説明

パイプコンベヤ

【課題】パイプコンベヤにおける搬送チェンの切断、装置機能部品の損傷などのトラブル発生を防止するパイプコンベヤを提供する。
【解決手段】パイプケーシング内に配設した搬送チェン13を主駆動輪16を介し駆動する主駆動モータ17と、搬送チェン13の他の箇所を補助駆動輪18を介し駆動する補助駆動モータ19とを設置する。主駆動モータ17によるチェン移送速度と、補助駆動モータ19によるチェン移送速度とを制御手段21により同期化制御する。主駆動モータ17は、一定の目標速度で駆動するようにし、制御手段21は、補助駆動モータ19をインバータにより可変速制御する。その際、制御手段21は、補助駆動モータ19が消費する負荷電流値を検出して、この負荷電流値が設定範囲内に収まるように補助駆動モータ19の回転速度をフィードバック制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の駆動モータを用いるパイプコンベヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一部に被搬送物投入口および取出口が開口された無端状のパイプケーシングの中に、無端状の搬送チェンに円形ブレードが取付けられた搬送手段を内装し、パイプケーシングの中間経路に設けられたコーナ部分の内側に、搬送チェンと係合して牽引する駆動輪を設け、この駆動輪を駆動機により駆動するパイプコンベヤがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
パイプコンベヤの搬送距離が長くなると、搬送チェンを駆動する駆動機すなわち駆動モータの負荷も増大するため、大容量の駆動モータが必要となる。
【特許文献1】特開平11−208849号公報(第2−3頁、図1−7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、搬送中の負荷変動により搬送チェンまたはパイプケーシングに過大な力が作用して、搬送チェンの切断、装置機能部品の損傷などのトラブルが発生している。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、パイプコンベヤにおける搬送チェンの切断、装置機能部品の損傷などのトラブル発生を防止するパイプコンベヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、パイプケーシング内に配設された搬送チェンを主駆動輪を介し駆動する主駆動モータと、搬送チェンの他の箇所を補助駆動輪を介し駆動する補助駆動モータと、主駆動モータによるチェン移送速度と補助駆動モータによるチェン移送速度とを同期化制御する制御手段とを具備したパイプコンベヤであり、そして、パイプコンベヤの搬送チェンを主駆動輪を介し駆動する主駆動モータによるチェン移送速度と、搬送チェンの他の箇所を補助駆動輪を介し駆動する補助駆動モータによるチェン移送速度とを、制御手段により同期化制御することで、パイプコンベヤにおける搬送チェンの切断、装置機能部品の損傷などのトラブル発生を防止する。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のパイプコンベヤにおける主駆動モータを、一定の目標速度で駆動するようにし、制御手段は、補助駆動モータをインバータにより可変速制御するものであり、そして、主駆動モータの目標速度が一定であるのに対し、補助駆動モータのみをインバータにより可変速制御するので、主駆動モータに対する補助駆動モータの同期化制御が容易になる。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のパイプコンベヤにおける制御手段により、補助駆動モータが消費する負荷電流値を検出して、この負荷電流値が設定範囲内に収まるように補助駆動モータの回転速度をフィードバック制御するものであり、そして、補助駆動モータが消費する負荷電流値を検出して、この負荷電流値が設定範囲内に収まるように補助駆動モータの回転速度をフィードバック制御するので、チェン移送速度を検出するための速度センサは不要となる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、パイプコンベヤの搬送チェンを主駆動輪を介し駆動する主駆動モータによるチェン移送速度と、搬送チェンの他の箇所を補助駆動輪を介し駆動する補助駆動モータによるチェン移送速度とを、制御手段により同期化制御することで、パイプコンベヤにおける搬送チェンの切断、装置機能部品の損傷などのトラブル発生を防止できる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、主駆動モータの目標速度が一定であるのに対し、補助駆動モータのみをインバータにより可変速制御するので、主駆動モータに対する補助駆動モータの同期化制御を容易にできる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、補助駆動モータが消費する負荷電流値を検出して、この負荷電流値が設定範囲内に収まるように補助駆動モータの回転速度をフィードバック制御することにより、チェン移送速度を検出するための速度センサを不要とすることができ、制御系を簡単なものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された一実施の形態を参照しながら説明する。
【0013】
図2は、パイプコンベヤ11を示し、一部に被搬送物投入口(図示せず)および取出口(図示せず)が開口された無端状のパイプケーシング12内に、無端状の搬送チェン13に所定ピッチで円形ブレード14が取付けられた搬送手段が配設されている。
【0014】
このパイプコンベヤ11は、被搬送物投入口からパイプケーシング12内に投入された被搬送物15を、搬送チェン13で移送される円板ブレード14により取出口まで搬送することができる3次元配管可能なコンベヤである。
【0015】
図1に示されるように、このパイプコンベヤ11のコーナ箇所の内側には、搬送チェン13と係合する主駆動輪16を介し搬送チェン13を移送駆動する主駆動モータ17が設けられ、さらに、主駆動輪16により送り出される側に位置する他のコーナ箇所の内側には、このコーナ箇所で搬送チェン13と係合する補助駆動輪18を介し搬送チェン13を移送駆動する補助駆動モータ19が設けられ、この補助駆動モータ19に対し、主駆動モータ17によるチェン移送速度V1と、補助駆動モータ19によるチェン移送速度V2とを同期化制御する制御手段21が設けられている。
【0016】
そして、パイプコンベヤ11において、搬送距離が長い場合、または戻り抵抗が大きい場合は、搬送チェン13を駆動する主駆動輪16およびこの主駆動輪16を駆動する主駆動モータ17のほかに、チェン戻り側の途中部に、補助駆動輪18およびこの補助駆動輪18を駆動する補助駆動モータ19を設置し、この補助駆動モータ19を同期化制御することにより、主駆動モータ17の負荷を軽減する。
【0017】
補助駆動モータ19は、メンテナンス上、誘導電動機、同期電動機などの交流電動機を用いることが望ましい。
【0018】
図3に示されるように、制御手段21は、交流の電源22に、適切な電圧、周波数に調節された電力を出力するパワー半導体デバイスなどで構成される電力変換器23を介して、交流電動機である補助駆動モータ19が接続されている。電力変換器23には、この電力変換器23を制御して補助駆動モータ19を指令どうりに動作させる制御装置24が接続されている。この制御装置24は、補助駆動モータ19の動作状態を取込んで、電力変換器23をフィードバック制御をすることで、高性能の速度制御を実現できる。
【0019】
その際、補助駆動輪18および補助駆動モータ19によるチェン移送速度V2を、主駆動輪16および主駆動モータ17によるチェン移送速度V1に近づける必要があるので、その制御手段21の電力変換器23にインバータを組入れ、このインバータの電流値制御機能を利用して、主駆動モータ17と補助駆動モータ19の速度同期化を図ることが望ましい。
【0020】
この場合、主駆動モータ17は一定の目標速度で駆動するようにし、制御手段21は、補助駆動モータ19をインバータにより可変速制御する。
【0021】
例えば、制御装置24は、検出部25から補助駆動モータ19が消費する負荷電流値を検出して、この負荷電流値が設定範囲内に収まるように電力変換器23を制御し、結果的に補助駆動モータ19の回転速度をフィードバック制御するとよい。
【0022】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。なお、図4に示されるフローチャートにおいて、丸数字は、制御手順を示すステップ番号である。
【0023】
(ステップ1)
図4に示されるように、補助駆動モータ19が消費する負荷電流値を検出して、この負荷電流値が設定範囲内に有るか否かを制御装置24が判断する。
【0024】
(ステップ2)
補助駆動モータ19の負荷電流値が設定範囲内に有る場合は、その補助駆動モータ19に作用する負荷が適正であるから、そのときの補助駆動モータ19の回転速度を維持する。
