説明

パイプルーフおよびパイプルーフの形成方法

【課題】 隣接するパイプにおけるジョイント部材同士をかみ合わせながら、新設するパイプの推進をスムースに行うことができるパイプルーフおよびその形成方法を提供する。
【解決手段】 パイプフールを形成するパイプ1では、隣接するパイプ1同士が雄継手部材3および雌継手部材4が接合されることによって連結されている。雄継手部材3における雄継手本体部32または雌継手部材4における、雌継手本体部42には、パイプ単管2の延在方向に離間する切欠き部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプルーフ工法によって形成されるパイプルーフおよびパイプルーフの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部のトンネルなどを掘削するにあたり、トンネルの周囲に複数のパイプを並設してパイプルーフを形成するいわゆるパイプルーフ工法が知られている。このパイプルーフ工法では、複数のパイプを並設してトンネル周囲の強度の向上を図ることから、複数のパイプ同士を連結するようにしている。
【0003】
複数のパイプを連結するにあたり、たとえば、パイプの側方にジョイント部材を設け、このジョイント部材を接合することにより隣接するパイプを連結するようにしている(たとえば特許文献1)。このパイプルーフでは、鋼管(パイプ)の一側方に、交換の延在方向に延在し、略C字形状の断面を有する第一嵌合部を形成するとともに、他側方に断面T字形状の第二嵌合部を形成している。この第一嵌合部に第二嵌合部を嵌合することにより、鋼管同士を接合するようにしている。
【特許文献1】特開2002−70473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のパイプルーフを施工するにあたり、既設のパイプに隣接するパイプを新設する際には、新設するパイプを既設のパイプに沿わせて推進させていく。このとき、上記特許文献1に記載されたパイプルーフでは、既設のパイプにおける第一嵌合部に対して新設のパイプにおける第二嵌合部を嵌め込みながら新設のパイプを推進させることになる。
【0005】
しかし、パイプに設けられた嵌合部に歪みが生じていたり、嵌合部に土砂などがかみこまれたりすることがある。この場合には、新設するパイプの推進の際に大きな推進力を要することとなり、推進が困難となったり、さらには推進が不可能となってしまったりすることがあるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、隣接するパイプにおけるジョイント部材同士をかみ合わせながら、新設するパイプの推進をスムースに行うことができるパイプルーフおよびその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係るパイプルーフは、複数のパイプをその延在方向が沿った形で並設し、パイプの基端側から終端側に向けてパイプが推進されて形成されたパイプルーフにおいて、隣接する第1パイプおよび第2パイプのうちの第1パイプにおける第2パイプ側の側方位置に第1ジョイント部材が第1パイプにおける延在方向に沿って形成され、第2パイプにおける第1パイプ側の側方位置に第2ジョイント部材が第2パイプにおける延在方向に沿って形成され、第1ジョイント部材と第2ジョイント部材とが接合されて第1パイプと第2パイプとが連結されており、第1ジョイント部材および第2ジョイントの少なくとも一方に、第1パイプまたは第2パイプの延在方向に離間する欠損部が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係るパイプルーフでは、第1ジョイント部材と第2ジョイント部材とが接合されて第1パイプと第2パイプとが連結されており、第1ジョイント部材および第2ジョイントの少なくとも一方に、第1パイプまたは第2パイプの延在方向に離間する欠損部が形成されている。この欠損部が形成されていることにより、第1パイプまたは第2パイプに歪みが生じてしまった場合などでも、第1ジョイント部材と第2ジョイント部材とをスムースに接合させることができる。また、第1パイプや第2パイプとして延在方向の距離が長いものを用いることができる。さらに、第1ジョイント部材と第2ジョイント部材との間の摩擦を軽減することができるので、第1パイプと第2パイプとを接合させる際の推進力を過大とならないようにすることができる。
【0009】
