説明

バーコード読取方法およびバーコード読取装置

【課題】複数種類の規格の類似したパターンのバーコードが混在する場合でも読取精度を向上させ得るバーコード読取方法およびバーコード読取装置を提供する。
【解決手段】第1規格に基づく第1バーコードの一部のコードパターンが、第2規格に基づく第2バーコードとして読み取れる可能性がある場合に、読み取ったバーコードを2値化処理して得られる明暗パターン列Baに対して第2規格の読み取りアルゴリズムを適用して読み取りがなされる。そして、明暗パターン列Baの両端近傍の少なくとも一方に判定用キャラクタBbが存在すると判定されると、明暗パターン列Baを第1バーコードの一部のコードパターンと想定して当該第1バーコードに対応するマージン位置が推定され、この推定されたマージン位置にマージンBdを検出しない場合には、上記明暗パターン列Baが第2バーコードであるRSS_Limitedとして確定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の規格に基づいて作成されたバーコードを光学的に読み取るバーコード読取方法およびバーコード読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、バーコードについて多くの種類の規格が開発されて実際に運用されている。そのため、所定の種類のバーコードの一部分が他の種類のバーコードを構成しているという場合も存在する。従って、複数種類のバーコードの読み取りを可能にするためには、上述のような場合でもバーコードの種類を明確に区別する必要がある。そこで、例えば、複数種類の規格に基づいて作成されたバーコードを光学的に読み取るバーコード読取方法として、下記特許文献1に示すバーコード読取方法が知られている。
【0003】
このバーコード読取方法では、読み取り対象として指定されたバーコードが、省スペース型であるRSS (Reduced Space Symbology)コードの1つ、RSS_Limitedであるか否かが判定される。そして、上記バーコードがRSS_Limitedである可能性が認識されると、このコードパターン両端部の少なくとも一方に、UPC−A/EAN−13のキャラクタコードが存在するか否かを判定する。そして、上記キャラクタコードが存在しない場合には当該バーコードがRSS_Limitedであると判定され、上記キャラクタコードが存在する場合にはRSS_Limitedでないと判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−227796号公報(第34,35段落、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、RSS_Limitedは省スペース型として開発されているため、当該バーコードの両端外側にマージンを必要としないことから、当該バーコードの近傍にバーコード状の模様などが配置される場合がある。この場合、上記特許文献1に示すバーコード読取方法では、読み取り対象がRSS_Limitedであっても、上記模様のために読み取ったコードパターン両端部の少なくとも一方にUPC−A/EAN−13のキャラクタコードが存在するとみなされると、当該バーコードがRSS_Limitedでないと判定され、RSS_Limitedに関する読取精度が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、複数種類の規格の類似したパターンのバーコードが混在する場合でも読取精度を向上させ得るバーコード読取方法およびバーコード読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のバーコード読取方法では、複数種類の規格に基づいて作成されたバーコードを光学的に読み取り、当該バーコードに記録されているデータをデコードするバーコード読取方法において、前記複数種類のうち、第1規格に基づく第1バーコードの一部のコードパターンが、前記第1規格よりもバーの構成本数が少なく設定される第2規格に基づく第2バーコードとして読み取れる可能性がある場合に、読み取ったバーコードを2値化処理して得られる明暗パターン列に対して前記第2規格の読み取りアルゴリズムを適用して読み取りを行う第1ステップと、前記第1ステップにより読み取られた前記明暗パターン列の両端近傍の少なくとも一方に、前記第1バーコードに存在し得るキャラクタパターンが存在するか否かを判定する第2ステップと、前記第2ステップにより前記キャラクタパターンが存在すると判定された場合に前記明暗パターン列を前記第1バーコードの一部のコードパターンと想定して当該第1バーコードに対応するマージン位置を推定する第3ステップと、前記第3ステップにより推定された前記マージン位置にマージンを検出しない場合には、前記明暗パターン列を前記第2バーコードの読取データとして確定する第4ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のバーコード読取方法において、前記第3ステップは、前記第1バーコードに対応するマージン位置を当該第1バーコードのセンターバーに基づいて推定することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のバーコード読取方法において、前記第4ステップは、前記第3ステップにより推定された前記マージン位置にマージンを検出する場合には、前記第1ステップにより読み取った前記バーコードを無効とすることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載のバーコード読取方法において、前記第1ステップにより読み取った前記バーコードを前記第4ステップにより無効とする場合には、その旨を報知する第5ステップを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のバーコード読取方法において、前記第1バーコードは、EAN (European Article Number)コード、および、UPC (Universal Product Code)コードのいずれか1つであり、前記第2バーコードは、RSS (Reduced Space Symbology)コードであることを特徴とする。
【0012】
特許請求の範囲に記載の請求項6のバーコード読取装置では、複数種類の規格に基づいて作成されたバーコードを光学的に読み取り、当該バーコードに記録されているデータをデコードするバーコード読取装置において、前記複数種類のうち、第1規格に基づく第1バーコードの一部のコードパターンが、前記第1規格よりもバーの構成本数が少なく設定される第2規格に基づく第2バーコードとして読み取れる可能性がある場合に、読み取ったバーコードを2値化処理して得られる明暗パターン列に対して前記第2規格の読み取りアルゴリズムを適用して読み取りを行う読取手段と、前記読取手段により読み取られた前記明暗パターン列の両端近傍の少なくとも一方に、前記第1バーコードに存在し得るキャラクタパターンが存在するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記キャラクタパターンが存在すると判定された場合に前記明暗パターン列を前記第1バーコードの一部のコードパターンと想定して当該第1バーコードに対応するマージン位置を推定するマージン位置推定手段と、前記マージン位置推定手段により推定された前記マージン位置にマージンを検出しない場合には、前記明暗パターン列を前記第2バーコードの読取データとして確定する確定手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載のバーコード読取装置において、前記マージン位置推定手段は、前記第1バーコードに対応するマージン位置を当該第1バーコードのセンターバーに基づいて推定することを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項6または7に記載のバーコード読取装置において、前記確定手段は、前記マージン位置推定手段により推定された前記マージン位置にマージンを検出する場合には、前記読取手段により読み取った前記バーコードを無効とすることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載のバーコード読取装置において、前記読取手段により読み取った前記バーコードを前記確定手段により無効とする場合には、その旨を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項6〜9のいずれか一項に記載のバーコード読取装置において、前記第1バーコードは、EAN (European Article Number)コード、および、UPC (Universal Product Code)コードのいずれか1つであり、前記第2バーコードは、RSS (Reduced Space Symbology)コードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および6の発明では、第1規格に基づく第1バーコードの一部のコードパターンが、当該第1規格よりもバーの構成本数が少なく設定される第2規格に基づく第2バーコードとして読み取れる可能性がある場合に、読み取ったバーコードを2値化処理して得られる明暗パターン列に対して第2規格の読み取りアルゴリズムを適用して読み取りがなされる。そして、明暗パターン列の両端近傍の少なくとも一方に第1バーコードに存在し得るキャラクタパターンが存在すると判定されると、明暗パターン列を第1バーコードの一部のコードパターンと想定して当該第1バーコードに対応するマージン位置が推定される。この推定されたマージン位置に所定のマージンを検出しない場合には、上記明暗パターン列が第2バーコードの読取データとして確定される。
【0018】
第1バーコードの一部のコードパターンが第2バーコードとして読み取れる場合を想定しているので、明暗パターン列が第1バーコードの一部のコードパターンである場合には、明暗パターン列の両端近傍の少なくとも一方に第1バーコードに存在し得るキャラクタパターンが存在するとともに、所定のマージン位置にマージンが存在することとなる。
【0019】
そこで、上記明暗パターン列が第2バーコードとして読み取れる可能性がある場合において、明暗パターン列の両端近傍の少なくとも一方に第1バーコードに存在し得るキャラクタパターンが存在しかつ所定のマージン位置にマージンが存在しない場合には、このキャラクタパターンはバーコードの一部とは異なる模様等であるから、当該明暗パターン列を第2バーコードの読取データとして確定することができる。
