説明

パイプ棚

【課題】側板に対するパイプの取り付け構造を簡易化することにより、組立作業・分解作業の一層の容易化を図ることである。
【解決手段】対向配置した側板12間に複数本のパイプ14を一組とした棚受13が上下方向に複数段設けられ、前記側板12の対向内面に円筒突起19を設け、その円筒突起19の内径面にテーパリブを設け、パイプ14の先端にその外径と同等の外径を持った保護キャップを取り付け、その保護キャップをテーパリブに押し付けてパイプ14の先端部を圧入する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シューズラック等として用いられるパイプ棚に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シューズラック等として用いられる従来のパイプ棚は、左右に対向設置した一対の側板間に前後2本のパイプを一組として上下方向に所要の間隔をおいて水平に取付けた構成である(特許文献1)。前後2本のパイプが一組となって1段の棚受が構成される。その一組のパイプ上に、用途に応じて、例えばシューズラックの場合は履物が載せられ、調理器具ラックの場合は鍋等の調理器具が載せられる。
【0003】
前記パイプの両端部を側板に取り付ける構造は、両側板の内面に対向状に設けられた円筒突起と、その円筒突起の開口端部内面に嵌合される締付け部材とにより構成される。前記円筒突起の開口端部内面とその内面に嵌合される締付け部材は、両方とも真円形からわずかに楕円形に歪んだ形状に形成される。締付け部材は、合成樹脂により形成され、径方向の弾性を有し、外径面に回転操作を容易にするためのローレットが形成される。
【0004】
前記の締付け部材はパイプの端部に予め嵌められ、そのパイプの端部を前記円筒突起の奥まで差し込み、その後、締付け部材の端部を円筒突起の開口端部内面に差し込んで約90度回転させる。固定状態にある円筒突起に対して締付け部材側が相対回転するため、両方の楕円形部分において径方向の圧迫が生じ、締付け部材が円筒突起に対して締め付けられる。これと同時にパイプの外径面が締付け部材により締め付けられ、パイプの先端部が締付け部材を介して円筒突起に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−238669号公報(実施例参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来のパイプ棚は、側板の外側面からビスをねじ込んでパイプを固定するようにしたそれ以前のパイプ棚に比べ、ねじ構造が不要であるため構造が簡単であり、組立作業・分解作業も容易である利点がある。
【0007】
しかし、締付け部材が独立した部品として必要であること、またパイプ端部を円筒突起に固定するための作業として、前記締付け部材に力を加えて回転操作する締め付け作業が必要となるなどの問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、側板に対するパイプの取り付け構造を簡易化することにより、組立作業・分解作業の一層の容易化を図り、合わせて製造コストの低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、この発明に係るパイプ棚は、対向配置した側板間に複数本のパイプを一組とした棚受が上下方向に複数段設けられ、前記側板の対向内面にそれぞれ前記パイプの端部を差し込む円筒突起が設けられ、前記円筒突起に差し込まれたパイプの端部を該円筒突起に対して固定する固定手段を設けてなるパイプ棚において、前記固定手段が前記円筒突起の内径面をその奥部ほど小径になるよう縮径させるテーパ角付与手段により構成され、前記パイプの先端に前記パイプの外径と同等の大きさの外径を持った保護キャップを取り付けた構成とした。
【0010】
なお、前記のテーパ角付与手段は、例えば、前記円筒突起の内径面において周方向に所要の間隔をもって設けられた複数のテーパリブによって形成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明に係るパイプ棚は、パイプの先端部を側板の円筒突起の内部に圧入することによりパイプを側板に固定するようにしているので、固定のために特別な部品を用いることがなく、製造コストの低減を図ることができる。また、組立時においても単にパイプ先端部を円筒突起に圧入するだけでよく、回転操作を必要としないので、組立作業はもちろん、分解作業も容易である。
【0012】
さらに、パイプの先端に保護キャップを装着しているため、パイプを円筒突起に圧入する際、その保護キャップが円筒突起のテーパリブに押し当てられ、パイプの先端面が押し当てられることがない。このため、テーパリブが削り取られることがなく、パイプの抜き差しを繰り返しても一定の圧入抵抗を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】は、実施形態のパイプ棚を示す一部省略斜視図である。
【図2】(a)図は、同上の一部拡大分解断面図である。(b)図は(a)図のb−b線の断面図である。
【図3】(a)図は、同上の組立途中の一部拡大断面図である。(b)図は同上の組立後の一部拡大断面図である。
【図4】同上の側板の拡大正面図である。
