説明

バンプ形成方法

【解決手段】 レーザ光Lを透過させるマスク部材2の表面に形成された凹部6に未硬化状態の導電性ペーストPを充填する充填工程(a)と、上記マスク部材2と電子部品1とを重ね合わせて上記凹部6に充填された導電性ペーストPと電子部品1の電極4とを重合させる重合工程(b)と、マスク部材2の裏面側からレーザ光Lを照射して上記凹部6内の導電性ペーストPを加熱するとともに冷却することで上記導電性ペーストPを溶融硬化させて上記電極4にバンプ5を形成する形成工程(c)と、マスク部材2にレーザ光Lを照射して、該マスク部材2に付着した導電性ペーストPの残渣物を除去する除去工程(e)とを有している。
【効果】 電子部品への熱影響を軽減し、また上記マスク部材からの残渣物の除去を効率的に行うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバンプ形成方法に関し、詳しくはマスク部材の表面に形成した凹部に未硬化状態の導電性ペーストを充填し、上記導電性ペーストを溶融硬化させて上記電極にバンプを形成するバンプ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスク部材の表面に形成された凹部に未硬化状態の導電性ペーストを充填する充填工程と、上記マスク部材と電子部品とを重ね合わせて上記凹部に充填された導電性ペーストと電子部品の電極とを重合させる重合工程と、上記導電性ペーストを加熱および冷却することで上記導電性ペーストを溶融硬化させて上記電極にバンプを形成する形成工程とを有するバンプ形成方法が知られている。
このようなバンプ形成方法として、上記マスク部材がシリコン製であって、形成工程では重ね合わせたマスク部材および電子部品を加熱する方法が知られている(特許文献1)。
また他のバンプ形成方法として、上記マスク部材に貫通口を形成するとともに、該マスク部材の裏面に透明な支持部材を重合させ、充填工程では上記貫通口に導電性ペーストを充填し、形成工程では支持部材側から導電性ペーストの充填された貫通口の位置にレーザ光を照射して、導電性ペーストを短時間で加熱する方法が知られている(特許文献2)。
また上記特許文献1や特許文献2のバンプ形成方法では、上記マスク部材にはバンプ形成後に導電性ペーストに含まれるフラックスなどの残渣物が付着するため、1回のバンプ形成ごとにマスク部材を洗浄しなければならず、溶剤を用いた洗浄や超音波洗浄が行われている(特許文献1の第0023欄、特許文献2の第0020欄参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3698223号公報
【特許文献2】特許第3385872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のバンプ形成方法の場合、電子部品ごと加熱するため、耐熱性の低い電子部品にバンプを形成できないという問題があり、特許文献2のバンプ形成方法の場合、上記残渣物を除去する際にはマスク部材と支持部材とを分離しなければならず、取り扱いが煩雑であるという問題がある。
また、特許文献1、2のバンプ形成方法では、液体を使用した洗浄を行うことから、洗浄や乾燥のための設備が必要であり電子部品の製造装置が大型化するうえに長い洗浄時間を要するといった問題もある。
このような問題に鑑み、本発明は電子部品への熱影響を軽減し、また上記マスク部材からの残渣物の除去を効率的に行うことの可能なバンプ形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明にかかるバンプ形成方法は、マスク部材の表面に形成された凹部に未硬化状態の導電性ペーストを充填する充填工程と、上記マスク部材と電子部品とを重ね合わせて上記凹部に充填された導電性ペーストと電子部品の電極とを重合させる重合工程と、上記導電性ペーストを加熱および冷却することで上記導電性ペーストを溶融硬化させて上記電極にバンプを形成する形成工程とを有するバンプ形成方法において、
上記マスク部材はレーザ光を透過させる透明素材であって、
上記形成工程において、上記マスク部材の裏面側からレーザ光を照射して上記凹部内の導電性ペーストを加熱し、