したがって、複数種類の規格の類似したパターンのバーコードが混在する場合でも上述のような第2バーコードの読取精度を向上させることができる。
【0020】
請求項2および7の発明では、第1バーコードに対応するマージン位置が当該第1バーコードのセンターバーに基づいて推定される。センターバーは一般的に5本のナローバーから構成されるため、例えば、バーコードの両端に設けられる3本のナローバーから構成されるガードバーに基づいてマージン位置を推定する場合と比較して、マージン位置の推定精度を向上させることができる。
【0021】
請求項3および8の発明では、推定されたマージン位置にマージンが検出される場合には、読み取ったバーコードが無効とされる。
【0022】
本来、上記明暗パターン列を一部とするコードパターンが第1バーコードとして読み取れるのであれば、そもそも当該明暗パターン列が第2バーコードとして読み取れるか否かを判定する必要性は低くなる。そのため、上記明暗パターン列と異なる領域の欠損等により第1バーコードとして読み取ることができないことから当該明暗パターン列が第2バーコードとして読み取れるか否かを判定して、第2バーコードとして読み取れない場合、すなわち、推定されたマージン位置にマージンが検出される場合には、当該明暗パターン列を含むコードパターンを読み取る可能性は非常に低いので、読み取り不能である不要なデータを確実に除外することができる。
【0023】
請求項4および9の発明では、読み取ったバーコードを無効とする場合にはその旨が報知されるため、読み取ったバーコードが第2バーコードとして読み取りできないが、読み取り対象のバーコードを新たに読み取る場合には第1バーコードとして読み取れる可能性が高いことを使用者に認識させることができる。
【0024】
請求項5および10の発明では、第1バーコードは、EAN (European Article Number)コード、および、UPC (Universal Product Code)コードのいずれか1つであり、第2バーコードは、RSS (Reduced Space Symbology)コードである。
【0025】
RSSコードは、EANコードやUPCコードと比較して省スペース型であり、実際にEANコードやUPCコードの一部がRSSコードに一致する場合がある。このような場合でも、上述のように明暗パターン列の両端近傍の少なくとも一方に第1バーコードに存在し得るキャラクタパターンが存在しかつ所定のマージン位置にマージンが存在しない場合に当該明暗パターン列をRSSコードとして確定することができるので、RSSコードやEANコード、UPCコードが混在する場合でもRSSコードの読取精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係るバーコード読取装置10の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】第1バーコードBの一部が第2バーコードBに一致する状態を示す説明図である。
【図3】本実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図4】本実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図5】図5(A)は、明暗パターン列Baの一端側にマージンBdが存在しない状態を示す説明図であり、図5(B)は、明暗パターン列Baの一端側にマージンBdが存在する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係るバーコード読取装置について図を参照して説明する。図1に示すように、バーコード読取装置10は、複数種類の規格に基づいて作成されたバーコード(図1では物品Rに付されたバーコードBを例示)を読み取る装置として構成されている。なお、バーコードとは、RSSコード、EANコード、および、UPCコード等の1次元コードを意味する。
【0028】
このバーコード読取装置10は、図示しないケースの内部に回路部20が収容されてなるものであり、回路部20は、主に、照明光源21、受光センサ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、トリガースイッチ42等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、から構成されている。
【0029】
光学系は、投光光学系と、受光光学系とに分かれている。投光光学系を構成する照明光源21は、照明光Lfを発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられるレンズとから構成されている。なお、図1では、バーコードBが付された物品Rに向けて照明光Lfを照射する例を概念的に示している。
【0030】
受光光学系は、受光センサ28、結像レンズ27、反射鏡(図示略)などによって構成されている。受光センサ28は、CCDエリアセンサとして構成されるものであり、バーコードBに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されている。この受光センサ28は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光可能にプリント配線板(図示略)に実装されている。
【0031】
