説明

バーガイド組立体

【課題】骨を切断するためにバー工具が用いられる処置の間に、そのバー工具を案内するための、バーガイド組立体、を提供する。
【解決手段】バーガイド組立体は、骨に固定できるハウジングと、このハウジングの中に旋回可能に取り付けられるガイドスリーブ(20)と、を備えている。このガイドスリーブは、その長さに沿って延びている穴(40)を有しており、この穴の中に、スリーブから、切断される骨に向かってバー工具の切断部分が延びるように、バー工具が受容可能である。この穴は、ガイドスリーブの中に偏心して配置されている(図3)。さらに、スリーブは、ある軸の周りでの旋回運動のために、ハウジングの中に取り付けられていて、バー工具の切断部分は、その軸に対して垂直である面の中の運動に制限されるようになっている。組立体はまた、ガイドスリーブの中に滑りばめする、バー工具、も含む。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、骨を切除するために、ある面内でバー工具(burr tool)を案内するための、バーガイド組立体、に関連している。
【0002】
整形外科関節プロテーゼの部品のために、骨を調製するために、その骨において、少なくとも一つの平らな表面を設けることが必要になる可能性がある。この平らな表面は、骨を切除することにより、設けることができる。この骨は、この骨への接近手段を与える切開部分を通して挿入される、のこ(saw)、またはバー工具等の、切断器具を用いて、切除できる。上記の切開部分の大きさを最小限にすることは、特に、患者が手術から回復するためにかかる期間を減少させるために、望ましくなる可能性がある。切断器具の大きさは、切開部分の最小限の大きさ、を決定できる。
【0003】
また、切除の場所および寸法を正確に制御できることも、重要になる可能性がある。この理由は、プロテーゼを受容するために、骨は、適当な形状および大きさに作られること、を必要とするからである。不正確に配置されるか、または不正確な大きさに作られた切除部は、骨における関節プロテーゼの部品の嵌合の質を、低下させる可能性がある。関節プロテーゼの部品が正確に嵌合されなければ、そのプロテーゼ関節の有効性を減少させる可能性がある。また、プロテーゼの不正確に嵌合された部品は、プロテーゼ関節および/または骨の、過度の磨耗を生じ、患者に対して不快感をもたらし、そのプロテーゼ関節の寿命を減少させる可能性がある。
【0004】
さらに、切除される骨を囲んでいる組織に対する損傷を最小限にすることが重要になる可能性がある。例えば、周囲の組織に対する何らかの不必要な損傷が、切除の間に、その組織に偶然に接触する切断器具により、生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、バーガイドスリーブと、骨を切除する際にバー工具の経路を制御するために、そのスリーブがその取り付け部の周りを旋回できるように、当該バーガイドスリーブが取り付けられる、ハウジングと、を備えている、バーガイド組立体、を提供している。
【0006】
したがって、一態様において、本発明は、骨を切断するためにバー工具が用いられる処置の間に、そのバー工具を案内するための、バーガイド組立体において、骨に固定できるハウジングと、このハウジングの中に旋回可能に取り付けられるガイドスリーブであって、その長さに沿って延びている穴を有しており、その穴の中にバー工具が、上記スリーブから、切断される骨に向かって、バー工具の切断部分が延びるように、受容されることができ、上記穴は上記ガイドスリーブの中に偏心して配置されており、上記スリーブは、ある軸の周りでの旋回運動のために、上記ハウジングの中に取り付けられていて、バー工具の切断部分は、上記軸に対して垂直である面の中の運動に制限されるようになっている、ガイドスリーブと、このガイドスリーブの中に滑りばめ(sliding fit)する、バー工具と、を備えている、バーガイド組立体、を提供している。
【0007】
骨の切除の間に、上記バー工具が採ることになる経路を、その切除の処置の前に、決定できることは、本発明の利点である。人為的ミスにより、あるいは、切除の処置の間に外科医により経験される困難さにより、引き起こされる切除の不正確さは、本発明により減少させることができる。また、バー工具が採ることのできる経路が固定されているので、外科医は、その所望の経路から、偶然にそれることは有り得ない。また、バーを所望の経路からそらせる可能性のある、骨におけるバー工具の切断作用により生じるバー工具における任意の並進運動力は、スリーブにより、妨げられることになる。
【0008】
好ましくは、上記バー工具は、当該バー工具に回転力を与えるための駆動ユニット、を含んでいる。このバー工具は、上記駆動ユニットにより駆動できるシャフトを含み、このシャフトは、その周面上に切断歯(cutting teeth)を有する切断部分、を有している。好ましくは、この切断部分は、上記駆動ユニットに固定できる端部から離れているシャフトの端部から、駆動ユニットに近いその端部に向かって、上記シャフトの長さの少なくとも25%、さらに好ましくは、上記シャフトの長さの少なくとも30%、特に好ましくは、上記シャフトの長さの少なくとも40%、例えば、上記シャフトの長さの少なくとも50%、に沿って、延びている。
【0009】
このバー工具は、ある面の中での運動に制限されている。このことは、このことにより、バー工具の使用が、骨の平らな切除を達成することを可能にするので、有利である。バー工具は、のこに比べた場合に、比較的に小さな切開部分を必要とすることができるので、骨を切除するために、のこの代わりに、バー工具を使用することは、有利になる可能性がある。患者の不快感、および手術後の回復時間、を減少させること等の、必要とされる切開部分の大きさを最小限にすることに伴う特別な利点がある。
【0010】
好ましくは、上記ガイドスリーブは、上記ハウジングから、取り外すことができる。このハウジングから上記ガイドスリーブを取り外すことができることに伴う、特別な利点、がある。例えば、このことは、上記組立体が使用された後に、その組立体の洗浄を補助できる。さらに、ガイドスリーブをハウジングから取り外すことができる場合に、同一のハウジングの中において、異なるガイドスリーブを使用すること、を可能にできる。例えば、異なる大きさに作られた穴を有するガイドスリーブを、同一のハウジングの中において、使用できる。このことは、切断部(cut)の大きさ、形状、または場所を含む、特別な必要条件に適合するために、異なる大きさに作られたバー工具の使用により骨を切断すること、を可能にする。さらに別の利点は、偏心して配置された穴を有するガイドスリーブに関連して、以下に論じられているような、ハウジングから取り外し可能なガイドスリーブ、により生じる可能性がある。
【0011】
