説明

バンパー構造体

【課題】衝突時に、バンパーレインフォースの曲げ戻し変形に対して溶接部の剥離が生じず、効果的に衝突エネルギーを吸収することができ、構造が単純で軽量なバンパー構造体を提供する。
【解決手段】バンパーレインフォース11とバンパーステイ12との間には、中間部材13が介装されている。中間部材13は、第1部分13a、第2部分13b及び第3部分13cにより、トラス状に形成されている。バンパーステイ12の先端部には、第1端面12cと、第1端面12cに対して、屈曲すると共にバンパーレインフォース11の傾斜部11aの傾斜に倣った第2端面12dとが形成されている。第1部分13a及び第2部分13bは、夫々、第1端面12c及び第2端面12dに溶接され、第1部分13aは、第2部分13bが交差する位置よりも車体の幅方向中央側にてバンパーレインフォース11に溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車及びトラック等の衝突に対して、衝突エネルギーを効率よく吸収するバンパー構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車及びトラック等の衝突時の衝撃を吸収するために、車体の前端及び後端に、バンパー構造体が設置されている。これにより、バンパー構造体で車体前後位置での衝突荷重を吸収し、衝突時の乗員及び歩行者等の衝撃を緩和している。
【0003】
従来、バンパー構造体は、車体の幅方向に延びるバンパーレインフォースと、車体の幅方向の2カ所にて車体に固定されると共に前記バンパーレインフォースを固定するバンパーステイとから構成されている。バンパーステイの長手方向は車体の前後方向に延びている。そして、自動車及びトラック等の衝突時に、バンパーレインフォース及びバンパーステイが変形することにより、衝突エネルギーを吸収し、車内の乗員又は歩行者等に衝撃力が印加されることを抑制している。
【0004】
このようなバンパー構造体には、バンパーレインフォースのバンパーステイへの固定部分を補強するために、バンパーレインフォースとバンパーステイとの間に中間部材を介装している構成のものもある(特許文献1乃至4)。
【0005】
特許文献1及び2においては、バンパー構造体の各部材間をボルト及びナットにより固定することが開示されている。
【0006】
特許文献3にはバンパー構造体の各部材間を溶接により接合したものが開示されている。また、特許文献4には、各部材間の固定にボルト及びナットの締結と溶接による接合とを組み合わせたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−224917号公報
【特許文献2】特開2001−294106号公報
【特許文献3】特開2008−168897号公報
【特許文献4】特開2005−67527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来の技術には以下に示すような問題点がある。図6は、従来のバンパー構造体10における曲げ戻し変形を示す図である。図6(a)に示すように、従来のバンパーレインフォース11は、その車体の幅方向の中央部分が車体の幅方向(横方向)に延びる横部分11bであり、その車体の幅方向の両端部分が横部分11bから後方に傾斜する傾斜部分11aである(フロントバンパーの場合)。なお、リアバンパーの場合は、バンパーレインフォース11の傾斜部分11aは、横部分11bから車体の前方に傾斜している。これにより、車体の幅方向中央付近に対する衝撃は、車体の幅方向に延びる横部分11bにより吸収し、車体の幅方向端部に対する衝撃は、傾斜部分11aによって吸収するように構成されている。そして、バンパーレインフォース11は傾斜部分11aにてバンパーステイ12に固定されている。
【0009】
このように構成されたバンパー構造体において、衝突時に、横部分11bに衝突荷重が印加された場合、図6(b)に示すように、バンパーレインフォースの傾斜部分11aにはバンパーステイ12まわりに回転変形が生じる(以下、曲げ戻し変形と称する)。このとき、バンパーレインフォース11には、バンパーステイ12の車体の幅方向中央側の接合部12bを回転支点として、傾斜部分11aの傾斜を横部分11b側に戻す方向に大きなモーメントが印加される。この際、衝突エネルギーを効果的に吸収するためには、曲げ戻し変形に追従してバンパーレインフォース11及びバンパーステイ12が変形すればよい。即ち、バンパーステイ12が車体の幅方向中央側にて車体側に圧壊する等により、バンパーレインフォース11とバンパーステイ12とを一体的に変形させて、モーメントをバンパーレインフォース11及びバンパーステイ12の全体で吸収する。
【0010】
