説明

パイプコンベヤ

【課題】 保形手段を工夫することにより、湾曲走行部において、ベルトに発生するあらゆる方向の応力を可及的に減少しうるようにすることにより、ベルトの走行抵抗の増大を防止しうるとともに、ベルトが安定して走行しうるようにしたパイプコンベヤを提供する。
【解決手段】 1対のローラ間に架け回した無端帯状のベルト1を、保形枠11に設けたベルト挿通孔10を通過する間にパイプ状に丸めて走行させるようにしたパイプコンベヤにおいて、無方向に回転するように取り付けられた球体17を有するボールベアリング13を保形枠11に取り付け、丸められたべルトの円周方向の少なくとも一部を、ボールベアリング13の球体17により案内するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対のローラ間に架け回した無端帯状のベルトの少なくとも一部を、パイプ状に丸めて無端回走させるようにしたパイプコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
1対のローラ間に架け回した無端帯状のベルトの少なくとも一部を、ほぼ円形に配置した複数のガイドローラ内を通過させることにより、パイプ状に丸めて無端回走させるようにしたパイプコンベヤは公知である。
【0003】
このようなパイプコンベヤでは、その丸められたベルトが、左右または上下にカーブする湾曲走行部において、湾曲の内側では圧縮応力が、また外側では引張り応力が発生し、べルトが楕円形につぶれようとしたり、または捩れを生じようとすることがある。このようなつぶれや捩れにより、パイプコンベヤの走行抵抗が増大し、消費電力が増えることになる。
【0004】
このようなつぶれや捩れを矯正する技術も種々提案されている。
例えば、湾曲走行部の手前で、丸められているベルトの側縁部を開き、その後再び丸めるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−327121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によれば、湾曲走行部手前でベルトの両側縁部が開かれることにより、左右両側縁部のバランスが回復され、正しい状態で湾曲走行部に送り込むことができ、ベルトのねじれを防止することができるが、湾曲走行部ごとにこのような手段を設けることはコストが嵩み、また、設置スペースも必要であるため、全ての湾曲走行部に適用することは困難である。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、保形手段を工夫することにより、湾曲走行部において、ベルトに発生するあらゆる方向の応力を可及的に減少しうるようにすることにより、ベルトの走行抵抗の増大を防止しうるとともに、ベルトが安定して走行しうるようにしたパイプコンベヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)1対のローラ間に架け回した無端帯状のベルトを、保形枠に設けたべルト挿通孔を通過する間に、パイプ状に丸めて走行させるようにしたパイプコンベヤにおいて、円弧状または円環状の本体の内面に、複数の球体を、一部が内方に突出するようにして、かつそれぞれが無方向に自転可能として保持してなるボールベアリングを、前記保形枠に取り付け、丸められたべルトの円周方向の少なくとも一部を、前記ボールベアリングの球体により案内するようにする。
【0008】
(2)上記(1)項において、保形枠の片面に、丸められたべルトの上部の外周面に接するように円弧状または円環状としたボールベアリングを設け、前記保形枠の他の面に、丸められたべルトの下部の外周面に接する保形ローラを有するローラ保形手段を設ける。
【0009】
(3)上記(2)項において、ボールベアリングの幅方向中心を、保形枠に支持させた垂直軸に枢支して、首振り可能とする。
【0010】
(4)上記(1)項において、保形枠の片面に、丸められたべルトの外周面に接するように、円環状としたボールベアリングを、その幅方向中心を通る垂直軸に枢支して首振り可能とし、前記保形枠の他の面に、丸められたべルトの下部の外周面に接するローラ保形手段を設ける。
【0011】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、ボールベアリングを、べルトの湾曲走行部に配設する。
【0012】
(6)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、ボールベアリングを、丸められたべルトの両側縁部同士が互いに重ね合わされた重合部の外側、またはベルトの丸められた部分の前後の丸め始めもしくは開き始めのトラフ変換部における互いに離間したべルトの両側縁部の外側に当接するように配設する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(a)請求項1記載の発明によると、べルトの一部を、ボールベアリングの球体により案内するようにしたので、ベルトに、拡がろうとする方向以外の方向に応力が発生するのを防止することができ、それによって、ベルトと案内手段との摩擦による走行抵抗の増加を防止することができる。また、ボールベアリングを使用するだけで、湾曲走行部に従来のような特別なねじれ防止手段等を設ける必要がないため、低コストで実現可能である。
【0014】
(b)請求項2記載の発明によると、べルトは、保形枠の片面ではローラ保形手段により安定して案内され、他面では、ボールベアリングにより、拡がろうとする方向以外の方向の応力の発生を防止しつつ円滑に案内され、ベルトの安定走行と走行抵抗の減少との両立を図ることができる。
【0015】
(c)請求項3記載の発明によると、ボールベアリングを垂直軸により首振り自在に支持してあるので、ベルトの一時的な進行方向の変更、すなわち蛇行や波打ち等を吸収することができ、さらに走行抵抗の減少を図ることができる。
【0016】