ここで、ジョイント部材は、パイプにおける基端側の延在方向端部位置から終端側の延在方向端部位置まで形成されており、ジョイント部材における欠損部は、ジョイント部材における延在方向一端部を除いた位置に形成されている態様とすることができる。
【0010】
このように、ジョイント部材における欠損部は、ジョイント部材における延在方向端部を除いた位置に形成されることにより、第1ジョイント部材と第2ジョイント部材との接合状態を確実なものとしておくことができる。
【0011】
また、第1ジョイント部材は、突起部が形成された雄型ジョイント部材であり、前記第2ジョイント部材は、雄型ジョイント部材が挿入される雌型ジョイント部材である態様とすることができる。
【0012】
このように、雄型ジョイント部材と雌型ジョイント部材とを用いることにより、第1ジョイント部材と第2ジョイント部材とを確実に接合することができる。
【0013】
さらに、雄型ジョイント部材における突起部は、高さ方向に沿って形成され、雌型ジョイント部材は、突起部を上下方向からそれぞれ覆う上フランジ部および下フランジ部を備えており、欠損部は、上フランジ部が欠損する態様で形成されている態様とすることができる。
【0014】
このように、上フランジ部および下フランジ部を備える雌型ジョイント部材に欠損部を形成する際には、上フランジ部を欠損させるのみで、容易に欠損部を形成することができる。
【0015】
また、第1ジョイント部材は、雄型ジョイント部材が挿入される雌型ジョイント部材であり、第2ジョイント部材は、突起部が形成された雄型ジョイント部材であり、欠損部は、突起部が除去された態様で形成されている態様とすることができる。
【0016】
このように、突起部が形成された雄型ジョイント部材に欠損部を形成する際には、突起部を除去することにより容易に欠損部を形成することができる。
【0017】
さらに、雄型ジョイント部材における欠損部に近接する突起部に対して、欠損部から離間する方向にいくにつれて、突起部の延在方向に拡幅するテーパが付与されている態様とすることができる。
【0018】
このようなテーパが付与されていることにより、第1パイプが既設された状態で第2パイプを押し込む際に、第1ジョイント部材を第2ジョイント部材に容易かつ確実に接合させることができる。
【0019】
他方、上記課題を解決した本発明に係るパイプルーフの形成方法は、複数のパイプをその延在方向が沿った形で並設し、パイプの基端側から終端側に向けてパイプを推進させてパイプルーフを形成するパイプルーフの形成方法において、隣接する第1パイプおよび第2パイプのうちの第1パイプにおける第2パイプ側の側方位置に第1ジョイント部材が第1パイプにおける延在方向に沿って形成され、第2パイプにおける第1パイプ側の側方位置に第2ジョイント部材が第2パイプにおける延在方向に沿って形成され、第1ジョイント部材および第2ジョイントの少なくとも一方に、第1パイプまたは第2パイプの延在方向に離間する欠損部が形成されており、第1パイプ第1ジョイント部材と、第2パイプにおける第2ジョイント部材と、を接合して、第1パイプと第2パイプとを連結することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るパイプルーフおよびその形成方法によれば、隣接するパイプにおけるジョイント部材同士をかみ合わせながら、新設するパイプの推進をスムースに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0022】
図1(a)(b)は、いずれも本発明に係るパイプルーフを構成するパイプの斜視図である。図1(a)(b)に示すように、本実施形態に係るパイプ1は、パイプ単管2を備えている。パイプ1は、図2に示すように、パイプ単管2を複数本縦方向に並べて形成されており、パイプ1をその延在方向に沿った形で複数並設することによってパイプルーフが形成されている。パイプフールは、パイプ1の基端側から終端側向けてパイプ1が推進されて形成される。パイプ単管2は、円筒形をなしており、その長さは、約3000mmのものと約6000mmのもの等がある。
【0023】