上記ガイドスリーブは、後に取り外しできないように、上記ハウジングの中に、永久的に取り付けることができる。このような配列は、異なる種類のガイドスリーブの使用を可能にしないが、この配列は、異なる大きさに作られたバー工具を使用することがなさそうな場合に、好ましくなる可能性がある。このような配列はまた、上記組立体を使用する際に、上記ガイドスリーブを上記ハウジングの中に取り付けた状態に維持することに関心を持つ必要がない外科医のために、好まれる可能性がある。ガイドスリーブは、多数の標準的な支持機構により、上記ハウジングの中に、永久的に旋回可能に取り付けることができる。例えば、ハウジングにおける、あるいは、ガイドスリーブにおける、2個以上の円筒形の凹部が、これらのガイドスリーブおよびハウジングのうち他方における、対応する円筒形の突出部、を受容することができ、ガイドスリーブが、それらの円筒形の突出部により定められる軸の周りに、旋回するようになっている。
【0012】
上記ガイドスリーブが上記ハウジングから取り外し可能である場合に、このガイドスリーブは、当該ガイドスリーブおよびハウジングにおける構造部(formations)により定められる軸の周りに、当該ガイドスリーブが旋回することを可能にするために、ハウジングにおける構造部と相互作用する構造部、を有することができる。これらの構造部は、2対の協働する突出部および凹部により、設けることができる。例えば、上記ハウジングは、上記ガイドスリーブにおける凹部の中に受容可能である突出部、を有することができる。好ましくは、これらの凹部は丸型であり、例えば、半円形の形状、である。それゆえ、このガイドスリーブは、ハウジングにおける円筒形の突出部により定められる軸の周りに、旋回する。あるいは、円筒形の突出部は、切断される骨に近いガイドスリーブの端部に向けて、設けることも可能であり、凹部は、上記円筒形の突出部がハウジングの中の凹部の中に存在するように、ハウジングの中に設けることが可能である。少なくとも1個の凹部と相互作用する少なくとも1個の円筒形の突出部の使用は、ガイドスリーブが周りで旋回できる、安定した確実な機構、を依然として与えながら、当該ガイドスリーブがハウジングから容易に取り外されること、を可能にする。上記凹部は、上記突出部が、その凹部の中にスライドして入り、かつその凹部からスライドして出ることを可能にするために、一端部において、開口していてよい。
【0013】
上記ガイドスリーブがハウジングから取り外し可能である場合に、このガイドスリーブは、当該ガイドスリーブが、少なくとも2種類の配向で、ハウジングの中に取り付けられることを可能にする構造部、を有することができ、上記スリーブは、上記少なくとも2種類の配向のそれぞれにおいて、それぞれの軸の周りに、旋回可能である。好ましくは、ガイドスリーブは、少なくとも3種類の配向で、このガイドスリーブがハウジングの中に取り付けられることを可能にする構造部、を有することができ、上記スリーブは、上記少なくとも3種類の配向のそれぞれにおいて、それぞれの軸の周りに、旋回可能である。例えば、上記ガイドスリーブは、上記組立体のハウジングにおける構造部に係合できる構造部を、スリーブの側面のそれぞれにおいて、有することができる。このことは、上記ハウジングの中に4種類の配向のいずれか一つで、上記ガイドスリーブを取り付けること、を可能にすることができる。
【0014】
上記のことは、ガイドスリーブが第1の配向で取り付けられる場合に、穴が設置されると、これによって、この穴の長さにより定められる軸が、ガイドスリーブが第2の配向でハウジングの中に取り付けられる場合に上記穴の軸が目的とされる切断面に対して垂直な軸に交差する箇所よりも、上記目的とされる切断面に対して垂直に延びている軸の上にある骨の中のある箇所から遠い箇所において、上記目的とされる切断面に垂直に延びている軸に交差するようにすることができる。さらに、上記スリーブが第3の配向で、取り付けることが可能であって、且つ、取り付けられる場合に、上記穴により定められる軸が上記目的とされる切断面に垂直に延びている軸に交差する箇所は、上記第2の配向におけるよりも、上記目的とされる切断面に対して垂直に延びている軸の上にある骨の中のある箇所に近い箇所である。それゆえ、使用時に、上記バーガイドスリーブは、第1、第2および第3の、骨の切断を行なうために、第1、第2および第3の、面の中に、バー工具を案内するために、第1、第2および第3の、配向で、連続的に取り付けられることが可能であり、それぞれの切断工程は骨のさらに別の部分を除去する。
【0015】
上記の連続的な切断工程の使用はかなりの利点を提供できる。例えば、バー工具の直径の大きさよりも太い骨の一部分を除去するために、単一のバー工具を使用することが可能になり得る。例えば、3回の連続的な切断工程において、骨の表面から7.5mmを除去するために、2.5mmの直径を有するバー工具を使用することが可能である。上記第1、第2および第3の、配向で、取り付けられたガイドスリーブにより制御される、第1、第2および第3の、面の中に、案内されるバー工具は、それぞれ、骨の表面から2.5mmを除去できる。それゆえ、この例において、骨の表面から7.5mmを除去するためには、2.5mmの直径を有するバー工具が通過できる切開部分を患者の体内に作ることが必要になるだけである。それゆえ、連続的な切断工程の使用は、単一の切断工程を比較的に大きなバー工具を用いて行なう処置に比べて、比較的に小さな切開部分を通して行なわれる処置、を可能にすることができる。このことは、例えば、最小限の侵襲性の外科手術において、極めて小さな切開部分を患者の体内に作る必要がある場合に、特に有利である。
【0016】
ガイドスリーブが上記少なくとも2種類の配向のそれぞれにおいて取り付けられる場合に、当該ガイドスリーブは共通の軸の周りに旋回することが好ましくなる可能性がある。一部の状況においては、ガイドスリーブが周りを旋回する軸が、上記配向のそれぞれにおいて、異なっていること、が好ましくなる可能性もある。例えば、このことは、異なる面を有する骨に、少なくとも2つの切断部をもたらすことが必要である場合に、好ましくなる可能性がある。
【0017】
上記ガイドスリーブが、少なくとも2種類の配向において、上記ハウジングの中に取り付けることができる場合に、その配向のうち少なくとも一つにおいてそのガイドスリーブが周りを旋回する軸に、上記穴により定められる軸が交差することが好ましくなる可能性がある。このことは、ガイドスリーブを、少なくとも2種類の配向において、取り付けることができる場合に、それらの配向の一つにおいて、他方の配向におけるよりも、上記穴の軸が、目的とされる切断面に対して垂直に延びている軸に交差する箇所が、その目的とされる切断面の軸の上にある骨の中のある箇所に近くなることを、確実にするために役立つことができる。さらに、このことは、ガイドスリーブを少なくとも3種類の配向で取り付けることができる場合に、上記穴の軸が、目的とされる切断面の軸に交差する箇所と、その平らな表面に対して垂直に延びている軸の上にある骨の中の箇所との間の距離における差が、そのガイドスリーブの第2および第3の配向における場合と、そのガイドスリーブの第1および第2の配向における場合とについて、同一であることを確実にする(第1の配向は、上記穴の軸が上記骨の中の箇所から最も遠い場所、であり、第3の配向は、上記骨の中の箇所に最も近い。)
