説明

バンプ付き半導体ウェーハのコーティングプロセス

バンプ付きウェーハの活性面を、ソルダーバンプをコーティング材料及び/又はフィラーで汚染することなく、前面保護(FSP)材料又はウェーハレベルアンダーフィル(WLUF)でコートすることを可能とするプロセスが記載されている。このプロセスでは、ウェーハの活性面上のソルダーバンプの頂部部分に撥水材料を塗布し、次いでウェーハの前面をコーティング材料で塗布し、そのコーティング材料を硬化させ、そして必要に応じて、ソルダーバンプから撥水材料を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリップチップデバイスのウェーハレベルパッケージ(WLP)又はウェーハレベルアンダーフィル(WLUP)に対し前面保護を適用するのに使用できる、バンプ付き半導体ウェーハのコーティングプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスのためのパッケージング技術における最近の開発は、ウェーハレベルで非常に多くの工程を取り込んでいる。ダイシングと個々のダイへのウェーハのシンギュレーション(singulation)に先立つ材料の適用は、製造時間の全体的な低減をもたらし、それにより製造コストの低減をもたらす。しばしば、ウェーハの活性面は、個々のダイを基板上のボンディングパッドに取り付けるために後で使用されるソルダーバンプをその上に堆積させ、2者の間の電気的な相互連結を形成する。多くのパッケージング方法が現れており、それらはウェーハのバンプ付き面にペースト又は液体コーティング剤を適用する必要がある。それらの方法の2つの例は、デバイスメモリー用のWLPとマイクロプロセッサー用のWLUP及び特別の集積回路(ASIC)デバイスの適用を含んでいる。
【0003】
WLP技術を用いて製造したメモリーパッケージは、前面保護(FSP)コーティングをますます必要としている。これは一般的には接着剤又はカプセル剤であり、ダイシングとシンギュレーションに先立ってウェーハの活性(バンプ付き)面に適用され、硬化する。名前が意味するように、FSPコーティングは、ダイシングやシンギュレーション等の以降の製造工程の間、ウェーハの活性面を保護し、回路基板に付着させる。WLPを用いてパッケージされたすべてのメモリデバイスがFSPコーティングを必要とするものではないが、この技術の進歩とともに要求はより大きくなっている。より薄いパッケージ、より速い信号移動及びより大きなメモリ容量に対する要求等の性能要求は、より小さなバンプ高さを有するより大きなダイへと導いている。これらの変化は、別々でも組み合わされた場合でも、パッケージストレスを増大させ、それはしばしばFSPコーティングを用いることにより軽減される。
【0004】
フリップチップデバイス、特にマイクロプロセッサ又はASIC等の大きなダイを有するものは、基板又は回路基板にダイの活性面を取り付けるのに使用されるソルダーバンプの周囲に、アンダーフィル又はカプセル剤を用いて一般的にパッケージされている。このパッケージタイプの初期の技術では、キャピラリーアンダーフィルが用いられており、基板に既に取り付けられているダイの周囲に液体として塗布されていた。最近、ウェーハレベルでアンダーフィルの適用を可能とするために、多くの研究がなされ、そのため、時間のかかるキャピラリーアンダーフィル工程を排除することができるようになった。
【0005】
バンプ付き半導体ウェーハのコーティングは、スピンコーティング、ステンシル印刷及びジェッティング(jetting)を含む当該技術分野で公知の種々の技術を用いて行うことができる。スピンコーティング法は、非常に速い、及び、コーティング材料を適切に選択すれば、非常に均一な塗布厚みを与えるという利点を有している。また、バンプの上には削られるスキージ(squeegee)又は他の物理的媒体は存在しないので、ソルダーバンプの高さより低い厚みとなるように塗布することができ、溶媒をコーティング配合物に使用しても使用しなくても良い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この方法がバンプ付き面に使用される場合、コーティング材料はダイだけでなく、ソルダーバンプの頂部も塗布する。それからダイは熱圧縮結合法を用いて取り付けられる必要があり、ダイ配置をしている間に熱と圧力を加えることによりはんだ接合が形成される。熱と圧力は、ソルダーバンプの頂部からコーティング剤を追い出し、ダイと基板との間にきれいな接合が形成されることを可能とする。この方法は非常に時間を要し、そのため費用がかかり、そして熱圧縮結合装置は、当該産業分野であまり一般的ではない。さらに、ソルダーバンプの上にフィラーが存在するとその効果が不十分となるため、かなりの量のフィラーを含むコーティング配合物を用いて使用することはできない。
あるいは、ダイが基板に取り付けられる前に、ソルダーバンプの頂部の上のコーティング材料を除去することができ、それにより、ソルダーバンプはきれいな接合を形成することができ、相接する基板に対して効果的な相互連結を与える。これはコーティング材料がフィラーを含む場合には特に必要なことであり、なぜなら、バンプ上のフィラー粒子は接合形成に対し特に有害であるからである。
【0007】
過剰のコーティング剤及び/又はフィラー粒子の除去を、コーティング剤のキュア(cure)及び/又はハードニング(hardening)後に行うことができ、ラッピング、グラインディング及び化学エッチングを含む物理的又は化学的手段のいずれかにより完結される。残念ながら、そのプロセス工程は時間を要し、ソルダーバンプ又はウェーハに損傷を与え、そして汚染をもたらす。そのため、ソルダーバンプの上に顕著なコーティング剤の残渣を残すことなく、ソルダーバンプの高さよりも低い所定厚みとなるようにウェーハをコートするコーティングプロセスを用いることが望ましく、それにより、以降のコーティング剤除去工程が不要となり、標準的なピックアンドプレイス(pick and place)のダイ取付装置(高いスループットを有し、当該産業分野で一般的なものである。)を用いることができる。
【0008】
ステンシル印刷は、溶媒系のコーティング配合物をソルダーバンプを覆うのに十分な厚さに塗布することにより一般的に完了する。それから、コーティング剤はBステージ化されるが、その工程は、溶媒を蒸発させ、コーティング剤を部分的にキュア及び/又はハードニングさせるものである。溶媒の蒸発はコーティング層を実質的に収縮させるので、コーティング層の得られる厚さは、ソルダーバンプの高さより低くなる。しかしながら、バンプの頂部にはまだかなりの残留コーティング剤が存在するので、もしコーティング剤がフィラーを含んでいると、バンプの上にフィラー粒子も存在し得る。ピックアンドプレイスダイ結合によりきれいなはんだ接合が基板との間に形成されるためには、コーティング剤及び/又はフィラーが物理的又は化学的手段により除去されなければならない。
【0009】
あるいは、ダイシング及びシンギュレーション(ダイシング後のダイの分離)の後、熱圧縮結合法を用いてダイを基板に取り付けることができ、熱と圧力が残留するコーティング剤をはんだ接合から押し出し、良好な結合及び電気的接続が形成されることを可能とする。前述したように、熱圧縮結合装置は、当該産業分野では現在あまり一般的ではなく、そのプロセスは時間のかかる取付方法であり、バンプの上にフィラー粒子が存在すると効果は不十分である。そのため、ソルダーバンプの高さより低い所定厚みになるようにウェーハにコーティング剤を塗布することを可能にし、かつソルダーバンプの頂部にコーティング残渣又はフィラー粒子が存在しないようにするコーティングプロセスを用いることが望ましい。その方法は、従来のピックアンドプレイスダイ取付装置を用いてパッケージをアセンブルすることを可能とし、かつ充填されたコーティング配合物をより速やかに用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、その上に堆積したソルダーバンプを有する半導体ウェーハの活性面のコーティングプロセスであり、
(a)活性な前面と、該前面の上に堆積したソルダーバンプと、該前面に対向する後面とを有する半導体ウェーハを用意し、
(b)上記ソルダーバンプの頂部部分に撥水材料を塗布し、
(c)上記ウェーハの上記前面をコーティング材料でコーティングし、
(d)上記コーティング材料を硬化させ、そして、
(e)必要により、上記バンプから上記撥水材料を除去する、ことからなる。
【0011】
本方法は、バンプ付きウェーハを、充填された又は充填されていないコーティング材料のいずれかを用いてソルダーバンプの高さより低い所定の厚さにコーティングすることを可能とするものであり、バンプから残留コーティング材料を除去する必要がなく、またきれいなはんだ接合を得るために、熱圧縮結合法を用いる必要がない。
【0012】
本発明の別の態様は、上記の方法を用いて作製された半導体ウェーハである。
【0013】
添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読むことにより、本発明をより十分に理解することができる。
【0014】
(定義)
ここで用いる「アルキル」という用語は、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル等の1〜24の炭素原子からなる、分岐又は非分岐の飽和炭化水素基を指す。この中で、好ましいアルキル基は1〜12の炭素原子を含む。
【0015】
ここで用いられる化合物、製造物又は組成物の「効果的な量(effective amount)」という用語は、所望の結果を提供するに十分な、化合物、製造物又は組成物の量を意味する。以下で指摘されるように、必要とされる正確な量は、用いる特定の化合物、製造物又は組成物、その適用方法等に応じて、パッケージとパッケージとの間を変動する。そのため、正確な量を特定することは常に可能ではないが、当業者が通常の実験のみを行うことにより効果的な量を決定できる。
【0016】
ここで用いる「適合した(suitable)」という用語は、決められた目的のためにここで用いられる化合物、製造物又は組成物と適合性のある部分を指すのに使用される。決められた目的に対する適合性は、当業者が通常の実験のみを行うことにより決定できる。
【0017】
ここで用いる「置換された(substituted)」という用語は、水素又は別の原子が除去されて別の成分により置換された炭素又は適合したヘテロ原子を一般的に指す。さらに、「置換された」は、本発明の基礎となる化合物、製造物又は組成物の基本的及び新規な効用を変化させない置換を指すことを意味する。
【0018】
ここで用いられる「Bステージ化(B-staging)」(及びその変形)は、熱又は放射線による材料の処理方法であって、材料が溶媒に溶解又は分散している場合、材料の部分的な硬化を伴ってあるいは伴わないで溶媒を揮散させる方法、あるいは、溶媒なしで材料がそのまま(neat)の状態であり、材料を部分的に硬化させて粘着性又はより硬い状態にする方法を指すのに使用される。もし材料が流動性の接着剤であると、Bステージ化は、完全に硬化することなく非常に低い流動性を付与するものであり、接着剤が一の物品を他の物品に接合させるのに使用された後、さらなる硬化を行うことができる。流動性の低下は、溶剤の蒸発、樹脂又はポリマー又は両方の部分的な進行(advancement)又は硬化により達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(従来技術)は、従来のウェーハスピンコーティングプロセスにおける、工程とそれに対応するウェーハの断面図を示す。
【図2】図2(従来技術)は、従来のステンシル印刷コーティングプロセスにおける、工程とそれに対応するウェーハの断面図を示す。
【図3】本発明の方法の一態様を示すものであり、初期コーティング膜厚はソルダーバンプの頂部より低い。