しかしながら、従来のバンパー構造体においては、バンパーステイ12及びバンパーレインフォース11は、バンパーレインフォース11の曲げ戻し変形に追従して一体的に変形することができず、バンパーレインフォース11とバンパーステイ12とを溶接により接合したバンパー構造体10においては、図6(b)に示すように、バンパーレインフォース11とバンパーステイ12との間、又はバンパーレインフォース11と中間部材との間(中間部材を設けた場合)の溶接部に非常に大きな剥離荷重がかかり、車体幅方向中央寄りの接合部12bを残して溶接部が切れたり、極端な場合には、溶接部全体に破断が生じる。従って、バンパー構造体10による効果的な衝突エネルギーの吸収が行われず、バンパー構造体のエネルギー吸収性能は著しく低下する。
【0011】
特許文献4には、このような溶接部の切れ及び溶接部全体の破断を解決するための手段として、中間部材をバンパーレインフォースの長手方向両端部に設けて、バンパーレインフォース11のバンパーステイ12への固定をバンパーレインフォース11の長手方向両端部にて行い、更に、中間部材に衝撃吸収用のリブを設ける技術が開示されている。即ち、この特許文献4の技術は、バンパーレインフォース11の固定を両端部で行っているため、傾斜部分11aを車体の幅方向に長く確保することができず、車体の幅方向端部における衝突に対し十分に衝突エネルギーを吸収することができないという問題点がある。
【0012】
また、特許文献4に開示された中間部材は、構造が複雑であり、従ってバンパー構造体全体の重量が大きくなるという問題点がある。更に、中間部材の構造が複雑であると、プレス成形により製造する場合においても、押出成形により製造する場合においても、加工が難しく、また、製造コストも増大してしまうという問題点がある。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、バンパー構造体において、衝突時に、バンパーレインフォースの曲げ戻し変形に対して溶接部の剥離が生じず、効果的に衝突エネルギーを吸収することができ、構造が単純で軽量なバンパー構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るバンパー構造体は、車体に対しその幅方向に離隔した2位置に長手方向を車体の前後方向に一致させて固定された2個のバンパーステイと、このバンパーステイの先端部で支持されこの支持部が前記バンパーステイの長手方向に対して傾斜しているバンパーレインフォースと、を有するバンパー構造体において、前記バンパーステイの先端部と前記バンパーレインフォースの支持部との間に介装された中間部材を有し、前記バンパーステイの前記先端部は、前記車体の幅方向中央側の第1端面と、幅方向の外側の第2端面とを有し、前記第2端面は前記第1端面に対して、屈曲すると共に前記バンパーレインフォースの前記傾斜部に倣って傾斜しており、前記中間部材は、前記バンパーレインフォースの傾斜部と前記バンパーステイの第2端面に重ねられる第1部分と、前記バンパーステイの前記第1端面に重ねられる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを連絡して前記第1部分及び第2部分と共に三角形の1辺を構成する第3部分とから構成され、前記中間部材の前記第1部分のうち、前記第2部分が交差する位置より車体幅方向中央側の部分が前記バンパーレインフォースに溶接により固定され、前記第1部分のうち前記バンパーステイの第2端面に重ねられる部分は前記バンパーレインフォースに固定されず、前記中間部材の第1部分のうち前記バンパーステイの第2端面に重ねられる部分は前記第2端面に溶接により固定されており、前記第2部分は前記バンパーステイの前記第1端面に溶接により固定されていることを特徴とする。
【0015】
上述のバンパー構造体において、前記中間部材の前記第2部分と第3部分とが交差する位置は、前記バンパーステイの前記第1端面よりも前記車体の幅方向中央側であることが好ましい。
【0016】
上述のバンパー構造体において、例えば前記バンパーレインフォースは上面、下面及び側面を有する角筒状をなし、前記第1部分と前記バンパーレインフォースとの溶接箇所は、前記バンパーレインフォースの夫々上面及び下面と前記第1部分との隅部である。また、前記第1部分と前記バンパーレインフォースとの溶接箇所は、前記バンパーレインフォースの夫々上面、下面及び側面と前記第1部分との隅部であってもよい。
【0017】
また、前記第1端面と前記第2端面との境界の位置は、前記バンパーステイの中心軸から前記車体の幅方向に前記バンパーステイの幅の30%以内の範囲であることが好ましい。
【0018】
上述のバンパー構造体において、前記中間部材は、例えば前記第1部分、前記第2部分及び前記第3部分が一体成形された押出形材である。
【0019】