【0018】
好ましくは、上記穴の中心線と、上記ガイドスリーブの中心線との間の距離は、穴の横方向の寸法以下である。このことは、上記スリーブが、その第1の配向から、その第2の配向に回転する時に、そのスリーブが周りを旋回する軸に対して平行な方向に、その第1の配向において穴により定められる領域と、その第2の配向において穴により定められる領域との間に、隙間が、ほとんど、あるいは、全く、残されないことを、確実にするために役立つことができる。さらに、上記スリーブを、少なくとも3種類の配向で、上記ハウジングの中に取り付けることができる場合には、そのスリーブが周りを旋回する軸に対して平行な方向に、その第2の配向において穴により定められる領域と、その第3の配向において穴により定められる領域との間に、全く隙間が残されなくなる。
【0019】
上記穴の中心線と、上記ガイドスリーブの中心線との間の距離は、穴の横方向の寸法よりも小さくてもよい。このことは、ガイドスリーブが、上記第1および第2の配向で取り付けられる場合に、上記バーガイドスリーブの穴により定められる骨の部分に、いくらかの重なりがあること、を確実にするために役立つことができる。このことはまた、ガイドスリーブが、上記第2および第3の配向で取り付けられる場合に、上記バーガイドスリーブの穴により定められる骨の部分に、いくらかの重なりがあること、を確実にするためにも役立つことができる。
【0020】
好ましくは、上記穴の中心線と、上記ガイドスリーブの中心線との間の距離は、穴の半径以下である。好ましくは、(i)上記穴の中心線と、上記案ガイドスリーブの中心線との間の距離の、(ii)上記穴の半径、に対する比率は、0.8以下であり、さらに好ましくは、0.7以下であり、例えば、約0.66である。
【0021】
好ましくは、上記スリーブは、少なくとも2対の対向している平行な壁、を有している。好ましくは、上記ガイドスリーブの軸に対して垂直に見た、そのスリーブの断面形状は、ほぼ長方形、特に好ましくは、正方形、である。このことは、上記スリーブの幅よりもわずかに大きな距離だけ、互いに分離されている、対向している平行な側面、を有するハウジングの中に、そのガイドスリーブが受容されている場合に、当該ガイドスリーブを貫通しているバー工具によりそのガイドスリーブに加えられる何らかのねじれの力、に対抗するように、上記ハウジングの側面に対して、そのガイドスリーブの側面が相互作用することになるので、有利になる可能性がある。上記のガイドスリーブが周りを旋回する構造部は、そのガイドスリーブに加えられる何らかの回転力、に対抗することになるが、密接して嵌合しているハウジングの中における、長方形または正方形の断面のスリーブの使用は、その回転力が、そのガイドスリーブが周りを旋回する箇所においてではなく、ガイドスリーブ全体にわたって、広げられること、を確実にできる。このことは、上記ガイドスリーブの強度および耐久性を増すために、役立つことができる。他の多角形の形状も、同一の効果を達成するために、使用可能であること、が認識されるであろう。例えば、上記ガイドスリーブの断面形状は六角形または八角形であってもよい。さらに、多角形の断面形状を備えることに伴う利点があるが、この断面形状は多角形である必要はない。例えば、この断面形状は円形であってもよい。この場合に、上記ガイドスリーブが周りを旋回する構造部は、そのガイドスリーブに加えられる何らかの回転力、に対抗することになる。
【0022】
上記ガイドスリーブは、バー工具を受容できる穴、を定めている。この穴の大きさは、バー工具が滑りばめするのに十分でなければならず、この大きさには、骨を切断するために用いられるバー工具の、場所の精度を低下させるあそび(play)を可能にすることになるすき間を最小限含まれる。上記ガイドスリーブは、バー工具以外の外科器具を配置するためにも、使用可能である。例えば、上記スリーブは、ドリルビットを配置するために、使用できる。好ましくは、上記穴の内側の幅は、2mm以上であり、さらに好ましくは、2.5mm以上であり、特に好ましくは、3mm以上である。好ましくは、上記穴の内側の幅は、8mm以下であり、さらに好ましくは6mm以下であり、特に、4mm以下であり、例えば、3mm以下である。
【0023】
好ましくは、上記ガイドスリーブの長さは、1cm以上であり、さらに好ましくは、2cm以上であり、特に好ましくは、3cm以上であり、例えば、4cm以上である。好ましくは、上記ガイドスリーブの長さは、10cm以下であり、さらに好ましくは、8cm以下であり、特に、6cm以下である。
【0024】
好ましくは、(i)上記ガイドスリーブの長さの、(ii)骨から離れているガイドスリーブの端部と、ガイドスリーブがハウジングの中に取り付けられている箇所と、の間の距離に対する比率は、4よりも小さく、さらに好ましくは、3よりも小さく、特に好ましくは、2よりも小さい。最も好ましくは、上記ガイドスリーブは、骨に対して近い、その端部において、取り付けられている(すなわち、上記(i)の、上記(ii)に対する比率は、1である)。
【0025】
好ましくは、上記ガイドスリーブが周りを旋回する箇所と、上記骨の表面との間の距離は、2cm以下であり、さらに好ましくは、2.5cm以下であり、特に、1cm以下であり、例えば、0.5cm以下である。
【0026】
また、上記ガイドスリーブが上記ハウジングの中に取り付けられている箇所と、切断される骨の表面との間の距離が、最小限にされること、が有利である。このことは、ガイドスリーブの長さにより定められる軸が、ハウジングに対するガイドスリーブの回転の任意の所定の角度において、骨の表面を横切って動く、並進運動の距離(translational distance)、を減少させる。このことは、上記組立体の使用者が、骨を切断する際に、上記の面の中におけるバー工具の運動に対して、さらにすぐれた制御を行なうこと、を可能にすることができ、この理由は、骨に近いバー工具の(すなわち、バー工具が骨を切断する箇所における)並進運動に対して、骨から離れたバー工具の切断部品の(すなわち、使用者がバー工具を動かす箇所における)、さらに大きな並進運動、が可能にできるからである。このことは、今度は、上記組立体の使用者が骨を切断できる精度を、高める。
【0027】
