説明

パイプベンダー

【課題】パイプ曲げ加工装置全体を回転可能とするパイプベンダーを提供する。
【解決手段】基台10右端部に固定プレート32bが立設され、同プレートの右面側にはインデックス軸装置32が設けられている。同装置は、リングギア32hに固定された割り出しテーブル32aを有する。同テーブルの右面側にはプレッシャー装置30とクランプ装置36および曲げローラを備えたベンディング軸装置40を搭載固定しているシフトプレートを備えたシフト装置34が設けられている。固定プレート上には一対の近接スイッチ32eが設けられモータ32cによる割り出しテーブルの時計方向および反時計方向のそれぞれ回転位置が180度に対応して設定配置されている。従って、割り出しテーブルを180度回転させることにより所定の曲げ位置で180度パイプを振り回すことなく曲げ加工を正常に連続して遂行可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属性管材(以下単にパイプと称する)の曲げ加工に係り、特に前記パイプを任意の方向に曲げ加工可能なパイプベンダーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1には、回転可能な曲型11とこれに対して遠近移動可能で同曲型11とともに回転可能な締付型12とを有し、これら両型11,12で被曲げ部材であるパイプPを挟持して曲型11の回転中心O−1周りに一体的に回転させることによってパイプPを曲げ加工する曲げ機構10を備えるとともに、パイプPの先端の曲げ成形時に同先端内にプラグ23を差し込み曲げ機構10とともに回転運動をするプラグ差込機構Aを備え、プラグ差込機構Aは、曲げ機構10に支持させたプラグ作動位置Xと、固定側の本体に支持させた退避位置とにわたって移動自在としてガイド手段40を介して取り付け、且つ、プラグ作動位置Xと退避位置とに移動操作する移動操作装置50を備えたパイプベンダーが紹介されており、これによりパイプ先端以外の曲げ加工がプラグ差込機構に干渉せずに行なえるとともに、同加工時に曲げ機構が軽快に動作するようにする発明が開示されている。
【0003】
また、特許文献2の図1、8には、パイプベンダー、およびパイプ曲げ加工方法に関し、特に対象パイプの最終の曲げ予定部の曲げ加工が迅速かつ効率的に行え、構造が簡単にして部品数も少なく製作および組立は簡単にして製作コスト、設備費等を安価に製作しようとするものであり、チャック1内に収容されているプッシュロッド50は、対象パイプPの管端部P1とチャックの外部前方Fに少なくとも前方の大半部が位置して置き去りにされ、続いて前記クランプ台3とプレッシャ台4とによりプッシュロッドを介してチャックにより対象パイプを中心軸芯方向Iに押圧しながらクランプ台を曲げ型2と一体に前記プレッシャ台からの離間側に回動させて最終の曲げ予定部に曲げ加工を施す方法の発明であって、その具体的構成として、明細書の段落0026〜0028には、以下のように記載されている。
【0004】
すなわち、対象パイプの管端部を外周側から把持するチャックと、対象パイプの曲げ予定部に対する曲げ案内用の円弧状部を形成した曲げ型と、対象パイプの曲げ予定部を前記曲げ型との間で挟圧保持するクランプ台と、該クランプ台のチャック側に位置して対象パイプの曲げ予定部を前記曲げ型との間で挟圧保持するプレッシャ台とを備え、対象パイプの管芯方向に並ぶ複数の曲げ予定部のうち、チャック側の管端近傍に位置する最終の曲げ予定部以外の曲げ予定部については、パイプ管端部を把持させた前記チャックをその中心軸芯方向に移動させるとともに中心軸芯周りで回動させて、曲げ予定部を所要の回動姿勢で前記曲げ型に対する適切位置に位置させ、前記クランプ台と前記プレッシャ台とにより曲げ予定部を挟圧保持した状態で、対象パイプの管端部を把持する前記チャックにより対象パイプの管端部を中心軸芯方向に押圧付勢しながら、前記クランプ台を前記曲げ型と一体的に前記プレッシャ台からの離間側に回動させて曲げ予定部に曲げ加工を施すパイプベンダーにおいて、
プッシュロッドを前記チャック内に挿脱可能に設け、該プッシュロッドはチャック内に収容された状態でパイプ管端部を把持する前記チャックが中心軸芯方向に移動されるとともに中心軸芯周りで回動されることによりパイプ管端部の最終の曲げ予定部を所要の回動姿勢で前記曲げ型に対する適切位置に設置可能に設けられ、
