説明

バンパーエクステンションの構造

【課題】部品点数の増加やコスト高を招くことなく、取付け時に、クリップを起点とした回動が起こることを防止し、リブがクリップ穴の位置規制の役割を果たすことで取付作業性を向上させ、側面部を補強することが可能なバンパーエクステンションの構造を提供する。
【解決手段】クリップ3を用いてリヤバンパー1に取付けられるバンパーエクステンション2の構造において、バンパーエクステンション2の裏面側のクリップ取付部近傍にリヤバンパー1と当接するリブ25を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前後バンパーに取付けられる別体のバンパーエクステンションの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の前後バンパーには、空気力学的な抵抗や揚力の低減、操縦及び走行安定性の向上、外観性能の向上などを図るため、エアロパーツの1つであるバンパーエクステンションがオプションとして取付けられることがある。
このようなバンパーエクステンションをバンパーに取付ける場合は、通常、クリップ、ボルトやナットなどが用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、バンパーエクステンションの車両幅方向における左右両側のサイド面は、面剛性が不足しており、変形しやすくなっている。これは、バンパーエクステンションのサイド面は、デザイン上、広い平面となっていることが多く、かつ、外観上、バンパーの意匠面側にバンパーエクステンションを支持する構造を設けることができないからである。一方、バンパーの意匠面側にバンパーエクステンションの支持構造を設けると、バンパーエクステンションを取付けない仕様の場合において、この支持構造が外部から見えてしまい、外観品質の低下につながることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−210481号公報
【特許文献2】特開2008−265568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の構造では、図13に示すように、バンパー51にバンパーエクステンション52のサイドの上部をクリップ53によって取付ける際に、バンパーエクステンション52の下部が浮いた状態にあるので、当該バンパーエクステンション52がクリップ53の位置を中心にして矢印M方向へ回動してしまい、取付けにくくなるという不具合が起きていた。
このようなバンパーエクステンション52の回動を規制するために、図14(a)で示すように、バンパーエクステンション52のサイドのクリップ53を左右で上下2箇所ずつ設けたり、あるいは、図14(b)で示すように、締付け力の大きいボルト54やナットでバンパーエクステンション52を締付けたりしているが、これらの方法によると、取付工数や部品点数が増加し、取付作業が煩雑になるとともに、部品コストなどが大きく掛かってしまうという問題を有していた。
【0006】
また、従来の構造のように、バンパーエクステンションの面剛性の不足を改善するために、バンパーエクステンションの肉厚を上げた場合には、重量の増大と材料費などのコスト高を招くおそれがあった。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、部品点数の増加やコスト高を招くことなく、取付け時に、クリップを起点とした回動が起こることを防止し、リブがクリップ穴の位置規制の役割を果たすことで取付作業性を向上させ、側面部を補強することが可能なバンパーエクステンションの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、クリップを用いてバンパーに取付けられるバンパーエクステンションの構造において、前記バンパーエクステンションの裏面側のクリップ取付部近傍に前記バンパーと当接するリブを設けている。
【0009】
また、本発明において、前記リブは、前記バンパーエクステンションの車両幅方向の左右両側に位置する側面部に設けられている。
【0010】
さらに、本発明において、前記リブは、前記バンパーエクステンションの角部のL字形状部分の間に設けられている。
【発明の効果】
【0011】
上述の如く、本発明に係るバンパーエクステンションの構造は、クリップを用いてバンパーに取付けられるものであって、前記バンパーエクステンションの裏面側のクリップ取付部近傍に前記バンパーと当接するリブを設けているので、バンパーエクステンションのクリップ取付部近傍の剛性を高めることができるとともに、バンパーエクステンションの取付け時に、リブがバンパーに当たってバンパーエクステンションは回動規制されており、クリップを起点としたバンパーエクステンションの回動が起こることを防止できる。
したがって、本発明の構造によれば、バンパーエクステンションの締結具として、コスト上昇をもたらすボルト及びナットを使用する必要がなくなるとともに、バンパーエクステンションの車両幅方向の左右両側で2個ずつ設けていたクリップを1個減らすことが可能となり、バンパーエクステンションの回動を防ぎながらコストダウンを図ることができる。また、バンパーエクステンションの取付け時に、バンパーと当接するリブが位置規制の役割を果たし、バンパーエクステンションのクリップ穴の位置決めが可能となるため、バンパーエクステンションをバンパーに効率良く取付けることができ、車両の生産性向上を実現できる。
【0012】
また、本発明の構造において、前記リブは、前記バンパーエクステンションの車両幅方向の左右両側に位置する側面部に設けられているので、デザイン上広い平面となり、バンパー側からの支持構造も取れず、面剛性が不足して変形してしまうことが多いバンパーエクステンションの側面部をリブによって補強することができる。