【図5】(a)同上の側板連結状態の一部断面図である。(b)図は(a)図のb−b線の断面図である。
【図6】は、使用状態の一例を示す斜視図である。
【図7】は、使用状態の他の例を示す一部省略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。添付図面に示した実施形態のパイプ棚11は、シューズラックとして用いた例を示している。図1に示したように、このパイプ棚11は、左右に対向配置された一対の側板12、12と、各側板12の間に設けられた上下2段の棚受13とにより構成される。各棚受13は前後2本を一組とするパイプ14によって構成される。パイプ14は、アルミニウム又は鉄によって形成される。ステンレス鋼以外の鉄製の場合は、外表面に所要のコーティングが施される。
【0015】
前記側板12は合成樹脂の成型品であり、その上端部に円弧状の凸部15が上向きに突き出して設けられ、下端部に前記凸部15と相補的な関係となる円弧状の凹部16が設けられる。また中間部に軽量化及びデザイン的な観点から楕円形の開口部18が設けられる。同様の観点から、前記の凸部15の部分においてもこれより小形の開口部18aが設けられる。
【0016】
後述のように、この実施形態のパイプ棚11は上下方向に積み重ねて使用できるが(図6参照)、その場合に側板12の前記凸部15が上段の側板12の凹部16に嵌合され、また前記凹部16が下段の側板12の凸部15に嵌合される。
【0017】
前記側板12の対向内面において、前記の凸部15と中間部の開口部18との間に上段の棚受13が設けられ、凹部16と中間部の開口部18との間に下段の棚受13が設けられる。
【0018】
各棚受13は前後に配列される2本一組のパイプ14によって構成され、各パイプ14の両端部を側板12の対向内面に固定する手段として、図2(a)(b)に示したように、側板12の内面に内向きに円筒突起19が設けられる。この円筒突起19は、図1及び図4に示したように、1本のパイプ14の一端部に対し3個所を一組として設けられ、2本のパイプ14に対向した3個所ずつ二組の円筒突起19が前後対称の配置で設けられる。
【0019】
3個所一組の円筒突起19の配置の詳細は、図4で明らかなように、基準となる前位置a、その直上の上位置b、上下方向に見てこれら間にあり、前後方向に見て後方にある中間位置cの配置となる。他の一組の配置はこれと対称となる。パイプ14はパイプ棚11の用途に応じていずれかの位置の円筒突起19を選択して差し込まれる。また、用途の変更があった場合は、使用途中においてパイプ14の差し込み位置の変更を行うことができる。
【0020】
なお、各円筒突起19の外径面と側板12の内面の間に、補強リブ20が設けられる。
【0021】
図2、図3に示したように、前記円筒突起19の開口端に近い部分の内径はパイプ14の先端部外径より僅かに大きく形成されており、パイプ14の先端部はその内部にスムーズに差し込まれる。その円筒突起19の内部においては奥部に至るほど僅かに縮径したテーパを付与すべく、テーパリブ21が周方向に等間隔をおいて4個所に設けられる(図2参照)。各テーパリブ21は、奥部に至るほど高くなるよう微小なテーパ角δが付与される。
【0022】
前記のテーパリブ21の存在により、円筒突起19の内部は奥部に至るほどその内径が縮径される。このため、パイプ14を強く押し込むことにより、その先端部がテーパリブ21に押し付けられ、次第に圧入抵抗を増し奥部に達する。
【0023】
この場合、パイプ14の先端面に何らの保護部材が装着されていないと、パイプ14の鋭利な切断面によって形成された先端面が強くテーパリブ21に接触するため、テーパリブ21を削り取ることがある。パイプ14の圧入は1回切りではなく、当該シューズラックの使用の途中においてパイプ14の差し込み位置をしばしば取り換えることがある。このため、テーパリブ21が削り取られると、次第にパイプ14の圧入抵抗が低下し、使用途中においてパイプ14が勝手に抜け出すおそれがある。
【0024】
また、前記パイプ14を円筒突起19の奥部まで強く押し込むことがあると、鋭利な切断面をもったパイプ14の先端面によってその奥壁を傷付けたり、破壊したりするおそれもある。
【0025】
これらの問題を解消するために、この発明においては、パイプ14の先端部に樹脂製の保護キャップ22を取り付けている。この保護キャップ22は、図2に示したように、パイプ14の先端から露出する頭部23と、パイプ14に圧入される脚部24とからなる。頭部23の外径はパイプ14の外径と同一径に形成される。また脚部24には、前記パイプ14の内径面に圧入される最大径を持った凹凸が付けられる。この凹凸の存在により該保護キャップ22をパイプ14に対し挿入し易くなっており、また頭部23に作用する抜け力に対しては抜け難くしている。
【0026】
前記の保護キャップ22をパイプ14の先端部に装着した状態でパイプ14の先端部を円筒突起19に差し込むと(図3(a)矢印参照)、保護キャップ22の頭部23がテーパリブ21に接触しながら前進するので、パイプ14の先端面がテーパリブ21に直接接触することが避けられる。保護キャップ22の材質をテーパリブ21より軟質な樹脂に選定しておくことにより、テーパリブ21が削り取られることはない。頭部23の外径面とテーパリブ21との圧接によりパイプ14が圧入状態となる。
