説明

バンプの形成方法

【課題】 金属ペーストを使用するバンプ形成方法において、ペーストの乾燥工程において生じる金属粉末の凝着を抑制し、余剰の金属粉末の残留が生じ難い方法を提供する
【解決手段】 金薄膜10が形成された半導体ウエハー11の表面にフォトレジスト20層を形成し、フォトレジスト層のバンプ形成位置に対応する位置に貫通孔21を形成する。次に、金属ペーストである金ペースト30をフォトレジスト層20の表面に滴下し貫通孔21内に金ペーストを充填する。その後、乾燥工程では、金属ペーストを金属粉末とした。このときの条件は、温度−10℃、真空度10Pa、乾燥時間5分とした。そして、ペースト乾燥後、余剰な金属粉末をへら40で擦りとった。以上の工程の後、レジストを剥離し、基板を電気炉に入れて金属粉を焼結させてバンプ50を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等に形成されるバンプの形成方法に関する。詳しくは、金属ペーストを用いてバンプを形成する方法であって、ペースト乾燥時の金属粉末の凝着を抑制しつつバンプを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップオンボード(COB)やチップオングラス(COG)等の工程により配線回路基板に直付けされる、半導体チップの電極用バンプを形成する方法としては、従来からめっき法が一般的であった。しかし、めっき法により形成されるバンプは、耐久性に乏しく、配線回路基板の使用過程において繰り返される発熱、冷却による伸縮の結果、疲労破壊を生じるおそれがあった。
【0003】
本発明者等は、上記のような問題を有するめっき法に替えて、金属ペーストを使用してバンプを形成することを提案している(特許文献1参照)。この手法では、純度が99.9重量%以上であり、平均粒径が0.005μm〜1.0μmである金粉、銀粉、白金粉、又はパラジウム粉から選択される一種以上の金属粉と有機溶剤とから金属ペーストを用い、ペースト中の金属粉末を焼結することによりバンプを形成する。そして、金属ペーストより製造されるバンプは、基となる金属粉の粒度、焼結条件にもよるが、多孔質で比較的柔らかく弾力性を有するものとなる。かかる弾力性に富むバンプは、基板上で膨張・収縮してもひずみが緩和され、疲労破壊が生じにくくなっている。
【特許文献1】特開2005−216508号公報
【0004】
ここで、金属ペーストを用いるバンプ形成法においては、基板表面にレジストを塗布し、バンプ位置に対応する位置に貫通孔を形成した後に、所定の組成で調整した金属ペーストを塗布して貫通孔にペーストを充填し、余剰のペーストを除去して乾燥させた後にレジストの除去及び焼結を行いバンプを形成している(特許文献1 第1実施形態を参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記方法においては、金属ペーストを充填し、余剰の金属ペーストを除去した後に金属ペーストを金属粉末に乾燥している。この場合、乾燥の際に金属ペースト中の有機溶剤が揮発するために、貫通孔に充填されたペーストに体積減が生じ、所望の形状のバンプが形成されないおそれがある。
【0006】
そこで、乾燥時の体積減を考慮し、金属ペーストを塗布後、まず、乾燥を行い、それから余剰な金属粉末を除去するのが有効とも考えられる。しかしながら、この場合には、乾燥過程で金属粉末同士の凝着が進行し、余剰な金属粉末の除去が困難となる。この問題は、バンプの間隔が狭くなるとより顕著となり、凝着した金属粉末がバンプ間でブリッジを形成し、そのまま残留することとなる。
【0007】
本発明は、以上のような背景のもとになされたものであり、金属ペーストを使用するバンプ形成方法において、所望の形状・体積のバンプを形成できると共に、乾燥工程における金属粉末の凝着を抑制し、余剰の金属粉末の残留が生じ難い方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、バンプ形成工程において、ペースト塗布後にまず乾燥を行い、その後、余剰な金属粉末の除去を行なう方法を基本としつつ、乾燥時の金属粒子の凝着を抑制することとした。そして、乾燥時の凝着の抑制方法として、雰囲気温度を低温とすることが有効であることを見出した。
【0009】
ペーストの乾燥温度に関しては、上記特許文献1では室温程度、具体的には30℃以上が好ましいとされている。この温度設定に関しては作業性(乾燥速度)を考慮するものであるが、ペースト中の金属粉末はこの室温程度の温度でも凝着が進行する傾向にある。そこで、本発明においては、乾燥の際の雰囲気温度をより低温とするものである。
【0010】
即ち、本発明は、バンプの位置に対応する位置に貫通孔を有するレジスト層を基板上に形成し、該レジスト層の表面に純度が99.9重量%以上であり、平均粒径が0.005μm〜1.0μmである金粉、銀粉、白金粉、又はパラジウム粉から選択される一種以上の金属粉と有機溶剤とからなる金属ペーストを塗布して該貫通孔に金属ペーストを充填する工程を含むバンプの形成方法において、前記金属ペーストの塗布後に金属ペーストを金属粉末とする乾燥工程と、前記乾燥工程後に余剰の金属粉末を除去する除去工程と、を含み、前記乾燥工程、又は、乾燥工程と除去工程との両工程における雰囲気温度を5℃以下とすることを特徴とするバンプの形成方法である。
【0011】