上記形成工程の後に、電子部品を離脱させたマスク部材にレーザ光を照射して、該マスク部材に付着した導電性ペーストの残渣物を除去する除去工程を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明によれば、マスク部材を透明素材とするとともに、該マスク部材の表面に凹部を形成することで、レーザ光をマスク部材の裏面側から照射すれば、凹部に充填された導電性ペーストを加熱してバンプを形成することが可能となっている。
このため、耐熱性の低い電子部品に対してもバンプを形成することができ、かつ、マスク部材の取り扱いが簡単であり、またマスク部材に付着した残渣物をレーザ光によって除去することから、液体による洗浄が不要であり、残渣物の除去を効率的に行うことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】電子部品およびマスク部材を示した側面図
【図2】第1実施例にかかるバンプ形成方法の工程を示した図。
【図3】第2実施例にかかるバンプ形成方法の工程を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は本実施例にかかるバンプ形成方法によってバンプが形成された電子部品1と、該バンプ形成方法に使用するマスク部材2を示している。
電子部品1は樹脂やシリコン等からなる絶縁性または半導体の基板3と、該基板3に所定の配列で設けられた複数の金属からなる導電性の電極4とから構成されており、この電子部品1の電極4にはんだからなる導電性のバンプ5を図2に示すバンプ形成方法により形成するようになっている。
上記バンプ5は底辺約50μm、高さ約70μmの4角錐状に形成され、4角錐状に形成することで上記電子部品1を他の電子部品に接合させる際の電気的な接合を確実なものとするようになっている。
上記マスク部材2は、レーザ光を透過させるガラス製となっており、図示上方の表面には上記電極4の配列位置にあわせて複数の凹部6が形成されている。上記凹部6は4角錐の基部がマスク部材2の表面に開口するように形成されている。
そして、マスク部材2の表面および上記凹部6の内面には、所定の厚さ(0.1〜0.5μm程度)でDLC膜7(ダイアモンド膜)が形成されている。このDLC膜7は撥水性を有するとともに、レーザ光を吸収しやすく熱伝導率の高い素材となっている。
【0009】
図2は本実施例にかかるバンプ形成方法の工程図を示したものである。このバンプ形成方法には図示しない電子部品1の製造装置を使用し、この製造装置は図示しない真空チャンバおよび図示しない加熱チャンバを備え、上記電子部品1およびマスク部材2はそれぞれ図示しないロボットによって各チャンバに搬出入されるようになっている。
まず、図2(a)は上記マスク部材2の凹部6に導電性ペーストPを充填する充填工程を示し、この充填工程は上記真空チャンバ内において行われ、上記マスク部材2は上記凹部6が上方を向いた状態で真空チャンバ内に支持される。
上記導電性ペーストPは、粒子状の鉛フリーはんだと、フラックスを含んだ溶剤とから構成され、この充填工程において未硬化のペースト状態で上記マスク部材2の表面に供給されるようになっている。
真空チャンバ内を真空にした状態で、マスク部材2の表面の一端から他端に向けて、スキージ8をマスク部材2の表面に沿って摺動させることで、マスク部材2の表面に形成された上記凹部6に導電性ペーストPが充填されるようになっている。
このとき、真空チャンバは真空状態となっているため、導電性ペーストPが凹部6に充填される際に空気が入り込まないようになっており、バンプ5の形成不良を防止するようになっている。
【0010】
図2(b)はマスク部材2と電子部品1とを重合させる重合工程を示している。
上記充填工程によってマスク部材2の凹部6に導電性ペーストPが充填されると、電極4が下方を向いた状態で電子部品1が真空チャンバ内に搬送され、上記凹部6に充填された導電性ペーストPと電子部品1の電極4とが重合するように位置合わせされて、マスク部材2の上面に載置される。
これにより、電子部品1の電極4には上記導電性ペーストPが付着するが、導電性ペーストPは未硬化の状態であり、電極4にバンプ5が形成されたものとはなっていない。
なお、この重合工程については、上記真空チャンバ内で行っても、上記加熱チャンバ内で行ってもよい。
【0011】
図2(c)は電子部品1にバンプ5を形成する形成工程を示している。
電子部品1とマスク部材2とが重合した状態で加熱チャンバに搬送されると、図示しないレーザ照射手段によりレーザ光Lがマスク部材2側からマスク部材2を透過してDLC膜7に照射される。