(d)請求項4記載の発明によると、環状体のボールベアリングにより、べルトをほぼ真円に丸めることができるとともに、請求項3の効果と同様の効果を奏することができる。しかも、市販のボールベアリングを用いることができるので、容易に実施することができる。
【0017】
(e)請求項5記載の発明によると、従来最も走行抵抗が大きかったベルトの湾曲走行部の走行抵抗を、著しく減少することができ、実用上の便益が大である。
【0018】
(f)請求項6記載の発明によると、丸められたべルトの両側縁部の重合部、およびベルトの丸め始めもしくは開き始めのトラフ変換部においては、べルトの両側縁部に進行方向と直交する方向の応力が最も掛かり易いが、この部分の外側にボールベアリングを配設して、べルトの側縁部を案内するようにしてあるので、上記応力の発生を著しく減少して、走行抵抗を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の概略側面図である。
無端帯状のベルト(1)は、動力駆動される上方の前部ローラ(2)と、自由回転する下方の後部ローラ(3)とに、平板状に展開された部分が架け回され、上側走行部分が往路ベルト(1a)、下側走行部分が復路ベルト(1b)をなしている。ベルト(1)は、保形手段(4)を通過する間にパイプ状に丸められて、ガイドされつつ走行するようになっている。
【0020】
供給用ホッパ(6)は、後部ローラ(3)付近で被搬送物(7)を、広げられたベルト(1)上に投入するように配設されており、荷受けホッパ(8)は、前部ローラ(2)を囲む位置に配設されている。
【0021】
図2は、図1のII―II線拡大断面図、図3は、図2のIII―III線断面図、図4は、図3のIV―IV線断面図である。
この保形手段(4)は、フレーム(9)により4隅が支持され、かつ上下2段(その上方のもののみを図示する)の円形のべルト挿通孔(10)を有する保形枠(11)と、保形枠(11)の片面のべルト挿通孔(10)の下部内周縁に沿って取り付けられたローラ保形手段(12)と、保形枠(11)のローラ保形手段(12)とは反対側の面の上部内周縁部に沿って取り付けられたボールベアリング(13)とを備えている。
【0022】
ローラ保形手段(12)は、保形枠(11)に取り付けられたホルダ(14)に、丸められたベルト(1)の下部の外周面に接するように、上記外周面の接線方向を向くローラ(15)が回転自在に支持されたもので、下部とその両側の3箇所に設けられている。
【0023】
ボールベアリング(13)は、図3に示すように、ほぼ半環状の本体(16)と、その内面に、一部が内方に突出するようにして取り付けられた複数の球体(17)とからなっている。本体(16)は、球体(17)が無方向に回転自在に嵌合された半球状の凹部(18)を有する保持リング(19)と、この保持リング(19)の内周面に当接されて球体(17)の表面に接触するシール板(20)と、保持リング(19)およびシール板(20)の外側に設けられた取付枠(21)(22)とからなり、両取付枠(21)(22)はねじ(23)をもって保形枠(11)に固定されている。
【0024】
図2に示すように、ローラ保形手段(12)およびボールベアリング(13)の内部にべルト(1)が進入すると、ベルト(1)は、鎖線で示すように、パイプ状に丸められつつ移動する。このとき、べルト(1)の上半分は、無方向に自由回転する球体(17)で支えられているため、べルト(1)の上部は、拡がろうとする方向、すなわち、遠心方向以外の方向には、応力が発生することなく、円滑に走行することができる。これにより、パイプコンベヤの走行抵抗を著しく減少することができる。
【0025】
ベルト(1)の下半部は、3個のローラ(15)に接して、その回転方向に案内されるので、捩れや蛇行を生じることなく、安定して走行することができる。
【0026】
図5および図6は、本発明の第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態におけるのと同一のボールベアリング(13)を垂直軸周りに回転可能、すなわち首振り可能に支持したものである。
【0027】
両図に示すように、保形枠(11)の上部に設けた上フレーム(25)に支持された垂直軸(26)に、本体(16)の上面に固着した軸受部材(27)を、回転自在に支持させることにより、ボールベアリング(13)を、その幅方向中心部において、垂直軸(26)に対して回転自在に支持している
【0028】
なお、図示の実施形態では、ボールベアリング(13)を、ローラ保形手段(12)の直上に配置した例を示しているが、図2〜図4と同様に、ボールベアリング(13)を、保形枠(11)におけるローラ保形手段(12)の反対側に配置することも可能である。
【0029】
この実施形態では、ベルト(1)の蛇行や波打ち、または振動等により、ベルトの走行方向が一時的かつ局部的に変動したとき、ボールベアリング(13)全体が垂直軸(26)を中心としてわずかに回転して、上下変動に追従することができ、パイプコンベヤの走行抵抗の増加をより小さくすることができる。
【0030】
図6および図7は、本発明の第3の実施形態を示すもので、ボールベアリング(13)を完全な環状に構成するとともに、垂直軸周りに回転可能に支持したものである。
【0031】
両図に示すように、ボールベアリング(13)は、完全な環状の本体(16)の内周全面に球体(17)が設けられたもので、その上部は、保形枠(11)の上部に設けられた上フレーム(25)に支持された垂直軸(26)に回転自在に支持され、下部は保形枠(11)に固着したアーム(28)に垂直軸(29)を介して回転自在に支持されている。この実施形態では、ボールベアリング(13)はローラ保形手段(12)とは反対側に取り付けられている。
【0032】