したがって、本発明の構造では、リブの存在によって、バンパーエクステンションの肉厚を上げず、支持構造を設けることなく、バンパーエクステンションの側面部の面剛性を高め、変形を抑制できるとともに、重量及び材料費の削減によって部品コストを低減できる。しかも、バンパーエクステンションの側面部には、樹脂成形の金型の抜き角度に反するフランジ部が設定されていることから、成形金型にスライド機構が設けられているが、このスライド機構部にリブ形状の盛り込みを設置することが可能となるため、成形金型に新たなスライド機構を増やすことなく、バンパーエクステンションを成形することができ、コストダウンを図ることができる。
【0013】
さらに、本発明の構造において、前記リブは、前記バンパーエクステンションの角部のL字形状部分の間に設けられているので、バンパーエクステンションの成形変形を防止することができる。バンパーエクステンションの上側角部のL字形状部分は、外観上、バンパーエクステンションとバンパーとの連続性を持たせる必要から、バンパーエクステンションの上面を膨らませないデザインとすることが多いため、屈曲部を起点に折れたり、広がったりするなどの成形変形が起こりやすくなる。このような変形が生じると、外観品質が低下するとともに、クリップ位置が合わないことになってバンパーエクステンションの取付け不具合などの問題を引き起こしやすくなるが、本発明の構造では、リブがL字形状部分の間を支えるので、バンパーエクステンションの成形変形が起こらず、上記したような不具合や問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る構造が適用されるバンパーエクステンションをリヤバンパーに取付けた状態を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1のバンパーエクステンションをリヤバンパーに取付ける前の状態を示す斜視図、(b)は(a)のX部拡大斜視図である。
【図3】図1のバンパーエクステンション及びリヤバンパーを車両前方から見た斜視図である。
【図4】図3におけるY部の拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施形態のバンパーエクステンションを示す平面図である。
【図6】図5におけるZ部を拡大して示す斜視図である。
【図7】図3におけるY部を拡大して示す正面図である。
【図8】図1のバンパーエクステンションの側面部をリヤバンパーに取付けた状態を示す斜視図である。
【図9】図8におけるA−A線断面図である。
【図10】図5のバンパーエクステンションの側面部のフランジ部を示す平面図である。
【図11】図5のバンパーエクステンションの側面部の角部を示す断面図である。
【図12】図5のバンパーエクステンションの側面部の角部を示す斜視図である。
【図13】従来の構造が適用されるバンパーエクステンションのサイドをリヤバンパーに取付ける状態を示す斜視図である。
【図14】他の従来の構造が適用されるバンパーエクステンションのサイドをリヤバンパーに取付ける状態を示すものであり、(a)は2個のクリップを用いた斜視図、(b)はボルトを用いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図12は本発明の実施形態に係るバンパーエクステンションの構造を示すものである。なお、図3において矢印F方向は車両前方を示し、矢印U方向は車両上方を示している。
【0016】
図1〜図12に示すように、本発明の実施形態に係る構造が適用される車両の車体後面には、車両幅方向に沿って延在する樹脂製のリヤバンパー1が設けられている。 このリヤバンパー1の車両下部側には、エアロパーツの1つである別体のバンパーエクステンション2が車両幅方向の全幅にわたって取付けられている。
そのため、バンパーエクステンション2は、図1及び図5に示すように、車両幅方向に沿って延びる長尺の樹脂一体成形品であり、成形金型を用いて製作されている。
【0017】
バンパーエクステンション2の車両幅方向の左右両側に位置する側面部20は、車両幅方向の中間部21に比べて、車両上下方向の長さが大きく、幅広の平面形状に形成されている。しかも、バンパーエクステンション2の側面部20より更に車両外側部分には、角部22を形成しながらリヤバンパー1の左右両側部を回り込み、先端部分を車両内側へ向かってほぼ直角に屈曲させて形成したフランジ部23が設けられている。これに対応して、リヤバンパー1の車両幅方向の左右両側部にも、車両前方に向かって屈曲しながら先端部分を車両内側へほぼ直角に屈曲させて形成した取付面1aが設けられている。すなわち、バンパーエクステンション2のフランジ部23とリヤバンパー1の取付面1aとは、互いに平行となるように延び、かつ重ね合わせて配置されるように構成されている。
【0018】
バンパーエクステンション2のフランジ部23の上部には、クリップ3を差し込むクリップ穴24が設けられている。このクリップ穴24に対応して、リヤバンパー1の取付面1aには、取付穴(図示せず)が設けられている。また、バンパーエクステンション2の車幅方向中間部分の下部には、クリップ3を差し込む複数のクリップ穴24が設けられ、これらクリップ穴24に対応して、リヤバンパー1の下部には、取付穴(図示せず)が設けられている。
【0019】
しかも、本実施形態のバンパーエクステンション2の裏面側で、クリップ3を取付けるクリップ取付近傍には、図6〜図9及び図11に示すように、車両内側の端部がリヤバンパー1と当接する複数枚(本実施形態では3枚)のリブ25が設けられている。これらリブ25は、バンパーエクステンション2の裏面から立ち上がって突出する板状片であり、車両幅方向に延び、かつ、車両上下方向に一定の間隔を空けて配設されている。すなわち、リブ25は、バンパーエクステンション2の車両幅方向の左右両側に位置する側面部20に設けられ、バンパーエクステンション2の角部22のL字形状部分の間に設けられている。