パイプ管端部に対する前記チャックの把持が解除された状態にて前記チャックが中心軸芯方向で、かつ前記プレッシャ台との非干渉位置まで後退移動されると、該チャック内に収容されているプッシュロッドは、対象パイプの管端部と前記チャックの外部前方に少なくとも前方の大半部が位置して置き去りにされることにより該プッシュロッドを介して前記チャックにより対象パイプの管端を押圧しながら前記クランプ台を前記曲げ型と一体に前記プレッシャ台からの離間側に回動させて前記対象パイプの最終の曲げ予定部に曲げ加工を施すことを特徴とし、また、本発明の請求項4に記載の発明は、対象パイプの管端部を外周側から把持するチャックと、対象パイプの曲げ予定部に対する曲げ案内用の円弧状部を形成した曲げ型と、対象パイプの曲げ予定部を前記曲げ型との間で挟圧保持するクランプ台と、該クランプ台のチャック側に位置して対象パイプの曲げ予定部を前記曲げ型との間で挟圧保持するプレッシャ台とを備え、対象パイプの管芯方向に並ぶ複数の曲げ予定部のうち、チャック側の管端近傍に位置する最終の曲げ予定部以外の曲げ予定部については、パイプ管端部を把持した前記チャックをその中心軸芯方向に移動させるとともに中心軸芯周りで回動させて、曲げ予定部を所要の回動姿勢で前記曲げ型に対する適切位置に位置させ、前記クランプ台と前記プレッシャ台とにより曲げ予定部を挟圧保持した状態で、対象パイプの管端部を把持する前記チャックにより対象パイプの管端部を押圧付勢しながら、前記クランプ台を前記曲げ型と一体的に前記プレッシャ台からの離間側に回動させて曲げ予定部に曲げ加工を施すパイプ曲げ加工方法において、
対象パイプの最終の曲げ予定部の曲げ加工は、プッシュロッドが挿脱可能にチャック内に収容された状態でパイプ管端部を把持する前記チャックが中心軸芯方向に移動されるとともに中心軸芯周りで回動させることによりパイプ管端部の最終の曲げ予定部を所要の回動姿勢で前記曲げ型に対する適切位置に設置させた後、パイプ管端部に対する前記チャックの把持が解除された状態にて前記チャックが中心軸芯方向で、かつ前記プレッシャ台との非干渉位置まで後退移動させることによりチャック内に収容されているプッシュロッドは、対象パイプの管端部と前記チャックの外部前方に少なくとも前方の大半部が位置して置き去りにされ、続いて前記クランプ台と前記プレッシャ台とにより前記プッシュロッドを介して前記チャックにより対象パイプを中心軸芯方向に押圧しながら前記クランプ台を前記曲げ型と一体に前記プレッシャ台からの離間側に回動させて最終の曲げ予定部に曲げ加工を施すことを特徴とするので、対象パイプの最終の曲げ予定部の曲げ加工を行うための工程数が省略化されて迅速かつ効率的に最終の曲げ予定部の曲げ加工を行うことができる。また、チャックを軸芯方向に進退するのに要するモータの消費電力が少なくて済み、しかも構造および制御系が簡素化され、部品数も少なくなるため、製作および組立が容易になり、製作コスト、設備費等は安価になる。
また、前記プッシュロッドは、対象パイプの管端部の最終の曲げ予定部の曲げ加工時に、対象パイプの管端部の後部とチャックの前端に設けるチャックの把持爪に対して配装されることによりチャックを中心軸芯方向に押圧自在に設けるとともに前記チャックの把持爪によりチャックとともに共用の駆動源により中心軸芯方向に押圧されて対象パイプの最終の曲げ予定部が前記曲げ型と一体に前記プッシャ台からの離間側に回動され、最終の曲げ予定部に曲げ加工を施すことを特徴とするので、対象パイプの最終の曲げ予定部に曲げ加工を行うための工程数が複雑化することなく省略化され、迅速かつ効率的に、しかも確実に最終の曲げ予定部の曲げ加工を行うことができる。
【0005】
また、チャックの進退移動動作と、対象パイプの最終の曲げ加工に要する押圧動作とは、共用の駆動源としての1つの駆動シリンダーを駆動することにより行われるのと、この駆動シリンダーを駆動するのと協同して架台に備えたチェーンを回転、移動するモータの駆動とにより行われるので、モータの稼働に要する消費電力が少なくて済むとともにこのモータを小容量にすることができ、しかも構造および制御系が簡素化され、部品数も少なくなり、製作および組立が容易になり、製作コスト、設備費等は安価になる。