上記ガイドスリーブは、骨に、直接にまたは間接的に固定できるハウジングの中に、取り付けられる。好ましくは、ハウジングは、骨に固定できるジグ器具により、骨に間接的に固定される。好ましくは、いったん骨に固定されると、上記ジグは、その骨に対するガイドスリーブの取り付けの位置を調節可能にするように、調節されることができる。好ましくは、上記取り付けの位置は、骨に対する、内側/外側(medial/lateral)、近位側/遠位側、および後方/前方、の範囲(dimensions)において、調節可能である。好ましくは、上記取り付けの回転位置は、骨に対して、x,yおよびzの軸(すなわち、三つの軸であり、それぞれが互いに対して垂直である)の周りに、調節可能である。好ましくは、上記取り付けの位置は、ハウジングおよび/またはジグにおける、調節ねじの使用により、調節可能である。しかしながら、上記取り付けの位置を調節するための任意の手段が使用可能である。ジグ器具は、外科器具、切断ブロックまたは工具を受容でき、これらは、骨に固定可能であり、これらの工具または器具の位置が骨に対して正確に配置できていることがよく分かるように、後で調節される。このような、一般的な種類のジグ器具は、既知であり、シー・エー・エス・プリザベーション・ティビアル・ジグ(CAS Preservation Tibial Jig)(これはデピュイズ・エム・アイ・ティー・ケー・アール・システム(DePuy's MI TKR System)外科技術の一部として用いられている)の品名で、デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド(DePuy Products, Inc)から入手可能な器具と、商標をスペシャリスト2(Specialist 2)として、組み立てられている膝関節置換器具の一部を形成している、足首クランプを基盤としたジグと、を含む。
【0028】
好ましくは、上記ハウジングは、上記ガイドスリーブが骨に対して旋回できる角度、を制限するための停止部材(stops)、を含んでいる。好ましくは、これらの停止部材は、ガイドスリーブが旋回できる角度を、90°以下、さらに好ましくは、110°以下、特に好ましくは、130°以下、例えば、150°以下の角度に、制限する。好ましくは、上記停止部材は、上記ガイドスリーブが、少なくとも45°、さらに好ましくは、少なくとも50°、特に好ましくは、少なくとも80°、例えば、少なくとも90°、の角度にわたって、旋回すること、を可能にする。
【0029】
好ましくは、上記ハウジングは、上記ガイドスリーブを旋回可能に取り付けできる少なくとも2個の取付部材(mountings)、を備えている。例えば、ガイドスリーブがハウジングから取り外すことができる場合に、好ましくは、上記少なくとも2個の取付部材のそれぞれは、同一のガイドスリーブを受容できる。好ましくは、上記ハウジングは、上記ガイドスリーブのための、少なくとも3個の取付部材、を備えている。好ましくは、これらの取付部材は、ガイドスリーブが使用中である時に、このガイドスリーブが、これらの取付部材のそれぞれの中に取り付けられると、骨に、近位側/遠位側の切断部と、後方の面取り(posterior chamfer)および前方の面取りと、を提供するように、バー工具を案内するために使用されることができるように、構成されている。理解されるであろうが、上記の取付部材は、ガイドスリーブが使用中である時に、このガイドスリーブが、これらの取付部材の一つの中に取り付けられると、内側/外側の切断部をもたらすように、バー工具を案内するために使用されることができるように、構成することも可能である。
【0030】
上記ハウジングは、上述の切断部のうち二つをもたらすように、バー工具を案内するために、上記ガイドスリーブが取り付けられることができる、2個の取付部材のみを備えることができる。このハウジングはまた、上記の内側/外側の切断部、近位側/遠位側の切断部、または後方および前方の面取り、の内の一つ、をもたらすために、二次元におけるバーの運動が可能になるように、バー工具が挿入できて、一次元においてバー工具の運動を制限する、スロット、も備えることができる。
【0031】
上記バーガイドスリーブが上記ハウジングから取り外し可能である場合に、このバーガイドスリーブが旋回可能に取り付けられる取付部材も、骨を調製するために、除去される骨の領域の先端を決定するための、ドリルガイドブロックを固定するために使用されることも可能である。好ましくは、上記組立体は、上記ハウジングに固定できるドリルガイドブロックであって、近接して離間している少なくとも2個のドリルガイド穴のアレイを有しており、これらのドリルガイド穴は、骨の表面に向かってこれらの穴を貫通しているドリルビットにより穿孔できる骨の組織を定め、上記2個の隣接している穴のそれぞれの中心の間の距離の、これらの穴のそれぞれの直径に対する比率は、約1.5以下である、ドリルガイドブロック、を含んでいる。このようなドリルガイドブロックの詳細は、代理人の照会番号P211129を有していて、本特許出願と共に出願されている、「ドリルガイド組立体(A Drill Guide Assembly)」を発明の名称とする、同時係属出願において開示されている。この特許出願において開示されている主題は、参照により、本特許出願の明細書の中に、組み込まれている。
【0032】
上記組立体は、上記ガイドスリーブの穴を貫通しているバー工具から、骨を囲んでいる組織を保護するために、上記穴を貫通している、取り外し可能なバー・シース、を備えることができる。このシースは、回転しているバー工具から周囲の組織を保護して、そのバー工具によりその組織に引き起こされる損傷を防ぐであろう。好ましくは、このシースは、このシースと穴との間に生じる摩擦が、バー処置(burring procedure)の間に、その穴の中でシースが回転することを阻止するように、その穴の中に、ぴったりと嵌る大きさ、である。好ましくは、このシースの内側の幅は、2mm以上であり、さらに好ましくは、2.5mm以上であり、特に好ましくは、3mm以上である。好ましくは、上記シースの内側の幅は、8mm以下であり、さらに好ましくは、6mm以下であり、特に好ましくは、4mm以下であり、例えば、3mm以下である。好ましくは、バーガイド組立体が取り外し可能なシースを含む場合に、このバーガイド組立体を貫通できるバー工具の最大の直径を減少させずに、上記シースに適合するように、上記穴の直径は、取り外し可能なシースを含まないバーガイド組立体よりも、大きい。
【0033】