これにより、レーザ光Lは上記マスク部材2の表面および凹部6の内面に形成されたDLC膜7に吸収されてDLC膜7が加熱され、DLC膜7を介して凹部6に充填された導電性ペーストPが加熱される。
上記導電性ペーストPがはんだの溶融温度(220℃程度)まで加熱されると、導電性ペーストP内の粒子状のはんだが溶融するとともに表面張力により相互に引きつけあって電極4に密着し、またフラックスが外側に押しやられるようになる。
このとき、レーザ光Lの照射範囲は少なくとも1つの電子部品1に形成された電極4に対応するすべての凹部6が含まれるように設定されており、これにより照射範囲内のすべての凹部6内の導電性ペーストPを一斉に加熱することができるようになっている。
一方、レーザ光Lの照射範囲には凹部6の形成されていないマスク部材2の表面部分も含まれるが、DLC膜7によってレーザ光Lが基板3に直接照射されてしまうのを阻止するため、電子部品1への熱影響が軽減されるようになっている。
このようにしてレーザ光LがDLC膜7に照射され、凹部6内の導電性ペーストPが加熱されてはんだが溶融すると、レーザ照射手段はレーザ光Lの照射を停止する。
すると、凹部6に充填された導電性ペーストPが冷却され、はんだの凝固温度(217℃程度)を下回ると、上記はんだが硬化して電極4に強固に接合し、これにより電極4に4角錐状のバンプ5が形成されることとなる。
【0012】
図2(d)はマスク部材2と電子部品1とを離脱させる離脱工程を示している。
上記形成工程において導電性ペーストPの温度がはんだの凝固温度を下回ると、導電性ペーストPのはんだが硬化して上記バンプ5が形成される一方、上記フラックスは硬化しない状態を維持している。
この状態で電子部品1とマスク部材2とを上下に引き離すようにすると、フラックスが硬化していないことから、バンプ5は容易にマスク部材2の凹部6から離脱し、電子部品1とマスク部材2とを離脱することができる。
その後、さらに導電性ペーストPの温度が下がることでフラックスは硬化するが、マスク部材2の凹部6に付着したフラックスも硬化する。
そして、離脱工程によってマスク部材2より離脱した電子部品1は後工程へと搬送されるようになっている。
【0013】
図2(e)は、マスク部材2からDLC膜7に付着したフラックスを除去する除去工程を示している。
上記図示しない真空チャンバと加熱チャンバとの間には、マスク部材2の搬送経路上に搬送方向と直交する方向に長く伸びたライン状の照射範囲を有する図示しない第2のレーザ照射手段が設けられている。
上記離脱工程によって電子部品1とマスク部材2とを離脱させると、マスク部材2は加熱チャンバから真空チャンバへ搬送される。その際、マスク部材2の表面側から上記第2のレーザ照射手段によりレーザ光Lが照射される。
これにより、すべての凹部6の内面に付着したフラックスはレーザ光Lによって加熱されて蒸発し、マスク部材2から導電性ペーストPの残渣物が除去されることとなる。
そして、マスク部材2が真空チャンバに搬送されて支持された後、次の電子部品1に対してバンプ形成が行われるようになっている。
【0014】
上記実施例によれば、形成工程においてレーザ光Lをマスク部材2の裏面側からマスク部材2を透過させて照射することで、レーザ光Lがマスク部材2の表面に形成した凹部6内の導電性ペーストPを加熱することができ、電子部品1への熱影響を軽減することができる。
また、上記除去工程においてレーザ光Lをマスク部材2に照射することで、凹部6に付着した残渣物としてのフラックスを短時間で除去することができるので、液体を用いた洗浄が不要となり、マスク部材2からの残渣物の除去を効率的に行うことができる。また液体による洗浄装置が必要なくなることから、電子部品1の製造装置を小型化することが可能となる。
さらに、マスク部材2の表面および凹部6の内面にDLC膜7を形成し、該DLC膜7にレーザ光Lを照射することで、DLC膜7を介して導電性ペーストPを加熱することができる。また、DLC膜7により、レーザ光Lが基板3に直接照射されてしまうのを阻止することができる。
そして、レーザ光Lの照射範囲をすべての凹部6が含まれるように設定することで、複数のバンプ5を短時間で同時に形成することが可能であり、効率的にバンプ5を形成することが可能となっている。
【0015】
図3は本発明にかかる第2実施例のバンプ形成方法の工程図を示す。
本実施例で使用する導電性ペーストPにはCuやNiが含まれており、上記形成工程ではバンプ5を形成するために導電性ペーストPを約700℃まで加熱する必要がある。