結像レンズ27は、外部から読取口(図示略)を介して入射する入射光を集光して受光センサ28の受光面28aに像を結像可能な結像光学系として機能するものである。本実施形態では、照明光源21から照射された照明光LfがバーコードBにて反射した後、この反射光Lrを結像レンズ27で集光し、受光センサ28の受光面28aにコード像を結像させている。
【0032】
マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等から構成されている。
【0033】
光学系の受光センサ28から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、生成されてメモリ35に入力されると、所定のコード画像情報格納領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ28およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0034】
制御回路40は、バーコード読取装置10全体を制御可能なマイコンによって構成されており、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有すると共に、情報処理機能を備えており、メモリ35とともに情報処理装置を構成している。本実施形態では、制御回路40に対し、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。
【0035】
これにより、制御回路40は、例えば、トリガースイッチ42の監視や管理、バーコードBの読み取りに関する情報を報知するインジケータとして機能する発光部43の点灯・消灯、ビープ音やアラーム音を発生可能なブザー44の鳴動のオンオフ、当該バーコード読取装置10の使用者に伝達し得る振動を発生可能なバイブレータ45の駆動制御、液晶表示器46の表示制御や外部装置とのシリアル通信を可能にする通信インタフェース48の通信制御等を可能にしている。
【0036】
以下、本実施形態に係るバーコード読取装置10の読取処理について図を参照して詳細に説明する。
複数種類の規格に基づくバーコードを読み取る場合には、第1規格に基づく第1バーコードの一部のコードパターンが、当該第1規格よりもバーの構成本数が少なく設定される第2規格に基づく第2バーコードとして読み取られてしまう可能性がある。上記第2規格に基づく第2バーコードとしては、例えば、省スペース型であるRSSコードが想定され、上記第1規格に基づく第1バーコードとしては、例えば、EANコードやUPCコードが想定される。
【0037】
具体的には、図2に示すように、第1規格に基づく第1バーコードBであるEANコードの一部のコードパターンが、第2規格に基づく第2バーコードBであるRSSコードの1つ、RSS_Limitedに一致する場合が想定される。
【0038】
本実施形態では、上述のように第1バーコードBの一部が第2バーコードBに一致する場合でも第2バーコードBの読取精度を向上させるために、以下に示す読取処理を実施する。
【0039】
まず、図3のステップS101おいて、最小バー本数設定処理がなされる。この処理では、使用者により読み取り対象として指定された複数種類のバーコードから、読み取り可能な最小バー本数Xが設定される。
【0040】
次に、ステップS103において、明暗パターン列取得処理がなされる。この処理では、使用者のトリガースイッチ42の操作に応じて、受光センサ28にバーコードBのコード情報が読み取られると、上記第2規格の読み取りアルゴリズムを適用することにより受光センサ28からの受光信号の信号波形が所定の閾値と比較されて、その比較に基づいて信号波形が明色領域と暗色領域とに2値化され、暗色領域と明色領域との配列データに応じた明暗パターン列Baが取得される。なお、ステップS103における処理は、特許請求の範囲における「第1ステップ」または「読取手段」の一例に相当する。
【0041】
そして、ステップS105にて上記明暗パターン列Baよりバーの本数nが検出されるとともに、ステップS107にて、上記明暗パターン列Baよりバー幅Wが検出される。
【0042】
次に、ステップS109において、バー本数nが最小バー本数X以上であるか否かについて判定される。ここで、n≧Xの場合には(S109でYes)、ステップS111にてバーコード決定処理がなされ、バー本数nに応じてデコード対象とするバーコードが決定される。なお、ステップS109にてバー本数nが最小バー本数X未満になると(S109でNo)、図4のステップS139にて読み取り無効処理がなされて、上記読み取りが失敗であるとして読み取ったバーコードが無効とされる。
【0043】
バーコードが決定されると、ステップS113にて一側マージンが存在するか否かについて判定される。この判定処理では、明暗パターン列Baの最初の白バー(通常はマージン領域に相当)とその次(内側)に位置する黒バーとの間、又は最初のキャラクタパターンより、バーコードの種類に応じてマージンチェックが実行される。
【0044】
ここで、明暗パターン列Baに一側マージンが存在すれば(S113でYes)、ステップS115において、明暗パターン列Baにバーコードの種類に応じた読み取りアルゴリズムが適用されてデコード処理が実施される。一方、明暗パターン列Baに一側マージンが存在しない場合には(S113でNo)、ステップS117にて明暗パターン列Baの両端のバーを1本ずつ減らして(n=n−2)、上記ステップS109からの処理がなされる。