また、前記バンパーレインフォース、前記バンパーステイ及び前記中間部材は、例えばJIS7000系アルミニウム合金からなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のバンパー構造体は、バンパーステイの先端部が車体の幅方向中央側の第1端面と車体の幅方向の外側の第2端面とを有し、第2端面は第1端面に対して、屈曲すると共にバンパーレインフォースの傾斜部に倣って傾斜しており、中間部材がこのバンパーステイ及びバンパーレインフォースの形状に合わせて形成されてバンパーステイに固定されている。そして、中間部材の第1部分のうち、第2部分が交差する位置より車体幅方向中央側の部分がバンパーレインフォースに溶接により固定され、第1部分のうちバンパーステイの第2端面に重ねられる部分はバンパーレインフォースに固定されていない。これにより、中間部材13がバンパーレインフォース11に固定されている溶接部には、剥離荷重が作用せず、溶接部の剥離が生じない。また、衝突時の荷重によるモーメントは、第1端面と第2端面との境界を回転支点として車体の幅方向中央側に印加されるため、バンパーレインフォースとバンパーステイとにより衝突エネルギーを効果的に吸収することができ、安全性が高い。
【0021】
また、中間部材は、構造が単純である。従って、本発明のバンパー構造体は、軽量であり、その製造コストが増大することもない。そして、各部材間の固定は溶接のみにより行っているので、バンパー構造体への孔あけ等を行う必要がなく、バンパー構造体の製造工程を簡略化することができ、また、バンパー構造体全体の重量を軽量化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るバンパー構造体を示す一部平面図である。
【図2】同じくバンパー構造体を示す斜視図である。
【図3】同じくバンパー構造体をバンパーステイ側から見た斜視図である。
【図4】バンパー構造体の静的圧壊試験装置を示す斜視図である。
【図5】本発明のバンパー構造体における曲げ戻し変形後の変形状態を示す斜視図である。
【図6】従来のバンパー構造体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、バンパー構造体の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るバンパー構造体を示す一部平面図、図2は同じくバンパー構造体を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態のバンパー構造体1は、バンパーレインフォース11と、バンパーステイ12と、バンパーレインフォース11とバンパーステイ12との間に介装された中間部材13とにより構成されている。
【0024】
バンパーレインフォース11は、例えばアルミニウム合金材からなる中空の部材が車体の幅方向に長手方向を有するように延び、その長手方向の両端部において、車輌の内側(フロントバンパーの場合は車体の後方側、リアバンパーの場合は車体の前方側)に向けて例えば10乃至20度折曲された傾斜部分11aが形成されている。そして、バンパーレインフォース11は、傾斜部分11aの中央部付近において、中間部材13を介してバンパーステイ12の先端部に固定されている。なお、以下、バンパーレインフォース11の傾斜部分11a間に位置している車体の幅方向に平行な部分については、横部分11bと称する。
【0025】
バンパーレインフォース11は、例えば断面矩形の筒状部材によって構成されており、例えばアルミニウム合金製の押出形材である。なお、バンパーレインフォース11は、アルミニウム合金製の板材に3回又は4回の曲げ成形を施して断面矩形となるように板材の両端部を突き合わせた後、突き合わせ部を例えば溶接により接合することにより成形されていてもよい。また、本実施形態において、バンパーレインフォース11はアルミニウム合金材であるが、鋼材によって成形されていてもよく、この場合、上述のアルミニウム合金材で成形する場合と同様に、板材に複数回の曲げ成形を施して突き合わせ部を溶接して接合されていてもよく、成形性を考慮して、板材に2回の曲げ成形を施した後、断面コの字状としたものを突き合わせて配置し、相互間を突き合わせ部にて溶接することにより、断面矩形の筒状部材に成形されたものであってもよい。また、バンパーレインフォース11には、必要に応じて、その中空の内部に1又は複数個のリブを設けることができ、リブによりバンパーレインフォース11を補強することにより、衝突時の衝突エネルギーの吸収を効果的に行うことができる。この場合、リブ形状は、例えば断面I字状である。また、本実施形態においては、バンパーレインフォース11は1個の筒状部材により構成されているが、バンパーレインフォース11は複数個の筒状部材により構成されていてもよい。この場合、複数個の筒状部材を車体前後方向及び/又は上下方向に並べて配置し、隣接する筒状部材間は、例えば溶接により接合する。