【図4】本発明の方法の一態様を示すものであり、初期コーティング膜厚はソルダーバンプの頂部より高い。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に適合した半導体ウェーハは、あらゆる直径及び厚さをとることができ、そして例えば、シリコン、ガリウム砒素、インジウムリン、又は他のあらゆる半導体材料から成ることができる。半導体ウェーハは、活性で電子部品及び回路が形成される上(前)面と、不活性で上記の活性な面に対向する底(後)面を備えるように作製される。
【0021】
ウェーハの前面は電子的に活性であり、ソルダーバンプがバンプ付けされ、そのソルダーバンプは集積回路と基板との間の電気的接続を形成するために後で使用される。ソルダーバンプは、あらゆる組成、大きさ及び配置をとることができる。
【0022】
撥水材料は、コーティング材料を撥水化又ははじく作用を有する。はじき又は撥水の効果は、コーティング材料をウェーハに塗布している間及び/又はコーティング材料が硬化している間のいずれかに発現することができる。撥水材料は、ソルダーバンプにくっつき、塗布されるコーティング材料に対し物理的又は化学的のいずれかにより非親和性であるあらゆる材料を用いることができ、それにより、コーティング剤を塗布している間又はそれに続くコーティング材料の硬化の間のいずれかにおいて、ソルダーバンプの被覆されている部分からコーティング材料をはじく。非親和性又は撥水特性は、化学的又は物理的手段のいずれかにより達成することができる。非親和性を達成する一つの方法は、表面エネルギーが大きく異なる(少なくとも5mN/m)材料を用いることである。
【0023】
また、撥水材料とコーティング材料との間に極性相互作用が存在してはならない。例えば、材料の一つが塩基性であり、他のものが酸性である場合、それらの間には極性相互作用が存在するので、はじきの効果がなくなる。撥水材料とコーティング材料との間に大きな表面エネルギーの差異が存在する場合であっても、このことは変わらない。
【0024】
硬化した時に非常に平坦な表面、例えばコーティング材料が撥水材料に物理的に付着できない程度の表面を有する撥水材料を用いて、物理的非親和性を達成することができる。
【0025】
撥水材料の融点又は軟化点は、特定のコーティング材料、硬化プロファイル、及び採用されるプロセスであって通常−40℃から300℃の範囲にあるプロセスに適合するように、実施者により選択される。撥水材料は、その融点がソルダーリフロープロセスで使用される温度より低ければ、室温で固体又は液体のいずれであっても良い。いつくかのケースでは、撥水材料が溶融及び/又は蒸発する前に、溶媒の一部の蒸発及び/又は樹脂の一部の硬化又は固化が可能となるような十分に高い温度であれば、コーティング材料のBステージ温度よりも低くなるように、軟化点又は融点を選択することができる。別のケースでは、撥水材料の融点又は軟化点が、コーティング材料のBステージ温度と硬化温度の間にあることが望ましく、それにより、Bステージの間はソルダーバンプを保護するために完全に同じ場所に残るが、コーティング材料が熱硬化する間に溶融及びおそらく蒸発する。あるいは、コーティング材料をUV硬化する場合には、採用される下流プロセスに応じて、撥水材料は、低い又は高い融点のいずれかを持つことができる。
【0026】
一態様では、撥水材料はワックスである。適合するワックスは、天然品又は合成品である。適合するワックスの例は、限定されるものではないが、パラフィン、パロワックス、マイクロクリスタリンワックス、石油ワックスブレンド、アモルファスワックス、ポリエステルワックス、大豆ワックス、密蝋及びそれらのブレンドを含む。
【0027】
別の態様では、撥水材料は、シラン、ポリシロキサン、又はポリフッ素化化合物等の低エネルギー化合物である。
【0028】
別の態様では、撥水材料は溶媒に溶解され、溶媒/撥水材料配合物はソルダーバンプに塗布される。この態様では、撥水材料は、室温、又は溶媒の沸点より低い高温のいずれかで塗布される。続くプロセス工程では、加熱により溶媒は蒸発し、撥水材料がバンプをコーティングする。
【0029】
撥水材料をソルダーバンプの頂部に塗布する場合、ソルダーバンプ又はウェーハに損傷を与えることなく、ソルダーバンプのコントロールされた部分にコントロールされた量の材料を堆積させることが可能であればあらゆる方法を用いて塗布することができる。一態様では、溶融した撥水コーティング材料に浸漬したパッドの中にバンプが押し込まれる。パッドには、不織布又は織布材料、織物、スポンジ、又はバンプに移動させるために撥水材料を吸収できる類似のあらゆる材料を用いることができる。別の態様では、バンプは、溶融した撥水材料の溜めの中に浸漬される。これらの両方の態様においても、バンプの頂部がそれらの全高のコントロールされた部分まで覆われるように、ウェーハを溜め又は撥水材料のパッドの中に前進させる。
【0030】
別の態様では、撥水材料は、紙、マイラー、ポリエチレン、ポリプロピレン、金属箔等のキャリアの上にフィルムとして塗布され、次いでバンプの上に積層され、コントロールされた厚さ及び塗布深さを与える。別の態様では、撥水材料は溶融され、次いでバンプの頂部上に印刷される。この態様では、バンプの頂部上にコントロールされた高さでワックスが堆積されることを確保するために、ウェーハ上のバンプパターンと調和するパターンを有するステンシル又はマスクを用いることができる。
【0031】
被覆されるべきバンプの部分は、特別のパッケージ要求及び製造条件に応じて変化し、全バンプ高さの5〜100%の範囲をとることができる。典型的には、アンダーフィルが適用された時、バンプの最小量のみが撥水材料で被覆される。これにより、基板との良好な接合形成のためにソルダーバンプの十分な表面をなお露出させた状態で、アンダーフィルができるだけ多くのソルダーバンプを封入することを可能とする。これに対し、前面保護のための塗布の場合、撥水材料で被覆されるバンプの量は、前面保護材料の厚い塗膜を得るために最小限にすることができ、又は、前面保護材料の非常に薄い層が塗布のために必要な場合には、バンプの大部分が被覆されてもよい。
【0032】
撥水材料の塗布は、あらかじめ選択された特定の材料に適合するあらゆる温度で行うことができ、実施者により過度の実験を行うことなく決定されることができる。例えば、撥水材料が室温で流動性を有する場合、室温で塗布することができる。撥水材料が室温で硬い場合、ソルダーバンプに損傷を与えることなくソルダーバンプに塗布するために、軟化又は溶融させるために加熱する必要がある。撥水材料を、バンプを損傷しないラビング又は軽い接触プロセスによりバンプに塗布することが可能となるように材料を軟化状態とする場合、及び硬化させるために塗膜を顕著に冷却する必要がない場合には、室温より高くかつ材料の融点より低い温度に加熱することもできる。この方法は、完全な液化撥水材料を用いた場合に遭遇する可能性のある滴又は流れがない状態で、非常にコントロールされたコーティングを可能とする。さらに、ウェーハ自身は室温で用いることができ、あるいは予め選択された特定の材料及び採用された製造条件からの要求に応じて、コーティングプロセスを補助するために加熱されることもできる。
【0033】
バンプ上の撥水材料の厚さ又は深さは、特定の製造プロセスの要求に適合するように実施者が選択することができ、数ミクロンから100ミクロンの範囲とすることができる。最小限のワックス残渣が必要であれば、撥水材料のより薄い層が一般的には望ましい。しかしながら、例えば、ソルダーバンプの膨張及び崩壊のための領域を保存するために、撥水材料の厚い層が望ましい場合もある。これは、塗膜が前面ウェーハ保護材料である場合に起きるであろう。もし撥水材料がバンプ全体の上に厚い層として塗布される場合には、撥水材料を蒸発させた後、その中でバンプが膨張又は崩壊する空白領域がバンプの周囲に形成されるであろう。
【0034】
撥水材料の深さ又は厚さは、塗布温度での粘度により若干は制御することができる。塗布温度で高粘度を有する材料は厚い層を形成し易く、塗布温度で低粘度を有する材料は、塗布される材料が少なくなり薄い層を形成し易い。実施者は、撥水材料の配合、塗布温度、塗布圧力又は塗布媒体の圧縮率等の多くの変数を変化させることにより、塗布される撥水材料の量を変化させることができる。
【0035】
塗布される時に、撥水材料が流動状態にあるかどうかに応じて、追加のプロセス工程を設けることができ、そこでは、コーティング材料をウェーハに塗布する前に撥水材料を硬化させる。撥水材料が液体として塗布される場合、撥水材料の硬化は、コーティング材料が、撥水材料を物理的に除去し及びバンプの頂部を汚染するのを防止することができる。また、撥水材料を硬化させると、撥水材料がウェーハの活性面の方向にバンプの表面に滴り落ちることを防止し、あるいは、コーティング材料がバンプの底部を正確に封入することを防止する。一般的には、ウェーハ上の撥水材料を冷却することにより達成されるであろう。
【0036】
コーティング材料は、バンプ付きダイの前面に塗布できるものであればあらゆる材料を用いることができ、限定されるものではないが、接着剤、カプセル材料又は前面保護材料を含むものである。適合するコーティング材料の選択は、半導体パッケージのコーティングの目的及び採用されるプロセスに依存する。コーティング剤は、一般的にいくつかのタイプのポリマー又は硬化性樹脂を含み、それらは、熱可塑性、熱硬化性、エラストマー、熱硬化性ゴム又はこれらの組み合わせを含むことができる。コーティング剤は溶媒を含んでも含まなくても良い。ポリマー又は硬化性樹脂は、存在するあらゆるフィラーを除いて、一般的に主成分である。
【0037】
コーティング組成物に一般的に使用される他の成分を、実施者の判断で添加することができ、例えば、他の成分は、限定されるものではないが、硬化剤、フラックス剤、湿潤剤、流動コントロール剤、接着促進剤、及び脱泡剤等を含む。硬化剤は、コーティング剤の硬化を開始、生長、又は促進させるあらゆる材料又は材料の組み合わせであり、促進剤、触媒、開始剤及び硬膜剤を含むものである。コーティング組成物は、フィラーを含んでも良く、その場合、フィラーは全組成に対し95%までの量が存在する。
【0038】
コーティング材料の粘度及びチキソトロピー指数は、塗布方法、製造条件及び撥水材料に適合するように実施者により選択され、一般的には、ブルックフィールドCP51粘度計を用いて25℃で5rpmで測定され、100〜60,000cPの範囲にある。例えば、もしコーティング材料がスピンコーティング法で塗布される場合、コーティング材料の粘度はかなり低くなるだろう。もしコーティング材料がスクリーン印刷で塗布される場合、一般的に高い粘度になる。この場合、その高粘度と流動しにくさにより、ウェーハに塗布した後すぐには、コーティング材料はソルダーバンプからはじかれないであろう。しかしながら、コーティング材料をBステージ化又は硬化のいずれかのためにウェーハは熱に曝されるので、コーティング材料の粘度はそれが硬化を開始する前に低下し、コーティング材料の流動及びソルダーバンプからのはじきが可能となる。この場合、撥水材料の融点及び軟化点は、コーティング材料が流動する温度よりも高くなるように選択され、それにより撥水材料は同じ場所に残り、ソルダーバンプにはじきの効果を与える。
【0039】
コーティング剤に使用される樹脂及びポリマーは、固体、液体又はその2つの組み合わせが可能である。適合する樹脂は、エポキシ、アクリレート又はメタクリレート、マレイミド、ビスマレイミド、ビニルエーテル、ポリエステル、ポリブタジエン、シリコーン化オレフィン、シリコーン樹脂、シロキサン、スチレン樹脂及びシアネートエステル樹脂を含む。一態様として、コーティング剤は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂を含む。
【0040】
一態様として、固体の芳香族ビスマレイミド樹脂(BMI)樹脂粉末がコーティング剤に含まれる。適合する固体BMI樹脂は、以下の構造を有するものである。
【0041】
【化1】