さらにまた、前記プッシュロッドは、全体が略筒状に形成され、通常時にはチャック内に設ける収容孔内に収容可能に収容され、内部には対象パイプの管端部内に配挿可能なマンドレルが中心軸芯方向に移動可能に挿入され、前端はチャックの後退移動時に前記マンドレルの先端側に形成する膨拡状の係合肩部に係脱可能に設けられるとともに前端は対象パイプの管端部に係脱可能な係合部が形成され、中間部外周にはチャックの押圧時にチャックの把持爪が係合可能な第1の外鍔部が形成され、後端には収容孔内にプッシュロッドに収納する時に摺動可能にストッパに当接可能な第2の外鍔部が形成されたことを特徴とするので、対象パイプの管端部の最終の曲げ予定部の曲げ加工時に、対象パイプの管端部の後部とチャックとの間にプッシュロッドを介して対象パイプの管端部を押圧したり、またはチャックの収容孔内にプッシュロッドを収容するのに共用の駆動源としての1つの駆動シリンダーを駆動することにより確実に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−111719号公報
【特許文献2】特開2004-141891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に開示された発明は、曲げ成形時にパイプ先端部内にプラグを差込むプラグ差込機構に関するものである。また、特許文献2に開示された発明は、チャック内に収容されているプッシュロッドが、対象パイプの管端部と前記チャックの外部前方に少なくとも前方の大半部が位置して置き去りにされ、続いて前記クランプ台と前記プレッシャ台とにより前記プッシュロッドを介して前記チャックにより対象パイプを中心軸芯方向に押圧しながら前記クランプ台を前記曲げ型と一体に前記プレッシャ台からの離間側に回動させて最終の曲げ予定部に曲げ加工を施すことを特徴とするものである。
【0008】
上述した特許文献1、2はいずれもプラグまたはマンドレルを用いて曲げ成形部のパイプ断面形状を円形に保持する動作についての改良であり、いずれも曲げ型、締め付け型(クランプ台)、プレッシャー台、チャック、同チャックの移動案内手段等を備えた構造である。
【0009】
特許文献1、2を含む従来のパイプベンダーにおいては、曲げ型の回転中心軸は、パイプ軸心に対し直交する方向で回転半径分変位した位置に配置されており、当然ながらこの曲げ型の回転中心軸はパイプベンダー上で固定されているものである。例えば特許文献2の図1、8に示されるように、パイプベンダー平面視では、曲げ型2はパイプPを右側へ曲げるように構成され、その回転中心軸はパイプベンダーの一端側に固定された回転機構と結合して配置されている。
【0010】
ところで、このような従来のパイプベンダーにおいては、特にパイプの曲げ箇所の数が比較的多く、またその各曲げ箇所の間隔が長い場合には以下に述べるような問題が生じる。

本願の図5、6はその事情を説明するものであって、図5はパイプの曲げの様子をそれぞれ立体的に示す。図5(a)において、パイプP1は先端s、終端eからなり、2箇所の曲げ位置c1、c2が形成されている。符号Psc1は先端sと曲げ位置c1の間隔、符号Pc1c2は曲げ位置c1と曲げ位置c2の間隔、符号Pc1eは曲げ位置c2と終端eの間隔である。これら間隔はそれぞれL1、L2、L3として図示されている。
【0011】
パイプP2はパイプP1の間隔Pc1eが逆方向に形成されたものを示す。
図6(a)、(b)はそれぞれ図5(a)におけるパイプP1、P2の曲げ工程(1)乃至(4)を示している。すなわち、図6(a)において、工程(1)は、パイプP1が先端sからL1の位置で曲げローラRLへクランプCLによりクランプされていることを示す。工程(2)は、パイプP1が曲げローラRLおよびクランプCLにより90度回転された状態を示す。工程(3)は、パイプP1をL2だけ前方へ繰り出しさらに図示していない傾転装置により上向きに90度回転された状態を示す。工程(4)は、工程(3)の状態でパイプP1が曲げローラRLおよびクランプCLによりさらに90度回転された状態を示す。
【0012】
図6(b)においては、工程(3)で傾転装置により下向きに90度回転された状態を示すことを除いて、図6(a)の各工程と同様であるので、その説明は省略する。