なお、バンパーエクステンション2の側面部20は、図10に示すように、樹脂成形抜き角度に反するフランジ部23が設けられているので、成形金型にスライド機構が設けられている。このスライド機構の部分にリブ25の盛り込みが可能となるため、新たなスライド機構を増やすことなく、バンパーエクステンション2の側面部20を成形することが可能となる。図10における矢印は成形金型のスライド方向を示している。
【0020】
バンパーエクステンション2の下側の角部22は、図12に示すように、フランジ部23が三方向からのフランジ形状でつながっていて、成形変形しにくくなっているが、上側の角部22は、デザイン上、バンパーエクステンション2とリヤバンパー1とのつながりを見せるため、バンパーエクステンション2の上面を膨らませないデザインとすることが多く、上面のないL字形状となっていることが多い。そのため、バンパーエクステンション2の角部22のL字形状部分は、屈曲部を起点に折れたり、広がったりするなどの成形変形が起こりやすく、変形することでバンパーエクステンション2の見映え低下やクリップ位置が合わないことから、取付け不具合などの問題を引き起こしやすくなる。そこで、バンパーエクステンション2の角部22のL字形状部分の間にリブ25を設けることによってL字形状部分を支え、このような問題の発生を防ぎ、成形変形の防止を図ったものである。
【0021】
一方、本実施形態のバンパーエクステンション2全体のリヤバンパー1への取付手段としては、図2〜図4に示すように、互いに係合する複数個のスタッドピン4及びナット5が用いられている。スタッドピン4は、バンパーエクステンション2の上部裏面に車両幅方向に沿って間隔を空けて配設されており、スタッドピン4の突出長さは、バンパーエクステンション2の上部をリヤバンパー1に重ねた状態で、リヤバンパー1の裏面側に突出してナット5と係合させることができる大きさに設定されている。
また、リヤバンパー1の下部側には、バンパーエクステンション2のスタッドピン4を挿通させることが可能なピン穴11が車両幅方向に沿って間隔を空けて穿設されている。
【0022】
本実施形態のバンパーエクステンション2をリヤバンパー1に取付けるには、図2に示すように、まずバンパーエクステンション2の裏面側をリヤバンパー1の表面側に向けて持ち、バンパーエクステンション2の側面部20のフランジ部23をリヤバンパー1の側方から回し込み、上部のスタッドピン4をリヤバンパー1のピン穴11に車両後方側から挿通するとともに、バンパーエクステンション2の側面部20のフランジ部23をリヤバンパー1の取付面1aに重ねて配置する。この状態では、バンパーエクステンション2の側面部20の角部22におけるリブ25の車両内側端部が、リヤバンパー1の側面に当接している(図7〜図9参照)。
次いで、クリップ3を車両後方向きにフランジ部23のクリップ穴24などに差し込み、バンパーエクステンション2の側面部20をリヤバンパー1の取付面1aに取付け、バンパーエクステンション2の上部は、リヤバンパー1のピン穴11を通したスタッドピン4にナット5を係合させて固定し、バンパーエクステンション2の下部は、クリップ3を車両上向きで取付けることにより、バンパーエクステンション2はリヤバンパー1に取付けられることになる(図3及び図4参照)。
【0023】
このように、本発明の実施形態に係る構造のバンパーエクステンション2では、リヤバンパー1の側面と当接するリブ25が、裏面側のクリップ取付部近傍である車両幅方向の左右両側に位置する側面部20に設けられているため、リブ25がリヤバンパー1の側面と当接に当たった状態で、バンパーエクステンション2をリヤバンパー1にクリップ3などを用いて取付けることになり、クリップ3を起点としたバンパーエクステンション2の回動を規制しながらクリップ穴24の位置決めを行うことができ、その結果、バンパーエクステンション2の取付け性を向上させることができる。
また、本発明の実施形態に係る構造のバンパーエクステンション2では、リブ25がバンパーエクステンション2の角部22のL字形状部分に設けられているため、別個に支持構造を設けることなく剛性を高め、バンパーエクステンション2の成形変形を防止できる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施の形態では、バンパーエクステンション2をリヤバンパー1に取付けているが、本実施形態のバンパーエクステンション2をフロントバンパーに取付けても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 リヤバンパー
1a 取付面
2 バンパーエクステンション
3 クリップ
4 スタッドピン
5 ナット
11 ピン穴
20 バンパーエクステンションの側面部
21 中間部
22 角部
23 フランジ部
24 クリップ穴
25 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップを用いてバンパーに取付けられるバンパーエクステンションの構造において、前記バンパーエクステンションの裏面側のクリップ取付部近傍に前記バンパーと当接するリブを設けたことを特徴とするバンパーエクステンションの構造。
【請求項2】
前記リブは、前記バンパーエクステンションの車両幅方向の左右両側に位置する側面部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバンパーエクステンションの構造。
【請求項3】
前記リブは、前記バンパーエクステンションの角部のL字形状部分の間に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のバンパーエクステンションの構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−126290(P2012−126290A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280536(P2010−280536)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)