ここで、Xは芳香族基であり、芳香族基の例として以下のものを含む。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

【0050】
【化10】


【0051】
【化11】


ここで、nは1〜3である。
【0052】
【化12】


及び

【0053】
これらXの架橋基を有するビスマレイミド樹脂は、商業的に入手可能であり、例えば、サートマー(Sartomer)社(米国)又はHOS−Technic GmbH社(オーストリア)から入手できる。
【0054】
別の態様として、コーティング組成物に使用するマレイミド樹脂は、以下の一般式を有し、nは1から3、Xは脂肪族基又は芳香族基である。具体的なXの実体(entity)は、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、単純炭化水素、及びカルボニル、カルボキシル、アミド、カルバメート、尿素又はエーテル等の官能基を含む単純炭化水素を含む。これらのタイプの樹脂は、商業的に入手可能であり、例えば、ナショナルスターチアンドケミカルカンパニー及び大日本インク化学工業から入手できる。
【0055】
【化13】

【0056】
さらなる態様として、マレイミド樹脂は以下の化合物からなる群から選択される。
【0057】
【化14】



ここで、C36は、36個の炭素原子から成る直鎖又は分岐鎖(環状部分を含む又は含まない)を表す。
【0058】
【化15】

【0059】
【化16】

【0060】
【化17】

【0061】
適合するアクリレート樹脂は以下の一般式のものを含む。
【0062】
【化18】

【0063】
ここで、nは1から6、Rは−H又は−CH、Xは芳香族基又は脂肪族基である。具体的なXの実体は、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、及びカルボニル、カルボキシル、アミド、カルバメート、尿素又はエーテル等の官能基を含む単純炭化水素を含む。商業的に入手可能な材料は、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリポロポキシレート(メタ)アクリレート、及びポリペントキシレートテトラヒドロフルフリルアクリレートとして共栄社化学社から入手できる材料と、ポリブタジエンウレタンジメタクリレート(CN302、NTX6513)及びポリブタジエンジメタクリレート(CN301、NTX6039、PRO6270)としてサートマー社から入手できる材料と、ポリカーボネートウレタンジアクリレート(ArtResinUN9200A)として根上化学産業社から入手できる材料と、アクリル化脂肪族ウレタンオリゴマー(Ebecryl230,264,265,270,284,4830,4833,4835,4866、4881,4883,8402,8800−20R,8803,8804)としてラドキュアスペシャリティーズ(Radcure Specialities)社から入手できる材料と、ポリエステルアクリレートオリゴマー(Ebecryl657,770,810,830,1657,1810,1830)としてラドキュアスペシャリティーズ社から入手できる材料と、及びエポキシアクリレート樹脂(CN104,111,112,115,116,117,118,119,120,124,136)としてラドキュアスペシャリティーズ社から入手できる材料を含む。一態様として、アクリレート樹脂は、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、アクリレート官能基を有するポリブタジエン及びメタクリレート官能基を有するポリブタジエンから成る群から選択される。
【0064】
適合するビニルエーテル樹脂は、以下の一般式を有するものを含む。
【0065】
【化19】