【0026】
バンパーステイ12は、バンパーレインフォース11と同じく、例えばアルミニウム合金又は鋼材からなり、筒状に成形したものを車体の前後方向に開口するように配置したものである。バンパーステイ12には、一端部にフランジ12aが設けられており、フランジ12aにて車体に対しその幅方向に離隔した2位置に長手方向を車体の前後方向に一致させて固定される。バンパーステイ12の他端部は、その車体幅方向の外側が平面視でバンパーレインフォース11の傾斜部分11aの傾斜に倣って切り欠かれており、これにより、バンパーステイの長手方向に垂直な車体幅方向中央側の第1端面12cと、バンパーレインフォース11の傾斜部11aに倣った車体幅方向外側の第2端面12dとが形成されている。そして、この第1端面12cにおいて、後述する中間部材の第2部材13bが溶接により接合されており、第2端面において、中間部材の第1部材13aが溶接により接合されている。第1端面12cと第2端面12dとの境界は、例えば図1に示すように、バンパーステイ12の中心lから車体の幅方向にバンパーステイ12の幅Wの30%以内の範囲内に位置するように設けられており、本実施形態においては、第1端面12cと第2端面12dとの境界は、バンパーステイ12の中心lである。なお、バンパーレインフォース11と同様に、バンパーステイ12にもその中空の内部に1又は複数個のリブを設けて補強することができる。
【0027】
バンパーステイ12の一端部に設けられたフランジ12aは、例えば板厚が3乃至5mmの板材であり、バンパーステイ12に例えば溶接により接合されている。フランジ12aには、ボルトを挿通するボルト孔が例えば4カ所に設けられており、このボルト孔にボルトを挿通して車体に締結するか、又は車体に予め設けられたスタッドボルトをフランジ12aのボルト孔に挿通した後、ナットを締結して、バンパー構造体1を車体に固定することにより、バンパーステイ12は、バンパー構造体1の全体を支持する。バンパーステイ12の断面形状は、円形、矩形又は多角形となるように形成されており、図2に示すように、本実施形態においては断面矩形である。これにより、筒状体の中心軸方向の圧縮力に対する強度を強化することにより、車体前後方向の耐衝撃性が確保されている。
【0028】
中間部材13は、アルミニウム合金又は鋼製の板材により構成されており、本実施形態においては、バンパーレインフォース11の傾斜部分11aに重ねられる第1部材13aと、バンパーステイ12の第1端面12cに重ねられる第2部材13bと、第1部材と第2部材とを連絡することにより三角形の1辺を構成するように配置された第3部材13cとにより構成されており、これらの板材13a、13b及び13cがトラス形状を形成するように配置されている。本実施形態においては、第1部材13a、第2部材13b、及び第3部材13cは、夫々アルミニウム合金製の押出により成形された板材であり、3枚の板材の相互間は、例えば溶接により接合されているが、中間部材13は、第1部材13a、第2部材13b、及び第3部材13cが一体的に、例えば、アルミニウム合金の押出形材として形成されていてもよい。中間部材13を押出形材で形成することにより、中間部材の寸法精度が向上し、また、構造が単純で、高強度に成形することができるので、衝突エネルギー吸収を確実に行うことができる。なお、中間部材13を鋼材により成形してもよく、必要に応じて、各部材間に補強のためのリブを設けてもよい。
【0029】
上述の如く、中間部材13の第1部材13aは、バンパーレインフォース11に重ねられる面の裏面にてバンパーステイ12の他端部、即ち、第2端面12dに溶接により接合されている。第2部材13bは、バンパーステイ12の第1端面12cと第2端面12dとの境界にて第1部材13aの前記裏面に交差するように配置されている。そして、第2部材13bは、バンパーステイ12の第1端面に溶接により接合されている。第3部材13cは、第1部材13aと第2部材13bとの間を連絡するように配置され、第1部材13aと第3部材13cとの間、及び第2部材13bと第3部材13cとの間が、夫々、溶接により接合されている。このとき、図1に示すように、第2部材13bと第3部材13cとが交差する部分は、第2部材13bとバンパーステイ12との接合部(第1端面12c)よりも車体の幅方向中央側に配置されていることが好ましい。これにより、バンパーレインフォース11は、モーメントの回転支点を第1端面12cと第2端面12dとの境界(第1部材13aと第2部材13bとの交差部)にして、中間部材13を押し潰しながらバンパーステイ12を座屈させることができ、中間部材13が潰れた後は、バンパーステイ12の中心軸方向にバンパーステイ12を押圧して、バンパーステイ12の全体をその中心軸方向に圧壊させることができる。
【0030】
