説明

バーナ燃焼装置

【課題】空気比を一定に保つことができる簡素なバーナ燃焼装置を提供する。
【解決手段】バーナ燃焼装置は、バーナ2に燃焼空気を供給する空気流路3に設けられた固定オリフィス8と、バーナ2に燃料を供給する燃料流路4に設けられ、開口面積を変化させられる可変オリフィス12と、燃料流路4の可変オリフィス12の上流側に設けられ、その位置における燃料の圧力を空気流路3の固定オリフィス8の上流側における燃焼空気の圧力と等しい圧力にする第1均圧弁13と、燃料流路4の可変オリフィス12の下流側に設けられ、その位置における燃料の圧力を空気流路3の固定オリフィス8の下流側における燃焼空気の圧力と等しい圧力にする第2均圧弁14と、空気流路3に設けられ、燃焼空気の温度を検出する空気温度検出器11と、空気温度検出器11が検出した温度に応じて、可変オリフィス12の開口面積を制御する制御装置15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナ燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーナでは、良好な燃焼状態を維持するために、燃料と燃焼空気との比を適正な値に保つ必要がある。つまり、実際に供給される空気量の燃料を完全燃焼させるために必要な理論空気量に対する比である空気比(空気量/理論空気量)を適切な値に保つ必要がある。一般に、バーナに求められる燃焼熱量を確保するために、燃料の流量が調整され、それに合わせて燃焼空気の流量も調整される。
【0003】
燃焼空気の流量を調整する方法として、特許文献1に記載されているように、燃料流路に流量計を設け、検出した燃料流量に応じて、空気流路のバルブの開度を調整し、空気比を一定に保つ方法がある。また、より簡素な構成として、特許文献2に記載されているように、燃料の圧力と燃焼空気の圧力とを等しく保つ均圧弁を設けることで、空気比を一定に保つ方法もある。
【0004】
さらに、燃料および燃焼空気の流路にそれぞれオリフィスを設け、燃料流路のオリフィスの前後に、燃料の圧力をオリフィスの前後の燃焼空気の圧力とそれぞれ等しくする均圧弁を設けることで、オリフィスを通過する燃料と燃焼空気との流量比を一定に保つ二重均圧弁方式も知られている。二重均圧弁方式では、燃料流路のオリフィスの開口面積を調整することで、空気比を設定できる。
【0005】
これらの方法では、燃料や燃焼空気の温度が変化すると、気体の状態方程式にしたがって体積が温度に比例して変化するため、空気比を一定に保つことができないという問題がある。特に、燃焼排ガスから燃焼空気に熱回収を行う空気予熱式の燃焼装置では、燃焼空気の温度が大きく変化するため、上述の方法では、空気比を適切に調整できなかった。例えば、図6に示すように、350℃に予熱された空気について適正な空気比μ=1.1となるようにオリフィス径を選定したとしても、炉の立ち上げ時などにおいて実際の空気温度が50℃であれば、空気比μ=1.53となり、バーナが吹き消える畏れもある。
【0006】
燃料および燃焼空気の流路にそれぞれ質量流量を検出できる流量計を設け、燃料の流量に応じて燃焼空気の流量を調整するバルブを制御すれば、空気比を正確に制御することができるが、装置のコストが高くなるため、小型の燃焼装置に採用することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4234309号公報
【特許文献2】特開2010−230279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記問題点に鑑みて、空気比を一定に保つことができる簡素なバーナ燃焼装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明によるバーナ燃焼装置は、バーナに燃焼空気を供給する空気流路に設けられた固定オリフィスと、前記バーナに燃料を供給する燃料流路に設けられ、開口面積を変化させられる可変オリフィスと、前記燃料流路の前記可変オリフィスの上流側に設けられ、その位置における前記燃料の圧力を前記空気流路の前記固定オリフィスの上流側における前記燃焼空気の圧力と等しい圧力にする第1均圧弁と、前記燃料流路の前記可変オリフィスの下流側に設けられ、その位置における前記燃料の圧力を前記空気流路の前記固定オリフィスの下流側における前記燃焼空気の圧力と等しい圧力にする第2均圧弁と、前記空気流路に設けられ、前記燃焼空気の温度を検出する空気温度検出器と、前記空気温度検出器が検出した温度に応じて、前記可変オリフィスの開口面積を制御する制御装置とを有するものとする。
【0010】