【0066】
ここで、nは1〜6であり、Xは芳香族基又は脂肪族基である。具体的なXの実体は、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、単純炭化水素、及びカルボニル、カルボキシル、アミド、カルバメート、尿素又はエーテル等の官能基を含む単純炭化水素を含む。商業的に入手可能な樹脂は、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、及びブタンジオールジビニルエーテルとしてインターナショナルスペシャリティプロダクト(ISP)から入手できる樹脂と、Vectomer4010,4020,4030,4040,4051,4210,4220,4230,4060,5015としてシグマアルドリッチ社から入手できる樹脂を含む。
【0067】
適合するポリブタジエン樹脂は、ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、マレイン化ポリブタジエン、アクリル化ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体及びブタジエン−アクリロニトリル共重合体を含む。商業的に入手可能な材料は、ブタジエンホモポリマー(Ricon130,131,134,142,150,152,153,154,156,157,P30D)としてサートマー社から入手できる材料と、ブタジエンとスチレンのランダム共重合体(Ricon100,181,184)としてサートマー社から入手できる材料と、マレイン化ポリブタジエン(Ricon130MA8,130MA13,130MA20,131MA5,131MA10,131MA17,131MA20,156MA17)としてサートマー社から入手できる材料と、アクリル化ポリブタジエン(CN302,NTX6513,CN301,NTX6039,PRO6270,Ricacryl3100,Ricacryl3500)としてサートマー社から入手できる材料と、サートマー社からエポキシ化ポリブタジエン(Polybd600,605)及びダイセル化学工業社からエポキシ化ポリブタジエン(Epolead PB3600)として入手できる材料と、及びアクリロニトリルとブタジエンの共重合体(Hycar CTBNシリーズ,ATBNシリーズ,VTBNシリーズ及びETBNシリーズ)としてハンスケミカル(Hanse Chemical)から入手できる樹脂を含む。
【0068】
適合するエポキシ樹脂は、ビスフェノール、ナフタレン、及び脂肪族型エポキシを含む。商業的に入手可能な材料は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(Epiclon830LVP,830CRP,835LV,850CRP)として大日本インク化学工業社から入手できる材料と、ナフタレン型エポキシ(Epiclon HP4032)として大日本インク化学工業社から入手できる材料と、脂肪族エポキシ樹脂(AralditeCY179,184,192,175,179)としてチバスペシャリティケミカルから入手できる材料と、脂肪族エポキシ樹脂(Epoxy1234,249,206)としてユニオンカーバイドから入手できる材料と、脂肪族エポキシ樹脂(EHPE−3150)としてダイセル化学工業社から入手できる材料を含む。他の適合するエポキシ樹脂は、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール型エポキシ樹脂、反応性エポキシ希釈剤及びそれらの混合物を含む。
【0069】
適合するシリコーン化オレフィン樹脂は、シリコーンとジビニル材料との選択的ヒドロシル化反応により得られ、以下の一般式を有する。
【0070】
【化20】

【0071】
ここで、nは2以上、nは1以上、及びn>nである。これらの材料は商業的に入手可能であり、例えば、ナショナルスターチアンドケミカルから入手できる。
【0072】
適合するシリコーン樹脂は、以下の一般式を有する反応性シリコーン樹脂を含む。
【0073】
【化21】

【0074】
ここで、nは0又はあらゆる整数、XとXは、水素、メチル、アミン、エポキシ、カルボキシル、ヒドロキシル、アクリレート、メタクリレート、メルカプト、フェノール、又はビニル官能基、RとRは−H、−CH、ビニル、フェニル、又は2個以上の炭素原子を有するあらゆる炭化水素構造である。商業的に入手できる材料は、KF8012,KF8002,KF8003,KF−1001,X−22−3710,KF6001,X−22−164C,KF2001,X−22−170DX,X−22−173DX,X−22−174DX,X−22−176DX,KF−857,KF8001,X−22−3367及びX−22−3939Aとしてシンエツシリコーンインターナショナルトレーディング(上海)から入手できる材料を含む。
【0075】
適合するスチレン樹脂は、以下の一般式の樹脂を含む。
【0076】
【化22】

【0077】
ここで、nは1以上、Rは−H又は−CH、Xは脂肪族基である。具体的なXのエンティティは、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、及びカルボニル、カルボキシル、アミド、カルバメート、尿素又はエーテル等の官能基を含む単純炭化水素を含む。これらの樹脂は、商業的に入手可能であり、例えば、ナショナルスターチアンドケミカル社又はシグマアルドリッチ社から入手できる。
【0078】
適合するシアネートエステル樹脂は、以下の一般式の樹脂を含む。
【0079】
【化23】