図3に示すように、中間部材13の第1部材13aは、バンパーレインフォース11に重ねられる部分のうち、第2部材13bが交差する位置、即ち、バンパーステイ12の第1端面12cと第2端面12dとの境界よりも車体の幅方向中央側の部分にてバンパーレインフォース11に溶接により接合されている。このとき、第1部材13aがバンパーレインフォース11に溶接される箇所は、バンパーレインフォース11の夫々上面及び下面と第1部材13aとの隅部(図3の領域B)であればよいが、接合部の強度を向上させるために、バンパーレインフォース11の側面と第1部材13aとの隅部(図3の領域C)も溶接により接合されていてもよい。
【0031】
以上のように、本発明においては、バンパーレインフォース11とバンパーステイ12との間に中間部材13を設け、中間部材13を第1部材13a、第2部材13b及び第3部材13cにより構成している。また、バンパーステイ12の先端に第1端面12c及び第2端面12dを設けている。そして、第1部材13aをバンパーレインフォース11に沿うように配置し、第1端面12cと第2端面との境界よりも車体の幅方向の中央側においては第1部材13aをバンパーステイ12に溶接により接合し、第1端面と第2端面との境界よりも車体の幅方向の外側においては第1部材13aをバンパーステイ12に溶接により接合している。このとき、第1部材13aが設けられることにより、第1端面と第2端面との境界よりも車体の幅方向外側にてバンパーレインフォース11に第1部材13aが溶接されていなくても、車体の幅方向中央側に第1部材13aの長さを長く設定することにより、溶接長さを長くして、十分な強度を有する溶接部を形成することができる。また、第2部材13bを第1部材13aの途中から分岐するように設け、第1部材13aをバンパーステイ12の第2端面12dに溶接し、第2部材13bをバンパーステイ12の第1端面12cに溶接することにより、中間部材13がバンパーステイ12に溶接される溶接長さは、第2部材13bを第1部材13aの車体幅方向外方の端部から分岐させた場合に比して長くなる。このように、本発明においては、バンパーステイ12の先端に第1端面12c及び第2端面12dを設け、バンパーステイ12の先端形状に合わせて第1部材13a及び第2部材13bを設けることにより、バンパーステイ12と中間部材13との溶接長さを長くすることができるという副次的な効果がある。
【0032】
バンパー構造体1を構成する上記バンパーレインフォース11、バンパーステイ12及び中間部材13をアルミニウム合金により構成する場合は、JIS7000系のアルミニウム合金を使用することが好ましい。これにより、バンパー構造体1の強度を高めることができるだけでなく、バンパー構造体1を製造する際に、各部材間の溶接施工性を向上させることができる。なお、アルミニウム合金としては、JIS7000系のアルミニウム合金の他に、JIS2000系、3000系、5000系及び6000系のアルミニウム合金を使用することができる。
【0033】
各部材間を接合する溶接部は、連続したビードで形成してもよく、断続的なビードで形成してもよい。溶接部を断続的なビードで形成した場合には、溶接部に生じる溶接歪の大きさを低減することができる。但し、溶接部を断続的なビードで形成した場合においては、ビード間のピッチを30mm以上とすることが好ましい。また、溶接方法としては、MIG溶接、TIG溶接、アーク溶接、及びレーザ溶接の他、レーザ溶接とアーク溶接を複合させたハイブリッド溶接を採用することができる。
【0034】
次に、本発明のバンパー構造体の動作について説明する。本発明のバンパー構造体を備えた自動車又はトラック等が他の自動車又は障害物等に衝突する際には、衝突物は、先ずバンパーレインフォース11に衝突する。衝突物が衝突する位置がバンパーレインフォース11の横部分11bである場合には、バンパーレインフォース11の横部分11bは、車体の内側へ向けて押圧される。従って、自動車の幅方向に長手方向を有するバンパーレインフォース11は、その端部が、バンパーステイ12を支軸として車体の外側に回転する方向、即ち、傾斜部分11aの傾斜を横部分11b側に戻す方向に回転モーメントが印加される。これにより、バンパーレインフォース11の傾斜部分11aには、印加された回転モーメントにより曲げ戻し変形が生じる。
【0035】
図6に示すような従来のバンパー構造体10においては、曲げ戻し変形時のモーメント回転支点は、バンパーステイ12の車体幅方向中央であり、これにより、バンパーレインフォース11の傾斜部分11aには、バンパーステイ12の車体幅方向中央寄りの接合部12bを起点として大きなモーメントが印加される。従って、バンパーレインフォース11とバンパーステイ12との溶接部には大きな剥離荷重がかかり、溶接部が切れたり、極端な場合には溶接部全体に破断が生じたりする。そして、この場合には、バンパーレインフォース11とバンパーステイ12とを一体的に変形させることができず、バンパー構造体10による効果的な衝突エネルギーの吸収が行われず、バンパー構造体のエネルギー吸収性能は著しく低下する。
