本体部1aにおける車体骨格メンバー2側に対向する一端部側に形成される取付けフランジ部1bとで構成している。
【0020】
取付けフランジ部1bには、複数個の取付け用孔1b−1が穿設されていて、取付け孔1b−1に挿通したボルト1b−2を車体骨格メンバー2側に螺合することによって、バンパステー1は車体骨格メンバー2に装着されるようになっている。
【0021】
バンパレインフォース3は、バンパステー1にボルト等を用いて取付けられており、取着された状態で車体側に取着されたバンパーフェイシア4内に覆われ収容された状態となって表出しないようになっている。
【0022】
バンパステー1の本体部1aは、図2および図3に詳細に示すように、取付けフランジ部1b側が太径となった略円錐台形状を呈する筒状部1a−1と、筒状部1a−1のバンパレインフォース3側における先細り先端部1a−3側に段差を設けて内方に引っ込んだ状態で形成された底板部1a−2とで構成されている。先細り先端部1a−3側は、バンパレインフォース3に当接した状態となって、底板部1a−2又は先細り先端部1a−3が図示しないがバンパレインフォース3に締結されている。なお、底板部1a−2は、先細り先端部1a−3に段差を有さず、面一に形成される場合もある。
【0023】
更に、本体部1aにおける底板部1a−2および取付けフランジ部1bに対して離間する軸方向中間部外周壁には、一般部肉厚より肉厚に形成した肉厚部1a−4が一体に設けられている。
【0024】
次に、上記のように構成する本発明に係る実施の形態において、自動車10が衝突事故等を起してバンパーフェイシア4に衝撃が加わった場合の作用について説明する。
【0025】
自動車10が衝突事故等に遭遇して、相手物体(不図示)がバンパーフェイシア4に衝突した場合、バンパレインフォース3を介してバンパステー1に当該衝撃が伝達されることになる。
【0026】
この結果、バンパステー1は、本体部1aにおける先細り先端壁部1a−3が先ず受け、変形しながら、次に底板部1a−2が受けることになって、高い反力を発生させることなり、更に、衝撃力が加わると、筒状部1a−1が底板部1a−2から切り離されて拡開変形して行き、初期時点より反力を下げながら、バンパレインフォース3側から伝達された衝撃力を吸収するようになっている。
【0027】
次に、このようにバンパステー1の筒状部1a−1が発揮する反力荷重推移を図4を用いて説明する。
【0028】
図4は、本発明におけるバンパステー1による圧潰ストロークを横軸にとり、縦軸に衝撃吸収する際に生じるバンパステー1による反力荷重をとった場合の衝撃力吸収過程を描画したグラフである。
【0029】
図4によれば、バンパステー1における衝撃吸収当初においては、先細り先端壁部1a−3から底板部1a−2が変形することになることから、圧潰ストロークに比して、反力荷重が急激に立ち上がり、バンパステー1が変形衝撃力に対して自動車10の車体骨格メンバー2等車体側が変形しないような範囲内における最大反力荷重点Xに一挙に到達し、その後は、筒状部1a−1を圧潰変形していくのであるが、筒状部1a−1における中間部には、肉厚部1a−4が存在することになって、従来の一定肉厚に形成された筒状部に比して、反力荷重を高めることができることから、圧潰ストロークの中頃においても反力荷重が落ちることなく、最大反力荷重点Xに近似した反力荷重を発揮して推移し、筒状部1a−1における変形最終点であるY点に至る所謂矩形波を描画することになり、衝撃力に対する車体側の変形を最大限抑えるようになすための理想的な変形エネルギーを得ることができる。
【0030】
図5および図6は、本発明に係る他の実施の形態を示すもので、図5に示すバンパステー1は、肉厚部1a−4を筒状部1a−1の軸方向中間部内周壁に形成したものであり、図6に示すバンパステー1は、肉厚部1a−4を筒状部1a−1の軸方向中間部の内外周両壁に共に形成したものである。
【0031】
図5及び図6或いは図2、図3に示すバンパステー1のいずれを使用するかは、自動車の車体構造、レイアウト等デザイン・設計上の観点から適宜選択されることになる。
【0032】
以上のように構成した本発明の実施の形態によるバンパステー1は、本体部1aの筒状部1a−1における軸方向中間部に一般部肉厚より肉厚に形成した肉厚部1a−4を設けたことにより、バンパステー1の筒状部1a−1における最大反力荷重点Xを、筒状部1a−1における変形最終点Yに至る間における圧潰ストロークの過程において、矩形波状に推移させることができることになり、その分、変形エネルギー面積を拡大することができ、車体の変形を最大限抑えて、自動車の修理コストを低減することができ、しかも、肉厚部1a−4の肉厚寸法を適宜選択することにより、バンパステー1の筒状部1a−1の最大反力荷重を設計的にコントロールすることができる。
【0033】
なお、上記本発明に係る実施の形態においては、バンパステー1を樹脂製一体ものとして製作したものに限定して説明したが、これに限定されるものではなく本発明は金属製のバンパステーにも適用できるものである。
【0034】