以下、本発明に係るバンプ形成方法につき詳細に説明する。本発明においては、まず、基板上へのレジストの塗布及びバンプ位置への貫通孔形成を行なう。この工程に関しては、一般的なレジスト材料、工程が適用でき、めっき法によるバンプ形成と同様のものが適用できる。例えば、適宜のフォトレジストを塗布した後にバンプを形成する位置にフォトリソグラフ技術を用いることで貫通孔を形成する。
【0012】
バンプを形成する金属ペーストとしては、純度が99.9重量%以上であり、平均粒径が0.005μm〜1.0μmである金粉、銀粉、白金粉、又はパラジウム粉から選択される一種以上の金属粉に、有機溶剤を混合したものが用いられる。金属粉の純度については、99.9重量%未満であると必要な通電性を確保できないおそれがある。また、金属粉の平均粒径については、1.0μmを超える粒径の金属粉では、バンプとした際に大きな隙間が生じ易くなり、最終的に必要な通電性を確保できないからである。また、1.0μmを超える金属粉は、焼結温度が高くなり実用性に乏しいからである。尚、0.005μmを下限とするのはこの粒径未満の粒径では、ペーストとしたときに凝集しやすく、取扱いが困難となることを考慮するものである。また、金、銀、白金、又はパラジウムのいずれかの粉末からなるのは、これらの金属導電性が良好であり電極として有用であるからである。
【0013】
有機溶剤としては、エステルアルコール、ターピネオール、パインオイル、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、カルビトールが好ましい。例えば、好ましいエステルアルコール系の有機溶剤として、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンタイソブチレート(C1224)、を挙げることができる。これらの溶剤は、比較的低温で乾燥させることができるからである。
【0014】
尚、使用する金属ペーストは、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、アルキッド樹脂から選択される一種以上を含有していても良い。これらの樹脂等を更に加えると金属ペースト中の金属粉の凝集が防止されてより均質となり、偏りのないバンプが形成できる。尚、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル重合体を、セルロース系樹脂としては、エチルセルロースを、アルキッド樹脂としては、無水フタル酸樹脂を、それぞれ挙げることができる。そして、これらの中でも特にエチルセルロースが好ましい。
【0015】
金属ペーストを塗布する方法としては、スピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、滴下したペーストをへらで広げる方法等、種々の方法を用いることができる。いずれも貫通孔内に金属ペーストを充填できればよい。
【0016】
本発明では、金属ペーストの塗布(充填)後、乾燥工程に供される。乾燥工程での雰囲気温度は、上記のとおり5℃以下にする。但し、金属粉末の凝集の抑制を確実なものとし、より形状の揃ったバンプを形成するためには乾燥時の雰囲気温度を0℃以下とするのが好ましい。また、乾燥温度の下限としては、−20℃とするのが好ましい。この温度未満では、熱膨張・収縮率の相違によりレジストが基板から剥離し易くなるからである。
【0017】
また、乾燥工程における雰囲気は、1000Pa以下の減圧雰囲気とするのが好ましい。乾燥過程において大気中の水分が金属粉末表面に結露するのを防止するためである。そして、より好ましいのは100Pa以下、更に好ましくは10Pa以下の減圧雰囲気とするものである。尚、雰囲気の真空度は、金属ペースト中の有機溶剤の揮発性に応じて設定する。
【0018】
金属ペーストを金属粉末とする乾燥工程の後、余剰な金属粉末を除去する。余剰な金属粉末とは、乾燥後に貫通孔をオーバーフローした状態にある金属粉末であり、これはへらやスポンジ等でレジスト表面を擦ることで除去できる。尚、本発明においては、少なくとも乾燥工程における雰囲気温度を5℃以下にすることを要するが、この除去工程における雰囲気温度についても5℃以下、又は、0℃以下としても良い。
【0019】
また、除去工程における雰囲気は、水蒸気が凝結しない環境とするのが好ましい。乾燥した金属粉末に雰囲気中の水分が結露しないようにするためである。具体的には、1000Pa以下(好ましくは100Pa以下)の減圧雰囲気、又は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気)とするのが好ましい。
【0020】
上記除去工程後、レジスト層の除去及び金属粉末の焼結を行うことでバンプとすることができる。レジスト層の除去については、アセトン等の適宜の有機溶剤でレジスト層を溶解・膨潤させて剥離する。また、焼結は、基板を適宜の炉中で加熱するものであるが、この際の焼結温度は、バンプを構成する金属の融点に対して0.3〜0.5倍の温度(Ts=Tm×0.3〜0.50:Tmはバンプを構成する金属粉の融点を示し、Tsは設定する焼結温度である。)とするのが好ましい。この温度範囲で焼結することで、適度に焼結が進行したバンプを得ることができる。また、この温度範囲で焼結する場合において、その焼結時間については、30〜120分とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、金属ペースト塗布後の乾燥工程における金属粉末同士の凝着を抑制し、余剰な金属粉末を除去する際に金属粉末が残留するのを抑制できる。これにより、所望の形状のバンプを効率的に形成することができる。本発明は、特に、バンプ間隔の狭い高密度の回路製造において有用である。尚、本発明により製造されるバンプは、金属粉末で構成されるため弾力性に富む。これにより、疲労破壊に起因する割れ、破断を生じさせることなく、長期にわたって安定的に使用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るバンプ形成の好適な実施形態を説明する。