【0036】
これに対して、本発明においては、中間部材13の第1部材13aのうち、第2部材13bが第1部材13aに交差する位置よりも車体の幅方向中央側だけをバンパーレインフォース11に溶接して固定しているので、曲げ戻し変形時のモーメント回転支点は、バンパーステイ12の第1端面12cと第2端面12dとの境界であり、モーメント回転支点がバンパーステイ12の中心軸及びその近傍にある。即ち、第1部材13aは、第2部材13bとの交差部分、即ち、バンパーステイ12の第1端面12cと第2端面12dとの境界よりも車体の幅方向中央側の領域にてバンパーレインフォース11に溶接によって接合されている。そして、第1部材13aは、バンパーステイ12の第2端面12dに重ねられる部分がバンパーレインフォース11に固定されていない。このようにバンパー構造体を構成することにより、衝突時に車体の幅方向中央側に印加された荷重によるモーメントは、バンパーステイ12の第1端面12cと第2端面12dとの境界を回転支点として印加されるようになり、モーメント回転支点よりも車体の幅方向中央側において、モーメントはバンパーレインフォース11をバンパーステイ12側に押さえつける方向に応力を作用させる。これにより、中間部材13がバンパーレインフォース11に固定されている溶接部には、押圧力が作用して剥離荷重が作用せず、溶接部の剥離が生じない。
【0037】
バンパーステイ12に印加される応力が大きくなると、バンパーステイ12は撓み始め、主に第1端面12cの領域から座屈し始める。これにより、バンパーステイ12は積極的に衝突エネルギーを吸収するようになる。即ち、本発明においては、前記モーメント回転支点よりも車体の幅方向中央側の溶接部にて、バンパーレインフォース11に印加された荷重を中間部材13を介してバンパーステイ12に効率よく伝達し、バンパーステイ12を座屈させた後、圧壊させ、バンパーレインフォース11の変形にバンパーステイ12の変形を追従させることができ、バンパーレインフォース11とバンパーステイ12とを一体的に変形させて、効果的に衝突エネルギーを吸収することができる。このとき、第1端面12cと第2端面12dとの境界の位置がバンパーステイ12の中心でなくても、前記境界がバンパーステイ12の中心から車体の幅方向にバンパーステイ12の幅Wの30%以内の範囲内であれば、バンパーステイ12による衝突エネルギーの吸収をより効果的に行うことができる。
【0038】
また、例えば中間部材13の第2部材13bと第3部材13cとが交差する部分が、第2部材13bとバンパーステイ12との接合部(第1端面12c)よりも車体の幅方向中央側となるように設ければ、バンパーレインフォース11は、衝突時の衝撃をより効果的にバンパーステイ12に伝達し、バンパーレインフォース11及びバンパーステイ12の変形により、衝突エネルギーをより効果的に吸収することができる。即ち、第2部材13bと第3部材13cとが交差する部分が第1端面12cよりも車体の幅方向中央側にあることにより、中間部材13は変形しやすくなるため、バンパーレインフォース11は、中間部材13を押し潰しながらバンパーステイ12を座屈させることができる。そして、中間部材13が潰れた後は、バンパーレインフォース11は、バンパーステイ12の中心軸方向にバンパーステイ12を押圧し、バンパーステイ12の全体をその中心軸方向に、例えば蛇腹状に圧壊させることができる。
【0039】
以上述べたように、本発明によれば、バンパーレインフォース11とバンパーステイ12とにより効果的に衝突エネルギーを吸収することができる。従って、自動車の衝突時に、車内の乗員又は歩行者等に衝撃力が印加されることを抑制し、乗員及び歩行者等の安全性を高めることができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、バンパーレインフォース11を矩形断面の筒状部材として説明したが、バンパーレインフォース11は矩形断面を有するものでなくてもよく、例えば例えば円筒状に形成されていてもよい。また、車体内側の断面を矩形としてバンパーステイ12及び中間部材13への固定を容易に行えるように構成しつつ、車体外側にフィレットを設けて、衝突物への接触圧を均一化してもよい。
【0041】
また、バンパーステイ12についても、角筒状又は円筒状に限らず、その断面形状は、六角形、八角形等の多角形状であってもよい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明のバンパー構造体について、その効果を比較例と比較して説明する。本実施例においては、先ず、JIS7000系合金(Zn:6.5質量%、Mg:0.8質量%、Cu:0.15質量%、残部がアルミニウム及び不可避的不純物)からなるバンパーレインフォース、バンパーステイ、及び中間部材を押出により成形した。そして、バンパーレインフォースについては、曲げ加工を施すことにより、長手方向の両端部に傾斜部を加工した。