このため、本実施例では耐熱温度が500℃程度のDLC膜7を利用することができず、本実施例においてマスク部材2の表面には第1実施例のようなDLC膜7は形成されていないものとなっている。
なお、本実施例において、図3(a)(b)(d)(e)の各工程は、上記DLC膜7が形成されていないことを除いて、上記第1実施例と同様の充填工程、重合工程、離脱工程となっているので、詳細な説明は省略する。
【0016】
図3(c)に示す本実施例の形成工程では、図示しないレーザ照射手段は第1実施例と同様、マスク部材2の裏面側からレーザ光Lを照射するが、該レーザ光Lの照射範囲は各凹部6の開口部程度の大きさに設定されている。
そして、レーザ光照射手段は図示しない走査手段によりレーザ光Lの照射位置を凹部6の配列順に切換え、各凹部6内の導電性ペーストPに順次レーザ光Lを照射して、基板3にはレーザ光Lを直接照射しないようにしている。
レーザ光Lが照射されると、凹部6内の導電性ペーストPは上記700℃まで加熱され、これにより導電性ペーストP内のCuやNiが溶融しながらひきつけあうになっている。
そして、レーザ光Lの照射を停止させて導電性ペーストPが冷却することで、電極4にバンプ5が形成されるとともに、フラックスが固まらないうちに図3(d)に示す離脱工程を行い、電子部品1とマスク部材2とを離脱させる。
【0017】
上記第2実施例によれば、融点の高いCuやNiを含んだ導電性ペーストPであっても、これをバンプ5に形成することができ、しかもレーザ光Lの照射によって電子部品1が熱影響を受けることを防止することが可能である。
また、上記第1実施例と同様、レーザ光Lの照射によってマスク部材2に付着したフラックスを除去することができ、効率的にフラックスの除去をおこなうことができるほか、電子部品1の製造装置を小型化することが可能となっている。
【0018】
なお、上記第1実施例における除去工程において、レーザ光の照射範囲を形成工程と同様、複数の凹部6が含まれるように設定してもよい。この場合、形成工程で使用するレーザ照射手段を除去工程にも用いることが可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 電子部品 2 マスク部材
4 電極 5 バンプ
6 凹部 7 DLC膜
P 導電性ペースト L レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク部材の表面に形成された凹部に未硬化状態の導電性ペーストを充填する充填工程と、上記マスク部材と電子部品とを重ね合わせて上記凹部に充填された導電性ペーストと電子部品の電極とを重合させる重合工程と、上記導電性ペーストを加熱および冷却することで上記導電性ペーストを溶融硬化させて上記電極にバンプを形成する形成工程とを有するバンプ形成方法において、
上記マスク部材はレーザ光を透過させる透明素材であって、
上記形成工程において、上記マスク部材の裏面側からレーザ光を照射して上記凹部内の導電性ペーストを加熱し、
上記形成工程の後に、電子部品を離脱させたマスク部材にレーザ光を照射して、該マスク部材に付着した導電性ペーストの残渣物を除去する除去工程を行うことを特徴とするバンプ形成方法。
【請求項2】
上記マスク部材の表面および上記凹部の内面にDLC膜を形成し、
上記形成工程において、レーザ光をマスク部材の裏面側からDLC膜に照射すると、該DLC膜が加熱されて上記凹部内の導電性ペーストを加熱し、
上記除去工程において、レーザ光をマスク部材の表面側からDLC膜に照射し、上記DLC膜に付着した残渣物を除去すること特徴とする請求項1に記載のバンプ形成方法。
【請求項3】
上記形成工程において、レーザ光の照射範囲を複数の凹部にレーザ光が照射されるように設定することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のバンプ形成方法。
【請求項4】
上記形成工程において、レーザ光の照射範囲をひとつの凹部にレーザ光が照射されるように設定するとともに、該レーザ光の照射位置を走査することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のバンプ形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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