【0027】
パイプ14の抜き差しを繰り返してもテーパリブ21が削り取られることがないので、パイプ14に対し所要の圧入抵抗が付与される。
【0028】
また、パイプ14を強く押し込むことがあっても保護キャップ22の頭部23が円筒突起19の奥壁に当たり、鋭利な切断面をもったパイプ14の先端が直接当たることがない。このため、奥壁を傷付けたり破損したりする恐れもない。
【0029】
前記の保護キャップ22を設けた場合においても、パイプ14を必要以上に深く押し込むことを避け、また、逆に押し込み量が不足することを避けることが望ましい。このために、この実施形態においては最適の押し込み量を表示する目印として、所定位置に浅い周溝30(図2(a)、図3(a)参照)を設けている。
【0030】
次に、前記パイプ棚11(図1参照)を複数段積み重ねて使用する構造について説明する。図4に示したように、側板12の上端の凸部15の両側立ち上がり部に外側方と後方に開放された係合溝25が形成される。また、下端部の凹部16の両側立ち上がり部には、内方に突き出した係合突起26が形成される。上端の凸部15に上段の側板12の凹部16を後方から嵌合させる際に、前記の係合溝25に係合突起26を係合させる(図5(a)参照)。これにより側板12相互は、上下方向に分離することがないように係合される。
【0031】
係合溝25の前端面は閉塞されているので、下段の側板12に対し、上段の側板12が前方(側板12の内面側)に抜けることが防止される。
【0032】
また、側板12の前記凹部16には、前記係合突起26に接近して側板12の内方に突き出した係合爪27が設けられる(図5(a)(b)参照)。上下両側板12の凹部16と凸部15を嵌合させた際に、前記のように係合溝25と係合突起26を係合させると同時に、前記の係合爪27を凸部15の内周縁に係合させる(図5(b)参照)。この係合爪27の係合によって、下段の側板12に対し、上段の側板12が後方に抜け出すことが防止される。
【0033】
以上の係合構造によって、下段の側板12に対し上段の側板12が係合される。同様の係合構造によって必要な数の側板12を積み重ね、左右に対向配置した状態で対向する円筒突起19間にパイプ14の両端部を圧入固定することにより、図1に示した基本構造のパイプ棚11を必要段数積み重ねた大型のパイプ棚(図6参照)を組み立てることができる
【0034】
また、用途に応じて、図7に示したように、シューズラックとして用いる場合、ブーツ31の収納部においては、前方の1本のパイプ14を省略することもできる(破線参照)。また、サイズの小さいシューズ32を収納する場合は、前後のパイプ14の間隔を小さく設定する。
【0035】
その他、各段の棚受を構成する前後2本のパイプ14を圧入固定する円筒突起19の3位置(a〜c)を適宜選択することにより、パイプ14相互の間隔の大小、前後方向の傾斜の大小を適宜変更して使用することができる。
【符号の説明】
【0036】
11 パイプ棚
12 側板
13 棚受
14 パイプ
15 凸部
16 凹部
18 開口部
19 円筒突起
20 補強リブ
21 テーパリブ
22 保護キャップ
23 頭部
24 脚部
25 係合溝
26 係合突起
27 係合爪
30 周溝
31 ブーツ
32 シューズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置した側板間に複数本のパイプを一組とした棚受が上下方向に複数段設けられ、前記側板の対向内面にそれぞれ前記パイプの端部を差し込む円筒突起が設けられ、前記円筒突起に差し込まれたパイプの端部を該円筒突起に対して固定する固定手段を設けてなるパイプ棚において、前記固定手段が前記円筒突起の内径面をその奥部ほど小径になるよう縮径させるテーパ角付与手段により構成され、前記パイプの先端に前記パイプの外径と同等の大きさの外径を持った保護キャップを取り付けたことを特徴とするパイプ棚。
【請求項2】
前記テーパ角付与手段が、前記円筒突起の内径面において周方向に所要の間隔をもって設けられた複数のテーパリブによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載のパイプ棚。
【請求項3】
前記円筒突起が、1本のパイプに対し前後及び上下方向に位置を異にして複数設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載のパイプ棚。
【請求項4】
前記パイプの端部外径面に前記円筒突起に対する差し込み限界を示す目印が付加されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパイプ棚。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−19686(P2011−19686A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166619(P2009−166619)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(591172733)株式会社コジット (10)
【Fターム(参考)】