また、上記実施の形態においては、筒状部1a−1をバンパレインフォース3側に対向して延在するようにして、取付けフランジ部1−2を車体骨格メンバー2に装着するように構成したが、これに限定されるものではなく、筒状部1−1aを車体骨格メンバー2側に対向するように延在させ、取付けフランジ部1bをバンパレインフォース3側に装着するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明におけるバンパステーは、本体部の筒状部における軸方向中間部に一般部肉厚より肉厚に形成した肉厚部を設けたことにより、バンパステーの最大反力荷重点を、バンパステーの変形限界に至る間における圧潰ストロークの過程においてそのまま維持できることになり、その分、変形エネルギー面積を拡大することができ、車体やバンパーフェイシア或いはバンパレインフォースの変形をできる限り抑えて、自動車の修理コストを低減することができ、しかも、肉厚部の肉厚寸法を適宜選択することにより、バンパステーの最大反力荷重を設計的にコントロールすることができるために、自動車における車体骨格メンバー端面とバンパレインフォースとの間に配置されるパンパステー等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る一実施例におけるバンパステーを採用した自動車のバンパー構造を概略的に描画した分解斜視図である。
【図2】図1における樹脂製のパンパステーの斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明における樹脂製のバンパステーによる圧潰ストロークを横軸にとり、縦軸に衝撃吸収する際に生じるバンパステー1による反力荷重をとった場合の衝撃力吸収過程を描画したグラフである。
【図5】本発明における他の実施の形態に係るバンパステーの図3と同様な断面図である。
【図6】本発明における更に他の実施の形態に係るバンパステーの図3と同様な断面図である。
【図7】従来技術における樹脂製のバンパステーの斜視図である。
【図8】図7のB−B断面図である。
【図9】図7に示すバンパステーとバンパレインフォースとの通常時における位置関係を描画した説明図である。
【図10】同じく、自動車の衝突時等においてバンパステーが衝撃を受けた場合の変形の中間過程を描画した説明図である。
【図11】同じく、自動車の衝突時等においてバンパステーが衝撃を受けた場合の変形の最終過程を描画した説明図である。
【図12】従来におけるバンパステーによる横軸にバンパステーの圧潰ストロークをとり、縦軸に衝撃吸収する際に生じる反力荷重をとった場合の衝撃力吸収過程を描画したグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1 バンパステー
1a 本体部
1a−1 筒状部
1a−2 底板部
1a−3 先細り先端部
1a−4 肉厚部
1b 取付けフランジ部
2 車体骨格メンバー
3 バンパレインフォース
4 バンパーフェイシア
10 自動車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体骨格メンバーとバンパレインフォースとの間に配置されるバンパステーであって、該バンパステーは、前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか一方側に対向して延在し前記バンパレインフォース側からの衝撃力を吸収する筒状部を有する本体部と前記筒状部における前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか他方側に対向する一端部側に形成され前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか他方に装着される取付けフランジ部とで一体構成としており、前記筒状部における軸方向中間部に一般部肉厚より厚肉に形成した肉厚部を設けたことを特徴とするバンパステー。
【請求項2】
前記肉厚部は、前記筒状部の外壁側に形成したことを特徴とする請求項1に記載のバンパステー。
【請求項3】
前記肉厚部は、前記筒状部の内壁側に形成したことを特徴とする請求項1に記載のバンパステー。
【請求項4】
前記肉厚部は、前記筒状部の内外両壁側に形成したことを特徴とする請求項1に記載のバンパステー。
【請求項1】
自動車の車体骨格メンバーとバンパレインフォースとの間に配置されるバンパステーであって、該バンパステーは、前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか一方側に対向して延在し前記バンパレインフォース側からの衝撃力を吸収する筒状部を有する本体部と前記筒状部における前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか他方側に対向する一端部側に形成され前記バンパレインフォース又は前記車体骨格メンバーの何れか他方に装着される取付けフランジ部とで一体構成としており、前記筒状部における軸方向中間部に一般部肉厚より厚肉に形成した肉厚部を設けたことを特徴とするバンパステー。
【請求項2】
前記肉厚部は、前記筒状部の外壁側に形成したことを特徴とする請求項1に記載のバンパステー。
【請求項3】
前記肉厚部は、前記筒状部の内壁側に形成したことを特徴とする請求項1に記載のバンパステー。
【請求項4】
前記肉厚部は、前記筒状部の内外両壁側に形成したことを特徴とする請求項1に記載のバンパステー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−51244(P2009−51244A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217074(P2007−217074)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)
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