この実施形態では、ローラ保形手段(12)とボールベアリング(13)の両者でべルト(1)が受けられるので走行が安定するとともに、ボールベアリング(13)により、ベルト(1)をほぼ真円に保つことができる。またボールベアリング(13)全体が垂直軸(26)(29)まわりに回転することにより、ベルト(1)の進行方向の一時的かつ局部的な変動に追従することができ、走行抵抗をさらに軽減することができるだけでなく、各球体(17)が保持リング(19)の内面に沿って転動しうる市販のボールベアリングを用いることもできるので、容易に実施することができる。
【0033】
上述した各実施形態におけるボールベアリング(13)は、べルト(1)の湾曲走行部に配設するのがよい。そうすることによって、従来最も走行抵抗が大きかったベルトの湾曲走行部の走行抵抗を、著しく減少することができる。
【0034】
また、上述のボールベアリング(13)を、丸められたべルト(1)の両側縁部同士が互いに重ね合わされた重合部の外側、またはベルト(1)の丸められた部分の前後の丸め始めもしくは開き始めのトラフ変換部における互いに離間したべルト(1)の両側縁部の外側に当接するように配設するのが望ましい。
すなわち、丸められたべルト(1)の両側縁部の重合部、およびベルト(1)の丸め始めもしくは開き始めのトラフ変換部においては、べルト(1)の両側縁部に進行方向と直交する方向の応力が最も掛かり易いが、この部分の外側にボールベアリング(13)を配設して、べルト(1)の側縁部を案内することによって、上記応力の発生を著しく減少して、走行抵抗を少なくすることができる。
【0035】
なお、第1の実施形態において、半環状のボールベアリング(13)に代えて、図7および図8に示すような円環状のボールベアリング(13)を、保形枠(11)の片面に固着して実施してもよい。
【0036】
また、第3の実施形態において、ローラ保形手段(12)を省略して実施することもできる。
【0037】
図示を省略した、保形枠(11)における下方のベルト挿通孔を挿通する復路ベルト(1b)の案内手段は、上述の復路ベルト(1a)の案内手段と同一か、または上下対称の構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態の概略側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う拡大断面図である。
【図3】図2のIII―III線断面図である。
【図4】図3のIV―IV線断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における、図2と同様の部分の断面図である。
【図6】図5のVI―VI線断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における、図3と同様の部分の断面図である。
【図8】図7のVIII―VIII線断面図である。
【符号の説明】
【0039】
(1)ベルト
(1a)往路ベルト
(1b)復路ベルト
(2)前部ローラ
(3)後部ローラ
(4)保形手段
(6)供給用ホッパ
(7)被搬送物
(8)荷受けホッパ
(9)フレーム
(10)べルト挿通孔
(11)保形枠
(12)ローラ保形手段
(13)ボールベアリング
(14)ホルダ
(15)ローラ
(16)本体
(17)球体
(18)凹部
(19)保持リング
(20)シール板
(21)取付枠
(22)取付枠
(23)ねじ
(25)上フレーム
(26)垂直軸
(27)軸受部材
(28)アーム
(29)垂直軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のローラ間に架け回した無端帯状のベルトを、保形枠に設けたべルト挿通孔を通過する間に、パイプ状に丸めて走行させるようにしたパイプコンベヤにおいて、
円弧状または円環状の本体の内面に、複数の球体を、一部が内方に突出するようにして、かつそれぞれが無方向に自転可能として保持してなるボールベアリングを、前記保形枠に取り付け、丸められたべルトの円周方向の少なくとも一部を、前記ボールベアリングの球体により案内するようにしたことを特徴とするパイプコンベヤ。
【請求項2】
保形枠の片面に、丸められたべルトの上部の外周面に接するように円弧状または円環状としたボールベアリングを設け、前記保形枠の他の面に、丸められたべルトの下部の外周面に接する保形ローラを有するローラ保形手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のパイプコンベヤ。
【請求項3】
ボールベアリングの幅方向中心を、保形枠に支持させた垂直軸に枢支して、首振り可能としたことを特徴とする請求項1または2記載のパイプコンベヤ。
【請求項4】
保形枠の片面に、丸められたべルトの外周面に接するように、円環状としたボールベアリングを、その幅方向中心を通る垂直軸に枢支して首振り可能とし、前記保形枠の他の面に、丸められたべルトの下部の外周面に接するローラ保形手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のパイプコンベヤ。
【請求項5】
ボールベアリングを、べルトの湾曲走行部に配設したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパイプコンベヤ。
【請求項6】
ボールベアリングを、丸められたべルトの両側縁部同士が互いに重ね合わされた重合部の外側、またはベルトの丸められた部分の前後の丸め始めもしくは開き始めのトラフ変換部における互いに離間したべルトの両側縁部の外側に当接するように配設したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のパイプコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−256781(P2006−256781A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76335(P2005−76335)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】