【0043】
本実施例においては、バンパーレインフォースは断面形状が矩形(幅70mm、高さ80mm、肉厚2mm)の中空部材の内部において、その中間部分に肉厚2mmの1本のリブを水平に設けることにより、断面形状が日の字状となるように加工した。なお、バンパーレインフォースの傾斜部は、その端部の300mmの区間を車輌の前後方向に15度曲げ加工したものである。
【0044】
バンパーステイは、断面形状が長方形(幅80mm、高さ100mm、肉厚2mm)の中空の押出形材を80mmの長さとなるように加工し、バンパーレインフォースと同様に、中空部材の内部において、その中間部分に肉厚2mmの1本のリブを設けて、断面日の字状とした。そして、バンパーステイの一端部に、7000系アルミニウム合金製のフランジを溶接により接合した。また、バンパーステイの他端部を幅方向40mmの範囲で、高さ10.7mm切り欠いた。これにより、バンパーステイの先端に第1端面及び第2端面を設けた。
【0045】
中間部材は、押出により、第1部材、第2部材及び第3部材を肉厚が3mmとなるように成形し、3枚の板材をトラス状に配置した。なお、中間部材の寸法は、夫々、第1部材を、幅110mm、長さ130mm、第2部材を、幅110mm、長さ55mm、第3部材を、幅110mm、長さ14.2mmとした。そして、第1部材と第2部材との交差部(分岐部)は、第1部材の端部から65mmの位置とし、第1部材と第3部材との交差部は、第2部材の分岐部から53.1mmの位置とし、第2部材と第3部材との交差部は、第2部材の分岐部から55mmの位置とした。
【0046】
このように作成したバンパーレインフォース、中間部材及びバンパーステイをこの順で配置し、MIG溶接により接合した。なお、バンパーステイと中間部材とは、全周、MIG溶接により接合した。これにより、中間部材における第2部材と第3部材との交差部を、第2部材とバンパーステイとの接合部よりも車体の幅方向中央側に配置した。また、バンパーレインフォースと中間部材とは、中間部材の分岐部、即ち、第1部材と第2部材との交差部から車体の幅方向中央側の範囲において、バンパーレインフォースの上面、下面及び側面と第1部材との隅部をMIG溶接により接合した。
【0047】
比較例のバンパー構造体としては、図6(a)に示すようにバンパーステイ12の先端部を切り欠かずに、また、バンパーレインフォース11とバンパーステイ12との間に中間部材を設けずに、バンパーレインフォースとバンパーステイとの間をMIG溶接により全周溶接したものを使用した。
【0048】
これらの実施例及び比較例のバンパー構造体を図4に示す静荷重装置4に設置してバンパー構造体の圧壊試験を行った。バンパーステイ12のフランジ12aを静荷重装置4の台座4bにボルトにより固定し、バンパーレインフォース11の曲げ加工を施していない範囲(横部分11b)において、荷重が長手方向に均等となるように上方から静荷重装置4のバリア4aを押し付け、バンパー構造体の変形を観察した。なお、バリア4aの加工速度は、30mm/分(平均速度)とした。
【0049】
その結果、実施例のバンパー構造体も比較例のバンパー構造体も、共に曲げ戻し変形が発生した。実施例のバンパー構造体は、図5に示すように、中間部材13の第1部材13aが、第2部材13bの交差部付近、即ち、バンパーステイ12の第1端面12cと第2端面12dとの境界を支点として折れ曲がり、第1端面12cと第2端面12dとの境界よりも車体の幅方向中央側については、第1部材13aと第2部材13bとの交差部付近を支点として、曲げ戻し変形に追従して中間部材13の全体が回転するように変形した。これにより、第2部材がバンパーステイ12に押し付けられ、図5に示す領域Aにおいてバンパーステイ12が座屈した。これにより、バンパーレインフォース11及びバンパーステイ12の変形により、衝突時のエネルギーを効果的に吸収することができることが分かった。
【0050】
これに対して、比較例のバンパー構造体は、図6(b)に示すように、車体の幅方向中央側の接合部をモーメント回転支点とするバンパーレインフォース11の曲げ戻し変形により、溶接部が瞬間的に破断した。
【0051】
以上のように、バンパー構造体を本発明の構成とすることにより、衝突時に、衝突エネルギーの吸収をバンパーレインフォースだけに偏らせることなく、バンパーステイによっても効果的に行うことができる。従って、本発明のバンパー構造体を自動車又はトラック等に設置した場合には、車内の乗員又は歩行者等に衝撃力が印加されることを抑制し、乗員及び歩行者等の安全性を高めることができる。