パイプ単管2には、複数種類のものが用いられており、いずれのパイプ単管2においても、図1(a)に示すように、一側方には第1ジョイント部材となる雄継手部材3が設けられ、他側方には第2ジョイント部材となる雌継手部材4が設けられている。雄継手部材3および雌継手部材4は、いずれもパイプ単管2の前後端を除いたほぼ全長にわたってパイプ単管2の延在方向に沿って形成されており、たとえば約3000mmのパイプ単管2について約2700mm、約6000mmのパイプ単管2について約5700mmにわたって設けられている。ただし、前後端部における約150mmの範囲は、雄継手部材3および雌継手部材4が設けられていない余り部とされている。これらの余り部は、パイプ単管2同士が接続される部分では、図示しないディスタンスピースが介在されることによって埋められる。また、パイプ1の先端部分および後端部分では、余り部がそのままとされる。
【0024】
また、パイプ単管2における雄継手部材3および雌継手部材4には、切欠き部が形成されているものと形成されていないものが用意されている。図1(a)に示すパイプ単管2では、雄継手部材3に切欠き部が形成されている一方で、雌継手部材4には切欠き部が形成されていない。また、図1(b)に示す例では、雄継手部材3に切欠き部が形成されていない一方で、雌継手部材4には切欠き部が形成されている。
【0025】
たとえば、図1(a)に示すパイプ単管2について説明すると、雄継手部材3は、雄継手脚部31と、雄継手本体部32とを備えている。雄継手脚部31は、図4(a)に示すように、断面略コ字形状をなしている。また、雄継手本体部32は、断面略T字形状をなしており、軸部32Aおよび突起部32Bを備えている。雄継手本体部32は、雄継手脚部31の先端部に取り付けられている。一方、雌継手部材4は、雌継手脚部41と、雌継手本体部42とを備えている。雌継手脚部41は、断面略コ字形状をなしている。また、雌継手本体部42は、断面略C字形状をなしており、上フランジ部42Uおよび下フランジ部42Dを備えている。雌継手本体部42は、雌継手脚部41の先端部に取り付けられている。
【0026】
さらに、雄継手本体部32には、本発明の欠損部である雄継手切欠き部33が形成されている。雄継手切欠き部33は、雄継手本体部32における突起部32Bがパイプ単管2の延在方向に離間する形で除去された態様で形成されている。雄継手切欠き部33は、図3(a)に示すように、パイプ単管2の長手方向に所定の長さをもって形成されている。パイプ単管2の長さが約6000mmである場合の雄継手切欠き部33の長さは、約4000mmとされている。なお、図3(a)に示す例では、パイプ単管2の前端部および後端部のそれぞれに雄継手本体部32が残存する形態とされているが、たとえばパイプ単管2の後端部のみに雄継手本体部32が残存し、この雄継手本体部32の前方を全体的に雄継手切欠き部33とする態様とすることもできる。
【0027】
また、雄継手本体部32における雄継手切欠き部33からの残存部分のうち、パイプ単管2の掘進方向後部における先端部分には、推進方向後方に移動するにつれて、内側から外側に向けて拡幅するテーパ32Cが付与されている。このテーパ32Cは、雄継手切欠き部33から離間する方向にいくにつれて拡幅している。雄継手本体部32に形成される雄継手切欠き部33は、雄継手本体部32を押出成形等で製造した後、所望の箇所を切除する態様とすることもできるし、切除を前提とすることなく、鋳型などを用いて成形することもできる。
【0028】
一方、雌継手本体部42には、本発明の欠損部である雌継手切欠き部43が形成されている。雌継手切欠き部43は、雌継手本体部42における上フランジ部42Uがパイプ単管2の延在方向に離間する形で欠損する態様で形成されている。雌継手切欠き部43は、図3(b)に示すように、パイプ単管2の長手方向に所定の長さをもって形成されている。パイプ単管2の長さが約6000mmである場合の雌継手切欠き部43の長さは、約4000mmとされている。雌継手4についても、雄継手3の場合と同様、図3(a)に示す例では、パイプ単管2の前端部および後端部のそれぞれに雌継手本体部42が残存する形態とされているが、たとえばパイプ単管2の後端部のみに雌継手本体部42が残存し、この雌継手本体部42の前方を全体的に雌継手切欠き部43とする態様とすることもできる。
【0029】
また、雌継手本体部42における雌継手切欠き部43からの残存部分のうち、パイプ単管2の掘進方向後部における先端部分には、推進方向後方に移動するにつれて、上フランジ部42U部と下フランジ部42Dとの間隔が狭まるテーパ42Aが付与されている。このテーパ42Aは、雌継手切欠き部43から離間する方向にいくにつれて、上フランジ部42Uと下フランジ部42Dとの間が広がる方向に拡幅している。雌継手本体部42に形成される雌継手切欠き部43は、雄継手部材3の場合と同様、雌継手本体部42を押出成形等で製造した後、所望の箇所を切除する態様とすることもできるし、切除を前提とすることなく、鋳型などを用いて成形することもできる。