【0045】
ステップS115にてデコード処理が実施されると、ステップS119にてこのデコード処理が成功しているか否かについて判定され、デコード処理が成功している場合には(S119でYes)、ステップS121にて他側マージンが存在するか否かについて判定される。この判定処理では、明暗パターン列Baの最後の黒バー又はキャラクタパターンより、バーコードの種類に応じてマージンチェックが実行される。
【0046】
ここで、デコード処理が失敗するか(S119でNo)、明暗パターン列Baに他側のマージンが存在しない(S121でNo)場合には、ステップS123において、上述したデコード処理においてデコード対象として評価されたバーの本数mをバー本数nより減じて(n=n−m)、上記ステップS109からの処理がなされる。
【0047】
明暗パターン列Baに他側マージンが存在すると(S121でYes)、図4のステップS125において、当該バーコードがRSSコードの1つであるRSS_Limitedとして認識できるか否かを判定し、RSS_Limitedとして認識できない場合には(S125でNo)、本読取処理を終了する。
【0048】
一方、バーコードがRSS_Limitedとして認識できる場合は(S125でYes)、ステップS127において、明暗パターン列Baの配列方向外方であって当該明暗パターン列Baの両端近傍のいずれかに判定用キャラクタBbが存在するか否かについて判定される。ここで、判定用キャラクタBbとは、第1バーコードBに存在し得るキャラクタパターンの1つであり、明暗パターン列Baの両端近傍における双方の領域に判定用キャラクタBbが存在しない場合には(S127でNo)、明暗パターン列Baが第1バーコードBの一部のコードパターンに一致すると想定されないので、ステップS135にて、当該バーコードがRSS_Limitedであることが確定される。
【0049】
一方、明暗パターン列Baの両端近傍のいずれかの領域に第1バーコードBの一部のコードパターンに一致する領域があることから判定用キャラクタBbが存在すると判定される場合には(S127でYes)、ステップS129にて、明暗パターン列BaにセンターバーBcが存在するか否かについて判定される。本実施形態では、5本のナローバーからセンターバーBcが構成されるものとし、明暗パターン列BaにセンターバーBcが存在しない場合には(S129でNo)、ステップS135にて、当該バーコードがRSS_Limitedであることが確定される。
【0050】
一方、図5に示すように、明暗パターン列Baの一端近傍の領域に判定用キャラクタBbが存在するとともに当該明暗パターン列BaにセンターバーBcが存在する場合には(S129でYes)、ステップS131にてマージン位置推定処理がなされる。この処理では、上記第1規格に基づいて、明暗パターン列Baに対してセンターバーBcの位置を基準に上記判定用キャラクタBbが存在する方のマージン位置が推定される。
【0051】
このように5本のナローバーから構成されるセンターバーBcを基準にして上記マージン位置を推定する理由は、例えば、バーコードの両端に設けられる3本のナローバーから構成されるガードバーに基づいてマージン位置を推定する場合と比較して、マージン位置の推定精度を向上させることができるからである。
【0052】
そして、ステップS133において、上述のように推定されたマージン位置に上記第1規格に基づくマージンBdが存在するか否かについて判定される。ここで、ステップS127にて判定用キャラクタBbと判定された領域が実際には第1バーコードBとは異なる模様等であることから、図5(A)に示すように上記マージン位置に上記第1規格に基づくマージンBdが存在しないと判定される場合には(S133でNo)、ステップS135にて当該バーコードがRSS_Limitedであることが確定される。
【0053】
このように、明暗パターン列Baの両端近傍に存在する模様等により判定用キャラクタBbが存在すると判定されることから、従来、RSS_Limitedでないとみなされていた場合でも、推定されるマージン位置にマージンBdが存在しないと判定される場合にはRSS_Limitedと判断することで、RSS_Limitedに関する読取精度を向上させることができる。
【0054】
一方、ステップS127にて判定用キャラクタBbと判定された領域が実際に第1バーコードBの一部であることから、図5(B)に示すように上記マージン位置に上記第1規格に基づくマージンBdが存在する場合には(S133でYes)、ステップS137にて報知処理がなされて、制御回路40により制御されて発光部43が所定の警告色で点灯する。
【0055】
そして、ステップS139にて無効処理がなされて、上記読み取りが失敗であり読み取ったバーコードが無効とされる。
【0056】