【0023】
実施例1:図1は、本実施形態におけるバンプ形成工程を概略示すものである。金薄膜10(厚さ1000nm)が形成された半導体ウエハー11(材質:シリコン)の表面にフォトレジスト20層を形成し、フォトレジスト層のバンプ形成位置に対応する位置に、通常のフォトリソグラフ技術を用いて貫通孔21を形成した(図1(a))。
【0024】
次に、金属ペーストとして金ペースト30をフォトレジスト層20の表面に滴下し、スピンコート法によってフォトレジスト層の貫通孔21内に金ペーストを充填した(図1(b))。ここで、使用した金ペーストは、湿式還元法により製造された純度99.99重量%の金粉(平均粒径:0.3μm)と、有機溶剤としてエステルアルコール(2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンタイソブチレート(C1224))を混合して調整されたものである。
【0025】
乾燥工程(図1(c))では、ペースト塗布後の基板を乾燥器にて乾燥させた。このときの条件は、温度−10℃、真空度10Pa、乾燥時間5分とした。そして、ペースト乾燥後、余剰な金属粉末をシリコンゴム製のへら40で擦りとった(図1(d))。この除去工程における雰囲気温度は、乾燥工程と同じく−10℃とし窒素ガス雰囲気で作業を行った。
【0026】
以上工程の後、半導体ウエハー11をアセトンに浸漬させてレジストを剥離した。レジスト剥離後、半導体ウエハー11を電気炉に入れて金粉を焼結させてバンプ50を形成した。焼結温度は230℃で1時間加熱した。
【0027】
図2は、実施例1で製造したバンプの外観を示すSEM写真である。この写真からわかるように、本実施例で形成されたバンプは、金属粉末の残留やバンプ間のブリッジ形成もなく、綺麗に揃った形状であった。
【0028】
比較例1:ここでは、上記実施例に対する比較として、乾燥時の温度を10℃としてバンプ形成を行った。使用した基板、金属ペースト等の条件は乾燥温度を除き実施例1と同様である。
【0029】
図3は、乾燥温度を10℃として形成したバンプの外観写真である。図3からわかるように、乾燥温度を高くすることで、バンプ間にブリッジが形成され、金属粉末の残留がみられる。これは、乾燥時の金属粉末の凝着によるものと考えられる。
【0030】
実施例2〜4:上記実施例1と同様の条件で、乾燥温度を−5℃、0℃、+5℃としてバンプ形成を行った。そして、各実施例、比較例で製造したバンプに関し、ブリッジ形成の数を基にそれらの評価を行った。その結果をまとめたものを表1に示が、表1からわかるように、乾燥温度を5℃以下とすることで、ブリッジの形成や顕著な金属粉末の残留を抑制することができることが確認された。

【0031】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態におけるバンプ形成工程を概略説明する図。
【図2】実施例1で製造したバンプの外観を示すSEM写真。
【図3】比較例1で製造したバンプの外観を示すSEM写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンプの位置に対応する位置に貫通孔を有するレジスト層を基板上に形成し、該レジスト層の表面に純度が99.9重量%以上であり、平均粒径が0.005μm〜1.0μmである金粉、銀粉、白金粉、又はパラジウム粉から選択される一種以上の金属粉と有機溶剤とからなる金属ペーストを塗布して該貫通孔に金属ペーストを充填する工程を含むバンプの形成方法において、
前記金属ペーストの塗布後に金属ペーストを金属粉末とする乾燥工程と、前記乾燥工程後に余剰の金属粉末を除去する除去工程と、を含み、
前記乾燥工程、又は、乾燥工程と除去工程との両工程における雰囲気温度を5℃以下とすることを特徴とするバンプの形成方法。
【請求項2】
乾燥工程、又は、乾燥工程と除去工程との両工程における雰囲気温度を0℃以下とする請求項1記載のバンプの形成方法。
【請求項3】
乾燥工程における雰囲気を、1000Pa以下の減圧雰囲気とする請求項1又は請求項2記載のバンプの形成方法。
【請求項4】
乾燥工程における雰囲気を、100Pa以下の減圧雰囲気とする請求項3記載のバンプの形成方法。
【請求項5】
除去工程における雰囲気を、1000Pa以下の減圧雰囲気又は不活性ガス雰囲気とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバンプの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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