【0030】
ここで説明するパイプ単管2は、既設のパイプに対してパイプ単管2を沿わせて移動させる際のものである。その一方、パイプ単管として、パイプとして予め施工した後、後にパイプ単管が挿入される態様のパイプもある。この場合には、雄継手本体部32における推進方向前方部における後端部分には、推進方向前方に移動するにつれて、内側から外側に向けて拡幅するテーパが付与されている。また、雌継手本体部42における推進方向前方部分における後端部分には、推進方向後方に移動するにつれて、上端部と下端部との間隔が狭まるテーパ42Aが付与されている。
【0031】
これらの雄継手部材3と雌継手部材4との接合部分のうち、切欠き部が形成されていない部分では、図4(a)に示すように、雌継手部材4における雌継手本体部42に雄継手部材3における雄継手本体部32が嵌合されて接合される。ここで、雌継手本体部32における上フランジ部42Uおよび下フランジ部42Dによって雄継手本体部32における突起部32Bを覆っている。
【0032】
また、雄継手部材3における雄継手切欠き部33が形成されている部分では、図4(b)に示すように、雌継手部材4における雌継手本体部42に対して、雄継手本体部32における軸部32Aが挿入された形とされている。さらに、雌継手部材4における雌継手切欠き部43が形成されている部分では、図4(c)に示すように、雌継手本体部42の下端部が雄継手部材3の雄継手本体部32の下方に位置するようにされている。
【0033】
パイプ単管2では、いずれも雄継手本体部32および雌継手本体部42のいずれかに切欠き部が形成されているが、隣接するパイプ単管2同士の間では、その長手方向のいずれかの位置で図4(a)に示す接合状態が形成されている。
【0034】
また、パイプルーフは、図5に示すように、23本のパイプ1が並設されて形成されている。パイプ1は、図6に示すように、いずれも20本のパイプ単管2がその長手方向が沿うようにして接続されている。各パイプ1は、その側面に形成される継手部材の雌雄が同一のものが用いられている。
【0035】
具体的に、1列目のパイプ1におけるパイプ単管A−1〜A−20では、推進方向背面から見て左側の継手部材が形成されておらず、右側の継手部材として雄継手部材3が形成されたパイプ単管が用いられている。また、2〜5列目、13〜16列目のパイプにおけるパイプ単管B−1〜B−20、C−1〜C−20、D−1〜D−20、E−1〜E−20、M−1〜M−20、N−1〜N−20、O−1〜O−20、P−1〜P−20では、推進方向背面から見て左側の継手部材として雌継手部材4が形成され、右側の継手部材として雄継手部材3が形成されたパイプ単管が用いられている。
【0036】
さらに、7列目〜11列目、18列目〜22列目のパイプにおけるパイプ単管G−1〜G−20、H−1〜H−20、I−1〜I−20、J−1〜J−20、K−1〜K−20、R−1〜R−20、S−1〜S−20、T−1〜T−20、U−1〜U−20、V−1〜V−20では、推進方向背面から見て左側の継手部材として雄継手部材3が形成され、右側の継手部材として雌継手部材4が形成されたパイプ単管が用いられている。
【0037】
また、6列目、17列目のパイプにおけるパイプ単管F−1〜F20、Q1−Q20では、推進方向背面から見て右側および左側の両方の継手部材として雌継手部材4が形成されたパイプ単管が用いられている。そして、12列目のパイプにおけるパイプ単管L−1〜L−20では、推進方向背面から見て右側および左側の両方の継手部材として雄継手部材4が形成されたパイプ単管が用いられている。
【0038】
そして、23列目のパイプ単管W−1〜W−20では、推進方向背面から見て右側の継手部材が形成されておらず、右側の継手部材として雄継手部材3が形成されたパイプ単管が用いられている。
【0039】
また、隣接するパイプ同士における接合態様を図5に示している。図5において、接合部分X−1で示す部分は、雄継手部材3および雌継手部材4のいずれもが切欠き部が形成されていない部分である。また、接合部分X−2で示す部分は、雄継手部材3および雌継手部材4のうち、雄継手部材3における雄継手本体部32に雄継手切欠き部33が形成されている部分である。さらに、接合部分X−3で示す部分は、雄継手部材3および雌継手部材4のうち、雌継手部材4における雌継手本体部42に雌継手切欠き部43が形成されている部分である。