この構成によれば、燃料流路と空気流路のオリフィスの前後の圧力が同じになるようにし、空気流路のオリフィスの開口面積を空気温度に応じて調整可能とすることで、空気温度に応じて燃料流量を最適化し、空気温度に拘わらず最適な空気比を実現できる。これにより、空気や燃料の質量流量を測定する必要がなく、装置が高価にならない。
【0011】
また、本発明のバーナ燃焼装置において、前記可変オリフィスは、前記燃料流路の流路面積に対する開口面積の比の機械的な最小値が0.2から0.28の間であってもよい。
【0012】
この構成によれば、可変オリフィスの開口を、広範囲の空気比および空気温度に対して適切な面積にすることができ、且つ、可変オリフィスの開口面積の機械的に調整可能な範囲の中の広い範囲を実際に使用することができるので、開口面積の調整の分解能が高く、繊細な制御が可能である。
【0013】
また、本発明のバーナ燃焼装置において、前記制御装置は、前記燃焼空気の温度と前記可変オリフィスの開口面積とを1対1に対応付ける特性曲線データを記憶してもよい。
【0014】
この構成によれば、可変オリフィスの制御に参照テーブルを使用する簡単な制御が適用できる。
【0015】
また、本発明のバーナ燃焼装置において、前記制御装置は、複数の異なる前記特性曲線データを記憶してもよい。
【0016】
この構成によれば、ユーザが特性曲線を選択することによって空気比を指定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、二重均圧弁方式の燃料オリフィスの開口面積を空気温度に応じて調整可能とすることで、安価な構成で、空気温度に拘わらず最適な空気比を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1つの実施形態であるバーナ燃焼装置の構成図である。
【図2】図1のバーナ燃焼装置における可変オリフィスの開口比の特性曲線である。
【図3】図1の可変オリフィスの弁の概略正面図である。
【図4】図3の可変オリフィスの弁開度と開口比の関係を示す図である。
【図5】図2の代案の可変オリフィスの開口比の特性曲線である。
【図6】従来の二重均圧弁方式の空気比変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、本発明の1つの実施形態であるバーナ燃焼装置の構成を示す。本実施形態のバーナ燃焼装置は、燃焼室1に設けたバーナ2に、燃焼空気を供給する空気流路3と、燃料を供給する燃料流路4とを備える。
【0020】
空気流路3には、燃焼室1から煙道5を通して排出される燃焼排ガスと熱交換して空気を予熱するための熱交換器6が設けられている。さらに、空気流路3には、空気量を調節するための主調整弁7が設けられ、主調整弁7の下流に、開口面積が固定された固定オリフィス8が配設されている。主調整弁7は、燃焼室1内の温度を検出する炉内温度センサ9の検出値が設定温度になるように、その弁の開度がPIDコントローラ10によって調整される。また、空気流路3には、燃焼空気の温度を検出する空気温度検出器11も設けられている。
【0021】
燃料流路4には、開口面積を調整可能な可変オリフィス12が配設されている。さらに、燃料流路4には、可変オリフィス12の上流側の圧力を、空気流路3の固定オリフィス8の上流側の圧力と同じ圧力に調整する第1均圧弁13と、可変オリフィス12の下流側の圧力を、空気流路3の固定オリフィス8の下流側の圧力と同じ圧力に調整する第2均圧弁14とが設けられている。
【0022】
可変オリフィス12は、オリフィス制御装置15によって、その開口面積が、空気温度検出器11の検出値と、ユーザが予め設定する空気比とに応じて調整されるようになっている。
【0023】
第1均圧弁13および第2均圧弁14は、ダイアフラムの両側に導圧管16,17を介して圧力を等しくすべき2つの部分の圧力が導かれ、それらの圧力差によって弁体が駆動される。
【0024】
図2に、オリフィス制御装置15によって設定される可変オリフィス12の開口面積の燃料流路4の流路面積に対する比(開口比)を示す。本実施形態では、オリフィス制御装置15において、ユーザが空気比μを0.9から1.3までの間で0.1刻みの値から選択した所望の比に設定できるようになっている。
【0025】
オリフィス制御装置15は、図示するように、各空気比μの設定値毎に、空気温度検出器11が検出した空気温度と可変オリフィス12の開口比とを1対1に対応付ける特性曲線データを記憶している。特性曲線データは、通常、空気温度の区分毎に開口比を割り当てた参照テーブルとして記憶されるが、開口比を空気温度の関数として記憶して演算によって導出するようにしてもよい。
【0026】