図5(b)は、パイプP3の曲げ加工の例であって、先端sから終端eまでに曲げ位置c1、c2、c3、c4、c5が連続操作で形成される場合である。パイプP3の曲げ位置c1、c2は、図5(a)のパイプP2と同様に、曲げ加工される。続く曲げ位置c3の曲げ加工に際しては、曲げローラRLが右回りするため、前記傾転装置によりパイプP3を180度回転させた後曲げ加工が行われる。続く曲げ位置c4の曲げ加工に際しては、c3からc4まで繰り出した後、パイプP3の回転はせずに曲げ加工される。さらに、続く曲げ位置c5の曲げ加工に際しても、同様に、c4からc5まで繰り出した後、パイプP3の回転はせずに曲げ加工される。ただし、破線で示すように、終端がe’のときはパイプP3を180度回転させる必要がある。
【0013】
このようにして、パイプP3の曲げ位置c1乃至c5での曲げ加工が可能であるが、図5(b)で示すように、先端sからc1、c3からc4の間隔が長い場合には、パイプベンダーの設置床面に突き当たる恐れがあり、したがって、パイプベンダーの曲げ加工側は下方側に空間が必要となる。このためには、パイプベンダーの曲げ加工側に深い溝(ピット)を設ける必要があり、パイプベンダー設置の工事コストが上昇するばかりでなく、作業者にとって作業の安全性の点からも好ましいとはいえない。
【0014】
前述のように、図5(b)では垂直方向のパイプ曲げ部分は2箇所であるが、さらに多くなると、ピットの深さもそれだけ深くすることが必要となる。このような作業状況への対策として、曲げ作業途中において、曲げ加工されたパイプ部分を上方に向けた姿勢となるよう設定しなおすことも考えられるが、作業者のそうした作業が新たに必要となり全体の作業効率低下をもたらす。さらに、新たにパイプ姿勢を設定しなおしても、その次の曲げ工程で180度回転しなければならない場合もあり、曲げ加工したパイプ部分を振り回す際に床面に突き当たる可能性が生じるので、事実上、曲げ位置が多いパイプ曲げ作業は煩雑となり効率が低下し、事実上困難となるという問題がある。

【0015】
本願発明者は上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、従来のパイプベンダーでは曲げローラとパイプとの位置関係がパイプベンダー本体からみて固定しており、例えば図6に示されるように、平面視でパイプは曲げローラの右側に当接した状態で時計方向に曲げ加工されるというメカニズムに着眼し、これをさらに、平面視でパイプが曲げローラの左側に当接した状態で反時計方向に曲げ加工することもできるようにすることで前記の問題が基本的に解決可能であることを見出した。
【0016】
したがって、本発明の目的は、曲げ加工位置の数が多くても曲げ加工終了部分を振り回すことなく次の曲げ加工を可能とするようにパイプと曲げローラとの位置関係を設定可能なパイプベンダーを提供することにある。
【0017】
前記の目的を達成するため、本発明によるパイプベンダーは、
上面にパイプの軸心と平行なガイドレールを設けた基台、前記ガイドレール上を走行する移動装置、前記移動装置に取り付けられ、内部に前記パイプを挿通可能であり先端部に前記パイプ外周を固定保持するチャック部を有し且つ、同チャック部を所定角位置に回転する傾転装置、および前記基台の一側端部においてパイプ曲げ加工用に設けられ、パイプ曲げローラに対向し前記パイプ曲げローラに当接されたパイプ外周面を押圧固定するクランプ片を有するクランプ手段と前記クランプ片に隣接しパイプ外周面を押圧するプレッシャー片を有するプレッシャー手段ならびに前記パイプ曲げローラを前記クランプ片と共に所定量回転するベンディングフォーム手段とからなる曲げ加工装置を備えたパイプベンダーであって、
同パイプベンダーにはさらに、前記基台の一側端部に立設固定された支持プレート上にて所定量回転する割り出しテーブルを備えたインデックス軸装置と、前記曲げ加工装置の各手段を搭載すると共に前記割り出しテーブル上にて一方向に位置調整可能なシフトテーブルを備えたシフト装置と、からなることをことを特徴とする。