【0040】
次に、本実施形態に係るパイプルーフの形成方法について説明する。本実施形態では、パイプルーフを形成するにあたり、最初に図6に示す12列目のパイプLを施工する。パイプLを施工する際には、最初にパイプ単管L−1を推進方向後部からジャッキによって押し込む。以後、パイプ単管L−2,L−3…を順次押し込んでゆき、最終的にパイプ単管L20を押し込むことにより、12列のパイプLの施工が完了する。
【0041】
続いて、12列目のパイプLの隣接する11列目および13列目のパイプK,Mを同時に施工する。ここで、11列目のパイプKを施工するにあたり、パイプLの左側に形成された雌継手部材4に対して、パイプKにおける最初のパイプ単管K−1の右側に形成された雄継手部材3を挿入する。12列目のパイプLにおける雌継手部材4の後端部および11列目のパイプKにおける最初のパイプ単管K−1に設けられた雄継手部材3の前端部には、いずれも、切欠き部分が形成されていない。このため、11列目のパイプKにおける最初のパイプ単管K−1を既設の12列目のパイプLの側方に沿わせて配置することができるとともに、12列目のパイプLに対して11列目のパイプKにおける最初のパイプ単管K−1を接合位置に誘導することができる。
【0042】
こうして、11列目のパイプKにおける最初のパイプ単管K−1を既設のパイプLの隣接位置に移動したら、パイプ単管K−1をジャッキによって押し込む。続いて、パイプ単管K−2をジャッキによって押し込む。ここで、パイプ単管K−2の雄継手部材3における雄継手本体部32には、雄継手切欠き部33が形成されている。この雄継手切欠き部33が形成されていることにより、雌継手部材との摩擦が生じない。このため、たとえば12列目のパイプLに対してパイプ単管K−2に歪みが生じてしまった場合などでも、パイプ単管K−2における雄継手部材3を、12列目のパイプLにおける雌継手部材4に対して、スムースに接合させることができる。しかも、パイプ単管として推進方向の距離が長いものを用いることができる。さらに、雄継手部材3と雌継手部材4との間の摩擦を軽減することができるので、パイプ単管を押し込む際の推進力を過大とならないようにすることができる。
【0043】
ここで、雄継手部材3を雌継手部材4に挿入するにあたり、雄継手部材3に継手切欠き部33が形成されていることから、この雄継手切欠き部33が雌継手部材4への挿入の妨げとなることが懸念される。この点、本実施形態に係る雄継手部材3における雄継手本体部32には、パイプKの推進方向後方に移動するにつれて、内側から外側に向けて拡幅するテーパ32Cが付与されている。このテーパ32Cにより、雄継手部材3を雌継手部材4に確実に誘導することができる。したがって、この雄継手切欠き部33が雌継手部材4への挿入の妨げとならないようにすることができる。
【0044】
また、雄継手切欠き部33が形成されている位置では、雌継手部材4に対して雄継手部材3が実質的に接合力を発揮していないことになる。ここで、雌継手部材4に対して雄継手部材3が離間していると、両継手部材3,4における上方の地盤が落下することが懸念されるが、本実施形態では、雌継手部材4に対して雄継手本体部32が挿入されている。このため、両継手部材3,4における上方の地盤の落下を防止することができる。
【0045】
さらに、雄継手切欠き部33が形成されていることから、雄継手部材3と雌継手部材4とが離反することが懸念されるが、11列目のパイプKにおけるパイプ単管K−1〜K−20のいずれにおいても、その前後両端部に切欠き部分が形成されていない雄継手部材3が設けられている。このため、11列目のパイプKを施工した際、各パイプ単管K−1〜K−20を確実に12列目のパイプLにおける雌継手部材4と接合させることができる。
【0046】
以後、順次パイプ単管K−3,K−4…,K−20をジャッキによって押し込んでいく。こうして、パイプKの施工が完了する。また、同様の手順によって、13列目のパイプMの施工も完了する。13列目のパイプMを施工するにあたり、12列目のパイプLにおける各パイプ単管L1〜L20に設けられた雌継手部材4に対して、パイプMにおけるパイプ単管M1〜M20の各雄継手部材3を挿入していく。
【0047】