上記組立体は、一般に、外科器具の製造において従来から用いられている、金属を基にした材料により、作成されることになる。特定のステンレス鋼が特に好ましくなる可能性がある。しかしながら、上記組立体の少なくとも一部、例えば、上記ドリルガイドブロック、は高分子材料により作成可能であること、が理解されるであろう。高分子材料を用いることは、特に、高分子材料により作られる組立体が、成型処理を用いて、容易に製造可能であるので、上記組立体の製造のコストを減少させることを可能にする。上記ドリルガイドブロックが高分子材料により作られる場合に、このドリルガイドブロックを、ドリルガイドブロックの穴を貫通しているドリルビットから、保護するために、このドリルガイドブロックの穴を貫通する取り外し可能なドリルガイドスリーブが存在していること、が好ましくなる可能性がある。適当な高分子材料は、特定の、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ−エーテル−エーテル・ケトン(PEEKs)、およびポリアリール−エーテル・ケトン(PAEKs)、を含む。高分子材料は、適当な耐摩耗性を与えるために、粒状材料、特に、繊維状の材料により、補強できる。
【0034】
本発明の実施形態は、以下の添付図面を参照して、例としてのみ、説明されている。
【0035】
図面を参照すると、図1は頸骨の頸骨プラトー4を含む、脛骨2の近位側部分を示しており、この頸骨は、大腿骨14の遠位側部分の内側顆12および外側顆10を受容するための、内側顆8および外側顆6、を有している。これらの頸骨2および大腿骨14は、整形外科関節プロテーゼの部品の植え込みのため、頸骨を調製するために、どのように、本発明を実施可能にすることができるか、を示すために、分離状態で示されている。このプロテーゼは、近位側頸骨2に、耐久性のある支持面を設けるために、使用可能であり、大腿骨14の遠位側端部に植え込まれた適当なプロテーゼ部品と共に、関節接合することができる。なお、本発明は、近位側頸骨を調製することに関連して、説明されているが、本発明は、例えば、大腿骨の遠位側または近位側の端部、あるいは、上腕骨の近位側または遠位側の端部等の、他の骨において、平らな表面を調製するために使用できる。
【0036】
整形外科関節プロテーゼの部品を受容するための、近位側頸骨の調整は、その部品の平らな表面を受容するための、近位側頸骨の少なくとも一部における、平らな表面の形成、を含む。
【0037】
図1は、頸骨2に固定されている、本発明によるバーガイド組立体16、を示している。このバーガイド組立体は、一般に、ジグ108により頸骨2に間接的に固定できるハウジング110と、このハウジングの中に旋回可能に取り付けられているガイドスリーブ20と、を備えている。ハウジング110は、ガイドスリーブ20を内部に旋回可能に取り付けることのできる取付部材22、を備えている。
【0038】
ジグ108は、第1の調節ねじ72と、第2の調節ねじ74と、第3の調節ねじ76と、を有しており、これらのねじは、頸骨の傾斜と、頸骨に対する取付部材22の、遠位側/近位側、および内反/外反の配置(positioning)と、を調節するために、それぞれ、回転可能である。ハウジング110は、第4の調節ねじ68と、第5の調節ねじ70と、を備えており、これらのねじは、内部/外部の回転を調節およびロックするために、さらに、頸骨に対する取付部材22の内側/外側の位置を調節するために、それぞれ、回転可能である。
【0039】
ジグ108は、第1の固定ピン102と第2の固定ピン104の使用により、頸骨2に固定できる。第1の固定ピン102は、ジグ108とハウジング110とにより画定される通路106を、貫通している。この通路106は、第1の固定ピン102が頸骨2に固定されると、その骨に対するハウジング110の近位側/遠位側の位置の調節を可能にするように、細長くなっている。第1の調節ねじ72はカニューレ状になっており、第2の固定ピン104はこの第1の調節ねじを貫通している。
【0040】
ジグ108およびハウジング110は、それぞれ、第1の固定ピン102が貫通している、通路106、の一部分を画定している(すなわち、ジグ108およびハウジング110は、それらの境界面において、それぞれ、U字形の凹部を備えている)。ジグ108およびハウジング110は、プッシュ・リリース・ラッチ機構(push release latch mechanism)114により、それらの境界面において、互いに、解放可能に固定できる。しかしながら、ラッチ以外の他の機構も、ハウジング110とジグ108とを解放可能に固定するために使用可能であることが、理解されるであろう。上記ラッチ機構は、ハウジング110に設けられているフラップ116と、ジグ108に設けられているフック118と、を備えている。しかしながら、フラップをジグ108に設けることも可能であり、フックをハウジング110に設けることも可能であることは、理解されるであろう。係合された位置にある時に、フラップ116の平坦な側面はフック118の平坦な面に保持されて、ジグ108とハウジング110とが動いて互いに離反することを妨げるようになる。ハウジング110は、フラップ116をフック118から引き離すことにより、ジグ108から放出できる。ハウジング110、およびジグ108が別々の部品である必要はない(すなわち、これらが一つの部品であってもよい)ことは、理解されるであろう。
【0041】
ジグ108は、外科器具、切断用のブロックまたは工具を受容して、その位置が、骨に対して、直接的にまたは相対的に、正確に配置および固定されることができるようにするための、標準的なジグである。このような一般的な種類のジグ装置は既知であり、シー・エー・エス・プリザベーション・ティビアル・ジグ(CAS Preservation Tibial Jig)(これはデピュイズ・エム・アイ・ティー・ケー・アール・システム(DePuy's MI TKR System)外科技術の一部として用いられている)の品名で、デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド(DePuy Products, Inc)から入手可能な器具、を含む。
【0042】
ハウジング110の取付部材22は、ガイドスリーブ20が、矢印Bにより示されている方向に、Aにより示されている軸の周りに旋回できるように、ガイドスリーブ20が取付部材22の中に取り外し可能に取り付けられることを可能にする、構造部(図示せず)、を含んでいる。この取付部材22の構造部は、2個の円筒形の突出部(図示せず)を含み、これらの突出部は、これらが同軸になるように、取付部材22の対向している平行な壁24,26の内側に配置されている。したがって、これら2個の円筒形の突出部の軸は上記軸Aを定めている。
【0043】
取付部材22は、上記の平行な壁のそれぞれの端部において、これら2個の平行な壁24,26の間に延在している2個の端壁をさらに備えている。これらの端壁34,36は傾斜していて、このため上記組立体が使用中である時に、これらの端壁の間の距離は、頸骨2に向かって移動するのに従って、減少している。それゆえ、軸Aに対して垂直に取った場合に、取付部材22の断面形状は、概ね、等脚台形の形状である。上記の端壁34,36は、ガイドスリーブ20が軸Aの周りに旋回できる角度を制限する、停止部材、として作用する。