【0080】
ここで、nは1以上、Xは炭化水素基である。具体的なXの実体は、ビスフェノール、フェノール又はクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル又はポリエステルを含む。商業的に入手可能な材料は、AroCyL−10,AroCyXU366,AroCyXU371,AroCyXU378,XU71787.02L,XU71787.07Lとしてハンツマン(Huntsman LLC.)から入手できる材料と、PrimasetPT30,PrimasetPT30S75,PrimasetPT60,PrimasetPT60S,PrimasetBADCY,PrimasetDA230S,PrimasetMethylCy,PrimasetCECYとしてロンザグループ社(Lonza Group Limited.)から入手できる材料と、2−アリルフェノールシアネートエステル、4−メトキシフェノールシアネートエステル、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビスフェノールAシアネートエステル、ジアリルビスフェノールAシアネートエステル、4−フェニルフェノールシアネートエステル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル(cyanatophenyl))エタン、4−クミルフェノールシアネートエステル、1,1−ビス(4−シアナテオフェニル(cyanateophenyl))エタン、2,2,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカンフルオロオクタンジオールジシアネートエステル、及び4,4’−ビスフェノールシアネートエステルとしてオークウッドプロダクト社(Oakwood Products, Inc.)から入手できる材料を含む。
【0081】
コーティング組成物に適合するポリマーは、さらに、ポリアミド、フェノキシ、ポリベンゾオキサジン、アクリレート、シアネートエステル、ビスマレイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ベンゾオキサジン、ビニルエーテル、シリコーン化オレフィン、ポリオレフィン、ポリベンゾオキシゾール、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリイソブチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ(2−ビニルピリジン)、シス−1,4−ポリイソプレン、3,4−ポリクロロプレン、ビニル共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリホルムアルデヒド、ポリアセトアルデヒド、ポリ(b−プロピオールアセトン)、ポリ(10−デカノエート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカプロラクタム、ポリ(11−ウンデカノアミド)、ポリ(m−フェニレン−テレフタルアミド)、ポリ(テトラメチレン−m−ベンゼンスルホンアミド)、ポリエステルポリアクリレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、フッ素化ポリミド、ポリイミドシロキサン、ポリ−イソシンドロキナゾリンジオン、ポリチオエーテルイミドポリ−フェニル−キノサリン(quinoxaline)、ポリキニキサロン(polyquuinixalone)、イミド−アリルエーテルフェニルキノサリン共重合体、ポリキノサリン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリノルボルネン、ポリアリレンエーテル、ポリシラン、パリレン、ベンゾシクロブテン、ヒドロキシベンゾオキサゾール共重合体、ポリシラリレンシロキサン、及びポリベンゾイミダゾールを含む。
【0082】
コーティング組成物に含有させるのに適した他の材料は、モノビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体等のゴム状ポリマーを含み、例えば、スチレン−ブタジエン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)がある。
【0083】
コーティング組成物に含有させるのに適した他の材料は、例えば、エチレンメタクリレート、エチレンn−ブチルアクリレート、及びエチレンアクリル酸等のエチレン−酢酸ビニルポリマー、他のエチレンエステル及び共重合体、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル及びそのランダム共重合体、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール及びその重合体を含む。
【0084】
適合する熱可塑性ゴムは、カルボキシ末端ブタジエンニトリル(CTBN)/エポキシ付加物、アクリルゴム、ビニル末端ブタジエンゴム、及びニトリルブタジエンゴム(NBR)を含む。一態様として、CTBNエポキシ付加物は、約20〜80重量%のCTBNと約20〜80重量%のジグリシジルエーテルビスフェノールA:ビスフェノールAエポキシ(DGEBA)とから成る。ノベオン社(Noveon Inc.)からは種々のCTBN材料が入手でき、大日本インキ化学工業社とシェルケミカルからは種々のビスフェノールAエポキシ材料が入手できる。NBRゴムは、ゼオン社(Zeon Corporation)から商業的に入手できる。
【0085】
適合するシロキサンは、主鎖と、透過性を付与する少なくとも1つのシロキサン部分及び新しい共有結合を形成するために反応可能な少なくとも1つの反応性部分を含む該主鎖からのペンダント部分と、からなるエラストマーポリマーを含む。適合するシロキサンの例は、以下のものから製造されるエラストマーポリマーを含む:3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル及びシアノエチルアクリレート;3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、及びアクリロニトリル;及び3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、及びシアノエチルアクリレートを含む。
【0086】
硬化剤が必要な場合、その選択は、用いるポリマーの化学的性質及び採用するプロセス条件に依存する。硬化剤として、組成物は、芳香族アミン、脂環式アミン、脂肪族アミン、第三ホスフィン、トリアジン、金属塩、芳香族ヒドロキシ化合物又はこれらの組み合わせを用いることができる。その触媒の例は、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−プロピル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−グアナミノエチル−2−メチルイミダゾール及びイミダゾールとトリメリット酸との付加生成物等のイミダゾール類、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジメチル−p−アニシジン、p−ハロゲノ−N,N−ジメチルアニリン、2−N−エチルアニリノエタノール、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N−メチルピペリジン等の第3アミン類、フェノール、クレゾール、キシリノール、レゾルシン及びフロログルシン等のフェノール類、ナフタレン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフタレン酸亜鉛、ジンクオクトレート(zinc octolate)、マレイン酸ジブチル錫、ナフタレン酸マンガン、ナフタレン酸コバルト、及びアセチルアセトン鉄等の有機金属塩類、塩化第二錫、塩化亜鉛、及び塩化アルミニウム等の無機金属塩類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラ−クロロベンゾイルパーオキサイド、及びジ−t−ジパーフタレート等のパーオキサイド類、カルボン酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、ラウリル酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロプロメリット酸無水物、及びヘキサヒドロトリメリット酸無水部等の酸無水物類、アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロパン、m,m’−アゾキシスチレン、ヒドロゾン(hydrozones)、及びそれらの混合物等のアゾ化合物類を含む。
【0087】
一態様として、トリフェニルホスフィン、アルキル置換イミダゾール、イミダゾリウム塩、オニウム塩、第4ホスホニウム化合物、ホウ酸オニウム、金属キレート、1,8−ジアザシクロ[5.4.0]ウンデクス−7−エン又はそれらの混合物から成る群から、硬化促進剤を選択することができる。
【0088】
別の態様では、ラジカル型又はイオン型の硬化樹脂のいずれを選択するかに応じて、フリーラジカル型開始剤又はカチオン型開始剤のいずれかを用いることができる。フリーラジカル型開始剤が使用される場合、効果的な量が存在する。効果的な量は、一般的に有機化合物(すべてのフィラーを除く)の0.1〜10重量%である。適切なフリーラジカル型開始剤は、ブチルペルオクトエート及びジクミルパーオキサイド等のパーオキサイド、及び、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパンニトリル)及び2,2’−アゾビス(2−メチル−ブタンニトリル)等のアゾ化合物を含む。
【0089】
カチオン型開始剤が使用される場合、効果的な量が存在する。効果的な量は、一般的に有機化合物(すべてのフィラーを除く)の0.1〜10重量%である。好ましいカチオン型開始剤は、ジシアンジアミド、フェノールノボラック、アジピン酸ジヒドラジド、ジアリルメラミン、ジアミノマルコニトリル、BF3−アミン錯体、アミン塩及び変性イミダゾール化合物を含む。
【0090】
金属化合物も、シアネートエステルシステムの硬化促進剤として用いることができ、限定されるものではないが、金属ナフテネート、金属アセチルアセトネート(キレート)、金属オクトエート、金属アセテート、金属ハライド、金属イミダゾール錯体及び金属アミン錯体を含む。
【0091】
コーティング組成に含めることができる他の硬化促進剤は、トリフェニルホスフィン、アルキル置換イミダゾール、イミダゾリウム塩、及びオニウムホウ酸を含む。
【0092】
いくつかのケースでは、1種以上の硬化剤を用いることが望ましい。例えば、組成物の中にフリーラジカル型硬化性樹脂及びイオン型硬化性樹脂の両方が用いられる場合には、
カチオン型及びフリーラジカル型の開始剤の両方が望ましい。これらの組成物では、それぞれの樹脂種に対して有効な量の開始剤を含む。そのような組成物は、例えば、UV照射を行いカチオン型開始により硬化プロセスを開始させ、後のプロセス工程で、加熱してフリーラジカル型開始により硬化プロセスを完結させることができる。
【0093】
コーティング材料が溶媒を含む場合には、乾燥及び/又はBステージ化工程が一般的に必要である。これを達成するのに必要な時間と温度は、使用される溶媒及びコーティング組成物により変化し、過度の実験を行うことなく実施者により決定することができる。乾燥及び/又はBステージ化は、塗膜の硬化とは別の工程として実施可能であり(塗膜が硬化される場合)、あるいは別のプロセス工程として実施可能である。