ここで、12列目のパイプLにおける各パイプ単管L1〜L20において、雌継手部材4における雌継手本体部42には、雌継手切欠き部43が形成されている。この雄継手部材3を雌継手部材4に挿入するにあたり、雌継手切欠き部43から雄継手部材3が離反することが懸念される。この点、本実施形態に係る雌継手部材4における雌継手本体部42には、パイプKの推進方向前方に移動するにつれて、上端部と下端部との間隔が狭まるテーパ42Aが付与されている。このテーパ42Aにより、雄継手部材3を雌継手部材4に確実に誘導することができる。したがって、この雄継手部材3が雌継手部材4に確実に案内することができる。
【0048】
以後、10列目および14列目のパイプJ,N、9列目および15列目のパイプI,Oを順次施工し、最終的に1列目および23列目のパイプA,Wを施工することにより、パイプルーフが形成される。
【0049】
このように、本実施形態に係るパイプルーフの形成方法では、パイプに形成された継手部材に切欠き部が形成されたものを用いている。このため、継手同士の間に生じる摩擦力が小さくなるので、パイプの推進を小さな推進力でスムースに行うことができる。また、パイプとしても長尺のものを用いることができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、雄継手部材3における雄継手本体部32の雄継手切欠き部33として、突起部32Bを除去した態様のものを用いたが、図7(a)に示すように、突起部32Bのうちの上部のみを除去したものや、図7(b)に示すように、突起部32Bのうちの下部のみを除去したものを用いることができる。また、雌継手部材4における雌継手本体部42の雌継手切欠き部43として、上フランジ部42Uが欠損したものを用いたが、図7(c)に示すように、下フランジ部42Dが欠損したものを用いることができる。このような下フランジ部42Dが欠損したものを用いた場合、雄継手部材3と雌継手部材4との間における接合部分に、上方から土砂が侵入することを上フランジ部42Uによって防止することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、ジョイント部材として、雄継手脚部31および断面略T字形状の雄継手本体部32を有する雄継手部材3と、雌継手脚部41および断面略C字形状の本体部42を有する雌継手部材4とを用いているが、その他の態様のジョイント部材を用いることもできる。たとえば、図8(a)に示すように、脚部を有しない断面略T字形状の雄継手部材51と、やはり脚部を有しない断面略コ字形状の雌継手部材52とを用いる態様とすることができる。この態様では、雄継手部材51に切欠き部を形成する際、仮想線で示す突起部51Aを除去する態様とすることができる。また、雌継手部材52に切欠き部を形成する際には、仮想線で示す上端部52Aおよび下端部52Bの一方または両方を欠損させる態様とすることができる。
【0052】
あるいは、図8(b)に示すように、断面略C字形状の雌雄兼用継手53,54を用いる態様とすることができる。この場合には、この態様では、切欠き部を形成する際、仮想線で示す上端部53A,54Aおよび下端部53B,54Bの一方または両方を欠損させる態様とすることができる。
【0053】
さらに、図8(c)に示すように、脚部を有しない断面略T字形状の雄継手部材55と、やはり脚部を有しない断面略C字形状の雌継手部材56とを用いる態様とすることができる。この態様では、雄継手部材55に切欠き部を形成する際、仮想線で示す突起部55Aを除去する態様とすることができる。また、雌継手部材56に切欠き部を形成する際には、仮想線で示す上端部56Aおよび下端部56Bの一方または両方を欠損させる態様とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)(b)とも、パイプルーフを構成するパイプの斜視図である。
【図2】パイプルーフにおける隣接するパイプを背面側から見た背面図である。
【図3】(a)は雄継手部材側から見たパイプの側面図、(b)は雌継手部材側から見たパイプの側面図である。
【図4】(a)は切欠き部が形成されていない雄継手と雌継手との接合部分の断面図、(b)は雄継手部材に切欠き部が形成された雄継手と雌継手との接合部分の断面図、(c)は雌継手部材に切欠き部が形成された雄継手と雌継手との接合部分の断面図である。
【図5】パイプルーフを背面側から見た背面図である。
【図6】パイプルーフの平面図である。
【図7】(a)は雄継手部材に形成する切欠き部の他の例を示す雄継手と雌継手との接合部分の断面図、(b)は雄継手部材に形成する切欠き部のさらに他の例を示す雄継手と雌継手との接合部分の断面図、(c)は雌継手部材に形成する切欠き部の他の例を示す雄継手と雌継手との接合部分の断面図