ここで、上記マージン位置にマージンBdが存在しないことからステップS139にてバーコードを無効する理由について、以下に説明する。本来、上記明暗パターン列Baを一部とするコードパターンが第1バーコードBであるEANコードやUPCコード等として読み取れるのであれば、そもそも当該明暗パターン列Baが第2バーコードBであるRSS_Limitedとして読み取れるか否かを判定する必要性は低くなる。そのため、上記明暗パターン列Baと異なる領域の欠損等により第1バーコードBとして読み取ることができないことから当該明暗パターン列Baが第2バーコードBとして読み取れるか否かを判定して、第2バーコードBとして読み取れない場合、すなわち、推定されたマージン位置にマージンBdが検出される場合には、読み取ったバーコードを無効にする。このような場合には、当該明暗パターン列Baを含むコードパターンを読み取る可能性は非常に低いので、読み取ったバーコードを無効にすることにより、不要なデータを確実に除外することができる。
【0057】
また、上記マージン位置にマージンBdが存在しないことからステップS139にてバーコードを無効する場合には、上記報知処理により、発光部43が所定の警告色で点灯するので、読み取ったバーコードが第2バーコードBとして読み取りできないが読み取り対象のバーコードを新たに読み取る場合には第1バーコードBとして読み取れる可能性が高いことを、使用者に認識させることができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係るバーコード読取装置10では、第1規格に基づく第1バーコードBの一部のコードパターンが、当該第1規格よりもバーの構成本数が少なく設定される第2規格に基づく第2バーコードBとして読み取れる可能性がある場合に、上記ステップS103等(第1ステップ,読取手段)により、読み取ったバーコードを2値化処理して得られる明暗パターン列Baに対して第2規格の読み取りアルゴリズムを適用して読み取りがなされる。そして、上記ステップS127(第2ステップ,判定手段)により、明暗パターン列Baの両端近傍の少なくとも一方に判定用キャラクタBbが存在すると判定されると、上記ステップS131(第3ステップ,マージン位置推定手段)により、明暗パターン列Baを第1バーコードBの一部のコードパターンと想定して当該第1バーコードBに対応するマージン位置が推定される。そして、この推定されたマージン位置にマージンBdを検出しない場合には、上記ステップS135(第4ステップ,確定手段)により、上記明暗パターン列Baが第2バーコードBであるRSS_Limitedとして確定される。
【0059】
これにより、上記明暗パターン列BaがRSS_Limitedとして読み取れる可能性がある場合において、当該明暗パターン列Baの両端近傍の少なくとも一方に判定用キャラクタBbが存在しかつ所定のマージン位置にマージンBdが存在しない場合には、このキャラクタパターンはバーコードの一部とは異なる模様であるから、当該明暗パターン列BaをRSS_Limitedの読取データとして確定することができる。
したがって、複数種類の規格の類似したパターンのバーコードが混在する場合でもRSS_Limitedの読取精度を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態に係るバーコード読取装置10では、第1バーコードに対応するマージン位置が当該第1バーコードのセンターバーBcに基づいて推定されるため、ガードバー等に基づいてマージン位置を推定する場合と比較して、マージン位置の推定精度を向上させることができる。
【0061】
さらに、本実施形態に係るバーコード読取装置10では、推定されたマージン位置にマージンBdが検出される場合には、読み取ったバーコードが無効とされる。このように、推定されたマージン位置にマージンBdが検出される場合には、当該明暗パターン列Baを含むコードパターンを読み取る可能性は非常に低いとして、読み取ったバーコードを無効にすることにより、不要なデータを確実に除外することができる。
【0062】
また、本実施形態に係るバーコード読取装置10では、読み取ったバーコードを無効とする場合には発光部43が所定の警告色で点灯することでその旨が使用者に報知されるため、読み取ったバーコードが第2バーコードBとして読み取りできないが読み取り対象のバーコードを新たに読み取る場合には第1バーコードBとして読み取れる可能性が高いことを、使用者に認識させることができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)上記ステップS137の報知処理において、発光部43の点灯により第1バーコードBとして読み取り可能性を使用者に報知することに限らず、例えば、ブザー44やバイブレータ45を駆動させることで第1バーコードBとして読み取り可能性を使用者に報知してもよい。
【0064】
(2)本発明は、EANコードの一部のコードパターンが、RSS_Limitedに一致する場合に適用されることに限らず、UPCコードの一部のコードパターンが、RSS_Limitedに一致する場合に適用されてもよい。また、本発明は、第1規格に基づく第1バーコードの一部のコードパターンが、当該第1規格よりもバーの構成本数が少なく設定される第2規格に基づく第2バーコードとして読み取られてしまう可能性がある場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10…バーコード読取装置
B…バーコード
…第1バーコード
…第2バーコード
Ba…明暗パターン列
Bb…判定用キャラクタ
Bc…センターバー