その場合、前記インデックス装置の所定量回転は90度または180度に設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるパイプベンダーは、上面にパイプの軸心と平行なガイドレールを設けた基台、前記ガイドレール上を走行する移動装置、前記移動装置に取り付けられ、内部に前記パイプを挿通可能であり先端部に前記パイプ外周を固定保持するチャック部を有し且つ、同チャック部を所定角位置に回転する傾転装置、および前記基台の一側端部においてパイプ曲げ加工用に設けられ、パイプ曲げローラに対向し前記パイプ曲げローラに当接されたパイプ外周面を押圧固定するクランプ片を有するクランプ手段と前記クランプ片に隣接しパイプ外周面を押圧するプレッシャー片を有するプレッシャー手段ならびに前記パイプ曲げローラを前記クランプ片と共に所定量回転するベンディングフォーム手段とからなる曲げ加工装置を備えたパイプベンダーであって、
同パイプベンダーにはさらに、前記基台の一側端部に立設固定された支持プレート上にて所定量回転する割り出しテーブルを備えたインデックス軸装置と、前記曲げ加工装置の各手段を搭載すると共に前記割り出しテーブル上にて一方向に位置調整可能なシフトテーブルを備えたシフト装置と、からなるよう構成されているので、1本のパイプの曲げ加工位置の数が多くても曲げ加工終了部分を振り回すことなく次の曲げ加工位置で曲げ加工を可能とするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるパイプベンダーの全体構造を示すもので、(a)はパイプベンダーの平面図、(b)は正面図、(c)は(b)の右側面図である。
【図2】図1のインデックス装置の要部を示す斜視図である。
【図3】図1のシフト装置の要部を示す斜視図である。
【図4】図1のベンディング軸装置、クランプ装置およびプレッシャー装置要部の配置関係を示す斜視図である。
【図5】パイプの曲げの様子をそれぞれ立体的に例示したものであり、(a)はそれぞれ一本のパイプの先端と終端の間で2箇所の曲げを行った場合を示し、(b)は一本のパイプを5箇所の曲げを行った場合を示す。
【図6】はそれぞれ図5(a)におけるパイプP1、P2の曲げ加工の工程を例示するものであって、(a)はパイプP1の曲げ工程に対応し、(b)はパイプP2の曲げ工程に対応している。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の好適な実施例について図1乃至4により詳細に説明する。
図1は、本発明によるパイプベンダーの全体構造を示しており、(a)は同パイプベンダーの平面図、(b)は正面図、(c)は(b)の右側面図である。同図1(a)において、参照符号10はパイプベンダーの基台であってフレーム構造Fにより床面上に配置構成されている。基台10の上面には2本のガイド14aおよびラック12が平行に設けられ、同ガイド14a上には図の左右方向に移動する移動装置14が設けられている。参照符号18は移動装置14に取り付けられたサーボモータであって図示しない制御装置からの指令によりラック12を介して移動装置14を移動させるようになっている。
【0021】
移動装置14には傾転装置20が取り付けられておりその左端部にはサーボモータ16が取り付けられている。傾転装置20は、同図(b)に示されるように、内部にパイプを挿通可能な孔を有する筒状体22の先端部にチャック部26を有しており、歯車箱24を介して前記モータ16の回転を筒状体22を介してチャック部26に伝達するようになっている。これらの移動装置および傾転装置は公知の市販されているものであり、その詳細構造の説明は省略する。
【0022】
ここでは、傾転装置20において、パイプが筒状体22の孔に挿通されチャック部26の油圧駆動される各爪により狭持された状態でモータ16により所定量回転されること、ならびに傾転装置20が移動装置14によってパイプ軸心方向に移動することが理解されればよい。
基台10の右端部には固定プレート32bが立設され、同プレート32bの左面側にはモータ32cが取り付けられ、右面側にはインデックス軸装置32が設けられている。インデックス軸装置32は、ベアリングとその外周に取り付けられたリングギア32hに固定されている割り出しテーブル32aを有する。同割り出しテーブル32aの右面側には従来装置であるプレッシャー片30aを備えたプレッシャー装置30とクランプ片36aを備えたクランプ装置36および曲げローラ40aを備えたベンディング装置40を搭載固定しているシフトプレート34aを備えたシフト装置34が設けられている。