【0094】
コーティング材料が溶媒を含まない場合、コーティング材料をBステージ化すること又は部分的に早くすることがさらに望ましい。非粘着状態へのコーティング膜の硬化を促進させるために、これを硬化の前に行うことができ、それにより、コーティング膜が完全に硬化する前に追加の処理を行うことができる。
【0095】
コーティング剤の目的及び組成によっては、コーティング剤は硬化を必要とし又は必要としない。コーティング膜が硬化を必要としない場合、個別のプロセス工程として又はソルダーリフロー等の他の処理操作と共に、のいずれかにより完結することができる。コーティングの目的、コーティング剤の組成、及び採用される製造プロセスに応じて、硬化をウェーハレベル又はダイレベルで行うことができる。
【0096】
硬化工程が用いられる場合、選択された特定の樹脂の化学的性質及び硬化剤によるが、硬化剤の温度は一般的に80〜250℃の範囲であり、硬化は数秒又は120分までの範囲の時間で達成される。各コーティング組成物の時間及び温度の硬化プロファイルは変化し、異なる組成物は、特定の産業製造プロセスに適合する硬化プロファイルを提供できるように設計可能である。
【0097】
最終用途に応じて、コーティング組成物の中に1以上のフィラーを含有させることができ、レオロジー特性の改良及び応力低減のために通常添加される。ウェーハの活性面にコーティングするためには、フィラーは電気的に非導電性である必要がある。適合する非導電性フィラーの例としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、バーミキュライト、雲母、珪灰石、炭酸カルシウム、チタニア、砂、ガラス、硫酸バリウム、ジルコニウム、カーボンブラック、有機フィラー、及びテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン化エチレンポリマーを含む。フィラー粒子は、ナノサイズから数mmの範囲のあらゆる適切な大きさを有する。特定の最終用途のための大きさの選択は、当業者の専門技術の範囲内である。フィラーは、全組成物の0〜95重量%の量存在することができる。
【0098】
一態様として、融剤がコーティング組成物に添加される。融剤は、まず金属酸化物を除去し、そしてソルダーバンプの再酸化を防止する。融剤の選択は、樹脂の化学的性質及び用いるバンプの冶金学的性質(metallurgy)に依存する。しかしながら、融剤に対する重要な要求のいくつかは、融剤がコーティング樹脂の硬化に影響を与えないこと、腐食性が強くないこと、リフローの間は気体を除き過ぎないこと、樹脂に対する親和性を有すること、及び/又は融剤残渣が樹脂に対して親和性を有すること、である。
【0099】
適合する融剤の例は、1以上の水酸基(−OH)、又はカルボキシル基(−COOH)又はその両方を含む化合物、例えば、有機カルボン酸、無水物及びアルコールであり、具体例としては、ロジンガム、ドデカン二酸(アルドリッチからコーフリーM2(Corfree M2)として商業的に入手可能)、セバシン酸、ポリセバシン酸ポリ無水物、マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、エチレングリコール、グリセリン、酒石酸、アジピン酸、クエン酸、リンゴ酸、グルタル酸、グリセロール、3−[ビス(グリシジルオキシメチル)メトキシ]−1,2−プロパンジオール、D−リボース、Dーセロビオース、セルロース、3−シクロヘキセン−1,1−ジメタノール;アミン系の融剤、例えば、1から10の炭素原子を有する脂肪族アミン、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−アミルアミン、sec−アミルアミン、2−エチルブチルアミン、n−ヘプチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−オクチルアミン、及びt−オクチルアミン;融剤としての特性を備えた架橋剤を用いるエポキシ樹脂を含むものである。別の融剤は、有機アルコールを含む。融剤には、(i)芳香環、(ii)−OH基、−NHR基(Rは水素または低級アルコール)、又は−SH基の少なくとも1種、(iii)芳香環に対する電子吸引性置換基又は電子供与性置換基、及び(iv)イミノ基無し、を有する化合物も用いることができる。融剤には効果的な量が存在し、効果的な量は1〜30重量%の範囲である。
【0100】
別の態様として、カップリング剤をコーティング組成物に添加することができる。一般的には、カップリング剤は、シランであり、例えば、エポキシ型シランカップリング剤、アミン型シランカップリング剤、又はメルカプト型シランカップリング剤である。カップリング剤が使用される場合、効果的な量で使用される。一般的な量は、5重量%までの量である。
【0101】
さらに別の態様として、界面活性剤をコーティング組成物に添加することができる。適合する界面活性剤は、有機アクリルポリマー、シリコーン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体、エチレンジアミンベースのポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオールベースのポリオキシアルキレン、脂肪族アルコールベースのポリオキシアルキレン、脂肪族アルコールポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及びそれらの混合物を含む。界面活性剤が使用される場合、一般的な効果的な量は、5重量%までの量である。
【0102】
別の態様として、コーティング組成物に湿潤剤を含有させることができる。湿潤剤の選択は、適用の必要条件及び用いる樹脂の化学的性質に依存する。湿潤剤が使用される場合、効果的な量が使用され、一般的な効果的な量は、5重量%までの量である。適合する湿潤剤の例は、スリーエムからFluorad FC−4430として入手できるフッ素系界面活性剤、ロームアンドハースからClariant Fluowet OTN、BYK W−990、Surfynol104界面活性剤、Crompton Silwet L−7280、Triton X100として入手できる湿潤剤、好ましくはMwが240より大きいプロピレングリコール、γ−ブチロラクトン、キャスターオイル、グリセリン又は他の脂肪酸、及びシランを含む。
【0103】
さらに別の態様として、コーティング組成物に流動性コントロール剤を含有させることができる。流動性コントロール剤の選択は、塗布の必要条件及び用いる樹脂の化学的性質に依存する。流動性コントロール剤が使用される場合、効果的な量が存在し、効果的な量は5重量%までの量である。適合する流動性コントロール剤の例は、カボット(Cabot)からCab−O−Sil TS720として入手できるもの、デグサ(Degussa)からAerosil R202又はR972として入手できるもの、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、又は煙霧金属酸化物を含む。
【0104】
別の態様として、コーティング組成物に接着促進剤を含有させることができる。接着促進剤の選択は、塗布の必要条件及び用いる樹脂の化学的性質に依存する。接着促進剤が使用される場合、効果的な量が存在し、効果的な量は5重量%までの量である。適合する接着促進剤の例は、例えばダウコーニングからZ6040エポキシシラン又はZ6020アミンシランとして入手できるシランカップリング剤;OSIシルクエスト(Silquest)からA186シラン、A187シラン、A174シラン又はA1289シランとして入手できるもの;デグサからOrganosilane S1264として入手できるもの;ジョーホクケミカルからジョーホクケミカルCBT−1 Carbobenzotriazoleとして入手できるもの;機能性トリアゾール類、チアゾール類、チタネート類、ジルコネト類を含む。
【0105】
さらなる態様として、脱泡剤(デフォーマー)をコーティング組成物に含有させることができる。脱泡剤の選択は、塗布の必要条件及び用いる樹脂の化学的性質に依存する。脱泡剤が使用される場合、効果的な量が存在し、効果的な量は5重量%までの量である。適合する脱泡剤の例は、ダウコーニングから入手できるAntifoam1400、Dupont Modoflow、及びBYK A−510を含む。
【0106】
いくつかの態様では、これらの組成物は、接着力を向上させ、粘着性を導入するために粘着付与樹脂を配合させる;粘着付与樹脂の例は、自然生成樹脂(naturally occurring resins)及び変性自然生成樹脂;ポリテルペン樹脂;フェノール変性テルペン樹脂;クマロン−インデン樹脂;脂肪族及び芳香族石油系炭化水素樹脂;フタレートエステル;水素添加炭化水素、水素添加ロジン及び水素添加ロジンエステルを含む。
【0107】
いくつかの態様では、他の成分を含ませることができ、例えば、液体のポリブテン又はポリプロピレン等の希釈剤;パラフィン及びマイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、ポリエチレングリース、水素添加の動物性脂肪、魚脂及び植物性脂肪、ミネラルオイル及び合成ワックス、ナフテン酸又はパラフィン酸ミネラルオイルを挙げることができる。
【0108】
いくつかの態様として、硬化させたコーティング膜の物理的特性を悪化させることなく、粘度の増大を段々と(incrementally)遅らせるために、一官能性の反応性希釈剤を含ませることができる。他の希釈剤も使用できるが、適合する希釈剤は、p−tert−ブチル−フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリセロールジブルシジル(dibycidyl)エーテル、アルキルフェノールのグリシジルエーテル(カードライト社(Cardolite Corporation)からCardolite NCとして商業的に入手できる)、及びブタンジオジグリシジルエーテル(アルドリッチからBDGEとして入手できる)を含む。
【0109】
安定化剤、酸化防止剤、衝撃改良剤等の他の添加剤、及び着色剤も、当業界で知られている種類及び量を、コーティング材料配合物に添加することができる。
【0110】
樹脂を容易に溶解させ、25℃〜200℃の適切な沸点範囲を有する一般的な溶媒を、この用途に用いることができる。使用できる溶媒の例は、ケトン、エステル、アルコール、エーテル、及び安定な他の一般的な溶媒を用いることができる。適合する溶媒は、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)、及び4−メチル−2−ペンタノンを含む。
【0111】
コーティング剤が硬化性である場合、熱曝露、紫外線(UV)照射、マイクロ波、又はこれらの組み合わせにより硬化させることができる。硬化条件はコーティング剤の配合に合わせることができ、実施者により容易に決定されることができる。さらに、塗布の必要条件に応じて、コーティング剤をBステージ化したりあるいはしなかったりすることができる。
【0112】