【0044】
平行な壁24,26は、これらの壁の間に取り付けられるガイドスリーブ20の幅よりもわずかに大きい距離だけ、分離されている。この距離は、ガイドスリーブ20が、上記壁の間を、容易にスライドできるように、十分に大きいが、このスリーブ20が取り付けられる際に、当該スリーブに加えられる何らかの回転力が壁24,26により打ち消されて、このスリーブの回転運動を妨げるように、十分に小さい。
【0045】
図2は、ガイドスリーブ20を、さらに詳細に示している。このガイドスリーブ20は、立方体様のスリーブ38の軸に平行に延びている穴40を有する、概ね立方体様のスリーブ38を備えている。さらに、これらの立方体様のスリーブ38と穴40とは、同軸である。穴40の直径は、バー工具(図7において示されている符号42により示されている)の大きさよりもわずかに大きく、このバー工具は、頸骨プラトー4を切断するために、上記ガイドスリーブを貫通している。立方体様のスリーブ38は、取付部材22の円筒形の突出部(図示せず)に対して支持を行なうための、第1の凹部44と、第2の凹部46と、第3の凹部48と、第4の凹部50と、を備えている。これらの、第1の凹部44と、第2の凹部46と、第3の凹部48と、第4の凹部50は、形状が半円形である。第1の凹部44および第2の凹部46は、立方体様のスリーブの対向している側面に、配置されており、第3の凹部48および第4の凹部50は、立方体様のスリーブの他の2個の対向している側面に、配置されている。これらの凹部は、これらの凹部が開放型(open-ended)になるように、立方体様のスリーブ38の端部に、配置されている。このような立方体様のスリーブ38の側面のそれぞれに設けられている開放型の凹部の使用は、ガイドスリーブ20が、4種類の異なる配向で、取付部材22の中に取り外し可能に取り付けられること、を可能にする。
【0046】
図3は、本発明によるガイドスリーブ20の第2の実施形態、を示している。このガイドスリーブの第2の実施形態は、図2において示されている実施形態に類似しており、穴54が、立方体様のガイドスリーブ38の中において、偏心して配置されていることを除いて、同一の部品は同一の参照符号を共有している。この穴54の、立方体様のスリーブ38の長さ方向軸に対する、配置は、図4aを参照して、さらに詳細に説明されている。
【0047】
図4aは、立方体様のスリーブ38の下側(すなわち、切断処置中に、頸骨に近くなる立方体様のスリーブの端部)、を示している。図4aにおいて示されているように、穴54は、この穴54の中心点58(すなわち、穴の長さ方向軸)が、立方体様のスリーブ38が周りを旋回する軸A、の上に存在するように、立方体様のスリーブ38の中に配置されている。さらに、穴54は、その中心点58と立方体様のスリーブ38の中心点56(すなわち、スリーブの長さ方向軸)との間の距離qが、穴54の直径pに等しくなるように、設置されている。図4aにおいて示されているように、上記立方体様のガイドスリーブは、当該スリーブが上記第3の凹部48および第4の凹部50の周りに旋回するように、ハウジング110の取付部材22の中に取り付けられている。(取付部材22は、立方体様のスリーブの描写を簡単にするために、示されていない。)
【0048】
上述のように、立方体様のスリーブ38は、取付部材から取り外すことができ、4種類の異なる配向で、取り付けることができる。これらの配向の内の3種類における、穴54の相対的な配置が、図4bを参照して、説明されている。図4bは立方体様のスリーブ38の下側を示している。穴54aは、立方体様のスリーブ38が第1の配向で取り付けられる場合の、穴54の配置、を示している。また、穴54bは、立方体様のスリーブ38が第2の配向で取り付けられる場合の、穴54の位置、を示している。さらに、穴54cは、立方体様のスリーブ38が第3の配向で取り付けられる場合の、穴54の位置、を示している。全ての配向において、立方体様のスリーブは、当該スリーブが同一の軸Aの周りに旋回するように、取付部材22の中に取り付けられる。それゆえ、第1および第3の配向において、上記立方体様のスリーブは、第3の凹部48および第4の凹部50の周りに、旋回することになる。第2の配向においては、立方体様のスリーブ38は、その第1の凹部44および第2の凹部46の周りに、旋回することになる。図示のように、距離rにより示されている、穴54の第1の配向54aと、穴54の第2の配向54bとにおける、穴54のエッジ部分の間の、軸Aに平行な、距離は、ほぼゼロである。さらに、距離sにより示されている、穴54の第2の配向54bと、穴54の第3の配向54cとにおける、穴54のエッジ部分の間の、軸Aに平行な、距離も、ほぼゼロである。さらに、穴が第1の配向54aおよび第3の配向54cにある時の、穴54の最も外側のエッジ部分の間に延びる距離tは、その穴54の直径pの大きさの3倍である。
【0049】
図5a、図5bおよび図5cは、頸骨プラトー4を調製するために、第1の切断工程、第2の切断工程、および第3の切断工程、がそれぞれ行なわれる前の、頸骨2に対して取り付けられている、原位置(in situ)における、立方体様のスリーブ38の上面図、を示している。これらの、第1、第2、および第3の、切断工程の、図示を簡単にするために、組立体15の、取付部材22、ハウジング110、およびジグ108、は示されていない。切断工程を行なうために、穴の切断用の部分が骨に近くなるように、バー工具が、穴54を通して、挿入される。立方体様のスリーブ38およびバー工具は、その後、バー工具の切断用の端部が頸骨プラトー4の一つの側面の上に配置されるまで、軸Aの周りに、旋回される。次に、バー工具および立方体様のスリーブ38は、バー工具が立方体様のスリーブにより案内される面の中において頸骨プラトーを通り、そうしている間に、バー工具が骨の一部分を除去して、平らな表面を残すように、軸Aの周りに、旋回される。
【0050】
それぞれの切断工程の後に、立方体様のスリーブ38は、上記ハウジングの中の取付部材22から取り外されて、当該立方体様のスリーブ38の中心点56の周りを90°だけ回転し、その後に、取付部材22の中に再び取り付けられる。図5a、図5bおよび図5cにおいて示されているように、立方体様のスリーブ38は時計回りの方向に回転し、ガイドスリーブは反時計回りの方向に回転できる。立方体様のスリーブ38は、その配向のそれぞれに対して、軸Aの周りに旋回するように、取り付けられている。上記の第1、第2および第3の切断工程のそれぞれにより、頸骨プラトー4に切り込まれる、目的とされた切断面は、線60,62および64により、それぞれ、示されている。
【0051】