【0052】
また、本発明のバンパー構造体は、構造が単純である。従って、バンパー構造体全体の重量を増加させることなく、製造コストも安価である。そして、各部材間の固定を溶接のみにより行えば、バンパー構造体への孔あけ等を行う必要がないため、バンパー構造体の製造工程を簡略化することができ、また、バンパー構造体全体の重量を軽量化することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1、10:バンパー構造体、11:バンパーレインフォース、11a:傾斜部分、11b:横部分、12:バンパーステイ、12a:フランジ、12b:車体中央側接合部、12c:第1端面、12d:第2端面、13:中間部材、13a:第1部材、13b:第2部材、13c:第3部材、2:溶接部、4:静荷重装置、4a:バリア、4b:台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対しその幅方向に離隔した2位置に長手方向を車体の前後方向に一致させて固定された2個のバンパーステイと、このバンパーステイの先端部で支持されこの支持部が前記バンパーステイの長手方向に対して傾斜しているバンパーレインフォースと、を有するバンパー構造体において、前記バンパーステイの先端部と前記バンパーレインフォースの支持部との間に介装された中間部材を有し、前記バンパーステイの前記先端部は、前記車体の幅方向中央側の第1端面と、幅方向の外側の第2端面とを有し、前記第2端面は前記第1端面に対して、屈曲すると共に前記バンパーレインフォースの前記傾斜部に倣って傾斜しており、前記中間部材は、前記バンパーレインフォースの傾斜部と前記バンパーステイの第2端面に重ねられる第1部分と、前記バンパーステイの前記第1端面に重ねられる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを連絡して前記第1部分及び第2部分と共に三角形の1辺を構成する第3部分とから構成され、前記中間部材の前記第1部分のうち、前記第2部分が交差する位置より車体幅方向中央側の部分が前記バンパーレインフォースに溶接により固定され、前記第1部分のうち前記バンパーステイの第2端面に重ねられる部分は前記バンパーレインフォースに固定されず、前記中間部材の第1部分のうち前記バンパーステイの第2端面に重ねられる部分は前記第2端面に溶接により固定されており、前記第2部分は前記バンパーステイの前記第1端面に溶接により固定されていることを特徴とするバンパー構造体。
【請求項2】
前記中間部材の前記第2部分と第3部分とが交差する位置は、前記バンパーステイの前記第1端面よりも前記車体の幅方向中央側であることを特徴とする請求項1に記載のバンパー構造体。
【請求項3】
前記バンパーレインフォースは上面、下面及び側面を有する角筒状をなし、前記第1部分と前記バンパーレインフォースとの溶接箇所は、前記バンパーレインフォースの夫々上面及び下面と前記第1部分との隅部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバンパー構造体。
【請求項4】
前記バンパーレインフォースは上面、下面及び側面を有する角筒状をなし、前記第1部分と前記バンパーレインフォースとの溶接箇所は、前記バンパーレインフォースの夫々上面、下面及び側面と前記第1部分との隅部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバンパー構造体。
【請求項5】
前記第1端面と前記第2端面との境界の位置は、前記バンパーステイの中心軸から前記車体の幅方向に前記バンパーステイの幅の30%以内の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバンパー構造体。
【請求項6】
前記中間部材は、前記第1部分、前記第2部分及び前記第3部分が一体成形された押出形材であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のバンパー構造体。
【請求項7】
前記バンパーレインフォース、前記バンパーステイ及び前記中間部材がJIS7000系アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶接バンパー構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−126492(P2011−126492A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289292(P2009−289292)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)