【0023】
これらインデックス装置32、プレッシャー装置30、クランプ装置36、ベンディング装置40およびシフト装置34は、本実施例によるパイプベンダーのパイプ曲げ加工ヘッドHDを構成する。
図(c)の参照符号32eは一対の近接スイッチであって、本実施例ではモータ32cによる割り出しテーブル32aの時計方向および反時計方向のそれぞれ回転角位置が180度に対応して設定配置されており、さらに、参照符号36eはクランプ用の油圧シリンダである。
【0024】
図2は、図1のインデックス軸装置32の要部を示す斜視図である。同図2において、固定プレート32bの手前側には、前述したように、割り出しテーブル32aが回転可能に配置されている。同割り出しテーブル32aは、固定プレート32bに取り付けられたベアリング32fの外周側(回転側)と結合されたリングギア32hと一体的に回転可能である。割り出しテーブル32aの回転駆動は、図示のように、同テーブル32aの背面側において、モータ32cの回転がピニオンギア32dを介してリングギア32hに与えられるようになっている。参照符号32gはロケートピン用のブッシュ(穴)であって割り出しテーブル32aが180度回転した状態を保持するため固定プレート32b側に設けられたロケートピン(図示略)が押し出されそこへ嵌入される。
【0025】
さらに、割り出しテーブル32aの手前側にはシフト装置34を構成しているシフトプレート34aが配置されている。参照符号34e(図3参照)は前記シフトプレート34aの左右方向の位置を調整し保持するシフト量調整機構である。参照符号RJは筒状のロータリージョイントであって、図1(a)、(b)に破線で示すように、シフトプレート34a、割り出しテーブル32a、リングギア32hおよび固定プレート32bの各中央開口部分を貫通し固定プレート32bの背面側に取り付けられている。筒状の中心孔には曲げ加工されるパイプが挿通されるようになっている。このロータリージョイントRJには背面側で油圧ユニットとの圧油の授受が行われる。図1に示されるパイプ曲げ加工ヘッドHDのクランプ装置36用の油圧シリンダ36e、プレッシャー装置用の油圧シリンダは、前述したように割り出しテーブル32aと共に180度回転されるようになっているので回転した状態でも圧油が各シリンダへ供給可能な手段としてロータリージョイントRJが配置されている。
【0026】
図3は、図1のシフト装置34の要部を示す斜視図である。同図3において、参照符号34bは割り出しテーブル32a上に設けられたシフト用のガイドであって左右方向にのみシフトプレート34aを移動可能とするものである。4箇所に設けられたシフト量調整機構34eは図示のように調整ボルトをシフトプレート34aの側面に当接することで左右方向の位置を調整する。参照符号34cはシフトプレート34aの左右方向の調整を目視で確認するため同プレート上に設けられたスケールであり、34dは割り出しテーブル32a上に取り付けられた指標である。シフトプレート34aの割り出しテーブル32aに対するオフセット量はこの指標34dのスケール34c上の相対位置で目視で確認することが可能である。
【0027】
図4は、図1のベンディング装置40、クランプ装置36およびプレッシャー装置30要部の配置関係を示す斜視図である。同図4において、ベンディング装置40は、サーボモータ40dと、その回転をハイポイドギアを介してギア40bに伝達する歯車箱40cと、同ギア40bの回転軸心と同一軸心の曲げローラ40aとにより構成されている。
曲げローラ40aの外周にはパイプ外周に当接する溝が形成されている。参照符号36aはパイプに対するクランプ片であって、曲げ成形時に曲げローラ40aに当接しているパイプの対向側外周面を常時押圧して固定するようになっている。
【0028】