Bd…マージン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の規格に基づいて作成されたバーコードを光学的に読み取り、当該バーコードに記録されているデータをデコードするバーコード読取方法において、
前記複数種類のうち、第1規格に基づく第1バーコードの一部のコードパターンが、前記第1規格よりもバーの構成本数が少なく設定される第2規格に基づく第2バーコードとして読み取れる可能性がある場合に、
読み取ったバーコードを2値化処理して得られる明暗パターン列に対して前記第2規格の読み取りアルゴリズムを適用して読み取りを行う第1ステップと、
前記第1ステップにより読み取られた前記明暗パターン列の両端近傍の少なくとも一方に、前記第1バーコードに存在し得るキャラクタパターンが存在するか否かを判定する第2ステップと、
前記第2ステップにより前記キャラクタパターンが存在すると判定された場合に前記明暗パターン列を前記第1バーコードの一部のコードパターンと想定して当該第1バーコードに対応するマージン位置を推定する第3ステップと、
前記第3ステップにより推定された前記マージン位置にマージンを検出しない場合には、前記明暗パターン列を前記第2バーコードの読取データとして確定する第4ステップと、
を備えることを特徴とするバーコード読取方法。
【請求項2】
前記第3ステップは、前記第1バーコードに対応するマージン位置を当該第1バーコードのセンターバーに基づいて推定することを特徴とする請求項1に記載のバーコード読取方法。
【請求項3】
前記第4ステップは、前記第3ステップにより推定された前記マージン位置にマージンを検出する場合には、前記第1ステップにより読み取った前記バーコードを無効とすることを特徴とする請求項1または2に記載のバーコード読取方法。
【請求項4】
前記第1ステップにより読み取った前記バーコードを前記第4ステップにより無効とする場合には、その旨を報知する第5ステップを備えることを特徴とする請求項3に記載のバーコード読取方法。
【請求項5】
前記第1バーコードは、EAN (European Article Number)コード、および、UPC (Universal Product Code)コードのいずれか1つであり、
前記第2バーコードは、RSS (Reduced Space Symbology)コードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバーコード読取方法。
【請求項6】
複数種類の規格に基づいて作成されたバーコードを光学的に読み取り、当該バーコードに記録されているデータをデコードするバーコード読取装置において、
前記複数種類のうち、第1規格に基づく第1バーコードの一部のコードパターンが、前記第1規格よりもバーの構成本数が少なく設定される第2規格に基づく第2バーコードとして読み取れる可能性がある場合に、
読み取ったバーコードを2値化処理して得られる明暗パターン列に対して前記第2規格の読み取りアルゴリズムを適用して読み取りを行う読取手段と、
前記読取手段により読み取られた前記明暗パターン列の両端近傍の少なくとも一方に、前記第1バーコードに存在し得るキャラクタパターンが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記キャラクタパターンが存在すると判定された場合に前記明暗パターン列を前記第1バーコードの一部のコードパターンと想定して当該第1バーコードに対応するマージン位置を推定するマージン位置推定手段と、
前記マージン位置推定手段により推定された前記マージン位置にマージンを検出しない場合には、前記明暗パターン列を前記第2バーコードの読取データとして確定する確定手段と、
を備えることを特徴とするバーコード読取装置。
【請求項7】
前記マージン位置推定手段は、前記第1バーコードに対応するマージン位置を当該第1バーコードのセンターバーに基づいて推定することを特徴とする請求項6に記載のバーコード読取装置。
【請求項8】
前記確定手段は、前記マージン位置推定手段により推定された前記マージン位置にマージンを検出する場合には、前記読取手段により読み取った前記バーコードを無効とすることを特徴とする請求項6または7に記載のバーコード読取装置。
【請求項9】
前記読取手段により読み取った前記バーコードを前記確定手段により無効とする場合には、その旨を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項8に記載のバーコード読取装置。
【請求項10】
前記第1バーコードは、EAN (European Article Number)コード、および、UPC (Universal Product Code)コードのいずれか1つであり、
前記第2バーコードは、RSS (Reduced Space Symbology)コードであることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載のバーコード読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−250641(P2010−250641A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100554(P2009−100554)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】