距離x,yおよびzは、上記の第1、第2および第3の切断工程それぞれの前において、上記穴54の軸が、上記目的とされた切断面に対して垂直に延びている軸Aに交差している点と、軸Aの上にある骨の中の点66と、の間の距離を示している。図示のように、第2の切断工程の前の距離yは、第1の切断工程の前の距離xよりも、小さい。さらに、第3の切断工程の前の距離zは、第2の切断工程の前の距離yよりも、小さい。それゆえ、穴54は、それぞれの連続的な切断工程において、骨の中の点66に近づく。さらに、穴54が点66に近づく量は、それぞれの切断工程において、一定である(すなわち、x−y=y−z)。
【0052】
図6a、図6bおよび図6cは、第1、第2および第3の切断工程それぞれの前に、それぞれ、第1の配向、第2の配向、および第3の配向において、ハウジング110の取付部材22の中に取り付けられている、立方体様のスリーブ38を示している。頸骨2は、図示を簡単にするために、図6a、図6bまたは図6cに、示されていない。
【0053】
図7は、第3の配向で取り付けられた、立方体様のガイドスリーブ38を示しており、この図において、バー工具42はガイドスリーブ38の中に配置されている。図示のように、ガイドスリーブ38は、図1、図6a、図6bおよび図6cにおいて示されているスリーブの位置から転置されているように、軸Aの周囲において、スリーブの取り付け部の周りに、旋回されている。
【0054】
図8は、大腿骨の切除を行なうために、バー工具を案内するための、本発明によるハウジング110の第2の実施形態、を示している。このハウジング80の第2の実施形態は、バーガイドスリーブ38が取り外し可能に取り付けできる、第1の取付部材82と、第2の取付部材84と、を備えている。第1および第2の取付部材82,84は、上記ハウジング110の取付部材22に類似しており、同一の部品は同一の参照符号を共有している。これら第1および第2の取付部材82,84は、対向している平行な壁24,26と、これらの平行な壁の間に延在している第1の端壁34および第2の端壁(図示せず)と、を備えている。これらの端壁34は、この組立体が使用時にある時に、これらの端壁の間の距離が骨に向かって減少するように、傾斜している。さらに、バーガイドスリーブ38における凹部が係合して周りを旋回できる、平行な壁の内側における円筒形の突出部の形態の、構造部(図示せず)も存在している。上記第1の取付部材82は、第1の切除面において、大腿骨14を切除するために、バー工具を案内するように、ガイドスリーブ38を取り付けるために、使用できる。上記第2の取付部材84は、第2の切除面において、大腿骨14を切除するために、バー工具を案内するように、ガイドスリーブ38を取り付けるために、使用できる。
【0055】
ハウジング80は、ブラケット86により、大腿骨14に固定できる。ブラケット86は、当該ブラケットの中の第1の穴100を通ってハウジングの中に延びている固定ピン(図示せず)により、ハウジングに、第1の端部において、固定され、さらに、当該ブラケットの中の第2および第3の穴88,90を貫通している固定ピン(図示せず)により、その第2の端部において、骨に固定されることができる。ハウジング80を大腿骨14にさらに固定するために、ハウジング80は、第2の取付部材84に配置されているブロック98を貫通している第4の穴92(図10bを参照されたい)、も備えている。この第4の穴92は、ハウジング80を大腿骨に固定するように、大腿骨14の中に挿入できる固定ピン(図示せず)を受容できる。
【0056】
ハウジング80はまた、スロット94を備えており、このスロット94を通して、バー工具またはその他の外科器具が、例えば、第3の切除面において、大腿骨14を切除するために、その大腿骨14に、さらに切除または手術を施すために、挿入できる。
【0057】
図9は、分離状態にあるハウジング80の斜視図、を示している。図10aは、ハウジング80の側面図、を示しており、図10bは、当該ハウジングの上面図、を示している。
【0058】
2個の取付部材82,84を有するハウジング80の使用は、連続した工程で、二つの面において、骨を切除するために、バー工具(図示せず)を案内するために、バーガイドスリーブ38を用いる場合に、好都合になる可能性がある。この理由は、2種類の切除を行なうために、二つの場所において、そのハウジングを正確に配置および固定するための必要性を伴わずに、これらの切除を行なうように、バー工具を案内するために、バーガイドスリーブ38のための適当な取り付けを行なうために、ハウジング80を使用できるからである。その代わりに、2個の取付部材82,84を備えたハウジング80は、2種類の適当な取り付けを行なうために、一度だけ、骨に対して、配置および固定されることが可能である。
【0059】
上記ハウジング80の第2の実施形態は、大腿骨からの骨の素材(bone material)の除去、および/または、大腿骨における切除の実行、に関連して説明されているが、このハウジングはまた、頸骨、または他の骨、例えば上腕骨、に対して固定可能であり、これらの骨からの骨の素材の除去のために使用できること、が理解されるであろう。
【0060】
〔実施の態様〕
(1)骨を切断するためにバー工具が用いられる処置の間に、前記バー工具を案内するための、バーガイド組立体において、
前記骨に固定されることができる、ハウジングと、
前記ハウジングの中に旋回可能に取り付けられるガイドスリーブであって、
前記ガイドスリーブの長さに沿って延びている穴を有しており、
前記バー工具の切断部分が前記スリーブから、切断される前記骨に向かって延びるように、前記穴の中に、前記バー工具は受容されることができ、
前記穴は、前記ガイドスリーブの中に偏心して配置されており、
前記スリーブは、ある軸の周りでの旋回運動のために、前記ハウジングの中に取り付けられていて、前記バー工具の前記切断部分は、前記軸に対して垂直である面の中の運動に制限されるようになっている、
ガイドスリーブと、
前記ガイドスリーブの中に滑りばめする、バー工具と、
を備えている、バーガイド組立体。
(2)実施態様1に記載のバーガイド組立体において、
前記ガイドスリーブは、前記ハウジングから、取り外されることができる、バーガイド組立体。
(3)実施態様2に記載のバーガイド組立体において、
前記スリーブは、当該スリーブが、少なくとも2種類の配向で、前記ハウジングの中に取り付けられることを可能にする、構造部、を有しており、
前記スリーブは、前記配向のそれぞれにおいて、それぞれの軸の周りに、旋回可能である、バーガイド組立体。
(4)実施態様1に記載のバーガイド組立体において、
前記スリーブは、立方体様である、バーガイド組立体。
(5)実施態様1に記載のバーガイド組立体において、
前記穴は、当該穴の中に収容されることができる前記バー工具の最大の横方向の大きさが6mmになるような大きさに作られている、バーガイド組立体。
【0061】
(6)実施態様1に記載のバーガイド組立体において、
前記穴の中心と前記ガイドスリーブの中心線との間の距離は、および前記穴の半径以下である、バーガイド組立体。