参照符号36bはクランプ片36aの背面側を上部に取り付けた移動駒であって側板36c、36d内の図示していないリンク機構を介して油圧シリンダ36bのピストンロッドに結合されている。なお、油圧シリンダ36bはピストンロッドの向きを可変にするようクレビス型であってその先端部で揺動可能である。したがって、クランプ片36aは、シリンダ36eにより曲げローラ40aから離れる際水平方向および垂直下方へ同時に移動し、パイプとの干渉が回避されるようになっている。図示では、クランプ装置36は曲げローラ40aと共に90度回転した状態を例示している。参照符号30aは前述したプレッシャー片であって回転前の状態ではクランプ片36aと隣接した位置に配置されており、パイプ外周面を所定の押圧力で押圧している。プレッシャー装置30はクランプ装置36とは異なり、曲げ成形中も回転しない。また、曲げ成形中、パイプ外周面を所定の力で押圧し、曲げによるパイプ軸心のずれを防止するがパイプ外周面とは摺動するようにその押圧力が調整されている。
【0029】
以上の構成による本実施例のパイプベンダーでは、図5(a)におけるパイプP1の曲げ位置c2において割り出しテーブル32aを180度回転させてシフトプレート34aを左右位置調整するだけで当該パイプを左側に曲げることによって当該パイプを180度回転することなく曲げ成形を遂行可能である。このことは、曲げ成形の終了したパイプ部分を180度振り回す動作を不要とするものであり、作業者の安全性を向上させる。また、図5(b)に示されるような下方へのパイプP3の姿勢が生じる問題点は、予め、パイプの先端部sが水平または上方に向くように割り出しテーブル32aを90度又は180度回転させておいて、各曲げ位置での曲げ成形を行うようにし、途中180度回転する必要がある場合にはその時点で割り出しテーブル32aを180度回転させるようにすることで振り回しを不要にすることが可能である。
【0030】
なお、本実施例では、図1(c)に示されるように、近接スイッチ32eを割り出しテーブル32aが180度回転するものとして一対設けたが、90度毎に対応する回転角位置に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 基台
12 ラック
14 移動装置
14a ガイド
16、18 サーボモータ
20 傾転装置
22 筒状部
24 歯車箱
26 チャック部
30 プレッシャー装置
30a プレッシャー片
32 インデックス軸装置
32a 割り出しテーブル
32b 固定プレート
32c モータ
32d ピニオンギア
32e 近接スイッチ
32f ベアリング
32g ロケートピンブッシュ
32h リングギア
34 シフト装置
34a シフトプレート
34b ガイド
34c スケール
34d 指標
34e 調整機構
36 クランプ装置
36a クランプ片
36b 駒
36c、36d 側板
36e シリンダ
40 インデックス軸装置
40a 曲げローラ
40b ギア
40c 歯車箱
40d サーボモータ
F フレーム構造
RJ ロータリージョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にパイプの軸心と平行なガイドレールを設けた基台、
前記ガイドレール上を走行する移動装置、
前記移動装置に取り付けられ、内部に前記パイプを挿通可能であり先端部に前記パイプ外周を固定保持するチャック部を有し且つ、同チャック部を所定角位置に回転する傾転装置、
および前記基台の一側端部においてパイプ曲げ加工用に設けられ、パイプ曲げローラに対向し前記パイプ曲げローラに当接されたパイプ外周面を押圧固定するクランプ片を有するクランプ手段と前記クランプ片に隣接しパイプ外周面を押圧するプレッシャー片を有するプレッシャー手段ならびに前記パイプ曲げローラを前記クランプ片と共に所定量回転するベンディングフォーム手段とからなる曲げ加工装置を備えたパイプベンダーであって、
同パイプベンダーにはさらに、前記基台の一側端部に立設固定された支持プレート上にて所定量回転する割り出しテーブルを備えたインデックス軸装置と、前記曲げ加工装置の各手段を搭載すると共に前記割り出しテーブル上にて一方向に位置調整可能なシフトテーブルを備えたシフト装置と、からなることを特徴とするパイプベンダー。
【請求項2】
前記インデックス装置の所定量回転は90度、または180度に設定されていることを特徴とする請求項1記載のパイプベンダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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