説明

パイプの三次元方向への加工方法及び装置ならびにパイプ

【課題】設置場所や作業範囲に広い面積を必要とせず、ランニングコストも安価で、少数のパイプを三次元加工するのにも適したパイプの三次元方向への加工方法及び装置を提供する。
【解決手段】加熱して軟化したパイプ11を、板状部材13に設けたU字型ガイド部材14を構成する一対の帯状鋼板17・18間に挟みこむようにして二次元方向のU字型に曲成する。その後三次元方向への曲成加工用の固定部15の両鉤型部材21・21を起こし、鉤型部材21と両鉤型部材21・21間に渡って装着される横桟材22を差し入れた後、パイプ11の両端を持って所望の高さ位置(角度)に持ち上げて曲成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパイプを三次元方向へ加工する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、パイプを三次元方向に加工する場合、特許文献1に示すように、 曲げ装置の動力として、駆動されるX軸スライド部を水平に配置し、このX軸スライド部に水平面内で交叉方向に延びたアームを設け、このアームの先端側に垂直方向に駆動可能なZ軸スライド部9を取付ける一方、Z軸スライド部の下端部に水平に動くY軸スライド部を設け、三次元曲げされるチューブの長さ方向での角度変化に追従するため、前記Y軸スライド部の中心に、水平回転機構を介してZ軸方向に追従昇降できる水平ローラと該水平ローラにおける左右両端の鉛直下方に互いに向き合った球状の自在ベアリング又は縦ローラを備えたヘッド機構を取付け、三次元曲げされるチューブの曲げ軌道に対して3軸方向に自由に追従可能な一体形構造で動作させることにより、三次元曲げ加工を高速で行えるようにしたものが提案されている。
【0003】
ところがこうしたものでは、加工装置の構造が複雑で大型になり、且つ高価になるだけでなく、設置場所や作業範囲に広い面積を必要とするという問題がある。
しかも、イニシャルコストとともにランニングコストも高くなってしまい、少数のパイプを三次元加工するのには適さないという問題があった。
【特許文献1】特開2007−223043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑み提案されたもので、設置場所や作業範囲に広い面積を必要とせずランニングコストも安価で少数のパイプを三次元加工するのに適したパイプの三次元方向への加工方法及び装置を提供で来るようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明にかかるパイプの三次元方向への加工方法は、加熱して軟化させたパイプをU字型の二次元方向に成型した後、当該U字型に形成された部分を固定し、パイプの端部を三次元方向に曲成するようにしたことを最も主要な特徴とするものである。
【0006】
本発明にかかるパイプの三次元方向への加工方法では、パイプを加熱するにあたり、当該加熱するパイプ部分に保形部材を充填するようにしたことも特徴とするものである。
【0007】
また、本発明にかかるパイプの三次元方向への加工装置は、パイプを加熱する加熱手段と、当該加熱部分をU字型に折り曲げるときにガイドするU字型ガイド部とU字型に折り曲げられたパイプ部分を取り外し可能に固定する固定部とを備えた成型手段とで構成したことを最も主要な特徴とするものである。
【0008】
本発明にかかるパイプの三次元方向への加工装置では、U字型ガイド部と固定部とが板状部材に設けてあることも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるパイプの三次元方向への加工方法によれば、加熱して軟化させたパイプをU字型の二次元方向に成型した後、当該U字型に形成された部分を固定し、パイプの端部を三次元方向に曲成するだけの簡単な操作で、パイプを三次元方向へ加工することができる。これにより、手早く、しかも楽に加工することができ、安価に行えることから、少数の加工に適した加工方法を提供することができる。
【0010】
また、パイプの三次元方向への加工方法において、パイプを加熱するにあたり、当該加熱するパイプ部分に保形部材を充填するようにしたものでは上記効果に加えて、潰れのない高品質の三次元方向に加工されたパイプを形成することができる利点がある。
【0011】
本発明にかかるパイプの三次元方向への加工装置によれば、パイプを加熱する加熱手段と、当該加熱部分をU字型に折り曲げるときにガイドするU字型ガイド部とU字型に折り曲げられたパイプ部分を取り外し可能に固定する固定部とを備えた成型手段とで構成するだけの簡単な構造であることから、その製作費も安価にできるとともに、設置面積や作業用に要する面積も小さくすることができる利点がある。
【0012】
また、パイプの三次元方向への加工装置において、U字型ガイド部と固定部とを板状部材に設けたものでは、上記効果に加えて、パイプの三次元方向への加工装置を軽量なものにすることができ、可搬性に優れたものにできる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかるパイプの三次元方向への加工方法及び装置の最も好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は三次元方向への加工されたパイプを使用した一例としての果実等の集荷装置の分解図を示すもので、図中符号1は果実等の集荷装置を全体的に示す。
この集荷装置1は、U形に形成された先端部分2が三次元方向である上方に曲成された橇部分3と、橇部分3の上方に固定される枠体4と、枠体4に載置される集荷ケース5と橇部分3を引っ張るためのロープからなる牽引索6とを備えてなる。
【0014】
集荷ケース5は、木製板材若しくは合成樹脂成型により、上端が開口7を形成した角型の容器状に形成されている。