ウェーハの前面又は活性面を、バンプ付きウェーハに対し材料を均一に塗布可能なあらゆる方法を用いて塗布することができ、限定されるものではないが、その方法は、ステンシル印刷、スピンコーティング、カーテンコーティング、メニスカスコーティング、又はジェットディスペンシングを含む。コーティングの温度、圧力、速度及び他のコーティング条件は、用いる方法及び塗布されるコーティング剤により指示され、過度の実験を行うことなく、熟練した実施者により決定されることができる。用いる塗布方法、用いるコーティング材料、及び特定の半導体パッケージの必要条件に応じて、ソルダーバンプの高さより低い、あるいはその高さよりも高い位置のいずれかの厚さとなるようにウェーハにコーティング材料が塗布される。コーティング材料が溶媒を含んでいない場合、コーティング層の厚さは、バンプの露出した部分の高さと一般的には同等である。コーティング材料が溶媒を含んでいる場合、湿ったコーティング層の厚さは、ソルダーバンプの露出した部分の高さよりも一般的に高い、すなわち、コーティング層は、撥水材料を部分的又は完全に覆う。溶媒が除去された後、最終的なコーティング層の厚さは、ソルダーバンプの露出した部分と一般的に同等である。
【0113】
コーティング材料を硬化させることにより、後面研削(backgrinding)、後面保護材料の適用、ダイシング、シンギュレーション、及びダイ取付を含む以降の製造工程を可能とする。使用される硬化方法は、選択されたコーティング材料及び使用される製造方法に依存する。熱可塑性コーティング剤の場合、塗布されたウェーハは、熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度まで冷却される。Bステージ化可能なコーティング剤の場合、コーティング剤を熱又は紫外線放射のいずれかによりBステージ化することにより、硬化は達成される。熱硬化性コーティング材料は、コーティング剤の硬化を達成するために、熱及び/又は紫外線放射に曝露させることにより硬化される。コーティング剤を硬化させるために必要な条件は、過度の実験を行うことなく熟練した実施者により容易に決定される。
【0114】
必要に応じ、一旦コーティング剤が硬化されてしまえば、撥水材料をバンプの上面から除去することができる。一般的には、撥水材料を熱を用いて溶融及び/又は蒸発させることにより除去は達成される。熱的にBステージ化可能な及び/又は熱的に硬化可能なコーティング材料が用いられた場合、コーティング材料を硬化させるために用いたのと同じ加熱プロセスを用いて、又は別の加熱工程を用いて撥水材料の除去を実施することができる。バンプの冶金学的性質、パッケージの配置、撥水材料の性質、及び用いる取付装置に応じて、ダイ取付及びソルダーバンプリフローの前に撥水材料を除去することを不要とすることができる。いくつかのケースでは、例えば熱圧縮結合を用いる場合、ダイが基板に取り付けられ、はんだ接合が形成されている場合には、熱、圧力又はその2者の組み合わせにより、撥水材料を物理的に置換することができる。撥水材料は、プラズマクリーニング(イオン化されたガスを用いるエッチング)あるいは界面活性剤又は石鹸を用いた超音波バスで洗浄することにより除去することも可能である。
【0115】
コーティング剤を硬化させた後、ウェーハは、従来の方法を用いて、切断され個々のダイにシンギュレートされる。ピックアンドプレイス及び熱圧縮結合を含む従来のあらゆる方法を用いて、塗布されたダイは取り付けられる。ピックアンドプレイスの場合、ソルダーオンパッド又はフラックスオンパッド結合のいずれかを、位置決め及びリフロー時のフラクシングを補助するために実施することができる。
【実施例】
【0116】
実施例1〜5は、13重量%のビスフェノールAエポキシ、22重量%のγ−ブチロラクトン及び51重量%のシリカフィラーを含むコーティング配合物を用いて調製した。コーティング配合物の残りの14重量%は、硬化剤、接着促進剤、及び接着剤配合物に一般的に用いられる他の添加剤の組み合わせであった。コーティング剤の粘度は5100cPでチキソトロピー指数は1.5であった。ウェーハは、本発明の方法を使用せずに(すなわち、バンプの頂部に撥水材料を塗布せずに)スピンコーティングにより塗布され、比較例1として示される。本発明の方法は、実施例2から4に用いた。実施例2では、240ミクロンのバンプを有するウェーハを用い、バンプの全面を撥水材料で被覆した。実施例3では、バンプは130ミクロンであり、バンプの頂部部分のみに撥水材料を塗布した。実施例4では、バンプは高さが450ミクロンであり、バンプ高さの頂部200ミクロンに撥水材料を塗布した。実施例5では、表面エネルギー特性のために3つのワックスを試験し、本発明の方法を用いたそれらの相対的なはじき特性を比較した。
【0117】
比較例1−撥水剤なし
【0118】
高さ240ミクロンで300ミクロンのピッチで配置されたSn/Ag/Cuバンプがバンプ付けされた、厚さ450ミクロンの6”シリコンウェーハに、200ミクロンの厚さとなるように溶媒系エポキシ材料をスピンコートした。窒素雰囲気下で室温、350rpmで15秒、次いで800rpmで5秒の塗布サイクルのプロファイルでスピンコーティングを行った。135℃で20分のBステージ工程で溶媒を除去して、硬化した非粘着性のコーティング膜を形成した。次いで、反射電子検出器を備えたSEMでウェーハとバンプを観察した。バンプは、SEM映像では黒く見えるコーティング材料によってほとんど完全に覆われ、非常に少量のソルダーバンプは白色であった。
【0119】
実施例2−発明の方法(撥水材料を使用)
【0120】
高さ240ミクロンで300ミクロンのピッチで配置されたSn/Ag/Cuバンプがバンプ付けされた、厚さ450ミクロンの6”シリコンウェーハを、本発明の方法を用いて作製した。用いた撥水材料は、商品名Parowaxで販売され、融点が53℃のパラフィンワックスである。バンプの全面積を覆うように、パラフィンワックスで満たされたペーパーパッドに対して、ウェーハのバンプ付き面を135℃でプレスすることにより、撥水材料を塗布した。プレス深さはシム(shims)により調整した。室温まで冷却することにより、ワックスを硬化させ、バンプ上に平坦なコーティング膜を形成した。次いで、反射電子検出器を備えたSEMでウェーハとバンプを倍率45倍から150倍で観察した。ワックスはソルダーバンプを覆っており、映像では黒く見える。ウェーハの前(バンプ付き)面は、溶媒系エポキシ材料でスピンコートされた。スピンコーティングは、窒素雰囲気下で室温、350rpmで150秒、次いで800rpmで5秒の塗布サイクルのプロファイルでスピンコーティングを行った。135℃で20分のBステージ工程で溶媒を除去して、硬化した非粘着性の厚さ190ミクロン(ウェーハの面から上に測定した)のコーティング膜を形成した。Bステージ化は、ワックスも溶融させ、ソルダーバンプの先端の上に最小のワックス残渣が残ったバンプを露出させた。次いで、反射電子検出器を備えたSEMでウェーハとバンプを倍率45倍から150倍で観察した。バンプは、ほとんど完全に露出しており(SEM映像では白く見える)、最小のワックス又はコーティング剤の残渣が残っているのが見えた(SEM映像では黒く見える)。
【0121】
実施例3−発明の方法(撥水材料を使用)
【0122】
高さ130ミクロンで190ミクロンのピッチで配置されたSn63/37Pbバンプがバンプ付けされた、厚さ450ミクロンの6”シリコンウェーハを、本発明の方法を用いて作製した。用いた撥水材料は、商品名Parowaxで販売され、融点が53℃のパラフィンワックスである。ウェーハのバンプ付き面を、パラフィンワックスで満たしたペーパーパッドに対して135℃でプレスすることにより、ソルダーバンプの頂部に対し、深さ50ミクロン(バンプの頂部からウェーハの方向に測定して)まで撥水材料を塗布した。プレス深さはシムにより調整した。室温まで冷却することにより、ワックスを硬化させて、バンプ上に平坦なコーティング膜を形成した。次いで、反射電子検出器を備えたSEMでウェーハとバンプを倍率150倍で観察した。ワックスはソルダーバンプの頂部部分を覆っており、映像では黒く見え、ソルダーバンプは白く見える。次いで、ウェーハの前(バンプ付き)面を溶媒系エポキシ材料でスピンコートした。窒素雰囲気下で室温、800rpmで60秒、次いで1200rpmで30秒の塗布サイクルのプロファイルでスピンコーティングを行った。135℃で20分のBステージ工程で溶媒を除去して、硬化した非粘着性の厚さ90ミクロン(ウェーハの面から上に測定した)のコーティング膜を形成した。Bステージ化は、ワックスも溶融させ、ボールの先端の上に最小のワックス残渣が残ったバンプを露出させた。次いで、反射電子検出器を備えたSEMでウェーハとバンプを倍率150倍で観察した。バンプは、ほとんど完全に露出しており(SEM映像では白く見える)、最小のワックス又はコーティング剤の残渣が残っているのが見えた(SEM映像では黒く見える)。
【0123】
実施例4−発明の方法(撥水材料を使用)
【0124】
高さが475ミクロンと測定され800ミクロンのピッチで配置されたSn/Ag/Cuバンプがバンプ付けされ、厚さが450ミクロンと測定された1個のバンプ付きシリコンダイを、本発明の方法を用いて作製した。用いた撥水材料は、商品名Parowaxで販売され、融点が53℃のパラフィンワックスである。ダイのバンプ付き面を、パラフィンワックスで満たしたペーパーパッドに対して、100℃で手でプレスすることにより、ソルダーバンプの頂部に対し、約200ミクロン(バンプの頂部からウェーハの方向に測定して)の深さまで撥水材料を塗布した。室温まで冷却させることにより硬化させたワックスは、バンプ上に平坦なコーティング膜を形成した。次いで、反射電子検出器を備えたSEMでダイとバンプを倍率35倍で観察した。ワックスはソルダーバンプの先端を覆い、映像では黒く見え、ソルダーバンプは白く見える。ダイの前(バンプ付き)面を溶媒系エポキシ材料でスピンコートした。周囲大気雰囲気下で室温、350rpmで150秒、次いで800rpmで5秒の塗布サイクルのプロファイルでスピンコーティングを行った。135℃で30分のBステージ工程で溶媒を除去して、硬化した非粘着性のコーティング膜を形成した。Bステージ化は、ワックスも溶融させ、ボールの先端の上に最小のワックス残渣が残ったバンプを露出させた。次いで、反射電子検出器を備えたSEMでウェーハとバンプを倍率35倍で観察した。バンプは、ほとんど完全に露出しており(SEM映像では白く見える)、最小のワックス又はコーティング剤の残渣が残っているのが見えた(SEM映像では黒く見える)。
【0125】
実施例5−表面エネルギー特性
【0126】
バンプからのコーティング材料のはじきを生成させることに関しての撥水材料の有効性は、コーティング材料と撥水材料との間の、分散性、(又は非極性)及び極性の相互作用の両方に影響される。これらの相互作用の効果は、材料の全表面エネルギー特性を実行することにより確認及び定量がなされた。
【0127】
表面エネルギーの計算のために、クルス(Kruss)表面張力計を用いて接触角を測定した。公知の表面エネルギーを有する液体を用い、3種の撥水材料(パラフィンワックス パラワックス(Parawax)、クラルス CSX マイクロブレンド35(Clarus CSX Microblend 35)、及びアキュブレンド M300(Accublend M300)について接触角測定を行った。用いた液体は、脱イオン水、ヘキサン、グリセロール、ヘキシルエステルビスマレイミド、及びメチルエチルケトンである。撥水材料は、厚さ2cmで平坦な円形ディスクに型取りされた。液体の静止滴(<直径2mm)を、クルス表面張力計の試料ステージのディスクの表面に載せた。すべての測定は室温で行った。CCDビデオカメラモジュールカメラを用いてディスク表面の液滴を撮影した。クルスの滴形状解析ソフトウェアを用いて、ベースラインの検出及びタンジェント−1法による接触角測定を行った。測定された接触角を表1に示す。
【0128】
【表1】