【0025】
(ステップ3)
補助駆動モータ19の負荷電流値が設定範囲内にない場合は、その負荷電流値が設定範囲を超えているか否かを判断する。
【0026】
(ステップ4)
補助駆動モータ19の負荷電流値が設定範囲を超えている場合は、搬送チェン13の張力が必要以上に大きくなっていると思われるので、補助駆動モータ19の回転速度を所定値だけ低下させるように電力変換器23に制御信号を出力して、ステップ1に戻る。
【0027】
(ステップ5)
補助駆動モータ19の負荷電流値が設定範囲を下回っている場合は、搬送チェン13の弛み13aが必要以上に大きくなっていると思われるので、補助駆動モータ19の回転速度を所定値だけ上昇させるように電力変換器23に制御信号を出力して、ステップ1に戻る。
【0028】
このようにして、主駆動モータ17によって駆動される主駆動輪16のチェン送出側に搬送チェン13の弛み13aが発生すると、補助駆動モータ19は、負荷の低下により回転速度が増加して、搬送チェン13の弛み13aを補助駆動輪18で引張るように作動し、一方、主駆動輪16のチェン送出側の搬送チェン張力が増加するにしたがって、すなわち補助駆動モータ19の負荷が増加するにしたがって、補助駆動モータ19の回転速度を低下させて、主駆動モータ17と補助駆動モータ19の速度同期化を自動的に達成させる。
【0029】
そして、パイプコンベヤ11の搬送チェン13を主駆動輪16を介し駆動する主駆動モータ17によるチェン移送速度V1と、搬送チェン13の他の箇所を補助駆動輪18を介し駆動する補助駆動モータ19によるチェン移送速度V2とを、制御手段21により同期化制御することで、パイプコンベヤ11における搬送チェン13の切断、装置機能部品の損傷などのトラブル発生を防止できる。
【0030】
その際、主駆動モータ17の目標速度が一定であるのに対し、補助駆動モータ19のみをインバータにより可変速制御するので、主駆動モータ17に対する補助駆動モータ19の同期化制御を容易にできる。
【0031】
また、補助駆動モータ19が消費する負荷電流値を検出して、この負荷電流値が設定範囲内に収まるように補助駆動モータ19の回転速度をフィードバック制御することにより、チェン移送速度を検出するための速度センサを不要とすることができ、制御系を簡単なものにできる。
【0032】
なお、補助駆動モータ19の回転速度を検出するための速度センサを設置して、補助駆動モータ19を主駆動モータ17と速度同期化制御してもよい。また、補助駆動モータ19は、直流電動機を用いても、その回転速度を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るパイプコンベヤの一実施の形態を示す概要図である。
【図2】同上コンベヤの一部を破断して示した斜視図である。
【図3】同上コンベヤの制御系の概要を示すブロック図である。
【図4】同上コンベヤの制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
12 パイプケーシング
13 搬送チェン
16 主駆動輪
17 主駆動モータ
18 補助駆動輪
19 補助駆動モータ
21 制御手段
V1,V2 チェン移送速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプケーシング内に配設された搬送チェンを主駆動輪を介し駆動する主駆動モータと、
搬送チェンの他の箇所を補助駆動輪を介し駆動する補助駆動モータと、
主駆動モータによるチェン移送速度と補助駆動モータによるチェン移送速度とを同期化制御する制御手段と
を具備したことを特徴とするパイプコンベヤ。
【請求項2】
主駆動モータは、一定の目標速度で駆動するようにし、
制御手段は、補助駆動モータをインバータにより可変速制御する
ことを特徴とする請求項1記載のパイプコンベヤ。
【請求項3】
制御手段は、補助駆動モータが消費する負荷電流値を検出して、この負荷電流値が設定範囲内に収まるように補助駆動モータの回転速度をフィードバック制御する
ことを特徴とする請求項1または2記載のパイプコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−76782(P2006−76782A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265920(P2004−265920)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】