【図8】(a)〜(c)とも、継手部材の他の例を示す雄継手と雌継手との接合部分の断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…パイプ
2…パイプ単管
3…雄継手部材
31…雄継手脚部
32…雌継手本体部
32A…軸部
32B…突起部
32C…テーパ
33…雄継手切欠き部
4…雌継手部材
41…雄継手脚部
42…雌継手本体部
42A…テーパ
42U…上フランジ部
42D…下フランジ部
43…雌継手切欠き部
51,55…雄継手部材
52,56…雌継手部材
53,54…雌雄兼用継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパイプをその延在方向が沿った形で並設し、前記パイプの基端側から終端側に向けて前記パイプが推進されて形成されたパイプルーフにおいて、
隣接する第1パイプおよび第2パイプのうちの前記第1パイプにおける前記第2パイプ側の側方位置に第1ジョイント部材が前記第1パイプにおける延在方向に沿って形成され、前記第2パイプにおける前記第1パイプ側の側方位置に第2ジョイント部材が前記第2パイプにおける延在方向に沿って形成され、前記第1ジョイント部材と前記第2ジョイント部材とが接合されて前記第1パイプと前記第2パイプとが連結されており、
前記第1ジョイント部材および第2ジョイントの少なくとも一方に、前記第1パイプまたは前記第2パイプの延在方向に離間する欠損部が形成されていることを特徴とするパイプルーフ。
【請求項2】
前記ジョイント部材は、前記パイプにおける基端側の延在方向端部位置から終端側の延在方向端部位置まで形成されており、
前記ジョイント部材における前記欠損部は、前記ジョイント部材における延在方向端部を除いた位置に形成されている請求項1に記載のパイプルーフ。
【請求項3】
前記第1ジョイント部材は、突起部が形成された雄型ジョイント部材であり、前記第2ジョイント部材は、前記雄型ジョイント部材が挿入される雌型ジョイント部材である請求項1または請求項2に記載のパイプルーフ。
【請求項4】
前記雄型ジョイント部材における突起部は、高さ方向に沿って形成され、前記雌型ジョイント部材は、前記突起部を上下方向からそれぞれ覆う上フランジ部および下フランジ部を備えており、
前記欠損部は、前記上フランジ部が欠損する態様で形成されている請求項3に記載のパイプルーフ。
【請求項5】
前記第1ジョイント部材は、前記雄型ジョイント部材が挿入される雌型ジョイント部材であり、前記第2ジョイント部材は、突起部が形成された雄型ジョイント部材であり、
前記欠損部は、前記突起部が除去された態様で形成されている請求項1または請求項2に記載のパイプルーフ。
【請求項6】
前記雄型ジョイント部材における前記欠損部に近接する前記突起部に対して、前記欠損部から離間する方向にいくにつれて、前記突起部の延在方向に拡幅するテーパが付与されている請求項5に記載のパイプルーフ。
【請求項7】
複数のパイプをその延在方向が沿った形で並設し、前記パイプの基端側から終端側に向けて前記パイプを推進させてパイプルーフを形成するパイプルーフの形成方法において、
隣接する第1パイプおよび第2パイプのうちの前記第1パイプにおける前記第2パイプ側の側方位置に第1ジョイント部材が前記第1パイプにおける延在方向に沿って形成され、前記第2パイプにおける前記第1パイプ側の側方位置に第2ジョイント部材が前記第2パイプにおける延在方向に沿って形成され、
前記第1ジョイント部材および第2ジョイントの少なくとも一方に、前記第1パイプまたは前記第2パイプの延在方向に離間する欠損部が形成されており、
前記第1パイプ第1ジョイント部材と、前記第2パイプにおける前記第2ジョイント部材と、を接合して、前記第1パイプと前記第2パイプとを連結することを特徴とするパイプルーフの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−108602(P2009−108602A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282046(P2007−282046)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(593025446)日本ケーモー工事株式会社 (6)
【Fターム(参考)】