図3に、可変オリフィス12の構成を示す。可変オリフィス12は、燃料流路4の流路径と等しい内径のハウジング18の中に、円盤状の弁体19が駆動軸20によって保持されており、駆動軸20の回転によって、弁体19が傾斜して開口面積を拡大するバタフライタイプの可変オリフィスである。本実施形態の可変オリフィス12は、弁体19の径がハウジング18の流路径よりも小さく、その最大投影面積が流路面積の80%である。このように小型の弁体19を備える可変オリフィス12は、機械的に最も開口面積を小さくしたときの開口比が0.2になる。
【0027】
図4に、可変オリフィス12の弁開度(1%は、駆動軸20の回転角度0.9°に相当する)と、オリフィス開口比との関係を、径がハウジングの内径に等しい通常の弁体を用いた場合の開口比と対比して示す。尚、駆動軸20は、パルスモータによって駆動され、その分解能(1パルスに相当)は、0.3%であり、角度にして0.27°である。
【0028】
図4には、図2において、最も開口比が小さくなる空気比μ=1.3で空気温度500℃の場合の開口比0.20から、最も開口比が大きくなる空気比μ=0.9で空気温度20℃の場合の開口比0.48までの弁開度範囲を示す。図示するように、本実施形態の小型の弁体19は、通常の弁体に比べて格段に広い範囲の弁開度で使用される。即ち、小型の弁体19を有する可変オリフィス12は、駆動軸20の角度位置決め分解能当たりの開口比の変化量が小さく、繊細な制御が可能である。
【0029】
尚、オリフィス制御装置15が記憶する特性曲線データは、可変オリフィス12の開口比を、駆動軸20の角度で表した値として記述したものであってもよい。
【0030】
一般に、オリフィス前後の圧力差とオリフィス開口比と応じて流量が正確に定められるのは、開口比0.2から0.66の範囲である。そこで、図5に、本実施形態において、最も開口比が小さくなる空気比μ=0.9で空気温度20℃の場合の開口比がオリフィスとして機能する最大開口比である0.66になるように、弁体17の外径を変更した場合の特性曲線を示す。この場合、最も開口比が小さくなる空気比μ=1.3で空気温度500℃のとき、開口比は0.28となる。
【0031】
これらより、可変オリフィス12の開口比の最小値は、図2の場合の0.2から図5の場合の0.28の間であればよい。つまり、可変オリフィス12の弁体19の最大投影面積が、燃料流路4(可変オリフィス12前後の実効部分)の流路面積の0.72倍から0.8倍の間になるようにすればよい。
【符号の説明】
【0032】
1…燃焼室
2…バーナ
3…空気流路
4…燃料流路
5…煙道
6…熱交換器
7…主調整弁
8…固定オリフィス
9…炉内温度センサ
10…PIDコントローラ
11…空気温度検出器
12…可変オリフィス
13…第1均圧弁
14…第2均圧弁
15…オリフィス制御装置
16,17…導圧管
18…ハウジング
19…弁体
20…駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナに燃焼空気を供給する空気流路に設けられた固定オリフィスと、
前記バーナに燃料を供給する燃料流路に設けられ、開口面積を変化させられる可変オリフィスと、
前記燃料流路の前記可変オリフィスの上流側に設けられ、その位置における前記燃料の圧力を前記空気流路の前記固定オリフィスの上流側における前記燃焼空気の圧力と等しい圧力にする第1均圧弁と、
前記燃料流路の前記可変オリフィスの下流側に設けられ、その位置における前記燃料の圧力を前記空気流路の前記固定オリフィスの下流側における前記燃焼空気の圧力と等しい圧力にする第2均圧弁と、
前記空気流路に設けられ、前記燃焼空気の温度を検出する空気温度検出器と、
前記空気温度検出器が検出した温度に応じて、前記可変オリフィスの開口面積を制御する制御装置とを有することを特徴とするバーナ燃焼装置。
【請求項2】
前記可変オリフィスは、前記燃料流路の流路面積に対する開口面積の比の機械的な最小値が0.2から0.28の間であることを特徴とする請求項1に記載のバーナ燃焼装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記燃焼空気の温度と前記可変オリフィスの開口面積とを1対1に対応付ける特性曲線データを記憶していることを特徴とする請求項1または2に記載のバーナ燃焼装置。
【請求項4】
前記制御装置は、複数の異なる前記特性曲線データを記憶していることを特徴とする請求項3に記載のバーナ燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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