(7)実施態様1に記載のバーガイド組立体において、
前記ハウジングは、前記ガイドスリーブが旋回することができる角度を制限するための、停止部材、を含む、バーガイド組立体。
(8)実施態様7に記載のバーガイド組立体において、
前記停止部材は、前記ガイドスリーブが旋回することができる前記角度を、90°以下になるように、制限する、バーガイド組立体。
(9)実施態様1に記載のバーガイド組立体において、
前記ハウジングに固定されることができるドリルガイドブロックであって、
近接して離間している少なくとも2個のドリルガイド穴のアレイを有しており、
前記ドリルガイド穴は、前記骨の表面に向かって前記穴を貫通しているドリルビットにより穿孔されることができる前記骨の組織を定め、
前記穴のうち隣接している2個の穴のそれぞれの中心の間の距離の、これらの穴のそれぞれの直径に対する、比率は、約1.5以下である、
ドリルガイドブロック、
を含む、バーガイド組立体。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】近位側頸骨に取り付けられている、本発明による組立体の斜視図である。
【図2】第1の実施形態による、図1において示されている組立体のガイドスリーブの斜視図である。
【図3】第2の実施形態による、図1において示されている組立体のガイドスリーブの斜視図である。
【図4a】図3において示されているガイドスリーブの下面図である。
【図4b】図3において示されているガイドスリーブの下面図であり、ガイドスリーブが、第1、第2および第3の、配向で、ハウジングの中に取り付けられている場合の、穴の位置を示している。
【図5a】第1の切断工程の前の、図1において示されている、ガイドスリーブ、および近位側頸骨の概略的な上面図である。
【図5b】第2の切断工程の前の、図1において示されている、ガイドスリーブ、および近位側頸骨の概略的な上面図である。
【図5c】第3の切断工程の前の、図1において示されている、ガイドスリーブ、および近位側頸骨の概略的な上面図である。
【図6a】図3において示されているガイドスリーブが第1の配向で取り付けられている、組立体の斜視図である。
【図6b】図3において示されているガイドスリーブが第2の配向で取り付けられている、組立体の斜視図である。
【図6c】図3において示されているガイドスリーブが第3の配向で取り付けられている、組立体の斜視図である。
【図7】図3において示されているガイドスリーブが、当該ガイドスリーブを貫通しているバー工具と共に取り付けられている、組立体の斜視図である。
【図8】大腿骨に取り付けられている、本発明の第2の実施形態による組立体の斜視図である。
【図9】図8において示されている第2の実施形態による、分離状態にある組立体の斜視図である。
【図10a】図8において示されている、第2の実施形態による組立体の側面図である。
【図10b】図8において示されている、第2の実施形態による組立体の上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨を切断するためにバー工具が用いられる処置の間に、前記バー工具を案内するための、バーガイド組立体において、
前記骨に固定されることができる、ハウジングと、
前記ハウジングの中に旋回可能に取り付けられるガイドスリーブであって、
前記ガイドスリーブの長さに沿って延びている穴を有しており、
前記バー工具の切断部分が前記スリーブから、切断される前記骨に向かって延びるように、前記穴の中に、前記バー工具は受容されることができ、
前記穴は、前記ガイドスリーブの中に偏心して配置されており、
前記スリーブは、ある軸の周りでの旋回運動のために、前記ハウジングの中に取り付けられていて、前記バー工具の前記切断部分は、前記軸に対して垂直である面の中の運動に制限されるようになっている、
ガイドスリーブと、
前記ガイドスリーブの中に滑りばめする、バー工具と、
を備えている、バーガイド組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のバーガイド組立体において、
前記ガイドスリーブは、前記ハウジングから、取り外されることができる、バーガイド組立体。
【請求項3】
請求項2に記載のバーガイド組立体において、
前記スリーブは、当該スリーブが、少なくとも2種類の配向で、前記ハウジングの中に取り付けられることを可能にする、構造部、を有しており、
前記スリーブは、前記配向のそれぞれにおいて、それぞれの軸の周りに、旋回可能である、バーガイド組立体。
【請求項4】
請求項1に記載のバーガイド組立体において、
前記スリーブは、立方体様である、バーガイド組立体。
【請求項5】
請求項1に記載のバーガイド組立体において、
前記穴は、当該穴の中に収容されることができる前記バー工具の最大の横方向の大きさが6mmになるような大きさに作られている、バーガイド組立体。
【請求項6】
請求項1に記載のバーガイド組立体において、
前記穴の中心と前記ガイドスリーブの中心線との間の距離は、およそ前記穴の半径以下である、バーガイド組立体。
【請求項7】
請求項1に記載のバーガイド組立体において、
前記ハウジングは、前記ガイドスリーブが旋回することができる角度を制限するための、停止部材、を含む、バーガイド組立体。
【請求項8】
請求項7に記載のバーガイド組立体において、
前記停止部材は、前記ガイドスリーブが旋回することができる前記角度を、90°以下になるように、制限する、バーガイド組立体。
【請求項9】
請求項1に記載のバーガイド組立体において、
前記ハウジングに固定されることができるドリルガイドブロックであって、
近接して離間している少なくとも2個のドリルガイド穴のアレイを有しており、
前記ドリルガイド穴は、前記骨の表面に向かって前記穴を貫通しているドリルビットにより穿孔されることができる前記骨の組織を定め、
前記穴のうち隣接している2個の穴のそれぞれの中心の間の距離の、これらの穴のそれぞれの直径に対する、比率は、約1.5以下である、
ドリルガイドブロック、
を含む、バーガイド組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【公表番号】特表2008−521467(P2008−521467A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542104(P2007−542104)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004474
【国際公開番号】WO2006/056754
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(500353989)デピュー インターナショナル リミテッド (40)
【Fターム(参考)】