そして、集荷ケース5が載置される枠体4は、L形鋼で前記集荷ケース5の底部が外嵌するように4角形に枠組みされ、その周囲4箇所に突出させたL形鋼の端部に取り付け用孔8が穿設されており、この取り付け用孔8に後述する橇部分3の上面に突出するボルト9が挿通され、ナット10が螺締されることにより枠体4が橇部分3に固定されるようになっている。
【0015】
橇部分3は塩化ビニルのパイプ(以下単にパイプという)11の中間部分がU型に形成され、このU型の先端部分2が三次元方向に曲成されており、この三次元方向への曲成加工の方法及び装置は図2乃至図5に示すようになっている。
図2は三次元方向への加工装置12の平面図であり図3はその側面図である。
図において符号13は合板等の板材からなる基盤であって、この基盤13の上面部分に二次元方向への曲成加工用ガイド部材(U字型ガイド部)14と、曲成加工用ガイド部材14の両側方部分の基盤13に三次元方向への曲成加工用の固定部15が配設されており、上記曲成加工用ガイド部材14と曲成加工用の固定部15とで成型手段16が形成されている。
【0016】
上記二次元方向への曲成加工用ガイド部材14は、U字型に形成された一対の帯状鋼板17・18をビス等の固定手段19により基盤13の上面に固定して構成してある。
ここで、本発明にいう上記U字型には図2でわかるように、外側の帯状鋼板18のような緩やかな円弧の形状をも包含する。
そして、三次元方向への曲成加工用の固定部15は、基盤13に固定された枢支部材20に起伏揺動可能に取り付けられた鉤型部材21と、両鉤型部材21・21間に渡って装着される横桟材22とからなる。
【0017】
上記のように構成された三次元方向への加工装置12を用いてパイプ11を三次元方向に曲成加工する手順を次に説明する。
まず、加工するパイプ11の少なくとも加工される部分に図示は省略したが砂等からなる保形部材を充填する。
次に、保形材を充填した加工される部分を図4に示すような加熱手段23により加熱して当該部分を軟化させる。
この加熱手段23の詳細の図示は省略したが、設置用のベース24に支えられ、内方に電熱線を内装したチューブ25を設けて形成したものである。
【0018】
こうして加熱手段23により加熱されて軟化したパイプ11は、加工装置12のガイド部材14を構成するU字型に形成された一対の帯状鋼板17・18間に挟みこむようにして二次元方向のU字型に曲成する。
そして、図3に示すように上記二次元方向のU型に曲成したパイプ11を基盤上に沿わせた状態にし、三次元方向への曲成加工用の固定部15の両鉤型部材21・21を起こし、図4に示すように両鉤型部材21・21にわたって横桟材20を差し入れる。
【0019】
然る後、パイプ11の両端を持って所望の高さ位置(角度)に持ち上げて曲げ加工してから、横桟材22を外すと、パイプ11の三次元方向への曲げ加工が終了する。
三次元方向への曲げ加工が終了したパイプ11は、少なくとも加工される部分に充填された砂等の保形部材の取り出しが行われる。
因みに、砂等からなるパイプ11に充填された保形部材は、蓄熱素養をすることから、二次元方向のU型への曲成加工から三次元方向への曲成加工にいたるまでの間、パイプ11の加工される部分の柔軟性を保持する作用もする。
【0020】
上記の実施の形態では、加熱手段23を、設置用のベース24に支えられ、内方に電熱線を内装したチューブ25を設けて形成するようにしてあるがこうしたものに限られず、ガスバーナー等の炎で加熱することができるのはいうまでもないことである。
また、加熱手段23をガスバーナー等の炎で加熱する場合にはパイプが塩化ビニル等の合成樹脂製パイプに限られず金属製のパイプの加工にも実施することができるのはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】は本発明にかかるパイプの三次元方向への加工装置により三次元加工されたパイプを使用してなる果実等の集荷装置の分解斜視図である。
【図2】は本発明にかかるパイプを三次元方向へ加工する装置の平面図である。
【図3】は本発明にかかるパイプを三次元方向へ加工する装置の側面図である。
【図4】は本発明にかかるパイプの三次元方向への加工装置で加工する前の加熱手段で加熱している状態の斜視図である。
【図5】は本発明にかかるパイプの三次元方向への加工装置でパイプを三次元方向へ加工する過程の側面図である。
【符号の説明】
【0022】
11・・・パイプ
12・・・パイプの三次元方向への加工装置
14・・・U字型ガイド部
15・・・固定部
19・・・成型手段
23・・・加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱して軟化させたパイプをU字型の二次元方向に成型した後、当該U字型に形成された部分を固定し、パイプの端部を三次元方向に曲成するようにしたことを特徴とするパイプの三次元方向への加工方法。
【請求項2】
パイプを加熱するにあたり、当該加熱するパイプ部分に保形部材を充填するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のパイプの三次元方向への加工方法。
【請求項3】
パイプを加熱する加熱手段と、当該加熱部分をU字型に折り曲げるときにガイドするU字型ガイド部とU字型に折り曲げられたパイプ部分を取り外し可能に固定する固定部とを備えた成型手段とからなるパイプの三次元方向への加工装置。
【請求項4】
U字型ガイド部と固定部とが板状部材に設けてある請求項2に記載のパイプの三次元方向への加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−111080(P2010−111080A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287549(P2008−287549)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(596086491)
【Fターム(参考)】