【0129】
同様に、実施例1から3で使用された溶媒系エポキシコーティング材料(材料A)について、公知の表面特性を有する以下の基板に対する接触角のための試験を行った:ガラス、シリコン、ビスマレイミド−トリアジン(BT)、ナイロン66、及びポリエチレン。材料A(未硬化)の静止滴を室温で、クルス表面張力計の試料ステージのディスクの表面に載せ、接触角を測定した。接触角を表2に示す。
【0130】
【表2】

【0131】
接触角測定は、表面特性を計算するために用いた。全表面エネルギーは、非極性の分散成分(γLWで表される)、及び極性成分(γは酸性成分、γは塩基性成分)に分解された。液体(L)と固体(S)との間の測定された接触角θを用い、接触角と固体/液体表面特性とを関係付けるために、以下の式を使用した。
【0132】
【数1】

【0133】
この例では、固体又は液体のいずれかの表面特性(γLW、γ及びγ)、及び接触角θを、公知の特性を有する液体/固体について少なくとも3回測定を行った。これにより、未知の固体/液体の3つの表面特性(γLW、γ及びγ)の計算が可能となる。これらの計算結果を表3に示す。
【0134】
【表3】

【0135】
はじき(又は撥水性)特性と表面エネルギー特性との相関を調べるために、3種の撥水材料を用いて、240ミクロンのバンプを備えたダミーダイに対するはじき効果を検討した。ウェーハのバンプ付き面をパラフィンワックスで満たしたペーパーパッドに対して135℃でプレスすることにより、バンプの全表面が覆われるように、ダイ上のバンプの頂部部分を塗布した。3種の撥水材料(パラフィンワックス パラワックス(Parawax)、クラルス CSX マイクロブレンド35(Clarus CSX Microblend 35)、及びアキュブレンド M300(Accublend M300)のそれぞれを用いて試料を作製した。プレス深さはシムにより調整した。室温まで冷却すると、ワックスは硬化して、バンプ上に平坦なコーティング膜を形成した。次に、材料Aを、これらダイのそれぞれの上にスピンコートした。スピンコートのプロファイルは、350rpmで15秒、次いで800rpmで5秒の塗布サイクルを含んでいた。135℃で20分のBステージ工程で溶媒を除去して、硬化した非粘着性のコーティング膜を形成した。
【0136】
ソルダーバンプ先端からのコーティング材料のはじきの程度は、22個のバンプに対し、240ミクロンのバンプ直径に基づき、デジタルグレースケールアナリシスを用いて露出したバンプ面積を計算することにより測定した。露出した平均%バンプ面積は、以下の通りである:パラワックス 97.4%、アキュブレンド M300 53%、及びマイクロブレンド <1%。
【0137】
相対的なはじき特性は、表面エネルギーの傾向(最も小さいものから最も大きいものまで)と一致し、最大のはじき効果を有するワックスは表面エネルギーが小さい。パラフィンワックス パラワックスは、材料Aとの全表面エネルギーの差が最も大きかった。ワックスと材料Aとの間の表面エネルギーの差が最も小さいのは、マイクロブレンドであった。
【0138】
表面エネルギーの分散成分は、試験したすべての撥水材料では同様であったので、はじき特性の差は、材料Aの比較的より塩基性な特性と相互作用するマイクロブレンドのより酸性的な特性にあることは明らかである。これに対し、パラワックスとアキュブレンドは、それらの表面エネルギーにおいて高い酸性成分が欠如しており、そのため比較的塩基性である材料Aをはじくことについてはより効果的である。
【0139】
本発明の多くの変形例や変更例が、本発明の精神及び範囲から逸脱しない範囲で可能であり、そのことは当業者には明らかである。ここに記載した特定の態様は例のためにのみ提示されたものであって、本発明は添付されたクレームの用語のみにより限定されるものであり、それらのクレームの等価物の全範囲についても権利を与えられるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上に堆積されたソルダーバンプを有する、半導体ウェーハの活性面のコーティングプロセスであって、
(a)活性でかつその上に堆積したソルダーバンプを有する前面と、該前面に対向する後面とを有する半導体ウェーハを用意し、
(b)上記ソルダーバンプの頂部部分に撥水材料を塗布し、
(c)上記ウェーハの上記前面をコーティング材料でコーティングし、
(d)上記コーティング材料を硬化させ、そして、
(e)必要により、上記バンプから上記撥水材料を除去する、ことからなるコーティングプロセス。
【請求項2】
上記撥水材料がワックスである請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
上記撥水材料を、ソルダーバンプの全高の5〜100%の間の高さに塗布する請求項1記載のプロセス。
【請求項4】
上記撥水材料の表面エネルギーと上記コーティング材料の表面エネルギーとの間に少なくとも5mN/mの差がある請求項1記載のプロセス。
【請求項5】
上記撥水材料が非極性であり、上記コーティング材料が極性である請求項1記載のプロセス。
【請求項6】
上記撥水材料の融点が40℃〜300℃である請求項1記載のプロセス。
【請求項7】
バンプ付きの上記ウェーハ上のバンプの頂部を上記撥水材料で満たしたパッドの中に浸漬して、上記撥水材料を塗布する請求項1記載のプロセス。
【請求項8】
上記ウェーハ上のソルダーバンプの頂部を液体状態にある撥水材料の溜めの中に浸漬して、上記撥水材料を塗布する請求項1記載のプロセス。
【請求項9】
上記コーティング材料をスピンコーティングにより塗布する請求項1記載のプロセス。
【請求項10】
上記コーティング材料をステンシル印刷により塗布する請求項1記載のプロセス。
【請求項11】
上記コーティング材料が、ビスマレイミド、エポキシ、アクリレート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1記載のプロセス。
【請求項12】
上記コーティング材料がBステージ化できる請求項1記載のプロセス。
【請求項13】
上記コーティング材料が紫外線硬化性である請求項1記載のプロセス。
【請求項14】
前面と該前面に対向する後面を有し、前面が、a)活性で、b)ソルダーバンプがバンプ付けされ、及びc)以下のプロセスでコートされている、半導体ウェーハ:
i)上記ソルダーバンプの頂部部分に撥水材料を塗布し、
ii)上記ウェーハの前面をコーティング材料でコーティングし、
iii)上記コーティング材料を硬化させ、及び
iv)必要に応じて、上記撥水材料を溶融及び/又は蒸発させる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−512023(P2010−512023A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540219(P2009−540219)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/047067
【国際公開番号】WO2008/069805
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany